JP2018070927A - ビスマスの回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ビスマスとビスマス以外の卑金属元素 とビス(2−エチルヘキシル)リン酸を含有する有機溶媒を酸と接触させることにより卑金属元素を逆抽出する、卑金属元素の分離方法において、逆抽出の工程は、硝酸溶液と接触させることにより銅または鉛を硝酸濃度0.5〜1.0mol/Lの水相として有機相から分離する第1逆抽出工程P1と、第1逆抽出工程P1で得られる有機相を強酸溶液と接触させることによりビスマスを水相または水相中析出物として選択的に分離する第2逆抽出工程P2を、その順に実行する。これらの工程により、不純物の少ないビスマスを選択的に回収できる。
【選択図】図1
Description
このため、中和澱物を出発原料としてビスマスを精製し商品価値のある純度まで回収することは困難であった。
第2発明のビスマスの回収方法は、第1発明において、前記第1逆抽出工程における逆抽出後の硝酸濃度が0.5〜1.0mol/Lであることを特徴とする。
第3発明のビスマスの回収方法は、第1または第2発明において、前記第2逆抽出工程における逆抽出後の硝酸濃度が2.6〜4.6mol/Lであることを特徴とする。
第4発明のビスマスの回収方法は、第1または第2発明において、前記第2逆抽出工程では、指示薬をメチルバイオレットとした場合の酸濃度が2.6〜4.6規定である水相を生じることを特徴とする。
第5発明のビスマスの回収方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記第2逆抽出工程で分離されたビスマスを中和処置工程で中和澱物とし、これにアルカリ浸出工程、硫酸浸出工程、冷却工程、硫酸根除去工程、電解工程を順次適用し金属ビスマスを得ることを特徴とする。
第2発明によれば、第1逆抽出工程の硝酸濃度を逆抽出後で1.0mol/L以下とすることで、不純物と一緒にビスマスが逆抽出されることを抑制し、一方、0.5mol/L以上にしておくことで、銅や鉛も十分に除去するようにできる。
第3発明によれば、第2逆抽出工程では、硝酸濃度を2.6〜4.6mol/Lとすることで、使用する硝酸を多くすることなくビスマス逆抽出率を高く維持できる。
第4発明によれば、指示薬をメチルバイオレットとした場合の酸濃度が2.6〜4.6規定である水相を生じさせることで、第2逆抽出工程におけるビスマス逆抽出率を高く維持できる。
第5発明によれば、中和澱物を得たあと各工程を実施することで不純物の特に少ない金属ビスマスが得られる。
本発明が適用される出発物質は、ビスマスとビスマス以外の卑金属元素(銅や鉛)を含有する有機溶媒である。この濃縮物は特開2005−97695の「白金族元素の相互分離方法」の中間抽出物としても得られる。この中間抽出物を以下に図4を参照しながら説明する。
さらに、ルテニウム浸出生成液21はルテニウム精製工程25で、またイリジウムを含む逆抽出生成液23はイリジウム精製工程26で処理される。
本発明は、上記出発物質であるビスマスとビスマス以外の卑金属元素とビス(2−エチルヘキシル)リン酸を含有する有機溶媒を酸と接触させることにより卑金属元素を逆抽出する回収方法である。以下、図1に基づき詳述する。
逆抽出剤に塩酸を使用すると低濃度でも逆抽出することができるがビスマスに対する選択性は小さく不純物の少ないビスマスの分離回収が困難である。一方、硝酸を使用すると低酸濃度ではビスマスがほとんど逆抽出液に溶出せず、ビスマス以外の不純物が選択的に溶出される。そして、ビスマスは、硝酸濃度に比例し逆抽出液に溶出する。
本発明は、このようなビスマス溶出の硝酸濃度への依存性を利用したもので、先ず、低酸濃度の硝酸でビスマス以外の不純物を有機相から溶出させ、次いで、その有機相に残ったビスマスを高濃度の強酸溶液と接触させることにより不純物を含まないようにビスマスを溶出させるものである。
ビスマスは菱形記号を付した線L1で示すように、逆抽出後の酸濃度(mol/L)が低いと逆抽出しにくいが、酸濃度が高くなるにつれ、ほぼ線形の関係で逆抽出率が向上する。これに対し、銅は三角記号を付した線L2で示し、鉛は四角記号を付した線L3で示すように逆抽出後の酸濃度(mol/L)に関係せず、ほぼ100%の逆抽出が行える。
上記のように、ビスマスの逆抽出率のみが酸濃度に依存する性質を利用した点に本発明の技術原理が存する。
以下、本工程の詳細を説明する。
ビスマスの抽出に用いられる抽出剤は、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸である。このビス(2−エチルヘキシル)リン酸は、炭化水素系希釈剤によってその濃度を10〜50容量%に調整して用いる。この抽出剤を卑金属元素を含む水溶液(たとえば第三の工程の抽出残液のように、白金族元素をクロロ錯体の陰イオンの形で含んでいてもよい)と接触させ、そのpHを2.5〜4.5に調整すると、陽イオンとして含まれる卑金属元素が有機相に抽出される。主要な卑金属元素としては、ビスマスの外、銅、鉛等が有機相に抽出される。
(第1逆抽出工程P1)
第1逆抽出工程P1では、ビスマスとビスマス以外の卑金属元素とビス(2−エチルヘキシル)リン酸を含有する有機溶媒を酸と接触させるに当り、硝酸と接触させることにより銅または鉛を、硝酸濃度0.5〜1.0mol/Lの水相(第1の水相)として有機相から分離する。
第2逆抽出工程P2では、第1逆抽出工程P1で得られる有機相を強酸と接触させることによりビスマスを水相または水相中析出物として選択的に分離する。強酸としては、塩酸や硫酸、過塩素酸などを用いることができる。そして、強酸は、有機相と接触させて得られる水相の酸濃度が2.6〜4.6規定(指示薬をメチルバイオレットとした場合の値)となる濃度のものが用いられる。
第2逆抽出工程P2では、硝酸のかわりに塩酸、硫酸、過塩素酸などの強酸を用いることができる。用いる強酸の濃度は、水素イオン濃度にして4〜5mol/Lであることが望ましい。ただし、塩酸を用いるとオキシ塩化ビスマスが、硫酸を用いると硫酸ビスマスが生じ、これらは難溶性なのでクラッド(微粒子状の固形物で、溶媒劣化生成物等とともに、有機相と水相の界面に集まって相分離の妨げとなるもの)となりやすい。
つぎに、上記本発明の逆抽出工程で得られたビスマスから金属ビスマスを得る方法を説明する。以下、各工程を図3に基づき説明する。
(中和工程P11)
中和工程P11では、上記逆抽出工程で得られたビスマスを中和処理する。一般に中和処理すると、溶解度積とpHの関係からそれぞれの元素に応じて水酸化物などの中和澱物を形成するものと、形成せずに溶解しづつけるものに分離でき、それによってpHを細かく調整することで分離できる。
アルカリ浸出工程P12では、前記中和工程P11で得られる中和澱物にさらにアルカリ(と水)を添加し、浸出液と残渣に分離する。中和澱物にはヒ素等の両性化合物(酸性でもアルカリ性でも溶解する化合物)が微量含まれる場合、アルカリを添加すると、両性化合物はアルカリ浸出液に溶解するので、とアルカリ浸出残渣のビスマス純度を高めることができる。
硫酸浸出工程P13では、前記工程P12で得られたアルカリ浸出残渣に硫酸を添加して、硫酸の濃度による溶解度の差を利用して浸出液と残渣に分離する。
この硫酸浸出工程P13では、最初に低濃度(水分率が高い)の硫酸を接触させて浸出残渣を浸出して1次浸出液と1次浸出残差を分離し、次に1次浸出残渣に高濃度の硫酸を接触させて2次浸出液と2次浸出残渣とに分離する2段階の浸出処理をすることが好ましい。このような2段階処理を行うと、1段階目でビスマス以外の成分が除かれるので、2段階目でビスマスの溶解度が上昇して、より濃縮しやすくなるという利点がある。
冷却工程P14では、前記工程P13で得られた2次浸出液を冷却して結晶を得る。温度を下げると硫酸ビスマスの溶解度は大幅に下がるので、溶解度の差に応じて液体で溶けきれなくなった硫酸ビスマスを結晶として回収できる。
硫酸根除去工程P15では、冷却工程P14で得られる結晶に、アルカリ(と水)を加えることによって、硫酸ビスマスを中和して酸化ビスマスを得る。このとき水を加えることによって、水溶液中にビスマス以外の金属元素や硫酸イオンや過剰のアルカリを水溶液に溶解して取り除くことができる。
電解工程P16では、前記工程P15で得られた酸化ビスマスに酸性溶液を加える。このように、酸性溶液を加えると、ビスマスがイオンとして溶解した電解液が得られるので、電解液に2枚以上の電極を挿し込み、電極間に通電することで、ビスマスイオンが電子を受けて単体のBiメタルとして電極表面上に析出する。酸性溶液として珪フッ酸を用いた場合は、電解液中のビスマスは珪フッ化ビスマスの形をとる。
本発明における第1逆抽出工程P1および第2逆抽出工程P2の効果を実験例によって実証した。以下、その結果を詳細に説明する。なお、金属元素の分析値はICP発光分光法に基づく値である。
実験例1は第1逆抽出工程P1の実証実験である。
ビスマス、鉛、銅を含有する白金族元素を含む溶液に炭化水素系希釈剤で容量50%濃度に調整した抽出剤ビス(2−エチルヘキシル)リン酸を接触させ有機中に、卑金属元素を抽出した。抽出元素は主にビスマス、鉛、銅であり、有機相を分析しその濃度を確認した。
攪拌後、静置して有機相と水相を分離し水相をICP装置で分析し、各硝酸濃度での逆抽出率を算出した。
実験例2は第1逆抽出工程P1から始め第2逆抽出工程P2まで進めた実証実験である。
表−1に示す有機相を500mLを2リットルビーカーに入れ、1mol/L濃度の硝酸溶液500mLを混合し、小型攪拌機を用いて60分間攪拌し、静置後、有機相と水相を分離した。次に、分離した有機相を別の2リットルビーカーに入れ、硝酸濃度5mol/Lに調整した硝酸溶液500mLを混合して小型攪拌機を用いて60分間攪拌した。静置後、有機相と水相を分離した。得られた水相を28質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液でpH8まで中和した。
pH2付近で白濁が見られ、ビスマスの白色沈殿物が析出した。濾別後、沈殿物を乾燥したうえで分析した。分析結果を表−3に示す。
(比較例1)
実験例1と同じく表−1に示す有機100mLを300mLビーカーに入れ、0.1mol/L濃度の塩酸溶液100mLを混合し、小型攪拌機を用いて60分間攪拌したところ、撹拌開始直後から浮遊物が出現した。静置したものの60分経過しても浮遊物がみられ、有機相と水相の分離が困難であった。
実験例2と同じく表−1に示す有機を500mLを2リットルビーカーに入れ、2mol/L濃度の塩酸溶液500mLを混合し、小型攪拌機を用いて60分間攪拌し、静置後、有機相と水相を分離した。得られた水相を28質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液でpH8まで中和した。
pH2付近で実験例2と同様の白濁が見られたが、最終は、黄緑色の沈殿物が析出した。濾別後、沈殿物を乾燥したうえで分析した。分析結果を表−4に示した。
実験例1で接触させた5mol/Lの硝酸(5規定)は、ビスマス等の逆抽出に伴い4.6規定まで低下している。異なる濃度の硝酸を用いる場合、硝酸にかえて他の強酸を用いる場合、有機相の量が異なる場合、抽出剤と希釈剤の比率が異なる場合は、濃度の低下幅が変わるので、硝酸(強酸)の添加量を調整すればよい。第2逆抽出工程P2で硝酸の添加量は、逆抽出後で酸濃度が4.6規定となるようにすれば、表1の組成の有機相から表3の組成の沈殿物を得ることができる。
(3.6規定の場合)
水相中のビスマス濃度の変化(5.23→5.03g/L)を沈殿物中ビスマス量(65.5%)にかけて
65.5×(5.03/5.23)=62.995
ビスマスが減った残りを100%とみなして
62.995×[100/(100−65.5+62.995)]=64.6%
65.5×(3.97/5.23)=49.720
49.720×[100/(100−65.5+49.720)]=59.0%
P2 第2逆抽出工程
P3、P11 中和工程
P12 アルカリ浸出工程
P13 硫酸浸出工程
P14 冷却工程
P15 硫酸根除去工程
P16 電解工程
Claims (5)
- ビスマスとビスマス以外の卑金属元素とビス(2−エチルヘキシル)リン酸を含有する有機溶媒を酸性水溶液と接触させることにより卑金属元素を逆抽出する、卑金属元素の分離方法において、
前記逆抽出工程は、硝酸と接触させることにより銅または鉛を第1の水相として有機相から分離する第1逆抽出工程と、
前記第1逆抽出工程で得られる有機相を強酸と接触させることによりビスマスを第2の水相として選択的に分離する第2逆抽出工程を、その順に実行し、
前記第2の水相は前記第1の水相の酸濃度よりも酸濃度が高い
ことを特徴とするビスマスの回収方法。 - 前記第1逆抽出工程における逆抽出後の硝酸濃度が0.5〜1.0mol/Lである
ことを特徴とする請求項1記載のビスマスの回収方法。 - 前記第2逆抽出工程における逆抽出後の硝酸濃度が2.6〜4.6mol/Lである
ことを特徴とする請求項1または2記載のビスマスの回収方法。 - 前記第2逆抽出工程では、指示薬をメチルバイオレットとした場合の酸濃度が2.6〜4.6規定である水相を生じる
ことを特徴とする請求項1または2記載のビスマスの回収方法。 - 前記第2逆抽出工程で分離されたビスマスを中和処置工程で中和澱物とし、これにアルカリ浸出工程、硫酸浸出工程、冷却工程、硫酸根除去工程、電解工程を順次適用し金属ビスマスを得る
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のビスマスの回収方法。
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