JP6585955B2 - セレン白金族元素含有物からRu、RhおよびIrを分離する方法 - Google Patents
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Description
これに関連して、従来、特許文献1に記載の方法が提案されている。
特許文献1には、セレン白金族元素含有物に苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物からなるフラックスを添加し、該フラックスの共晶温度以上に加熱して溶融し、この溶融物を水浸出して固液分離し、亜セレン酸ソーダを含む液分と白金族元素を含む残渣とに分離することを特徴とするセレン白金族元素含有物の溶解処理方法が記載されており、このような方法によれば、セレンを効率よく浸出して白金族元素と分離することができると記載されている。
すなわち、特許文献1に記載の方法のようにSeと白金族元素とを分離するのではなく、Ru、RhおよびIrと、その他の元素とを分離する方法は、従来、提案されていない。
本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)Se、Pt、Pd、Ru、RhおよびIrを主成分として含み、Pt、PdおよびRuは主にSeと結合してセレン化合物を形成しているセレン白金族元素含有物に、苛性ソーダおよび硝酸ソーダの混合物であるフラックスを添加し、溶融して、溶融物を得るアルカリ処理工程と、
前記溶融物に酸浸出処理を施した後、固液分離し、Ru、RhおよびIrを含む固体と、Se、PtおよびPdを含む液体とを得る酸浸出工程と、
を備える、セレン白金族元素含有物からRu、RhおよびIrを分離する分離方法。
(2)前記酸浸出工程において、前記溶融物を1.0〜3.5mol/Lの塩酸水溶液に浸漬する前記酸浸出処理を施す、上記(1)に記載の分離方法。
(3)前記酸浸出工程において、前記溶融物に水浸出処理を施した後、固液分離し、固体として得られた残渣を、前記塩酸水溶液と過酸化水素とを含む溶液に浸漬する前記酸浸出処理を施す、上記(1)または(2)に記載の分離方法。
(4)アルカリ処理工程において、苛性ソーダと硝酸ソーダとを70:30〜89:11のモル比で含む前記フラックスを用いる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の分離方法。
本発明は、Se、Pt、Pd、Ru、RhおよびIrを主成分として含み、Pt、PdおよびRuは主にSeと結合してセレン化合物を形成しているセレン白金族元素含有物に、苛性ソーダおよび硝酸ソーダの混合物であるフラックスを添加し、溶融して、溶融物を得るアルカリ処理工程と、前記溶融物に酸浸出処理を施した後、固液分離し、Ru、RhおよびIrを含む固体と、Se、PtおよびPdを含む液体とを得る酸浸出工程と、を備える、セレン白金族元素含有物からRu、RhおよびIrを分離する分離方法である。
このような分離方法を、以下では「本発明の分離方法」ともいう。
初めにセレン白金族元素含有物について説明する。
本発明の分離方法においてセレン白金族元素含有物は、Se、Pt、Pd、Ru、RhおよびIrを主成分として含んでいる。また、それらの中でPt、PdおよびRuは主にSeと結合してセレン化合物を形成し、セレン白金族元素含有物の少なくとも一部を構成している。
この合計含有率は70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
Pt、PdおよびRuがSeと結合してなるセレン化合物としては、PtRuSe4、PdSe2、PtSe2が挙げられる。
銅の電解精製においては、転炉からの粗銅を精製炉において99.5%程度に精製し、鋳造した陽極(アノード)と陰極としての種板を電解槽に交互に数十枚一組で吊し、電解精製が実施される。種板上に電着した銅は電気銅と呼ばれ、周知の態様で爾後処理されて商品化される。電解槽の底には陽極に含まれる不純物が泥状で沈積し、これは銅電解殿物(アノードスライム)と呼ばれている。銅電解殿物には、銅に加えて、金を始め、原料中の貴金属が濃縮しており、貴金属回収の主要原料である。この他、セレン及びテルルも含まれている。
本発明の分離方法におけるアルカリ処理工程について説明する。
アルカリ処理工程では、前記セレン白金族元素含有物に、苛性ソーダおよび硝酸ソーダの混合物であるフラックスを添加し、溶融して、溶融物を得る。
加熱溶融によってSeが主に4価となり亜セレン酸ソーダ(Na2SeO3)となる。
苛性ソーダと硝酸ソーダのモル比が70:30よりも硝酸ソーダ比率が高まると溶融物のSeが6価の割合が高くなる傾向がある。苛性ソーダと硝酸ソーダのモル比が89:11よりも苛性ソーダ比率が高まるとPt,Pdの浸出率が低くなる傾向がある。
なお、本発明において浸出率は、原料として用いるセレン白金族元素含有物に対する各元素の質量ベースの比率(百分率)を意味するものとする。
また、苛性ソーダと硝酸ソーダとを70:30〜74:26のモル比(Naモル比)とすることが好ましい。後述する酸浸出工程におけるPtおよびPdの浸出率を概ね90%以上とすることができるからである。
さらに、苛性ソーダと硝酸ソーダとを70:30〜85:15のモル比(Naモル比)とすることが好ましく、74:26〜80:20のモル比(Naモル比)とすることがより好ましい。後述する酸浸出工程における金の浸出率を高めることができるからである。
本発明の分離方法における酸浸出工程について説明する。
酸浸出工程では、前記溶融物に酸浸出処理を施した後、固液分離し、Ru、RhおよびIrを含む固体と、Se、PtおよびPdを含む液体とを得る。
また、前記溶融物を2.0〜3.0mol/L(好ましくは2.0〜2.9mol/L)の塩酸水溶液に浸漬して酸浸出処理を施すと、酸浸出工程における金の浸出率を高めることができるので好ましい。
ここでSe、PtおよびPdの液体への浸出率は極めて高い。
具体的にはSeの浸出率は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
また、PtまたはPdの浸出率は60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは88%以上である。
そして、Ru、RhおよびIrの液体への浸出率は低く、固体への残存率が高い。
具体的にはRu、Rh、Irのいずれか1種の浸出率は45%以下、好ましくは38%以下、より好ましくは35%以下である。
したがって、Ru、RhおよびIrをより効率よく分離することができる。
一般的な成分を備える銅電解殿物を用意し、これを硫酸溶液を用いて脱銅浸出処理した。得られた脱銅浸出残渣を塩酸と過酸化水素で溶解した。得られた溶液をDBC(ジブチルカルビトール)を用いて金抽出した。得られた金抽出後液を亜硫酸ガスを用いて還元し白金族含有還元物を分離した。この還元後液に対してさらに亜硫酸ガスを用いて還元してセレン含有還元物を得た。このセレン含有還元物を蒸留してセレンと蒸留残渣を得た。得られた蒸留残渣の分析結果を第1表に示す。
測定結果を第2表に示す。
そして、浸出液に含まれる各成分の含有率を測定し、浸出率(対原料(質量%))を求めた。第3表に示す。
したがって、この固体からRu、Rh、Irを回収し、一方で、浸出液は、例えば金抽出後液の還元工程へ戻し、白金族・金含有還元物と共に従来法によって処理してパラジウム、金等を回収することができる。
実施例1で用いた蒸留残渣についてアルカリ処理を行った。具体的には、坩堝内へ20gの蒸留残渣とフラックス(NaOHとNaNO3とを86mol:14molで混合したもの)とを装入し、400℃で2時間の処理を行った。
その後、塩酸濃度を変更した複数のパターンの酸浸出処理を行った。具体的には、上記のアルカリ処理後の残留残渣を80℃に調整した蒸留水内で2h撹拌した後、固液分離し、得られた残渣を、1mol/L、2mol/L、3mol/L、4mol/L、6mol/Lの各々に調整した塩酸水溶液に浸漬し、60℃で3時間の処理を行った。なお、塩酸水溶液には30%H2O2を初期液量に対し75%の体積量を添加した。
そして、その後、メンブレンフィルターを用いて真空ろ過することによって固液分離を行い、浸出液に含まれる各成分の含有率を測定し、浸出率を求めた。
結果を図1および第4表に示す。
これより、塩酸濃度が好ましくは1〜3.5mol/L(より好ましくは2〜3mol/L)である場合にPt、Pdの浸出率を高く、かつ、Ru、Rh、Irの浸出率を低くすることができることがわかった。
したがって、塩酸濃度を上記の範囲とした酸浸出処理を行い、その後、固液分離して得られる固体としてRu、Rh、Irを効率よく回収し、一方で、浸出液は、例えば金抽出後液の還元工程へ戻し、白金族・金含有還元物と共に従来法によって処理してパラジウム、金等を回収することができる。
実施例1で用いた蒸留残渣について、NaOHとNaNO3との混合比を変更した複数のパターンのフラックスを用いたアルカリ処理を行った。具体的には、坩堝内へ20gの蒸留残渣とNaNO3の混合比を0〜26mol%(Naモル比)の範囲で変更したフラックスとを装入し、400℃で2時間の処理を行った。
そして、上記のアルカリ処理後の残留残渣を80℃に調整した蒸留水内で2h撹拌した後、固液分離し、得られた残渣を1mol/Lの塩酸水溶液に浸漬し、60℃で3時間の処理を行い、さらにメンブレンフィルターを用いて真空ろ過することによって固液分離を行った。なお、塩酸水溶液には30%H2O2を初期液量に対し75%の体積量を添加した。
そして、その後、メンブレンフィルターを用いて真空ろ過することによって固液分離を行い、浸出液に含まれる各成分の含有率を測定し、浸出率を求めた。結果を図2および第5表に示す。
また、上記のアルカリ処理後の残留残渣を80℃に調整した蒸留水内で2h撹拌した後に固液分離して得られた水に含まれる4価Seおよび6価Seの割合を測定した。結果を図3および第6表に示す。
これより、フラックスに含まれるNaNO3の割合が11〜30mol%(Naモル比)とすると、Pt、Pdの浸出率を高く、かつ、Ru、Rh、Irの浸出率を低くすることができることがわかった。
したがって、フラックスに含まれるNaNO3の割合を上記の範囲としたアルカリ処理を行い、その後、固液分離して得られる固体としてRu、Rh、Irを効率よく回収し、一方で、浸出液は、例えば金抽出後液の還元工程へ戻し、白金族・金含有還元物と共に従来法によって処理してパラジウム、金等を回収することができる。
Claims (4)
- Se、Pt、Pd、Ru、RhおよびIrを主成分として含み、Pt、PdおよびRuは主にSeと結合してセレン化合物を形成しているセレン白金族元素含有物に、苛性ソーダおよび硝酸ソーダの混合物であるフラックスを添加し、溶融して、溶融物を得るアルカリ処理工程と、
前記溶融物に酸浸出処理を施した後、固液分離し、Ru、RhおよびIrを含む固体と、Se、PtおよびPdを含む液体とを得る酸浸出工程と、
を備える、セレン白金族元素含有物からRu、RhおよびIrを分離する分離方法。 - 前記酸浸出工程において、前記溶融物を1.0〜3.5mol/Lの塩酸水溶液に浸漬する前記酸浸出処理を施す、請求項1に記載の分離方法。
- 前記酸浸出工程において、前記溶融物に水浸出処理を施した後、固液分離し、固体として得られた残渣を、前記塩酸水溶液と過酸化水素とを含む溶液に浸漬する前記酸浸出処理を施す、請求項2に記載の分離方法。
- アルカリ処理工程において、苛性ソーダと硝酸ソーダとを70:30〜89:11のモル比で含む前記フラックスを用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の分離方法。
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