JP5533770B2 - セレンの分離方法 - Google Patents
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Description
浸出処理工程は、非鉄金属製錬において発生するセレン含有物に、酸化性ガス及び/又は鉱酸を用いて浸出処理を施す工程である。ここで、酸化性ガスとは、一般に酸素を供給することによって、空気以上に他の物質の燃焼を引き起こす、又は燃焼を助けるガスを意味し、例えば、塩素、オゾン、二酸化窒素等のガスが挙げられ、好ましくは塩素ガスである。また、鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられ、好ましくは塩酸である。
溶媒処理工程は、上記浸出処理工程にて得られた浸出液に溶媒処理を施す工程である。この工程では、浸出処理工程にて得られた浸出液に含まれている金、テルル、白金族元素等の有価金属を溶媒抽出法により選択的に抽出し分離する。上記浸出液に微量ながら含まれている金等の高価な有価金属は、そのロス率を低減するために最初に抽出される。例えば、上記浸出液に含まれている金を選択的に抽出するための溶剤としては、ジブチルカルビトール(DBC)が好適であり、通常、ケロシン等の希釈剤により適当な濃度に調整された後、用いられる。上記浸出液に含まれているセレンは、溶媒処理では抽出されず、金、白金族元素等を抽出分離した後の抽残液中に残る。
還元反応工程は、上記溶媒処理工程にて得られたセレン含有液を還元反応に付す工程である。この工程では、上記溶媒処理工程にて得られたセレン含有液、例えば、上記浸出処理工程にて得られた浸出液から溶媒処理により、テルル、白金族元素等を抽出分離した後の抽残液中に、亜硫酸ガス等の還元剤を吹き込み、還元反応に付し、セレンを析出させる。上記還元反応の条件は、特に限定されるものではないが、上記セレン含有液の温度を60〜80℃に調整することが好ましい。上記セレン含有液の温度が60℃未満であると、析出するセレンの形態がアモルファス状となり、反応装置内への付着する場合があり、上記セレン含有液の温度が80℃を超えると、テルル、白金族元素等の不純物元素の共沈が増加する場合がある。また、亜硫酸ガス等の還元剤は、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が460〜520mVになるように、供給量を制御しながら吹き込みことが好ましい。酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が上記範囲であれば、上記セレン含有液にテルル、白金族元素等の不純物元素が含まれている場合であっても、これらを共沈させることなく、セレンの沈殿物を得ることができる。酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が460mV未満であると、セレンの沈殿物の収率は向上するものの、テルル等が不純物として混入する場合があり、520mVを超えると、例えば、還元剤として亜硫酸ガスを使用した場合に、還元反応が進行し難く、上記セレン含有液中に残存するセレンが増加する場合がある。本発明のセレンの分離方法では、この還元反応工程において、上記溶媒処理工程にて得られたセレン含有液に界面活性剤を添加することで、その後の固液分離工程におけるセレンの分離性を向上させる点に特徴があるが、詳細については後述する。
固液分離工程は、上記還元反応工程にて得られたセレン含有液に固液分離処理を施してセレンを分離する工程である。この工程では、上記還元反応工程にて得られたセレン含有液、すなわち、セレンの沈殿物を含む溶液からセレンの沈殿物を濾過により分離する。得られた沈殿物には不純物が付着している場合があるため、純水で洗浄することが好ましい。なお、この固液分離工程では、濾過による分離の前にデカンテーションによる分離を行なってもよい。濾過の手段としては、例えば、濾紙を設置したブフナーロートを用いる減圧濾過、フィルタープレスを用いる加圧濾過等が挙げられる。
銅電解で産出したアノードスライムを純水に懸濁した後、酸濃度が6mol/Lになるように塩酸を添加した。次に、スラリーの温度を90℃に調整し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が500mV以上となるまで塩素ガスを吹き込み、塩素浸出を行なった。塩素浸出後、スラリーを遠心分離機で固液分離し、浸出液を得た。そして、得られた浸出液からジブチルカルビトール(DBC)を用いて金を抽出した。次いで、金抽出後のセレンを含有する抽残液の塩酸濃度を、純水を用いて2mol/Lに調整するとともに、液温を60℃に調整した後、蛍光X線定量分析法によりセレンを分析し、セレンの濃度が20〜30g/Lの範囲内となるように純水を用いて希釈して調整し、セレン含有試験液を得た。
セレン含有試験液に、該セレン含有試験液の体積に対して200ppmとなる量の界面活性剤(商品名:ペレックス NB−L,主成分:アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩,陰イオン性界面活性剤,花王株式会社製)を添加する以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2のセレン含有液を得た。
セレン含有試験液に、該セレン含有試験液の体積に対して400ppmとなる量の界面活性剤(商品名:ペレックス NB−L,主成分:アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩,陰イオン性界面活性剤,花王株式会社製)を添加する以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例3のセレン含有液を得た。
セレン含有試験液に、界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例1のセレン含有液を得た。
実施例1〜3及び比較例1のセレン含有液をそれぞれよく撹拌して均一なものとした後、5リットルを採取した。各々のセレン含有液を、濾紙(商品名:定性濾紙No.5C,直径:90mm,アドバンテック社製)をセットしたブフナーロートに通液し、真空ポンプで吸引した。そして、完全に濾過が終わるまでの時間を計測し、その値から1秒当たりに濾過した液量を算出し、これを濾過速度(L/sec)とした。また、濾過により得られたセレンを真空乾燥器に入れ、60℃の条件下で24時間乾燥し、乾燥前後の質量変化からセレンの水分率(%)を算出した。さらに、電子顕微鏡を用いて乾燥後のセレンの平均粒子径(μm)を測定した。これらの結果を表1に示す。
また、実施例1〜3のセレン含有液を濾過して得られたセレンの水分率は、比較例1のセレン含有液を濾過して得られたセレンと比べて低かった。
Claims (4)
- 非鉄金属製錬において発生するセレン含有物に、酸化性ガス及び/又は鉱酸を用いて浸出処理を施す浸出処理工程と、
前記浸出処理工程にて得られた浸出液に溶媒処理を施す溶媒処理工程と、
前記溶媒処理工程にて得られたセレン含有液に還元剤を供給し、前記セレン含有液を還元反応に付す還元反応工程と、
前記還元反応工程にて得られたセレン含有液に固液分離処理を施してセレンを分離する固液分離工程と、を有するセレンの分離方法であって、
前記還元反応工程では、前記溶媒処理工程にて得られたセレン含有液に界面活性剤を添加することを特徴とするセレンの分離方法。 - 前記界面活性剤の添加量は、前記溶媒処理工程にて得られたセレン含有液の体積に対して100ppm以上である請求項1に記載のセレンの分離方法。
- 前記界面活性剤は、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを主成分とするものである請求項1又は2に記載のセレンの分離方法。
- 前記還元反応工程では、還元反応の酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を460〜520mVに調整する請求項1〜3いずれかに記載のセレンの分離方法。
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