JP2000169116A - セレンの選択的浸出回収方法 - Google Patents

セレンの選択的浸出回収方法

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JP2000169116A
JP2000169116A JP10348116A JP34811698A JP2000169116A JP 2000169116 A JP2000169116 A JP 2000169116A JP 10348116 A JP10348116 A JP 10348116A JP 34811698 A JP34811698 A JP 34811698A JP 2000169116 A JP2000169116 A JP 2000169116A
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recovered
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Satoshi Asano
聡 浅野
Kaoru Terao
薫 寺尾
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 焙焼や蒸留を経ず安全且つ低コストで、不純
物を含む固体のセレン含有物からセレンを選択的に浸出
し、高品位のセレン単体を回収する。 【解決手段】 セレン含有物を水溶性亜硫酸塩を用いて
浸出する際に、亜硫酸塩よりも還元力の強い還元剤を作
用させてセレンを選択的に浸出し、その後セレン単体を
析出分離して回収する。回収したセレン単体は赤色セレ
ンであり、セレン化合物を含有しない50℃以上の温水
処理、更に空気中での加熱処理により、結晶化を促進さ
せる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅製錬工程などで
発生するセレン含有物から、湿式法によって高品位のセ
レン単体を回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】セレンは銅鉱石中に含まれ、その多くが
銅精錬の電解アノードスライムから回収されている。か
かるセレンの回収方法としては、非常に多くの方法が提
案されているが、原理的には以下の方法が代表的なもの
である。
【0003】即ち、第1の方法は酸化焙焼法であり、例
えば日本鉱業会誌97、1122(1981)Au
g.、第648頁及び第753頁、資源素材学会誌10
5(1989)No.5、第398頁に記載されてい
る。この方法は、銅電解のアノードスライムを酸化焙焼
し、揮発した二酸化セレンを水又は水酸化ナトリウム水
溶液に溶解し、水中で生成した亜セレン酸又は亜セレン
酸イオンを二酸化硫黄を用いて還元する方法である。
【0004】また、“Hydrometallurug
y”(1994)、Chapaman&Hall、p6
9には、硫酸焙焼法が記載されている。この方法は、ア
ノードスライムを硫酸と共に焙焼し、揮発した二酸化セ
レンと生成した二酸化硫黄とを水に溶解して、溶解と同
時に酸化還元反応によりセレンを生成析出させる方法で
ある。
【0005】更に、“JOM”(1990)、Au
g.、p45に記載されているアルカリ浸出法では、ア
ノードスライムを炭酸ナトリウムと焙焼した後、水で浸
出するか、あるいは水酸化ナトリウム浸出溶液で酸化す
る方法により、セレン酸ナトリウムの水溶液又は亜セレ
ン酸ナトリウムとセレン酸ナトリウムの水溶液とし、こ
の水溶液を二酸化硫黄で還元する。
【0006】以上の方法はいずれも原液の調整に焙焼工
程を含むものであるが、焙焼工程を含まない方法として
は、“Proceedings of COPPER
95−COBRE”、95 Internationa
l ConferenceVol. III に記載される蒸
留法がある。この方法は、アノードスライムの塩素浸出
液を二酸化硫黄で還元してセレン及びテルルを主成分と
する混合物を析出させ、これを蒸留することにより、セ
レンを回収する方法である。
【0007】また、上記の焙焼工程や蒸留工程を経ず
に、湿式法によりセレンを含む濃縮物からセレンを回収
する方法として、“Natl. Met. Lab. T
ech.J.”、15No.1(1973)、p17に記
載されているように、亜硫酸塩による浸出法がある。こ
の方法は、水に可溶性の亜硫酸塩水溶液を用いて、セレ
ン含有物から6価セレンの生成なくセレンを浸出し、こ
の浸出液からセレンを析出させて回収する方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
酸化焙焼法では、二酸化セレンの溶解により生成した亜
セレン酸の水溶液を二酸化硫黄により還元すると、セレ
ン化物を形成しやすい不純物元素が共沈し、高品位のセ
レン単体を得ることが困難であった。そのため、還元前
に二酸化セレンを再揮発させるか、又は還元前の水溶液
をイオン交換樹脂で処理するなどの、再精製工程が必要
であった。
【0009】また、硫酸焙焼法では、発生した二酸化セ
レンと二酸化硫黄を水で吸収させると同時にセレンが析
出する反応機構であるため、2種の発生ガスと共に水に
混入した焙焼残渣や揮発物等の粉塵が共沈し、最高でも
99%程度の品位のセレンしか回収することができなか
った。
【0010】アルカリ浸出法では、常に難還元性の6価
セレンを含むセレン酸イオンが生成するため、セレンの
還元時には、反応促進のため塩化物イオン、鉄(II)イオ
ン等を添加する必要があり、特に鉄イオンを大量に使用
するため、この廃液処理に多くの費用を要するうえ、還
元されずに残った6価セレンが排水中に混入する恐れが
あった。また、アルカリ浸出法では、アルカリと塩を形
成するあらゆる不純物が同時に浸出するため、還元に先
立って、沈澱法による分離精製操作を繰返し行う必要が
あった。
【0011】しかも、これらの酸化焙焼法、硫酸焙焼
法、及びアルカリ浸出法は、いずれも原液の調整に焙焼
工程を含むので、焙焼時に二酸化セレンの煙霧又は粉塵
が発生し、その取り扱い時にも二酸化セレンが漏洩しや
すいため、作業環境が悪化し、作業中にも被毒する危険
性があった。また、焙焼時に装置内が高度に腐食性の環
境になるため、特殊な耐食性の焙焼炉が必要となり、初
期投資及びメンテナンス費用が大きくなるという欠点が
あった。
【0012】また、蒸留法では、セレンとテルルが共沸
混合物を形成するため、多段の精留段を持つ精留塔が必
要になり、また常圧では沸点が高いことから、真空中で
操業する必要があるので、設備投資が大きくなるという
欠点があった。また、原料中にしばしば揮発性の不純物
元素又は化合物が混入する場合があり、これらも揮発し
て、製品セレン中に混入するという問題点もあった。
【0013】最後に、亜硫酸塩による浸出方法では、亜
硫酸塩でのセレン浸出液中に、亜硫酸イオン、浸出反応
で生成するセレノ硫酸イオン、更には原料中にしばしば
セレンと共存する硫黄又は上記亜硫酸イオンから生成す
るチオ硫酸イオンなどが存在する。これらの陰イオンと
特定の不純物元素が錯イオンを形成し、セレンと共に浸
出される。そのため、浸出液から回収したセレン単体に
不純物元素が含まれ、その品質が低下してしまうという
欠点があった。
【0014】本発明は、このような従来の事情を鑑み、
多くの不純物を含む固体のセレン含有物から、焙焼工程
や蒸留工程を経ることなく安全且つ低コストにて、湿式
法によりセレンを選択的に浸出し、高品位のセレン単体
を回収することができるセレンの選択的浸出回収方法を
提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明が提供するセレンの選択浸出回収方法は、セ
レン含有物を水に可溶性な亜硫酸塩を用いて浸出し、得
られた浸出液からセレンをセレン単体として析出回収す
る方法において、前記亜硫酸塩による浸出時に、亜硫酸
塩よりも還元力の強い還元剤を作用させ、セレンを選択
的に浸出することを特徴とする。
【0016】また、本発明のセレンの選択的浸出回収方
法においては、上記のごとくセレン単体を回収し、セレ
ン化合物を含有しない50℃以上の温水中で保持するこ
とにより、セレンの結晶化を促進させることができ、更
には温水中からセレン単体を回収し、該温水の温度以上
の温度に加熱することにより、更にセレンの結晶化を促
進させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明では、水溶性の亜硫酸塩に
より固体原料中のセレンを浸出する際に、還元力の強い
還元剤を共存させることにより、亜硫酸イオン又はその
セレノ硫酸イオンやチオ硫酸イオンなどの反応生成物と
錯塩を形成する不純物を還元し、元素単体として残渣に
固定する。その結果、固体原料であるセレン含有物が多
くの不純物を含んでいても、セレンのみを選択的に浸出
することができ、従って得られた浸出液からセレン単体
を析出させ、99.9%以上の高品位のセレン単体を回
収することができる。
【0018】以下に、亜硫酸塩として亜硫酸ナトリウム
を例にとり、本発明をより詳細に説明する。尚、亜硫酸
塩は亜硫酸ナトリウムでなくても、水溶性の亜硫酸塩で
あれば同様に適用可能である。
【0019】まず、亜硫酸塩によるセレンの浸出反応
は、下記化学式1のように表すことができる:
【化1】Na2SO3+Se → Na2SSeO3
【0020】このセレンと亜硫酸塩とからセレノ硫酸塩
が形成される反応は、硫黄と亜硫酸塩とからチオ硫酸塩
が生成する反応と類似しており、亜硫酸ナトリウム中の
4価の硫黄がセレンにより6価に酸化され、逆にセレン
はSe2-に還元されることにより進行する。この化学式
1で示す反応は、温度が高いほど右に進行しやすいた
め、出来るだけ高温で実施することが望ましい。また、
この反応は可逆反応であるから、セレンに対して亜硫酸
塩の量が多いほど、また亜硫酸塩の濃度が高いほど定量
的に反応が進行する。
【0021】この反応の原理からも明らかなように、本
発明方法の原料となるセレン含有物は単体状態であるこ
とが望ましい。従って、セレン含有物としては、化合物
形態のセレンが多い銅製錬の電解アノードスライムであ
っても良いが、電解アノードスライムの塩素浸出液を還
元して得た還元析出物の方が適している。
【0022】上記化学式1の反応により得られた浸出液
からセレンを回収するには、下記化学式2で示すように
液を冷却する方法と、下記化学式3で示すように液のp
Hを下げて酸分解する方法がある。ただし、化学式2の
反応のみによるセレンの析出は不完全であるため、実際
には化学式3の酸分解反応と組み合わせた方法が有利で
ある。
【0023】
【化2】Na2SSeO3 → Na2SO3+Se
【化3】2Na2SSeO3+H2SO4 → 2NaHSO
3+Na2SO4+2Se
【0024】酸分解するpHは、亜硫酸ナトリウムが亜
硫酸水素ナトリウムに変化する値、即ち亜硫酸の酸解離
定数pKa1=1.91とpKa2=7.18の中間値に相
当するpH4.5付近まで低下すれば十分であり、これ
より低いpHになると亜硫酸水素ナトリウムが二酸化硫
黄を放出して分解し、亜硫酸イオンの再利用が困難にな
るので好ましくない。また、チオ硫酸塩が共存する場合
は、この付近のpHから分離し、硫黄が析出することが
知られている。尚、セレンを回収した母液は、アルカリ
を添加して亜硫酸イオンを再生することにより、繰返し
浸出に使用することができる。
【0025】ところが、上記化学式1の浸出反応におい
て、原料のセレン含有物中に特定の元素や化合物、例え
ば銅、銀、金又はその化合物が共存する場合には、これ
らの元素や化合物が亜硫酸イオン、セレノ硫酸イオン、
チオ硫酸イオンと安定な錯塩を形成して、セレンと共に
水溶液中に溶出する。これらの錯塩は、過剰の亜硫酸塩
の存在下では高温及びアルカリに対して比較的安定であ
るが、酸性では容易に分解するため、上記化学式3のよ
うにpHを低下させた状態で析出したセレン中に不純物
として混入する。
【0026】具体的に、セレン含有物中に銀化合物が含
まれる場合を例にとり、亜硫酸塩での浸出時に生じる錯
塩の形成反応を下記化学式4と化学式5に、セレンを析
出させるための酸分解反応において錯塩が分解析出する
反応を化学式6から化学式8に示す。実際には、錯塩の
形成反応及び酸分解反応ともに、下記の各反応の他に種
々の副反応を伴う。
【0027】
【化4】2Na2SO3+AgCl → Na3[Ag(S
3)2]+NaCl
【化5】2Na2SSeO3+AgCl → Na3[Ag
(SSeO3)2]+NCl
【0028】
【化6】4Na3[Ag(SO3)2]+3H2SO3 → 2A
2SO3+6NaHSO3+3Na2SO4
【化7】2Na3[Ag(SSeO3)2] → Ag2SSeO
3+3Na2SSeO3
【化8】 Ag2SSeO3+H2O → Ag2Se+H2SO4
【0029】この反応系では、多くの不純物元素につい
て、硫化物及びセレン化物が最も溶解度が低く且つ安定
であるため、生成する種々の難溶性塩は最終的にいずれ
かに変化しているものと考えられる。従って、これらの
不純物が混入した状態で回収されたセレン単体は、後に
化学的又は物理的な洗浄によって、不純物のみを除去す
ることは困難である。
【0030】しかしながら、上記挙動を示す不純物元素
の化合物の多くは、金属単体への酸化還元電位が比較的
高いため、還元処理することにより、金属状態として固
定することができる。とはいえ、これらの不純物元素は
錯塩を形成すると酸化還元電位が大きく低下し、例えば
Ag+/Ag間の標準酸化還元電位は0.78Vである
が、Na3[Ag(SSeO3)2]と類似した化合物である
Na3[Ag(S23)2]/Ag間の標準酸化還元電位は−
0.017Vまで低下する。一方、溶液中に存在する亜
硫酸ナトリウムのSO4 2-/H2SO3間の標準酸化還元
電位は0.171Vであるから、上記錯塩の形態では還
元が困難である。
【0031】そこで、本発明方法においては、亜硫酸塩
での浸出時に不純物元素の化合物を還元するため、亜硫
酸塩以上に還元力が強い還元剤を用いるのである。かか
る還元剤としては、例えば、ヒドラジン、次亜燐酸、水
素化ホウ素ナトリウム等の化合物、亜鉛粉、アルミニウ
ム粉などの金属粉が使用可能である。その中でも、反応
後に不活性なガス成分に分解して水溶液中に残留しない
こと、酸化還元当量当たりの価格が安価であこと等か
ら、ヒドラジンが最も好ましい。
【0032】また、亜硫酸ナトリウムは加水分解により
強アルカリ性を示し、更にしばしば遊離のアルカリが存
在しているため、上記化学式1と同様の反応によっては
溶解しないとされるテルルが浸出される場合がある。こ
の浸出されたテルルは亜テルル酸塩であり、4価で存在
しているため、本発明方法によれば、上記したヒドラジ
ン等の還元剤により容易に還元して、元素単体として分
離することが可能である。
【0033】尚、セレンも陽イオンの状態では単体への
還元が容易であることが知られているが、上記化学式1
の浸出反応により生成するセレノ硫酸塩中のセレンの価
数は−2であるから、還元により単体に変化することは
ない。
【0034】このようにして、亜硫酸塩よりも強い還元
剤の下でセレン含有物を亜硫酸塩で浸出することによ
り、不純物は残渣中に固定して、セレンのみを選択的に
水溶液中に浸出することができる。その後、このセレン
を含む浸出液から、通常の方法により、例えば酸の添加
によりpHを低下させて、セレン単体を析出させること
ができる。
【0035】このセレン単体の析出は温度が低いほど有
利であるから、セレン単体は通常は赤色セレンとして析
出する。しかしながら、市場に流通する一般的なセレン
の形態は結晶化が進行した灰黒色の金属セレンであるた
め、回収した赤色セレンは結晶化させることが望まし
い。ところが、赤色セレンを単純に母液中で加熱した
り、あるいは乾燥により加熱すると、途中でゴム状の無
定形セレンに変化して、塊状になってしまうという問題
点があった。
【0036】この赤色セレンを結晶化する方法の一つと
して、“Proceedingsof the Int
ernational Symposium on P
rocessing of Rare Metals”
(1990)、pp.231に記載されているように、
アンモニア水溶液中で加熱して金属化処理する方法が知
られている。しかし、この方法では、アルカリ性の液中
でセレンを処理するため一部のセレンが溶出する欠点が
あるうえ、加熱時のアンモニアの損失により処理コスト
が増大する恐れがあった。
【0037】そこで、本発明においては、析出した赤色
セレンを水溶液から分離回収し、セレン化合物を含まな
い水中で50℃以上に加熱することにより、結晶化を促
進させる。セレン化合物を含む水中で加熱すると、還元
時の母液中でそのまま加熱した場合と同様に、セレン化
合物がゴム状の無定形セレンとして析出し、これがバイ
ンダーの働きをしてセレンが塊状に変化してしまうから
である。
【0038】更に、より一層結晶化した金属セレンにす
る必要がある場合は、上記の温水で加熱処理したセレン
を取り出し、その温水の加熱処理温度以上の温度で更に
加熱乾燥する。この乾燥温度が高いほど、金属セレンの
結晶化が進行する。例えば、140℃以上で加熱するこ
とにより、初めから金属セレンとして液中で直接還元採
取した場合よりも結晶化が進行した金属セレンを得るこ
とができる。
【0039】
【実施例】下記表1に示す原料粉末8.9gを水38.3
ml中に懸濁し、炭酸ナトリウムにて酸性化合物を中和
した後、亜硫酸ナトリウムを濃度が200g/lになる
ように溶解した。このスラリーにヒドラジン水和物を添
加し、90℃で1時間撹拌してセレンを浸出させ、酸化
還元電位を低下し得る最低値である−564mVまで低
下させた。その後、析出物が出なくなるまで放冷して濾
過した。
【0040】
【表1】 《原料の組成(湿潤状態、重量%)》 Cu Pb Se Ag Pt Pd Rh Te 4.89 0.04 33.6 0.02 0.13 0.66 0.04 7.37
【0041】得られた濾液に、30%硫酸を添加してp
H4.5に調整し、セレンを析出させた。回収したセレ
ン単体は水洗した後、70℃にて乾燥した。最終的に回
収されたセレン単体の品位と、発光分光定性分析の結果
を下記表2に示した。尚、表中の定量値は、硫黄を除
き、発光分光分析結果を検量線を用いて数値換算したも
のである。
【0042】
【表2−1】 《セレン単体の品位(ppm)及び発光分光定性分析結果》 Ca Na Ag Cu Al Bi Fe Si Se品位: − − <1 8 − <1 <1 <10 発光分析: ± (±) (±) 2+ ± (±) − ±
【表2−2】 Te Pt Mg Sb Pb Au Se品位: <1 − − 7 0.9 − 42 発光分析: − − (±) (±) ± − / (注)発光分析の欄において、+は存在が強く認められること、±は存在がはっ きり認められるが弱いこと、(±)は存在が弱く認められること、及び−は存在が 認められないことを表す(以下同じ)。
【0043】次に、比較例として、上記表1に示す原料
粉末を使用し、ヒドラジン水和物を添加しない以外は上
記実施例と同様にしてセレンを浸出させた。その後、得
られた濾液に上記実施例と同様に硫酸を添加してセレン
を析出させ、水洗、乾燥後、得られたセレン単体を上記
と同様に評価した結果を表3に示した。
【0044】
【表3−1】 《セレン単体の品位(ppm)及び発光分光定性分析結果》 Ca Na Ag Cu Al Bi Fe Si Se品位: − − 8 110 − <1 <1 <10 発光分析: ± + 2+ 5+ ± (±) − ±
【表3−2】 Te Pt Mg Sb Pb Au Se品位:10000 − − 7 0.9 − 580 発光分析: 5+ (±) (±) (±) ± + /
【0045】上記の結果から分かるように、比較例のご
とく亜硫酸ナトリウム単独による浸出では、銀、銅の
他、テルルが比較的多く溶出するため、これらがpH調
整時にセレンと共に沈澱する結果、99.9%以上の品
位のセレン単体を回収することは困難である。
【0046】これに対して本発明の上記実施例では、ヒ
ドラジンの添加により銅、銀、テルル等の不純物金属が
固定され、セレンのみが選択的に浸出された結果、9
9.9%以上の高品位のセレン単体を回収することがで
きた。尚、比較例と対比すると分かるように、硫黄の混
入も大幅に低減したが、これは不純物元素の硫化物とし
て沈澱していた硫黄が、不純物が溶出しなくなったた
め、沈澱しなくなったものと考えられる。
【0047】また、上記実施例において回収されたセレ
ンは赤色セレンであるため、これを脱イオン水中に懸濁
して、83℃まで徐々に加熱昇温した後、濾過して水分
を分離し、更に140〜170℃で12時間加熱するこ
とにより、結晶化を促進させた。
【0048】結晶性の尺度として、X線回析分析を行
い、2θ=41.2°における半価幅を求めた結果、回
収直後の赤色セレンは0.68であったのに対し、上記
結晶化後のセレンは0.40であり、外観も灰黒色の金
属セレンであった。尚、精製した純亜セレン酸水溶液を
80℃で二酸化硫黄を用いて還元して得られた従来品の
金属セレンの半価幅は、0.54である。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、種々の不純物が共存す
る固体原料から、焙焼工程や蒸留工程を経ることなく、
安全且つ低コストにて、湿式法によってセレンを選択的
に浸出分離することができ、99.9%以上の高品位の
セレン単体を回収することができる。
【0050】また、本発明により得られるセレンは赤色
セレンであるが、これを温水中、更には空気中で加熱す
ることによって、セレンの品位を低下させることなく、
結晶化を促進させることができ、市場に流通する一般的
な形態である灰黒色の金属セレンとすることができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セレン含有物を水に可溶性な亜硫酸塩を
    用いて浸出し、得られた浸出液からセレンをセレン単体
    として析出回収する方法において、前記亜硫酸塩による
    浸出時に、亜硫酸塩よりも還元力の強い還元剤を作用さ
    せ、セレンを選択的に浸出することを特徴とするセレン
    の選択浸出回収方法。
  2. 【請求項2】 亜硫酸塩よりも還元力の強い還元剤がヒ
    ドラジンであることを特徴とする、請求項1に記載のセ
    レンの選択浸出回収方法。
  3. 【請求項3】 前記セレン含有物は、銅製錬の電解アノ
    ードスライムの塩素浸出液の還元析出物であることを特
    徴とする、請求項1又は2に記載のセレンの選択的浸出
    回収方法。
  4. 【請求項4】 前記セレン単体を回収し、セレン化合物
    を含有しない50℃以上の温水中で保持することによ
    り、セレンの結晶化を促進させることを特徴とする、請
    求項1〜3のいずれかに記載のセレンの選択的浸出回収
    方法。
  5. 【請求項5】 前記温水中からセレン単体を回収し、該
    温水の温度以上の温度に加熱することにより、更にセレ
    ンの結晶化を促進させることを特徴とする、請求項4に
    記載のセレンの選択的浸出回収方法。
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