JP5824377B2 - ポリスチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、それらの製造方法、発泡粒子及び発泡成形体 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、それらの製造方法、発泡粒子及び発泡成形体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、それらの製造方法、発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、曲げ弾性率及び圧縮弾性率に優れた発泡成形体を得ることのできるポリスチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、それらの製造方法、発泡粒子に関する。
従来、発泡成形体は、軽量性と強度を兼ね備えていることから、魚箱や食品容器等の輸送用梱包材に使用されている。また、土木建材分野においては軽量盛土用として、直方体形状の発泡成形体が多量に使用されている。この軽量盛土用の発泡成形体は、押出発泡法で得られた発泡体を積層し、所望の厚みに加工する方法、又は型内成形法にて得られる。発泡成形体を製造するための原料である樹脂としては、ポリスチレン系樹脂が汎用されている。
上記型内成形法では、例えば次のようにして発泡成形体が得られている。即ち、ポリスチレン系樹脂の発泡性樹脂粒子を加熱して発泡(予備発泡)させて発泡粒子(予備発泡粒子)を得る。得られた発泡粒子を金型のキャビティ内に充填する。次いで、充填された発泡粒子を二次発泡させつつ、発泡粒子同士の熱融着により一体化させることで発泡成形体を得ることができる。このような型内成形法はビーズ法とも称される。
一般に、上記のようなビーズ法により得られたポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体は、予備発泡粒同士を熱融着により一体化させることにより得られる。そのため、粒子同士の融着面の強度が弱くなりやすいことから、発泡成形体は、特に曲げ弾性率や圧縮弾性率のような物性が劣るという短所を有している。
上記発泡成形体の物性を改善するための技術が種々提案されている。例えば、特開2009−263512号公報(特許文献1)には、スチレン系単量体と分岐状マクロモノマーとアクリル酸エステルとの共重合体を使用することが提案されている。
特開2009−263512号公報
しかし、上記公報でも強度面(特に曲げ弾性率や圧縮弾性率)で十分満足できる発泡成形体は得られておらず、強度向上の強い要望があった。
本発明者は、上記要望に対応すべく鋭意検討した結果、軽量性を維持したままで優れた曲げ弾性率や圧縮弾性率の発泡成形体を与えうるポリスチレン系樹脂粒子を見出し、発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、GPC法により測定される表層部の重量平均分子量Mw1と全体の重量平均分子量Mw2の比(Mw1/Mw2)が1.05〜2.0であり、かつ前記表層部のZ平均分子量Mz1と前記全体のZ平均分子量Mz2の比(Mz1/Mz2)が1.05〜1.5であって、前記Mw2が17万〜55万、前記Mz2が120万〜190万であることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子が提供される。
本発明によれば、上記ポリスチレン系樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子が提供される。
更に本発明によれば、上記発泡性樹脂粒子を発泡させて得られ、0.01〜0.10g/cm3の嵩密度を有する発泡粒子が提供される。
更にまた本発明によれば、上記発粒子を型内で成形して得られ、0.01〜0.10/cm3の密度を有する発成形体が提供される。
また本発明によれば、上記ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
ポリスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン単量体のみを吸収させて前記種粒子内で重合させる第1工程と、
前記第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体とを含む単量体混合物を吸収させつつ重合を行う第2工程とを含み、
前記単量体混合物の重合が、第1工程を経て得られた前記粒子中の単量体混合物の重合転化率を85〜95質量%の範囲で60〜150分間維持しつつ行われることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡性樹脂粒子の製造方法であり、
ポリスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン単量体のみを吸収させて前記種粒子内で重合させる第1工程と、
前記第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体とを含む単量体混合物を吸収させつつ重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る第2工程と、
前記第2工程中の種粒子又は第2工程終了後のポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を吸収させることで発泡性樹脂粒子を得る工程を含み、
前記単量体混合物の重合が、第1工程を経て得られた前記粒子中の単量体混合物の重合転化率を85〜95質量%の範囲で60〜150分間維持しつつ行われることを特徴とする発泡性樹脂粒子の製造方法が提供される。
本発明によれば、曲げ弾性率及び圧縮弾性率が大幅に向上した発泡成形体、及びそれを与えうるポリスチレン系樹脂粒子を提供できる。
更に、ポリスチレン系樹脂粒子が、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体との共重合体を含む場合、より曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上した発泡成形体を与えうる樹脂粒子を提供できる。
また、多官能性単量体が、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選択される単量体である場合、より曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上した樹脂粒子を提供できる。
Mw1/Mw2と曲げ弾性率との関係を示すグラフである。 Mz1/Mz2と曲げ弾性率との関係を示すグラフである。 Mw1/Mw2と圧縮弾性率との関係を示すグラフである。 Mz1/Mz2と圧縮弾性率との関係を示すグラフである。
本発明のポリスチレン系樹脂粒子の表層部をGPC法により測定した重量平均分子量Mw1と全体の重量平均分子量Mw2の比(Mw1/Mw2)は1.05〜2.0であり、かつ表層部のZ平均分子量Mz1と粒子全体のZ平均分子量Mz2の比(Mz1/Mz2)は1.05〜1.5である。このポリスチレン系樹脂粒子を、発泡成形体の製造に使用することで、上記要望を満たすことができる。
(ポリスチレン系樹脂粒子)
(1)MwとMz
GPC法により測定される平均分子量には、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)がある。Mnは、高分子化合物に含まれる低分子量物の寄与を敏感に受ける。Mwは、高分子量物の寄与をMnより敏感に受ける。Mzは、高分子量物の寄与をMwより敏感に受ける。本発明では、樹脂粒子の表層部と全体のMwとMzのそれぞれの比が特定の範囲であることにより、曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上した発泡成形体を与えうるポリスチレン系樹脂粒子を提供できることを見出した。
ここで、本明細書での平均分子量は、GPC法により測定されるリニアーなポリスチレン換算の平均分子量(リニアー換算平均分子量)を意味する。
更に、表層部の平均分子量を粒子自体から測定することは困難であるため、本明細書では、粒子から得た発泡成形体の表層部から測定された平均分子量で代えている。これは、発泡成形体の表層部が粒子の表層部の連続体からなっていることを利用している。平均分子量の測定法は、実施例の欄で説明しているが、この測定法によれば、粒子の表面から半径の約30%の領域に対応する平均分子量が測定されていると考える。
(i)Mw
本発明のポリスチレン系樹脂粒子は、1.05〜2.0の表層部の重量平均分子量Mw1と全体の重量平均分子量Mw2の比(Mw1/Mw2)を有している。この比の範囲は、表層部に比較的分子量の大きな樹脂成分が存在していることを意味している。
比Mw1/Mw2が1.05未満の場合、表層部の高分子成分による発泡成形体への曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上効果が十分得られないことがある。2.0より大きい場合、発泡成形体を構成する発泡性粒子間の融着性が低下し、その結果、曲げ弾性率が低下する。より好ましい比Mw1/Mw2は1.1〜1.8の範囲であり、更に好ましい比Mw1/Mw2は1.2〜1.7の範囲である。
Mw1は、18万〜65万の範囲であることが好ましい。Mw1が18万未満である場合、表層部の高分子成分による発泡成形体への曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上効果が十分得られないことがある。一方、65万より大きい場合、発泡成形体を構成する発泡粒子間の融着性が低下し、その結果、曲げ弾性率が低下する。より好ましいMw1は20万〜60万の範囲であり、更に好ましいMw1は20万〜55万の範囲である。
Mw2は、17万〜55万の範囲であることが好ましい。Mw2が17万未満である場合、圧縮強度が低下することがある。55万より大きい場合、発泡成形性が低下するため、発泡成形体を構成する発泡粒子間の融着性が悪化し、その結果、曲げ弾性率が低下することがある。より好ましいMw2は18万〜50万の範囲であり、更に好ましいMw2は19万〜45万の範囲である。
(ii)Mz
本発明のポリスチレン系樹脂粒子は、1.05〜1.5の表層部の重量平均分子量Mz1と全体の重量平均分子量Mz2の比(Mz1/Mz2)を有している。この比の範囲は、表層部に比較的分子量の大きな樹脂成分が存在していることを意味している。
比Mz1/Mz2が1.05未満の場合、表層部の高分子成分による発泡成形体への曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上効果が十分得られないことがある。1.5より大きい場合、発泡成形体を構成する発泡性粒子間の融着性が低下し、その結果、曲げ弾性率及び圧縮弾性率が低下することがある。より好ましい比Mz1/Mz2は1.10〜1.40の範囲であり、更に好ましい比Mz1/Mz2は1.10〜1.30の範囲である。
Mz1は、130万〜200万の範囲であることが好ましい。Mz1が130万未満である場合、表層部の高分子成分による発泡成形体への曲げ弾性率及び圧縮弾性率の向上効果が十分得られないことがある。200万より大きい場合、発泡成形体を構成する発泡粒子間の融着性が低下し、その結果、曲げ弾性率及び圧縮弾性率が低下することがある。より好ましいMz1は140万〜190万の範囲であり、更に好ましいMz1は140万〜180万の範囲である。Mz2は、120万〜190万の範囲であることが好ましい。Mz2が120万未満である場合、圧縮強度が低下することがある。190万より大きい場合、発泡性が低下することがある。より好ましいMz2は120万〜170万の範囲であり、更に好ましいMz2は125万〜165万の範囲である。
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂をいずれも使用できる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体と、このスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよい。このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート等の単官能単量体、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレート系単量体(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、)等の二官能性単量体、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等の三官能性単量体、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の四官能性単量体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのような六官能性単量体等の分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体との共重合体であることが好ましい。このような特定数のビニル基を有する多官能性単量体に由来する樹脂成分を含む樹脂粒子は、より曲げ弾性率や圧縮弾性率に優れた発泡成形体を提供可能である点で好ましい。この理由を発明者は以下のように考えている。
多官能性単量体に由来する樹脂成分を使用した場合、以下で説明するポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であれば、その樹脂成分が表層部に多く存在することになる。多官能性単量体は、表層部に含まれる樹脂中の高分子量成分の割合を増加させる役割を果たし、その結果、特定の範囲のMz及びMwの比を有するポリスチレン系樹脂粒子を容易に提供できる。発明者は、多官能性単量体に由来する樹脂成分が、その全量に対して、30質量%以上表層部に偏在していると考えている。
なお、多官能性単量体を使用しなくても、ポリスチレン系樹脂粒子の製造条件を調整することにより、多官能性単量体を使用した場合と同様の特定の範囲の比のMz及びMwを有するポリスチレン系樹脂粒子を提供することが可能である。
(4)他の樹脂
ポリスチレン系樹脂粒子には、必要に応じかつ本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂が含まれていてもよい。
他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
(5)添加剤
ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、滑剤、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤としては、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等の難燃剤が挙げられる。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
結合防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
融着促進剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
(6)ポリスチレン系樹脂粒子の形状
ポリスチレン系樹脂粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。この内、球状であるのが好ましい。ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.2mm〜5mmの平均粒子径のものを使用できる。また、成形型内への充填性等を考慮すると、平均粒子径は、0.3mm〜2mmがより好ましく、0.3mm〜1.4mmが更に好ましい。
(7)ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法
ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、ポリスチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系単量体を含む単量体混合物を吸収させ重合させることで、樹脂粒子を得ることができる。
(i)種粒子
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(1)ポリスチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(2)水性媒体、スチレン系単量体及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(3)水性媒体及びポリスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系単量体を連続的にあるいは断続的に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体を吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
種粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の平均粒子径に応じて適宜調整できる。例えば平均粒子径が1mmの樹脂粒子を得ようとする場合には、平均粒子径が0.7mm〜0.9mm程度の種粒子を用いることが好ましい。更に、種粒子の重量平均分子量は特に限定されないが10万〜70万が好ましく、更に好ましくは15万〜50万である。
(ii)含浸工程
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、単量体混合物を供給することで、各単量体を種粒子に吸収させる。単量体混合物に含まれる単量体の量は、樹脂粒子中に含まれる単量体に由来する樹脂成分の量にほぼ対応している。
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
使用する各単量体には、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来から単量体の重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存単量体を低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
水性媒体中には、共重合体成分を与える単量体の小滴及び種粒子の分散を安定させるために懸濁安定剤が含まれていてもよい。懸濁安定剤としては、従来から単量体の懸濁重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。そして、前記懸濁安定剤として難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤を併用するのが好ましく、このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルフォン酸塩等のスルフォン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
(iii)重合工程
重合工程は、使用する単量体種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、70〜130℃の加熱を、3〜10時間維持することにより行われる。重合工程は、単量体を含浸させつつ行ってもよい。
重合工程は、使用する単量体全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい。2段階以上に分けるほうが、表層部の平均分子量の調整がより容易である。2段階以上に分けて重合させる場合、通常、含浸工程も2段階に分けて行われる。2段階以上に分けた重合工程の重合温度及び時間は、同一であっても、異なっていてもよい。
2段階で行われる場合、次のように重合工程を調整することが好ましい。
まず、ポリスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン単量体のみを吸収させて前記種粒子内で重合させる(第1工程)。
次に、第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体と多官能性単量体とを含む単量体混合物を吸収させつつ重合を行う(第2工程)。
第2工程において、単量体混合物の重合は、第1工程を経て得られた粒子中の単量体混合物の重合転化率を85〜95質量%の範囲で、60〜150分間維持しつつ行うことが好ましい。重合転化率がこの範囲内であることで、単量体混合物を種粒子の表層部で重合させることができるため、特定の範囲のMzとMwの比を有するポリスチレン系樹脂粒子を容易に提供できる。85質量%より小さい場合、表層部の高分子量成分が少なくなるため、発泡成形体の曲げ強度の向上効果が低下することがある。95質量%より大きい場合、ポリスチレン系樹脂粒子の製造時間が長くなり、製造コストが高くなることがある。好ましい重合転化率は、85〜93質量%の範囲であり、更に好ましい範囲は86〜93質量%である。また、この重合転化率に維持される60〜150分間は、第2工程の全時間の80〜100%を占めることが好ましい。
また、第1工程で使用するスチレン単量体と、第2工程で使用する単量体混合物との合計量に対して、第2工程で使用するスチレン単量体量は、50質量%未満であることが好ましい。50質量%以上の場合、粒子の中心部まで多官能性単量体由来の樹脂成分が含まれてしまうことになり、特定の範囲のMw及びMzの表層部を有するポリスチレン系樹脂粒子を得ることが困難となることがある。第2工程で使用するスチレン単量体量は、45質量%未満であることがより好ましく、40質量%未満であることが更に好ましい。
(発泡性樹脂粒子)
発泡性樹脂粒子は、上記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた粒子である。
(1)発泡剤
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
更に、発泡剤の含有量は、2〜12質量%の範囲であることが好ましい。2質量%より少ないと、発泡性樹脂粒子から所望の密度の発泡成形体を得られないことがある。加えて、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるために、発泡成形体の外観が良好とならないことがある。12質量%より多いと、発泡成形体の製造工程における冷却工程に要する時間が長くなって生産性が低下することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、3〜10質量%である。
(2)発泡性樹脂粒子の製造方法
発泡性樹脂粒子は、上記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより得ることができる。含浸は、重合と同時に湿式で行ってもよく、重合後に湿式又は乾式で行ってもよい。湿式で行う場合は、上記重合工程で例示した、懸濁安定剤及び界面活性剤の存在下で行ってもよい。
例えば、上記(ポリスチレン系樹脂粒子)(7)(iii)の欄で説明した2段階でポリスチレン系樹脂粒子を製造する場合、第2工程中の種粒子又は第2工程終了後のポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を吸収させることで、発泡性樹脂粒子を得ることができる。
発泡剤の含浸温度は、60〜120℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、120℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜110℃である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、アジピン酸イソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
(発泡粒子)
発泡粒子は、水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性樹脂粒子を発泡させることで得られる。発泡粒子は、クッションの充填材等の用途ではそのまま使用でき、更に型内発泡させるための発泡成形体の原料として使用できる。発泡成形体の原料の場合、発泡粒子は予備発泡粒子と、発泡粒子を得るための発泡は予備発泡と、通常称される。
発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.10g/cm3の範囲であることが好ましい。発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、次に得られる発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.10g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
なお、発泡前に、発泡性樹脂粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性樹脂粒子の発泡工程において発泡粒子同士の結合を減少できる。
(発泡成形体)
発泡成形体は、例えば、魚、農産物等の梱包材、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材等に使用できる。本発明によれば、例えば従来の発泡成形体より、同じ厚さであれば曲げ弾性率及び圧縮弾性率が約20%以上増強された(向上した)発泡成形体を提供でき、曲げ弾性率及び圧縮弾性率を同じにすれば約10%軽量化した発泡成形体を提供できる。
発泡成形体の密度は、0.01〜0.10g/cm3の範囲であることが好ましい。発泡成形体の密度が0.01g/cm3より小さい場合、発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡成形体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、密度が0.10g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂粒子の表層部に由来する発泡成形体表層部を有している。つまり、発泡成形体も、1.05〜2.0の比Mw1/Mw2と、1.05〜1.5の比Mz1/Mz2を有している。
(発泡成形体の製造方法)
発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体を製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調整する等して調製できる。
加熱発泡は、例えば、90〜120℃の熱媒体で、5〜50秒加熱することにより行うことができる。より好ましくは、加熱発泡は、95〜115℃の熱媒体で、10〜40秒加熱することにより行うことができる。熱媒体の成形蒸気圧(ゲージ圧)を0.04〜0.15MPaで加熱発泡成形を行うことが、粒子相互の良好な融着性を確保する観点から、好ましい。
発泡粒子は、発泡成形体の成形前に、例えば常圧で、熟成させてもよい。発泡粒子の熟成温度は、20〜60℃が好ましい。熟成温度が低いと、発泡粒子の熟成時間が長くなることがある。一方、高いと、発泡粒子中の発泡剤が散逸して成形性が低下することがある。
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示にすぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、以下において、特記しない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<重合転化率>
重合中の単量体混合物の重合転化率は、下記の要領で測定された値をいう。
即ち、重合中の粒子を反応液中から取り出し、粒子の表面に付着した水分をガーゼによりふき取ることで除去する。
水分が除去された粒子を0.08g精秤し、トルエン25ml中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ml、5重量%のヨウ化カリウム水溶液30ml及び1重量%のでんぷん水溶液30mlを供給して試料とし、この試料をN/40チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定することにより、試料の滴定数(ml)を求める。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素を8.7g及び三塩化ヨウ素を7.9g溶解したものである。
一方、粒子を溶解させることなく、上記と同様に滴定を行うことで、ブランクの滴定数(ml)を求める。
重合転化率は下記式によって算出する。
重合転化率(質量%)
=100−0.1322×[ブランクの滴定数(ml)−試料の滴定数(ml)]÷試料の質量[g]
<平均分子量>
樹脂粒子表層部のMz及びMwは、発泡成形体の表層部として算出する。
即ち、発泡成形体は、樹脂粒子を予備発泡させて、型内成形したものであるから、樹脂粒子表層部は発泡成形体表層部に相当し、本発明では樹脂粒子表層部の平均分子量を発泡成形体表層部の平均分子量とする。
発泡成形体を50℃で24時間乾燥後、ハムスライサー(富士島工機製:FK−18N型)を用い、発泡成形体の表層部を0.2〜0.3mmでカットしGPC測定用サンプルとする。
上記サンプル0.003gをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、下記の条件にてGPC測定を行う。
・装置:高速GPC装置(HLC−8320GPC)EcoSEC-WorkStation(東ソー社製)
・分析条件
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−M×2
流量:0.35ml/分
検出器:HLC−8320GPC内蔵RI検出器/UV−8320
検出器条件:Pol(+),Res(0.5秒)/λ(254nm),Pol(+),Res(0.5秒)
濃度:0.2質量%
注入量:10μL
圧力:3.5MPa
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
なお、樹脂粒子全体の平均分子量は、粒子0.003gをテトラヒドロフラン10mlに溶解した後、上記と同様に測定して得られる。
<予備発泡粒子の嵩密度>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
<発泡成形体の密度>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
<曲げ弾性率、圧縮弾性率>
発泡成形体をJIS A9511:1999「発泡プラスチック保温材」に記載の方法に準拠してサンプルを作成し測定を行う。具体的には密度0.033g/cm3の発泡成形体から縦75mm×横300mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片をテンシロン測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、圧縮速度10mm/分、支点間距離200mm、加圧くさび10R及び支持台10Rの条件下にて個別曲げ弾性率を測定する。試験片を5個用意し、各試験片ごとに前記要領で個別曲げ弾性率を測定し、それらの相加平均を曲げ弾性率とする。
曲げ弾性率測定条件:荷重(fs%)開始点=0.0、終了点=20.0、ピッチ=0.2(fs%)
また、発泡成形体から縦100mm×横100mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片をテンシロン測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、圧縮速度10mm/分にて個別圧縮弾性率の測定を行う。試験片を5個用意し、各試験片ごとに前記要領で個別圧縮弾性率を測定し、それらの相加平均を圧縮弾性率とする。
得られた曲げ弾性率及び圧縮弾性率を以下の基準で評価する。
評価:
曲げ弾性率が30.0MPa以上、かつ圧縮圧縮弾性率が10.0MPa以上の場合:○
上記以外:×
<熱融着性>
縦300mm×幅400mm×高さ30mmの発泡成形体を24時間乾燥させた後、長さ方向の中央部で半分に破断する。その破断面における発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断している粒子の数(a)と粒子どうしの界面で破断している粒子の数(b)とを数える。得られた数値を式[(a)/((a)十(b))]×100に代入して得られた値を融着率(%)とする。
(実施例1)
内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、水10000g、重量平均分子量が30万であるポリスチレン樹脂(平均粒子径0.75mm)の種粒子2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム10gを供給して撹拌しつつ72℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド24.5g、t−ブチルパーオキシベンゾエート3.2gをスチレン単量体1000gに溶解させた溶液作成し、水1000g、ピロリン酸マグネシウム5g及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム1gの混合液にホモミキサーにて分散させた。次いで重合容器に全量を撹拌しつつ供給した。
そして、分散液中に前記溶液を供給し終えてから60分経過後に、この分散液を88℃まで1時間かけて昇温しながら、スチレン単量体2660g一定速度で重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら反応を行った。(第1工程)
次いで、分散液を88℃で保持しながらスチレン単量体4000gにジビニルベンゼン(2官能単量体、分子量130)1.2gを溶解したものを一定速度で90分かけて重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら反応を行った。(第2工程)
尚、第2工程中で、種粒子の重合転化率が85質量%から95質量%の範囲となる時間は、第2工程中90分であった(全第2工程時間90分)。次いで、反応液を120℃まで昇温し、かつ60分保持することで未反応の単量体を反応させた。
次に分散液を100℃に保持し、重合容器内にジイソブチルアジペート50g、ブタン600gを圧入して3時間に亘って保持することにより、樹脂粒子中にブタンを含浸させた。この後、重合容器内を25℃に冷却して発泡性樹脂粒子を得た。発泡性樹脂粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性樹脂粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。塗布後、発泡性樹脂粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。
そして、発泡性樹脂粒子を加熱して嵩密度0.033g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。次に、予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの発泡成形体を得た。発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.033g/cm3(33.3kg/m3)であった。発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
得られた発泡成形体を50℃で24時間乾燥後、ハムスライサー(富士島工機製:FK−18N型)を用い、発泡成形体の表層部を0.2mmでカットし、この成形体表層部のGPC測定を行った。この表層部のMw1は42.5万、Mz1は165.3万であった。一方、得られたポリスチレン系樹脂粒子全体をGPC測定した結果、Mw2が36.4万、Mz2が143.1万であった。この発泡成形体の曲げ試験、及び圧縮試験をJIS−A9511に準拠して測定した。
(実施例2)
第2工程において反応温度を86℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。
(実施例3)
第2工程において反応温度を85℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。
(実施例4)
第2工程において反応温度を90℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。
(実施例5)
ジビニルベンゼンの代わりにトリメチロールプロパントリメタクリレート12gを使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
(実施例6)
ジビニルベンゼンの代わりにエトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート5g及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート15gを使用したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
(比較例1)
第2工程において反応温度を84℃とした以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。第2工程中で、種粒子の重合転化率が85質量%から95質量%の範囲となる時間は、第2工程中45分であった(全第2工程時間90分)。結果、表層部の分子量が低く良好な強度を有する発泡成形体が得られなかった。
(比較例2)
第2工程において反応温度を83℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。第2工程中で、種粒子の重合転化率が85質量%から95質量%の範囲となる時間は、第2工程中50分であった(全第2工程時間90分)。結果、表層部の分子量が低く、良好な強度を有する発泡成形体が得られなかった。
(比較例3)
第2工程において反応温度を92℃とし、第2工程のスチレン単量体とジビニルベンゼン混合物の滴下を一定速度で180分かけて添加した以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。第2工程中で、種粒子の重合転化率が85質量%から95質量%の範囲となる時間は、第2工程中180分であった(全第2工程時間180分)。結果、表層部の分子量が高くなりすぎ、内部融着の低下が起こり、良好な強度を有する発泡成形体が得られなかった。
実施例及び比較例の結果を表1及び2にまとめて示す。
表1、2の結果を用いて、Mw1/Mw2と曲げ弾性率との関係を図1に、Mz1/Mz2と曲げ弾性率との関係を図2に、Mw1/Mw2と圧縮弾性率との関係を図3に、Mz1/Mz2と圧縮弾性率との関係を図4に示す。これら図中、●は実施例を、○は比較例を意味する。
表1、図1及び2から、Mw1/Mw2が1.05〜2.0の範囲及びMz1/Mz2が1.05〜1.5の範囲であれば、曲げ弾性率を顕著に向上できることが分かる。
表1、図3及び4から、Mw1/Mw2が1.05〜2.0の範囲及びMz1/Mz2が1.05〜1.5の範囲であれば、圧縮弾性率を顕著に向上できることが分かる。

Claims (8)

  1. GPC法により測定される表層部の重量平均分子量Mw1と全体の重量平均分子量Mw2の比(Mw1/Mw2)が1.05〜2.0であり、かつ前記表層部のZ平均分子量Mz1と前記全体のZ平均分子量Mz2の比(Mz1/Mz2)が1.05〜1.5であって、前記Mw2が17万〜55万、前記Mz2が120万〜190万であることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子。
  2. 前記ポリスチレン系樹脂粒子が、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体との共重合体を含む請求項1に記載のポリスチレン系樹脂粒子。
  3. 前記多官能性単量体が、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選択される単量体である請求項2に記載のポリスチレン系樹脂粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリスチレン系樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性樹脂粒子。
  5. 請求項4に記載の発泡性樹脂粒子を発泡させて得られ、0.01〜0.10g/cm3の嵩密度を有する発泡粒子。
  6. 請求項5に記載の発粒子を型内で成形して得られ、0.01〜0.10/cm3の密度を有する発成形体。
  7. 請求項2又は3に記載のポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
    ポリスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン単量体のみを吸収させて前記種粒子内で重合させる第1工程と、
    前記第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体とを含む単量体混合物を吸収させつつ重合を行う第2工程とを含み、
    前記単量体混合物の重合が、第1工程を経て得られた前記粒子中の単量体混合物の重合転化率を85〜95質量%の範囲で60〜150分間維持しつつ行われることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
  8. 請求項4に記載の発泡性樹脂粒子の製造方法であり、ポリスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン単量体のみを吸収させて前記種粒子内で重合させる第1工程と、前記第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系単量体と分子中に2〜6個のビニル基を有する多官能性単量体とを含む単量体混合物を吸収させつつ重合を行うことでポリスチレン系樹脂粒子を得る第2工程と、前記第2工程中の種粒子又は第2工程終了後のポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を吸収させることで発泡性樹脂粒子を得る工程とを含み、
    前記単量体混合物の重合が、第1工程を経て得られた前記粒子中の単量体混合物の重合転化率を85〜95質量%の範囲で60〜150分間維持しつつ行われることを特徴とする発泡性樹脂粒子の製造方法。
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