JP5918654B2 - 発泡成形体及び樹脂発泡容器 - Google Patents
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Description
この倍数差について発明者等は、更に検討したところ、発泡成形体全体の倍数と発泡成形体表層部の倍数との差が所定の範囲であれば、圧縮強度を向上できることを見出し、発明を完成するに至った。
前記領域が、その全体の倍数をW1及びその表層部の倍数をW2とした場合、0倍以上、6倍未満の差(W1−W2)の関係を有し、
前記発泡ポリスチレン系樹脂粒子が、中心部にスチレン系単量体と単官能アクリル酸エステルの重合体に由来する樹脂成分を表層部より多く含むポリスチレン系樹脂粒子からの発泡粒子であり、
前記発泡成形体は、前記領域が底部に位置する樹脂発泡容器であることを特徴とする発泡成形体が提供される。
更に、本発明によれば、上記発泡成形体を少なくとも含む樹脂発泡容器が提供される。
また、倍数W1が、5〜100倍である場合、より圧縮強度の向上した発泡成形体を提供できる。
更に、発泡ポリスチレン系樹脂粒子が、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸し、次いで発泡させることにより得られ、
前記ポリスチレン系樹脂粒子が、中心部にスチレン系単量体と単官能アクリル酸エステルの重合体に由来する樹脂成分を表層部より多く含む場合、より圧縮強度の向上した発泡成形体を提供できる。
領域が樹脂発泡容器の底部に位置する場合、圧縮強度の向上により、輸送時の底抜けを防止できる。
本発明の発泡成形体は、複数の発泡ポリスチレン系樹脂粒子の融着体であり、0.5〜10cmの厚さの領域を少なくとも有している。この0.5〜10cmの厚さの領域は、その全体の倍数をW1及びその表層部の倍数をW2とした場合、0倍以上、6倍未満の差(W1−W2)を有している。発泡成形体は、例えば、魚、農産物等の梱包材や樹脂発泡容器、床断熱用の断熱材、盛土材、畳の芯材等に使用できる。
特定の倍数差を有する0.5〜10cmの厚さの領域は、発泡成形体の少なくとも1部に存在すればよく、この領域以外は10cmより厚くてもよく、発泡成形体全体がこの厚さの領域からなっていてもよい。ここで、0.5〜10cmの厚さとした理由は、発泡成形体を例えば容器形状とした場合、底割れ防止のための圧縮強度の向上が望まれているためである。なお、この領域は、1〜8cmの範囲の厚さであることがより好ましい。
W1は、5〜100倍であることが好ましい。5倍未満の場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。100倍より大きい場合、圧縮強度の向上効果が十分でないことがある。加えて発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。W1は、より好ましくは20〜90倍であり、更に好ましくは30〜80倍である。
W2は、5〜96倍であることが好ましい。5倍未満の場合、軽量性が低下することがある。96倍より大きい場合、圧縮強度が低下することがある。
(a)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂はスチレン系モノマー由来の樹脂成分を含む。スチレン系モノマーとしては、特に限定されず、公知のモノマーをいずれも使用できる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。これらスチレン系モノマーは、一種類でも、複数種の混合物であってもよい。好ましいスチレン系モノマーは、スチレンである。
発泡成形体は、スチレン系モノマー由来の樹脂成分のみからなっていてもよいが、より圧縮強度を向上させる観点から単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分を更に含むことが好ましい。
単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分は、スチレン系モノマー由来の樹脂成分と共重合していてもよく、共重合していなくてもよい。より圧縮強度を向上させる観点から、共重合していることが好ましい。
共重合可能な単官能アクリル酸エステルとしては、炭素数3〜20のエステル部分を有するモノマーが挙げられる。この範囲の炭素数のエステルのモノマーを使用することで、より圧縮強度が改善された発泡成形体を提供できる。具体的な単官能アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル等が挙げられる。炭素数3以上のアルキル基は、直鎖状のアルキル基以外に、イソ構造、sec構造やtert構造のような構造異性のアルキル基も含む。
ポリスチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系モノマー由来の樹脂成分と単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分の割合は、1:0.05〜0.25(質量比)の範囲であることが好ましい。
単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分が0.05より少ない場合、所望の強度の発泡成形体を得るには発泡成形時の蒸気圧を高く維持する必要があり、省エネルギー性に劣ることがある。0.25より多い場合、高倍の発泡成形体を得ることが困難となることがある。
なお、上記モノマー由来の樹脂成分の割合は、原料としてのモノマーの割合と実質的に一致している。
発泡成形体は、複数の発泡ポリスチレン系樹脂粒子の融着体からなる。融着前の発泡ポリスチレン系樹脂粒子(予備発泡粒子)は、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸し、次いで発泡させることにより得られる。このポリスチレン系樹脂粒子は、単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分が下記する分布で存在する粒子であることが、圧縮強度をより向上させる観点から好ましい。
単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分は、種々の方法で存在位置を確認できる。その一方法として、全反射吸収(Attenuated Total Reflectance)を利用する一回反射型ATR法により赤外吸収スペクトルを測定する分析方法がある。この分析方法は、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外線を試料に照射し、ATRプリズムからの出射光を分光分析する方法である。
ATR法では、測定された、赤外吸収スペクトル中、1600cm-1での吸光度D1600に対する1735cm-1での吸光度D1735の比D1735/D1600(以下、吸光度比)により、単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分の存在位置を確認できる。ここで、1735cm-1の吸収は単官能アクリル酸エステルに含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来するピークを示している。1600cm-1の吸収はポリスチレン系樹脂に含まれるベンゼン環の面内振動に由来するピークの存在を示している。
ポリスチレン系樹脂粒子の半径50%の部分の吸光度比は、0.15〜0.65の範囲であることが好ましい。吸光度比が0.15未満の場合、所望の圧縮強度の発泡成形体を得るには発泡成形時の蒸気圧を高く維持する必要があり、省エネルギー性に劣ることがある。吸光度比が0.65より大きい場合、圧縮強度に優れた発泡成形体が得られないことがある。好ましい吸光度比は0.20〜0.60の範囲であり、より好ましい吸光度比は0.20〜0.50の範囲である。
他の成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル等の樹脂成分が挙げられる。
また、物性を損なわない範囲内において、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、滑剤、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの有機過酸化物が挙げられる。
滑剤としては、パラフィンワックス、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
結合防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルシリコン等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
気泡調整剤としては、メタクリル酸エステル系共重合ポリマー、エチレンビスステアリン酸アミド、ポリエチレンワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
発泡成形体は、例えば以下の方法により得ることができる。
予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、熱媒体(例えば、加圧水蒸気等)で加熱発泡させ、予備発泡粒子間の空隙を埋めると共に、予備発泡粒子を相互に融着させることにより一体化させることで、発泡成形体を製造できる。その際、発泡成形体の密度は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量、蒸気量、成形時間等を調整する等して調製できる。
予備発泡粒子は、ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸して発泡性粒子を得、発泡性粒子を発泡させることにより得られる。
ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、ポリスチレン系樹脂からなる種粒子に、スチレン系モノマーを含むモノマー混合物を吸収させ重合させることで、樹脂粒子を得ることができる。
種粒子は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、例えば、(i)ポリスチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、ストランド状に押し出し、ストランドをカットすることにより種粒子を得る押出方法、(ii)水性媒体、スチレン系モノマー及び重合開始剤をオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内において加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを懸濁重合させて種粒子を製造する懸濁重合法、(iii)水性媒体及びポリスチレン系樹脂粒子をオートクレーブ内に供給し、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させた後、オートクレーブ内を加熱、攪拌しながらスチレン系モノマーを連続的にあるいは断続的に供給して、ポリスチレン系樹脂粒子にスチレン系モノマーを吸収させつつ重合開始剤の存在下にて重合させて種粒子を製造するシード重合法等が挙げられる。
また、種粒子は一部、又は全部に樹脂回収品を用いることができる。回収品を使用する場合は、押出方法による種粒子の製造が向いている。
種粒子を水性媒体中に分散させてなる分散液中に、モノマー混合物を供給することで、各モノマーを種粒子に吸収させる。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
使用する各モノマーには、重合開始剤を含ませてもよい。重合開始剤としては、従来からモノマーの重合に用いられているものであれば、特に限定されない。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これら開始剤の内、残存モノマーを低減させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が80〜120℃にある異なった二種以上の重合開始剤を併用することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
重合工程は、使用するモノマー種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、70〜130℃の加熱を、3〜10時間維持することにより行われる。重合工程は、モノマーを含浸させつつ行ってもよい。
重合工程は、使用するモノマー全量を1段階で重合させてもよく、2段階以上に分けて重合させてもよい(種粒子の製造時の重合を含む)。2段階以上に分けるほうが、単官能アクリル酸エステル由来の樹脂成分の存在位置の調整がより容易である。
まず、ポリスチレン系樹脂の種粒子に、スチレン系モノマーと単官能アクリル酸エステルを含む第1モノマー混合物を吸収させて種粒子内で重合させる(第1工程)。
次に、第1工程を経て得られた粒子に、スチレン系モノマーを吸収させつつ重合させる(第2工程)。ここで、単官能アクリル酸エステルは1〜30分かけて、それぞれ重合容器に添加することが好ましい。
ポリスチレン系樹脂粒子の形状は特に限定されない。例えば、球状、円柱状等が挙げられる。この内、球状であるのが好ましい。ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.2mm〜5mmの平均粒子径のものを使用できる。また、成形型内への充填性等を考慮すると、平均粒子径は、0.3mm〜2mmがより好ましく、0.3mm〜1.4mmが更に好ましい。
発泡性粒子は、上記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた粒子である。
発泡剤としては、特に限定されず、公知のものをいずれも使用できる。特に、沸点がポリスチレン系樹脂の軟化点以下であり、常圧でガス状又は液状の有機化合物が適している。例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡成形体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭化水素の内、沸点が−45〜40℃の炭化水素がより好ましく、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン等が更に好ましい。
発泡剤の含浸温度は、60〜120℃が好ましい。60℃より低いと、樹脂粒子に発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなって生産効率が低下することがある。また、120℃より高いと、樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。より好ましい含浸温度は、70〜110℃である。
発泡助剤を、発泡剤と併用してもよい。発泡助剤としては、アジピン酸イソブチル、トルエン、シクロヘキサン、エチルベンゼン等が挙げられる。
予備発泡粒子は、水蒸気等を用いて所望の嵩密度に発泡性粒子を発泡させることで得られる。
予備発泡粒子の嵩密度は、0.01〜0.20g/cm3の範囲であることが好ましい。予備発泡粒子の嵩密度が0.01g/cm3より小さい場合、圧縮強度の向上効果が十分でないことがある。加えて発泡成形体に収縮が発生して外観性が低下することがある。一方、嵩密度が0.20g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。
なお、発泡前に、発泡性粒子の表面に、ステアリン酸亜鉛のような粉末状金属石鹸類を塗布しておくことが好ましい。塗布しておくことで、発泡性粒子の発泡工程において発泡粒子同士の結合を減少できる。
<重量平均分子量>
樹脂粒子0.08gをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、下記の条件にてGPC測定を行うことで重量平均分子量を得る。
・分析条件
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−M×2
流量:0.35ml/min
検出器:HLC−8320GPC内蔵RI検出器/UV−8320
検出器条件:Pol(+)、Res(0.5s)/λ(254nm)、Pol(+)、Res(0.5s)
濃度:0.2wt%
注入量:10μL
圧力:3.5MPa
カラム温度:40℃
システム温度:40℃
溶離液:THF
ポリスチレン系樹脂粒子の中心部及び半径の50%部分の吸光度比(D1735/D1600)を次の要領で測定する。
無作為に選択した10個の粒子について、赤外分光分析ATR測定法により粒子断面分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、試料表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。
各赤外吸収スペクトルから個別吸光度比(D1735/D1600)をそれぞれ算出し、相加平均を吸光度比とする。
吸光度D1735及びD1600は、Nicolet社から商品名「フーリエ変換赤外分光分析計 MAGNA560」で販売されている測定装置と、ATRアクセサリーとしてSpectra−Tech社製「サンダードーム」を用いて次の条件で測定する。
高屈折率結晶種:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°±1°
測定領域:4000cm-1〜675cm-1
測定深度の端数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:DTGS KBr
分解能:4cm-1
積算回数:32回
その他:試料と接触させずに赤外線吸収スペクトルを下記条件で測定する。測定されたスペクトルをバックグラウンドとする。試料の測定時には、バックグラウンドが測定スペクトルに関与しないように、測定データを処理する。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって、赤外吸収スペクトルの強度が変化する。そのため、ATRアクセサリーの「サンダードーム」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行う。
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm-1〜650cm-1
検出器:MCT
分解能:8cm-1
スキャン/ピクセル:60回
その他:試料の近傍の試料の無い部分のフッ化バリウム結晶を測定した赤外吸収スペクトルをバックグランドとして測定スペクトルに関与しない処理を実施
なお、赤外吸収スペクトルから得られる1735cm-1での吸光度D1735は、上記エステルに含まれるエステル基のC=O間の伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、1735cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度D1735は、1680cm-1と1785cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、1680cm-1と1785cm-1間の最大吸光度を意味する。
中心部の吸光度比(D1735/D1600)を次の要領で測定する。
無作為に選択した10個の粒子をエポキシ樹脂台座に固定する。次いで、粒子をウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ製、LEICA ULTRACUT UCT)を用いてダイヤモンドナイフによって、ほぼ中心を通って約10μm厚みにスライスすることで、スライスサンプルを得る。得られたスライスサンプルを2枚のフッ化バリウム結晶(ピュアーオプテックス社製)で挟む。これを測定試料とする。
スライスサンプルの画像を、下記測定装置付属のCCDで取り込む。画像の取り込みは、ウルトラミクロトームの刃の進行方向をY軸とし、それに対して垂直方向をX軸として行う。スライスサンプル中の粒子は、刃の進行方向に、極僅かに潰れが発生している。取り込まれる画像のY軸を刃の進行方向に合わせることで、測定される吸光度比がバラツクことを抑制する。
測定条件
モード:透過
ピクセルサイズ:6.25μm
測定領域:4000cm-1〜650cm-1
検出器:MCT
分解能:8cm-1
スキャン/ピクセル:2回
次に、画像中に、中心点Aを通り、X軸に平行な直線を引く。この直線が、粒子(樹脂)が存在する末端の位置(X軸の最大値)と交わる点を点Dとする。点Aと点Dを結ぶ線上の赤外吸収スペクトルをX座標値で12±2μmごとに抽出する。尚、本発明での半径50%部分とは、A点からD点までの距離の50%の部分をいい、±20μmの範囲内におさまるようにする。
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的には、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から金型で成形した厚みをサンプル厚みとし、任意の面積を持った試験片(例:50mm×50mm×厚み30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(b)/(a)により発泡成形体の倍数W1(倍)を求める(密度は式(a)/(b)で求められる)。
次いで、試験片を厚み方向に4等分し、最表層を含む表裏2つの分割区分を表層部として採取する。前記と同様にして最表層部のそれぞれの倍数を得、相加平均にて最表層部の倍数W2(倍)を算出する。
発泡成形体の圧縮強度をJIS A9511:1999「発泡プラスチック保温材」に記載の方法に準拠して測定する。具体的には、密度16.7kg/m3の発泡体から縦50mm×横50mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。しかる後、この試験片を圧縮強度測定器(オリエンテック社製商品名「UCT−10T」)を用いて、圧縮速度10mm/分にて厚み方向について5%圧縮した強度を測定する。試験片を5個用意し、試験片ごとに前記要領で圧縮強度を測定し、その相加平均を平均圧縮強度とする。
評価:5%圧縮強度が0.10MPa以上:○
0.10MPa未満:×
(種粒子の製造)
内容量100リットルの攪拌機付き重合容器に、水40000質量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム100質量部及びアニオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.0質量部を供給し攪拌しながらスチレン40000質量部並びに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド96.0質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート28.0質量部を添加した上で90℃に昇温して重合した。そして、この温度で6時間保持し、更に、125℃に昇温してから2時間後に冷却してポリスチレン系樹脂粒子(a)を得た。
次に、内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、ポリスチレン系樹脂(b)の種粒子2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10gを供給して撹拌しつつ72℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド45.9g、t−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gをスチレン850g、アクリル酸n−ブチル150gの混合物に溶解させた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。
その後にこの分散液を108℃まで150分かけて昇温しながら、スチレン6650gを一定速度で重合容器に投入し、種粒子に吸収させながら反応を行った(第2工程)。
更に分散液を120℃まで昇温しかつ、60分保持することで未反応のモノマーを反応させた。次いで、反応容器より平均粒子径1.0mmのポリスチレン系樹脂粒子を採取した。この樹脂粒子をATR法赤外分光分析に付して1735cm-1での吸光度D1735と1600cm-1での吸光度D1600とを求め、D1735/D1600を算出した。結果、中心部の吸光度比は0.70であり、半径の50%の部分の吸光度比は0.51であった。更にこのポリスチレン系樹脂粒子全体のMwは24万であった。
得られたポリスチレン系樹脂粒子の中心部から表層までの吸光度比の変化を図2に示す。
そして、発泡性粒子を加熱して嵩密度0.017g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。
次に、予備発泡粒子を次の条件で成形し、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの発泡成形体を得た。
成形機:積水工機製 ACE−3SP
成形蒸気圧:0.04MPa
金型加熱:3秒
一方加熱:5秒
両面加熱:10秒
水冷:5秒
得られた発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.017g/cm3(17kg/m3)であった。発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
発泡成形体の圧縮試験をJIS−A9511に準拠して測定した結果、圧縮強度は0.12MPaと優れていた。
第1工程に使用するスチレンを900g、アクリル酸n−ブチルを100gとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。倍数差(W1−W2)を測定した結果、1倍であった。圧縮強度は0.13MPaと優れていた。
予備発泡粒子を金型内に充填して0.06MPaの蒸気圧で加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの発泡成形体を得たこと以外は、実施例1と同様に発泡成形体を得た。倍数差(W1−W2)を測定した結果、5倍であった。圧縮強度は0.11MPaと優れていた。
内容積25Lの撹拌機付き重合容器に、ポリスチレン系樹脂(b)の種粒子2350g、ピロリン酸マグネシウム30g及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10gを供給して撹拌しつつ72℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド45.9g、t−ブチルパーオキシベンゾエート6.1gをスチレン1000g、ジイソブチルアジペート50gの混合物に溶解させた溶液を全て前記分散液中に撹拌しつつ供給した。
更に分散液を120℃まで昇温しかつ、60分保持することで未反応のモノマーを反応させた。このポリスチレン系樹脂粒子全体のMwは24万であった。得られたポリスチレン系樹脂粒子の中心部から表層までの吸光度比の変化を図2に示す。
発泡性粒子の表面に、帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した。この後、更に、発泡性粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。塗布後、発泡性粒子を13℃の恒温室にて5日間放置した。
そして、発泡性粒子を加熱して嵩密度0.017g/cm3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。予備発泡粒子を20℃で24時間熟成させた。
成形機:積水工機製 ACE―3SP
成形蒸気圧:0.04MPa
金型加熱:3秒
一方加熱:10秒
両面加熱:15秒
水冷:5秒
発泡成形体を50℃の乾燥室で6時間乾燥した後、密度を測定したところ、0.017g/cm3(17kg/m3)であった。発泡成形体は、収縮もなく外観も優れていた。
発泡成形体の圧縮試験をJIS−A9511に準拠して測定した結果、圧縮強度は0.12MPaと優れていた。
第1重合工程で、アクリル酸ブチルを使用せず、スチレンのみを使用したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。ポリスチレン系樹脂粒子全体のMwは24万であり、発泡成形体表層のMwは33万であった。発泡成形体は、0.04MPaの成形蒸気圧での発泡粒子の融着ができす、発泡成形体として使用できるものではなかった。
比較例1において、成形蒸気圧を0.08MPaとしたこと以外は比較例1と同様に発泡成形体を得た。この発泡成形体は、発泡粒子間の融着に優れるものであった。倍数差(W1−W2)を測定した結果、7倍であった。圧縮強度は0.09MPaと劣っていた。
実施例1において、成形蒸気圧を0.08MPaとしたこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。倍数差(W1−W2)を測定した結果、8倍であった。圧縮強度は0.09MPaと劣っていた。
実施例1〜4及び比較例1〜3の結果を表1にまとめて示す。
Claims (3)
- 複数の発泡ポリスチレン系樹脂粒子の融着体である発泡成形体であり、前記発泡成形体が0.5〜10cmの厚さの領域を少なくとも有し、
前記領域が、その全体の倍数をW1及びその表層部の倍数をW2とした場合、0倍以上、6倍未満の差(W1−W2)の関係を有し、
前記発泡ポリスチレン系樹脂粒子が、中心部にスチレン系単量体と単官能アクリル酸エステルの重合体に由来する樹脂成分を表層部より多く含むポリスチレン系樹脂粒子からの発泡粒子であり、
前記発泡成形体は、前記領域が底部に位置する樹脂発泡容器であることを特徴とする発泡成形体。 - 前記倍数W1が、5〜100倍である請求項1に記載の発泡成形体。
- 請求項1又は2に記載の発泡成形体を少なくとも含む樹脂発泡容器。
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