JP5823377B2 - 測定系外成分による干渉を低減させる方法 - Google Patents

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Description

本発明は、測定対象物質に対する高親和性物質あるいは測定対象物質を担持させたラテックス粒子を用いるラテックス免疫凝集測定法において、シリコーン化合物の存在下にラテックス免疫凝集反応を行うことを特徴とする、測定系外成分、特に測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の測定系への干渉を低減させる方法および該干渉を低減させる方法に用いられる試薬ならびに該干渉を低減させたラテックス免疫凝集測定法に関する。
生体試料中の測定対象物質(以下、目的成分ということがある)の測定方法として、ラテックス免疫凝集法(ラテックス免疫凝集比濁法)(以下、LTIA法ということがある)が臨床検査の分野で繁用されている。LTIA法は、例えば、目的成分に対する抗体を担持させたラテックス粒子(以下、抗体担持ラテックス粒子ということがある)を用い、目的成分である抗原と抗体担持ラテックス粒子とが結合することによって生じるラテックス粒子の凝集(濁り)の程度を光学的手段(例えば、透過光を測定する比濁法、散乱光を測定する比朧法など)などにより検出する測定方法である。
LTIA法に限らず、免疫学的測定系に対して、界面活性剤様の物質が干渉を与えることは公知である。特定の界面活性剤が免疫学的測定系中に存在する場合、抗原抗体反応それ自体を阻害したり、該抗原抗体反応によって形成された抗原−抗体間の結合を解離させてしまうなどの問題を生じることがある。LTIA法は、抗原抗体反応が一つの液相中で行われるホモジーニアス測定法であり、抗体担持ラテックス粒子などの測定系を構成する材料が界面活性剤に曝される環境が測定中継続してしまうため、例えば、界面活性剤による、測定対象物質自体の構造変化の惹起、測定対象物質との複合体形成、抗体担持ラテックス粒子への非特異的吸着、ラテックス粒子に担持されていた抗体やブロッキング用タンパク質の剥離などの測定系への干渉が、複合して発生する場合もある。
生体試料として血液(全血、血清、血漿)を使用する場合、被検者からの採血が行われるが、その際に、血液(血餅)が採血管内壁に吸着したり、採血管内やキャップ部で起泡したり、血清を得るための凝固が不十分であったり、血清層と血球層との分離が不十分であったりすることを防ぐため、採血管の内壁やキャップにそれぞれを防止するための成分(以下、採血管処理剤ということがある)が塗布されている場合がある。ある種のシリコーン化合物は、それ自身が採血管処理剤として使用されるほか、シリコーン化合物以外の採血管処理剤を内壁やキャップに塗布するための媒体として使用されることもある。
採血管の内壁に塗布されている成分のLTIA法への干渉については、いくつかの報告がある。非特許文献1は、市販微量採血管により得た測定試料をLTIA法で測定した場合に、測定値の低下が観察されたことを報告している。そして、その原因物質として採血管の内壁から遊離する水溶性シリコーンを挙げ、測定試料に水溶性シリコーンを添加して複数のLTIA試薬で測定した結果を記載している。さらに、非特許文献1は、界面活性剤(Brij(登録商標)35、Tween(登録商標)20、Triton(登録商標)X−100)を測定試料に添加した際の干渉についても検討し、水溶性シリコーンと同様に測定値の低下が観察されたことを報告している。非特許文献2は、複数の採血管により得た測定試料を、複数のLTIA試薬で測定し、非特許文献1と同様に微量採血管により得た測定試料を測定した場合に、測定値の低下が観察されたことを報告し、ここでも、原因物質として採血管の内壁から遊離する水溶性シリコーンを挙げている。
微量採血管は、成人と比較して体重の少ない新生児などから採血をする場合に用いられるものであるが、微量採血管を使用した場合であっても、容易に所定量の採血を行うことができず、所定量より少ない採血になってしまう場合がある。このような場合、採血管処理剤の測定試料中での濃度は増加することになり、測定系への干渉が顕著になることが予想される。
また、非特許文献1で検討された界面活性剤は、ELISAをはじめとする免疫学的測定法における非特異反応防止剤や洗浄剤として使用される一方、臨床検査で用いられる生化学自動分析装置においては、測定試料や試薬を分注・撹拌するためのプローブ、試薬の流路、繰り返し使用する反応槽の洗浄剤としても繁用されており、前記自動分析装置での使用が前提となっているLTIA試薬においては、測定系への界面活性剤の混入による干渉に注意を払わなければならない。
このような事情にもかかわらず、いまだこれらの界面活性剤による干渉を回避する方法、特に微量採血管より得た測定試料をLTIA法で測定する場合の界面活性剤による干渉を低減する方法についての報告はない。
非特許文献1 医学検査、第49巻第10号(2000年)、1399頁〜1403頁
非特許文献2 岡山衛生検査 第40巻第2号(2003年)、6頁〜10頁
本発明は、測定対象物質に対する高親和性物質あるいは測定対象物質を担持させたラテックス粒子を用いるラテックス免疫凝集測定法において、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の測定系への干渉を低減させる方法および該干渉を低減させる方法に用いられる試薬ならびに該干渉を低減させたラテックス免疫凝集測定法の提供を課題とする。
本発明者らは、LTIA法における上記課題を解決するため、さまざまな視点から検証を試み、鋭意研究をおこなったところ、全く意外なことに、非特許文献1、2において干渉の原因とされている水溶性シリコーンと、分類上は同じシリコーン化合物にあたるポリエーテル変性シリコーンオイルの存在下にラテックス免疫凝集反応を行うと、測定系外より混入する微量採血管由来成分による測定系への干渉を低減させることができることを見出した。さらに意外なことに、ポリエーテル変性シリコーンオイルの存在下にラテックス免疫凝集反応を行うと、水溶性シリコーン類とは、その構造が相違する界面活性剤(Brij(登録商標)35、Tween(登録商標)20、Triton(登録商標)X−100)による干渉をも低減させることができることを見出し本発明を完成させた。
本発明は、以下の構成を有する。
(1)ラテックス免疫凝集法において、シリコーン化合物の存在下にラテックス免疫凝集反応を行うことを特徴とする、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の測定系への干渉を低減させる方法。
(2)シリコーン化合物が、ポリエーテル変性シリコーンオイルを含有するものである、(1)に記載の方法。
(3)ラテックス試液にシリコーン化合物を含有させることによりシリコーン化合物を存在させる、(1)または(2)に記載の方法。
(4)ラテックス試液にシリコーン化合物を含有させる方法が、ブロッキング処理によるものである、(1)ないし(3)に記載の方法。
(5)シリコーン化合物のラテックス免疫凝集反応時の濃度が0.0001〜1%である(1)ないし(4)に記載の方法。
(6)以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法において、混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の干渉を低減させる方法:
生体由来の測定対象物質及び前記混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤を含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子、およびii)シリコーン化合物を接触させる工程、及び
当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程。
(7)以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法:
生体由来の測定対象物質を含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子、およびii)シリコーン化合物を接触させる工程;
(8)以下の構成要素を含む、ラテックス免疫凝集法のためのキット:
緩衝剤を含む第1試薬、および
測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子を含む第2試薬;
ここで、第1試薬と第2試薬の少なくとも一方がシリコーン化合物を含む。
(9)以下を含む、ラテックス免疫凝集法のための試薬:
i)緩衝剤、ii)シリコーン化合物、およびiii)測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子。
本発明により、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤のLTIA測定系への干渉を低減させる方法が提供される。本発明により、微量採血管で採血した測定試料を使用してLTIA法による測定を行う場合でも、正確な測定を行うことが可能になる。
(シリコーン化合物)
本発明のシリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好適に使用されうる。好ましいポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、アルキル(炭素数1〜3)シロキサンとポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜5が好ましい)の共重合体を挙げることができ、なかでも、ジメチルシロキサンとポリオキシアルキレンの共重合体が好ましい。ここで、ポリオキシアルキレンとは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのランダムまたはブロック重合体をさす。このようなポリエーテル変性シリコーンオイルの例として、下記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0005823377
(式中、M、N、a及びbは平均重合度であり、Rは水素又はアルキル基を表す。)
ここで、Mは10〜10,000、Nは1〜1,000、かつM>Nであることが好ましく、Mは10〜1,000、Nは1〜50、かつM>Nであることがさらに好ましい。aは2〜100、bは0〜50が好ましい。Rとしては水素又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
本発明において使用するポリエーテル変性シリコーンオイルを含有する市販品の具体的な例としては、日本ユニカー社製のSILWET FZ−2166、信越シリコーン社製のKF−618、東レ・ダウ コーニング・シリコーン社製のSH3749、SH7090、SF8410、SH8700、GE東芝シリコーン社製あるいはモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSA775、TSF4440などが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。また、これらはTSA775のように、ポリアルキルシロキサンやシリカなどとの混合物であってもよい。
本発明のシリコーン化合物を用いたLTIA試薬の調製方法について、測定対象物質に対する高親和性物質あるいは測定対象物質を担持させたラテックス粒子として抗体担持ラテックス粒子を用いる場合を例として以下説明する。本発明のシリコーン化合物は、LTIA試薬を構成する抗体担持ラテックス粒子を含有する試液あるいは抗体担持ラテックス粒子を含有しない試液のいずれに添加してもよいが、抗体担持ラテックス粒子を含有する試液に添加するのが好ましい。抗体担持ラテックス粒子を含有する試液に添加する場合には、抗体担持前のラテックス粒子を含有する試液に添加しても、抗体担持後のラテックス粒子を含有する試液に添加してもよいが、抗体担持後のラテックス粒子を含有する試液に添加するのが好ましい。本発明のシリコーン化合物の添加時の温度は、例えば、担持させた抗体の機能(活性)を喪失させないことを限度とし、本発明のシリコーン化合物の溶解度の向上が期待できる1〜65℃の適当な温度を選ぶことができる。
また、本発明のシリコーン化合物を抗体担持後のラテックス粒子を含有する試液に添加した後、さらに1〜65℃の適当な温度で、適当な時間、インキュベーションをすることができる。このようにすると、いわゆるブロッキング効果と同様の効果を抗体担持ラテックス粒子に付加することも期待できる。インキュベーションをする場合、30〜65℃で行うことが好ましい。30℃未満であると、ブロッキング効果が充分に備わらない場合があり、また65℃を超えると、抗体などに、タンパク質としての変性がおこり抗体活性を喪失する場合がある。好適なインキュベーション温度の一例として、37℃前後でのインキュベーションを挙げることができる。インキュベーションをする場合の時間についても、制限はなく、期待するブロッキング効果が得られるよう、温度とあわせて実験的に選択をすることができる。なお、本明細書においては、このような加温・インキュベーション操作をブロッキング処理ということがある。
本発明のシリコーン化合物の濃度は、例えば、ラテックス免疫凝集反応時の濃度で規定することができる。好ましい濃度としては、0.0001%〜1%、0.0002%〜1%、0.0004%〜1%、0.0008%〜1%、0.002%〜1%、0.003%〜1%、0.006%〜1%、0.01%〜1%、0.03%〜1%、0.05%〜1%、0.0001%〜0.5%、0.0002%〜0.5%、0.0004%〜0.5%、0.0008%〜0.5%、0.002%〜0.5%、0.003%〜0.5%、0.006%〜0.5%、0.01%〜0.5%、0.03%〜0.5%、0.05%〜0.5%、0.0001%〜0.2%、0.0002%〜0.2%、0.0004%〜0.2%、0.0008%〜0.2%、0.002%〜0.2%、0.003%〜0.2%、0.006%〜0.2%、0.01%〜0.2%、0.03%〜0.2%、0.05%〜0.2%、0.0001%〜0.1%、0.0002%〜0.1%、0.0004%〜0.1%、0.0008%〜0.1%、0.002%〜0.1%、0.003%〜0.1%、0.006%〜0.1%、0.01%〜0.1%、0.03%〜0.1%、および0.05%〜0.1%、が挙げられる。一般的には、0.0001%〜1%が好適であり、好ましくは0.001%〜0.5%、より好ましくは0.01%〜0.1%である。なお、市販のシリコーン化合物製品のなかには、他の成分(例えば、ポリアルキルシロキサンやシリカなど)との混合物として流通しているものもあるが、実施例に記載された方法などを参照して、本発明の効果が得られる濃度(個々の製品の添加量)を実験的に確認すればよい。
上記のように発明のシリコーン化合物は、LTIA法において、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤による測定系への干渉を低減させる能力を有するシリコーン化合物(シリコーン製品)群の中から、測定系としての所望の測定感度、測定範囲、再現性、あるいは試薬の安定性などが得られることを勘案したうえで、実用的に最適な種類、濃度、LTIA試薬の調製方法を選択し適宜利用することができる。なお、本願明細書で「干渉を低減させる」というときは、水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤による測定値の低下を抑制することを意味する。
微量採血管に使用されている水溶性シリコーンの詳細は明らかではないが、水溶性シリコーンとしては、市販されているものとして、KS−538(信越シリコーン(株))、KM−70(信越シリコーン(株))、KM−72F(信越シリコーン(株))、TSA770(コメンタティブ(株))、TSA732(コメンタティブ(株))、TSA7341(コメンタティブ(株)、AntifoamSI(和光純薬工業(株))、SM5571(東レシリコーン(株))などが挙げられる。これらの水溶性シリコーンが実際にラテックス免疫凝集法の測定系への干渉原因となるか否かについては、適宜試験をして調べることができ、干渉成分であることが確認された場合は、本発明のシリコーン化合物をスクリーニングする材料として使用できる。
以上、測定対象物質に対する高親和性物質あるいは測定対象物質を担持させたラテックス粒子として、抗体担持ラテックス粒子の場合を例に説明を行ったが、担持させる物質が抗原である場合も同様に理解すべきであることは当然である。なお、高親和性物質から見れば、測定対象物質が高親和性物質である。また、抗原と抗体に限らず、目的成分と該目的成分に対して特異的な結合相手が担持されたラテックス粒子間で結合が形成され、目的成分の存在量に依存したラテックス粒子の凝集が形成される場合には、それらの反応も本発明でいうラテックス免疫凝集反応に含まれる。
(ラテックス粒子)
本発明において、ラテックス粒子という場合には、ポリスチレンラテックス粒子などをいうが、上記のラテックス免疫凝集反応に含まれる場合であって、目的成分に対して特異的な結合相手を担持する方法が疎水結合など物理的な方法によるものである場合には、金属コロイド、シリカ、カーボンなども本発明のラテックス粒子に含まれる。ラテックス粒子のサイズは、使用する光学的測定法(例えば、透過光を測定する比濁法、散乱光を測定する比朧法など)を考慮し、所望の測定感度、測定範囲などが得られるよう0.05〜1μmの範囲から適宜選択することができる。自動分析装置における光学的測定においては平均粒子径0.1〜0.4μmが汎用されており、好ましくは0.1〜0.2μmである。ラテックス粒子の平均粒子径は粒度分布計や透過型電子顕微鏡像などで確認することができる。ラテックス粒子の試液中の濃度は、使用するラテックス粒子の粒径や測定系全体の設計にあわせ、例えば0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲から適宜選択をすることができる。
(LTIA試薬としての構成など)
本発明のLTIA試薬(試液)は、反応の主成分の他に、試料のpH、イオン強度、浸透圧などを緩衝、調整する成分として、例えば、酢酸、クエン酸、リン酸、トリス、グリシン、ホウ酸、炭酸、及びグッドの緩衝液や、それらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などを含んでも良い。また凝集形成を増強する成分としてポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、リン脂質ポリマーなどの高分子を含んでも良い。また、凝集の形成をコントロールする成分として、タンパク質、アミノ酸、糖類、金属塩類、界面活性剤類、還元性物質やカオトロピック物質など汎用される成分を1種類、または複数の成分を組合わせて含んでも良い。本発明の測定試薬においては、起泡性を有する成分に関しても問題なく適用することができる。
本発明のLTIA試薬は種々の生体試料を測定対象とすることができるが、微量採血管により採血を行う測定対象物質が好適である。測定対象物質としてはタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖質、核酸、ハプテンなどが挙げられるが、理論的に測定可能な分子であれば特に制限はない。例としてCRP(C反応性タンパク質)、Lp(a)、MMP3(マトリクスメタロプロテイナーゼ3)、抗CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体、抗リン脂質抗体、RPR、IV型コラーゲン、PSA、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)、NT−proBNP、インスリン、マイクロアルブミン、シスタチンC、RF(リウマチ因子)、CA―RF、KL−6、PIVKA―II、FDP、Dダイマー、SF(可溶性フィブリン)、TAT(トロンビン-アンチトロンビンIII複合体)、PIC、PAI、XIII因子、ペプシノーゲンI・IIや、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、バルプロ酸、テオフィリンなどが挙げられる。
本発明のLTIA試薬は、前記したように一試液以上の複数の試液から構成される。複数の試液の例としては、測定対象物質を測定に好適な濃度に調整したり抗原抗体反応の環境を調整するなどを目的とする緩衝液からなる試液、抗体担持ラテックス粒子を含有する試液ほかが挙げられる。本発明のシリコーン化合物は試薬を構成する全ての試液に含まれていても良いし、測定試薬を構成する試液のいずれかに選択的に含まれていても良い。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
〔実施例1〕本発明のシリコーン化合物の効果確認(1)
微量採血管処理試料の測定における本発明のシリコーン化合物の効果を確認した。
<試験方法>
(1)従来法LTIA試薬
SSタイプ ピュアオート(登録商標)S CRPラテックス(積水メディカル社製)を使用した。
(2)試験用試薬
(2−1)第1試薬
従来法LTIA試薬の緩衝液第1液(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液(pH8.5) 20mmol/L)をそのまま使用した。
(2−2)第2試薬
(i)対照試液
従来法LTIA試薬のラテックス試液第2液(抗ヒトC反応性蛋白マウスモノクローナル抗体感作ラテックス 2.25mg/mL)をそのまま使用した。
(ii)実施例1a〜1c試液
シリコーン化合物として、FZ−2166(日本ユニカー社製)、KF−618(信越シリコーン社製)、SH3749、SH7090、SF8410、SH8700、(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)、TSA775、TSF4440(以上、GE東芝シリコーン社製)を、最終濃度0.01%、0.03%、0.10%になるよう対照試液に添加し、37℃で24時間加温後に使用した。
(3)微量採血管処理試料および対照試料の調製
微量採血管:BDマイクロテイナマイクロガードチューブ(カタログ番号:365985、ヘパリンリチウム及び血漿分離剤入り、日本ベクトン・デッキンソン社製、採血量0.4〜0.6mL用)に対し、全血を、所定量である0.6mLあるいは所定量の1/12量である0.05mL分注して転倒混和後、30分静置し、微量採血管処理試料(以下、それぞれ0.6mL試料、0.05mL試料という)を調製した。対照試料は、ベノジェクトII(コード番号:VP−HL050K、ヘパリンリチウム、テルモ社製、採血量5mL用)を用いて調製した。
(4)測定方法
試験用試薬として、第1試薬(従来法LTIA試薬の緩衝液第1液)に4種類の第2試薬(対照試液1種類、実施例1a〜1c試液3種類)を組み合わせて使用し、測定試料(対照試料および微量採血管処理試料(0.6mL試料および0.05mL試料))を、日立7170形自動分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、下記(5)の測定パラメータにより測定した。
(5)日立7170形自動分析装置の測定パラメータ
(i)液量:測定試料−第1試薬−第2試薬:3μL−150μL−50μL
(ii)分析法:2ポイントエンド法(測光ポイント19−34)
(iii)測定波長:570nm/副波長800nm
(iv)キャリブレーション:スプライン
(v)キャリブレーター:SSタイプ ピュアオート(登録商標)S CRPラテックス
キャリブレーター
<測定結果>
4種類の第2試薬(対照試液1種類、実施例1a〜1c試液3種類)を使用して測定した0.6mL試料および0.05mL試料の吸光度を、第2試薬に対照試液を使用して測定した対照試料の吸光度で除して相対吸光度(%)を求めた。結果を表1に示した。
本発明のシリコーン化合物を含有していない対照試液を第2試薬に用いて微量採血管処理試料を測定した場合(比較例1)、相対吸光度の低下が確認された。特に0.05mL試料(所定量の1/12容量である0.05mL分注)では75.6%と大幅な相対吸光度の変動(低下)が確認された。
これに対して、実施例1a〜1c試液(本発明のシリコーン化合物として8種類、各3濃度を含有する)を第2試薬に用いて微量採血管処理試料を測定した場合(実施例1a〜1c)、0.05mL試料を測定した場合においても、相対吸光度の変動は、僅かであるか、ほとんどなかった。
Figure 0005823377
〔実施例2〕本発明のシリコーン化合物を用いたLTIA試薬の調製方法の検討
本発明のシリコーン化合物を用いたLTIA試薬の調製方法について検討を行った。
<試験方法>
(1)従来法LTIA試薬
実施例1と同じ従来法LTIA試薬を使用した。
(2)試験用試薬
(2−1)第1試薬
(i)対照試液R1
従来法LTIA試薬の緩衝液第1液をそのまま使用した。
(ii)実施例2a試液
TSA775を、最終濃度0.01%、0.03%になるよう対照試液R1に添加し、37℃で24時間加温後に使用した。
(2−2)第2試薬
(i)対照試液R2
従来法LTIA試薬のラテックス試液第2液をそのまま使用した。
(ii)実施例2b試液
TSA775を、最終濃度0.01%、0.03%になるよう対照試液R2に添加し、10℃以下に24時間静置した後に使用した。
(iii)実施例2c試液
TSA775を、最終濃度0.01%、0.03%になるよう対照試液R2に添加し、37℃で24時間加温後に使用した。
(3)微量採血管処理試料および対照試料の調製
実施例1と同様にして0.6mL試料、0.05mL試料および対照試料を調製した。
(4)測定方法
試験用試薬として、第1試薬−第2試薬を下記4通りに組み合わせて使用し、測定試料(対照試料および微量採血管処理試料(0.6mL試料および0.05mL試料))、日立7170形自動分析装置を用い、下記(5)の測定パラメータにより測定した。
比較例2 :対照試液R1−対照試液R2、
実施例2a:実施例2a試液−対照試液R2、
実施例2b:対照試液R1−実施例2b試液、
実施例2c:対照試液R1−実施例2c試液
(5)日立7170形自動分析装置の測定パラメータ
実施例1と同条件とした。
<測定結果>
4種類の第1試薬−第2試薬の組み合わせ(比較例2、実施例2a〜2c)を使用して測定した0.6mL試料および0.05mL試料の測定値(キャリブレータにより濃度換算した値)を、比較例2の第1試薬−第2試薬の組み合わせを使用して測定した対照試料の測定値で除して相対測定値(%)を求めた。結果を表2に示した。
本発明のシリコーン化合物を全く含有していない対照試液R1−対照試液R2の組み合わせで微量採血管処理試料を測定した場合(比較例2)、相対測定値の低下が確認された。
これに対して、本発明のシリコーン化合物を含有する実施例2a〜2c試液を用いて微量採血管処理試料を測定した場合(実施例2a〜2c)、0.05mL試料を測定した場合においても、相対測定値の変動は、僅かであるか、ほとんどなかった。
本発明のシリコーン化合物を含有する試液を使用した実施例2a〜2cにおける、2種類のシリコーン化合物濃度での0.6mL試料および0.05mL試料の相対測定値(4種類)の平均値は、それぞれ96.0%(実施例2a)、98.3%(実施例2b)、100.5%(実施例2c)であった。以上より、検討した3条件間では、抗体担持ラテックスを含有する試液に本発明のシリコーン化合物を添加し、さらに37℃で24時間加温した場合が、最も干渉低減効果が高かった。
これは、加温およびインキュベートにより、シリコーン化合物の試液中での溶解度が向上したり、あるいは、いわゆるブロッキング効果と同様の効果が付加されたことによる可能性が考えられた。
Figure 0005823377
〔実施例3〕本発明のシリコーン化合物の効果確認(2)
界面活性剤添加試料の測定における本発明のシリコーン化合物の効果を確認した。
<試験方法>
(1)従来法LTIA試薬
実施例1と同じ従来法LTIA試薬を使用した。
(2)試験用試薬
(2−1)第1試薬
従来法LTIA試薬の緩衝液第1液をそのまま使用した。
(2−2)第2試薬
(i)対照試液
従来法LTIA試薬のラテックス試液第2液をそのまま使用した。
(ii)実施例3試液
TSA775を、最終濃度0.01%になるよう対照試液に添加し、37℃で20時間加温後に使用した。
(3)界面活性剤添加試料および対照試料の調製
ガラス試験管に全血分注して得た血清に対し、表3に記載の添加濃度(最終濃度)になるようTriton(登録商標)X−100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)、Tween(登録商標)20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Brij(登録商標)35(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)を添加して界面活性剤添加試料を調製した。対照試料は、生理食塩水を添加した血清を使用した。
(4)測定方法
試験用試薬として、第1試薬(従来法LTIA試薬の緩衝液第1液)に2種類の第2試薬(対照試液、実施例3試液)を組み合わせて使用し、測定試料(対照試料および界面活性剤添加試料)、日立7170形自動分析装置を用い、下記(5)の測定パラメータにより測定した。
(5)日立7170形自動分析装置の測定パラメータ
実施例1と同条件とした。
<測定結果>
2種類の第1試薬−第2試薬の組み合わせ(比較例3、実施例3)を使用して測定した界面活性剤添加試料の測定値(キャリブレータにより濃度換算した値)を、比較例3の第1試薬−第2試薬の組み合わせを使用して測定した対照試料の測定値で除して相対測定値(%)を求めた。結果を表3に示した。
本発明のシリコーン化合物を含有させた実施例3では、比較例3に対して相対測定値の変動幅が少なかった。特に界面活性剤高濃度時にはその差は顕著であった。
本発明の方法を使用したLTIA測定系では、非特許文献1に記載された界面活性剤の干渉も回避できることがわかった。
Figure 0005823377
本発明により、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤のLTIA測定系への干渉を低減させる方法が提供される。本発明により、微量採血管で採血した測定試料を使用してLTIA法による測定を行う場合でも、正確な測定を行うことが可能になる。

Claims (8)

  1. ラテックス免疫凝集法において、ポリエーテル変性シリコーンオイルの存在下にラテックス免疫凝集反応を行うことを特徴とする、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の測定系への干渉を低減させる方法。
  2. ラテックス試液にポリエーテル変性シリコーンオイルを含有させることによりポリエーテル変性シリコーンオイルを存在させる、請求項1に記載の方法。
  3. ラテックス試液にポリエーテル変性シリコーンオイルを含有させる方法が、ブロッキング処理によるものである、請求項2に記載の方法。
  4. ポリエーテル変性シリコーンオイルのラテックス免疫凝集反応時の濃度が0.0001〜1%である、請求項1ないし3に記載の方法。
  5. 以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法において、混入する水溶性シリコーンおよび
    /または界面活性剤の干渉を低減させる方法:
    生体由来の測定対象物質及び前記混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤を
    含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子、お
    よびii)ポリエーテル変性シリコーンオイルを接触させる工程、及び
    当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程。
  6. 以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法:
    生体由来の測定対象物質を含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担
    持するラテックス粒子、およびii)ポリエーテル変性シリコーンオイルを接触させる工程。
  7. 以下の構成要素を含む、ラテックス免疫凝集法のためのキット:
    緩衝剤を含む第1試薬、および測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子を含む第2試薬;
    ここで、第1試薬と第2試薬の少なくとも一方がポリエーテル変性シリコーンオイルを含む。
  8. 以下を含む、ラテックス免疫凝集法のための試薬:
    i)緩衝剤、ii)ポリエーテル変性シリコーンオイル、およびiii)測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子。
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