JP5823377B2 - 測定系外成分による干渉を低減させる方法 - Google Patents
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Description
非特許文献2 岡山衛生検査 第40巻第2号(2003年)、6頁〜10頁
(1)ラテックス免疫凝集法において、シリコーン化合物の存在下にラテックス免疫凝集反応を行うことを特徴とする、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の測定系への干渉を低減させる方法。
(2)シリコーン化合物が、ポリエーテル変性シリコーンオイルを含有するものである、(1)に記載の方法。
(3)ラテックス試液にシリコーン化合物を含有させることによりシリコーン化合物を存在させる、(1)または(2)に記載の方法。
(4)ラテックス試液にシリコーン化合物を含有させる方法が、ブロッキング処理によるものである、(1)ないし(3)に記載の方法。
(5)シリコーン化合物のラテックス免疫凝集反応時の濃度が0.0001〜1%である(1)ないし(4)に記載の方法。
(6)以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法において、混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の干渉を低減させる方法:
生体由来の測定対象物質及び前記混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤を含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子、およびii)シリコーン化合物を接触させる工程、及び
当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程。
(7)以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法:
生体由来の測定対象物質を含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子、およびii)シリコーン化合物を接触させる工程;
(8)以下の構成要素を含む、ラテックス免疫凝集法のためのキット:
緩衝剤を含む第1試薬、および
測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子を含む第2試薬;
ここで、第1試薬と第2試薬の少なくとも一方がシリコーン化合物を含む。
(9)以下を含む、ラテックス免疫凝集法のための試薬:
i)緩衝剤、ii)シリコーン化合物、およびiii)測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子。
本発明のシリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好適に使用されうる。好ましいポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、アルキル(炭素数1〜3)シロキサンとポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜5が好ましい)の共重合体を挙げることができ、なかでも、ジメチルシロキサンとポリオキシアルキレンの共重合体が好ましい。ここで、ポリオキシアルキレンとは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのランダムまたはブロック重合体をさす。このようなポリエーテル変性シリコーンオイルの例として、下記一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
微量採血管に使用されている水溶性シリコーンの詳細は明らかではないが、水溶性シリコーンとしては、市販されているものとして、KS−538(信越シリコーン(株))、KM−70(信越シリコーン(株))、KM−72F(信越シリコーン(株))、TSA770(コメンタティブ(株))、TSA732(コメンタティブ(株))、TSA7341(コメンタティブ(株)、AntifoamSI(和光純薬工業(株))、SM5571(東レシリコーン(株))などが挙げられる。これらの水溶性シリコーンが実際にラテックス免疫凝集法の測定系への干渉原因となるか否かについては、適宜試験をして調べることができ、干渉成分であることが確認された場合は、本発明のシリコーン化合物をスクリーニングする材料として使用できる。
本発明において、ラテックス粒子という場合には、ポリスチレンラテックス粒子などをいうが、上記のラテックス免疫凝集反応に含まれる場合であって、目的成分に対して特異的な結合相手を担持する方法が疎水結合など物理的な方法によるものである場合には、金属コロイド、シリカ、カーボンなども本発明のラテックス粒子に含まれる。ラテックス粒子のサイズは、使用する光学的測定法(例えば、透過光を測定する比濁法、散乱光を測定する比朧法など)を考慮し、所望の測定感度、測定範囲などが得られるよう0.05〜1μmの範囲から適宜選択することができる。自動分析装置における光学的測定においては平均粒子径0.1〜0.4μmが汎用されており、好ましくは0.1〜0.2μmである。ラテックス粒子の平均粒子径は粒度分布計や透過型電子顕微鏡像などで確認することができる。ラテックス粒子の試液中の濃度は、使用するラテックス粒子の粒径や測定系全体の設計にあわせ、例えば0.0001mg/mL〜10mg/mLの範囲から適宜選択をすることができる。
本発明のLTIA試薬(試液)は、反応の主成分の他に、試料のpH、イオン強度、浸透圧などを緩衝、調整する成分として、例えば、酢酸、クエン酸、リン酸、トリス、グリシン、ホウ酸、炭酸、及びグッドの緩衝液や、それらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などを含んでも良い。また凝集形成を増強する成分としてポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、リン脂質ポリマーなどの高分子を含んでも良い。また、凝集の形成をコントロールする成分として、タンパク質、アミノ酸、糖類、金属塩類、界面活性剤類、還元性物質やカオトロピック物質など汎用される成分を1種類、または複数の成分を組合わせて含んでも良い。本発明の測定試薬においては、起泡性を有する成分に関しても問題なく適用することができる。
微量採血管処理試料の測定における本発明のシリコーン化合物の効果を確認した。
(1)従来法LTIA試薬
SSタイプ ピュアオート(登録商標)S CRPラテックス(積水メディカル社製)を使用した。
(2)試験用試薬
(2−1)第1試薬
従来法LTIA試薬の緩衝液第1液(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール緩衝液(pH8.5) 20mmol/L)をそのまま使用した。
(2−2)第2試薬
(i)対照試液
従来法LTIA試薬のラテックス試液第2液(抗ヒトC反応性蛋白マウスモノクローナル抗体感作ラテックス 2.25mg/mL)をそのまま使用した。
(ii)実施例1a〜1c試液
シリコーン化合物として、FZ−2166(日本ユニカー社製)、KF−618(信越シリコーン社製)、SH3749、SH7090、SF8410、SH8700、(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)、TSA775、TSF4440(以上、GE東芝シリコーン社製)を、最終濃度0.01%、0.03%、0.10%になるよう対照試液に添加し、37℃で24時間加温後に使用した。
(3)微量採血管処理試料および対照試料の調製
微量採血管:BDマイクロテイナマイクロガードチューブ(カタログ番号:365985、ヘパリンリチウム及び血漿分離剤入り、日本ベクトン・デッキンソン社製、採血量0.4〜0.6mL用)に対し、全血を、所定量である0.6mLあるいは所定量の1/12量である0.05mL分注して転倒混和後、30分静置し、微量採血管処理試料(以下、それぞれ0.6mL試料、0.05mL試料という)を調製した。対照試料は、ベノジェクトII(コード番号:VP−HL050K、ヘパリンリチウム、テルモ社製、採血量5mL用)を用いて調製した。
(4)測定方法
試験用試薬として、第1試薬(従来法LTIA試薬の緩衝液第1液)に4種類の第2試薬(対照試液1種類、実施例1a〜1c試液3種類)を組み合わせて使用し、測定試料(対照試料および微量採血管処理試料(0.6mL試料および0.05mL試料))を、日立7170形自動分析装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、下記(5)の測定パラメータにより測定した。
(5)日立7170形自動分析装置の測定パラメータ
(i)液量:測定試料−第1試薬−第2試薬:3μL−150μL−50μL
(ii)分析法:2ポイントエンド法(測光ポイント19−34)
(iii)測定波長:570nm/副波長800nm
(iv)キャリブレーション:スプライン
(v)キャリブレーター:SSタイプ ピュアオート(登録商標)S CRPラテックス
キャリブレーター
4種類の第2試薬(対照試液1種類、実施例1a〜1c試液3種類)を使用して測定した0.6mL試料および0.05mL試料の吸光度を、第2試薬に対照試液を使用して測定した対照試料の吸光度で除して相対吸光度(%)を求めた。結果を表1に示した。
本発明のシリコーン化合物を含有していない対照試液を第2試薬に用いて微量採血管処理試料を測定した場合(比較例1)、相対吸光度の低下が確認された。特に0.05mL試料(所定量の1/12容量である0.05mL分注)では75.6%と大幅な相対吸光度の変動(低下)が確認された。
これに対して、実施例1a〜1c試液(本発明のシリコーン化合物として8種類、各3濃度を含有する)を第2試薬に用いて微量採血管処理試料を測定した場合(実施例1a〜1c)、0.05mL試料を測定した場合においても、相対吸光度の変動は、僅かであるか、ほとんどなかった。
本発明のシリコーン化合物を用いたLTIA試薬の調製方法について検討を行った。
(1)従来法LTIA試薬
実施例1と同じ従来法LTIA試薬を使用した。
(2)試験用試薬
(2−1)第1試薬
(i)対照試液R1
従来法LTIA試薬の緩衝液第1液をそのまま使用した。
(ii)実施例2a試液
TSA775を、最終濃度0.01%、0.03%になるよう対照試液R1に添加し、37℃で24時間加温後に使用した。
(2−2)第2試薬
(i)対照試液R2
従来法LTIA試薬のラテックス試液第2液をそのまま使用した。
(ii)実施例2b試液
TSA775を、最終濃度0.01%、0.03%になるよう対照試液R2に添加し、10℃以下に24時間静置した後に使用した。
(iii)実施例2c試液
TSA775を、最終濃度0.01%、0.03%になるよう対照試液R2に添加し、37℃で24時間加温後に使用した。
(3)微量採血管処理試料および対照試料の調製
実施例1と同様にして0.6mL試料、0.05mL試料および対照試料を調製した。
(4)測定方法
試験用試薬として、第1試薬−第2試薬を下記4通りに組み合わせて使用し、測定試料(対照試料および微量採血管処理試料(0.6mL試料および0.05mL試料))、日立7170形自動分析装置を用い、下記(5)の測定パラメータにより測定した。
比較例2 :対照試液R1−対照試液R2、
実施例2a:実施例2a試液−対照試液R2、
実施例2b:対照試液R1−実施例2b試液、
実施例2c:対照試液R1−実施例2c試液
(5)日立7170形自動分析装置の測定パラメータ
実施例1と同条件とした。
4種類の第1試薬−第2試薬の組み合わせ(比較例2、実施例2a〜2c)を使用して測定した0.6mL試料および0.05mL試料の測定値(キャリブレータにより濃度換算した値)を、比較例2の第1試薬−第2試薬の組み合わせを使用して測定した対照試料の測定値で除して相対測定値(%)を求めた。結果を表2に示した。
本発明のシリコーン化合物を全く含有していない対照試液R1−対照試液R2の組み合わせで微量採血管処理試料を測定した場合(比較例2)、相対測定値の低下が確認された。
これに対して、本発明のシリコーン化合物を含有する実施例2a〜2c試液を用いて微量採血管処理試料を測定した場合(実施例2a〜2c)、0.05mL試料を測定した場合においても、相対測定値の変動は、僅かであるか、ほとんどなかった。
本発明のシリコーン化合物を含有する試液を使用した実施例2a〜2cにおける、2種類のシリコーン化合物濃度での0.6mL試料および0.05mL試料の相対測定値(4種類)の平均値は、それぞれ96.0%(実施例2a)、98.3%(実施例2b)、100.5%(実施例2c)であった。以上より、検討した3条件間では、抗体担持ラテックスを含有する試液に本発明のシリコーン化合物を添加し、さらに37℃で24時間加温した場合が、最も干渉低減効果が高かった。
これは、加温およびインキュベートにより、シリコーン化合物の試液中での溶解度が向上したり、あるいは、いわゆるブロッキング効果と同様の効果が付加されたことによる可能性が考えられた。
界面活性剤添加試料の測定における本発明のシリコーン化合物の効果を確認した。
(1)従来法LTIA試薬
実施例1と同じ従来法LTIA試薬を使用した。
(2)試験用試薬
(2−1)第1試薬
従来法LTIA試薬の緩衝液第1液をそのまま使用した。
(2−2)第2試薬
(i)対照試液
従来法LTIA試薬のラテックス試液第2液をそのまま使用した。
(ii)実施例3試液
TSA775を、最終濃度0.01%になるよう対照試液に添加し、37℃で20時間加温後に使用した。
(3)界面活性剤添加試料および対照試料の調製
ガラス試験管に全血分注して得た血清に対し、表3に記載の添加濃度(最終濃度)になるようTriton(登録商標)X−100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)、Tween(登録商標)20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Brij(登録商標)35(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)を添加して界面活性剤添加試料を調製した。対照試料は、生理食塩水を添加した血清を使用した。
(4)測定方法
試験用試薬として、第1試薬(従来法LTIA試薬の緩衝液第1液)に2種類の第2試薬(対照試液、実施例3試液)を組み合わせて使用し、測定試料(対照試料および界面活性剤添加試料)、日立7170形自動分析装置を用い、下記(5)の測定パラメータにより測定した。
(5)日立7170形自動分析装置の測定パラメータ
実施例1と同条件とした。
2種類の第1試薬−第2試薬の組み合わせ(比較例3、実施例3)を使用して測定した界面活性剤添加試料の測定値(キャリブレータにより濃度換算した値)を、比較例3の第1試薬−第2試薬の組み合わせを使用して測定した対照試料の測定値で除して相対測定値(%)を求めた。結果を表3に示した。
本発明のシリコーン化合物を含有させた実施例3では、比較例3に対して相対測定値の変動幅が少なかった。特に界面活性剤高濃度時にはその差は顕著であった。
本発明の方法を使用したLTIA測定系では、非特許文献1に記載された界面活性剤の干渉も回避できることがわかった。
Claims (8)
- ラテックス免疫凝集法において、ポリエーテル変性シリコーンオイルの存在下にラテックス免疫凝集反応を行うことを特徴とする、測定系外より混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤の測定系への干渉を低減させる方法。
- ラテックス試液にポリエーテル変性シリコーンオイルを含有させることによりポリエーテル変性シリコーンオイルを存在させる、請求項1に記載の方法。
- ラテックス試液にポリエーテル変性シリコーンオイルを含有させる方法が、ブロッキング処理によるものである、請求項2に記載の方法。
- ポリエーテル変性シリコーンオイルのラテックス免疫凝集反応時の濃度が0.0001〜1%である、請求項1ないし3に記載の方法。
- 以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法において、混入する水溶性シリコーンおよび
/または界面活性剤の干渉を低減させる方法:
生体由来の測定対象物質及び前記混入する水溶性シリコーンおよび/または界面活性剤を
含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子、お
よびii)ポリエーテル変性シリコーンオイルを接触させる工程、及び
当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程。 - 以下の工程を含む、ラテックス免疫凝集法:
生体由来の測定対象物質を含む試料に、i)当該測定対象物質に対する高親和性物質を担
持するラテックス粒子、およびii)ポリエーテル変性シリコーンオイルを接触させる工程。 - 以下の構成要素を含む、ラテックス免疫凝集法のためのキット:
緩衝剤を含む第1試薬、および測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子を含む第2試薬;
ここで、第1試薬と第2試薬の少なくとも一方がポリエーテル変性シリコーンオイルを含む。 - 以下を含む、ラテックス免疫凝集法のための試薬:
i)緩衝剤、ii)ポリエーテル変性シリコーンオイル、およびiii)測定対象物質に対する高親和性物質を担持するラテックス粒子。
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