第1実施形態
図1は、本発明を適用可能なプリンターが備える装置構成の一例を模式的に示す正面図である。図1に示すように、プリンター1では、その両端が繰出軸20および巻取軸40にロール状に巻き付けられた1枚のシートS(ウェブ)が、繰出軸20と巻取軸40の間に張架されており、シートSはこうして張架された経路Pcに沿って、繰出軸20から巻取軸40へと搬送される。そして、プリンター1では、この搬送経路Pcに沿って搬送されるシートSに対して画像が記録される。シートSの種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。概略的には、プリンター1は、繰出軸20からシートSを繰り出す繰出部2と、繰出部2から繰り出されたシートSに画像を記録するプロセス部3と、プロセス部3で画像の記録されたシートSを巻取軸40に巻き取る巻取部4を備える。なお、以下の説明では、シートSの両面のうち、画像が記録される面を表面と称する一方、その逆側の面を裏面と称する。
繰出部2は、シートSの端を巻き付けた繰出軸20と、繰出軸20から引き出されたシートSを巻き掛ける従動ローラー21とを有する。繰出軸20は、シートSの表面を外側に向けた状態で、シートSの端を巻き付けて支持する。そして、繰出軸20が図1の時計回りに回転することで、繰出軸20に巻き付けられたシートSが従動ローラー21を経由してプロセス部3へと繰り出される。ちなみに、シートSは、繰出軸20に着脱自在な芯管(図示省略)を介して繰出軸20に巻き付けられている。したがって、繰出軸20のシートSが使い切られた際には、ロール状のシートSが巻き付けられた新たな芯管を繰出軸20に装着して、繰出軸20のシートSを取り換えることが可能となっている。
プロセス部3は、繰出部2から繰り出されたシートSをプラテンドラム30で支持しつつ、プラテンドラム30の外周面に沿って配置された各機能部51、52、61、62、63により処理を適宜行って、シートSに画像を記録するものである。このプロセス部3では、プラテンドラム30の両側に前駆動ローラー31と後駆動ローラー32とが設けられており、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32へと搬送されるシートSがプラテンドラム30に支持されて、画像記録を受ける。
前駆動ローラー31は、溶射によって形成された複数の微小突起を外周面に有しており、繰出部2から繰り出されたシートSを裏面側から巻き掛ける。そして、前駆動ローラー31は図1の時計回りに回転することで、繰出部2から繰り出されたシートSを搬送経路の下流側へと搬送する。なお、前駆動ローラー31に対してはニップローラー31nが設けられている。このニップローラー31nは、前駆動ローラー31側へ付勢された状態でシートSの表面に当接しており、前駆動ローラー31との間でシートSを挟み込む。これによって、前駆動ローラー31とシートSの間の摩擦力が確保され、前駆動ローラー31によるシートSの搬送を確実に行なうことができる。
プラテンドラム30は図示を省略する支持機構により回転自在に支持された円筒形状のドラムであり、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32へと搬送されるシートSを裏面側から巻き掛ける。このプラテンドラム30は、シートSとの間の摩擦力を受けてシートSの搬送方向Dsに従動回転しつつ、シートSを裏面側から支持するものである。ちなみに、プロセス部3では、プラテンドラム30への巻き掛け部の両側でシートSを折り返す従動ローラー33、34が設けられている。これらのうち従動ローラー33は、前駆動ローラー31とプラテンドラム30の間でシートSの表面を巻き掛けて、シートSを折り返す。一方、従動ローラー34は、プラテンドラム30と後駆動ローラー32の間でシートSの表面を巻き掛けて、シートSを折り返す。このように、プラテンドラム30に対して搬送方向Dsの上・下流側それぞれでシートSを折り返すことで、プラテンドラム30へのシートSの巻き掛け部を長く確保することができる。
後駆動ローラー32は、溶射によって形成された複数の微小突起を外周面に有しており、プラテンドラム30から従動ローラー34を経由して搬送されてきたシートSを裏面側から巻き掛ける。そして、後駆動ローラー32は図1の時計回りに回転することで、シートSを巻取部4へと搬送する。なお、後駆動ローラー32に対してはニップローラー32nが設けられている。このニップローラー32nは、後駆動ローラー32側へ付勢された状態でシートSの表面に当接しており、後駆動ローラー32との間にシートSを挟み込む。これによって、後駆動ローラー32とシートSの間の摩擦力が確保され、後駆動ローラー32によるシートSの搬送を確実に行なうことができる。
このように、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32へと搬送されるシートSは、プラテンドラム30の外周面に支持される。そして、プロセス部3では、プラテンドラム30に支持されるシートSの表面に対してカラー画像を記録するために、互いに異なる色に対応した複数の記録ヘッド51が設けられている。具体的には、イエロー、シアン、マゼンタおよびブラックに対応する4個の記録ヘッド51が、この色順で搬送方向Dsに並ぶ。各記録ヘッド51は、プラテンドラム30に巻き掛けられたシートSの表面に対して若干のクリアランスを空けて対向しており、対応する色のインクをインクジェット方式で吐出する。そして、搬送方向Dsへ搬送されるシートSに対して各記録ヘッド51がインクを吐出することで、シートSの表面にカラー画像を形成される。
ちなみに、インクとしては、紫外線(光)を照射することで硬化するUV(ultraviolet)インク(光硬化性インク)が用いられる。そこで、プロセス部3では、インクを硬化させてシートSに定着させるために、UVランプ61、62(光照射部)が設けられている。なお、このインク硬化は、仮硬化と本硬化の二段階に分けて実行される。複数の記録ヘッド51の各間には、仮硬化用のUVランプ61が配置されている。つまり、UVランプ61は弱い紫外線を照射することで、インクの形状が崩れない程度にインクを硬化(仮硬化)させるものであり、インクを完全に硬化させるものではない。一方、複数の記録ヘッド51に対して搬送方向Dsの下流側には、本硬化用のUVランプ62が設けられている。つまり、UVランプ62は、UVランプ61より強い紫外線を照射することで、インクを完全に硬化(本硬化)させるものである。こうして仮硬化・本硬化を実行することで、複数の記録ヘッド51が形成したカラー画像をシートS表面に定着させることができる。
さらに、UVランプ62に対して搬送方向Dsの下流側には、記録ヘッド52が設けられている。この記録ヘッド52は、プラテンドラム30に巻き掛けられたシートSの表面に対して若干のクリアランスを空けて対向しており、透明のUVインクをインクジェット方式でシートSの表面に吐出する。つまり、4色分の記録ヘッド51によって形成されたカラー画像に対して、透明インクがさらに吐出される。また、記録ヘッド52に対して搬送方向Dsの下流側には、UVランプ63が設けられている。このUVランプ63は強い紫外線を照射することで、記録ヘッド52が吐出した透明インクを完全に硬化(本硬化)させるものである。これによって、透明インクをシートS表面に定着させることができる。
このように、UVランプ61、62、63は、搬送経路Pcに沿ってそれぞれの照射対象領域を通過するシートSの表面に対して紫外線を照射する。したがって、シートSに着弾したインクは、UVランプ61、62、63それぞれの照射対象領域を通過する際に紫外線の照射を受けて、仮硬化あるいは本硬化する。なお、この実施形態では、UVランプ61、62、63のそれぞれは、トップハット型もしくはフラットトップ型と称される強度分布を有する紫外線をシートS表面に照射する。なお、理想的なトップハット型の強度分布を実現することは難しく、実際のトップハット型の強度分布は、頂上部分の両端に裾を引いた形状となることが多い(図2)。
ここで、図2は、UVランプが照射する紫外線の強度分布を模式的に示した図である。同図のグラフでは、紫外線の強度が縦軸に取られており、搬送経路Pcに沿った位置が横軸に示されている。なお、横軸に示された符号Dfは、搬送経路Pcにおいて繰出軸20から巻取軸40へ向かう搬送経路Pcの順方向を示し、符号Dbは、搬送経路Pcにおいて巻取軸40から繰出軸20へ向かう搬送経路Pcの逆方向を示している。同図に示すように、実際のトップハット型の分布を示す紫外線の強度は、頂上部分Ptでは強くかつ一様である一方、搬送経路Pcにおいて頂上部分Ptの両側の裾部分Psでは分布の外側に向けて急峻に低下する。
そして、UVランプ61、62、63それぞれでは、分布の頂上部分Ptにおける紫外線強度Iuvが当該UVランプ61、62、63の目的に応じた値に設定されている。具体的には、本硬化用のUVランプ62、63では、分布の頂上部分Ptの紫外線強度Iuvはインクを完全に硬化させてシートSに定着させるために必要な強い強度に設定されている。一方、仮硬化用のUVランプ61では、分布の頂上部分Ptの紫外線強度Iuvはインクを仮硬化させるのに足りる程度の弱い強度に設定されている。そして、UVランプ61、62、63それぞれは、分布の頂上部分Ptに相当する領域を照射対象領域として紫外線を照射するよう構成されている。
図1に戻って説明を続ける。上述したように、プロセス部3では、プラテンドラム30がその外周面にシートSを巻き掛けて支持する。そして、シートSを巻き掛けるプラテンドラム30の巻掛部分Raに対して、記録ヘッド51、52やUVランプ61、62、63といった各機能部がシートSを挟んで対向して、巻掛部分Raに巻き掛けられたシートSの表面にインクの吐出および硬化を適宜実行する。これによって、透明インクでコーティングされたカラー画像が形成される。そして、このカラー画像の形成されたシートSが、後駆動ローラー32によって巻取部4へと搬送される。
巻取部4は、シートSの端を巻き付けた巻取軸40の他に、巻取軸40と後駆動ローラー32の間でシートSを裏面側から巻き掛ける従動ローラー41を有する。巻取軸40は、シートSの表面を外側に向けた状態で、シートSの端を巻き取って支持する。つまり、巻取軸40が図1の時計回りに回転すると、後駆動ローラー32から搬送されてきたシートSが従動ローラー41を経由して巻取軸40に巻き取られる。ちなみに、シートSは、巻取軸40に着脱自在な芯管(図示省略)を介して巻取軸40に巻き取られる。したがって、巻取軸40に巻き取られたシートSが満杯になった際には、芯管ごとシートSを取り外すことが可能となっている。
以上がプリンター1の装置構成の概要である。続いて、プリンター1を制御する電気的構成について説明を行なう。図3は、図1に示すプリンターを制御する電気的構成を模式的に示すブロック図である。上述したプリンター1の動作は、図3に示すホストコンピューター10によって制御される。ホストコンピューター10では、制御動作を統括するホスト制御部100がCPU(Central Processing Unit)やメモリーにより構成されている。また、ホストコンピューター10にはドライバー120が設けられており、このドライバー120がメディア122からプログラム124を読み出す。なお、メディア122としては、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のものを用いることができる。そして、ホスト制御部100は、メディア122から読み出したプログラム124に基づいて、ホストコンピューター10の各部の制御やプリンター1の動作の制御を行なう。
さらに、ホストコンピューター10には作業者とのインターフェースとして、液晶ディスプレー等で構成されるモニター130と、キーボードやマウス等で構成される操作部140とが設けられている。モニター130には、印刷対象の画像の他にメニュー画面が表示される。したがって、作業者は、モニター130を確認しつつ操作部140を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質等の各種の印刷条件を設定することができる。なお、作業者とのインターフェースの具体的構成は種々の変形が可能であり、例えばタッチパネル式のディスプレーをモニター130として用い、このモニター130のタッチパネルで操作部140を構成しても良い。
一方、プリンター1では、ホストコンピューター10からの指令に応じてプリンター1の各部を制御するプリンター制御部200が設けられている。そして、記録ヘッド、UVランプおよびシート搬送系の装置各部はプリンター制御部200によって制御される。これら装置各部に対するプリンター制御部200の制御の詳細は次のとおりである。
プリンター制御部200は、カラー画像を形成する各記録ヘッド51のインク吐出タイミングを、シートSの搬送に応じて制御する。具体的には、このインク吐出タイミングの制御は、プラテンドラム30の回転軸に取り付けられて、プラテンドラム30の回転位置を検出するドラムエンコーダーE30の出力(検出値)に基づいて実行される。つまり、プラテンドラム30はシートSの搬送に伴って従動回転するため、プラテンドラム30の回転位置を検出するドラムエンコーダーE30の出力を参照すれば、シートSの搬送位置を把握することができる。そこで、プリンター制御部200は、ドラムエンコーダーE30の出力からpts(print timing signal)信号を生成し、このpts信号に基づいて各記録ヘッド51のインク吐出タイミングを制御することで、各記録ヘッド51が吐出したインクを搬送されるシートSの目標位置に着弾させて、カラー画像を形成する。
また、記録ヘッド52が透明インクを吐出するタイミングも、同様にドラムエンコーダーE30の出力に基づいてプリンター制御部200により制御される。これによって、複数の記録ヘッド51によって形成されたカラー画像に対して、透明インクを的確に吐出することができる。さらに、UVランプ61、62、63の点灯・消灯のタイミングや照射光量もプリンター制御部200によって制御される。
また、プリンター制御部200は、図1を用いて詳述したシートSの搬送を制御する機能を司る。つまり、シート搬送系を構成する部材のうち、繰出軸20、前駆動ローラー31、後駆動ローラー32および巻取軸40それぞれにはモーターが接続されている。そして、プリンター制御部200はこれらのモーターを回転させつつ、各モーターの速度やトルクを制御して、シートSの搬送を制御する。このシートSの搬送制御の詳細は次のとおりである。
プリンター制御部200は、繰出軸20を駆動する繰出モーターM20を回転させて、繰出軸20から前駆動ローラー31にシートSを供給する。この際、プリンター制御部200は、繰出モーターM20のトルクを制御して、繰出軸20から前駆動ローラー31までのシートSのテンション(繰出テンションTa)を調整する。つまり、繰出軸20と前駆動ローラー31の間に配置された従動ローラー21には、繰出テンションTaを検出するテンションセンサーS21が取り付けられている。このテンションセンサーS21は、例えばシートSから受ける力を検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部200は、テンションセンサーS21の検出結果に基づいて、繰出モーターM20のトルクをフィードバック制御して、シートSの繰出テンションTaを調整する。
この際、プリンター制御部200は、繰出軸20から前駆動ローラー31へ供給されるシートSの幅方向(図1の紙面の直交方向)の位置を調整しつつ、シートSの繰り出しを行う。つまり、プリンター1には、繰出軸20および従動ローラー21それぞれを軸方向(言い換えればシートSの幅方向)に変位させるステアリングユニット7が設けられている。また、従動ローラー21と前駆動ローラー31の間にはシートSの幅方向への端を検出するエッジセンサーSeが配置されている。このエッジセンサーSeは、例えば超音波センサー等の距離センサーで構成することができる。そして、プリンター制御部200は、エッジセンサーSeの検出結果に基づいて、ステアリングユニット7をフィードバック制御して、シートSの幅方向への位置を調整する。これによって、シートSの幅方向への位置が適切化されて、シートSの蛇行等の搬送不良が抑制される。
また、プリンター制御部200は、前駆動ローラー31を駆動する前駆動モーターM31と、後駆動ローラー32を駆動する後駆動モーターM32とを回転させる。これによって、繰出部2から繰り出されたシートSがプロセス部3を通過する。この際、前駆動モーターM31に対してはトルク制御が実行される一方、後駆動モーターM32に対しては速度制御が実行される。つまり、プリンター制御部200は、後駆動モーターM32のエンコーダー出力に基づいて、後駆動モーターM32の回転速度を一定に調整する。これによって、後駆動ローラー32が一定速度で回転し、シートSは後駆動ローラー32によって一定速度で搬送される。
一方、プリンター制御部200は、前駆動モーターM31のトルクを制御して、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32までのシートSのテンション(プロセステンションTb)を調整する。つまり、前駆動ローラー31とプラテンドラム30の間の搬送経路Pcに対して配置された従動ローラー33には、プロセステンションTbを検出するテンションセンサーS33が取り付けられている。このテンションセンサーS33は、例えばシートSから受ける力を検出するロードセルによって構成することができる。こうして、テンションセンサーS33によって、前駆動ローラー31からプラテンドラム30へ向かうシートSのテンションが検出される。そして、プリンター制御部200は、テンションセンサーS33の検出結果に基づいて、前駆動モーターM31のトルクをフィードバック制御して、シートSのプロセステンションTbを調整する。
詳述すると、後駆動ローラー32によって定速搬送されるシートSに対して、前駆動ローラー31がシートSの搬送方向と逆向きの力を作用させるように、前駆動モーターM31のトルクが制御される。こうして、前駆動ローラー31と後駆動ローラー32の間において、シートSが前駆動モーターM31のトルクに応じた力で張られて、シートSのプロセステンションTbが一定に調整される。
また、プリンター制御部200は、巻取軸40を駆動する巻取モーターM40を回転させて、後駆動ローラー32が搬送するシートSを巻取軸40に巻き取る。この際、プリンター制御部200は、巻取モーターM40のトルクを制御して、後駆動ローラー32から巻取軸40までのシートSのテンション(巻取テンションTc)を調整する。つまり、後駆動ローラー32と巻取軸40の間に配置された従動ローラー41には、巻取テンションTcを検出するテンションセンサーS41が取り付けられている。このテンションセンサーS41は、例えばシートSから受ける力を検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部200は、テンションセンサーS41の検出結果に基づいて、巻取モーターM40のトルクをフィードバック制御して、シートSの巻取テンションTcを調整する。具体的には、プリンター制御部200は、巻取軸40に巻き取られたシートSからなるロールの径の増大に応じて、巻取りテンションTcを減少させる。これによって、ロール径の増大に伴って、ロール中心付近のシートSの圧力が過大になって、シートSが破損することがないように制御される。
こうしてプリンター制御部200の制御を受けて、シートSは、搬送経路Pcに沿って繰出軸20から巻取軸40へ向けて搬送される。つまり、プリンター制御部200は、各モーターM20、M31、M32、M40を上述のように制御することで、搬送経路Pcに沿って繰出軸20から巻取軸40へ向かう順方向DfにシートSを搬送する順搬送モードを実行することができる。そして、プリンター制御部200は、順搬送モードでシートSを搬送しつつ、各記録ヘッド51、52がシートS表面にインクを吐出して形成した画像を、UVランプ62、63の点灯状態でそれぞれの照射対象領域に通過させてシートSに定着させる画像記録処理を実行できる。
さらに、この実施形態のプリンター制御部200は、各モーターM20、M31、M32、M40を制御することで、順搬送モードとは逆向きにシートSを搬送する逆搬送モードも実行可能である。この逆搬送モードは、搬送経路Pcに沿って巻取軸40から繰出軸20へ向かう逆方向にシートSを搬送するモードであり、種々の目的に応じて適宜実行される。一例を挙げれば、一の画像記録処理が終了した際に次の画像記録処理に備えて頭出しを行う場合に、逆搬送モードが実行される。
つまり、一の画像記録処理が終了した時点では、当該一の画像記録処理で形成されてシートSに定着された画像は、搬送経路Pcの順方向DfにおいてUVランプ63より下流側にある。そのため、一の画像記録処理で記録された画像と、次の画像記録処理で記録ヘッド51が画像の記録を開始する位置とは大きく離れている。したがって、この状態で次の画像記録処理を開始すると、一の画像記録処理で記録された画像と次の画像記録処理で記録される画像との間に大きな間隔が空いてしまう。そして、このような間隔は、画像の記録されないやれ紙となってしまう。そこで、一の画像記録処理が終了した際には、逆搬送モードを実行することで、記録ヘッド51が画像の記録を行う位置あるいは当該位置よりも搬送経路Pcの順方向の上流側に移動させて、一の画像記録処理で記録された画像と次の画像記録処理で記録される画像との間隔を少なくして、やれ紙の発生を抑えることができる。
ただし、このようなシートSの逆搬送を行なった場合、既に光照射を受けてシートSに定着済みの画像が、搬送経路Pcの順方向においてUVランプ62、63の上流側にまで移動することとなる。そのため、次に実行される画像記録処理では、前回の画像記録処理の際に既に光照射を受けてシートSに定着した画像が再びUVランプ62、63の前を通過して、定着のための光の照射を受けることが考えられる。一方で、画像をシートSに定着させるためには、相当程度の強い光がUVランプ62、63から照射されている。そのため、シートSに定着済みの画像が、このような強い光の照射を再度受けることで質の劣化を引き起こしてしまうおそれがあった。このような問題に対応するため、この実施形態のプリンター制御部200は、シートSの搬送に応じてUVランプ62、63の点灯タイミングを制御している。続いては、この制御動作について詳述する。
図4は、第1実施形態において実行されるUVランプの点灯タイミング制御の一例を模式的に示すタイミングチャートである。図5は、図4のタイミングチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示した動作説明図である。図5において、符号R(51)、R(52)は、記録ヘッド51、52がシートS表面にインクを吐出する領域(インク吐出領域)を示し、符号R(62)、R(63)は、UVランプ62、63の照射対象領域を示している。図5から判るように、各記録ヘッド51のインク吐出領域R(51)よりも順方向Dfの下流側にUVランプ62の照射対象領域R(62)は位置し、記録ヘッド52のインク吐出領域R(52)よりも順方向Dfの下流側にUVランプ63の照射対象領域R(63)は位置している。また、図5において、ドットハッチングが施された画像I(n)等はシートSに定着済みの画像を示し、ドットハッチングが施されていない画像I(n+1)等はシートSに未定着の画像を示している。
これらの図では、n個の画像I(1)、…、I(n-1)、I(n)を順番にシートS表面に形成する一の画像記録処理M1が終了した後に、所定個数の画像I(n+1)、I(n+2)、…を順番にシートS表面に形成する次の画像記録処理M2を再開するといった動作が例示されている。なお、この動作は、プリンター制御部200の制御によって実行されるものである。具体的には、プリンター制御部200は、シートSの搬送に従動するプラテンドラム30のドラムエンコーダーE30の出力に基づいてシートSの搬送位置を把握しつつ、画像記録処理の制御、とりわけUVランプ62、63の点灯制御を実行する。
この動作例では、画像記録処理M1において、n個の画像I(1)、…、I(n-1)、I(n)が搬送経路Pcの方向に等間隔Liを空けながら並んで形成される。そして、画像記録処理M1で最後に形成された画像I(n)が、搬送経路Pcの順方向Dfへ搬送されつつUVランプ63の照射対処領域R(63)を時刻t1に通過して、シートSへ定着される。こうして、画像記録処理M1が完了する。つまり、図5の「t1」の欄に示すように、順方向Dfにおいて、画像I(n)の上流端が照射対象領域R(63)の下流端を過ぎた時刻t1において、画像記録処理M1で形成される全ての画像I(1)、…、I(n-1)、I(n)がシートSに定着されて、画像記録処理M1が完了する。また、画像記録処理M1が終了した時刻t1において、UVランプ62、63が消灯されるとともに、シートSの搬送速度が順搬送速度Vfから減速される。そして、時刻t1で減速が開始されたシートSの搬送は、時刻t2において完全に停止する。ちなみに、図5の「t2」の欄に示すように、シートSは時刻t1〜t2の減速期間に順方向Dfへ距離L1だけ移動しており、言い換えれば、シートSは画像記録処理M1の終了後に距離L1だけ空走する。
続く時刻t3では、逆搬送モードによってシートSの逆搬送が実行される。この逆搬送モードでは、シートSの搬送速度は、搬送経路Pcの逆方向Dbにおいて、逆搬送速度Vbまで加速されてこの逆搬送速度Vbで一定となった後に減速される。こうして、シートSの逆方向Dbへの搬送は、時刻t3で開始された後に時刻t4で停止する。そして、図5の「t4」の欄に示すように、時刻t3〜t4にかけて実行された逆搬送モードによって、シートSは逆方向Dbへ距離L2(>L1)だけ移動する。ちなみに、逆搬送速度Vbの絶対値は、順搬送速度Vf未満に設定されている。
このような逆搬送を実行した結果、順方向Dfにおいて、画像記録処理M1で最後に形成された画像I(n)の上流端は、最上流の記録ヘッド51のインク吐出領域R(51)の上流端に対して、距離L3(<L2)だけ上流側に位置する。この距離L3は、次の画像記録処理M2のための頭出しに要する頭出し距離に設定されている。詳述すると、次の画像記録処理M2の再開のため、シートSの順搬送モードでの搬送を始めるにあたり、順方向Dfにおいて画像I(n)の上流端が最上流の記録ヘッド51のインク吐出領域R(51)の上流端に到達するまでに、シートSの搬送速度が順搬送速度Vfにまで加速されるように、頭出し距離L3が設定されている。
そして、時刻t5で画像記録処理M2が開始されると、順搬送モードが実行されて、シートSは順方向Dfへと加速される。このシートSの搬送速度は、時刻t6において順搬送速度Dfに到達した後に一定となる。また、頭出し距離L3が上述のように設定されているため、シートSの定速搬送が確立した時刻t6において、画像I(n)の上流端が最上流の記録ヘッド51のインク吐出領域R(51)の上流端に到達する(図5の「t6」の欄参照)。したがって、画像記録処理M2において、記録ヘッド51、52は、画像I(n)の後に続けて画像I(n+1)の形成を開始することができる。こうして、画像記録処理M1で形成された画像I(1)、…、I(n-1)、I(n)と、画像記録処理M2で形成される画像I(n+1)、I(n+2)とを、シートSの搬送経路Pcの方向に等間隔Liで並べることができる。
このように順搬送モードで順方向Dfに搬送されるシートSに伴って、画像記録処理M1で最後に形成された画像I(n)が照射対象領域R(62)を通過した時刻t7において、UVランプ62が点灯される(図5の「t7」の欄)。換言すれば、順方向Dfにおいて、画像I(n)の上流端が照射対象領域R(62)の下流端を過ぎて、画像記録処理M1で形成された全ての画像I(1)、…、I(n-1)、I(n)が照射対象領域R(62)を通過した時刻t7に、UVランプ62が点灯される。その結果、画像記録処理M1で最後に形成された画像I(n)と、画像記録処理M2で最初に形成された画像I(n+1)との間隙が照射対象領域R(62)に位置するタイミングで、UVランプ62が点灯されることとなる。したがって、画像記録処理M2で記録ヘッド51の吐出したインクで構成された画像I(n+1)、I(n+2)、…は、照射対象領域R(62)を順方向Dfへ通過する際にUVランプ62より紫外線の照射を受ける。なお、この実施形態では、逆搬送のシートSを逆方向Dbに移動させる距離L2が調整されており、その結果、再開後の画像記録処理M2では、UVランプ62が点灯する時点t7以前の時刻t6において、シートSの順方向Dfへの定速搬送が確立されている。
さらに、順搬送モードで順方向Dfに搬送されるシートSに伴って、画像記録処理M1で最後に形成された画像I(n)が照射対象領域R(63)を通過した時刻t8において、UVランプ63が点灯される(図5の「t8」の欄)。換言すれば、順方向Dfにおいて、画像I(n)の上流端が照射対象領域R(63)の下流端を過ぎて、画像記録処理M1で形成された全ての画像I(1)、…、I(n-1)、I(n)が照射対象領域R(63)を通過した時刻t8に、UVランプ63が点灯される。その結果、画像記録処理M1で最後に形成された画像I(n)と、画像記録処理M2で最初に形成された画像I(n+1)との間隙が照射対象領域R(63)に位置するタイミングで、UVランプ63が点灯される。したがって、画像記録処理M2において記録ヘッド51の吐出したインクの上から記録ヘッド52の吐出したインクを重ねて構成された画像I(n+1)、I(n+2)、…は、照射対象領域R(62)を順方向Dfへ通過する際にUVランプ63より紫外線の照射を受ける。なお、この実施形態では、逆搬送のシートSを逆方向Dbに移動させる距離L2が調整されており、その結果、再開後の画像記録処理M2では、UVランプ63が点灯する時点t8以前の時刻t6において、シートSの順方向Dfへの定速搬送が確立されている。
以上に説明したように、この実施形態では、搬送経路Pcの順方向DfにシートSを搬送する順搬送モードを実行可能であるとともに、当該順方向Dfと逆向きの搬送経路Pcの逆方向DbにシートSを搬送する逆搬送モードを実行可能である。そして、画像記録処理M1では、搬送経路Pcの順方向Dfに搬送されるシートSに伴って照射対象領域R(62)、R(63)を通過する画像I(1)、…、I(n)に対して紫外線が照射されて、画像I(1)、…、I(n)がシートSに定着される。一方、画像記録処理M1が終了すると、搬送経路Pcの逆方向DbにシートSが移動されて(逆搬送)、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が搬送方向Pcの順方向Dfにおいて照射対象領域R(62)、R(63)よりも上流側まで移動する。したがって、このまま画像記録処理M2が再開されると、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が照射対象領域R(62)、R(63)を通過する際に紫外線の照射を再び受けるおそれがあった。これに対して、この実施形態では、画像記録処理M1が終了すると、UVランプ62、63は消灯される。そして、画像記録処理M2を再開した際には、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が照射対象領域R(62)、R(63)を通過してから、UVランプ62、63が点灯される。したがって、シートSの逆搬送の実行に起因して、定着済みの画像I(1)、…、I(n)に定着のための紫外線が再度照射されることが抑止され、良質な画像I(1)、…、I(n)の記録が可能となっている。
ちなみに、この実施形態では、本硬化用のUVランプ62、63の点灯タイミングについて詳述し、仮硬化用のUVランプ61の点灯タイミングについては特に述べなかった。これは、仮硬化用のUVランプ61の紫外線の強度が弱いため、画像記録処理M2を再開した際に、UVランプ62の紫外線がシートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)に再び照射されたとしても、画像I(1)、…、I(n)への影響は軽微もしくは無視できる程度であると考えられるからである。ただし、このUVランプ61についても、UVランプ62、63と同様の点灯制御を行っても良いことは言うまでも無い。つまり、画像記録処理M1が終了すると、UVランプ61を消灯するとともに、画像記録処理M2が再開された際には、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)がUVランプ62の照射対象領域を通過してからUVランプ61を点灯させるといった制御を、3個のUVランプ61それぞれに対して実行することができる。
また、この実施形態では、UVランプ62、63は、搬送経路Pcの方向においてトップハット型の強度分布を有する紫外線をシートSに照射している。また、プリンター制御部200は、強度分布の頂上部分Ptに対応する領域が照射対象領域R(62)、R(63)であるとして画像記録処理M2を実行するように構成している。つまり、トップハット型の紫外線強度分布のうち強度の強い(換言すれば、定着に要する強度を具備する)頂上部分Ptを照射対象領域R(62)、R(63)として取り扱うことで、強度の強い当該頂上部分Ptの紫外線が定着済みの画像I(1)、…、I(n)に照射されることが抑止され、良質な画像I(1)、…、I(n)の記録が可能となっている。
ところで、画像記録処理M1の再開後、順搬送モードでのシートSの搬送を開始して搬送速度Vfでの定速搬送が確立するまでの間は、シートSの搬送は加速中の状態にある。これに対して、UVランプ62、63の点灯時においてシートSの搬送速度が加速の途中にあって低いと、単位時間辺りに照射される紫外線量が過大となってしまい、再開された画像記録処理M2によって形成される画像I(n+1)、I(n+2)、…の質が劣化する場合が考えられる。
これに対して、この実施形態では、画像記録処理M2を再開した際には、順搬送モードで搬送開始されたシートSの定速搬送が確立してから、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が照射対象領域R(62)、R(63)を通過する。したがって、UVランプ62、63が点灯される時点では、シートSの定速搬送が確立されている。したがって、単位時間辺りに照射される紫外線量を適切化して、画像記録処理M2で形成される画像I(n+1)、I(n+2)、…の質の劣化を抑制可能となっている。
第2実施形態
図6は、第2実施形態において実行されるUVランプの点灯タイミング制御の一例を模式的に示すタイミングチャートである。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、画像記録処理M1終了後の逆搬送において、シートSが逆方向Dbに移動させる距離L2が第1実施形態よりも短く設定されている点である。これ以外の点については、第2実施形態の構成は第1実施形態の構成と共通するため、以下では差異点を中心に説明することとし、共通点については相当符号を付して説明を適宜省略する。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
第2実施形態では、画像記録処理M1の完了後のシートSの逆搬送において、シートSを逆方向Dbに搬送する期間t3〜t4や逆搬送速度Vbが第1実施形態よりも減少している。その結果、シートSが逆方向Dbへ移動する距離L2が第1実施形態よりも短くなっている。しかも、距離L2が短いことに起因して、シートSの逆搬送の後に開始された画像記録処理M2では、UVランプ62を点灯させる時刻t7においても、順方向DfへのシートSへの搬送速度が加速中であって順搬送速度Vfに到達していない。このような場合、単位時間辺りに照射される紫外線量が過大となってしまい、画像記録処理M2によって形成される画像I(n+1)、I(n+2)の質が劣化することが考えられる。
これに対して、この実施形態では、点灯時にUVランプ62が射出する紫外線の量が調整可能に構成されている。そして、プリンター制御部200は、画像記録処理M2を再開した際にUVランプ62を点灯するにあたって、順搬送モードでのシートSの搬送が加速中である場合は、シートSの搬送速度の上昇に応じて点灯後のUVランプ62の紫外線量を増大させている(図6の時刻t7〜t6)。そして、順搬送速度VfでのシートSの定速搬送が確立された時刻t6以後に、UVランプ62の紫外線量を一定にしている。このように、シートSの搬送速度の上昇に応じて点灯後のUVランプ62の紫外線量を増大させることで、単位時間辺りにシートSに照射される紫外線量を適切化して、再開された画像記録処理M2によって形成される画像の質の劣化を抑制できる。
第3実施形態
ところで、上述のようなプリンター1では、逆搬送の前に実行された画像記録処理M1において画像は未記録であるものの照射対象領域R(62)、R(63)での光照射を受けたシートSの未記録部分が、逆搬送によって、記録ヘッド51、52からインクの吐出を受ける位置R(51)、R(52)の順方向Dfの上流側に移動する場合がある。しかしながら、このような照射対象領域R(62)、R(63)での光照射を受けた未記録部分は変質してしまい、再開される画像記録処理M2において画像の記録に適さない場合がある。こうした場合、画像記録処理M2において、記録ヘッド51、52が画像記録に不適切な当該未記録部分に画像I(n+1)、I(n+2)を形成してしまい、画像I(n+1)、I(n+2)の質が劣化するおそれがある。第3実施形態はこれに対応する構成を具備するものである。
図7は、第3実施形態において実行されるUVランプの点灯タイミング制御の一例を模式的に示すタイミングチャートである。図8は、図7のタイミングチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示した動作説明図である。図8において、斜線ハッチングで示された領域Rxは、画像記録処理M1において画像は未記録であるものの照射対象領域R(62)、R(63)での光照射を受けたシートSの未記録領域(未記録被照射領域)を示す。なお、以下では第3実施形態と上記実施形態との差異点を中心に説明することとし、共通点については相当符号を付して説明を適宜省略する。なお、第3実施形態においても、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
第3実施形態では、画像記録処理M1が終了した時刻t1より所定時間経過した時刻t11において、UVランプ62、63が消灯される。そのため、時刻t1〜t11の間は、順方向Dfに空走するシートSの表面に紫外線が照射される。その結果、シートSの搬送が停止した時刻t2において、照射対象領域R(62)、R(63)それぞれの順方向Dfの下流側には、未記録被照射領域Rxが存在することとなる。そして、画像記録処理M1の終了後に実行される逆搬送では、これら未記録非照射領域Rxは、記録ヘッド51、52が画像を記録する領域R(51)、R(52)に対して順方向Dfの上流側まで移動する。
ただし、この実施形態では、次に実行される画像記録処理M2において、これら未記録被照射領域Rxを外して、画像I(n+1)、I(n+2)、…が形成される。具体的には、図8の時刻「t8」に表れているように、画像記録処理M2では、これら未記録被照射領域Rxよりも順方向Dfの上流側に外れた位置にインクが吐出されて、画像I(n+1)、I(n+2)、…が形成される。
つまり、この実施形態では、画像記録処理M2が再開した際には、順搬送モードでシートSの搬送が開始されるとともに、未記録被照射領域Rxが領域R(52)、R(52)の両方より順方向Dfの下流側に移動してから、記録ヘッド51、52が画像I(n+1)、I(n+2)の形成を開始する。これによって、未記録被照射領域Rxを外して、画像I(n+1)、I(n+2)、…が形成される。そのため、再開された画像記録処理M2において、既に紫外線照射を受けて変質したシートの未記録被照射領域Rxに、画像I(n+1)、I(n+2)、…が記録されることは無い。したがって、再開された画像記録処理M2で記録される画像I(n+1)、I(n+2)、…の質を保つことが可能となっている。
第4実施形態
ところで、照射対象領域Rxでの紫外線照射をすでに受けているシートSの未記録部分(つまり、未記録被照射領域Rx)に、再開された画像記録処理M2でさらに紫外線が照射されると、この未記録被照射領域Rxが伸縮する等して、シートSのテンションが変動する場合が考えられる。このような場合、再開された画像記録処理M2で形成される画像I(n+1)、I(n+2)、…に影響が出るおそれもある。第4実施形態はこれに対応する構成を具備するものである。
図9は、第4実施形態において実行される動作の一例を模式的に示した動作説明図である。なお、以下では第4実施形態と上記実施形態との差異点を中心に説明することとし、共通点については相当符号を付して説明を適宜省略する。なお、第4実施形態においても、上記実施形態と共通する構成を備えることで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
この実施形態においても第3実施形態と同様に、画像記録処理M1が終了した時刻t1より所定時間経過した時点で、UVランプ62、63が消灯されるため、順方向Dfに空走するシートSの表面に紫外線が照射される。そのため、シートSの搬送が停止した時刻t2では、照射対象領域R(62)、R(63)それぞれの順方向Dfの下流側に未記録被照射領域Rxが存在する。また、画像記録処理M1の終了後の逆搬送では、これら未記録非照射領域Rxは、記録ヘッド51、52が画像を記録する領域R(51)、R(52)に対して順方向Dfの上流側まで移動する。そして、画像記録処理M2の再開の際には、順搬送モードでシートSの搬送が開始されるとともに、未記録被照射領域Rxが領域R(52)、R(52)の両方より順方向Dfの下流側に移動してから、記録ヘッド51、52が画像I(n+1)、I(n+2)の形成を開始する。こうして、未記録被照射領域Rxを外して画像I(n+1)、I(n+2)、…が形成される。
ただし、この実施形態では、画像記録処理M2においてUVランプ62、63を点灯させるタイミングが上記実施形態と異なる。つまり、図9の欄「t7」に示すように、未記録被照射領域Rxの両方が照射対象領域R(62)を通過してから(同図の例では、通過した時点で)、UVランプ62が点灯される。これによって、記録ヘッド51がこれら未記録被照射領域Rxの順方向Dfの上流側に吐出したインクで構成される画像I(n+1)、I(n+2)が、照射対象領域R(62)を通過する際にUVランプ62より紫外線の照射を受ける。さらに、図9の欄「t8」に示すように、未記録被照射領域Rxの両方が照射対象領域R(63)を通過してから(同図の例では、通過した時点で)、UVランプ63が点灯される。これによって、記録ヘッド51の吐出したインクの上から記録ヘッド52の吐出したインクを重ねて構成された画像I(n+1)、I(n+2)が、照射対象領域R(63)を通過する際にUVランプ63より紫外線の照射を受ける。
このように第4実施形態では、画像記録処理M2が再開した際には、順搬送モードでシートSの搬送が開始されるとともに、未記録被照射領域Rxが照射対象領域R(62)、R(63)を通過してからUVランプ62、63が点灯する。このような構成では、再開された画像記録処理M2において、未記録被照射領域Rxに紫外線が再び照射されることは無い。したがって、再開された画像記録処理M2で記録される画像I(n+1)、I(n+2)の質を保つことができる。
その他
以上のように、上記実施形態では、プリンター1が本発明の「画像記録装置」に相当し、シートSが本発明の「記録媒体」に相当し、インクが本発明の「液体」に相当し、繰出軸20、前駆動ローラー31、後駆動ローラー32、巻取軸40およびこれらを駆動するモーターM20、M31、M32、M40が協働して本発明の「搬送部」として機能し、記録ヘッド51、52が本発明の「吐出部」に相当し、UVランプ62、63が本発明の「光照射部」に相当し、照射対象領域R(61)、R(62)が本発明の「照射対象領域」に相当し、紫外線が本発明の「光」に相当し、プリンター制御部が本発明の「制御部」に相当し、画像記録処理M1、M2が本発明の「画像記録処理」に相当し、プログラム124が本発明の「プログラム」に相当し、メディア122が本発明の「プログラム記録媒体」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第1実施形態では、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が照射対象領域R(62)、R(63)を通過した時点t7、t8でUVランプ62、63を点灯していた。しかしながら、UVランプ62、63の点灯タイミングはこれに限られず、例えば、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が照射対象領域R(62)、R(63)を通過した時点t7、t8から少し経過してからUVランプ62、62を点灯させるように、第1実施形態を変形しても良い。
つまり、図2で例示したように、実際のトップハット型の強度分布は、頂上部分Ptの両側で裾を引いた形状となることが多い。具体的には、トップハット型の分布を示す紫外線の強度は、頂上部分Ptにおいては強くかつ一様である一方で、裾部分Psにおいては分布の外側に向けて急峻に低下する。そこで、定着済みの画像I(1)、…、I(n)が照射対象領域R(62)、R(62)を通過してさらに、強度分布において紫外線強度が急峻に低下し始める位置(つまり裾部分Ps内の位置)を通過した時点で、UVランプ62、63を点灯するように構成しても良い。
具体的には、プリンター制御部200は、画像記録処理M2を再開した際には、シートSに定着済みの画像I(1)、…、I(n)が、強度分布において頂上部分Ptの順方向Dfの上流側であって頂上部分Ptよりも紫外線強度が所定割合だけ低い位置を通過した時点で、UVランプ62、63を点灯すれば良い。このような構成では、トップハット型の強度分布の頂上部分Ptに相当する照射対象領域R(62)を定着済みの画像I(1)、…、I(n)が完全に通過してから、UVランプ62点灯されるとともに、トップハット型の強度分布の頂上部分Ptに相当する照射対象領域R(63)を定着済みの画像I(1)、…、I(n)が完全に通過してから、UVランプ63点灯される。したがって、強度の強い頂上部分Ptの紫外線が定着済みの画像I(1)、…、I(n)に照射されることが確実に抑止され、良質な画像I(1)、…、I(n)の記録を効果的に行うことができる。ちなみに、この際に裾部分Psの光が定着済みの画像I(1)、…、I(n)に照射されたとしても、この裾部分Psの紫外線の強度は搬送経路Pcの方向において急峻に低下するため、定着済みの画像I(1)、…、I(n)が受ける影響は極めて少ないと考えられる。
この際の上記所定割合としては、種々の値が採用可能であるが、プリンター制御部200は、所定割合が5%であるとして画像記録処理M2でのUVランプ62、63の点灯を制御しても良い。あるいは、プリンター制御部200は、所定割合が10%であるとして画像記録処理M2でのUVランプ62、63の点灯を制御しても良い。
また、上記第1実施形態では、UVランプ62、63が点灯される時点で、シートSの定速搬送を確立するために、逆搬送でシートSを移動させる距離L2が調整されていた。しかしながら、このような逆搬送距離L2を調整するのではなく、UVランプ62、63の点灯タイミングを調整することにより、これらの点灯時点でシートSの定速搬送が確立されているように構成しても良い。つまり、エンコーダーE30の出力からシートSの搬送速度を検出することができる。そこで、プリンター制御部200は、画像記録処理M2を再開した際には、順搬送モードで搬送開始されたシートSの定速搬送が確立したことを、エンコーダーE30の出力に基づいて確認してからUVランプ62、63を点灯するように構成できる。このような構成においても、UVランプ62、63が点灯される時点では、シートSの定速搬送が確立されている。したがって、単位時間辺りに照射される紫外線量を適切化して、画像記録処理M2で形成される画像I(n+1)、I(n+2)、…の質の劣化を抑制可能となっている。
また、上記実施形態では、画像記録処理M1で記録した画像I(1)、…、I(n)の全てが、照射対象領域R(62)、R(63)を通過してから当該照射対象領域に対応するUVランプ62、63を点灯していた。このような構成は、画像記録処理M1で記録した画像I(1)、…、I(n)の全ての質を高く保つことができるという点で極めて好適である。ただし、例えば画像記録処理M2において、画像I(n)が照射対象領域R(62)、R(63)を通過している途中に、当該照射対象領域に対応するUVランプ62、63を点灯したとしても、その他の画像I(1)、…、I(n-1)については紫外線の再照射を受けることは無いので、高い質を保つことができる点は言うまでも無い。
また、画像記録処理M1の終了後に、UVランプ62、63を消灯するタイミングについても、適宜変更が可能である。
また、上記実施形態では、UVランプ62、63はトップハット型の強度分布を有する紫外線を照射していた。しかしながら、UVランプ62、63が照射する紫外線の強度分布はこれに限られず、例えばガウシアン型であっても良い。ちなみに、ガウシアン型の強度分布を有する紫外線の照射対象領域R(62)、R(63)は、強度がピーク値の1/e2(=13.5%)以上の領域とするのが一般的である。ここで、「e」は自然対数の底である。
また、上記実施形態では、透明インク用の記録ヘッド52およびUVランプ63が設けられていた。しかしながら、これらを具備しないプリンター1に対しても本発明を適用可能である。
また、上記実施形態では、仮硬化用のUVランプ61が設けられていたが、これらを排してプリンター1を構成しても良い。
また、記録ヘッド51、52やUVランプ61、62、63等を配置する位置についても、適宜変更が可能である。
また、上記実施形態では、カラー画像を形成するプリンター1に対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、モノクロ画像を形成するプリンター1に対しても本発明を適用可能である。
また、上記実施形態では、円筒形状のプラテンドラム30でシートSを支持していた。しかしながら、シートSを支持する具体的構成はプラテンドラム30に限られない。