しかしながら、上記の記録装置のように、2本の駆動ローラーの周速度に速度差を設けることで記録媒体にテンションを与える構成では、駆動ローラーと記録媒体の間に滑りが発生して、記録媒体のテンションが変動する場合があった。その結果、記録媒体を安定して搬送することができずに、記録媒体でのインクの着弾位置が変動して、十分な位置精度で記録媒体に画像を記録できない、という課題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る画像記録装置は、第1駆動ローラーと第2駆動ローラーとを回転させ、記録媒体を前記第1駆動ローラーから前記第2駆動ローラーへ搬送する搬送部と、前記第1駆動ローラーと前記第2駆動ローラーの間で前記記録媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に支持された前記記録媒体に液体を吐出して画像を記録する記録部と、前記第1駆動ローラーと前記第2駆動ローラーとの間における前記記録媒体のテンションを検出する検出部と、前記検出部の検出した前記記録媒体のテンションに基づいて、前記第1駆動ローラーのトルクを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体を張架する第1駆動ローラーおよび第2駆動ローラーを回転させることで、第1駆動ローラーから第2駆動ローラーへ記録媒体を搬送する。そして、第1駆動ローラーのトルクを制御することで、記録部が画像記録を行なう記録媒体にテンションが与えられる。つまり、記録媒体を搬送する2本の駆動ローラーの周速度に差を持たせるのではなく、第1駆動ローラーのトルクを制御することで、記録媒体にテンションが与えられる。このような構成では、上述したような駆動ローラーと記録媒体の間における滑りの発生を抑えて、記録媒体のテンション変動を抑えることができる。その結果、記録媒体の安定した搬送を実現して、高い位置精度で記録媒体に画像を記録することが可能となる。
[適用例2]上記適用例に係る画像記録装置の前記制御部は、前記第2駆動ローラーの速度を制御して、前記第2駆動ローラーを所定速度で回転させることを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体の搬送方向において第2駆動ローラーより上流側の記録媒体のテンションと下流側の記録媒体のテンションとを独立させることができる。換言すれば、第2駆動ローラーの下流側のテンションは、第2駆動ローラーの上流側のテンションに影響しない。したがって、第2駆動ローラーの下流側でテンションが変動したとしても、第2駆動ローラーの上流側ではテンションの安定した記録媒体に画像の記録を行なうことができ、好適である。
[適用例3]上記適用例に係る画像記録装置は、前記第2駆動ローラーから送り出された前記記録媒体を巻き取る巻取ローラーをさらに備え、前記制御部は、前記巻取ローラーのトルクを制御することで、前記巻取ローラーに巻き取られた前記記録媒体の量の増大に応じて、前記巻取ローラーに巻き取る際の前記記録媒体のテンションを減少させることを特徴とする。
この構成によれば、第2駆動ローラーより上流側で画像記録を受ける記録媒体のテンションに影響を与えること無く、巻取ローラーに巻き取られた記録媒体の量の増大に応じて、巻取ローラーに巻き取る際の記録媒体のテンションを減少させることができる。そして、このように巻取ローラーに巻き取る際の記録媒体のテンションを減少させることで、巻取ローラーに巻き取られる記録媒体の量の増大に伴って、巻取ローラー付近の記録媒体の圧力が過大になって、記録媒体が破損することがないように制御することができる。
[適用例4]上記適用例に係る画像記録装置の前記検出部は、前記第1駆動ローラーと前記支持部材との間で前記記録媒体のテンションを検出することを特徴とする。
記録媒体に液体を吐出して画像を記録する構成では、記録媒体において液体の付着部分とその他の部分の間でテンションの差(テンション分布)が発生することがある。ただし、記録媒体を支持部材で支持することで、このような微視的なテンション分布によらず、記録媒体の全体的なテンションを安定させることができる。したがって、支持部材に支持された記録媒体に対して画像を記録するように構成しておけば、微視的なテンション分布の影響を受けずに、適切に画像を記録することができる。
一方、記録媒体が支持部材から離れて自由に伸縮できるようになると、この微視的なテンション分布が記録媒体全体のテンション変動を引き起こす場合がある。換言すれば、記録媒体に発生したテンション分布が、支持部材から離れて第2駆動ローラーへ向かう記録媒体のテンションを変動させる場合がある。このテンション変動は、画像記録済みの記録媒体において起きるものであるので、基本的には画像記録に影響を与えるものではない。しかしながら、検出部がこのテンション変動を検出して、第1駆動ローラーのトルクを変化させると、支持部材上での記録媒体のテンションが変動させられてしまうことが考えられる。
従って、この構成によれば、支持部材から離れた後の記録媒体のテンションによらず、支持部材上の記録媒体のテンション変動を適切に抑えることができる。したがって、記録媒体の安定した搬送を実現して、高い位置精度で記録媒体に画像を記録するにあたって、有利と言える。
[適用例5]上記適用例に係る画像記録装置の前記記録部は、光によって硬化する光硬化性のインクを前記液体として吐出する上記に記載の画像記録装置であって、前記記録部から前記記録媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射部をさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、光照射部を、支持部材に巻き掛けられた記録媒体の表面に対して一定のクリアランスを空けて対向しており、さらに、記録媒体を搬送する搬送部を、光照射部より上流側で構成しているので、使用するインクの種類によらず記録媒体に対し安定したテンションを与えることができ、十分な位置精度で記録媒体に画像を記録できる。さらに詳細には、このような光硬化性のインクは、硬化反応に伴って発熱するとともに、光を吸収することによっても発熱する。したがって、記録媒体上において、インクの付着部分の温度はそれ以外の部分の温度よりも高くなる。よって、高温部分と低温部分でテンションの差ができて、上述のようなテンション分布が記録媒体に発生し、支持部材から第2駆動ローラーの間で記録媒体のテンションが変動しやすい。そこで、上記のように構成して、支持部材から離れた後の記録媒体のテンションによらず、支持部材上の記録媒体のテンション変動を適切に抑えることが好適となる。
[適用例6]上記適用例に係る画像記録装置は、前記第1駆動ローラーから前記支持部材へ向かう前記記録媒体を巻き掛ける従動ローラーをさらに備え、前記検出部は、前記従動ローラーに設けられたことを特徴とする。
この構成によれば、テンションの検出動作が記録媒体の搬送に与える影響を抑えながら記録媒体のテンションを検出することができ、好適である。
[適用例7]上記適用例に係る画像記録装置の前記支持部材が、前記記録媒体を巻き掛けて、前記搬送部により搬送される前記記録媒体との間の摩擦力を受けて回転するドラムであることを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体を支持するドラムは、搬送される記録媒体に追従して回転する。したがって、記録媒体とドラムの間の滑りの発生を抑えて、記録媒体のテンションを安定化させるのに有利となる。
[適用例8]本適用例に係る画像記録方法は、記録媒体を張架する第1駆動ローラーと第2駆動ローラーを回転させることで、前記第1駆動ローラーから前記第2駆動ローラーへと搬送される前記記録媒体を支持部材で支持するとともに、前記支持部材に支持された前記記録媒体に液体を吐出して画像を記録する画像記録方法において、前記記録媒体のテンションを検出した結果に基づいて、前記第1駆動ローラーのトルクを制御することで、前記記録媒体にテンションを与えることを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体を張架する第1駆動ローラーおよび第2駆動ローラーを回転させることで、第1駆動ローラーから第2駆動ローラーへ記録媒体を搬送する。そして、第1駆動ローラーのトルクを制御することで、記録部が画像記録を行なう記録媒体にテンションが与えられる。つまり、記録媒体を搬送する2本の駆動ローラーの周速度に差を持たせるのではなく、第1駆動ローラーのトルクを制御することで、記録媒体にテンションが与えられる。このような構成では、上述したような駆動ローラーと記録媒体の間における滑りの発生を抑えて、記録媒体のテンション変動を抑えることができる。その結果、記録媒体の安定した搬送を実現して、高い位置精度で記録媒体に画像を記録することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせて示している。
まず、画像記録装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、画像記録装置としてのプリンターを例に挙げて説明する。図1は、プリンターの構成を示す模式図である。図1に示すように、画像記録装置としてのプリンター1では、その両端が第1駆動ローラーとしての繰出軸20および巻取ローラーとしての巻取軸40にロール状に巻き付けられた1枚のシートS(ウェブ)が、繰出軸20と巻取軸40の間に張架されており、シートSはこうして張架された経路Pcに沿って、繰出軸20から巻取軸40へと搬送される。そして、プリンター1では、この搬送経路Pcに沿って搬送されるシートSに対して画像が記録される。シートSの種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。概略的には、プリンター1は、繰出軸20からシートSを繰り出す繰出部2と、繰出部2から繰り出されたシートSに画像を記録するプロセス部3と、プロセス部3で画像の記録されたシートSを巻取軸40に巻き取る巻取部4を備える。なお、以下の説明では、シートSの両面のうち、画像が記録される面を表面と称する一方、その逆側の面を裏面と称する。
繰出部2は、シートSの端を巻き付けた繰出軸20と、繰出軸20から引き出されたシートSを巻き掛ける前従動ローラー31とを有する。繰出軸20は、シートSの表面を外側に向けた状態で、シートSの端を巻き付けて支持する。そして、繰出軸20が図1の時計回りに回転することで、繰出軸20に巻き付けられたシートSが前従動ローラー31を経由してプロセス部3へと繰り出される。ちなみに、シートSは、繰出軸20に着脱自在な芯管(図示省略)を介して繰出軸20に巻き付けられている。したがって、繰出軸20のシートSが使い切られた際には、ロール状のシートSが巻き付けられた新たな芯管を繰出軸20に装着して、繰出軸20のシートSを取り換えることが可能となっている。
プロセス部3は、繰出部2から繰り出されたシートSをプラテンドラム30で支持しつつ、プラテンドラム30の外周面に沿って配置された各機能部51,52,61,62, 63により処理を適宜行って、シートSに画像を記録するものである。このプロセス部3では、支持部材としての(またはドラムとしての)プラテンドラム30の両側に繰出軸20と第2駆動ローラーとしての後駆動ローラー32とが設けられており、繰出軸20から後駆動ローラー32へと搬送されるシートSがプラテンドラム30に支持されて、画像記録を受ける。
前従動ローラー31は、溶射によって形成された複数の微小突起を外周面に有しており、繰出部2から繰り出されたシートSを裏面側から巻き掛ける。そして、前従動ローラー31はシートSの搬送力により図1の時計回りに従動回転することで、繰出部2から繰り出されたシートSを搬送経路の下流側へと搬送する。なお、前従動ローラー31に対してはニップローラー31nが設けられている。このニップローラー31nは、前従動ローラー31側へ付勢された状態でシートSの表面に当接しており、前従動ローラー31との間でシートSを挟み込む。これによって、前従動ローラー31とシートSの間の摩擦力が確保され、前従動ローラー31によるシートSの搬送を確実に行なうことができる。
プラテンドラム30は図示を省略する支持機構により回転自在に支持された円筒形状のドラムであり、繰出軸20から後駆動ローラー32へと搬送されるシートSを裏面側から巻き掛ける。このプラテンドラム30は、シートSとの間の摩擦力を受けてシートSの搬送方向Dsに従動回転しつつ、シートSを裏面側から支持するものである。ちなみに、プロセス部3では、プラテンドラム30への巻き掛け部の両側でシートSを折り返す従動ローラー33,34が設けられている。これらのうち従動ローラー33は、前従動ローラー31とプラテンドラム30の間でシートSの表面を巻き掛けて、シートSを折り返す。一方、従動ローラー34は、プラテンドラム30と後駆動ローラー32の間でシートSの表面を巻き掛けて、シートSを折り返す。このように、プラテンドラム30に対して搬送方向Dsの上・下流側それぞれでシートSを折り返すことで、プラテンドラム30へのシートSの巻き掛け部を長く確保することができる。
後駆動ローラー32は、溶射によって形成された複数の微小突起を外周面に有しており、プラテンドラム30から従動ローラー34を経由して搬送されてきたシートSを裏面側から巻き掛ける。そして、後駆動ローラー32は図1の時計回りに回転することで、シートSを巻取部4へと搬送する。なお、後駆動ローラー32に対してはニップローラー32nが設けられている。このニップローラー32nは、後駆動ローラー32側へ付勢された状態でシートSの表面に当接しており、後駆動ローラー32との間にシートSを挟み込む。これによって、後駆動ローラー32とシートSの間の摩擦力が確保され、後駆動ローラー32によるシートSの搬送を確実に行なうことができる。
このように、繰出軸20から後駆動ローラー32へと搬送される。すなわち、繰出軸20および後駆動ローラー32を含む構成が搬送部に相当する。搬送されたシートSは、プラテンドラム30の外周面に支持される。そして、プロセス部3では、プラテンドラム30に支持されるシートSの表面に対してカラー画像を記録するために、互いに異なる色の液体としてのインクに対応した複数の記録ヘッド51が設けられている。具体的には、イエロー、シアン、マゼンタおよびブラックに対応する4個の記録ヘッド51が、この色順で搬送方向Dsに並ぶ。各記録ヘッド51は、プラテンドラム30に巻き掛けられたシートSの表面に対して若干のクリアランスを空けて対向しており、対応する色のインクをインクジェット方式で吐出する。そして、搬送方向Dsへ搬送されるシートSに対して各記録ヘッド51がインクを吐出することで、シートSの表面にカラー画像を形成される。
ちなみに、インクとしては、紫外線(光)を照射することで硬化する光硬化性のインクとしてのUV(ultraviolet)インク(光硬化性インク)が用いられる。そこで、プロセス部3では、インクを硬化させてシートSに定着させるために、光照射部としてのUVランプ61,62(光照射部)が設けられている。なお、このインク硬化は、仮硬化と本硬化の二段階に分けて実行される。複数の記録ヘッド51の各間には、仮硬化用のUVランプ61が配置されている。つまり、UVランプ61は弱い紫外線を照射することで、インクの形状が崩れない程度にインクを硬化(仮硬化)させるものであり、インクを完全に硬化させるものではない。一方、複数の記録ヘッド51に対して搬送方向Dsの下流側には、本硬化用のUVランプ62が設けられている。つまり、UVランプ62は、UVランプ61より強い紫外線を照射することで、インクを完全に硬化(本硬化)させるものである。こうして仮硬化・本硬化を実行することで、複数の記録ヘッド51が形成したカラー画像をシートS表面に定着させることができる。
さらに、UVランプ62に対して搬送方向Dsの下流側には、記録ヘッド52が設けられている。この記録ヘッド52は、プラテンドラム30に巻き掛けられたシートSの表面に対して若干のクリアランスを空けて対向しており、透明のUVインクをインクジェット方式でシートSの表面に吐出する。つまり、4色分の記録ヘッド51によって形成されたカラー画像に対して、透明インクがさらに吐出される。また、記録ヘッド52に対して搬送方向Dsの下流側には、UVランプ63が設けられている。このUVランプ63は強い紫外線を照射することで、記録ヘッド52が吐出した透明インクを完全に硬化(本硬化)させるものである。これによって、透明インクをシートS表面に定着させることができる。
このように、プロセス部3では、プラテンドラム30がその外周面にシートSを巻き掛けて支持する。そして、シートSを巻き掛けるプラテンドラム30の巻掛部分Ra、記録ヘッド51, 52やUVランプ61,62,63といった各機能部がシートSを挟んで対向して、巻掛部分Raに巻き掛けられたシートSの表面にインクの吐出および硬化を適宜実行する。これによって、透明インクでコーティングされたカラー画像が形成される。そして、このカラー画像の形成されたシートSが、後駆動ローラー32によって巻取部4へと搬送される。
巻取部4は、シートSの端を巻き付けた巻取軸40の他に、巻取軸40と後駆動ローラー32の間でシートSを裏面側から巻き掛ける従動ローラー41を有する。巻取軸40は、シートSの表面を外側に向けた状態で、シートSの端を巻き取って支持する。つまり、巻取軸40が図1の時計回りに回転すると、後駆動ローラー32から搬送されてきたシートSが従動ローラー41を経由して巻取軸40に巻き取られる。ちなみに、シートSは、巻取軸40に着脱自在な芯管(図示省略)を介して巻取軸40に巻き取られる。したがって、巻取軸40に巻き取られたシートSが満杯になった際には、芯管ごとシートSを取り外すことが可能となっている。
以上がプリンター1の装置構成の概要である。続いて、プリンター1を制御する電気的構成について説明を行なう。図2は、プリンターを制御する電気的構成を示すブロック図である。上述したプリンター1の動作は、図2に示すホストコンピューター10によって制御される。ホストコンピューター10では、制御動作を統括するホスト制御部100がCPU(Central Processing Unit)やメモリーにより構成されている。また、ホストコンピューター10にはドライバー120が設けられており、このドライバー120がメディア122からプログラム124を読み出す。なお、メディア122としては、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の種々のものを用いることができる。そして、ホスト制御部100は、メディア122から読み出したプログラム124に基づいて、ホストコンピューター10の各部の制御やプリンター1の動作の制御を行なう。
さらに、ホストコンピューター10には作業者とのインターフェイスとして、液晶ディスプレイ等で構成されるモニター130と、キーボードやマウス等で構成される操作部140とが設けられている。モニター130には、印刷対象の画像の他にメニュー画面が表示される。したがって、作業者は、モニター130を確認しつつ操作部140を操作することで、メニュー画面から印刷設定画面を開いて、印刷媒体の種類、印刷媒体のサイズ、印刷品質等の各種の印刷条件を設定することができる。なお、作業者とのインターフェイスの具体的構成は種々の変形が可能であり、例えばタッチパネル式のディスプレイをモニター130として用い、このモニター130のタッチパネルで操作部140を構成しても良い。
一方、プリンター1では、ホストコンピューター10からの指令に応じてプリンター1の各部を制御する制御部としてのプリンター制御部200が設けられている。そして、記録ヘッド、UVランプおよびシート搬送系の装置各部はプリンター制御部200によって制御される。これら装置各部に対するプリンター制御部200の制御の詳細は次のとおりである。
プリンター制御部200は、カラー画像を形成する各記録ヘッド51のインク吐出タイミングを、シートSの搬送に応じて制御する。具体的には、このインク吐出タイミングの制御は、プラテンドラム30の回転軸に取り付けられて、プラテンドラム30の回転位置を検出するドラムエンコーダーE30の出力(検出値)に基づいて実行される。つまり、プラテンドラム30はシートSの搬送に伴って従動回転するため、プラテンドラム30の回転位置を検出するドラムエンコーダーE30の出力を参照すれば、シートSの搬送位置を把握することができる。そこで、プリンター制御部200は、ドラムエンコーダーE30の出力からpts(print timing signal)信号を生成し、このpts信号に基づいて各記録ヘッド51のインク吐出タイミングを制御することで、各記録ヘッド51が吐出したインクを搬送されるシートSの目標位置に着弾させて、カラー画像を形成する。
また、記録ヘッド52が透明インクを吐出するタイミングも、同様にドラムエンコーダーE30の出力に基づいてプリンター制御部200により制御される。これによって、複数の記録ヘッド51によって形成されたカラー画像に対して、透明インクを的確に吐出することができる。さらに、UVランプ61,62,63の点灯・消灯のタイミングや照射光量もプリンター制御部200によって制御される。
また、プリンター制御部200は、図1を用いて詳述したシートSの搬送を制御する機能を司る。つまり、シート搬送系を構成する部材のうち、繰出軸20、後駆動ローラー32および巻取軸40それぞれにはモーターが接続されている。そして、プリンター制御部200はこれらのモーターを回転させつつ、各モーターの速度やトルクを制御して、シートSの搬送を制御する。このシートSの搬送制御の詳細は次のとおりである。
プリンター制御部200は、繰出軸20を駆動する繰出モーターM20を回転させて、繰出軸20から後駆動ローラー32にシートSを供給する。この際、プリンター制御部200は、繰出モーターM20のトルクを制御して、繰出軸20から後駆動ローラー32までのシートSのテンション(繰出テンションTa)を調整する。つまり、繰出軸20と後駆動ローラー32の間に配置された従動ローラー33には、プロセステンションTaを検出する検出部としてのテンションセンサーS33が取り付けられている。このテンションセンサーS33は、例えばシートSから受ける力を検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部200は、テンションセンサーS33の検出結果に基づいて、繰出モーターM20のトルクをフィードバック制御して、シートSのプロセステンションTaを調整する。
この際、プリンター制御部200は、繰出軸20から前従動ローラー31へ供給されるシートSの幅方向(図1の紙面の直交方向)の位置を調整しつつ、シートSの繰り出しを行う。つまり、プリンター1には、繰出軸20および前従動ローラー31それぞれを軸方向(言い換えればシートSの幅方向)に変位させるステアリングユニット7が設けられている。また、繰出軸20と前従動ローラー31の間にはシートSの幅方向への端を検出するエッジセンサーSeが配置されている。このエッジセンサーSeは、例えば超音波センサー等の距離センサーで構成することができる。そして、プリンター制御部200は、エッジセンサーSeの検出結果に基づいて、ステアリングユニット7をフィードバック制御して、シートSの幅方向への位置を調整する。これによって、シートSの幅方向への位置が適切化されて、シートSの蛇行等の搬送不良が抑制される。
また、プリンター制御部200は、繰出軸20を駆動する繰出モーターM20と、後駆動ローラー32を駆動する後駆動モーターM32とを回転させる。これによって、繰出部2から繰り出されたシートSがプロセス部3を通過する。この際、繰出モーターM20に対してはトルク制御が実行される一方、後駆動モーターM32に対しては速度制御が実行される。つまり、プリンター制御部200は、後駆動モーターM32のエンコーダー出力に基づいて、後駆動モーターM32の回転速度を一定に調整する。これによって、後駆動ローラー32が一定速度で回転し、シートSは後駆動ローラー32によって一定速度で搬送される。
詳述すると、後駆動ローラー32によって定速搬送されるシートSに対して、繰出軸20がシートSの搬送方向と逆向きの力を作用させるように、繰出モーターM20のトルクが制御される。こうして、繰出軸20と後駆動ローラー32の間において、シートSが繰出モーターM20のトルクに応じた力で張られて、シートSのプロセステンションTaが一定に調整される。
また、プリンター制御部200は、巻取軸40を駆動する巻取モーターM40を回転させて、後駆動ローラー32が搬送するシートSを巻取軸40に巻き取る。この際、プリンター制御部200は、巻取モーターM40のトルクを制御して、後駆動ローラー32から巻取軸40までのシートSのテンション(巻取テンションTb)を調整する。つまり、後駆動ローラー32と巻取軸40の間に配置された従動ローラー41には、巻取テンションTbを検出するテンションセンサーS41が取り付けられている。このテンションセンサーS41は、例えばシートSから受ける力を検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部200は、テンションセンサーS41の検出結果に基づいて、巻取モーターM40のトルクをフィードバック制御して、シートSの巻取テンションTbを調整する。具体的には、プリンター制御部200は、巻取軸40に巻き取られたシートSからなるロールの径の増大に応じて、巻取テンションTbを減少させる。これによって、ロール径の増大に伴って、ロール中心付近のシートSの圧力が過大になって、シートSが破損することがないように制御される。
以上、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
(1)シートSを張架する繰出軸20および後駆動ローラー32を回転させることで、繰出軸20から後駆動ローラー32へシートSを搬送する。そして、繰出軸20のトルクを制御することで、記録ヘッド51、52が画像記録を行なうシートSにテンション(プロセステンションTa)が与えられる。つまり、シートSを搬送する2本の駆動ローラーの周速度に差を持たせるのではなく、繰出軸20のトルクを制御することで、シートSにテンションが与えられる。このような構成では、上述したような繰出軸20、後駆動ローラー32とシートSの間における滑りの発生を抑えて、シートSのテンション変動を抑えることができる。その結果、シートSの安定した搬送を実現して、高い位置精度でシートSに画像を記録することが可能となる。
(2)プリンター制御部200は、後駆動ローラー32の速度を制御して、後駆動ローラー32を所定速度で回転させている。このような構成では、シートSの搬送方向において後駆動ローラー32より上流側のシートSのテンション(プロセステンションTa)と下流側のシートSのテンション(巻取テンションTb)とを独立させることができる。換言すれば、後駆動ローラー32の下流側の巻取テンションTbは、後駆動ローラー32の上流側のプロセステンションTaに影響しない。したがって、後駆動ローラー32の下流側で巻取テンションTbが変動したとしても、後駆動ローラー32の上流側では安定したプロセステンションTaでシートSに画像の記録を行なうことができ、好適である。
(3)後駆動ローラー32から送り出されたシートSを巻き取る巻取軸40のトルクを制御することで、巻取軸40に巻き取られたシートSの量の増大に応じて、巻取軸40に巻き取る際のシートSの巻取テンションTbを減少させている。このような構成では、後駆動ローラー32より上流側で画像記録を受けるシートSのプロセステンションTaに影響を与えること無く、巻取軸40に巻き取られたシートSの量の増大に応じて、巻取軸40に巻き取る際のシートSの巻取テンションTbを減少させることができる。そして、このように巻取軸40に巻き取る際のシートSの巻取テンションTbを減少させることで、巻取軸40に巻き取られるシートSの量の増大に伴って、巻取軸40付近のシートSの圧力が過大になって、シートSが破損することがないように制御することができる。
(4)シートSにインクを吐出して画像を記録する構成では、シートSにおいてインクの付着部分とその他の部分の間でテンションの差(テンション分布)が発生することがある。ただし、シートSをプラテンドラム30で支持することで、このような微視的なテンション分布によらず、シートSの全体的なテンションを安定させることができる。したがって、プラテンドラム30に支持されたシートSに対して画像を記録するように構成しておけば、微視的なテンション分布の影響を受けずに、適切に画像を記録することができる。
(5)シートSがプラテンドラム30から離れて自由に伸縮できるようになると、この微視的なテンション分布がシートS全体のテンション変動を引き起こす場合がある。換言すれば、シートSに発生したテンション分布が、プラテンドラム30(の巻掛部Ra)から離れて後駆動ローラー32へ向かうシートSのテンションを変動させる場合がある。このテンション変動は、画像記録済みのシートSにおいて起きるものであるので、基本的には画像記録に影響を与えるものではない。しかしながら、テンションセンサーがこのテンション変動を検出して、繰出軸20のトルクを変化させると、プラテンドラム30上でのシートSのテンションが変動させられてしまうことが考えられる。
そこで、この実施形態は、繰出軸20とプラテンドラム30との間でシートSのテンションを検出するようにしている。このような構成では、プラテンドラム30から離れた後のシートSのテンションによらず、プラテンドラム30上のシートSのテンション変動を適切に抑えることができる。したがって、シートSの安定した搬送を実現して、高い位置精度でシートSに画像を記録するにあたって、有利と言える。
特に、紫外線によって硬化するUVインクを記録ヘッド51,52からシートSに吐出して、シートS上のUVインクを紫外線照射により硬化させるプリンター1に対しては、上記のように構成することが好適である。つまり、このようなUVインクは、硬化反応に伴って発熱するとともに、紫外線を吸収することによっても発熱する。したがって、シートS上において、インクの付着部分の温度はそれ以外の部分の温度よりも高くなる。よって、高温部分と低温部分でテンションの差ができて、上述のようなテンション分布がシートSに発生し、プラテンドラム30から後駆動ローラー32の間でシートSのテンションが変動しやすい。そこで、上記のように構成して、プラテンドラム30から離れた後のシートSのテンションによらず、プラテンドラム30上のシートSのテンション変動を適切に抑えることが好適となる。
(6)繰出軸20からプラテンドラム30へ向かうシートSを巻き掛ける従動ローラー33にテンションセンサーS33が設けられている。このように、従動ローラー33に設けたテンションセンサーS33によりシートSのテンションを検出する構成は、テンションの検出動作がシートSの搬送に与える影響を抑えながらシートSのテンションを検出することができ、好適である。
(7)シートSを巻き掛けて、搬送されるシートSとの間の摩擦力を受けて回転するプラテンドラム30でシートSを支持している。このような構成では、シートSを支持するプラテンドラム30は、搬送されるシートSに追従して回転する。したがって、シートSとプラテンドラム30の間の滑りの発生を抑えて、シートSのテンションを安定化させるのに有利となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、UVインクを用いたプリンター1に本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、その他の例えば水性インクを用いたプリンター1に対しても本発明を適用可能である。
特に、シートSを赤外線ヒーターで暖めて、シートS上の水性インクを乾燥させる構成に対しては、上記実施形態のように構成することが好適となる。つまり、このような構成では、赤外線ヒーターでシートSを暖めた際に、水性インクの付着部分とその他の部分において温度差が発生する。よって、高温部分と低温部分でテンションの差ができて、シートSにテンション分布が発生して、プラテンドラム30から後駆動ローラー32の間でシートSのテンションが変動しやすい。そこで、上記実施形態のように構成して、プラテンドラム30から離れた後のシートSのテンションによらず、プラテンドラム30上のシートSのテンション変動を適切に抑えることが好適となる。
また、上記実施形態では、シートSのテンションを検出するテンションセンサーは、従動ローラー33に設けられていた。しかしながら、テンションセンサーを設ける位置はこれに限られない。そこで、従動ローラー34にテンションセンサーS34を設けておき、プラテンドラム30から後駆動ローラー32に向かうシートSのテンションをこのテンションセンサーS34で検出した結果に基づいて、前駆動モーターM31のトルクを制御しても良い。かかる構成によっても、繰出軸20のトルクを制御して、シートSのプロセステンションTaを調整することができる。
また、上記実施形態では、透明インク用の記録ヘッド52およびUVランプ63が設けられていた。しかしながら、これらを具備しないプリンター1に対しても本発明を適用可能である。
また、上記実施形態では、仮硬化用のUVランプ61が設けられていたが、これらを排してプリンター1を構成しても良い。
また、記録ヘッド51,52やUVランプ61,62,63等を配置する位置についても、適宜変更が可能である。
また、上記実施形態では、カラー画像を形成するプリンター1に対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、モノクロ画像を形成するプリンター1に対しても本発明を適用可能である。
また、上記実施形態では、円筒形状のプラテンドラム30でシートSを支持していた。しかしながら、シートSを支持する具体的構成はプラテンドラム30に限られない。