以下に、本発明にかかる軌跡制御装置および軌跡制御方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態1〕
本発明にかかる軌跡制御システムの構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明にかかる軌跡制御システムの構成の一例を示すブロック図である。なお、図1において、車両(自車両)の周辺に存在する障害物の一例として周辺車両を例に説明するが、これに限られず、障害物は、分離帯、落下物等の車両の周辺に存在する物体であってよい。
図1において、符号10は車両であり、符号11はECU(電子制御ユニット)であり、符号12は車車間通信により情報を送受信するための車車間通信用無線機であり、符号13は位置情報を受信するGPSアンテナ/受信機であり、符号14は車両10に搭載された各種センサに接続された伝送路から構成される車両情報網(CAN:Control Area Network)であり、符号15は情報を表示するディスプレイであり、符号16は情報を音声出力するスピーカであり、符号17はECU11の処理に必要な各種データを記憶する記憶部であり、符号20は車両10と車車間通信可能な当該車両10の周辺に存在する周辺車両であり、符号30は車両10に位置情報を配信するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)である。また、図1において、符号11aは障害物検知部であり、符号11bは車両情報検出部であり、符号11cは目標軌跡生成部であり、符号11dは意思検出部であり、符号11eは軌跡選択部であり、符号11fは優先度設定部であり、符号11gは回避限界点演算部であり、符号11hは通知部であり、符号11iは軌跡制御部であり、符号11jは自動運転解除部である。なお、図1において、周辺車両20は、車両10と同様に、車車間通信用無線機、GPSアンテナ/受信機、車両情報網等を少なくとも備えているものとする。
本発明にかかる軌跡制御システムは、車両10に搭載されたECU11(本発明にかかる軌跡制御装置を含む)と、車両10の周辺に存在する周辺車両20およびGPS30とが通信を行い車両10の軌跡制御を実行することで、自動運転を実現する。
ここで、図1において、ECU11は、車両10に搭載された電子制御ユニットであり、車車間通信用無線機12、GPSアンテナ/受信機13、車両情報網14、および、記憶部17等から得られる各種データに基づいて出力データを生成し、当該出力データをディスプレイ15およびスピーカ16等を介して出力する機能を有する。ここで、ECU11は、障害物検知部11a、車両情報検出部11b、目標軌跡生成部11c、意思検出部11d、軌跡選択部11e、優先度設定部11f、回避限界点演算部11g、通知部11h、軌跡制御部11i、および、自動運転解除部11jを備える。
ECU11のうち、障害物検知部11aは、車両10の周辺に存在する障害物を検知する障害物検知手段である。障害物は、車両10の周辺に存在する周辺車両20、分離帯、および、落下物のうち少なくとも1つを含む。障害物検知部11aは、車両10の周辺の所定距離内に存在する対象となる物体を障害物として検知する。
障害物検知部11aは、更に、障害物の位置および方位を示す障害物情報を取得する。例えば、障害物が周辺車両20である場合、障害物検知部11aは、車車間通信用無線機12を介して周辺車両20の位置および方位を示す障害物情報を取得する。この場合、障害物検知部11aは、周辺車両20のGPSアンテナ/受信機13によりGPS30から取得された周辺車両20の位置を示す位置情報、および、周辺車両20の方位センサから車両情報網14を介して取得された周辺車両20の方位を示す方位情報を、障害物情報として車車間通信用無線機12を介して取得する。また、障害物検知部11aは、車両10の周辺監視センサ14aから車両情報網14を介して取得された周辺車両20の位置情報および方位情報を障害物情報として取得してもよい。周辺監視センサ14aは、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、車載カメラ等から構成される。周辺監視センサ14aは車両10の前方、側面、後方等の任意に位置に設置される。
また、障害物が分離帯である場合、障害物検知部11aは、車両10の周辺監視センサ14aから車両情報網14を介して取得された分離帯の位置情報および方位情報を、障害物情報として取得する。あるいは、障害物検知部11aは、記憶部17に記憶された道路データを含む地図データ17aから決定される分離帯の位置情報および方位情報を、障害物情報として取得する。また、障害物が落下物である場合、障害物検知部11aは、車両10の周辺監視センサ14aから車両情報網14を介して取得された落下物の位置情報および方位情報を、障害物情報として取得する。
車両情報検出部11bは、車両10の車両位置および車両状態量を検出する車両情報検出手段である。ここで、車両位置は、車両10の現在位置である。また、車両状態量は、例えば、方向指示器のオンオフ状態、操舵トルク(MT)、操舵角(MA)、車速(V)、横加速度(a)、ヨーレート(YR)等を含む。車両情報検出部11bは、車両10のGPSアンテナ/受信機13によりGPS30から取得された位置情報に基づいて車両位置を検出する。また、車両情報検出部11bは、各種センサから車両情報網14を介して車両状態量を検出する。
車両情報検出部11bは、方向指示スイッチ14bから車両情報網14を介して車両10の方向指示器のオンオフ状態を示す車両状態量を検出する。方向指示スイッチ14bは、運転者の方向指示器の操作に応じて車両10の方向指示器のオンオフの切り替えを制御するスイッチである。車両情報検出部11bは、トルクセンサ14cから車両情報網14を介して車両10の操舵トルクを示す車両状態量を検出する。トルクセンサ14cは、運転者のステアリングの操作に応じて車両10のトーションバーのねじれの大きさと方向を検出するセンサである。車両情報検出部11bは、操舵角センサ14dから車両情報網14を介して車両10の操舵角を示す車両状態量を検出する。操舵角センサ14dは、運転者のステアリングの操作に応じて車両10のステアリングの操舵角の大きさと操舵方向を検出するセンサである。車両情報検出部11bは、車速センサ14eから車両情報網14を介して車両10の車速を示す車両状態量を検出する。車速センサ14eは、車輪の回転に応じて出力されるパルス信号を検出するセンサである。
なお、各種センサは、図1に例示したものに限られない。車両情報検出部11bは、横加速度センサ(図示せず)から車両情報網14を介して車両10の横加速度を示す車両状態量を検出してもよい。横加速度センサは、車両10の横加速度を検出可能に構成されたセンサである。車両情報検出部11bは、ヨーレートセンサ(図示せず)から車両情報網14を介して車両10のヨーレートを示す車両状態量を検出してもよい。ヨーレートセンサは、車両10にヨー方向の回転力が作用していることを検出するセンサである。
目標軌跡生成部11cは、障害物検知部11aにより検知された障害物を車両10が回避するための複数の目標軌跡を生成する目標軌跡生成手段である。目標軌跡生成部11cは、障害物検知部11aにより取得された障害物情報、車両情報検出部11bにより検出された車両位置および車両状態量、ならびに、記憶部17に記憶される地図データ17a等に基づいて、車両10が障害物を回避するための複数の目標軌跡を生成する。
意思検出部11dは、障害物検知部11aにより検知された障害物に対する車両10の回避方向を、運転者の意思として検出する意思検出手段である。意思検出部11dは、方向指示器、操舵トルク、操舵角のうち少なくとも1つに基づいて、障害物に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出することが好ましい。
意思検出部11dは、例えば、車両情報検出部11bにより取得された方向指示器のオンオフ状態を示す車両状態量に基づいて、障害物に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出する。意思検出部11dは、車両10の右側に設けられた方向指示器がオン状態にある場合、車両10の進行方向を上方向として車両10の右方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測し、当該方向を運転者の意思として検出する。意思検出部11dは、車両10の左側に設けられた方向指示器がオン状態にある場合、車両10の進行方向を上方向として車両10の左方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測し、当該方向を運転者の意思として検出する。
意思検出部11dは、例えば、車両情報検出部11bにより取得される操舵トルクを示す車両状態量に基づいて、障害物に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出する。意思検出部11dは、トルクセンサ14cにより検出されたトーションバーのねじれの方向が、車両10の右方向に対応する方向である場合、車両10の右方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。意思検出部11dは、トルクセンサ14cにより検出されたトーションバーのねじれの方向が、車両10の左方向に対応する方向である場合、車両10の左方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。
また、意思検出部11dは、トルクセンサ14cにより検出されたトーションバーのねじの方向に基づいて障害物に対する車両10の回避方向を予測する際、トルクセンサ14cにより検出されたトーションバーのねじれの大きさに対応する操舵トルクの大きさに基づいて、ステアリングの操作に運転者の意思が反映されているかを判定する。例えば、意思検出部11dは、記憶部17に記憶された図2に示すような操舵トルク用意思検出マップ17bを参照して、ステアリングの操作に運転者の意思が反映されているか否かを判定する。
ここで、図2を参照して、本実施形態にかかる操舵トルク用意思検出マップ17bの一例について説明する。図2は、実施形態1における操舵トルク用意思検出マップ17bの一例を示す図である。図2に示すように、操舵トルク用意思検出マップ17bには、操舵トルクの大きさ(Nm)に応じて、不感帯領域、軌跡選択領域、軌跡制御解除領域が設定されている。図2の例において、不感帯領域は、操舵トルクの大きさが「0〜1.5Nm」の範囲に設定されている。軌跡選択領域は、操舵トルクの大きさが「1.5〜5Nm」の範囲に設定されている。軌跡制御解除領域は、操舵トルクの大きさが「5Nm〜」の範囲に設定されている。
図2に示すように、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵トルクの大きさが比較的小さい値である「0〜1.5Nm」の不感帯領域の範囲内である場合、運転者のステアリングの操作に特に運転者の意思はないものと判定する。つまり、不感帯領域の範囲は、ステアリングの操作の遊びの範囲を規定している。一方、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵トルクの大きさが「1.5〜5Nm」の軌跡選択領域の範囲内である場合、運転者のステアリングの操作には、障害物を回避する運転者の意思が反映されているものと判定する。つまり、意思検出部11dは、操舵トルクの大きさが所定閾値(図2において、1.5Nm)を超える場合、運転者には障害物を回避するために軌跡を選択する意思があると判定して、トルクセンサ14cにより検出されたトーションバーのねじれの方向に基づいて障害物に対する車両10の回避方向を検出する。この意思検出部11dにより検出された回避方向は、後述する軌跡選択部11eにより障害物を回避する目標軌跡を選択する際に考慮される。なお、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵トルクの大きさが比較的大きな値である「5Nm〜」の軌跡制御解除領域の範囲内である場合、運転者のステアリングの操作は障害物を緊急回避するための急ハンドル操作であると判定する。この急ハンドル操作が意思検出部11dにより検出された場合、運転者の操作による駆動制御を最優先とするために、後述する自動運転解除部11jは、軌跡制御による自動運転を解除する。なお、図2に示した操舵トルク用意思検出マップ17b内の各領域の範囲はこれに限定されず、障害物との距離が近い場合は不感帯領域を狭めるなど、種々の状況に応じて変更可能である。
図1に戻り、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵角を示す車両状態量に基づいて、障害物に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出する。意思検出部11dは、操舵角センサ14dにより検出されたステアリングの操舵方向が右方向である場合、車両10の右方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。意思検出部11dは、操舵角センサ14dにより検出された操舵方向が左方向である場合、車両10の左方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。
また、意思検出部11dは、操舵角センサ14dに検出されたステアリングの操舵方向に基づいて障害物に対する車両10の回避方向を予測する際、操舵角センサ14dにより検出されたステアリングの操舵角の大きさに基づいて、ステアリングの操作に運転者の意思が反映されているかを判定する。例えば、意思検出部11dは、記憶部17に記憶された図3に示すような操舵角用意思検出マップ17cを参照して、ステアリングの操作に運転者の意思が反映されているか否かを判定する。
ここで、図3を参照して、本実施形態にかかる操舵角用意思検出マップ17cの一例について説明する。図3は、実施形態1における操舵角用意思検出マップ17cの一例を示す図である。図3に示すように、操舵角用意思検出マップ17cには、操舵角の大きさ(deg)に応じて、不感帯領域、軌跡選択領域、軌跡制御解除領域が設定されている。図3の例において、不感帯領域は、操舵角の大きさが「0〜15deg」の範囲に設定されている。軌跡選択領域は、操舵角の大きさが「15〜60deg」の範囲に設定されている。軌跡制御解除領域は、操舵角の大きさが「60deg〜」の範囲に設定されている。
図3に示すように、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵角の大きさが比較的小さい値である「0〜15deg」の不感帯領域の範囲内である場合、運転者のステアリングの操作に特に運転者の意思はないものと判定する。つまり、不感帯領域の範囲は、ステアリングの遊びの範囲を規定している。一方、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵角の大きさが「15〜60deg」の軌跡選択領域の範囲内である場合、運転者のステアリングの操作には、障害物を回避する運転者の意思が反映されているものと判定する。つまり、意思検出部11dは、操舵角の大きさが所定閾値(図3において、15deg)を超える場合、運転者には障害物を回避するために軌跡を選択する意思があると判定して、操舵角センサ14dにより検出されたステアリングの操舵方向に基づいて障害物に対する車両10の回避方向を検出する。この意思検出部11dにより検出された回避方向は、後述する軌跡選択部11eにより障害物を回避する目標軌跡を選択する際に考慮される。なお、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより取得される操舵角の大きさが比較的大きな値である「60deg〜」の軌跡制御解除領域の範囲内である場合、運転者のステアリングの操作は障害物を緊急回避するための急ハンドル操作であると判定する。この急ハンドル操作が意思検出部11dにより検出された場合、運転者の操作による駆動制御を最優先とするために、後述する自動運転解除部11jは、軌跡制御による自動運転を解除する。なお、図3に示した操舵角用意思検出マップ17c内の各領域の範囲はこれに限定されず、障害物との距離が近い場合は不感帯領域を狭めるなど、種々の状況に応じて変更可能である。
図1に戻り、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより検出された車両位置が、後述する回避限界点演算部11gにより演算される車両10が障害物を所定の操舵量で回避可能な回避限界点を超えるまで、運転者の意思を検出する。所定の操舵量は、急ハンドル操作を行う際の操舵量よりも低い操舵量であり、かつ、運転者かかる横加速度が負担にならない程度の操舵量である。
なお、意思検出部11dは、車両10の車室内のダッシュボード等に設けられた運転者の眼球の動きを検出可能なカメラを用いて運転者の視線の方向を検出することで、当該視線の方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出してもよい。また、意思検出部11dは、車両10の車室内のダッシュボード等に設けられた運転者の音声を検出可能なマイクを用いて運転者の音声を検出することで、運転者の音声により示された障害物に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出してもよい。
この他、意思検出部11dは、他の車両状態量または他の運転者の特徴の変化により予測される障害物に対する車両10の回避方向を、運転者の意思として検出してもよい。例えば、意思検出部11dは、車両10に搭載された横加速度センサにより横加速度が検出された方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出してもよい。また、意思検出部11dは、車両10の車室内にシート等に設けられた荷重センサを用いて運転者の荷重の傾きを検出することで、重い荷重が検出された方向が障害物に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出してもよい。
軌跡選択部11eは、目標軌跡生成部11cにより生成された複数の目標軌跡から、意思検出部11dにより検出された運転者の意思を反映させた回避方向の目標軌跡を選択する軌跡選択手段である。
ここで、図4を参照して、軌跡選択部11eが目標軌跡を選択する状況の一例を説明する。図4は、実施形態1における目標軌跡を選択する状況の一例を示す図である。図4に示す例では、車両10が3本の車線(1)〜(3)のうち中央の車線(2)を走行している。車両10の前方には、車両10と同一の車線(2)上に大型車両の周辺車両20−1が走行している。また、車線(2)の左隣の車線(1)上には小型車両の周辺車両20−2が走行している。なお、車線(2)の右隣の車線(3)上には周辺車両20は走行していない。
この図4が示す状況において、一例として、ECU11は以下の処理を行うものとする。障害物検知部11aは、車両10の前方の所定距離内に存在する周辺車両20−1を障害物として検知する。障害物検知部11aは、車両10の前方に設置された周辺監視センサ14aから車両情報網14を介して取得された周辺車両20−1の位置情報および方位情報を障害物情報として取得する。車両情報検出部11bは、車両10の車両位置および車両状態量を検出する。目標軌跡生成部11cは、障害物検知部11aにより取得された周辺車両20−1の障害物情報、車両情報検出部11bにより検出された車両10の車両位置および車両状態量、ならびに、記憶部17に記憶される図4に示す3本の車線(1)〜(3)の道路データを含む地図データ17a等に基づいて、車両10が周辺車両20−1を回避するための複数の目標軌跡(図4において、目標軌跡(a)および目標軌跡(b))を生成する。
ここで、図4に示すように、車両10の軌跡制御による自動運転中に、目標軌跡生成部11cにより生成された目標軌跡(a)および目標軌跡(b)が2つ存在する場合であっても、運転者は車線(1)に周辺車両20−2が走行していることを認識している場合が考えられる。この場合、周辺車両20−2が走行している車線(1)に向かう目標軌跡(a)に比べ、周辺車両20が走行していない車線(3)に向かう目標軌跡(b)のほうがより信頼性および安全性が高いと考えられる。このことを考慮して、図4に示す例では、運転者は、右方向へステアリングの操作を行うものとする。この場合、意思検出部11dは、操舵角センサ14dにより検出されたステアリングの操舵角の大きさが所定閾値(上述の図3において、15deg)を超えることを確認して、運転者には周辺車両20−1を回避するために軌跡を選択する意思があると判定する。そして、意思検出部11dは、操舵角センサ14dにより検出されたステアリングの操舵方向が右方向である場合、車両10の右方向が周辺車両20−1に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。
そして、上述した図4に示す状況において、軌跡選択部11eは、目標軌跡生成部11cにより生成された目標軌跡(a)および目標軌跡(b)から、意思検出部11dにより検出された運転者の意思を反映させた右方向の目標軌跡(b)を選択する。
図1に戻り、優先度設定部11fは、軌跡選択部11eにより目標軌跡を選択する際に優先させる運転者の意思の優先度を設定する優先度設定手段である。優先度は、目標軌跡生成部11cが障害物を回避する目標軌跡を生成した場合に、生成された目標軌跡を軌跡選択部11eが選択して、選択された目標軌跡に基づく軌跡制御を障害物からどの程度の距離まで優先するかを示す度合いである。
ここで、図5を参照して、優先度設定部11fにより優先度が高く設定された場合と、優先度が低く設定された場合を例に、軌跡選択部11eが目標軌跡を選択する状況の別の一例を説明する。図5は、実施形態1における目標軌跡を選択する状況の別の一例を示す図である。図5に示す例では、車両10が3本の車線(1)〜(3)のうち中央の車線(2)を走行しており、時間の経過に伴い、周辺車両20へ近づく様子を示している。図5において、目標軌跡生成部11cにより車両10が周辺車両20を回避して車線(1)上の車両10−3の位置へ移動するための目標軌跡a〜eが生成され、運転者は、左方向へステアリングの操作を行うものとする。
図5に示す例において、優先度設定部11fにより優先度が高く設定された場合、軌跡制御による自動運転に運転者の意思を介入させる度合いが高く設定されたことになる。この場合、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより検出された車両10の車両位置が、後述する回避限界点演算部11gにより演算された車両10が周辺車両20を所定の操舵量で回避可能な限界位置である回避限界点(図5において、車両10−2の位置に対応する第1回避限界点)を超えるまで、運転者の意思を検出する。つまり、図5に示すように、意思検出部11dは、車両10が、車両10−2の位置に達するまで、目標軌跡生成部11cにより生成される目標軌跡a〜eを選択する運転者の意思を検出する。これにより、優先度設定部11fにより優先度が高く設定された場合、軌跡制御装置は、運転者の意思により選択された目標軌跡に基づく軌跡制御を回避限界点まで優先させることができる。
一方、優先度設定部11fにより優先度が低く設定された場合、軌跡制御による自動運転に運転者の意思を介入させる度合いが低く設定されたことになる。この場合、後述する回避限界点演算部11gは、限界位置(図5において、車両10−2の位置に対応する第1回避限界点)よりも車両10側へ周辺車両20から離れた位置を回避限界点(図5において、車両10−1の位置に対応する第2回避限界点)として演算する。そして、意思検出部11dは、車両情報検出部11bにより検出された車両10の車両位置が、回避限界点演算部11gにより演算されたこの回避限界点(第2回避限界点)を超えるまで、運転者の意思を検出する。つまり、図5に示すように、意思検出部11dは、車両10が、車両10−1の位置に達するまで、目標軌跡生成部11cにより生成される目標軌跡a〜bを選択する運転者の意思を検出する。言い換えると、意思検出部11dは、車両10−2の位置までは運転者の意思を検出しないので、軌跡制御装置は、車両10−1の位置を超えると、運転者により目標軌跡d、eが選択されるのを待たずに目標軌跡cに基づいて軌跡制御を開始する。これにより、優先度設定部11fにより優先度が低く設定された場合、軌跡制御装置は、運転者の意思により選択された目標軌跡に基づく軌跡制御よりも、運転者の意思によらず目標軌跡生成部11cが生成した目標軌跡に基づく軌跡制御を優先させることができる。
ここで、優先度設定部11fは、記憶部17の学習情報データベース17dに記憶された、運転者の過去の回避パターンを示す学習情報に基づいて優先度を設定してもよい。学習情報は、軌跡制御による自動運転の実行中または自動運転の解除中に、ECU11の処理により学習される情報である。学習情報は、運転者が多用する走行車線、車線変更等の回避のタイミング、回避時の横加速度、回避時の操舵角、回避時のヨーレート等を含む情報である。例えば、学習情報は、回避のタイミングとして、例えば、方向指示器の操作から回避するまでの時間、回避開始時の障害物までの距離が挙げられる。
図1に戻り、回避限界点演算部11gは、車両情報検出部11bにより検出された車両位置および車両状態量に基づいて、車両10が障害物を所定の操舵量で回避可能な限界位置を回避限界点として演算する回避限界点演算手段である。所定の操舵量は、急ハンドル操作を行う際の操舵量よりも低い操舵量であり、かつ、運転者にかかる横加速度が負担にならない程度の操舵量である。
ここで、図6および以下の数式(1)〜(7)を参照して、回避限界点演算部11gにより回避限界点演算処理の詳細について説明する。図6は、実施形態1における回避限界点演算処理を説明するための図である。図6は、車両10と同一車線上の前方に周辺車両20が走行している状況を示している。図6において、「A」は車両10の中心位置であり、「x」はAから周辺車両20の手前の位置までの距離であり、「B」はこの周辺車両20の手前の位置から、周辺車両20の幅より長い「y」距離分右へずれた位置であり、Rは、三角形ABCの外接円の半径であり、「V」は車両10の車速である。
図6において、以下の数式(1)が成立する。
数式(1)において、「a」は横加速度であり、「V」は車両10の車速であり、「R」は三角形ABCの外接円の半径であり、「YR」はヨーレートである。
具体的には、回避限界点演算部11gは、上記数式(1)が示す横加速度「a」またはヨーレート「YR」を、以下の数式(2)〜(7)に示すように演算して、回避限界点を演算する。
図6において、数式(2)に示すように、線分ABに対応する「c」は、xの二乗とyの二乗との和の平方根となる。
ここで、数式(3)の「sinC」の逆正弦(アークタンジェント)は、数式(4)に示す。
したがって、上記数式(1)より、数式(6)が導ける。
ここで、横加速度「a」の絶対値は所定閾値より大きい(|a|>所定閾値)。
また、上記数式(1)および(6)より、数式(7)が導ける。
ここで、ヨーレート「YR」の絶対値は所定閾値より大きい(|YR|>所定閾値)。
このように、回避限界点演算部11gは、車両10が障害物を回避する際に発生する横加速度「a」またはヨーレート「YR」を算出する。また、回避限界点演算部11gは、障害物との衝突時間(両者間の距離を相対速度で除したもの)を更に考慮してもよい。なお、回避限界点演算部11gは、車両運動方程式またはシミュレーションによって将来の目標軌跡を求めてその際の最大横加速度「a」またはヨーレート「YR」を算出してもよい。そして、回避限界点演算部11gは、横加速度「a」またはヨーレート「YR」が所定閾値を超える場合における障害物と車両10との距離を回避限界であると判定し、この距離の車両10側の始点の位置を、所定の操舵量で回避可能な限界位置を回避限界点として演算する。
ここで、回避限界点演算部11gは、優先度設定部11fにより優先度が高く設定された場合(すなわち、上記数式(6)または(7)で用いる所定閾値が大きい値に設定された場合)、車両10が障害物を所定の操舵量で回避可能な限界位置(上述の図5において、車両10−2の位置)を回避限界点として演算する。また、回避限界点演算部11gは、優先度設定部11fにより優先度が低く設定された場合(すなわち、上記数式(6)または(7)で用いる所定閾値が小さい値に設定された場合)、限界位置(上述の図5において、車両10−2の位置)よりも車両10側へ障害物から離れた位置(上述の図5において、車両10−1の位置)を回避限界点として演算する。
図1に戻り、通知部11hは、回避限界点演算部11gにより演算された回避限界点までの車両10の到達時間が所定閾値以下の場合、運転者に対して障害物に対する車両10の回避方向を示すよう促す情報を通知する通知手段である。例えば、通知部11hは、ディスプレイ15に障害物に対する車両10の回避方向を示すよう促す情報を表示してもよく、スピーカ16に障害物に対する車両10の回避方向を示すよう促す情報を音声出力してもよい。なお、通知部11hは、音声及び警告灯やモニターなどの視覚効果があるものの他、シートベルトの引っ張り具合を調整したり、シート等に振動を発生させることにより、運転者に障害物に対する車両10の回避方向を示すよう促す制御を実行してもよい。
軌跡制御部11iは、軌跡選択部11eにより選択された目標軌跡に基づいて、障害物を回避する軌跡制御を実行する軌跡制御手段である。例えば、軌跡制御部11iは、上述の図4に示したように、軌跡選択部11eにより選択された目標軌跡(b)に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する。ここで、軌跡制御部11iは、意思検出部11dにより運転者の意思が検出されず、かつ、車両情報検出部11bにより検出された車両位置が回避限界点演算部11gにより演算された回避限界点を超える場合、目標軌跡生成部11cにより生成された目標軌跡に基づいて、障害物を緊急回避する軌跡制御を実行する。
自動運転解除部11jは、目標軌跡生成部11cにより生成された複数の目標軌跡に、意思検出部11dにより検出された運転者の意思に対応する回避方向の目標軌跡が存在しない場合、自動運転を解除する自動運転解除手段である。また、自動運転解除部11jは、上述の図2および図3に示したように、操舵トルクの大きさが所定閾値(上述の図2において、5Nm)を超える場合、または、操舵角の大きさが所定閾値(上述の図3において、60deg)を超える場合、運転者の操作により駆動制御を最優先とするために、軌跡制御による自動運転を解除する。
車車間通信用無線機12は、車車間通信により周辺車両20と障害物情報および車両状態量等の情報を送受信する通信手段である。車車間通信用無線機12は、受信した周辺車両20の障害物情報および車両状態量をECU11に提供する。
GPSアンテナ/受信機13は、GPS30から配信される位置情報を受信する通信手段である。GPSアンテナ/受信機13は、受信した位置情報をECU11に提供する。ここで、GPSアンテナ/受信機13は、車両10の位置情報の他、車両10の周辺に存在する周辺車両20の位置情報を受信してもよい。
車両情報網14は、車両10に搭載された各種センサに接続された伝送路から構成される車載ネットワークである。車両情報網14は、各種センサにて検知される車両10の状態を示す情報を、ECU11に提供する。ここで、各種センサは、例えば、周辺監視センサ14a、方向指示スイッチ14b、トルクセンサ14c、操舵角センサ14d、車速センサ14e、横加速度センサ、ヨーレートセンサ、方位センサ、アクセル開度センサ、ブレーキセンサなどを含む。
ディスプレイ15は、ECU11の処理により提供される情報を表示する表示手段である。ディスプレイ15は、例えば、ECU11の通知部11hにより運転者に対して通知される障害物に対する車両10の回避方向を示すよう促す情報を表示する。例えば、ディスプレイ15は、機器メータやナビゲーションを表示するディスプレイであってもよい。
スピーカ16は、ECU11の処理により提供される情報を音声出力する音声出力手段である。スピーカ16は、例えば、ECU11の通知部11hにより運転者に対して通知される障害物に対する車両10の回避方向を示すよう促す情報を音声出力する。
記憶部17は、データを記憶するためのものであり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはハードディスクなどである。本実施形態において、記憶部17は、道路データを含む地図データ17a、上述の図2に示した操舵トルク用意思検出マップ17b、上述の図3に示した操舵角用意思検出マップ17c、および、学習情報データベース17dを少なくとも記憶する。また、記憶部17は、各種判定に用いる所定閾値やナビゲーションに必要な音声データを記憶していてもよい。
周辺車両20は、車両10と車車間通信可能な車両10の周辺に存在する車両である。周辺車両20は、車両10と同様に、車車間通信用無線機、GPSアンテナ/受信機、車両情報網等を少なくとも備える。また、GPS30は、車両10等の位置を監視し、所定時間ごとまたは車両10等からの要求に応じて車両10等の位置情報を配信する人工衛星である。
つぎに、図7〜図9を参照し、上述した構成のECU11で行われる実施形態1における軌跡制御処理について説明する。図7は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態1における軌跡制御の基本処理の一例を示すフローチャートである。
なお、以下に示す処理では、障害物の一例として周辺車両20を例に説明するが、本発明はこれに限られない。なお、本処理は、ECU11の処理により所定時間ごとに繰り返し実行されてもよく、車車間通信可能な周辺車両20があると判定された場合に実行されてもよい。
図7に示すように、ECU11の障害物検知部11aは、車両10の前方に存在する周辺車両20を検知する(ステップSA−1)。ECU11の障害物検知部11aは、更に、周辺車両20の位置および方位を示す障害物情報を取得する。
そして、ECU11の車両情報検出部11bは、車両10の車両位置および車両状態量を検出する(ステップSA−2)。ここで、車両位置は、車両10の現在位置である。また、車両状態量は、例えば、方向指示器のオンオフ状態、操舵トルク(MT)、操舵角(MA)、車速(V)、横加速度(a)、ヨーレート(YR)等を含む。
そして、ECU11の目標軌跡生成部11cは、ステップSA−1にて障害物検知部11aの処理により検知された周辺車両20を車両10が回避するための複数の目標軌跡を生成する(ステップSA−3)。目標軌跡生成部11cは、ステップSA−1にて障害物検知部11aの処理により取得された障害物情報、ステップSA−2にて車両情報検出部11bの処理により検出された車両位置および車両状態量、ならびに、記憶部17に記憶される地図データ17a等に基づいて、車両10が周辺車両20を回避するための複数の目標軌跡を生成する。
そして、ECU11の意思検出部11dは、運転者の操作により決定される、ステップSA−1にて障害物検知部11aの処理により検知された周辺車両20に対する車両10の回避方向を、運転者の意思として検出する(ステップSA−4)。意思検出部11dは、方向指示器、操舵トルク、操舵角のうち少なくとも1つに基づいて、周辺車両20に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出する。
そして、ECU11の軌跡選択部11eは、ステップSA−3にて目標軌跡生成部11cの処理により生成された複数の目標軌跡から、ステップSA−4にて意思検出部11dの処理により検出された運転者の意思を反映させた回避方向の目標軌跡を選択する(ステップSA−5)。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSA−5にて軌跡選択部11eの処理により選択された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する(ステップSA−6)。
続いて、図8を参照して、上述の図7に示した軌跡制御処理の詳細について説明する。図8は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態1における軌跡制御処理の詳細の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、ECU11の障害物検知部11aは、車両10の前方に周辺車両20が存在するか否かを判定する(ステップSB−1)。
そして、ECU11の障害物検知部11aは、ステップSB−1にて車両10の前方に周辺車両20が存在すると判定した場合(ステップSB−1:Yes)、次のステップSB−2の処理へ移行する。一方、ECU11は、ステップSB−1にて車両10の前方に周辺車両20が存在しないと判定した場合(ステップSB−1:No)、本処理を終了し、ステップSB−1から本処理を繰り返す。
そして、ECU11の車両情報検出部11bは、方向指示スイッチ14bから車両情報網14を介して車両10の方向指示器のオンオフ状態を示す車両状態量を検出して、方向指示器の操作の有無を判定する(ステップSB−2)。
そして、ECU11の意思検出部11dは、車両情報検出部11bの処理によりステップSB−2にて方向指示器の操作が有ると判定された場合(ステップSB−2:Yes)、ステップSB−2にて車両情報検出部11bの処理により取得された方向指示器のオンオフ状態を示す車両状態量に基づいて、周辺車両20に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出して、次のステップSB−3の処理へ移行する。ここで、ECU11の意思検出部11dは、車両10の右側に設けられた方向指示器がオン状態にある場合、車両10の右方向が周辺車両20に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。また、意思検出部11dは、車両10の左側に設けられた方向指示器がオン状態にある場合、車両10の左方向が周辺車両20に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。
そして、ECU11の回避限界点演算部11gは、ステップSB−2にて方向指示器の操作が有ると判定された時点で車両情報検出部11bにより検出された車両位置および車速等の車両状態量に基づいて、車両10が周辺車両20を所定の操舵量で回避可能な限界位置を回避限界点として演算する(ステップSB−3)。ここで、回避限界点演算部11gは、予め優先度設定部11fにより優先度が高く設定された場合、車両10が周辺車両20を所定の操舵量で回避可能な限界位置(上述の図5において、車両10−2の位置)を回避限界点として演算する。また、回避限界点演算部11gは、予め優先度設定部11fにより優先度が低く設定された場合、限界位置(上述の図5において、車両10−2の位置)よりも車両10側へ周辺車両20から離れた位置(上述の図5において、車両10−1の位置)を回避限界点として演算する。なお、回避限界点演算部11gによる回避限界点の演算方法は上述したとおりであるため説明を省略する。
そして、ECU11は、ステップSB−3にて回避限界点演算部11gにより回避限界点を演算した後、車両情報検出部11bにより検出された車速に応じて、方向指示器の操作から軌跡制御を開始するまでの時間に対応するwait timeを判定する(ステップSB−4)。
ここで、図9を参照して、ECU11によるwait time判定処理の一例について説明する。図9は、実施形態1における学習情報の一例を示す図である。図9では、記憶部17の学習情報データベース17dに予め記憶された運転者の回避パターンを示す学習情報の一例として、方向指示器の操作から障害物を回避するまでの時間を示している。図9において、縦軸は車速であり、横軸は車両10の車両位置から回避限界点までの時間を示している。
図9に示すように、ECU11は、例えば、車両10の車両位置から回避限界点までの時間が2秒である場合、軌跡制御開始を即時実行する必要があると判定して、wait timeは0秒であると判定する。また、ECU11は、例えば、車両10の車両位置から回避限界点までの時間が5秒である場合、1.5秒後に軌跡制御開始するためにwait timeは1.5秒と判定する。また、ECU11は、例えば、車両10の車両位置から回避限界点までの時間が10秒である場合、3秒後に軌跡制御開始するためにwait timeは3秒と判定する。なお、図9に示すように、車速が速い場合は、回避限界点に到達するまでの時間が短くなるため、例えば、車両10の車両位置から回避限界点までの時間が5秒以上であっても、wait timeは3秒ではなく1.5秒と判定されることがある。
図8に戻り、ECU11の軌跡選択部11eは、ステップSB−1にて障害物検知部11aの処理により検知された周辺車両20を回避するために目標軌跡生成部11cの処理により生成される複数の目標軌跡から、ステップSB−2にて意思検出部11dの処理により検出された運転者の意思を反映させた回避方向(この場合、方向指示器の操作により決定される左右方向のいずれかの方向)の目標軌跡を選択する(ステップSB−5)。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSB−4で判定したwait timeに対応する時間分、軌跡制御の開始を待った後(ステップSB−6)、ステップSB−5にて軌跡選択部11eの処理により選択された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する(ステップSB−7)。その後、本処理を終了し、上述したステップSB−1から本処理を繰り返す。
ここで、ステップSB−2の処理に戻り、ECU11の意思検出部11dは、車両情報検出部11bの処理によりステップSB−2にて方向指示器の操作が無いと判定された場合(ステップSB−2:No)、次のステップSB−8の処理へ移行して、運転者のステアリングの操作(操舵入力)の有無を判定する(ステップSB−8)。
そして、ECU11の意思検出部11dは、運転者のステアリングの操作が有ると判定した場合(ステップSB−8:Yes)、運転者のステアリングの操作の操舵量および操舵方向に応じて運転者の意思を検出する。具体的には、ECU11の意思検出部11dは、運転者のステアリングの操作に応じて検出される操舵トルク(MT)または操舵角(MA)に基づいて運転者の意思を検出する。つまり、ECU11の意思検出部11dは、操舵トルクの大きさが所定閾値(上述の図2において、1.5Nm)を超える場合、運転者には周辺車両20を回避するために軌跡を選択する意思があると判定して、トルクセンサ14cにより検出されたトーションバーのねじれの方向に基づいて周辺車両20に対する車両10の回避方向を検出する。また、ECU11の意思検出部11dは、操舵角の大きさが所定閾値(上述の図3において、15deg)を超える場合、運転者には周辺車両20を回避するために軌跡を選択する意思があると判定して、操舵角センサ14dにより検出されたステアリングの操作の操舵方向に基づいて周辺車両20に対する車両10の回避方向を検出する。その後、ステップSB−9の処理へ移行する。
そして、ECU11の軌跡選択部11eは、ステップSB−1にて障害物検知部11aの処理により検知された周辺車両20を回避するために目標軌跡生成部11cの処理により生成される複数の目標軌跡から、ステップSB−8にて意思検出部11dの処理により検出された運転者の意思を反映させた回避方向(この場合、ステアリングの操作により決定される左右方向のいずれかの方向)の目標軌跡を選択する(ステップSB−9)。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、ステアリングの操作の操舵方向に対応する方向指示器を点灯した後(ステップSB−10)、ステップSB−9にて軌跡選択部11eの処理により選択された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する(ステップSB−7)。その後、本処理を終了し、上述したステップSB−1から本処理を繰り返す。
ここで、ステップSB−8の処理に戻り、ECU11は、運転者のステアリングの操作が無いと判定された場合(ステップSB−8:No)、緊急回避処理を実行するため、ステップSB−11に移行する。そして、ECU11の回避限界点演算部11gは、ステップSB−8にてステアリングの操作が無いと判定された時点で車両情報検出部11bにより検出された車両位置および車速等の車両状態量に基づいて、車両10が周辺車両20を所定の操舵量で回避可能な限界位置を回避限界点として演算する(ステップSB−11)。ここで、ECU11の通知部11hは、ステップSB−11の処理の後、回避限界点演算部11gにより演算された回避限界点までの車両10の到達時間が所定閾値以下の場合、運転者に対して周辺車両20に対する車両10の回避方向を示すよう促す情報を通知してもよい。
そして、ECU11は、現在の車両10の車両位置が回避限界点を超えるか否かを判定する(ステップSB−12)。ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSB−12にて現在の車両10の車両位置が回避限界点を超えると判定された場合(ステップSB−12:Yes)、目標軌跡生成部11cにより生成された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を緊急回避する軌跡制御を実行する(ステップSB−13)。その後、本処理を終了し、上述したステップSB−1から本処理を繰り返す。一方、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSB−12にて現在の車両10の車両位置が回避限界点を超えないと判定された場合(ステップSB−12:No)、本処理を終了し、上述したステップSB−1から本処理を繰り返す。
以上説明したように、実施形態1では、ECU11は、車両10の周辺に存在する障害物を検知し、検知された障害物を車両10が回避するための複数の目標軌跡を生成し、運転者の操作により決定される障害物に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出し、複数の目標軌跡から運転者の意思を反映させた回避方向の目標軌跡を選択し、選択された目標軌跡に基づいて障害物を回避する軌跡制御を実行する。これにより、実施形態1によれば、従来に比べ自動運転の信頼性および安全性を向上させることができる。
例えば、自動運転中に生成される目標軌跡が運転者の意思と反するものである場合、運転者に違和感や不安を生じさせてしまうことが考えられる。このような場合であっても、従来は、運転者が自動運転制御により車両が向かう方向と異なる方向へ操舵を行うと、自動運転が解除されていた。このように、従来は、運転者が回避したい方向と自動運転制御により車両が回避する方向とが異なる場合、自動運転が解除されてしまい運転者に不快感を生じさせていた。一方、本実施形態1によれば、自動運転制御に運転者の意思を介入させた場合であっても、自動運転を解除することなく、運転者の意思を将来経路の変更や修正に反映させることができるので、運転者に違和感を与えない。また、自動運転中に生成される目標軌跡のリスクが高い場合もあるが、安全性の判断は運転者のほうが優れている場合がある。この場合、実施形態1によれば、自動運転による回避動作時に運転者の意思を介入させることで、安全な回避方向への軌跡判定時間を短縮でき、自動運転の安全性をより高めることもできる。
このように、実施形態1によれば、運転者の意思を軌跡制御に反映しつつ、軌跡制御による自動運転を継続させることができる。つまり、実施形態1によれば、軌跡制御による回避経路の選択を運転者に意思に基づいて行うので、自動運転による障害物回避において、運転者の意思を回避方向に反映することができ、その結果、軌跡制御による障害物回避における信頼性および安全性を高めることができる。
[実施形態1の変形例1]
実施形態1の変形例1として、図10を参照して、車両10が車線変更した場合に軌跡制御により元の車線に車両10を復帰させる例について説明する。図10は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態1の変形例1における軌跡制御処理の詳細の一例を示すフローチャートである。
図10において、ステップSC−1〜SC−7の処理は、上述の図8のステップSB−1〜SB−7の処理と同様である。また、ステップSC−8〜SC−10の処理は、上述の図8のステップSB−8〜SB−10の処理と同様である。そのため、これら図10におけるステップSC−1〜SC−10の処理の説明は省略する。
図10に示すように、ステップSC−7にて軌跡制御部11iの処理により軌跡制御を実行した後、ECU11は、予め運転者により車線復帰モードが設定されているか否かを判定する(ステップSC−11)。ここで、ECU11は、記憶部17の学習情報データベース17dに記憶された学習情報に基づいて車線復帰を実行するか否かを判定してもよい。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、車線復帰モードが設定されていると判定した場合(ステップSC−11:Yes)、車線変更前に車両情報検出部11bにより検出された車両変更前の車両位置および記憶部17に記憶される地図データ17aに基づいて、車線変更前の車線に車両10を復帰させる軌跡制御を実行する(ステップSC−12)。ここで、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSC−11にて車線復帰モードが設定されていると判定した後、障害物検知部11aにより検知される車線変更前の車線上の周辺車両20が車両10から所定距離内に存在する場合は、当該車線変更前の車線に車両10を復帰させる軌跡制御を実行するタイミングを遅延させる。なお、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSC−11にて車線復帰モードが設定されていると判定した場合であっても、障害物検知部11aにより車両10を車線変更した後の車線上に周辺車両20が検知されなかった場合は、車線変更前の車線に車両10を復帰させる軌跡制御を実行しなくてもよい。その後、本処理を終了し、ステップSC−1から本処理を繰り返す。
一方、ECU11の軌跡制御部11iは、車線復帰モードが設定されていないと判定した場合(ステップSC−11:No)、その後、本処理を終了し、ステップSC−1から本処理を繰り返す。
なお、図10において、ステップSC−13〜ステップSC−15の処理は、上述の図8のステップSB−11〜SB−13の処理と同様であるため説明を省略する。
ここで、ステップSC−1の処理に戻り、ECU11は、ステップSC−1にて車両10の前方に周辺車両20が存在しないと判定した場合(ステップSC−1:No)、ステップSC−16の処理へ移行する。
そして、ECU11の車両情報検出部11bは、方向指示スイッチ14bから車両情報網14を介して車両10の方向指示器のオンオフ状態を示す車両状態量を検出して、方向指示器の操作の有無を判定する(ステップSC−16)。
そして、ECU11の意思検出部11dは、車両情報検出部11bの処理によりステップSC−16にて方向指示器の操作が有ると判定された場合(ステップSC−16:Yes)、ステップSC−16にて車両情報検出部11bの処理により取得された方向指示器のオンオフ状態を示す車両状態量に基づいて、周辺車両20に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出して、次のステップSC−17の処理へ移行する。ここで、ECU11の意思検出部11dは、車両10の右側に設けられた方向指示器がオン状態にある場合、車両10の右方向が周辺車両20に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。また、意思検出部11dは、車両10の左側に設けられた方向指示器がオン状態にある場合、車両10の左方向が周辺車両20に対する車両10の回避方向を示すと予測して、当該方向を運転者の意思として検出する。
そして、ECU11の目標軌跡生成部11cは、ステップSC−16にて意思検出部11dの処理により検出された運転者の意思を反映させた回避方向(この場合、方向指示器の操作により決定される左右方向のいずれかの方向)の目標軌跡を生成する(ステップSC−17)。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSC−17にて目標軌跡生成部11cの処理により運転者の意思を反映させて生成された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する(ステップSC−18)。その後、本処理を終了し、上述したステップSC−1から本処理を繰り返す。
ここで、ステップSC−16の処理に戻り、ECU11の意思検出部11dは、車両情報検出部11bの処理によりステップSC−16にて方向指示器の操作が無いと判定された場合(ステップS16:No)、次のステップSC−19の処理へ移行して、運転者のステアリングの操作(操舵入力)の有無を判定する(ステップSC−19)。
そして、ECU11の意思検出部11dは、運転者のステアリングの操作が有ると判定した場合(ステップSC−19:Yes)、運転者のステアリングの操作の操舵量および操舵方向に応じて運転者の意思を検出する。具体的には、ECU11の意思検出部11dは、運転者のステアリングの操作に応じて検出される操舵トルク(MT)または操舵角(MA)に基づいて運転者の意思を検出する。その後、ステップSC−20の処理へ移行する。一方、ECU11は、ステップSC−19において運転者のステアリングの操作が無いと判定された場合(ステップSC−19:No)、本処理を終了し、上述したステップSC−1から本処理を繰り返す。
そして、ECU11の目標軌跡生成部11cは、ステップSC−19にて意思検出部11dの処理により検出された運転者の意思を反映させた回避方向(この場合、ステアリングの操作により決定される左右方向のいずれかの方向)の目標軌跡を生成する(ステップSC−20)。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、ステアリングの操作の操舵方向に対応する方向指示器を点灯した後(ステップSC−21)、ステップSC−20にて目標軌跡生成部11cの処理により運転者の意思を反映させて生成された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する(ステップSC−18)。その後、本処理を終了し、上述したステップSC−1から本処理を繰り返す。
以上説明したように、実施形態1の変形例1では、ECU11は、目標軌跡に基づいて障害物を回避する軌跡制御を実行して車両10を車線変更した後、当該車線変更前の車線に車両10を復帰させる軌跡制御を実行する。これにより、実施形態1の変形例1によれば、元の車線への復帰操舵が不要となり、前方の車両の追い抜きにおける運転者の快適性が向上する。ここで、ECU11は、車両10を車線変更した後、車線変更前の車線上の障害物が車両10から所定距離内に存在する場合は、当該車線変更前の車線に車両10を復帰させる軌跡制御を実行するタイミングを遅延させる。これにより、実施形態1の変形例1によれば、運転者が元の車線に戻れない旨を意思表示する必要がなく、自動運転における安全性および信頼性がより向上する。また、ECU11は、車両10を車線変更した後の車線上に障害物が検知されなかった場合、車線変更前の車線に車両10を復帰させる軌跡制御を実行しない。これにより、実施形態1の変形例1によれば、車線復帰モードが設定された場合であっても、運転者が走行したい車線へ軌跡変更できる。このように、実施形態1の変形例1によれば、上述の実施形態1に示した効果に加え、車線変更を行った場合においても運転者の意思を目標軌跡の決定に反映させることができる。
[実施形態1の変形例2]
実施形態1の変形例2として、図11を参照して、車両10が走行中の車線内で幅寄せした場合に軌跡制御により元の走行位置に車両10を復帰させる例について説明する。図11は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態1の変形例2における軌跡制御処理が行われる状況の一例を示す図である。
図11に示す例では、車両10が3本の車線(1)〜(3)のうち中央の車線(2)を走行している。具体的には、車両10は、車線(2)内の中央を走行しており、運転者の操作に応じて(i)が示す偏差の範囲分、車線(2)内で幅寄せ可能な状況にある。例えば、車線(2)内で左側へ幅寄せした場合の走行位置は車両10−1が示す位置となり、車線(2)内で右側へ幅寄せした場合の走行位置は車両10−2が示す位置となる。車両10が走行している車線(2)の右隣の車線(3)上には、大型車両の周辺車両20−1と、小型車両の周辺車両20−2が走行している。なお、車線(2)の左隣の車線(1)上には周辺車両20は走行していない。
図11に示す状況では、運転者は大型車両の周辺車両20−1と並走することになるため、車線変更しなくとも同一車線内で左側へ幅寄せして走行する(すなわち、図11において、車両10−1および車両10−3の位置で走行する)ことが望ましいと考えられる。そこで、軌跡制御部11iは、運転者の操作により同一の車線内の端側(図11において、左側)へ車両10を幅寄せした場合は、所定時間経過後に当該車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御を実行する。具体的には、軌跡制御部11iは、幅寄せ前に車両情報検出部11bにより検出された幅寄せ前の車両位置および記憶部17に記憶される地図データ17aに基づいて、所定時間経過後に当該車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御(すなわち、図11において、目標軌跡(ii)に従う軌跡制御)を実行する。ここで、軌跡制御部11iは、車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御を実行中、運転者の操作により車両を再度幅寄せする操作が行われた場合、車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御を中断してもよい。
以上説明したように、実施形態1の変形例2では、ECU11は、運転者の操作により同一の車線内の端側へ車両10を幅寄せした場合は、所定時間経過後に当該車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御を実行する。これにより、実施形態1の変形例2によれば、同一車線内で幅寄せ後、車線中央への復帰操舵が不要となる。更に、実施形態1の変形例2によれば、自然に軌跡を車線中央に回復させることで運転者に違和感を与えないようにすることができ、運転者の快適性を向上させることができる。このように、実施形態1の変形例2によれば、上述の実施形態1および実施形態1の変形例1に示した効果に加え、軌跡制御装置は、車線内で運転者が車線の隅を走行した時(例えば、上述の図11に示す大型車両の並走等)に自動運転を解除すること無く車線の隅で走行させた上で、車線中央への復帰させることができる。
[実施形態1の変形例3]
実施形態1の変形例3として、図12および図13を参照して、車両10が走行中の車線内で幅寄せした場合にその幅寄せした車線内の走行位置を維持する例について説明する。図12は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態1の変形例3における軌跡制御処理が行われる状況の一例を示す図である。図13は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態1の変形例3における軌跡制御処理が行われる状況の別の一例を示す図である。
図12に示す例では、車両10が高速道路を走行している場合を想定している。車両10が3本の車線(1)〜(3)のうち中央の車線(2)を走行している。具体的には、車両10は、車線(2)内の中央を走行しており、運転者の操作に応じて(i)が示す偏差の範囲分、車線(2)内で幅寄せ可能な状況にある。例えば、車線(2)内で左側へ幅寄せした場合の走行位置は車両10−1が示す位置となり、車線(2)内で右側へ幅寄せした場合の走行位置は車両10−2が示す位置となる。ここで、車線(2)と車線(3)の間には、障害物として分離帯30が設定されている。つまり、車線(3)は、車線(1)および車線(2)に対する対向車線である。車線(3)には、対向車両である周辺車両20が走行している。なお、車線(2)の左隣の車線(1)上には周辺車両20は走行していない。
また、図13に示す例では、車両10が対面通行している場合を想定している。車両10が2本の車線(1)〜(2)のうち左側の車線(1)を走行している。具体的には、車両10は、車線(1)内の中央を走行しており、運転者の操作に応じて(i)が示す偏差の範囲分、車線(1)内で幅寄せ可能な状況にある。例えば、車線(1)内で左側へ幅寄せした場合の走行位置は車両10−1が示す位置となり、車線(1)内で右側へ幅寄せした場合の走行位置は車両10−2が示す位置となる。ここで、車線(1)と車線(2)の間には、障害物として分離ポールで構成された分離帯30が設定されている。つまり、車線(2)は、車線(1)に対する対向車線である。車線(2)には、対向車両である周辺車両20が走行している。
図12および図13に示す状況では、運転者は車両10の右隣に分離帯30が存在しかつ対向車両の周辺車両20の相対速度が速くなるため、車線変更しなくとも同一車線内で左側へ幅寄せして走行する(すなわち、図12および図13において、車両10−1および車両10−3の位置で走行する)ことが望ましいと考えられる。そこで、軌跡制御部11iは、運転者の操作により同一の車線内の端側(図12および図13において、左側)へ車両10を幅寄せした後、障害物検知部11aにより検知される幅寄せした方向と反対の障害物(図11において、分離帯および対向車両の周辺車両20)が、車両10から所定距離内に存在する場合は、車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御を実行しない。具体的には、軌跡制御部11iは、幅寄せした後に車両情報検出部11bにより検出された幅寄せ後の車両位置および記憶部17に記憶される地図データ17aに基づいて、幅寄せした車線内の走行位置を維持した軌跡制御(すなわち、図12および図13において、目標軌跡(iii)に従う軌跡制御)を実行する。
以上説明したように、実施形態1の変形例3では、ECU11は、車両10を幅寄せした後、幅寄せした方向と反対の障害物が車両10から所定距離内に存在する場合は、車線の中央に車両10を復帰させる軌跡制御を実行しない。これにより、実施形態1の変形例3によれば、運転者が車線の隅を走行した理由が分離帯または対向車両であると認識される場合は、車線中央に復帰させず、再び車線中央に戻る運転者の意思が検出されるまで車線の隅を走行し続けることができる。このように、実施形態1の変形例3によれば、上述の実施形態1および実施形態1の変形例1〜2に示した効果に加え、軌跡制御装置は、運転者の意思を最優先とすることで、自動運転において運転者に違和感を生じさせないようにすることができる。
[実施形態2]
図14を参照して、実施形態2における軌跡制御について説明する。図14は、本発明にかかる軌跡制御装置の実施形態2における軌跡制御の基本処理の一例を示すフローチャートである。実施形態2では、目標軌跡を複数生成した上で選択する処理ではなく、運転者の意思を検出した上で運転者の意思に対応する方向の目標軌跡を生成する処理について説明する。
図14に示すように、ECU11の障害物検知部11aは、車両10の前方に存在する周辺車両20を検知する(ステップSD−1)。ECU11の障害物検知部11aは、更に、周辺車両20の位置および方位を示す障害物情報を取得する。
そして、ECU11の車両情報検出部11bは、車両10の車両位置および車両状態量を検出する(ステップSD−2)。ここで、車両位置は、車両10の現在位置である。また、車両状態量は、例えば、方向指示器のオンオフ状態、操舵トルク(MT)、操舵角(MA)、車速(V)、横加速度(a)、ヨーレート(YR)等を含む。
そして、ECU11の意思検出部11dは、運転者の操作により決定される、ステップSD−1にて障害物検知部11aの処理により検知された周辺車両20に対する車両10の回避方向を、運転者の意思として検出する(ステップSD−3)。意思検出部11dは、方向指示器、操舵トルク、操舵角のうち少なくとも1つに基づいて、周辺車両20に対する車両10の回避方向を運転者の意思として検出する。
そして、ECU11の目標軌跡生成部11cは、ステップSD−3にて意思検出部11dの処理により検知された運転者の意思を反映させた回避方向へ周辺車両20を回避するための目標軌跡を生成する(ステップSD−4)。目標軌跡生成部11cは、ステップSD−1にて障害物検知部11aの処理により取得された障害物情報、ステップSD−2にて車両情報検出部11bの処理により検出された車両位置および車両状態量、ならびに、記憶部17に記憶される地図データ17a等に基づいて、ステップSD−3にて意思検出部11dの処理により検知された運転者の意思を反映させた回避方向へ周辺車両20を回避するための目標軌跡を生成する。
そして、ECU11の軌跡制御部11iは、ステップSD−4にて目標軌跡生成部11cの処理により生成された目標軌跡に基づいて、周辺車両20を回避する軌跡制御を実行する(ステップSD−5)。
以上説明したように、実施形態2では、ECU11は、車両10の周辺に存在する障害物を検知し、運転者の操作により決定される検知された障害物に対する車両の回避方向を運転者の意思として検出し、検出された運転者の意思を反映させた回避方向へ障害物を回避する目標軌跡を生成し、生成された目標軌跡に基づいて障害物を回避する軌跡制御を実行する。これにより、実施形態2によれば、軌跡制御装置は、上述の実施形態1のように、目標軌跡を複数生成した後に運転者に意思に対応する目標軌跡を選択するだけでなく、先に運転者の意思を検出して、検出した運転者の意思に対応する目標軌跡を1つのみ生成することができる。よって、本発明かかる軌跡制御装置は、ECU11の目標軌跡生成にかかる処理負荷を低減させることができる。