JP5781398B2 - 膜状組織移送器具及び膜状組織移送方法 - Google Patents
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Description
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る膜状組織移送器具10(以下、「移送器具10」という)の構成を示す分解斜視図である。図1Bは、移送器具10の断面図である。図1Cは、移送器具10の模式的断面図である。なお、図1Bは、実際の状態を誇張した図であり、各構成要素の厚さ、間隔、凹凸等を誇張して示している。また、図1Cでは、理解を容易にするため、図1Bに示した移送器具10をさらに簡略化して模式的に示している。
F1=πr2s/(h/2)…(1)
F2=πds…(2)
P2=2π2Kγa4/t…(3)
[実験例1] ヒト筋芽細胞からなるシート状細胞増養物の作製
ヒト骨格筋芽細胞(Lonza製)を、20%のヒト血清を含有するDMEM/F12培地(Invitrogen製)を入れた温度応答性培養皿(UpCell(R)3.5cmディッシュ又は10.0cmディッシュ、セルシード製)に106個/cm2の密度で播種し、37℃、5%CO2で24時間培養し、単層のシートを形成させた。その後、培養皿の温度を20℃に降下させてシート状培養細胞物を培養皿から剥離した。得られたシート状細胞培養物の寸法は、直径15mm程度又は45mm程度、厚さ30〜60μm程度であった。
ブタ骨格筋芽細胞を、特開2007−89442号公報に記載の方法で単離した。すなわち、ミニブタ(日生研株式会社より購入)の下肢より骨格筋を採取し、組織輸送液(HBSS(GIBCO製)、1.45mg/mLのグルコース(大塚製薬製)、0.1mg/mLのゲンタマイシン(富士製薬製)、2.5μg/mLのファンギゾン(GIBCO製))に浸漬して、洗浄した。
マウス繊維筋芽細胞(NIH3T3細胞)を、20%のウシ胎仔血清(Invitrogen製)を含有するDMEM培地(Invitrogen製)を入れた温度応答性培養皿(UpCell(R)10.0cmディッシュ、セルシード製)に106個/cm2の密度で播種し、37℃、5%CO2で24時間培養し、単層のシートを形成させた後、培養皿の温度を20℃に降下させてシート状培養細胞物を培養皿から剥離した。得られたシート状細胞培養物の寸法は、直径45mm程度、厚さ30〜60μm程度であった。
以下、本発明の効果を確認する試験結果を実施例として説明する。
[実施例1−1]
第1支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
第2支持部材:厚さ168μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状培養細胞物
移送対象部位:培養容器
方法:水で湿潤状態にある膜状組織を第1支持部材と第2支持部材との間に挟み込んだ移送器具を作製し、図2Bに示した方法と同様に、第1支持部材の位置を保持し、第2支持部材をスライドさせた。
結果:第2支持部材をスライドさせても、膜状組織が移動せず第1支持部材側の位置を保持した。よって、第1支持部材と膜状組織との間の摩擦力は、第2支持部材と膜状組織との間の摩擦力よりも大きいことが示された。
第1支持部材:厚さ10μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ110μmのポリウレタン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状培養細胞物
移送対象部位:培養容器
方法:実施例1−1と同じ。
[実施例2−1]
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:粘土を食品用ラップフィルムで包んだ擬似臓器(移植面の形状は曲面)
方法:水で湿潤状態にある上記の膜状組織を第1支持部材と第2支持部材との間に挟み込んだ移送器具を作製し、図2A〜図2Cに示した方法を実施した。
結果:図2Bの工程において、膜状組織は静止したままで第2支持部材だけを除去することができた。膜状組織は、破損することなく移植することができた。擬似臓器の表面の屈曲の大きい部分でも、移送器具が変形してよく密着した。ポリウレタンとポリエチレンは、体積弾性係数及び界面自由エネルギーが近いことから、第1支持部材と膜状組織との間の摩擦力と、第2支持部材と膜状組織との間の摩擦力との差は、主として、第1支持部材と第2支持部材の厚さの違いに起因するものである。
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ195μmのポリプロピレン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:粘土を食品用ラップフィルムで包んだ擬似臓器(移植面の形状は曲面)
方法:水で湿潤状態にある膜状組織を第1支持部材と第2支持部材との間に挟み込んだ移送器具を作製し、図3A〜図3Cに示した方法を実施した。
結果:図3Aの工程において、第1支持部材を把持して第1支持部材を第2支持部材に対してスライドさせると、第1支持部材と一緒に膜状組織も第2支持部材に対してスライドさせ、移送対象部位上に第1支持部材と膜状組織を配置することができた。ポリウレタンとポリプロピレンは、体積弾性係数及び界面自由エネルギーが近いことから、第1支持部材と膜状組織との間の摩擦力と、第2支持部材と膜状組織との間の摩擦力との差は、主として、第1支持部材と第2支持部材の厚さの違いに起因するものである。膜状組織は、破損することなく移植することができた。なお、擬似臓器の表面の屈曲の大きい部分では、第2支持部材の厚みのため擬似臓器の表面に密着しにくかった。
[実施例3−1]
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:ウシ摘出心臓(拍動なし)
方法:水で湿潤状態にある膜状組織を第1支持部材と第2支持部材との間に挟み込んだ移送器具を作製し、図2A〜図2Cに示した方法を実施した。
結果:図2Bの工程において、膜状組織は静止したままで第2支持部材だけを除去することができた。膜状組織は、破損することなく移植することができた。ウシ摘出心臓の表面の屈曲の大きい部分でも、移送器具が変形してよく密着した。
[実施例4−1]
第1支持部材:厚さ10μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ30μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:マウス繊維芽細胞(NIH3T3細胞)から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:ブタ心臓(拍動あり)
方法:水で湿潤状態にある膜状組織を第1支持部材と第2支持部材との間に挟み込んだ移送器具を作製し、図2A〜図2Cに示した方法を実施した。
結果:図2Bの工程において、膜状組織は静止したままで第2支持部材だけを除去することができた。膜状組織は、破損することなく移植することができた。
第1支持部材:厚さ10μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:マウス繊維芽細胞(NIH3T3細胞)から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:ブタ心臓(拍動あり)
方法及び結果:実施例4−1と同じ。
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:マウス繊維芽細胞(NIH3T3細胞)から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:ブタ心臓(拍動あり)
方法及び結果:実施例4−1と同じ。なお、第2支持部材を除去した後、第1支持部材を速やかに除去することにより、拍動の影響によってマウス繊維芽細胞から作製されたシート状細胞培養物が破損することを防止することができた。
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:ブタ筋芽細胞から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:ブタ心臓(拍動あり)
方法及び結果:実施例4−1と同じ。
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:ブタ心臓(拍動あり)
方法及び結果:実施例4−1と同じ。
図4は、本発明の第2実施形態に係る膜状組織移送器具10a(以下、「移送器具10a」という)の分解斜視図である。なお、第2実施形態に係る移送器具10aにおいて、第1実施形態に係る移送器具10と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
[実施例5−1]
第1支持部材:厚さ25μmのポリウレタン製のフィルム
第2支持部材:厚さ68μmのポリエチレン製のフィルム
第3支持部材:厚さ195μmのポリプロピレン製のフィルム
膜状組織:ヒト筋芽細胞から作製されたシート状細胞培養物
移送対象部位:粘土を食品用ラップフィルムで包んだ擬似心臓(移植面の形状は曲面)
方法:水で湿潤状態にある膜状組織を第1支持部材と第2支持部材との間に挟み込み、さらにそれらを第3支持部材上に配置した移送器具を作製し、図5A、5B及び図2A〜図2Cに示した方法を実施した。
結果:第3支持部材は剛性があるため、膜状組織を含むフィルムの対象部位への移送が容易であった。また、図5Bに示す第3支持部材の、第1支持部材、膜状組織及び第2支持部材に対するスライド、及び図2Bに示す第1支持部材と膜状組織に対する第2支持部材のスライドでも膜状組織が移動せず、膜状組織は第1支持部材側の位置を保持した。最後に膜状組織を移送対象部位に残したまま、膜状組織から第1支持部材を剥がすことができた。
上述した第1及び第2実施形態では、第1支持部材14の厚さを第2支持部材16の厚さよりも薄く設定することで、第1支持部材14と膜状組織12との間の摩擦力P1を、第2支持部材16と膜状組織12との間の摩擦力P2よりも大きくしたが、他の手段により、摩擦力の設定を行ってもよい。他の手段としては、体積弾性率の違いを利用したものや、吸水率の違いを利用したものが考えられる。
14…第1支持部材 16…第2支持部材
18…保存液
20、22、32、34、42、48、50…把持部
24…保持ユニット 26…第3支持部材
Claims (7)
- 生体由来の細胞からなる膜状組織を移送するための膜状組織移送器具であって、
湿潤状態の前記膜状組織と、
湿潤状態の前記膜状組織の一面側に配置され、柔軟性をもつフィルム状の第1シート体を有する第1支持部材と、
湿潤状態の前記膜状組織の他面側に配置され、柔軟性をもつフィルム状の第2シート体を有する第2支持部材と、を備え、
前記第1シート体は、前記膜状組織の前記一面に接触しており、
前記第2シート体は、前記膜状組織の前記他面に接触しており、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とにより前記膜状組織の全体が保持され、
前記第1シート体と前記膜状組織との間の摩擦力は、前記第2シート体と前記膜状組織との間の摩擦力よりも大きい、
ことを特徴とする膜状組織移送器具。 - 請求項1記載の膜状組織移送器具において、
前記第1シート体が前記第2シート体よりも薄く形成されていることにより、前記第1支持部材と前記膜状組織との間の摩擦力が、前記第2支持部材と前記膜状組織との間の摩擦力よりも大きくされている、
ことを特徴とする膜状組織移送器具。 - 請求項1又は2記載の膜状組織移送器具において、
前記第1支持部材は、前記第2支持部材よりも柔軟に形成されている、
ことを特徴とする膜状組織移送器具。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜状組織移送器具において、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に前記膜状組織を保持してなる保持ユニットを載置可能であり、前記第2支持部材よりも剛性の高い第3支持部材をさらに備える、
ことを特徴とする膜状組織移送器具。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜状組織移送器具において、
前記第1支持部材と前記第2支持部材の少なくとも一方の縁部の少なくとも一部に、他の部分よりも剛性が高い把持部が設けられる、
ことを特徴とする膜状組織移送器具。 - 生体由来の細胞からなる膜状組織を移送するための膜状組織移送方法であって、
湿潤状態の前記膜状組織と、湿潤状態の前記膜状組織の一面側に配置されたシート状の第1支持部材と、湿潤状態の前記膜状組織の他面側に配置されたシート状の第2支持部材と、を備え、前記第1支持部材と前記第2支持部材とにより前記膜状組織の全体が保持され、前記第1支持部材と前記膜状組織との間の摩擦力が前記第2支持部材と前記膜状組織との間の摩擦力よりも大きい、膜状組織移送器具を用意する工程と、
前記膜状組織移送器具を移送対象部材上に配置する工程と、
前記第2支持部材を前記膜状組織に対してスライドさせることで、前記膜状組織と前記移送対象部材との間から前記第2支持部材を除去する工程と、
前記膜状組織を前記移送対象部材上に残したまま前記第1支持部材を前記膜状組織上から除去する工程と、を含む、
ことを特徴とする膜状組織移送方法。 - 生体由来の細胞からなる膜状組織を移送するための膜状組織移送方法であって、
湿潤状態の前記膜状組織と、湿潤状態の前記膜状組織の一面側に配置されたシート状の第1支持部材と、湿潤状態の前記膜状組織の他面側に配置されたシート状の第2支持部材と、を備え、前記第1支持部材と前記第2支持部材とにより前記膜状組織の全体が保持され、前記第1支持部材と前記膜状組織との間の摩擦力が前記第2支持部材と前記膜状組織との間の摩擦力よりも大きい、膜状組織移送器具を用意する工程と、
前記膜状組織移送器具を、移送対象部材の近傍に配置する工程と、
前記第1支持部材及び前記膜状組織を前記第2支持部材に対してスライドさせることで、前記第1支持部材及び前記膜状組織を前記移送対象部材上に配置する工程と、
前記膜状組織を前記移送対象部材上に残したまま前記第1支持部材を前記膜状組織上から除去する工程と、を含む、
ことを特徴とする膜状組織移送方法。
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