JP2007089442A - 骨格筋芽細胞の分離方法 - Google Patents

骨格筋芽細胞の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】骨格筋から分離した細胞に含まれる骨格筋芽細胞の割合を高める。また、骨格筋から分離した細胞を培養して得られる細胞に含まれる骨格筋芽細胞の割合を高める。
【解決手段】骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を1回行い得られた酵素処理液を廃棄する第1工程と、前記第1工程後の骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を1回以上行い得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する第2工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、骨格筋に含まれている骨格筋細胞、骨格筋芽細胞、および線維芽細胞などの中から、骨格筋芽細胞を分離する方法に関する。
狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患では、心筋組織に十分な酸素が行き渡らなくなり、この状態が長時間続くと心筋組織が壊死してしまう。成人の心筋細胞は自己複製能に乏しいため、心筋組織は一度壊死すると再生することはなく、心不全に陥ってしまう。心不全の治療方法としては、左心補助人工心臓を装着するか、最終的には心臓移植を受けるという方法しかないのが現状である。
このような中で新たな治療方法として研究が進められているのが、心筋組織へ細胞移植である。心筋組織へ細胞が移植されると、心機能の低下が防止される。
細胞移植に利用された細胞としては、これまでに、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、ES細胞、骨髄由来の細胞等が報告されている。例えば、特許文献1には、動物の心筋組織中への骨格筋芽細胞又は心筋細胞の導入による、動物における安定な心筋細胞性移植体の形成において使用するための、生存可能な骨格筋芽細胞又は生存可能な心筋細胞を含む細胞組成物について記載されている。
骨格筋芽細胞の移植により心機能の低下が防止されるメカニズムについてはまだ明らかではないが、概要としては、移植された骨格筋芽細胞が心筋内で筋線維を形成し、その弾力性により周囲の正常な心筋の動きを機械的に助けて心機能の更なる低下を防ぐこと、または移植された骨格筋芽細胞がVEGF(血管内皮増殖因子)などのサイトカインを分泌し、その効果によるものなどが考えられている。
この骨格筋芽細胞は、骨格筋に含まれているので、心筋組織の壊死部分に移植されるときには、骨格筋から分離された後に培養されて用いられる。
特許第3647866号公報
ところで、骨格筋には、骨格筋芽細胞以外に線維芽細胞などが多く含まれているので、骨格筋から得られた細胞を培養すると線維芽細胞も増殖し、移植に用いられる細胞の全細胞に対する骨格筋芽細胞の割合が低いものとなる。
しかしながら、骨格筋芽細胞以外の細胞を心筋の壊死部分に移植しても、骨格筋芽細胞を移植した場合ほどの心機能の低下抑制効果は得られない。したがって、骨格筋芽細胞の含有率が低い場合には、骨格筋から得られた細胞を心筋の壊死部分に移植しても、心機能の低下を十分に抑制することが困難となる。
本発明者等は、上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬して酵素処理を行って得られた酵素処理液を廃棄した後に、再度タンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬して酵素処理を行って得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収することによって、骨格筋から分離された細胞に含まれる骨格筋芽細胞の割合が高くなることを見出した。
また、骨格筋から得られた細胞を、容器に入れた培養液中で所定の時間放置して、接着性の高い細胞を容器に接着させ、培養液を回収することで、培養液に含まれる細胞中の骨格筋芽細胞の割合が高くなることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(10)を提供することを目的とする。
(1)骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を1回行い得られた酵素処理液を廃棄する第1工程と、前記第1工程後の骨格筋を前記タンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を1回以上行い得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する第2工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
(2)前記第1工程で行われる酵素処理では、前記骨格筋を、過剰量の前記タンパク質分解酵素溶液に25〜45分浸漬し、前記第2工程で行われる酵素処理では、前記骨格筋を、過剰量の前記タンパク質分解酵素溶液に、20〜80分浸漬する、前記(1)に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
(3)前記第2工程では、前記酵素処理を2回以上行い各酵素処理で得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する、前記(1)または(2)に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
(4)前記骨格筋は、筋頭および/または筋尾を含む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
(5)少なくとも骨格筋の筋頭および/または筋尾をタンパク質分解酵素溶液に浸漬して酵素処理し得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する細胞回収工程を備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
(6)骨格筋から得られた細胞を、容器に入れた培養液中で30〜60分放置して、接着性の高い細胞を容器に接着させる接着工程と、前記接着工程後の培養液を回収する培養液回収工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
(7)前記接着工程では、ポリスチレンを用いて形成された未コートの容器を用いる、前記(6)に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
(8)前記骨格筋は、筋頭および/または筋尾を含む、前記(6)または(7)に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
(9)前記骨格筋から得られた細胞は、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離方法によって分離された細胞である、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
(10)前記骨格筋から得られた細胞は、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離方法によって分離された細胞を培養して得られた細胞である、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
本発明によれば、骨格筋から分離した細胞中の骨格筋芽細胞の割合を、高めることができる。また、本発明によれば、骨格筋から多数の骨格筋芽細胞を分離することができる。
したがって、本発明の分離方法によって骨格筋から分離された細胞は、骨格筋芽細胞の数が多くかつ割合が高いために、心筋組織の壊死部分への移植に適した細胞となる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
[骨格筋]
最初に、本発明で用いられる骨格筋について説明する。
骨格筋は、図1に示すように、2つの骨にまたがって付着している。具体的に説明すると、両端に腱1、2が付着しており、腱1と腱2とが、異なる骨に接続している。
骨格筋は、紡錘形であり、両端が細く中央が脹らんでいる。両端のうち、運動が小さい方を筋頭3といい、運動が大きい方を筋尾4といい、また、中央の脹らんでいる部分を筋腹5という。なお、以下の説明では、筋頭3および筋尾4を総称して、骨格筋の端部ともいう。
骨格筋は、骨格筋細胞、骨格筋芽細胞、線維芽細胞などの細胞を含むが、中でも骨格筋芽細胞は、心筋の壊死部分に移植することによって、心筋機能の低下を抑制することができる。
なお、骨格筋芽細胞を移植に用いる場合には、患者または患畜自身の骨格筋から得られた骨格筋芽細胞を用いることが好ましい。患者または患畜自身の骨格筋から得られた骨格筋芽細胞を用いることにより、移植された場合に拒絶反応が起こることを低減することができる。
[第1の実施の形態]
つぎに、本発明の第1の実施の形態について説明する。
本発明の第1の実施の形態は、骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を行い得られた酵素処理液を廃棄する第1工程と、前記第1工程後の骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を少なくとも1回行い酵素処理毎に得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する第2工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法である。
<第1工程>
第1工程では、骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を行い、得られた酵素処理液を廃棄する。
骨格筋に含まれる細胞は、結合組織によって接着しているので、タンパク分解酵素溶液に所定の時間浸漬させることにより、結合組織が壊れて各細胞が骨格筋から離れ、酵素溶液中に遊離する。
本発明者らは検討を重ね、第1工程の酵素処理すなわち1回目の酵素処理で得られる酵素処理液は、第2工程の酵素処理すなわち2回目以降の酵素処理で得られる酵素処理液と比較して、全細胞数に対する骨格筋芽細胞数の割合(以下「骨格筋芽細胞純度」ともいう)が、少ないことを見出した。本発明者らの検討によれば、ブタ下肢骨格筋を酵素処理した場合には、第1工程の酵素処理で得られる酵素処理液の骨格筋芽細胞純度は55〜65%であり、第2工程の酵素処理で得られる酵素処理液の骨格筋芽細胞純度が65〜75%であるのと比較して少ない。
したがって、第1工程の酵素処理で得られた酵素処理液を廃棄し、第2工程の酵素処理で得られる酵素処理液に含まれる細胞を回収することで、骨格筋から分離した細胞における骨格筋芽細胞純度を上げることが可能になる。
酵素処理に用いられるタンパク質分解酵素溶液は、線維性組織を分解するコラゲナーゼや、細胞同士の接着を分離するトリプシンを含むことが好ましく、コラゲナーゼとトリプシンとの両方を含むことがより好ましい。コラゲナーゼの濃度は、0.05〜0.25%(W/V)であることが好ましく、トリプシンの濃度は、0.001〜0.25%(V/V)であることが好ましい。
具体的には、トリプシンとしては、TrypLE Select(インビトロジェン(株))、トリプシン−EDTA(1×)溶液(インビトロジェン(株))を用いることが好ましく、コラゲナーゼとしては、コラゲナーゼA(日本ロシュ(株))、Collagenase Lyophilized (from Clostridium Histricum)(ギブコ(株))を用いることが好ましい。
また、タンパク質分解酵素溶液は、カルシウムイオンのキレーターであるEDTAまたはEGTAを含むことが好ましい。EDTAまたはEGTAの濃度は、0.02〜0.1%(W/V)であることが好ましい。
なお、EDTAまたはEGTAをタンパク質分解酵素に含ませない場合には、EDTAまたはEGTAの溶液をたんぱく質分解酵素とは別に準備し、骨格筋を、タンパク質分解酵素溶液に浸漬する前に、EDTAまたはEGTAの溶液に浸漬することが好ましい。EDTAまたはEGTAの濃度は、0.02〜0.1%(W/V)であることが好ましい。
また、1つの骨格筋からできるだけ多くの細胞を遊離させるためには、骨格筋に含まれるタンパク質の量に対して過剰量のタンパク質分解酵素を用いることが好ましい。
例えば、骨格筋の重さが1〜2gである場合には、コラゲナーゼAを0.5mg/L含むTrypLE Select20mLを添加した場合に、過剰量のタンパク質分解酵素が添加されている。
用いる骨格筋は、骨格筋の端部を含むことが好ましく、骨格筋の端部であることがより好ましい。骨格筋の端部に酵素処理を施すと、詳細を後述するように、第2工程で得られる酵素処理液中の骨格筋芽細胞純度が高くなる。
処理温度は、35〜40℃が好ましく、37℃がより好ましい。前記範囲である場合には、酵素反応が十分に進行し、結合組織が十分に破壊されるため、細胞が酵素溶液中に遊離しやすくなる。
また、処理時間は、過剰量のタンパク質分解酵素溶液を用いている場合に、25〜45分であることが好ましく、30〜40分であることがより好ましい。前記範囲である場合には、酵素溶液中に遊離する全細胞数に対する骨格筋芽細胞の数の割合が低くなるので、後述する第2工程で、骨格筋芽細胞純度が高い酵素処理液を得ることが可能になる。
タンパク質分解酵素溶液の体積は、特に限定されないが、骨格筋全体の結合組織を破壊するために、骨格筋全体が浸漬する体積であることが好ましい。
また、酵素処理中は、タンパク質分解酵素溶液をかくはんすることが好ましい。かくはんによって、タンパク質分解酵素溶液が骨格筋全体と接触しやすくなる。
<第2工程>
第2工程では、第1工程後の骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を少なくとも1回行い、各酵素処理で得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する。
第2工程の酵素処理では、第1工程の酵素処理と同様なタンパク質分解酵素溶液を用いることが好ましい。
また、第1工程の酵素処理と同様に、過剰量のタンパク質分解酵素溶液を用いることが好ましい。
酵素処理の処理温度は、35〜40℃が好ましく、37℃がより好ましい。
酵素溶液の体積は、骨格筋全体の結合組織を破壊するために、骨格筋全体が浸漬する体積であることが好ましい。また、酵素処理中はかくはんすることが好ましい。
第2工程で骨格筋をタンパク質分解酵素に浸漬する時間は、酵素処理1回当たり20〜80分であることが好ましく、30〜70分であることがより好ましい。
また、本発明者らは検討を重ね、第2工程での酵素処理を複数回行うと、酵素処理の回数が増えるに従って、得られる酵素処理液中の細胞の数が増加しかつ骨格筋芽細胞純度も上昇することを見出した。例えば、3回目に酵素処理を行って得られた酵素処理液は、2回目に酵素処理を行って得られた酵素処理液と比較して、細胞の数が多くかつ骨格筋芽細胞純度が高い。
したがって、第2工程では、酵素処理を複数回行うことがより好ましい。
酵素処理を複数回行う場合には、第2工程で行う最初の酵素処理は、骨格筋組織を十分にほぐすために長めの時間であることが好ましく、具体的には40〜70分であることが好ましい。また、第2工程で行う2回目以降の酵素処理は、骨格筋組織が脆くなっているために短めの時間であることが好ましく、具体的には30〜50分であることが好ましい。
第1工程で骨格筋をタンパク質分解酵素に浸漬する時間と第2工程で骨格筋をタンパク質分解酵素に浸漬する時間との累計は、60〜180分であることが好ましく、80〜140分であることがより好ましい。累計が60分以上であることにより、骨格筋に含まれる骨格筋芽細胞を十分に遊離させることができる。また、累計が180分以下であることにより、骨格筋芽細胞以外の遊離を抑えることができ、また、遊離した骨格筋芽細胞への酵素処理液の影響を小さくすることができる。
また、酵素処理液に含まれる細胞を回収する方法は特に限定されないが、例えば、酵素処理液を遠心分離して得られた沈殿を回収する方法などが挙げられる。
<細断工程>
なお、第1工程の前に、骨格筋を細断する細断工程を備えることが好ましい。細断工程では、例えばメスや針などを用いて、骨格筋を一辺が2mm以下の断片に細断し、結合組織からなる断片を取り除く。細断工程により、第1工程および第2工程の酵素処理で、細胞が酵素溶液中に遊離し易くなる。
細断工程では、乾燥を防ぐために、骨格筋を、温度が18〜23℃である上記タンパク質分解酵素に浸漬させることが好ましい。なお、タンパク質分解酵素の温度が18〜23℃であるため、骨格筋をタンパク質分解酵素に浸漬しても骨格筋からの細胞の分離は抑制される。
以上説明した骨格筋芽細胞の分離方法によれば、骨格筋から得られる細胞における骨格筋芽細胞純度が高くなる。したがって、心筋組織の壊死部分への移植に適した細胞が得られる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本発明の第2の実施の形態は、少なくとも骨格筋の筋頭3および/または筋尾4部分をタンパク質分解酵素溶液に浸漬して酵素処理し得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する、骨格筋芽細胞の分離方法である。
本発明者らは検討を重ね、骨格筋の端部をタンパク質分解酵素溶液に浸漬して得られた酵素処理液は、骨格筋の筋腹をタンパク質分解酵素溶液に浸漬して得られた酵素処理液と比較して、全細胞に対する骨格筋芽細胞の割合が高いことを見出した。
本実施の形態では、第1の実施の形態で用いたタンパク質分解酵素溶液と同じタンパク質分解酵素溶液を用いることが好ましい。また、過剰量のタンパク質分解酵素溶液を用いることが好ましい。
処理温度は、35〜40℃が好ましく、37℃がより好ましい。
酵素溶液の体積は、第1の実施の形態と同様に、骨格筋全体の結合組織を破壊するために、骨格筋全体が浸漬する体積であることが好ましい。また、酵素処理中はかくはんすることが好ましい。
また、処理時間は、30〜200分が好ましく、60〜140分が好ましい。前記範囲である場合には、骨格筋に含まれる骨格筋芽細胞を十分に遊離させることができる。
また、細胞の回収方法は特に限定されないが、第1の実施の形態と同様に、酵素処理液を遠心分離して得られた沈殿を回収する方法などが挙げられる。
[第3の実施の形態]
つぎに、本発明の第3の実施の形態について、説明する。
本発明の第3の実施の形態は、骨格筋から得られた細胞を、容器に入れた培養液中で30〜60分放置して、接着性の高い細胞を容器に接着させる接着工程と、前記接着工程後の培養液を回収する培養液回収工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法である。
この骨格筋芽細胞の分離方法では、骨格筋から得られた細胞を、容器に入れた培養液中で所定時間放置することで接着性の高い細胞を容器に接着させ、培養液中の骨格筋芽細胞純度を上げる。
骨格筋から得られた細胞のうち、線維芽細胞は、骨格筋芽細胞と比較して容器の壁への接着性が高い。したがって、培養液中で放置すると、骨格筋芽細胞と比較して短時間で容器に付着する。
したがって、骨格筋から得られた細胞を、容器に入れた培養液中で30〜60分放置して線維芽細胞を容器に接着させた後に、培養液を回収することによって、培養液中の全細胞に対する骨格筋芽細胞の割合を増やすことができる。
骨格筋から得られた細胞としては、骨格筋を35〜40℃でタンパク質分解酵素溶液に浸漬して酵素溶液中に遊離させることによって得られた細胞や、上述した第1の実施の形態によって分離される細胞、第2の実施の形態によって分離される細胞などが挙げられるが、中でも、第1の実施の形態によって分離される細胞が好ましい。
第1の実施の形態によって分離された細胞は骨格筋芽細胞純度が高いので、第1の実施の形態によって分離された細胞を用いることで、本実施の形態の方法によって分離される細胞中の骨格筋芽細胞の割合が、より高いものとなる。また、端部を含む骨格筋から得られた細胞であることがより好ましい。端部を含む骨格筋から細胞を得ることにより、本実施の形態の方法によって分離される細胞中の骨格筋芽細胞の割合を、より高くすることができる。
接着工程で用いられる容器は、ポリスチレンによって形成された容器、ガラスによって形成された容器、ポリカーボネートによって形成された容器など、一般的に細胞培養や組織培養に用いられるものであれば特に限定されないが、コラーゲンコートやゼラチンコートなどのコーティングが施されていない容器であることが好ましい。コーティングが施されていない容器を用いることにより、容器への骨格筋芽細胞の付着が抑制されるために、培養液中に含まれる全細胞に対する骨格筋芽細胞の割合が高まる。また、ポリスチレン製の容器を用いることがより好ましい。
放置する時間は、30〜60分の範囲内である。前記範囲であれば、線維芽細胞が容器に接着する割合が、骨格筋芽細胞が容器に接着する割合と比較して高くなるので、培養液に含まれる全細胞中の骨格筋芽細胞の割合が、高くなる。
また、放置するときの温度は、35〜40℃であることが好ましい。
培養液は、一般的に骨格筋芽細胞の培養に使用される培地であれば用いることができるが、例えば、DMEM、Ham´s F−12、Ham´s F−10(GIBCO社)、SkBM(Cambrex社)などを用いることができる。また、培養液には、ウシ胎児血清15〜20%(V/V)や、EGF(上皮成長因子)、フェチュインなどが添加されていてもよい。
以上説明した本発明の分離方法によれば、分離された細胞中に含まれる骨格筋芽細胞の割合を高くすることができる。したがって、この分離方法によって得られた細胞は、心臓の壊死部分への細胞移植に適したものとなる。
以下、本発明の骨格筋芽細胞の分離方法および培養方法について、実施例に基づいて詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、酵素処理を4回行い、1回目の酵素処理で得られた酵素処理液を廃棄し(第1工程)、2〜4回目の酵素処理で得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収し(第2工程)、回収した細胞を培養して、得られる細胞の数と骨格筋芽細胞純度とを測定した。また、第1工程で廃棄した酵素処理液についても、含まれる細胞を回収して回収された細胞の培養を行い、得られる細胞の数と骨格筋芽細胞純度とを測定した。
(a)細胞の分離
(a−1)組織の細断
食用ブタ下肢より骨格筋の筋腹約2gを採取し、組織輸送液(Hanks' Balanced Salt Solution:GIBCO社、Glucose 1.45mg/mL:大塚製薬(株)、Gentamycin 0.1mg/mL:富士製薬(株)、Fungizone 2.5μg/mL:GIBCO社)に浸漬して、洗浄した。
次いで、洗浄した骨格筋を、室温で、20mLの酵素溶液(TrypLE Select:インビトロジェン(株)、コラゲナーゼA 0.5mg/mL:日本ロシュ(株)、Gentamycin 50μg/mL:富士製薬(株)、Fungizone 0.25μg/mL:GIBCO社)中で、一辺2mm以下の大きさの断片になるまで細断した。この中から白色組織(結合組織)を取り除いた。
(a−2−1)第1工程
前記の組織の細断を行い、得られた骨格筋の筋腹の重量を測定したところ1.83gであった。この骨格筋に、20mLの酵素溶液を加えてかくはんし、恒温槽にて37℃で30分酵素処理した(以下「1回目酵素処理」ともいう)。1回目酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引して骨格筋を残し、吸引した酵素処理液を廃棄した。
(a−2−2)第2工程
1回目酵素処理後の骨格筋に酵素溶液20mLを加えてかくはんし、恒温槽にて、37℃で30分酵素処理した(以下「2回目酵素処理」ともいう)。2回目酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して細胞を沈殿させ、上清を捨てて細胞を回収した。
次いで、2回目酵素処理後の骨格筋に酵素溶液20mLを加えてかくはんし、恒温槽にて、37℃で40分酵素処理した(以下「3回目酵素処理」ともいう)。3回目酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して細胞を沈殿させ、上清を捨てて細胞を回収した。
次いで、3回目酵素処理後の骨格筋に酵素溶液20mLを加えてかくはんし、恒温槽にて、37℃で40分酵素処理した(以下「4回目酵素処理」ともいう)。4回目酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して細胞を沈殿させ、上清を捨てて細胞を回収した。
(a−3)初代培養
次いで、2回目酵素処理で回収した細胞、3回目酵素処理で回収した細胞、4回目酵素処理で回収した細胞を、それぞれゼラチンコートされた培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養した。
(b)継代培養および細胞回収
初代培養により得られた細胞は、増殖用培地(SkBM:Cambrex社、L-Glutamine 10mM:GIBCO社、15%FBS:Moregate社、Gentamycin 0.05mg/mL:富士製薬(株)、Dexamethason 3.04μg/mL:日本オルガノン(株)−三共(株))にて7日間継代培養を行った。途中、2回培地交換を行った。
7日間の継代培養後、細胞をトリプシン(TrypLE Select:インビトロジェン(株))で処理し、フラスコから回収した。血球計算板を用いて、細胞数を測定した。
(c)フローサイトメトリー解析
(c−1)抗体反応(1次抗体)
継代培養により得られた細胞を、それぞれ5×105個ずつ2本のチューブに取り、フローサイトメトリー解析用の試料とした。それそれ2本の試料のうち、1本には骨格筋芽細胞表面に特異的に発現するα7integrinを認識する抗体(H36抗体)を加え、骨格筋芽細胞の純度を測定するためのサンプルとした。もう1本には、Isotypic Control IgG1(mouse)を加え、ネガティブコントロールとした。いずれの抗体も0.5%(W/V)BSA−PBSで希釈して反応に用いた。反応は4℃で1時間行った。
(c−2)抗体反応(2次抗体)
1次抗体反応後、未反応の抗体を除き、新たに0.5%(W/V)BSA−PBSで希釈した2次抗体(Goat F(ab') 2 Fragment Anti-MOUSE IgG (H+L) FITC)を加え、4℃で45分反応を行い、骨格筋芽細胞を蛍光標識した。未反応の抗体を除いた後、0.5mLの0.5%(W/V)BSA−PBSを加えて懸濁し、フローサイトメトリー用のサンプルとした。
(c−3)解析
フローサイトメーター(BECKMAN COULTURE EPICS XL)を用いてH36抗体陽性細胞の検出を行った。得られたデータは、サンプルのH36抗体陽性細胞率からバックグラウンドとしてネガティブコントロールの値を差し引き、その値を各酵素処理時間で得られた細胞群の骨格筋芽細胞純度とした。
なお、1回目酵素処理を行った後に廃棄された酵素処理液についても遠心を行って細胞を沈殿させ、上清を捨てて細胞を回収し、前記(a−3)初代培養、(b)細胞培養および細胞回収、(c)フローサイトメトリー解析を行い、細胞数と骨格筋芽細胞純度を測定した。
実施例1で得られた結果を、表1および図2に示す。
Figure 2007089442
表1および図2より、2〜4回目酵素処理で得られた酵素処理液から回収された細胞を培養した場合には、いずれも細胞数が480万個以上であり、また骨格筋芽細胞純度が74%を超えていた。
一方、1回目酵素処理で得られた酵素処理液から回収された細胞を培養した場合には、細胞数が260万個、また骨格筋芽細胞純度が59.51%であった。したがって、1回目酵素処理で得られた酵素処理液は、2〜4回目酵素処理で得られた酵素処理液と比較して、細胞数が少なく、また骨格筋芽細胞純度が著しく低いことが判明した。
以上説明した結果より、1回目酵素処理で得られる酵素処理液を廃棄し、2回目以降の酵素処理で得られる酵素処理液に含まれる細胞を回収することによって、骨格筋芽細胞純度が上がることが判明した。
(実施例2、比較例1〜2)
実施例2、比較例1〜2では、骨格筋から得られた細胞を未コートの培養容器に入れた培養液中で1時間放置した後に培養した場合と、3時間放置した後に培養した場合と、放置せずに培養した場合とで、得られる細胞の数と骨格筋芽細胞純度とを比較した。
具体的には、以下に説明する(d)細胞の準備および(e)細胞の放置を行った後に、前記(c)フローサイトメトリー解析を行うことによって、得られる細胞の数と骨格筋芽細胞純度を測定し、得られた結果を比較した。測定は3回行った。
(d)細胞の準備
ブタ下肢骨格筋から得られ液体窒素内で凍結保存した細胞(3.6×107の細胞を含む)を、37℃の恒温槽で融解し、ただちに40mL、37℃の増殖用培地(SkBM:Cambrex社、L-glutamine 10mL:GIBCO社、15%FBS:moregate社、Dexamethasone 3.04μg/mL:日本オルガノン(株)−三共(株))に懸濁した。ゼラチンコートされた培養フラスコ(底面積500cm2)に全量を移し、さらに増殖用培地を加えて全量を75mLとし、そのまま翌日まで37℃、5%(V/V)CO2条件下で培養を行った。翌日、細胞が培養表面に接着していることを確認後、37℃に加温された増殖用培地に交換し、凍結保存用のDMSOを取り除いた。その後、37℃、5%(V/V)CO2条件下で3日間培養を行った。
なお、上記凍結保存した細胞は、上記実施例1の(a−2−1)第1工程で1回目酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して上清を捨てて細胞を回収し、上記(a−3)初代培養工程で、1回目酵素処理で回収した細胞を2〜4回目酵素処理で回収した細胞とともに培養した以外は、上記(a)細胞の分離と同様の方法によってブタ下肢骨格筋から分離した後に、上記(b)継代培養を行って得られた細胞をまとめて凍結保存したものであった。
(e)細胞の放置
培養している細胞が対数増殖期にあることを確認後、細胞を回収し、未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中で放置した。放置した時間は、表2に示す通りであった。
次いで、放置した後に培地に浮遊している未接着の細胞を回収し、ゼラチンコートしたフラスコに再播種した。4日間の培養後、細胞をトリプシン(TrypLE Select:インビトロジェン(株))処理し、フラスコから回収した。血球計算版を用いて回収した細胞の数を測定した。
なお、培養時間が0である比較例2では、未コートのポリスチレンフラスコに入れられた培養液中での細胞の放置を行わなかった。すなわち、前記(d)細胞の準備で得られた細胞を、直接ゼラチンコートしたフラスコに再播種して、4日間の培養を行った。
実施例2、比較例1、比較例2の結果を、表2に示す。
Figure 2007089442
表2より、骨格筋から得られた細胞を未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中で1時間放置した実施例2では、培養液中の骨格筋芽細胞純度が細胞の放置を行わなかった比較例2と比較して高いが、3時間放置した比較例1では、1時間放置した実施例2と比較して培養液中の骨格筋芽細胞純度が低くなっており、放置を行わなかった比較例2とほぼ同じであることが判明した。
また、統計処理を行い、実施例2の結果と比較例2の結果との間の有意差の有無と、比較例1の結果と比較例2の結果との間の有意差の有無とを確認した。
統計処理は、エクセル統計ソフトStatcel12(OMS出版)を使用して行った。n=3とデータ数が少ないために母数の検定は行わず、いずれの比較も最初にF検定を行って母分散が等しいと見なせるか否かを検定した(危険率5%、両側検定)。
F検定の結果、いずれについても母分散は等しいと見なせることが確認されたため、続いてスチューデントのt検定を行い、有意差の有無を確認した。スチューデントのt検定の結果は、以下の通りであった。なお、いずれも等分散を仮定して行っている。
[実施例2の結果と比較例2の結果とに基づいたスチューデントのt検定]
平均値の差 −5.76667、
自由度 4、
t値 −8.65、
P値(両側確立) 0.000983、
t(0.975) 2.776451、
母平均の差の区間推定(等分散を仮定したとき) 信頼度:95%、下限値:−7.61763、上限値:−3.9157
以上の結果から、t値の絶対値が境界値以上であり、また、p値<0.05であるため、実施例2の結果と比較例2の結果との間には有意差があることが認められた。
[比較例1の結果と比較例2の結果とに基づいたスチューデントのt検定]
平均値の差 0.1、
自由度 4、
t値 0.058688、
P値(両側確立) 0.956015、
t(0.975) 2.776451、
母平均の差の区間推定(等分散を仮定したとき) 信頼度:95%、下限値:−4.63084、上限値:4.830842
以上の結果から、t値の絶対値が境界値以下であり、また、p値>0.05であるため、比較例1の結果と比較例2の結果との間には有意差がないことが認められた。
また、実施例2、比較例1、比較例2の結果と、スチューデントのt検定の結果とをグラフに示すと、図3に示すとおりとなった。
以上説明したとおり、細胞を未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中で1時間放置した実施例2の結果と放置しなかった比較例2の結果との間には有意差が見られたが、細胞を未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中で3時間放置した比較例1の結果と放置しなかった比較例2の結果との間には有意差が見られなかった。
すなわち、細胞を未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中に放置していない場合と比較して、細胞を未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中で1時間放置した場合には、培養液中の骨格筋芽細胞純度が高くなったが、3時間放置した場合には、培養液中の骨格筋芽細胞純度が同程度となった。
したがって、未コートのポリスチレン製フラスコに入れられた培養液中で骨格筋から得られた細胞を1時間放置することによって、培養液中の骨格筋芽細胞純度を高くすることができるが、放置時間が長くなると、培養液中の骨格筋芽細胞純度が低くなることが判明した。
(実施例3、比較例3)
実施例3および比較例3では、骨格筋の端部を酵素処理して得られる細胞の数および骨格筋芽細胞純度と、骨格筋の筋腹を酵素処理して得られる細胞の数および骨格筋芽細胞純度とを比較した。
具体的には、以下の(f)細胞の分離を行った後に、上記(b)継代培養および細胞回収を行い、さらに(c)フローサイトメトリー解析を行うことによって、骨格筋の端部から得られる細胞の数および骨格筋芽細胞純度と、骨格筋の筋腹から得られる細胞の数および骨格筋芽細胞純度とを比較した。
(f)細胞の分離
(f−1)組織の細断
食用ブタ下肢より骨格筋を採取し、組織輸送液(Hanks' Balanced Salt Solution:GIBCO社、Glucose 1.45mg/mL:大塚製薬(株)、Gentamycin 0.1mg/mL:富士製薬(株)、Fungizone 2.5μg/mL:GIBCO社)に浸漬して、洗浄した。
なお、実施例3では骨格筋の端部約2gを採取し、比較例3では骨格筋の筋腹約3gを採取した。
次いで、採取した骨格筋を、20℃で、0.03%(V/V)CO2条件下で、20mLの酵素溶液(TrypLE Select:インビトロジェン(株)、コラゲナーゼA 0.5mg/mL:日本ロシュ(株)、Gentamycin 50μg/mL:富士製薬(株)、Fungizone 0.25μg/mL:GIBCO社)中で、一辺2mm以下の大きさの断片になるまで細断した。この中から白色組織(結合組織)を取り除いた。
(f−2)酵素処理
前記(f−1)の組織の細断を行い、得られた骨格筋を測定したところ、実施例3では1.88g、比較例3では2.88gであった。この骨格筋を、それぞれコニカルチューブに入れ、新たに前記酵素溶液20mLを加えてかくはんし、恒温槽にて、37℃で60分酵素処理した。酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して上清を捨て、細胞を回収した。
次いで、残存した骨格筋に新たに酵素溶液を20mL加えてかくはんし、恒温槽にて37℃で40分酵素処理した。すなわち、累計で100分酵素処理した。酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して上清を捨て、細胞を回収した。
さらに、残存した骨格筋に新たに酵素溶液を20mL加えてかくはんし、恒温槽にて37℃で40分酵素処理した。すなわち、累計で140分酵素処理した。酵素処理終了後、細胞が浮遊している酵素処理液を吸引し、得られた酵素処理液を遠心分離して上清を捨て、細胞を回収した。
(f−3)初代培養
次いで、60分酵素処理した後に回収された細胞をそれぞれ培養フラスコ(底面積175cm2)に移し、37℃、5%(V/V)のCO2条件下で初代培養した。また、累計で100分酵素処理した後に回収された細胞と累計で140分酵素処理した後に回収された細胞とは、それぞれ底面積500cm2の培養フラスコに移し、37℃、5%(V/V)のCO2条件下で初代培養した。
次いで、各培養フラスコ中の細胞数と骨格筋芽細胞数とを測定して、骨格筋の端部を酵素処理して得られた細胞の数および骨格筋芽細胞純度と、筋腹を酵素処理して得られた細胞の数および骨格筋芽細胞純度とを算出した。結果を、表3、図4、図5に示す。
Figure 2007089442
表3、図4、図5より、骨格筋の端部から分離される細胞は、骨格筋の筋腹から分離される細胞と比較して、骨格筋芽細胞純度はほぼ同じであるが、総数が約1.57倍であることが判明した。したがって、同じ重量の骨格筋から細胞を分離する場合、骨格筋の端部から細胞を分離する方が、骨格筋の筋腹から細胞を分離する場合と比較して得られる骨格筋芽細胞の数が多いことが判明した。このことから、骨格筋芽細胞純度が高い細胞を多く得るためには、骨格筋の端部を用いることが好ましいことが判明した。
骨格筋の構造を示す模式図である。 実施例1で測定された全細胞数と骨格筋芽細胞純度とを示すグラフである。 実施例2、比較例1および2で測定された骨格筋芽細胞純度を示すグラフである。 実施例3で測定された細胞数と比較例3で測定された細胞数とを示すグラフである。 実施例3で測定された骨格筋芽細胞純度と比較例3で測定された骨格筋芽細胞純度とを示すグラフである。
符号の説明
1,2 腱
3 筋頭
4 筋尾
5 筋腹

Claims (10)

  1. 骨格筋をタンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を1回行い得られた酵素処理液を廃棄する第1工程と、
    前記第1工程後の骨格筋を前記タンパク質分解酵素溶液に所定の時間浸漬する酵素処理を1回以上行い得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する第2工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
  2. 前記第1工程で行われる酵素処理では、前記骨格筋を、過剰量の前記タンパク質分解酵素溶液に25〜45分浸漬し、
    前記第2工程で行われる酵素処理では、前記骨格筋を、過剰量の前記タンパク質分解酵素溶液に、20〜80分浸漬する、請求項1に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
  3. 前記第2工程では、前記酵素処理を2回以上行い各酵素処理で得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する、請求項1または2に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
  4. 前記骨格筋は、筋頭および/または筋尾を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
  5. 少なくとも骨格筋の筋頭および/または筋尾をタンパク質分解酵素溶液に浸漬して酵素処理し得られた酵素処理液に含まれる細胞を回収する細胞回収工程を備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
  6. 骨格筋から得られた細胞を、容器に入れた培養液中で30〜60分放置して、接着性の高い細胞を容器に接着させる接着工程と、
    前記接着工程後の培養液を回収する培養液回収工程とを備える、骨格筋芽細胞の分離方法。
  7. 前記接着工程では、ポリスチレンを用いて形成された未コートの容器を用いる、請求項6に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
  8. 前記骨格筋は、筋頭および/または筋尾を含む、請求項6または7に記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
  9. 前記骨格筋から得られた細胞は、請求項1〜5のいずれかに記載の分離方法によって分離された細胞である、請求項6〜8のいずれかに記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
  10. 前記骨格筋から得られた細胞は、請求項1〜5のいずれかに記載の分離方法によって分離された細胞を培養して得られた細胞である、請求項6〜8のいずれかに記載の骨格筋芽細胞の分離方法。
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