JP6599089B2 - 補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体 - Google Patents

補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体 Download PDF

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Description

本発明は、補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体、その製造方法、当該積層体を含む医薬組成物、当該積層体を用いた疾患の処置方法などに関する。
近年、損傷した組織等の修復のために、種々の細胞を移植する試みが行われている。例えば、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患により損傷した心筋組織の修復のために、胎児心筋細胞、骨格筋芽細胞、間葉系幹細胞、心臓幹細胞、ES細胞等の利用が試みられている(非特許文献1)。
このような試みの一環として、スキャフォールドを利用して形成した細胞構造物や、細胞をシート状に形成したシート状細胞培養物が開発されてきた(特許文献1)。
シート状細胞培養物の治療への応用については、火傷などによる皮膚損傷に対する培養表皮シートの利用、角膜損傷に対する角膜上皮シート状細胞培養物の利用、食道ガン内視鏡的切除に対する口腔粘膜シート状細胞培養物の利用など、再生医療を中心に検討が進められている。
このように、シート状細胞培養物は再生医療などにおいて高い有用性を有するが、そのままでは一般に脆弱であり、培養基材からの単離時やその後の操作中に皺や破れなどを生じやすく、移送、保存、移植などの操作が極めて困難である。かかる問題を改善するために、シート状細胞培養物にフィブリノゲン液とトロンビン液とを同時に噴霧し、シート状細胞培養物上にフィブリンを含む支持体層を形成して、シート状細胞培養物とフィブリンとの積層体を製造する方法が試みられている(特許文献2)。
特表2007−528755号公報 特開2011−172925号公報
Haraguchi et al., Stem Cells Transl Med. 2012 Feb;1(2):136-41
その後の研究で、特許文献2に記載のシート状細胞培養物とフィブリンとの積層体に関し、培養基材から積層体を単離する際に、積層体に破れが生じるケースや、単離が不可能であるケース、支持体層がシート状細胞培養物から剥がれ、完全な積層体が得られないケースなどが見られることが分かった。また、かかる問題点を改善するために支持体層を厚くすると、細胞機能の阻害が生じ得ることも分かった。さらに、移植の際には、移植部への接着性を高めるために、シート状細胞培養物を移植部に縫合糸で固定する場合があるが、特許文献2に記載の積層体では、シート状細胞培養物が縫合糸の張力に耐え切れずに破れ、縫合糸がシート状細胞培養物から外れることもあった。したがって、本発明は、これらの問題点を有しない、操作性に優れ、移植に適した、補強部を有するシート状細胞培養物の積層体、その製造方法、当該積層体を含む医薬組成物、および、当該積層体を用いた疾患の処置方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進める中、培養基材から剥離したシート状細胞培養物上にフィブリンゲルの層を形成する際に、まずシート状細胞培養物上にフィブリノゲンを含む液体を滴下してから、トロンビンを含む液体を噴霧することにより、フィブリノゲンとトロンビンとの反応により形成されたフィブリンゲルの層がシート状細胞培養物に強固に接着し、こうして得られたフィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体を容器から単離する際に、フィブリンゲルの層がシート状細胞培養物から剥がれることがなくなることを見出した。そしてさらに研究を進めた結果、上記積層体の辺縁部に、トロンビンを含む液体とフィブリノゲンを含む液体とを滴下して、フィブリンゲルを部分的に肥厚させることで、鑷子などによる把持や縫合糸などの取り付けに有用な補強部を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)フィブリンゲルで形成された少なくとも1つの補強部を有する、シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体。
(2)補強部が、約0.04N以上の強度を有する、上記(1)に記載の積層体。
(3)補強部が、非補強部の約1.5倍以上の強度を有する、上記(1)または(2)に記載の積層体。
(4)補強部が、縫合糸の刺入部として機能する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の積層体を含む医薬組成物。
(6)組織の異常に関連する疾患を処置するための、上記(5)に記載の医薬組成物。
(7)シート状細胞培養物の上面にフィブリノゲンを含む液体を滴下するステップと、前記面にトロンビンを含む液体を噴霧するステップと、前記面にフィブリノゲンとトロンビンとの反応によりフィブリンゲルの層を形成するステップと、トロンビンを含む液体とフィブリノゲンを含む液体とを、両方の液体が前記フィブリンゲルの層上で混合されるよう、前記フィブリンゲルの層上に滴下するステップと、フィブリノゲンとトロンビンとの反応により、フィブリンゲル層上にフィブリンゲルの補強部を形成するステップとを含む、フィブリンゲルで形成された補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法。
(8)対象において組織の異常に関連する疾患を処置する方法であって、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体または上記(5)もしくは(6)に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
本発明の方法で製造された積層体は、強度が高く、操作性に優れ、患部への適用が容易であり、施術者の熟練度による操作上の差も小さいため、疾患の確実な処置が可能となるばかりでなく、当該積層体を用いた再生医療等の普及拡大が期待できる。また、本発明の積層体は、生体適合性の成分で形成しているため、これをそのまま移植部位に移植し、フィブリンゲルを生体内で分解させることも可能であり、再手術や、シート状細胞培養物の移植のための専用の治具の使用が不要となるなど、シート状細胞培養物の利便性が格段に高まる。
図1は、培養皿中のシート状細胞培養物を示した写真図である。 図2は、シート状細胞培養物上へのフィブリノゲン液の滴下操作を示した写真図である。 図3は、シート状細胞培養物上へのトロンビン液の噴霧操作を示した写真図である。 図4は、シート状細胞培養物上以外で凝固したフィブリンゲルのトリミング操作を示した写真図である。 図5は、フィブリノゲン液とトロンビン液とを同時噴霧した後のシート状細胞培養物を示した写真図である。 図6は、フィブリノゲン液とトロンビン液とを同時噴霧して得たシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の単離に失敗した状況を示した写真図である。
図7は、本発明の積層体を腸べらに載せた状態を示した写真図である。 図8は、本発明の補強部を有する積層体を示した写真図である。黒矢印は補強部を示す。また、補強部の中央を縫合糸が貫通しているのが分かる。 図9は、腸べらに載せた本発明の積層体に縫合糸を掛ける操作を示した写真図である。 図10は、本発明の積層体を、腸べらから移植部に移す操作を示した写真図である。 図11は、本発明の積層体を、腸べらから移植部に移す操作を示した写真図である。 図12は、移植部に移した本発明の積層体から縫合糸が外れた状態を示した写真図である。
図13は、本発明の積層体を移植部に縫合し直している状況を示した写真図である。 図14は、本発明の積層体を腸べらに移す操作を示した写真図である。 図15は、本発明の積層体の辺縁部に縫合糸を掛ける操作を示した写真図である。 図16は、本発明の積層体の辺縁部に縫合糸を掛ける操作を示した写真図である。 図17は、本発明の積層体の辺縁部に縫合糸を掛ける操作を示した写真図である。 図18は、本発明の積層体をボトルの側面に移し終えた状態を示した写真図である。
本明細書において別様に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願および他の出版物(インターネットから入手可能な情報を含む)は、その全体を参照により本明細書に援用する。
本発明の一側面は、シート状細胞培養物の上面にフィブリノゲンを含む液体を滴下するステップと、前記面にトロンビンを含む液体を噴霧するステップと、前記面にフィブリノゲンとトロンビンとの反応によりフィブリンゲルの層を形成するステップとを含む、フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体を製造する方法に関する。
本発明において、「シート状細胞培養物」は、細胞が互いに連結してシート状になったものをいう。細胞同士は、直接(接着分子などの細胞要素を介するものを含む)および/または介在物質を介して、互いに連結していてもよい。介在物質としては、細胞同士を少なくとも物理的(機械的)に連結し得る物質であれば特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスなどが挙げられる。介在物質は、好ましくは細胞由来のもの、特に、細胞培養物を構成する細胞に由来するものである。細胞は少なくとも物理的(機械的)に連結されるが、さらに機能的、例えば、化学的、電気的に連結されてもよい。シート状細胞培養物は、1の細胞層から構成されるもの(単層)であっても、2以上の細胞層から構成されるもの(積層(多層)、例えば、2層、3層、4層、5層、6層など)であってもよい。
シート状細胞培養物は、好ましくはスキャフォールド(支持体)を含まない。スキャフォールドは、その表面上および/またはその内部に細胞を付着させ、シート状細胞培養物の物理的一体性を維持するために当該技術分野において用いられることがあり、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)製の膜等が知られているが、本発明におけるシート状細胞培養物は、かかるスキャフォールドがなくともその物理的一体性を維持することができるものであってもよい。また、シート状細胞培養物は、好ましくは、細胞培養物を構成する細胞由来の物質のみからなり、それら以外の物質を含まない。
シート状細胞培養物を構成する細胞は、シート状細胞培養物を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、接着細胞(付着性細胞)を含む。接着細胞は、例えば、接着性の体細胞(例えば、心筋細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞、滑膜細胞、軟骨細胞など)および幹細胞(例えば、筋芽細胞、心臓幹細胞などの組織幹細胞、胚性幹細胞、iPS(induced pluripotent stem)細胞などの多能性幹細胞、間葉系幹細胞等)などを含む。体細胞は、幹細胞、特にiPS細胞から分化させたものであってもよい。シート状細胞培養物を構成する細胞の非限定例としては、例えば、筋芽細胞(例えば、骨格筋芽細胞など)、間葉系幹細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、末梢血、皮膚、毛根、筋組織、子宮内膜、胎盤、臍帯血由来のものなど)、心筋細胞、線維芽細胞、心臓幹細胞、胚性幹細胞、iPS細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞(例えば、口腔粘膜上皮細胞、網膜色素上皮細胞、鼻粘膜上皮細胞など)、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞など)、肝細胞(例えば、肝実質細胞など)、膵細胞(例えば、膵島細胞など)、腎細胞、副腎細胞、歯根膜細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞等が挙げられる。
シート状細胞培養物を構成する細胞は、シート状細胞培養物による治療が可能な任意の生物に由来し得る。かかる生物には、限定されずに、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、げっ歯目動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)、ウサギなどが含まれる。また、シート状細胞培養物を構成する細胞は1種類のみであってもよいが、2種類以上の細胞を用いることもできる。本発明の好ましい態様において、シート状細胞培養物を形成する細胞が2種類以上ある場合、最も多い細胞の比率(純度)は、シート状細胞培養物製造終了時において、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。
シート状細胞培養物を形成する細胞は異種由来細胞であっても同種由来細胞であってもよい。ここで「異種由来細胞」は、シート状細胞培養物が移植に用いられる場合、そのレシピエントとは異なる種の生物に由来する細胞を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、サルやブタに由来する細胞などが異種由来細胞に該当する。また、「同種由来細胞」は、レシピエントと同一の種の生物に由来する細胞を意味する。例えば、レシピエントがヒトである場合、ヒト細胞が同種由来細胞に該当する。同種由来細胞は、自己由来細胞(自己細胞または自家細胞ともいう)、すなわち、レシピエントに由来する細胞と、同種非自己由来細胞(他家細胞ともいう)を含む。自己由来細胞は、移植しても拒絶反応が生じないため、本発明においては好ましい。しかしながら、異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用することも可能である。異種由来細胞や同種非自己由来細胞を利用する場合は、拒絶反応を抑制するため、免疫抑制処置が必要となることがある。なお、本明細書中で、自己由来細胞以外の細胞、すなわち、異種由来細胞と同種非自己由来細胞を非自己由来細胞と総称することもある。本発明の一態様において、細胞は自家細胞または他家細胞である。本発明の一態様において、細胞は自家細胞である。本発明の別の態様において、細胞は他家細胞である。
シート状細胞培養物は、既知の任意の方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特開2010-081829、特開2011-110368など参照)で製造することができる。シート状細胞培養物の製造方法は、典型的には、細胞を培養基材上に播種するステップ、播種した細胞をシート化するステップ、形成されたシート状細胞培養物を培養基材から単離するステップを含むが、これに限定されない。細胞を培養基材上に播種するステップの前に、細胞を凍結するステップおよび細胞を解凍するステップを行ってもよい。さらに、細胞を解凍するステップの後に細胞を洗浄するステップを行ってもよい。これら各ステップは、シート状細胞培養物の製造の製造に適した既知の任意の手法で行うことができる。本発明の製造方法は、シート状細胞培養物を製造するステップをさらに含んでもよく、その場合、シート状細胞培養物を製造するステップは、上記のサブステップの1または2以上を含んでもよい。
フィブリノゲンを含む液体(以下、フィブリノゲン液と称することもある)としては、トロンビンと反応してフィブリンゲルを形成し得るものであれば特に限定されず、フィブリノゲンを、例えば、1mg/mL〜500mg/mL、5mg/mL〜400mg/mL、10mg/mL〜250mg/mL、20mg/mL〜150mg/mL、40mg/mL〜100mg/mL、50mg/mL〜90mg/mLなどの濃度で含む液体が挙げられる。フィブリノゲン液の溶媒は、典型的には水である。フィブリノゲン液は、フィブリノゲン以外に、第XIII因子、アプロチニン、血清アルブミン、グリシン、L−アルギニン塩酸塩、L−イソロイシン、L−グルタミン酸ナトリウム、D−マンニトール、クエン酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウムなどの成分を含んでいてもよい。フィブリノゲン液は市販されているか、既知の手法に基づいて製造することができる。市販のフィブリノゲン液としては、限定されずに、例えば、ボルヒール(R)組織接着用(帝人ファーマ社製)のバイアル1の内容物(フィブリノゲン凍結乾燥粉末)をバイアル2の内容物(フィブリノゲン溶解液)で溶解したもの、ベリプラスト(R)コンビセット組織接着用(CSLベーリング社製)のバイアル1の内容物(フィブリノゲン末)をバイアル2の内容物(アプロチニン液)で溶解したものなどが挙げられる。
フィブリノゲン液の滴下は、既知の任意の手法、例えば、シリンジやピペットなどを用いて行うことができる。シリンジとしては、例えば、容量0.5mL〜5mLの針なしシリンジや、針付シリンジ(例えば、18G〜27Gの針付シリンジ)、ボルヒール(R)組織接着用に付属する調製器セットの2液混合セット(内径約1mmのアプライノズル付、ニプロ社製)、ベリプラスト調製器セットの2液混合セット(アプライノズル付、ニプロ社製)などを用いることができる。フィブリノゲン液の滴下量は、シート状細胞培養物の上面を被覆できれば特に限定されず、例えば、約6μL/cm〜約70μL/cm、約9μL/cm〜約50μL/cm、約12μL/cm〜約45μL/cm、約15μL/cm〜約40μL/cm、約18μL/cm〜約32μL/cm等であってよい。フィブリノゲン液の滴下量の非限定例としては、直径45mmのシート状細胞培養物に対して、約100μL〜約1000μL、約150μL〜約800μL、約200μL〜約700μL、約250μL〜約600μL、約300μL〜約500μL等が挙げられる。フィブリノゲン液を滴下する際の液滴の粒径は特に限定されないが、例えば、滴下後、シート状細胞培養物に付着した液滴の直径が約0.2cm〜約2.0cmとなる範囲であってよい。また、前記液滴の重量は、限定されずに、例えば、約10mg〜約100mg、約15mg〜約50mg、約20mg〜約30mgなどの範囲であってよい。液滴の粒径や重量は、シリンジへの針の装着の有無や、装着する針のゲージ数や針先の形状の選択などにより適宜調整することができる。
トロンビンを含む液体(以下、トロンビン液と称することもある)としては、フィブリノゲンと反応してフィブリンゲルを形成し得るものであれば特に限定されず、トロンビンを、例えば、1単位/mL〜10000単位/mL、10単位/mL〜5000単位/mL、25単位/mL〜2500単位/mL、50単位/mL〜1000単位/mL、100単位/mL〜500単位/mL、250単位/mL〜300単位/mLなどの濃度で含む液体が挙げられる。トロンビン液の溶媒は、典型的には水である。トロンビン液は、トロンビン以外に、クエン酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウムなどの成分を含んでいてもよい。トロンビン液は市販されているか、既知の手法に基づいて製造することができる。市販のトロンビン液としては、限定されずに、例えば、ボルヒール(R)組織接着用(帝人ファーマ社製)のバイアル3の内容物(トロンビン凍結乾燥粉末)をバイアル4の内容物(トロンビン溶解液)で溶解したもの、ベリプラスト(R)コンビセット組織接着用(CSLベーリング社製)のバイアル3の内容物(トロンビン末)をバイアル4の内容物(塩化カルシウム液)で溶解したものなどが挙げられる。
トロンビン液の噴霧は既知の任意の手法、例えば、スプレーなどを用いて行うことができる。スプレーの非限定例としては、ボルヒール(R)スプレーセット(秋田住友ベーク社製)、ベリプラスト(R)コンビセット組織接着用(CSLベーリング社製)に付属の2液混合セットにおいてスプレーチップを装着したものなどが挙げられる。トロンビン液の噴霧量は、シート状細胞培養物の上面を被覆できれば特に限定されず、シート状細胞培養物への推定付着量として、例えば、約3μL/cm〜約70μL/cm、約5μL/cm〜約50μL/cm、約6μL/cm〜約45μL/cm、約12μL/cm〜約40μL/cm、約18μL/cm〜約32μL/cm等であってよい。トロンビン液の噴霧量の非限定例としては、直径45mmのシート状細胞培養物への推定付着量として、約50μL〜約1000μL、約80μL〜約800μL、約100μL〜約700μL、約200μL〜約600μL、約300μL〜約500μL等が挙げられる。なお、シート状細胞培養物への推定付着量は、所定量のトロンビン液を、実際に噴霧するスプレー、高さ、噴霧圧、噴霧角度で噴霧した時に、所定の範囲内(例えば、直径45mmの円内)に付着した液の重量を測定し、これをトロンビン液の密度(0.999973g/cm)で除して算出する。当業者であれば、本明細書の記載に基づき、トロンビン液の所望の推定付着量をもたらす噴霧条件を、過度の実験を要することなく決定することができる。例えば、下記例1には、噴霧量300μL、500μL、600μLおよび900μLに対する推定付着量が、それぞれ100μL、180μL、300μLおよび450μLであることが記載されていることから、最小二乗法により、推定付着量(μL)=噴霧量(μL)×0.6−88(μL)の近似曲線が得られ、これを基に、所望の推定付着量をもたらす噴霧量を求めることができる。トロンビン液の噴霧は、トロンビン液がシート状細胞培養物の上面、好ましくは上面の全域に万遍なく付着できれば特に限定されず、例えば、約2cm〜約15cmの高さから、約15°〜約150°の噴霧角度にて、約0.005MPa〜約0.1MPaの圧力で行うことができる。
シート状細胞培養物に適用されるフィブリノゲン液とトロンビン液との比率は、得られる積層体の移植操作を過度に阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、フィブリノゲン液の滴下量とトロンビン液の推定付着量との体積比として、約5:1〜約1:3、約4:1〜約1:2、約3:1〜約1:1.5、約2.5:1〜約1:1、約2:1〜約1:1、約1.5:1〜約1:1等、特に約1:1であってもよく、また、積層体に付着するフィブリノゲンとトロンビンとの比(mg:単位)として、約8:5〜約8:75、約32:25〜約4:25、約24:25〜約16:75、約4:5〜約8:25、約16:25〜約8:25、約12:25〜約8:25等、特に約8:25であってもよい。
フィブリノゲン液とトロンビン液の濃度や量を調節することにより、得られる積層体の厚みや、性状(柔軟性、粘着性など)を変化させることができる。例えば、フィブリノゲン液の量を増大させることにより、積層体の厚みを増大させることができ、フィブリノゲン液(80mg/mL)の滴下量とトロンビン液(250単位/mL)の推定付着量との体積比を1:1に近づけるほど、また、積層体に付着するフィブリノゲンとトロンビンとの比(mg:単位)を8:25に近づけるほど、積層体の柔軟性および粘着性が高まり、操作性が改善する。
フィブリンゲルの層を形成するステップは、限定されずに、例えば、トロンビン液を噴霧後、シート状細胞培養物を一定期間静置することにより行うことができる。静置期間は、限定されずに、例えば、約1分〜約60分、約2分〜約30分、約3分〜約20分、約4分〜約10分等、より具体的には、例えば、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分等、特に約5分であってよい。
フィブリンゲルの層を形成するステップの後、積層体を洗浄するステップを行ってもよい。洗浄は、所定量の洗浄液、例えば、限定することなく、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12など)等を積層体を収容する容器に加え、廃棄することにより行うことができる。洗浄ステップは1回または2回以上行うことができる。また、容器に加えた洗浄液は、直ちに廃棄しても、所定時間(限定されずに、例えば、約1分〜約60分、約5分〜約30分、約10分〜約20分等、特に約15分)静置した後で廃棄してもよい。
フィブリンゲルの層を形成するステップの後(積層体を洗浄するステップを含む場合は、当該洗浄ステップの後)、必要に応じて、余分なフィブリンゲルをトリミングするステップを行ってもよい。トリミングは、ゲル状物質の切断に使用できる任意の器具で行うことができる。かかる器具としては、限定されずに、例えば、スカルペルや鋏、メスなどが挙げられる。フィブリンゲルは、シート状細胞培養物の輪郭に合わせてトリミングしてもよいし、フィブリンゲルがシート状細胞培養物の周囲にはみ出すように、すなわち、積層体の辺縁がフィブリンゲルのみで構成されるようにトリミングしてもよい。
前記フィブリノゲンを含む液体を滴下するステップ、トロンビンを含む液体を噴霧するステップ、フィブリンゲルの層を形成するステップ、積層体を洗浄するステップ、および/または、余分なフィブリンゲルをトリミングするステップは、培養基材に接着したままのシート状細胞培養物に対して行っても、培養基材から単離したシート状細胞培養物に対して行ってもよい。
一態様において、本発明の製造方法はその全ステップがin vitroで行われる。別の態様において、本発明の製造方法は、in vivoで行われるステップ、限定されずに、例えば、対象から細胞または細胞の給源となる組織を採取するステップを含む。一態様において、本発明の製造方法はその全ステップが無菌条件下で行われる。一態様において、本発明の製造方法は、最終的に得られる積層体が実質的に無菌となるように行われる。一態様において、本発明の製造方法は、最終的に得られる積層体が無菌となるように行われる。
本発明の別の側面は、本発明の製造方法により製造された、シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体に関する。本発明の積層体は、例えば、特許文献2に記載の、フィブリノゲン液とトロンビン液とをシート状細胞培養物に同時に噴霧して製造した積層体に比べ、フィブリンゲル層のシート状細胞培養物への接着力が強く、操作中にフィブリンゲル層がシート状細胞培養物から剥がれることがない。特定の理論に拘束されることは望まないが、本発明の積層体においては、フィブリノゲンが、トロンビンと反応してフィブリンを形成する前に、シート状細胞培養物内(例えば、細胞間隙)に浸透し、フィブリンゲルがシート状細胞培養物と立体的に結合してアンカリングされるとともに、フィブリンゲルとシート状細胞培養物との接触面積が大きくなるため、両者の接着が強固になると考えられる。これに対し、特許文献2に記載の積層体では、フィブリノゲンとトロンビンとが同時にシート状細胞培養物に接触し、即座に反応してフィブリンゲルを形成するため、フィブリンゲルがシート状細胞培養物とこのような立体的な結合を形成しにくいことが考えられる。したがって、本発明の積層体は、特許文献2に記載の積層体と、質的にも構造的にも異なっていると考えられる。
積層体の強度は、限定されずに、例えば、例2に記載の方法で測定した場合、約0.010N以上、約0.015N以上、約0.020N以上、約0.025N以上、約0.030N以上、約0.035N以上、約0.040N以上、約0.045N以上等であってよく、また、約0.010N〜約0.200N、約0.015N〜約0.100N、約0.020N〜約0.50N等の範囲であってよい。また、積層体の強度は、フィブリンゲルを積層していない以外は当該積層体に含まれるのと同じシート状細胞培養物の約1.5倍以上、約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上等であってよく、また、約1.5倍〜約20倍、約2倍〜約15倍、約2.5倍〜約10倍等の範囲であってよい。
また、積層体の辺縁は、フィブリンゲルとシート状細胞培養物の積層で構成されても、フィブリンゲルのみで構成されても、シート状細胞培養物のみで構成されてもよい。
本発明の別の側面は、フィブリンゲルで形成された補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体(以下、補強積層体と称することもある)に関する。
本発明の補強積層体は、シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体のフィブリンゲル層上に、フィブリンゲルを部分的にさらに積層して形成した少なくとも1つの補強部を有する。補強部を形成することにより、積層体全体の厚みを増大させることなく、必要な部分の強度を高めることができる。補強部は、例えば、縫合糸の刺入部や、攝子などによる把持部として利用することができる。補強部は、フィブリンゲル層上に、フィブリノゲン液とトロンビン液とを滴下して形成するが、滴下量や、滴下位置、滴下パターンなどを調節することにより、様々な厚みや形状とすることができる。例えば、フィブリノゲン液(80mg/mL)とトロンビン液(250単位/mL)とをそれぞれ50μLずつ滴下すると、底面積約1cm×高さ約1mm〜2mmの補強部が得られ、それぞれ100μLずつ滴下すると、底面積約1cm×高さ約2mm〜3mmの補強部が得られる。
滴下するフィブリノゲン液とトロンビン液との比率は、所望の強度の補強部が得られるものであれば特に限定されず、例えば、滴下するフィブリノゲン液とトロンビン液との体積比として、約5:1〜約1:3、約4:1〜約1:2、約3:1〜約1:1.5、約2.5:1〜約1:1、約2:1〜約1:1、約1.5:1〜約1:1等、特に約1:1であってもよく、また、補強部に含まれるフィブリノゲンとトロンビンとの比(mg:単位)として、約8:5〜約8:75、約32:25〜約4:25、約24:25〜約16:75、約4:5〜約8:25、約16:25〜約8:25、約12:25〜約8:25等、特に約8:25であってもよい。
補強部の強度は、限定されずに、例えば、例2に記載の方法で測定した場合、約0.04N以上、約0.05N以上、約0.06N以上、約0.07N以上、約0.08N以上、約0.09N以上、約0.10N以上、約0.12N以上、約0.15N以上等であってよく、また、約0.04N〜約0.50N、約0.05N〜約0.40N、約0.06N〜約0.30N、約0.07N〜約0.25N等の範囲であってよい。また、補強部の強度は、非補強部の約1.5倍以上、約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上等であってよく、また、約1.5倍〜約25倍、約2倍〜約20倍、約3倍〜約15倍、約4倍〜約10倍等の範囲であってよい。
本発明の別の側面は、シート状細胞培養物の上面にフィブリノゲンを含む液体を滴下するステップと、前記面にトロンビンを含む液体を噴霧するステップと、前記面にフィブリノゲンとトロンビンとの反応によりフィブリンゲルの層を形成するステップと、トロンビンを含む液体とフィブリノゲンを含む液体とを、両方の液体が前記フィブリンゲルの層上で混合されるよう、前記フィブリンゲルの層上に滴下するステップと、フィブリノゲンとトロンビンとの反応により、フィブリンゲル層上にフィブリンゲルの補強部を形成するステップとを含む、フィブリンゲルで形成された補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法に関する。
シート状細胞培養物の上面にフィブリノゲンを含む液体を滴下するステップ、前記面にトロンビンを含む液体を噴霧するステップ、前記面にフィブリノゲンとトロンビンとの反応によりフィブリンゲルの層を形成するステップ、ならびに、トロンビンを含む液体およびフィブリンを含む液体については、シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法について上記したとおりである。上記の補強積層体の製造方法は、上記のシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法により、シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体を形成するステップと、トロンビンを含む液体とフィブリノゲンを含む液体とを、両方の液体が前記フィブリンゲルの層上で混合されるよう、前記フィブリンゲルの層上に滴下するステップと、フィブリノゲンとトロンビンとの反応により、フィブリンゲル層上にフィブリンゲルの補強部を形成するステップとを含んでもよい。したがって、上記の補強積層体の製造方法は、フィブリンゲルの層を形成するステップの後に積層体を洗浄するステップや、フィブリンゲルの層を形成するステップの後(積層体を洗浄するステップを含む場合は、当該洗浄ステップの後)に、余分なフィブリンゲルをトリミングするステップ、さらには、シート状細胞培養物を製造するステップなど、上記の積層体の製造方法について記載した種々のステップを含んでもよい。
フィブリンゲルの層上へのトロンビン液およびフィブリノゲン液の滴下は、いずれが先であってもよいし、同時であってもよい。例えば、フィブリンゲルの層上にトロンビン液とフィブリノゲン液とを滴下するステップは、限定されずに、(1)フィブリンゲルの層上にトロンビン液を滴下し、次いで、滴下したトロンビン液上にフィブリノゲン液を滴下するステップ、(2)フィブリンゲルの層上にフィブリノゲン液を滴下し、次いで、滴下したフィブリノゲン液上にトロンビン液を滴下するステップ、および、(3)フィブリンゲルの層上にトロンビン液とフィブリノゲン液とを同時に滴下するステップなどを包含する。
フィブリンゲルの層上へのトロンビン液およびフィブリノゲン液の滴下は、既知の任意の手法、例えば、シリンジやピペットなどを用いて行うことができる。シリンジとしては、例えば、容量0.5mL〜5mLの針なしシリンジや、針付シリンジ(例えば、18G〜27Gの針付シリンジ)、ボルヒール(R)組織接着用に付属する調製器セットの2液混合セット(内径約1mmのアプライノズル付、ニプロ社製)、ベリプラスト調製器セットの2液混合セット(アプライノズル付、ニプロ社製)などを用いることができる。トロンビン液またはフィブリノゲン液を滴下する際の液滴の粒径は特に限定されないが、例えば、滴下後、シート状細胞培養物に付着した液滴の直径が約0.2cm〜約2.0cmとなる範囲であってよい。また、トロンビン液またはフィブリノゲン液を滴下する際の液滴の重量は、限定されずに、例えば、約10mg〜約100mg、約15mg〜約50mg、約20mg〜約30mgなどの範囲であってよい。液滴の粒径や重量は、シリンジへの針の装着の有無や、装着する針のゲージ数や針先の形状の選択などにより適宜調整することができる。トロンビン液およびフィブリノゲン液の滴下量、滴下するトロンビン液とフィブリノゲン液との比率については、補強積層体について上記したとおりである。
フィブリンゲル層上にフィブリンゲルの補強部を形成するステップは、限定されずに、例えば、トロンビン液およびフィブリノゲン液を滴下後、積層体を一定期間静置することにより行うことができる。静置期間は、限定されずに、例えば、約1分〜約60分、約2分〜約30分、約3分〜約20分、約4分〜約10分等、より具体的には、例えば、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分等、特に約5分であってよい。
フィブリンゲルの補強部を形成するステップの後、補強積層体を洗浄するステップを行うことができる。洗浄は、所定量の洗浄液、例えば、限定することなく、水、生理食塩水、種々の緩衝液(例えば、PBS、HBSSなど)、種々の液体培地(例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB(MCDB102、104、107、120、131、153、199など)、L15、SkBM、RITC80−7、DMEM/F12など)等を補強積層体を収容する容器に加え、廃棄することにより行うことができる。洗浄ステップは1回または2回以上行うことができる。また、容器に加えた洗浄液は、直ちに廃棄しても、所定時間(限定されずに、例えば、約1分〜約60分、約5分〜約30分、約10分〜約20分等、特に約15分)静置した後で廃棄してもよい。
本発明の積層体(補強積層体を含む。以下同じ)は、組織の異常に関連する種々の疾患の処置に有用である。したがって、一態様において、本発明の積層体は、組織の異常に関連する疾患の処置に用いるためのものである。本発明の積層体は、シート状細胞培養物の片方の面に生体適合性のフィブリンゲルの層が積層されている構造を有しているところ、シート状細胞培養物のもう片方の面はインタクトであり、フィブリンゲルは生体内でやがて分解されてなくなるため、シート状細胞培養物による処置が可能な組織や疾患に適用することが可能である。処置の対象となる組織としては、限定されずに、例えば、心筋、角膜、網膜、食道、皮膚、関節、軟骨、肝臓、膵臓、歯肉、腎臓、甲状腺、骨格筋、中耳などが挙げられる。また、処置の対象となる疾患としては、限定されずに、例えば、心疾患(例えば、心筋傷害(心筋梗塞、心外傷等)、心筋症(虚血性心筋症、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症等)など)、角膜疾患(例えば、角膜上皮幹細胞疲弊症、角膜損傷(熱・化学腐食)、角膜潰瘍、角膜混濁、角膜穿孔、角膜瘢痕、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡など)、網膜疾患(例えば、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症など)、食道疾患(例えば、食道手術(食道ガン除去)後の食道の炎症・狭窄の予防など)、皮膚疾患(例えば、皮膚損傷(外傷、熱傷)など)、関節疾患(例えば、変形性関節炎など)、軟骨疾患(例えば、軟骨の損傷など)、肝疾患(例えば、慢性肝疾患など)、膵臓疾患(例えば、糖尿病など)、歯科疾患(例えば、歯周病など)、腎臓疾患(例えば、腎不全、腎性貧血、腎性骨異栄養症など)、甲状腺疾患(例えば、甲状腺機能低下症など)、筋疾患(例えば、筋損傷、筋炎など)、中耳疾患(例えば、中耳炎など)が挙げられる。
シート状細胞培養物が上記疾患に有用であることは、例えば、特許文献1、非特許文献1、Arauchi et al., Tissue Eng Part A. 2009 Dec;15(12):3943-9、Ito et al., Tissue Eng. 2005 Mar-Apr;11(3-4):489-96、Yaji et al., Biomaterials. 2009 Feb;30(5):797-803、Yaguchi et al., Acta Otolaryngol. 2007 Oct;127(10):1038-44、Watanabe et al., Transplantation. 2011 Apr 15;91(7):700-6、Shimizu et al., Biomaterials. 2009 Oct;30(30):5943-9、Ebihara et al., Biomaterials. 2012 May;33(15):3846-51、Takagi et al., World J Gastroenterol. 2012 Oct 7;18(37):5145-50などに記載されている。
本発明の積層体は、処置の対象となる組織に適用し、これを修復、再生するために使用することもできるが、ホルモンなどの生理活性物質の給源として、処置の対象となる組織以外の部位(例えば、皮下組織など)に移植することもできる(例えば、Arauchi et al., Tissue Eng Part A. 2009 Dec;15(12):3943-9、Shimizu et al., Biomaterials. 2009 Oct;30(30):5943-9など)。本発明の積層体は再生医療に使用することができるため、再生医療等製品として利用することもできる。また、本発明の積層体は移植片として利用することもできる。
一態様において、本発明の積層体は実質的に無菌である。一態様において、本発明の積層体は無菌である。一態様において、本発明の積層体に含まれるシート状細胞培養物は、遺伝子操作されていない。別の態様において、本発明の積層体に含まれるシート状細胞培養物は、遺伝子操作されたものである。遺伝子操作は、限定されずに、例えば、シート状細胞培養物の生存性、生着能、機能などを高める遺伝子、および/または、疾患の治療に有用な遺伝子の導入を含む。導入される遺伝子としては、限定されずに、例えば、HGF遺伝子、VEGF遺伝子などのサイトカイン遺伝子が挙げられる。
本発明の別の側面は、本発明の積層体を含む医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物は、本発明の積層体に加えて、種々の追加成分、例えば、薬学的に許容し得る担体や、シート状細胞培養物の生存性、生着性および/または機能などを高める成分、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などを含んでいてもよい。かかる追加成分としては、既知の任意のものを使用することができ、当業者はこれらの追加成分について精通している。また、本発明の医薬組成物は、シート状細胞培養物の生存性、生着性および/または機能などを高める成分や、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などと併用することができる。一態様において、本発明の医薬組成物は、組織の異常に関連する疾患の処置に用いるためのものである。処置の対象となる組織や疾患は、本発明の積層体について上記したとおりである。
本発明の別の側面は、対象において組織の異常に関連する疾患を処置する方法であって、本発明の積層体または医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。本発明の処置方法の対象となる組織や疾患は、本発明の積層体について上記したとおりである。また、本発明の処置方法においては、シート状細胞培養物の生存性、生着性および/または機能などを高める成分や、対象疾患の処置に有用な他の有効成分などを、本発明の積層体または医薬組成物と併用することができる。
本発明の処置方法は、本発明の製造方法に従って、積層体を製造するステップをさらに含んでもよい。本発明の処置方法は、積層体を製造するステップの前に、シート状細胞培養物を製造するステップや、対象からシート状細胞培養物を製造するための細胞または細胞の給源となる組織を採取するステップをさらに含んでもよい。一態様において、細胞または細胞の給源となる組織を採取する対象は、積層体または医薬組成物の投与を処置を受ける対象と同一の個体である。別の態様において、細胞または細胞の給源となる組織を採取する対象は、積層体または医薬組成物の投与を処置を受ける対象とは同種の別個体である。別の態様において、細胞または細胞の給源となる組織を採取する対象は、積層体または医薬組成物の投与を処置を受ける対象とは異種の個体である。
本発明において、用語「対象」は、任意の生物個体、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体を意味する。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、組織の異常に関連する疾患の処置が企図される場合には、典型的には当該疾患に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。
また、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、組織の異常に関連する疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、当該疾患発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
本発明において、有効量とは、例えば、疾患の発症や再発を抑制し、症状を軽減し、または進行を遅延もしくは停止し得る量(例えば、積層体のサイズや重量)であり、好ましくは、当該疾患の発症および再発を予防し、または当該疾患を治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、例えば、マウス、ラット、イヌまたはブタなどの実験動物や疾患モデル動物における試験などにより適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、処置の対象となる組織病変の大きさは、有効量決定のための重要な指標となり得る。
投与方法としては、典型的には組織への直接的な適用が挙げられる。投与頻度は、典型的には1回の処置につき1回であるが、所望の効果が得られない場合には、複数回投与することも可能である。組織に適用する際、本発明の積層体や医薬組成物を対象の組織に縫合糸やステープルなどの係止手段により固定してもよい。補強積層体を用いる場合、係止手段は補強部に適用することができる。
本発明を以下の例を参照してより詳細に説明するが、これらは本発明の特定の具体例を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1 フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体の製造
細胞凍結用保存液(10%DMSO含有MCDB培地)中で凍結保存した骨格筋芽細胞(CD56陽性)を37℃で解凍し、0.5%血清アルブミンを含む生理緩衝液を用いて2回洗浄した。洗浄した細胞6.0×10個を、ヒト血清20%含有DMEM培地(10mL)に懸濁させ、直径10cmの細胞培養皿(UpCell(R)10cmディッシュ、CS3005、セルシード社製)に播種した。播種後、細胞を37℃、5%COに設定されたインキュベーター(BNA-121D、エスペック社製)内で20時間培養した。培養後、培養皿をインキュベーターから取り出し、シート状細胞培養物が、培養皿底面全体を覆うように接着していることを確認し、培地を廃棄した。その後、温度処理(室温(20〜25℃)に5〜30分間静置)およびピペッティングにより、シート状細胞培養物を培養皿から剥離した。得られたシート状細胞培養物は47mm×47mmの大きさであった。
培養皿中の培養液を除去し、必要に応じてシート状細胞培養物を整形した後(図1)、シート状細胞培養物上にフィブリノゲン液(ボルヒール(R)組織接着用(帝人ファーマ社製)のバイアル1の内容物(フィブリノゲン凍結乾燥粉末)をバイアル2の内容物(フィブリノゲン溶解液)で溶解したもの、フィブリノゲン濃度80mg/mL、以下同じ)を500μL、ボルヒール(R)組織接着用に付属する調製器セットの2液混合セット(長さ約6cm、内径約1mmのアプライノズル付、ニプロ社製)を用いて滴下した(図2)。次いで、トロンビン液(ボルヒール(R)組織接着用(帝人ファーマ社製)のバイアル3の内容物(トロンビン凍結乾燥粉末)をバイアル4の内容物(トロンビン溶解液)で溶解したもの、トロンビン濃度250単位/mL、以下同じ)を800μL、ボルヒール(R)スプレーセット(秋田住友ベーク社製)を用い、噴霧ノズルを細胞シートから約7cm離して0.03MPaの圧力で噴霧した(図3)。シート状細胞培養物は、培養皿から剥離することにより収縮し、培養皿の底面より小さくなるため(図1)、噴霧した800μLのトロンビン液のうち、約500μLがシート状細胞培養物上に付着したと推定される。なお、トロンビン液の推定付着量は、所定量のトロンビン液(この場合は800μL)を、所定のスプレー(本例の場合はボルヒール(R)スプレーセット)、噴霧圧(本例の場合は0.03MPa)、高さ(本例の場合は約7cm)、噴霧角度(本例の場合は45°)で実際に噴霧し、所定の範囲内(本例の場合は、直径約45mmの円内)に付着したトロンビン液の重量を電子天秤で測定し、トロンビン液の密度で除すことにより算出した。
フィブリノゲン液とトロンビン液との反応により、フィブリンゲルが形成される。約5分間静置後、培養皿に24mLのハンクス平衡塩溶液(HBSS(+)、Cat No.14025、Life Technologies社製、以下同じ)を加え、直ちに除去することにより、シート状細胞培養物を含む培養皿を洗浄した。これにより、未反応のフィブリノゲン液やトロンビン液を除去することができる。次いで、培養皿に24mLのハンクス平衡塩溶液を再度加えて約15分間静置後、培養皿中の溶液を除去し、シート状細胞培養物上以外で凝固したフィブリンゲルをスカルペルでトリミングし(図4)、フィブリンゲルとシート状培養物の積層体を単離した(積層体1)。単離した積層体は、培養皿に24mLのハンクス平衡塩溶液を加えた状態で、使用時まで保管した。
フィブリノゲン液の滴下量を300μL、トロンビン液の噴霧量を約600μL(推定付着量約300μL)とした以外は同じ手順で積層体2を、フィブリノゲン液の滴下量を300μL、トロンビン液の噴霧量を約900μL(推定付着量約450μL)とした以外は同じ手順で積層体3を、フィブリノゲン液の滴下量を300μL、トロンビン液の噴霧量を約300μL(推定付着量約100μL)とした以外は同じ手順で積層体4を、フィブリノゲン液の滴下量を500μL、トロンビン液の噴霧量を500μL(推定付着量約180μL)とした以外は同じ手順で積層体5を、それぞれ製造した。
また、比較のため、フィブリノゲン液とトロンビン液とを同時に噴霧する手法で、フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体の製造を試みた。
積層体1と同様にシート状細胞培養物を形成させ、培養皿から剥離した。培養皿中の培養液を除去し、必要に応じてシート状細胞培養物を整形した後、シート状細胞培養物上にフィブリノゲン液を800μLおよびトロンビン液を800μL、ボルヒール(R)スプレーセット(秋田住友ベーク社製)を用い、噴霧ノズルを細胞シートから約7cm離して0.03MPaの圧力で同時に噴霧した(シート状細胞培養物への推定付着量は、それぞれ約500μL)。約5分間静置後、培養皿に24mLのハンクス平衡塩溶液を加え、直ちに除去することにより、シート状細胞培養物を含む培養皿を洗浄した。次いで、培養皿に24mLのハンクス平衡塩溶液を再度加えて約15分間静置後、培養皿中の溶液を除去した(図5)。シート状細胞培養物上以外で凝固したフィブリンゲルをスカルペルでトリミングし、フィブリンゲルとシート状細胞培養物の積層体の単離を試みたが、フィブリンゲルがシート状細胞培養物から剥がれてしまい、積層体を得ることはできなかった(図6)。
例2 フィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体の評価
例1で得た積層体1〜5の大きさ、重量、強度、厚み、操作性および性状を評価した。大きさは定規により、重量は電子式非自動はかり(AT201、Mettler-Toledo社製)により、厚みはダイヤルシックネスゲージ(SM-124、テクロック社製)によりそれぞれ測定した。強度は、以下のようにして測定した。まず、積層体を、液中で伸展させた状態で、ステンレス製の腸べら(幅45mm、以下同じ)ですくい上げ、積層体が腸べらの表面に付着した状態で液外に配置した。針付き縫合糸(6−0プロリン)を、積層体と腸べらの間に差し込み、積層体の下面から上面に貫通させた。糸の両端を結び合わせて環状にし、これをゲージ(汎用形デジタルフォースゲージ、FGC-1B、日本電産シンポ社製)につないだ。積層体に係止した糸を、ゲージを介して水平方向に引っ張り、積層体破断時までの最大荷重(引張破断荷重)を測定した。測定は、積層体の異なる3ヶ所について行った(n=3)。操作性は、液中の積層体を腸べらに載せ(図7)、これを、心臓を模したボトルの側面に移す操作における操作の容易性(腸べらへの載せやすさ、移動時の腸べらからの落ちにくさ、腸べらからボトルへの移しやすさなど)や、積層体の状態(操作時に皺が寄ったり、破れたりしないか)などに基づき総合的に評価し、評価の高い順に5〜1の5段階で表した。性状は、操作性の評価の際に観察された積層体の状態を定性的に評価した。また、比較のため、フィブリンゲルを積層していないシート状細胞培養物(積層体1と同じ条件で製造)についても同様の評価を行った。結果を表1に示す。
表1の結果から、いずれの積層体も、フィブリンゲルが積層されていないシート状細胞培養物よりはるかに高い強度を示すこと、フィブリノゲン液の量が多い方が積層体の重量、強度および厚みが増大することが分かる。また、いずれの積層体も模擬移植操作が可能であったが、フィブリノゲン液とシート状細胞培養物に付着したトロンビン液の体積比が1:1に近いほど操作性が向上する傾向が見られた。
積層体1と同様の方法で、細胞数や、シート状細胞培養物の積層数などが異なる積層体6〜9を作製し、上記と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、シート状細胞培養物の形成は、直径3.5cmの細胞培養皿(UpCell(R)3.5cmディッシュ、セルシード社製)で行った。積層体の乾燥重量は、凍結乾燥した積層体を電子天秤で測定して得た。含水率は次の式で求めた:含水率=(積層体の湿重量−積層体の乾燥重量)÷積層体の湿重量×100(%)。また、シート状細胞培養物の積層は次のように行った。まず、支持体(CellShifterTM、セルシード社製)を気泡が入らないようにしてシート状細胞培養物上に重ね、シート状細胞培養物が付着した支持体を端からめくってシート状細胞培養物を支持体ごと回収し、これを、別のシート状細胞培養物上に、培地を除去した後で重ねた。37℃で約30分静置後、それぞれのシート状細胞培養物同士が互いに接着していることを確認してから、積層されたシート状細胞培養物から支持体を取り除いた。必要に応じて、同様の操作を繰り返し、さらなる積層を行った。
表2の結果から、フィブリンゲルによる積層体の重量および強度への寄与は、シート状細胞培養物の積層によるものより大きいことが分かる。
例3 補強部を有する積層体の製造
積層体2の端部1ヶ所に、トロンビン液を50μL滴下した後、フィブリノゲン液を50μL滴下し、約5分静置後、培養皿に24mLのハンクス平衡塩溶液を加え、未反応のフィブリノゲンおよびトロンビンを除去した。こうして、積層体2に補強部を形成した。なお、トロンビン液およびフィブリノゲン液は、非補強部のフィブリンゲル形成に用いたのと同じものを用いた。また、積層体3の端部1ヶ所に、トロンビン液を100μL滴下した後、フィブリノゲン液を100μL滴下し、同様に補強部を形成した(図8)。補強部を付した積層体2および3の、補強部における強度を、例2と同様にして評価した。結果を表3に示す。
上記と同様の方法で、直径3.5cmの細胞培養皿を用いて補強部を有する積層体10を作製し、上記と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
表3〜4に示す結果から、補強部に、非補強部の約4.5〜8.5倍の強度を付与できることが分かる。また、補強部の強度は、補強部形成のために滴下したトロンビン液およびフィブリノゲン液の量と相関することが分かる。
例4 積層体の縫合糸による固定
積層体の移植時の操作性を評価するために、積層体3と同じ条件(フィブリノゲン液300μL滴下+トロンビン液約100μL(推定付着量)噴霧)で製造した積層体を用いて以下の試験を行った(n=2)。液中の積層体を腸べらに載せ、積層体の端部に縫合糸(7−0プロリン)を掛け(図9)、積層体を腸べらから、外科的に露出したブタの心臓に移し(図10〜11)、縫合糸で固定した。積層体を移植後、閉胸し、その後の動物の状態を観察した。ブタ1頭につき5枚の積層体を移植した。各試験において、移植した5枚の積層体のうち1枚で、積層体を心臓表面に縫合糸で固定した後に、積層体が縫合糸の張力に耐え切れず貫通部分から破れ、それにより縫合糸が外れ(図12)、縫合をやり直したが(図13)、最終的にすべての積層体を心臓表面に固定することができた。
また、積層体1と同じ条件(フィブリノゲン液500μL滴下+トロンビン液約500μL(推定付着量)噴霧)で製造した積層体を用いて以下の試験を行った。液中の積層体を腸べらに載せ(図14)、辺縁部に縫合糸(7−0プロリン)を掛け(図15〜17)、心臓を模したボトルの側面に移す(図18)操作を行った。積層体は、適度な柔軟性と粘りを有しており、腸べらに載せやすく、腸べらからボトルへの移動も滑らかであり、ボトルの湾曲面にもよくフィットした。また、縫合糸は、一連の操作中も積層体にしっかりと掛かったままであり、積層体が破損して縫合糸が外れるようなことはなかった。
例5 積層体による治療
積層体を、重症心筋症(虚血性心筋症、拡張型心筋症等)に罹患したヒト患者の治療に用いた。積層体1と同じ条件(フィブリノゲン液500μL滴下+トロンビン液約500μL(推定付着量)噴霧)で積層体を製造し、これを、腸べらに載せ、開胸下に露出した患者の心臓上に移し、縫合糸で固定後、閉胸して患者の状態を観察した。いずれの患者においても、心機能、運動耐用能、QOL、罹患率および予後の改善が見られた。
本明細書に記載された本発明の種々の特徴は様々に組み合わせることができ、そのような組合せにより得られる態様は、本明細書に具体的に記載されていない組合せも含め、すべて本発明の範囲内である。また、当業者は、本発明の精神から逸脱しない多数の様々な改変が可能であることを理解している。したがって、本明細書に記載された態様は例示にすぎず、これらが本発明の範囲を制限する意図をもって記載されたものではないことを理解すべきである。

Claims (9)

  1. シート状細胞培養物の細胞に直接フィブリノゲンを含む液体を滴下するステップと、フィブリノゲンを滴下した細胞に直接トロンビンを含む液体を噴霧するステップと、前記面にフィブリノゲンとトロンビンとの反応によりフィブリンゲルの層を形成するステップと、
    トロンビンを含む液体とフィブリノゲンを含む液体とを、両方の液体が前記フィブリンゲルの層上で混合されるよう、前記フィブリンゲルの層上に滴下するステップと、フィブリノゲンとトロンビンとの反応により、
    フィブリンゲル層上にフィブリンゲルの補強部を形成するステップとを含む、フィブリンゲルで形成された補強部を有するシート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法
  2. 請求項1に記載の方法で製造された、補強部を有するフィブリンゲルとシート状細胞培養物との積層体
  3. 補強部が、0.04N以上の強度を有する、請求項2に記載の積層体
  4. 補強部が、非補強部の1.5倍以上の強度を有する、請求項2または3に記載の積層体
  5. 補強部が、縫合糸の刺入部または攝子による把持部として機能する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の積層体
  6. トリミングの操作において把持部として機能する、請求項5に記載の積層体
  7. 2以上のシート状細胞培養物を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の積層体
  8. 請求項2〜7のいずれか一項に記載の積層体を含む医薬組成物
  9. 組織の異常に関連する疾患を処置するための、請求項8に記載の医薬組成物
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