JP5776405B2 - ポリアリーレンスルフィド系組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、熱伝導性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、および溶融流動性に優れ、かつ熱伝導性の異方性と、熱膨張性及びその異方性の小さいポリアリーレンスルフィド組成物に関するものであり、さらに詳しくは、電気・電子部品或いは自動車電装部品などの電気部品用途に特に有用な高熱伝導性ポリアリーレンスルフィド組成物に関するものである。
ポリアリーレンスルフィドは、耐熱性、耐薬品性、成形性等に優れた特性を示す樹脂であり、その優れた特性を生かし、電気・電子機器部材、自動車機器部材およびOA機器部材等に幅広く使用されている。
しかしながら、ポリアリーレンスルフィドは熱伝導性が低いことから、例えば発熱を伴うような電子部品を封止すると、発生する熱を効率よく拡散することができず、熱膨張による寸法変化、熱による変形、或いはガス発生など、不具合を生じることがあった。
ポリアリーレンスルフィドの熱伝導性を改良する試みについては、これまでにもいくつかの検討がなされ、例えば(a)ポリフェニレンスルフィド、(b)平均粒径が5μm以下のアルミナ粉末、及び(c)繊維状強化材を配合する樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)特定の引張弾性率を有する炭素繊維、及び(c)黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウムから選択される1種以上のフィラーを配合する樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)、また、(a)ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとからなる樹脂、(b)特定の熱伝導率を有する炭素繊維及び(c)黒鉛を配合する樹脂組成物(例えば特許文献3参照。)等が提案されている。
特開平04−033958号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2002−129015号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2004−137401号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
しかし、特許文献1〜3に提案された樹脂組成物においては、熱伝導性が十分ではない上に、熱伝導性の異方性を有しており、更には、組成物の熱膨張が大きく、充分な寸法安定性が得られなかった。またこれらの提案の樹脂組成物において充分に高い熱伝導性を付与するためには、高いフィラー含有量とすることが必須となり、このため得られる樹脂組成物は機械的強度の低下が著しく、溶融流動性の悪化をきたすものであった。即ちこれらの提案樹脂組成物はおしなべて、高い熱伝導性と高い機械的強度、優れた溶融流動性、充分な寸法安定性とを同時に得ることは難しいものであった。
そこで、本発明は、熱伝導性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、および溶融流動性に優れ、かつ熱伝導性の異方性と、熱膨張性及びその異方性の小さいポリアリーレンスルフィド組成物を提供することを目的とし、さらに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に特に有用なポリアリーレンスルフィド組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィドに、少なくともカーボンナノチューブ及び金属ケイ素粉末を含んでなるポリアリーレンスルフィド組成物とすることで、高い熱伝導性を有すると共に、機械的強度に優れる組成物となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、少なくとも、平均単繊維直径1〜100nm、平均単繊維長1〜200μmのカーボンナノチューブ(B)1〜70重量部及び金属ケイ素粉末(C)15〜250重量部を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド組成物に関するものである。
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、少なくともカーボンナノチューブ(B)1〜70重量部及び金属ケイ素粉末(C)15〜250重量部を含んでなるものである。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)としては、ポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよく、その中でも、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が機械的強度、成形加工性に優れたものとなることから測定温度315℃、荷重10kgの条件下、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着する高化式フローテスターで測定した溶融粘度50〜3000ポイズを有するポリアリーレンスルフィドが好ましく、特に60〜1500ポイズを有するポリアリーレンスルフィドが好ましい。
該ポリアリーレンスルフィド(A)としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位等からなるものを挙げることができ、その中でもp−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらにポリ(p−フェニレンスルフィド)が好ましい。
該ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば一般的に知られている重合溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応する方法により製造することが可能であり、アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びそれらの混合物が挙げられ、これらは水和物の形で使用しても差し支えない。これらアルカリ金属硫化物は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基とを反応させることによって得られ、ジハロ芳香族化合物の重合系内への添加に先立ってその場で調製されても、また系外で調製されたものを用いても差し支えない。また、ジハロ芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニル等が挙げられる。また、アルカリ金属硫化物及びジハロ芳香族化合物の仕込み比は、アルカリ金属硫化物/ジハロ芳香族化合物(モル比)=1.00/0.90〜1.10の範囲とすることが好ましい。
重合溶媒としては、極性溶媒が好ましく、特に非プロトン性で高温でのアルカリに対して安定な有機アミドが好ましい溶媒である。該有機アミドとしては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素及びその混合物、等が挙げられる。また、該重合溶媒は、重合によって生成するポリマーに対し150〜3500重量%で用いることが好ましく、特に250〜1500重量%となる範囲で使用することが好ましい。重合は200〜300℃、特に220〜280℃にて0.5〜30時間、特に1〜15時間攪拌下にて行うことが好ましい。
さらに、該ポリアリーレンスルフィド(A)は、直鎖状のものであっても、酸素存在下高温で処理し、架橋したものであっても、トリハロ以上のポリハロ化合物を少量添加して若干の架橋または分岐構造を導入したものであっても、窒素等の非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するカーボンナノチューブ(B)は、炭素六角網面が円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する材料のことである。単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また部分的にカーボンナノチューブの構造を有している炭素材料も使用できる。また、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
該カーボンナノチューブ(B)の製造方法としては、例えば炭素電極間にアーク放電を発生させ、放電用電極の陰極表面に成長させる方法(アーク放電法)、シリコンカーバイドにレーザービームを照射して加熱・昇華させる方法(レーザー蒸発法)、遷移金属系触媒を用いて炭化水素を還元雰囲気下の気相で炭化する方法(気相成長法)等が挙げられるが、これら製法に限定されるものではない。また、製造方法の違いによって得られる該カーボンナノチューブ(B)の平均単繊維直径、平均単繊維長、形態(針状、コイル状、チューブ状等)等が変化するが、いずれのものも使用することができる。
該カーボンナノチューブ(B)の平均単繊維直径としては、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、寸法安定性に特に優れるものとなることから、1〜100nmであることが好ましく、1〜70nmであることが特に好ましい。また、該カーボンナノチューブ(B)の平均単繊維長は、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、寸法安定性に特に優れるものとなることから、1〜200μmであることが好ましく、5〜100μmであることが特に好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するカーボンナノチューブ(B)の配合量は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、1〜70重量部であり、ポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、溶融流動性のバランスに特に優れたものとなることから、5〜60重量部であることが好ましく、5〜50重量部であることが特に好ましい。該カーボンナノチューブ(B)の配合量が1重量部未満である場合、得られる組成物は熱伝導性に劣るものとなる。一方、該カーボンナノチューブ(B)の配合量が70重量部を越える場合、得られる組成物は溶融流動性、成形加工性に劣るものとなる。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成する金属ケイ素粉末(C)としては、従来から知られ販売されている金属ケイ素の粉末でよく、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能である。該金属ケイ素粉末(C)におけるケイ素含有率は、特に制限を受けるものではなく、特に熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、ケイ素含有率が95重量%以上であるものが好ましく、特に98重量%以上であるものが更に好ましい。また、該金属ケイ素粉末(C)は、特に機械的強度、熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)が1μm以上であるものが好ましい。
該金属ケイ素粉末(C)の形状に特に制限なく、例えば樹枝状粉、片状粉、角状粉、球状粉、粒状粉、針状粉、不定形状粉、海綿状粉等のいずれの形状を有していてもよく、また、これら形状の混合物であっても良い。該金属ケイ素粉末(C)の製造方法としては、例えば電解法、機械的粉砕法、アトマイズ法、熱処理法、化学的製法等が挙げられ、これらの製法に制限されるものではない。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成する金属ケイ素粉末(C)の配合量は、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、15〜250重量部であり、ポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、溶融流動性のバランスに特に優れたものとなることから、30〜230重量部であることが好ましく、50〜200重量部であることが特に好ましい。該金属ケイ素粉末(C)の配合量が15重量部未満である場合、得られる組成物は熱伝導性に劣るものとなる。一方、該金属ケイ素粉末(C)の配合量が250重量部を越える場合、得られる組成物は機械的強度、溶融流動性、成形加工性に劣るものとなる。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、熱伝導性、機械的強度がより優れるとともに、熱伝導率や熱膨張率の異方性の小さいものとなることから、さらに、炭素繊維(D1)、黒鉛(D2)、ケイ素とマグネシウムの複酸化物及び/又はアルミニウムとマグネシウムの複酸化物で被覆された被覆酸化マグネシウム粉末(D3)(以下、単に被覆酸化マグネシウム粉末(D3)と記す。)、炭酸マグネシウムを主成分とするマグネサイトであって炭酸マグネシウム含有率が98〜99.999重量%である高純度マグネサイト粉末(D4)(以下、単に高純度マグネサイト粉末(D4)と記す。)並びに六方晶構造を有する鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)(以下、単に鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)と記す。)からなる群より選択される少なくとも1種以上の熱伝導性フィラー(D)を配合してなることが好ましい。
該熱伝導性フィラー(D)として選択される炭素繊維(D1)は、炭素繊維の範疇に属するものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能である。該炭素繊維(D1)としては、得られるポリアリーレンスルフィド組成物が熱伝導性、機械的強度、寸法安定性に特に優れたものとなることから、繊維長20μm〜8mm、繊維径2〜20μmの炭素繊維であることが好ましい。該炭素繊維(D1)としては、例えばピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、ポリビニルアルコール系炭素繊維、セルロース系炭素繊維等の何れを用いても良く、好ましくはピッチ系炭素繊維である。
該炭素繊維(D1)の熱伝導率については何ら制限を受けることなく用いることが可能であり、その中でも特に熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、熱伝導率が100W/mK以上の炭素繊維であることが好ましく、特に500W/mK以上の炭素繊維であることが好ましい。
該熱伝導性フィラー(D)として選択される黒鉛(D2)は、黒鉛の範疇に属するものであれば特に制限を受けるものではない。黒鉛には大別して、天然黒鉛と人造黒鉛があり、天然黒鉛には土状黒鉛、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛等があり、これら何れのものを用いても良い。該黒鉛(D2)の固定炭素含有量について、何ら制限を受けるものではなく、特に熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、固定炭素含有量が95%以上である黒鉛が好ましい。また、該黒鉛(D2)の粒子径は、何ら制限を受けるものではなく、特に熱伝導性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、一次粒子での平均粒子径0.5〜400μmを有する黒鉛が好ましい。
該熱伝導性フィラー(D)として選択される被覆酸化マグネシウム粉末(D3)は、ケイ素とマグネシウムの複酸化物及び/又はアルミニウムとマグネシウムの複酸化物で被覆された被覆酸化マグネシウム粉末であり、該被覆酸化マグネシウム粉末(D3)の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば特開2004−027177号公報に記載の方法より入手することが可能である。また、ケイ素とマグネシウムの複酸化物とは、フォルステライト(MgSiO)等に代表されるケイ素、マグネシウム及び酸素を含む金属酸化物、又は、酸化マグネシウムと酸化ケイ素の複合物である。一方、アルミニウムとマグネシウムの複酸化物とは、スピネル(AlMgO)等に代表されるアルミニウム、マグネシウム及び酸素を含む金属酸化物、又は、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムの複合物である。該被覆酸化マグネシウム粉末(D3)は、必要に応じてシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤でさらに表面処理されたものであってもよく、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等が挙げられ、アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。また、該被覆酸化マグネシウム粉末(D3)は、特に機械的特性、熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)1〜500μmを有するものであることが好ましく、特に3〜100μmを有するものであることが好ましい。
該熱伝導性フィラー(D)として選択される高純度マグネサイト粉末(D4)は、炭酸マグネシウムを主成分とするマグネサイトであって炭酸マグネシウム含有率が98〜99.999重量%である高純度マグネサイト粉末であり、該条件を満たすものであれば如何なる制限を受けることなく用いることが可能である。該高純度マグネサイト粉末(D4)としては、合成品と天産品とがあり、これらの何れを用いても良く、(商品名)合成マグネサイトMSHP(神島化学工業(株)製)等を好ましい例として挙げることができる。また高純度マグネサイト粉末としては、特に熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)1μm以上であるものが好ましく、特に10μm以上であるものが好ましい。該高純度マグネサイト粉末(D4)は、必要に応じてシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤でさらに表面処理されたものであってもよく、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート等が挙げられ、アルミネート系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
該熱伝導性フィラー(D)として選択される鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)は、六方晶構造を有するものであり、該条件を満たすものであれば如何なるものを用いることが可能であり、該鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)としては、例えば粗製窒化ホウ素粉末をアルカリ金属又はアルカリ土類金属のホウ酸塩の存在下、窒素雰囲気中、2000℃×3〜7時間加熱処理して、窒化ホウ素結晶を十分に発達させ、粉砕後、必要に応じて硝酸等の強酸によって精製することにより製造することができ、この様にして得られた窒化ホウ素粉末は、通常、鱗片状を有するものである。そして、該鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)としては、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物中における分散性に優れ、機械的特性の優れたポリアリーレンスルフィド組成物となることから、レーザー回折散乱法により測定した平均粒子径(D50)3〜30μmを有するものであることが好ましい。また、該鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)は、高結晶性を示し、特に熱伝導性に優れたポリアリーレンスルフィド組成物とすることが可能となることから、粉末X線回折法で求められる、(102)回折線の積分強度値(I(102))に対する、(100)回折線及び(101)回折線の積分強度値の和(I(100)+(101))の比で示されるG.I値(G.I=(I(100)+(101))/(I(102)))が0.8〜10の範囲となるものであることが好ましい。
該熱伝導性フィラー(D)の配合量は、特に熱伝導性、機械的強度が優れるとともに、熱伝導率や熱膨張率の異方性の小さいポリアリーレンスルフィド組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対して、10〜200重量部であることが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、溶融流動性がより優れ、成形加工性にも優れるものとなることから、多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)を配合してなることが好ましい。
該多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)は、多価アルコールと縮合ヒドロキシ脂肪酸とを反応して得られるエステルである。該多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)としては、例えばポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、トリペンタエリスリトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ショ糖縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、ソルビトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル、マンニトール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルなどが挙げられ、より具体的には、例えばテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、テトラグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、オクタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、オクタグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、デカグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、デカグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ペンタエリスリトール縮合リシノレイン酸エステル、ペンタエリスリトール縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ジペンタエリスリトール縮合リシノレイン酸エステル、ジペンタエリスリトール縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、トリペンタエリスリトール縮合リシノレイン酸エステル、トリペンタエリスリトール縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物として利用される。なかでも縮合リシノレイン酸又は縮合12−ヒドロキシステアリン酸と重合度が2〜10のポリグリセリンとのエステルが好ましく、例えばテトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、テトラグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、オクタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、オクタグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル、デカグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、デカグリセリン縮合12−ヒドロキシステアリン酸エステル等を挙げることができる。
該多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)の配合量は、特に溶融流動性、成形加工性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましい。
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコン樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の1種以上を混合して使用することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物の製造方法としては、従来使用されている加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に制限されるものではなく、通常280〜400℃の中から任意に選ぶことが出来る。また、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、繊維状及び/又は非繊維状の補強材を使用できる。繊維状の補強材としては、例えばガラス繊維、ボロン繊維等を挙げることができる。また、非繊維状の補強材としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、タルク、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、ワラステナイト、ゼオライト、ガラスビーズ、ガラスパウダー等が挙げられる。これらの補強材は2種以上を併用することができ、必要によりシラン系、チタン系カップリング剤で表面処理をして使用することができる。より好ましい非繊維状補強材としては炭酸カルシウム、タルクを挙げることができる。
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、従来公知の滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、金型腐食防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料等の着色剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上併用しても良い。
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、発熱性の高い半導体素子、抵抗などの封止用樹脂、あるいは高い摩擦熱が発生する部品に特に好適である他、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、ソケット、抵抗器、リレーケースなどの電気機器部品用途に特に適している他、センサー、LEDランプ、コネクター、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、ハードディスクドライブ部品(ハードディスクドライブハブ、アクチュエーター、ハードディスク基板など)、DVD部品(光ピックアップなど)、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などの各種用途にも適用できる。
本発明は、熱伝導性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、および溶融流動性に優れ、かつ熱伝導性の異方性と、熱膨張性及びその異方性の小さいポリアリーレンスルフィド組成物を提供するものであり、該ポリアリーレンスルフィド組成物は、特に電気・電子部品又は自動車電装部品等の電気部品用途に有用なものである。
次に、本発明を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれらの例になんら制限されるものではない。
以下に実施例及び比較例において用いたポリアリーレンスルフィド(A)、カーボンナノチューブ(B)、金属ケイ素粉末(C)、熱伝導性フィラー(D)及び多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)を示す。
<ポリアリーレンスルフィド(A)>
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(A−1)(以下、単にPPS(A−1)と記す。):溶融粘度110ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(A−2)(以下、単にPPS(A−2)と記す。):溶融粘度300ポイズ。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(A−3)(以下、単にPPS(A−3)と記す。):溶融粘度350ポイズ。
<カーボンナノチューブ(B)>
カーボンナノチューブ(B−1);保土谷化学工業(株)製、(商品名)MWNT−7;平均単繊維直径65nm、平均単繊維長40μm、多層カーボンナノチューブ。
<金属ケイ素粉末(C)>
金属ケイ素粉末(C−1);キンセイマテック(株)製、(商品名)金属シリコン#200(98%);ケイ素含有率98.4重量%、平均粒子径17μm、不定形状粉末。
金属ケイ素粉末(C−2);キンセイマテック(株)製、(商品名)金属シリコン#600;ケイ素含有率98.5重量%、平均粒子径6μm、不定形状粉末。
<熱伝導性フィラー(D)>
炭素繊維(D1−1);三菱樹脂(株)製、(商品名)ダイアリードK6371T;熱伝導率140W/mK、繊維長6mm、繊維径10μm。
炭素繊維(D1−2);三菱樹脂(株)製、(商品名)ダイアリードK223HE;熱伝導率500W/mK、繊維長6mm、繊維径10μm。
炭素繊維(D1−3);帝人(株)製、(商品名)ラフィーマRA301;熱伝導率600W/mK、繊維長200μm、繊維径8μm。
黒鉛(D2−1);昭和電工(株)製、(商品名)UFG−30;人造黒鉛、固定炭素含有量99.4%。
被覆酸化マグネシウム粉末(D3−1);タテホ化学工業(株)製、(商品名)クールフィラーCF2−100;フォルステライトによる表面被覆、平均粒子径20μm。
高純度マグネサイト粉末(D4−1);神島化学工業(株)製、(商品名)合成マグネサイトMSHP;炭酸マグネシウム含有率99.99重量%、平均粒子径12μm。
鱗片状窒化ホウ素粉末(D5−1);電気化学工業(株)製、(商品名)デンカボロンナイトライドSGP;平均粒子径18.0μm、比表面積2m/g、G.I値0.9。
<多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)>
多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E−1)(以下、単に縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E−1)と記す。);太陽化学(株)製、(商品名)チラバゾールH−818、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル。
実施例及び比較例で用いた評価・測定方法を以下に示す。
〜曲げ強度の測定〜
射出成形により長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mmの試験片を作製し、該試験片を用いて、ASTM D−790 Method−1(三点曲げ法)に準じ、曲げ強度を測定した。測定装置(島津製作所製、(商品名)AG−5000B)を用い、支点間距離50mm、測定速度1.5mm/分の試験条件で行った。曲げ強度として80MPaを超えるものを実用上十分な機械的強度を有すると判断した。
〜熱伝導率の測定〜
熱伝導率測定装置(アルバック社製、(商品名)TC7000;ルビーレーザー)を用い、23℃の条件下で、レーザーフラッシュ法にて測定した。厚み方向の熱伝導率は、一次元法により、熱容量Cpと厚み方向の熱拡散率αを求め、また平面方向の熱伝導率は、二次元法により、平面方向の熱拡散率α’を求めて、次式より熱拡散率を算出した。
厚み方向の熱伝導率=ρ×Cp×α
平面方向の熱伝導率=ρ×Cp×α’
ここで、密度ρは、ASTM D−792 A法(水中置換法)に準じ測定した。また、測定に供する試験片は、下記の線膨張係数に用いる平板から切削加工した。さらに、熱伝導率の異方性を評価するために、熱伝導率の(厚み方向)/(平面方向)比率を算出した。該値が100%に近いほど異方性は小さく、逆に0%に近い、又は100%を大きく越える場合は、異方性が大きい、と判断した。該値が80〜120%にあるものを熱伝導率の異方性が小さいと判断した。
〜線膨張係数の測定〜
射出成形により長さ70mm、幅70mm、厚み2mmの平板を作製し、該平板より、樹脂の流動方向(MD)及び樹脂の流動方向に直角な方向(TD)に、それぞれ幅5mm、長さ15mmの短冊状板を切り出し、これを線膨張係数測定の試験片とした。次に該試験片を測定装置(アルバック社製、(商品名)DL7000)に装着し、30〜200℃の範囲で、2℃/分の昇温条件のもと、線膨張係数を測定した。さらに、線膨張係数の異方性を評価するために、線膨張係数の(MD)/(TD)比率を算出し、該値が100%に近いほど異方性は小さく、逆に0%に近い、又は100%を大きく越える場合は、異方性が大きい、と判断した。該値が80〜120%にあるものを線膨張係数の異方性が小さいと判断した。
〜バーフロー長さの測定〜
溶融流動性の指標としてバーフロー長さ(以下、BFLと記す。)を測定した。射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)に、深さ1mm、幅10mmの溝がスパイラル状に掘られた金型を装着し、次いで、シリンダー温度を310℃、射出圧力を190MPa、射出速度を最大、射出時間を1.5秒、及び金型温度を135℃に設定した該射出成形機のホッパーにポリアリーレンスルフィド組成物を投入し、射出した。そして金型内のスパイラル状の溝を溶融流動した長さをBFLとして測定した。BFLとして40mmを超えるものを実用上十分な値を示すと判断した。
<合成例1(PPS(A−1)、PPS(A−2)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、NaS・2.8HO1866g及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)5リットルを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、407gの水を溜出させた。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2280gとNMP1500gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を225℃に昇温し、225℃にて2時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、ポリマーを遠心分離器により単離した。温水でポリマーを繰り返し洗浄し、100℃で一昼夜乾燥し、ポリ(p−フェニレンスルフィド)を得た。
得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)(PPS(A−1))の溶融粘度は110ポイズであった。
更にPPS(A−1)を、空気雰囲気下235℃で加熱硬化処理を行った。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)(PPS(A−2))の溶融粘度は300ポイズであった。
<合成例2(PPS(A−3)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルチタン製オートクレーブにNMP3232g、47%硫化水素ナトリウム水溶液1682g及び48%水酸化ナトリウム水溶液1142gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、1360gの水を溜出させた。この系を170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン2118gとNMP1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を225℃に昇温し、225℃にて1時間重合し、続けて250℃まで昇温し、250℃にて2時間重合した。更に、250℃で水451gを圧入し、再度255℃まで昇温し、225℃にて2時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、重合スラリーを固液分離した。ポリマーをNMP、アセトン及び水で順次洗浄し、100℃で一昼夜乾燥し、ポリ(p−フェニレンスルフィド)を得た。
得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)(PPS(A−3))は直鎖状のものであり、その溶融粘度は350ポイズであった。
実施例1
PPS(A−1)100重量部と金属ケイ素粉末(C−1)150重量部とを配合して、シリンダー温度320℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、カーボンナノチューブ(B−1)を該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ペレット状のポリアリーレンスルフィド組成物を作製した。
該ポリアリーレンスルフィド組成物を、シリンダー温度310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、曲げ強度を測定するための試験片、及び、熱伝導率、線膨張係数を測定するための平板を、それぞれ成形した。更にBFLを測定した。これらの結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンスルフィド組成物は、実用上十分な機械的強度を有し、熱伝導率も高く、かつその異方性は小さかった。また、線膨張係数は小さく、かつその異方性も小さかった。さらにBFLも実用上十分な値を示した。
実施例2〜15
PPS(A−1、2、3)、金属ケイ素粉末(C−1、2)、炭素繊維(D1−3)、黒鉛(D2−1)、被覆酸化マグネシウム粉末(D3−1)、高純度マグネサイト粉末(D4−1)、鱗片状窒化ホウ素粉末(D5−1)及び縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E−1)を表1及び2に示す構成割合で配合して、二軸押出機のホッパーに投入し、一方、カーボンナノチューブ(B−1)、炭素繊維(D1−1、2)を表1及び2に示す構成割合で配合して、二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表1,2に示した。
得られた全てのポリアリーレンスルフィド組成物は、実用上十分な機械的強度を有し、熱伝導率も高く、かつその異方性は小さかった。また、線膨張係数は小さく、かつその異方性も小さかった。さらにBFLも実用上十分な値を示した。
Figure 0005776405
Figure 0005776405
比較例1〜6
PPS(A−1)、金属ケイ素粉末(C−1)、炭素繊維(D1−3)、及び黒鉛(D2−1)を表3に示す構成割合で配合して、二軸押出機のホッパーに投入し、一方、カーボンナノチューブ(B−1)、炭素繊維(D1−2)を表3に示す構成割合で配合して、二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表3に示した。
比較例1、4により得られた樹脂組成物は、実用上十分な機械的強度を有していなかった。比較例1〜6により得られた全ての樹脂組成物は、熱伝導率の異方性が大きく、特に比較例1、3により得られた樹脂組成物は、熱伝導率そのものも低かった。また、比較例2〜6により得られた樹脂組成物は、線膨張係数の異方性が大きかった。更には、比較例2、6により得られた樹脂組成物は、実用上十分なBFLの値を示さなかった。
Figure 0005776405
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、熱伝導性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、および溶融流動性に優れ、かつ熱伝導性の異方性と、熱膨張性及びその異方性の小さいものであり、特に電気・電子部品或いは自動車電装部品などの電気部品用途に期待されるものである。

Claims (5)

  1. ポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、少なくとも、平均単繊維直径1〜100nm、平均単繊維長1〜200μmのカーボンナノチューブ(B)1〜70重量部及び金属ケイ素粉末(C)15〜250重量部を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド組成物。
  2. さらにポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、炭素繊維(D1)、黒鉛(D2)、ケイ素とマグネシウムの複酸化物及び/又はアルミニウムとマグネシウムの複酸化物で被覆された被覆酸化マグネシウム粉末(D3)、炭酸マグネシウムを主成分とするマグネサイトであって炭酸マグネシウム含有率が98〜99.999重量%である高純度マグネサイト粉末(D4)並びに六方晶構造を有する鱗片状窒化ホウ素粉末(D5)からなる群より選択される少なくとも1種以上の熱伝導性フィラー(D)10〜200重量部を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
  3. 炭素繊維(D1)が、100W/mK以上の熱伝導率を有する炭素繊維であることを特徴とする請求項2に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
  4. 炭素繊維(D1)が、500W/mK以上の熱伝導率を有する炭素繊維であることを特徴とする請求項2又は3に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
  5. さらにポリアリーレンスルフィド(A)100重量部に対し、多価アルコール縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル(E)0.5〜5重量部を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
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