JP2005054094A - 熱伝導性樹脂材料 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】 カーボンを2種以上の樹脂混合物中に分散させてなることを特徴とする熱伝導性樹脂材料。
【効果】 本発明によれば、少量のフィラー(カーボン)の配合量でも十分な熱伝導性を付与する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、放熱板、熱電変換素子、光電変換素子、電磁波吸収放熱材、加熱定着ロール、発熱基板、燃料電池セパレータ等に用いられる樹脂材料として有効な熱伝導性樹脂材料に関する。
従来、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂に対し、熱伝導性を向上させるために、カーボンブラック、カーボン繊維、金属粉等の無機材料をフィラーとしてブレンドすることが行われていた。
しかしながら、必要な熱伝導性(特に、熱伝導率0.4W/m・K以上)を付与するには、樹脂材料中に多量のフィラーを添加する必要があることから、これによりベース樹脂本来の物性が変わってしまう。また、熱伝導性の向上に効果的なフィラーは、カーボンブラックやカーボン繊維(黒色)、金属粉(金属色)等、有色のものが多く、多量の配合により熱伝導性樹脂材料を薄膜化しても不透明なフィルムしか得られない。
このため、フィラー量を少なくしても必要な熱伝導性を与えることができる熱伝導性樹脂材料が望まれていた。
なお、この発明に関する先行技術文献情報としては以下のものがある。
特開2003−49045号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、少量のフィラーの使用で、熱伝導率0.4W/m・K以上のレベルの熱伝導性を与えることができる熱伝導性樹脂材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、カーボンを分散させるマトリックス樹脂を単一成分から2種以上のポリマーブレンド、特に2種以上の熱可塑性樹脂のポリマーブレンドに変え、カーボンを偏在させて分散させること、好ましくは樹脂混合物中の1種の樹脂相のみに、上記カーボンを選択的に分散させること、更に好ましくは、従来用いられていたフィラーの代わりに、直径1μm以下のカーボン、特に繊維状カーボン(CNT、VGCF等)を用いて樹脂材料を作製することにより、フィラー配合量が少量であっても必要とする十分な熱伝導性が得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記の熱伝導性樹脂材料を提供する。
[請求項1] カーボンを2種以上の樹脂混合物中に分散させてなることを特徴とする熱伝導性樹脂材料。
[請求項2] 上記2種以上の樹脂混合物中の1種の樹脂相のみにカーボンを選択的に分散させてなることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項3] 上記カーボンが直径1μm以下の繊維状カーボンであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項4] 上記繊維状カーボンのアスペクト比が10〜10000であることを特徴とする請求項3記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項5] 上記繊維状カーボンがカーボンナノチューブ又は気相成長カーボン繊維であることを特徴とする請求項3又は4記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項6] 上記カーボンの配合量が材料全体の0.01〜70質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項7] 上記カーボンの配合量が材料全体の0.01〜50質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項8] 上記カーボンの配合量が材料全体の0.01〜20質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項9] 上記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項10] 上記樹脂混合物が2種の樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項11] 上記2種の樹脂の一方の配合量が樹脂総量の5〜95質量%であることを特徴とする請求項10記載の熱伝導性樹脂材料。
[請求項12] 熱伝導率が0.4W/m・K以上であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
本発明によれば、少量のフィラー(カーボン)の配合量でも十分な熱伝導性を付与する。
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明の熱伝導性樹脂材料は、カーボンを2種以上の樹脂混合物中に分散させてなるものである。本発明の熱伝導性樹脂材料は、カーボンを分散させるマトリックス樹脂を2種以上のポリマーブレンドとし、カーボンを偏在させて分散させるものであるが、特に、この2種以上の樹脂混合物中の1種の樹脂相のみに直径1μm以下のカーボンを選択的に分散させたものであることが好ましい。この場合、どの樹脂相にカーボンを偏在させて、又は選択的に分散させるかは、使用する樹脂の種類、粘度等により適宜決定される。
本発明において用いられるカーボンの形状としては、粒状、繊維状等いずれの形状のものも用い得、特に制限されるものではないが、直径が1μm以下、好ましくは1nm〜1μm、更に好ましくは0.01〜0.2μmのものを用いることが好ましい。直径が1μmより大きいものは、本発明の目的を達成し得ないおそれがある。
本発明においては、カーボンのなかでも、繊維状カーボンが好ましい。繊維状カーボンの場合は、そのアスペクト比(長さL/直径D)が10〜10000、特に100〜1000のものを使用することが好ましい。アスペクト比が小さすぎる繊維状カーボンを用いる場合は、少量添加で十分な熱伝導パスを形成することが困難となるおそれがある。アスペクト比が大きすぎると、繊維同士のからみあいにより分散不良が生じる場合がある。繊維状カーボンとしては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)等のカーボンナノチューブ(CNT)、気相成長カーボン繊維(VGNF、VGCF)などを使用することができる。
上記カーボンの配合量は、適宜選定され、特に制限されるものではないが、熱伝導性樹脂材料全体の0.01〜70質量%、好ましくは0.01〜50質量%、特に好ましくは0.01〜20質量%の範囲とすることができる。
一方、本発明においては、樹脂は2種以上の樹脂、特に2種の樹脂を配合してなる混合物であるが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれをも用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が好ましい例として挙げられ、熱硬化性樹脂の2種以上、特に2種の混合物を使用することができ、これらの樹脂の未硬化の樹脂成分にカーボンを混合して硬化させることにより樹脂材料を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましい例として挙げられるほか、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等を使用することができ、熱可塑性樹脂の2種以上、特に2種の混合物を使用することができ、これらの樹脂にカーボンを混合(混練)することにより樹脂材料を得ることができる。
混練分散方法は特に制限されないが、カーボンを均一分散させる点、又はカーボンを分散させた樹脂を均一に分散させる点から、バッチ式の場合はラボプラストミルミキサ、連続式の場合は二軸押出機による混練等の方法を採用することが好ましい。
上述したカーボンを樹脂混合物中に偏在させて分散させるための方法は特に制限されないが、例えば、3種類の樹脂(A,B,C)にカーボンを分散させる場合を例に説明すると、
(1)A,B,C(熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の樹脂成分、以下のA,B,Cにおいて同じ)を混合した後、これにカーボンを配合して更に混合する方法
(2)Aにカーボンを配合して混合した後、これにB,Cを配合して更に混合する方法
(3)Bにカーボンを配合して混合した後、これにA,Cを配合して更に混合する方法
(4)Cにカーボンを配合して混合した後、これにA,Bを配合して更に混合する方法
(5)Aにカーボンを配合して混合したもの、Bにカーボンを配合して混合したもの及びCにカーボンを配合して混合したものを各々調製し、これらを合わせて更に混合する方法
などが挙げられる。
本発明においては、樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートから選ばれる2種以上、特に2種の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
樹脂の混合割合は適宜選定されるが、樹脂として2種の樹脂を用いる場合、これら2種の樹脂の一方の配合量が、樹脂総量の5〜95質量%、特に25〜75質量%であることが好ましい。
また、樹脂として2種の樹脂を用いる場合の上述したカーボンを偏在させて分散させるための方法も特に制限されないが、例えば、2種類の樹脂(A,B)にカーボンを分散させる場合は、
(1)A,B(熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の樹脂成分、以下のA,Bにおいて同じ)を混合した後、これにカーボンを配合して更に混合する方法
(2)Aにカーボンを配合して混合した後、これにBを配合して更に混合する方法
(3)Bにカーボンを配合して混合した後、これにAを配合して更に混合する方法
(4)Aにカーボンを配合して混合したもの及びBにカーボンを配合して混合したものを各々調製し、これらを合わせて更に混合する方法
などが挙げられる。
本発明の熱伝導性樹脂材料は、放熱板、熱電変換素子、光電変換素子、電磁波吸収放熱材、加熱定着ロール、発熱基板、燃料電池セパレータ用等として好適に使用され、0.4W/m・K以上の熱伝導率を与えるものであることが好ましい。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜3]
樹脂として表1に示す種々の割合(質量比)の高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)を東洋精機製ラボプラストミルR60で混練し、次いで、カーボンとしてVGCF(直径150nm程度、L/D100程度)を、VGCF配合量を10質量%として上記樹脂に配合し、更に混練してコンパウンドを作製し、混練後、プレスにて1mm厚シートを成形し、京都電子工業製迅速熱伝導計を用いて熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1,2]
ポリメチルメタクリレートにカーボンを混練して分散したもの(比較例1)、高密度ポリエチレンにカーボンを混練して分散したもの(比較例2)を各々コンパウンドとし、これらを用いて実施例1と同様に成形して熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2005054094
上記の結果より、PMMA単独系(比較例1)では0.49W/m・K、HDPE単独系(比較例2)では0.60W/m・Kであるのに対し、HDPE/PMMA=50/50系では0.73W/m・K、HDPE/PMMA=75/25系で0.69W/m・Kと、熱伝導性が向上することが認められる。
[実施例4〜6]
高密度ポリエチレンとポリメチルメタクリレートの代わりにポリプロピレン(PP)とポリスチレン(PS)を用いた以外は実施例1と同様にしてコンパウンドを得、これを用いて実施例1と同様に成形して熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
[比較例3,4]
ポリスチレンにカーボンを混練して分散したもの(比較例3)、ポリプロピレンにカーボンを混練して分散したもの(比較例4)を各々コンパウンドとし、これらを用いて実施例1と同様に成形して熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2005054094
上記の結果より、PS単独系(比較例3)では0.46W/m・K、PP単独系(比較例4)では0.38W/m・Kであるのに対し、PP/PS=25/75系では0.47W/m・K、PP/PS=50/50系で0.53W/m・K、PP/PS=75/25系で0.50W/m・Kと、熱伝導性が向上することが認められる。

Claims (12)

  1. カーボンを2種以上の樹脂混合物中に分散させてなることを特徴とする熱伝導性樹脂材料。
  2. 上記2種以上の樹脂混合物中の1種の樹脂相のみにカーボンを選択的に分散させてなることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂材料。
  3. 上記カーボンが直径1μm以下の繊維状カーボンであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導性樹脂材料。
  4. 上記繊維状カーボンのアスペクト比が10〜10000であることを特徴とする請求項3記載の熱伝導性樹脂材料。
  5. 上記繊維状カーボンがカーボンナノチューブ又は気相成長カーボン繊維であることを特徴とする請求項3又は4記載の熱伝導性樹脂材料。
  6. 上記カーボンの配合量が材料全体の0.01〜70質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
  7. 上記カーボンの配合量が材料全体の0.01〜50質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
  8. 上記カーボンの配合量が材料全体の0.01〜20質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
  9. 上記樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
  10. 上記樹脂混合物が2種の樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
  11. 上記2種の樹脂の一方の配合量が樹脂総量の5〜95質量%であることを特徴とする請求項10記載の熱伝導性樹脂材料。
  12. 熱伝導率が0.4W/m・K以上であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂材料。
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