JP5774505B2 - 銅−ポリイミド積層体、立体成型体、及び立体成型体の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、ポリイミドフィルム単体を立体成型する技術が報告されており(例えば、特許文献2)、又、一般に樹脂フィルムはそのガラス転移温度以上の温度で成型される(例えば、特許文献3)。
ところが、フレキシブル配線板は、1軸曲げ等の平面応力状態の加工には対応できるが立体成型のような過酷な加工には耐え切れず、破断する可能性がある。一方、ポリイミドフィルム単体の成型は可能であるが、一般のポリイミドフィルムを銅箔と貼り合せた後に成型すると、銅箔が破断することが判明した。なお、ポリイミドフィルム単体を成型した後、その表面に銅箔を蒸着等によって形成するとコストアップとなると共に成型後に回路パターンを形成するため、電気回路も粗くなる。
すなわち、本発明の銅-ポリイミド積層体は、質量率でAgを50〜300ppm、酸素を100〜300ppmを含有し、残部が銅と不可避的不純物からなる圧延銅箔と、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを縮重合してなり、ガラス転移温度が260℃以上320℃未満で、25℃〜200℃の貯蔵弾性率が1×109〜4×109 Paである熱可塑性ポリイミドフィルムとを、ガラス転移温度が200℃以上260℃未満で、25℃〜200℃の貯蔵弾性率が1 ×109〜4 ×109 Paである熱可塑性ポリイミドからなる接着層によって接着してなる。
本発明の立体成型体の製造方法は、前記立体成型体を製造する方法であって、260℃以下の温度で前記銅−ポリイミド積層体を立体成型する。
圧延銅箔は、質量率でAgを50〜300ppm、酸素を100〜300ppmを含有し、残部が銅と不可避的不純物からなる。Agは、再結晶特性や結晶方位を改善して銅箔の加工性を向上させるために添加する。Agが50質量ppm未満の場合、銅箔の加工性が向上せず、300質量ppmを超えると再結晶温度が高くなりすぎて再結晶しない場合がある。密着性を向上させる粗化処理を銅箔表面に施すのが好ましく、又、防錆のための処理層を銅箔表面に形成してもよい。
圧延銅箔として、質量率で酸素を100〜300ppmを含有するタフピッチ銅(例えば、JIS−H3100 C1100 に規格するもの)をベース組成として用いることで、銅箔を安価に量産することができる。不可避的不純物としては、数質量ppmのS、Fe、Al、P等が挙げられる。
圧延銅箔の厚みは、6〜70μmであることが好ましい。厚みが6μm未満の場合、銅箔のハンドリング性が低下し、厚みが70μmを超えると銅箔の柔軟性が低下することがある。
銅箔として、圧延銅箔を用いると、再結晶により加工性を向上させることができる。
銅-ポリイミド積層体の樹脂層として、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを縮重合してなり、ガラス転移温度が260℃以上320℃未満で、25℃〜200℃の貯蔵弾性率が1 ×109〜4 ×109 Paである熱可塑性ポリイミドフィルムを用いる。
ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸と脂肪族又は芳香族ジアミンとの縮合物であり、代表的にはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの酸二無水物と、パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミンを縮重合してアミド酸を生成させ、これを熱又は触媒で閉環硬化させて得られるものである。熱可塑性ポリイミドは、例えば次のような化合物を共重合させることによって得ることができる。
酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、4,4'−オキシジフタール酸二無水物、3,3'、4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3'、4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'、3,3'ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3ージカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、m−フェニレンビス(トリメリット酸)二無水物等を挙げることができる。
ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、3,3'−ジメチルペンタメチレンジアミン、3−メチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,1,6,6−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,5,5−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート、m−アミノベンゾイル−p−アミノアニリド、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)]プロパン,4,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'ージアミノゼンゾフェノン、1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3ービス(4−アミノベンゾイルオキシ)ベンゼン、4,4'−ジベンズアニリド、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)フェニルエーテル、2,2'−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2'−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジクロロ−1、1,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、1,12−ジアミノドデカン、1,13− ジアミノドデカン、ポリシロキサンジアミンなどが挙げられる。
熱可塑性ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン株式会社製のカプトン(登録商標)JPが市販されている。
なお、ガラス転移温度(Tg)は非平衡状態での温度であり、1点でなく温度範囲を持つ。又、ガラス転移温度は昇温速度等の温度条件でも変わる。そこで、本発明においては、昇温速度1℃/min、歪0.1%、周波数1Hzの条件で動的粘弾性測定から求めたtanδのピークをガラス転移温度と定める。
なお、貯蔵弾性率は、JIS K7244−4に準じて、引張モードにおける動的粘弾性を測定することで求めることができ、各温度にて、10000×45000×50μmのサンプルを、歪み1%、測定周波数1Hz、昇温速度1℃/分で測定した値とする。又、温度が高いほど、貯蔵弾性率の値は小さくなる。
熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは、12〜200μmであることが好ましい。この厚みが12μm未満であると、成型時にポリイミドフィルムが割れることがある。この厚みが200μmより厚いと、熱可塑性ポリイミドフィルムの柔軟性(フレキシブル性)が低下して剛性が高くなり過ぎ、加工性が劣化することがある。
上記した熱可塑性ポリイミドフィルムは、ガラス転移温度が高い(260℃以上)ために銅箔との密着性に劣ることがある。そこで、銅箔と熱可塑性ポリイミドフィルムとを接着するため、ガラス転移温度が低い(200℃以上260℃未満)の熱可塑性ポリイミドを接着層として用いる。接着層として、ポリイミド以外の樹脂(例えばエポキシ樹脂、アクリル系樹脂など)を用いると、熱可塑性ポリイミドフィルムとの物性の違いにより立体成型中に応力集中を引き起こし、銅箔や熱可塑性ポリイミドフィルムが割れやすくなる。
25℃〜200℃において、接着層(熱可塑性ポリイミド)の貯蔵弾性率が1 ×109〜4 ×109 Paであると、立体成型性を向上させることができる。接着層の貯蔵弾性率が1 ×109 Pa未満であると、立体成型時に熱可塑性ポリイミドフィルムと接着層は成型できるものの、銅箔が破断する。接着層の貯蔵弾性率が4 ×109 Paより大きいと、接着層が硬くなり過ぎて立体成型時に割れやすい。
接着層の厚みは、2〜50μmであることが好ましい。この厚みが2μm未満であると、成型により厚みが薄くなり、最終的には銅箔と熱可塑性フィルムが剥離して割れることがある。この厚みが50μmより厚いと、接着層の柔軟性(フレキシブル性)が低下して剛性が高くなり過ぎ、加工性が劣化することがある。
上記した銅箔と熱可塑性ポリイミドフィルムとを積層する銅-ポリイミド積層体の組み合わせとしては、銅箔/熱可塑性ポリイミドフィルムの2層構造や、銅箔/熱可塑性ポリイミドフィルム/銅箔の3層構造が挙げられる。
又、銅箔部分に電気回路を形成した場合、その表面にカバーレイフィルムを積層してもよい。又、カバーレイフィルムを積層せずに回路を露出させ、照明機器用反射体(例えばLED用)の基板等としてもよい。
通常、樹脂フィルムの成型は、その樹脂のガラス転移温度以上の温度で行うが、上記した熱可塑性ポリイミドフィルムの場合、ガラス転移温度以上の温度で貯蔵弾性率が1 ×109 Pa未満に低下し、成形の際に貼り合せた銅箔が割れやすくなる。そこで、銅箔の破断を防止するため、熱可塑性ポリイミドフィルムの貯蔵弾性率が1 ×109Pa以上となる温度(つまり、熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度以下の温度)で立体成型を行うことが好ましい。又、この条件で立体成型を行うと、従来より低温で成型するために生産性が向上する。
Cu:99.99質量%の電気銅を溶解し、Agを50〜300質量ppm添加して大気中で鋳造し、インゴットを作製した。作製したインゴットを熱間圧延後に面削し、冷間圧延、焼鈍、酸洗を繰り返して圧延銅箔(厚み32μm)とした。銅箔の片面に対し、処理液(Cu:10〜25g/L、H2SO4:20〜100g/L)を用い、温度20〜40℃、電流密度30〜70A/dm2、電解時間1〜5秒で電解処理を行った。その後、銅箔の電解処理面に対し、Ni−Coめっき液(Coイオン濃度:5〜20g/L、Niイオン濃度:5〜20g/L、pH:1.0〜4.0)を用い、温度25〜60℃、電流密度:0.5〜10A/dm2でNi−Coめっきした。さらに、銅箔のNi−Coめっきを施していない面に対し、クロメート浴(K2Cr2O7:0.5〜5g/L)を用い、電流密度1〜10A/dm2でクロメート処理を行った。
4,4'-ジアミノジフェニルエーテルとN,N'-ジメチルアセトアミドを入れ、窒素雰囲気下で攪拌し、3,3'-4,4'―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を投入、3,3'−4,4'ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をN,N'-ジメチルアセトアミド中に分散させた溶液を投入した。この液をガラス基板上にバーコーターで均一に塗工し、熱可塑性ポリイミドフィルム厚み25μmを得た。
接着剤層となる熱可塑性ポリイミドとして、ガラス転移温度220℃である東レ・デュポン株式会社製の商品名カプトン(商標登録)KJ(厚み25μm)を用いた。
上記した圧延銅箔の粗化処理面に、接着層となる熱可塑性ポリイミドフィルム、熱可塑性ポリイミドフィルムの順で積層し、真空中で380℃×1h、0.2kN/cm2の圧力でプレスして銅-ポリイミド積層体を製造した。
なお、圧延銅箔にAgを添加しなかったものを比較例1,3とし、圧延銅箔中のAg添加量が300質量ppmを超えたものを比較例5とした。
又、熱可塑性ポリイミドフィルムを用いず、その代わりにガラス転移温度を有しない熱硬化性ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製の商品名カプトン(登録商標)H、厚み25μm)を用いたものを比較例1,2とした。
接着層として市販のエポキシ系樹脂接着剤を用いたものを比較例4とした。
圧延銅箔中の酸素量が300質量ppmを超えたものを比較例6とした。
実施例4と同一の積層体を用い、成型温度が熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度を超える310℃のものを比較例7とした。
得られた銅-ポリイミド積層体の銅箔面にドライフィルムレジストをラミネートし、フォトマスクを上に乗せて露光、剥離、エッチング、洗浄を行って回路を形成した。さらに、回路の上にカバーレイフィルムを積層し、フレキシブル配線板(FPC)を作製した。成型性を評価するため、回路パターンはL/S=500/5000μmの格子状とした。次に銅箔保護のため、カバーフィルムを銅箔面に積層した。
次に、圧空プレスを用い、熱可塑性ポリイミドフィルムの貯蔵弾性率が表1の値となる条件で、0.1〜1.0MPaの圧力をかけてフレキシブル配線板を立体成型した。成型は、直径50mm、高さ15mmのバルーン状の型を用いた。
成型性の評価は以下のように行った。成型後のフレキシブル配線板において、圧延銅箔(回路)、熱可塑性ポリイミドフィルムのいずれも破断が生じなかったものを評価○、圧延銅箔(回路)と熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも一方に破断が生じたものを評価×とした。
得られた結果を表1に示す。
一方、銅箔にAgを添加しなかった比較例1、3の場合、銅箔の加工性が低下し、銅-ポリイミド積層体、及びFPCのいずれにおいても成型性が劣った。
圧延銅箔中のAg添加量が300質量ppmを超えた比較例5の場合、銅箔が再結晶せずに加工性が低下し、銅-ポリイミド積層体、及びFPCのいずれにおいても成型性が劣った。
圧延銅箔中の酸素量が300質量ppmを超えた比較例6の場合、亜酸化銅の介在物が多く存在するため銅箔が割れた。銅-ポリイミド積層体、及びFPCのいずれにおいても成型性が劣った。
熱可塑性ポリイミドフィルムを用いず、その代わりにガラス転移温度を有しない熱硬化性ポリイミドフィルムを用いた比較例2の場合、このフィルムが硬くなり過ぎて立体成型時に割れ、成型性が劣った。
接着層として市販のエポキシ系樹脂接着剤を用いた比較例4の場合、25℃〜200℃の貯蔵弾性率が1 ×109〜4 ×109 Paの範囲から外れ、成型温度では接着層の貯蔵弾性率が4 ×109 Paより大きくなった。そのため、接着層が硬くなり過ぎ、銅-ポリイミド積層体、及びFPCのいずれにおいても成型性が劣った。成型温度が260℃を超えた比較例7の場合、銅-ポリイミド積層体、及びFPCのいずれにおいても成型性が劣った。
6 接着層6
8 熱可塑性ポリイミドフィルム
10 銅-ポリイミド積層体
Claims (4)
- 質量率でAgを50〜300ppm、酸素を100〜300ppmを含有し、残部が銅と不可避的不純物からなる圧延銅箔と、
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを縮重合してなり、ガラス転移温度が260℃以上320℃未満で、25℃〜200℃の貯蔵弾性率が1×109〜4×109 Paである熱可塑性ポリイミドフィルムとを、
ガラス転移温度が200℃以上260℃未満で、25℃〜200℃の貯蔵弾性率が1 ×109〜4 ×109 Paである熱可塑性ポリイミドからなる接着層によって接着してなる銅−ポリイミド積層体。 - 前記圧延銅箔が電気回路をなす請求項1記載の銅-ポリイミド積層体。
- 請求項1又は2に記載の銅-ポリイミド積層体を立体成型してなる立体成型体。
- 請求項3記載の立体成型体を製造する方法であって、260℃以下の温度で前記銅−ポリイミド積層体を立体成型する立体成型体の製造方法。
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