JP5764334B2 - アクリル系重合体の製造方法並びにこの方法により得られるアクリル系重合体およびこれを利用するアクリル系粘着剤組成物 - Google Patents

アクリル系重合体の製造方法並びにこの方法により得られるアクリル系重合体およびこれを利用するアクリル系粘着剤組成物 Download PDF

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Description

本発明は、アクリル系重合体の製造方法に関し、更に詳細には、高分子量体と低分子量体の2つのピークを有し、かつ低分子量体の方が多いアクリル系重合体の製造方法並びにこの方法により得られるアクリル系重合体およびこれを利用するアクリル系粘着剤組成物に関する。
最近、粘着剤の応用用途は拡大しており、それに伴って粘着剤組成物に要求される性能も多岐にわたるようになっている。例えば、使用される基材も多岐にわたり、アクリル系粘着剤に対して難接着の基材も多い。このような難接着性基材に対する密着性を向上させるために、基材表面へのぬれ性を向上させ、初期接着性能を上げるということが行われている。しかしながら、このようにして初期接着性を向上させることで、曲面に対する貼り付け性が悪くなる場合が多く、初期接着性と曲面貼り付け性とを両立した粘着剤組成物が必要となっている。
上記のような曲面貼り付け性の良い粘着剤組成物には、初期接着性と応力緩和性の両方の性能が優れているものであることが必要であるが、このような性能を有する重合物は、単一の分子量ピークを有するものでなく、複数の分子量ピークを有するものであるとされている。
そして、このような重合体を得るために、従来から、高分子量の重合体と低分子量の重合体をブレンドすることが良く行われている。しかしながら、このような高分子量の重合体と低分子量の重合体のブレンドでは、これら重合体の相溶性が良くないという問題があり、十分に混ぜ合わせるために溶剤をかなりの量使用する必要があった。
近年、上記のブレンドに代わり、一連の重合反応の中で、高分子量重合体と低分子量重合体を製造する、いわゆる一括重合法が行われるようになっている。例えば、特許文献1に開示の感圧式接着剤には、完全に独立したMw50万〜220万の高分子量成分のピークと、Mw1000〜10万の低分子量ピークが存在し、その高分子量ピークと低分子量ピークの面積比が、60/40〜90/10であるアクリル系共重合体が含有されている。この方法は、単量体と開始剤を添加し、重合転化率が60〜90%になるまで重合させて高分子量重合体を得、その後また単量体と開始剤を添加し、重合添加率が80〜90%となるまで重合させて低分子量重合体を得るというものである。
しかしながら、本発明者らの研究の結果、初期接着性と応力緩和性の二つの性能を共に向上させるには、1つの重合物中に高分子量の重合体と低分子量の重合体を含むことが必要ではあるが、それだけでなく、更に低分子量体の方が高分子量体より多いことが重要であることが分かってきた。
翻って、前記特許文献1のアクリル系共重合体を検討すると、このものは低分子量重合体に比べ高分子量重合体が多いため、前記の初期接着性と応力緩和性の二つの性能が共に優れた重合体を得るという目的には不向きな方法であり、実際、当該特許文献には、初期接着性や応力緩和性を検討したことを示すような記載はない。
前記したように、1つの重合物中に高分子量の重合体と低分子量の重合体を含み、かつ低分子量体の量が相対的に多いことが、初期接着性と応力緩和性の向上に重要であるから、このような重合物を一つの反応で調製できれば、工業的に極めて有利であるが、このような方法は今まで全く知られていない。
WO2008/029766
本発明はこのような実情に鑑みなされたもので、初期接着性と応力緩和性の優れた粘着剤の原料となり得る、1つの重合物中に高分子量の重合体と低分子量の重合体を含み、かつ低分子量重合体の量が相対的に多い重合物を容易に製造しうる方法の提供をその課題とするものである。
本発明者らは、上記の高分子量の重合体と低分子量の重合体を含み、かつ低分子量重合体の量が相対的に多い重合物をいわゆる一括重合法により製造するための手段を開発すべく、鋭意研究を行っていたところ、アクリル系単量体が所定の重合率となった時点で、連鎖移動剤を加えることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、アクリル系単量体と、重合開始剤の存在下で重合を開始し、次いで、単量体の重合率が使用する全単量体量に対し、5〜40%となった時点で、全単量体に対し、0.1〜10質量%の連鎖移動剤を、一括で若しくは60分以内の時間をかけて添加することを特徴とする、低分子量重合体と高分子量重合体を含み、低分子量重合体の方が多いアクリル系重合体(以下、「アクリル系低分子量リッチ重合物」ということがある)の製造方法である。
また本発明は、上記方法で製造され、次の特性、(a)〜(c)
(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、2つのピークトッ
プが観察される、
(b)2つのピークトップの間の最下部において、Mw20〜200万の高分子量体と
、Mw20万未満の低分子量体に分けられる、
(c)GPCにおける高分子量体と低分子量体の面積比が、5〜40:60〜95で
ある
を有することを特徴とするアクリル系低分子量リッチ重合物である。
更に本発明は、上記のアクリル系低分子量リッチ重合物を、架橋剤で架橋してなる粘着剤組成物である。
更にまた本発明は、基材上の少なくとも一方の面に、上記の粘着剤組成物を設けてなる粘着シートである。
本発明方法は、一括重合法であるため、ブレンド法と比べ、初期接着性と曲面貼り付け性の良い粘着剤組成物の材料になるアクリル系低分子量体リッチ重合物を容易に製造することができ、製造工程数も少なく、製造に用いられる溶剤量等も低減できるためコストダウンを図ることもできる。また、得られた低分子量リッチ重合物は、高分子量体と低分子量体の相溶性が高いものである。
更に、連鎖移動剤の添加の時期、添加時間もしくは連鎖移動剤の種類等あるいは、使用する単量体の種類などの選択により、低分子量体と高分子量体の分子量、それらの割合や架橋点の量等が異なるアクリル系低分子量リッチ重合物を得ることができ、粘着剤の設計の幅を広げることが可能となる。
本発明のアクリル系低分子量リッチ重合物の製造方法は、(1)まず、アクリル系単量体と重合開始剤を用いて重合を開始し、(2)使用される全単量体に対する重合率が5〜40%となった時点で連鎖移動剤を添加し、更に適宜重合開始剤を追加して反応を進行させるというものである。
この(1)の工程(以下、「第一工程」ということがある)は、通常のラジカル重合反応に従って行われ、例えば、反応容器中に、アクリル系単量体、重合開始剤および溶媒を取り、これを加熱あるいは光照射することで重合反応を開始すれば良い。また、この重合反応の条件も、アクリル系単量体を重合させる場合の一般的なものでよい。
上記第一工程において、全単量体のうち、重合率で全体の5〜40質量%(以下、「%」で示す)が重合された時点で、(2)の工程(以下、「第二工程」という)に移る。
この第二工程へ移るタイミングが、上記の重合率より高い時点であった場合は、高分子量体の含有量が高くなってしまったり、GPCによる2つのピークが見られなくなってしまい曲面貼り付け性が劣るおそれがあり、また、重合率がより低い時点であった場合は、低分子量体の量が多すぎたり、GPCによる2つのピークが見られなくなってしまい凝集力が劣るおそれがある。
なお、本発明における2つのピークは、下記測定条件におけるGPC溶出曲線においてみられるものであり、重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算により求める。
<測定条件>
装 置:HLC−8120(東ソー(株)製)
カラム:G7000HXL(東ソー(株)製)
GMHXL(東ソー(株)製)
G2500HXL(東ソー(株)製)
サンプル濃度:1.5mg/ml(テトラヒドロフランで希釈)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流 速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
上記第二工程では、連鎖移動剤を反応系中に添加するが、この連鎖移動剤の添加は、一括で、または60分以内で行うことが必要であり、好ましくは一括投入または10分以内の投入である。第二工程での、連鎖移動剤添加開始時の重合率と、連鎖移動剤添加終了時の重合率との差は小さい方が好ましく、0〜20%、さらには、0〜10%程度であることが好ましい。連鎖移動剤添加開始から、終了までに重合率が大きく変化すると、高分子量体の含有量が多くなったり、GPCによる2つのピークが見られなくなり、好ましい粘着性能が発揮できない。なお、この連鎖移動剤は、反応に用いる溶媒に加えて添加することが好ましいが、更にアクリル系単量体を加えても良い。
更に、この第二工程においては、上記連鎖移動剤を添加した後に更に重合開始剤を1ないし数回に分けて添加することが好ましい。なお、この重合開始剤の添加と合わせ、新たに単量体を添加することができ、例えば、連鎖移動剤添加時または添加後に架橋性官能基を有する単量体を添加すれば、低分子量体に架橋性官能基を有する単量体を共重合させることができ、高分子量体に比べ、低分子量体の架橋点を多くすることもできる。
この第二工程の重合反応の条件も、アクリル系単量体の重合の一般的なものでよい。
なお、本発明での重合率は、使用する全単量体に対する重合率であり、下式で求められる。またこれを測定するための、不揮発分率は、精秤したブリキシャーレ(n)にアクリル系共重合体溶液を1g程度入れ、合計重量(n)を精秤した後、105℃で3時間加熱し、その後、このブリキシャーレを室温のデシケータ内に1時間静置し、次いで再度精秤し、加熱後の合計重量(n)を測定し、最後に各重量測定値(n〜n)を用いて下記式から算出する。従って、本発明の実施では、重合率の変化と反応条件の関係を予め実験的にチェックし、この結果から導かれる重合率で、第二工程に入るタイミングを決めることが好ましい。
[数1]
不揮発分率(%)=100×[加熱後重量/加熱前重量]
加熱後重量:n−n
加熱前重量:n−n
重合率(%)=
(不揮発分測定時までの使用単量体重量×不揮発分率)/使用する全単量体量
本発明方法において使用されるアクリル系単量体としては、アクリル系単量体であれば特に限定されるものではないが、架橋して利用することを前提とすれば、単量体中には少量の架橋性官能基を有する単量体(以下、「架橋性単量体」という)が含まれていることが好ましい。
より具体的に、本発明方法における好ましいアクリル系単量体組成の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主単量体とし、これに水酸基あるいはカルボキシル基等の架橋性単量体の組合せを挙げることができる。また、必要により、(メタ)アクリル酸アルコキシエステル、(メタ)アクリル酸オキシアルキレンエステル、芳香族環含有(メタ)アクリル酸、脂肪族環含有(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン等のその他の単量体を配合することもできる。
主単量体である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18の直鎖状、又は、分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、アルキル基の炭素数4〜8のアクリル酸アルキルエステルを全単量体中70%以上、好ましくは90%以上の割合で使用することが好ましい。
また、架橋性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸5−カルボキシペンチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
中でも、後述の架橋剤との反応性から、水酸基含有単量体を使用することが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することがより好ましい。さらには、カルボキシル基含有単量体と水酸基含有単量体とを併用して用いることが初期接着性を向上させる上で好ましい。
更に、得られる粘着剤の初期接着性、応力緩和性を容易に良好な範囲にできることから、水酸基含有単量体を使用し、該水酸基含有単量体を、連鎖移動剤添加前と、連鎖移動剤添加時/添加以後とで、0:10〜3:7の割合になるように添加、重合させることが好ましい。このような割合で添加することで、高分子量重合体と低分子量重合体の水酸基価を、好ましい範囲に調整することが容易となり、良好な接着性能を発揮することができる。高分子量重合体と低分子量重合体の水酸基価の好ましい割合としては、0:10〜1:9程度である。なお、高分子量体と低分子量体の水酸基価は、得られたアクリル系低分子量リッチ重合物をGPC等の分離手段に付して高分子量体と低分子量体を分離し、次いでこれらをJIS K0070法に準拠し、無水酢酸により水酸基をアセチル化した後、過剰の酢酸を水酸化カリウムで中和滴定することによって求められる。
上記した架橋性単量体の量は、全単量体中、0.1ないし30%であることが好ましく、0.5ないし10%であることがより好ましい。また、本願発明の効果を阻害しない範囲でその他の単量体を共重合することができ、その他の単量体の量は、20%以内であることが望ましい。
一方、本発明方法において利用される重合開始剤には、特段制約はなく、公知のラジカル重合反応用の反応開始剤が利用できる。この重合開始剤の例としては、2,2'−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルおよび2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルのようなアゾ系開始剤;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシル−パーオキシジカーボネート、t−ブチルパ−オキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパ−オキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパ−オキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンおよび2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンのような過酸化物系開始剤等が挙げられる。
本発明の第一工程と第二工程で使用する重合開始剤は同一の重合開始剤でもよく、異なる重合開始剤を用いても良い。また、第二工程における重合開始剤の添加は、1回よりも複数回に分けて行うことが好ましい。
また、本発明の第二工程で使用する連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、チオグリコール酸ブチル;プロパンチオール類;ブタンチオール類;チオホスファイト類等のチオール化合物、四塩化炭素、四臭化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3-クロロ-1-プロペン等のハロゲン化合物、アルコールやメタクリレート等の連鎖移動定数の大きい化合物等を使用することができ、好ましいものとしては、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のチオール化合物が分子量制御が容易であり好ましい。
この連鎖移動剤は、上記のように一括で、または60分以内の時間をかけて連続的あるいは間歇的に添加することが好ましい。この連鎖移動剤の添加にかかる時間が、長すぎる場合は、GPCによる分子量ピークが単一ピークとなり、得られる粘着剤の初期接着性と曲面貼り付け性を両立することができないという問題が生じることがある。
本発明においては、第二工程での最後の重合開始剤の添加後、十分に反応を進行させることで、目的とするアクリル系低分子量リッチ重合物を得ることができる。
このようにして得られるアクリル系低分子量リッチ重合物は、次の特性、(a)〜(c

(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)の溶出曲線において、2つ
のピークトップが観察される、
(b)2つのピークトップの間の最下部において、Mw20〜200万の高分子量体
と、Mw20万未満の低分子量体に分けられる、
(c)GPCにおける高分子量体と低分子量体の面積比が、5〜40:60〜95で
ある
を有するものである。
そして、このアクリル系低分子量リッチ重合物は種々の用途に利用できるが、架橋剤および必要によりその他の成分を配合し、当該重合物中の架橋性官能基と架橋させて粘着剤組成物とすることが望ましい。
より具体的に、本発明のアクリル系低分子量リッチ重合物を利用して粘着剤組成物を調製するには、前記の重合物と架橋剤および必要な場合はその他成分を適当な溶媒中で混合した後、粘着シートの基材となるPETフィルム等の樹脂フィルム、不織布、ウレタンフォーム等の発泡体等の基材上に塗工し、次いで溶剤を揮散させることで、層状の粘着剤組成物を形成することができる。
上記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましく、具体的には、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびそれらをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させた化合物、これらポリイソシアネート化合物のビュレット型化合物やイソシアヌレート化合物、これらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型の分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、このうちでもトリレンジイソシアネート、及び、その誘導体が好ましい。また、使用可能なその他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、粘着付与樹脂等が挙げられ、これらは本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
粘着剤組成物を製造する場合の架橋剤の配合量は、アクリル系低分子量リッチ重合物中の架橋性官能基の量により相違するが、一般には、重合物100質量部に対し、0.01ないし20質量部であることが好ましい。
また、粘着シートの基材としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ウレタンフォーム等の発泡体基材、金属箔、布、不織布、織布、紙、及びこれらの基材上に表面処理されたもの等が利用され、上記粘着シート用フィルム上での粘着剤組成物層の厚みは、通常10〜50μm、好ましくは10〜30μm程度である。
以上のようにして得られる粘着シートは、初期接着性と応力緩和性の二つの性能が優れているものである。より具体的には、逆R面に対して不織布(フェルト)基材上に粘着剤層を形成した粘着テープを貼り付け80℃で24時間静置した際に浮きを生じない程度の初期接着性を有し、また、R面に発泡体基材上に粘着剤層を形成した粘着テープを貼り付け80℃で24時間静置した際に浮きを生じない程度の応力緩和性を有するものである。
従って、この粘着シートは、曲面を有する被着体に対して利用することができ、特に、自動車内装材用としての利用が好適である。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
実 施 例 1
(1)重合体の製造−1:
攪拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、44.97質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.03質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から25分後に、反応装置中に0.1質量部のn−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び1.03質量部の2HEAを添加した。更に90℃〜80℃に保ちながら、反応を進めた後、反応開始から50分後に酢酸エチルに溶解したパーヘキシルO(PHO;日油(株)社製;開始剤)0.16部およびパーヘキシルPV(HPV;日油(株)社製;開始剤)0.4部を30分間隔で5回に分けて滴下し、5時間反応させて、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の30%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、GPC(HLC−8120GPC;東ソー社製)により分析した結果、GPC溶出曲線において高分子量体と低分子量体の2つのピークトップがあるものであった。高分子量体極大ピークと低分子量体極大ピークとの間にある極小ピークにおいて、高分子量体と低分子量体を分離し、高分子量体と低分子量体をそれぞれ分析すると、高分子量体のMwは、約60万であり、低分子量体のMwは、約10万であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約70%、高分子量体の割合は約30%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.48mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は6.9mgKOH/gであった。
(2)粘着シートの製造:
上記(1)で得られた重合物の固形分100重量部に対し、3重量部のL−45(綜研化学社製;イソシアネート系架橋剤)、15重量部のスーパーエステルA100(荒川化学工業社製;粘着付与樹脂)、10重量部のペンセルD−135(荒川化学工業社製;粘着付与樹脂)および80重量部の酢酸エチルの混合物を添加し、十分に混合した。
次いでこれを、剥離紙(リンテック(株)社製EKR−78D)上に乾燥後の厚さが60μmになるように塗工し、80℃の乾燥機で2分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで粘着剤層面に厚さ5mm、坪量250g/mのフェルト基材またはウレタンフォーム基材(ECS、5mm厚、イノアック社製)を貼り合わせ、23℃、65%RHで7日間エージングを行いフェルト基材粘着シートおよびウレタンフォーム粘着シートを得た。
実 施 例 2
重合体の製造−2:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、37質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.01質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から15分後に、反応装置中に5質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び8.99質量部の2HEAを添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の20%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約80万、低分子量体のMwは、約1万であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約80%、高分子量体の割合は約20%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.24mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は54.28mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
実 施 例 3
重合体の製造−3:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、38.01質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.1質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から35分後に、反応装置中に1質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び7.89質量部の2HEAを添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の40%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約40万、低分子量体のMwは、約5万であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約60%、高分子量体の割合は約40%であった。また、高分子量体の水酸基価は1.21mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は63.5mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
実 施 例 4
重合体の製造−4:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、37質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.01質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から5分後に、反応装置中に0.1質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び8.99質量部の2HEAを添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の5%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約80万、低分子量体のMwは、約10万であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約95%、高分子量体の割合は約5%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.97mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は45.7mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
比 較 例 1
比較重合体の製造−1:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、45.77質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.09質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から1時間30分後に、反応装置中に5質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び0.14質量部の2HEAを添加した。これ以降は、実施例1と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の90%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約60万、低分子量体のMwは、約5000であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約10%、高分子量体の割合は約90%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.48mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は6.9mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
比 較 例 2
比較重合体の製造−2:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、44.97質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.03質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から25分後に、反応装置中に20質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び1質量部の2HEAを添加した。これ以降は、実施例1と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の30%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約60万、低分子量体のMwは、約5000であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約70%、高分子量体の割合は約30%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.48mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は6.9mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
比 較 例 3
比較重合体の製造−3:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、37質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、9質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から15分後に、反応装置中に5質量部のn−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)の添加を開始し、100分かけて連鎖移動剤を添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の20%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は100分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、ピークトップは1つしか存在せず、そのMwは約30万であった。また、水酸基価は43.47mgKOH/g、であった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
比 較 例 4
比較重合体の製造−4:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、38.12質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.01質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から25分後に、反応装置中に5質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)及び7.87質量部の2HEAを添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の30%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約30万、低分子量体のMwは、約5000であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約70%、高分子量体の割合は約30%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.24mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は54.28mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
比 較 例 5
比較重合体の製造−5:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、37質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、9質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から15分後に、反応装置中に0.05質量部のノルマルドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)を添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の5%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、ピークトップは1つしか存在せず、そのMwは約50万であった。また、水酸基価は43.47mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
比 較 例 6
比較重合体の製造−6:
実施例1で用いたのと同じ反応装置に、37質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、9質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および40.5質量部の酢酸エチルを仕込み、パーヘキサHC(日油(株)社製;開始剤)0.05質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら90℃に昇温した後、反応を開始させた。反応開始から15分後に、反応装置中に0.05質量部のパーヘキサHCを添加した。これ以降は、実施例と同様にして、目的の重合物を得た。
連鎖移動剤添加時の重合率は、全使用単量体の30%であり、連鎖移動剤添加開始から添加終了までにかかった時間は5分であった。
得られた重合体を、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、ピークトップは1つしか存在せず、そのMwは約60万であった。また、水酸基価は43.47mgKOH/gであった。
上記重合体について、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
参 考 例
(1)実施例1で用いたのと同じ反応装置に、45.9質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、0.1質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)および90質量部の酢酸エチルを仕込み、これに0.1質量部のアゾビスイソニトリル(AIBN;大塚化学(株)社製;開始剤)を2質量部の酢酸エチルに加えたものを添加し、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温し、反応を開始させた。反応開始から1時間後に、0.1質量部のAIBNを0.2質量部の酢酸エチルに加えたものを添加し、沸点まで昇温し反応を行った。更に反応開始から2時間後に、0.2質量部のAIBNを0.2質量部の酢酸エチルに加えたものを添加し、その状態で4時間反応を行ない、高分子量のアクリル系重合体を得た。
(2)実施例1で用いたのと同じ反応装置に、44.57質量部のアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、50質量部のアクリル酸ブチル(n−BA)、1.43質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(2HEA)、4質量部のアクリル酸(AA)、0.05質量部のノルマルドデシルメルカプタン(NDM)および90質量部の酢酸エチルを仕込み、これに0.1質量部のAIBNを2質量部の酢酸エチルに加えたものを添加し、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温し、反応を開始させた。反応開始から1時間後に、0.1質量部のAIBNを0.2質量部の酢酸エチルに加えたものを添加し、沸点まで昇温し反応を行った。更に反応開始から2時間後に、0.2質量部のアゾビスイソニトリルAIBNを0.2質量部の酢酸エチルに加えたものを添加し、その状態で4時間反応を行ない、低分子量のアクリル系重合体を得た。
(3)上記(1)で得た高分子量のアクリル系重合体溶液の固形分30質量部と、(2)で得た低分子量のアクリル系重合体溶液の固形分70質量部を混合して高分子アクリル系重合体と低分子量アクリル系重合体のブレンド(以下、「ブレンドポリマー」という)を調製した。
このブレンドポリマーを、実施例1と同様にGPCにより分析した結果、高分子量体と低分子量体のピークトップが2つ存在するものであり、高分子量体のMwは、約60万、低分子量体のMwは、約10万であった。また、それらのピーク面積から求めた低分子量体の割合は約70%、高分子量体の割合は約30%であった。また、高分子量体の水酸基価は0.48mgKOH/g、低分子量体の水酸基価は6.9mgKOH/gであった。
上記ブレンドポリマーについて、実施例1(2)に準じて粘着シートを調製した。
試 験 例 1
粘着シートの性能測定:
上記各実施例および比較例で得られた粘着シートをサンプルとして用い、それぞれ、初期接着性および応力緩和性を評価した。評価に用いているR面、逆R面は SUS製で、曲率半径が40mmのものであった。
また、初期接着性は、フェルト基材粘着シート(250×250mm)を逆R面(SUS製、曲率半径40mm)に貼付けし、80℃の環境下で1日放置し、浮きの有無を確認し、浮きなしを○、浮きありを×とした。応力緩和性は、ウレタンフォーム粘着シート(250×250mm)をR面(SUS製、曲率半径40mm)に貼付けし、80℃で1日放置し、その後の浮きの有無を確認し、浮きなしを○、浮きありを×として評価した。これらの結果を表1に示した。
Figure 0005764334
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた重合体を用いて調製した粘着剤組成物は、初期接着性および応力緩和性の双方に優れたものであった。これに対し、比較例1ないし6で得られた重合体を用いて調製した粘着剤組成物は、初期接着性または応力緩和性の何れか一方において劣るものであった。なお、参考例は高分子量ポリマーと低分子量ポリマーをブレンドして調製しており、初期接着性・応力緩和性においては良好な評価となっているものの、作業工程数が多くなり生産性が悪く、また、2度に分けて重合するため使用される溶剤量も多くなるため環境に対する影響も懸念される。
本願発明のアクリル系低分子量リッチ重合物を用いて得られる粘着シートは、初期接着性と応力緩和性の二つの性能が優れているものであり、特に曲面を有する被着体に対して有利に利用することができるものである。
従って本発明は、広く接着剤分野において利用可能であり、特に、自動車内装材用接着シート用の接着剤組成物等として利用されうるものである。

Claims (3)

  1. アクリル系単量体と、重合開始剤の存在下で重合を開始し、次いで、単量体の重合率が使用する全単量体量に対し、5〜40%となった時点で、全単量体に対し、0.1〜10質量%の連鎖移動剤を、一括で若しくは60分以内の時間をかけて添加し、前記連鎖移動剤の添加後、更に重合開始剤を添加することを特徴とする、低分子量重合体と高分子量重合体を含み、低分子量重合体の方が多いアクリル系重合体の製造方法であって、全単量体中の70質量%以上がアルキル基の炭素数4〜8のアクリル酸アルキルエステルであり、前記アクリル系重合体が次の特性、(a)〜(c)(a)ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、2つのピークトップが観察される、(b)2つのピークトップの間の最下部において、Mw20〜200万の高分子量体と、Mw1万〜20万未満の低分子量体に分けられる、(c)GPCにおける高分子量体と低分子量体の面積比が、5〜40:60〜95であるを有することを特徴とするアクリル系重合体の製造方法。
  2. 連鎖移動剤の添加と同時に、または添加後にアクリル系単量体を添加する請求項記載のアクリル系重合体の製造方法。
  3. 添加するアクリル系単量体が、架橋性官能基を有するものである請求項記載のアクリル系重合体の製造方法。
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