以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
図1には、本実施形態に係る車両用ドア構造が適用されたフロントサイドドアが車両内側から見た状態で示されている。また、図2には、図1中の2−2線におけるフロントサイドドアの縦断面図が示されている。これらの図に示されるように、車両の側部(図示省略)には車両用ドアとしてのフロントサイドドア10が設けられており、フロントサイドドア10は、車両の側部に設けられたフロントドア開口部(図示省略)に開閉可能に取り付けられている。フロントサイドドア10は、車両幅方向外側に配置されるドアアウタパネル(図示省略)と、車両幅方向内側に配置されるドアインナパネル14と、を含んで構成されたドア本体12を備えている。ドアインナパネル14の上縁部14Aを除く端縁部14Bが、ドアアウタパネル(図示省略)の上縁部を除く端縁部とヘミング加工によって一体化されることで、ドアインナパネル14とドアアウタパネルとが閉断面構造に形成されている。フロントサイドドア10には、本実施形態の車両用ドア構造28が適用されている。
また、フロントサイドドア10は、ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアアウタパネル(図示省略)の上縁部との対向部の隙間からドア本体12の内部に挿入されて車両上下方向に昇降可能に配置されたウィンドガラス(ドアガラス)18を備えている。ドア本体12の車両上部側には、ウィンドガラス18を昇降時に案内するためのドアフレーム20が車両側面視にて門形に取付けられている。すなわち、ドア本体12は、車両側面視にてドアフレーム20の内側に配置されたウィンドガラス18を開閉可能に支持している。
図2に示されるように、ドアインナパネル14の上部の車両幅方向内側にはドアインナリインフォース24が配置されており、ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の上端に形成された縦壁部24Aとが面接触された状態で溶接等により接合されている。ドアインナリインフォース24の縦壁部24Aの車両上下方向中間部には、車両幅方向内側に突出する湾曲面状の突出部24Bが形成されている。
車両用ドア構造28では、ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の縦壁部24Aとの接合部に、シール部材の一例としてのインナウェザーストリップ30が取り付けられている。また、ドア本体12における車両幅方向内側(車室26側)には、ドアインナパネル14とドアインナリインフォース24とインナウェザーストリップ30の上端部からドアインナパネル14とドアインナリインフォース24の車両内側面を覆うように樹脂製のドアトリム46が取り付けられている。
図2及び図3に示されるように、インナウェザーストリップ30は、ドアインナパネル14の上部に車両前後方向に沿って設けられる長尺状の部材である。インナウェザーストリップ30は、車両下方側に開口部31を備えた断面が略U字状の基材部32を備えている。すなわち、基材部32は、車両幅方向外側に車両上下方向に沿って延びた縦壁32Aと、縦壁32Aの上部から車両幅方向内側に延びた上壁32Bと、上壁32Bの車両内側端部から車両下方側に延びた縦壁32Cと、を備えている。車両幅方向外側に配置された縦壁32Aは、ウィンドガラス18と対向するように配置されており、縦壁32Aの下端部は、車両幅方向内側に配置された縦壁32Cの下端部よりも車両下方側に延在されている。
インナウェザーストリップ30には、基材部32の上壁32Bの上面に縦壁32Aに沿って車両上方側に突出した突片(突出部)34が設けられている。突片34の上端は、ドアトリム46の上端部46Aの内面と近接する位置まで延びている。
インナウェザーストリップ30は、基材部32の縦壁32Aの外側面からウィンドガラス18側に突出するように延びた弾性変形可能な2枚のシールリップ36を備えている。2枚のシールリップ36は、縦壁32Aの車両上下に並列に配置されており、車両正面視(車両背面視)にて縦壁32Aの外側面から車両斜め上方に延びている。また、インナウェザーストリップ30は、縦壁32Aの上方に延びた突片34と上側のシールリップ36の上面との間を繋ぐ連結壁38を備えている。すなわち、連結壁38は、突片34と上側のシールリップ36の上面との間に橋渡しされている。さらに、上側のシールリップ36の突出方向の中間部には、開口部の一例としての円形の貫通孔40が設けられている。
インナウェザーストリップ30の基材部32は、車両下方側の開口部31がドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の縦壁部24Aとの接合部に外挿されて複数のクリップ(図示省略)により固定されている。
基材部32及び2枚のシールリップ36は、ドア本体12の車両前後方向に沿って配置されている(図3参照)。2枚のシールリップ36は、ウィンドガラス18が昇降する軌道と交差する方向に延びており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に摺接することで、ウィンドガラス18とのシール性が確保されている。
貫通孔(開口部)40は、上側のシールリップ36の突出方向の中間部であって、ウィンドガラス18と対向する位置に形成されており、貫通孔40のウィンドガラス18と反対側には、上側のシールリップ36と基材部32(縦壁32A及び突片34)と連結壁38との3部材で囲まれた閉空間(閉空間部)Sが構成されている。言い換えると、ウィンドガラス18に対して上側のシールリップ36の背後に、貫通孔40と連通する閉空間Sが形成されている。ドアインナパネル14の上縁部14Aとドアインナリインフォース24の縦壁部24Aとの接合部に取り付けられたインナウェザーストリップ30の車両前後方向に沿って閉空間Sが配置されている(図3参照)。
貫通孔40は、車両正面視にて上側のシールリップ36の中間部に形成されており、貫通孔40が形成された側に下側のシールリップ(他のシールリップ)36が配置されている。これにより、貫通孔40は、2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に配置されている。図3に示されるように、貫通孔40は、上側のシールリップ36の長手方向(車両前後方向)に沿って所定の間隔で複数形成されている。本実施形態では、複数の貫通孔40は略同じ大きさの円形形状とされている。
また、突片34は、基材部32の車両前後方向のほぼ全長に設けられている。連結壁38の一端が突片34の外側面に繋がれていることで、車両正面視(車両背面視)にて連結壁38が突片34の外側面からシールリップ36側に向けて下降するように配置されている。
また、インナウェザーストリップ30には、上壁32Bの上面にドアトリム46の上端部46Aの内面(裏面)に当接するリップ30Aが形成されている。さらに、インナウェザーストリップ30の縦壁32Aの内側面には、ドアインナパネル14側に延びた2枚のリップ30B、30Cと、2枚のリップ30B、30Cの下方側でドアインナパネル14に当接するように延びたリップ30Dと、が形成されている。
インナウェザーストリップ30のシールリップ36及び連結壁38は、ゴム又は樹脂等の弾性体により形成されている。インナウェザーストリップ30は、押し出し成形により形成されている。本実施形態では、基材部32とシールリップ36と連結壁38とが一体成形されており、別部品の連結壁38の両端部を基材部32の突片34と上側のシールリップ36の上面に接着し、又はクリップ等により固定する場合と比較して、部品点数の増加や、固定のための後工程が不要となる。
ドアトリム46は、上端部46Aがインナウェザーストリップ30の車両上方側から車両幅方向内側に回り込むように配置されている。インナウェザーストリップ30の上壁32Bのリップ30Aがドアトリム46の上端部46Aの内壁部(裏面)に当接することで、インナウェザーストリップ30とドアトリム46とのシール性が確保されている。また、インナウェザーストリップ30の縦壁32Aのリップ30Dがドアインナパネル14に当接することで、インナウェザーストリップ30とドアインナパネル14とのシール性が確保されている。
次に、本実施形態の作用並びに効果について、図5〜図11を用いて説明する。
図5には、車両用ドア構造28に用いられるインナウェザーストリップ30の上側のシールリップ36と基材部32(縦壁32A及び突片34)と連結壁38とで形成された閉空間Sが、車両前後方向に沿った横断面図にて示されている。図5に示されるように、ウィンドガラス18(図2参照)と対向する上側のシールリップ36には、インナウェザーストリップ30の長手方向に沿って複数の貫通孔40が形成されている。上側のシールリップ36のウィンドガラス18と反対側には、複数の貫通孔40と連通する閉空間Sが上側のシールリップ36と基材部32(縦壁32A及び突片34)と連結壁38とで形成されている。インナウェザーストリップ30における上側のシールリップ36と基材部32(縦壁32A及び突片34)と連結壁38とで形成された閉空間Sには、隣り合う貫通孔40の間に、上側のシールリップ36の壁面と直交する方向に仮想の壁39が配置される。これらの仮想の壁39により、上側のシールリップ36の背後(ウィンドガラス18と反対側)に、各貫通孔40とそれぞれ連通する空間S1が形成されている。
図5及び図6に示されるように、このような車両用ドア構造28では、貫通孔40の部分の空気がマス62で、上側のシールリップ36の背後における上側のシールリップ36と基材部32(縦壁32A及び突片34)と連結壁38と仮想の壁39とによる空間S1がバネ64となった1自由度のバネマス系60が構成されている。この1自由度のバネマス系60では、特定の周波数の音が貫通孔40の部分の空気のマス62に当たると、マス62がバネ64の伸縮方向(矢印方向)に激しく振動する。これにより、音のエネルギーが振動エネルギーに変化し、さらに振動エネルギーが空気の粘性抵抗と摩擦により熱エネルギーに変化することで、特定の周波数の音が著しく低減される。
ここで、貫通孔40の貫通方向の長さ(貫通方向の厚み)をl、貫通孔40の面積をS、貫通孔40の背後の空間S1の体積をV、音速をc、貫通孔端の補正値をΔlとすると、音の低減周波数fは、下記の式で表される。なお、貫通孔端の補正値Δlは、貫通孔40の空気が振動すると、空気には粘性があり、周りの空気を引っ張る傾向があるため、周りの空気の振動を補正するものである。
この式に示されるように、音の低減効果が出る周波数は、貫通孔40の大きさと、貫通孔40の背後の空間S1の体積(容積)で決まる。図7には、周波数と音の低減効果との関係のグラフが示されている。図7に示されるように、1自由度のバネマス系60では、共振した場合に(特定の周波数で)著しく音が低減される。また、図7に示されるように、貫通孔40の大きさと、貫通孔40の背後の空間S1の体積(容積)を変更することで、音の低減効果が出る周波数66A、66B、66Cが変化する。
ここで、図4を用いて、第2実施形態に係る車両用ドア構造50について説明する。なお、第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図4に示されるように、車両用ドア構造50が適用されるインナウェザーストリップ52には、車両正面視(車両背面視)にて基材部32の突片34と上側のシールリップ36の上面とを繋ぐ連結壁38の中間部に開口部の一例としての円形の貫通孔54が形成されている。ウィンドガラス18と対向する連結壁38の背面側には、連結壁38と基材部32(縦壁32A及び突片34)と上側のシールリップ36との3部材で囲まれた閉空間(閉空間部)Sが形成されており、閉空間Sは、連結壁38の貫通孔54と連通している。このインナウェザーストリップ52では、車両正面視にて上側のシールリップ36より上方側に貫通孔54が配置されている。言い換えると、貫通孔54は、車外からの音の侵入方向における上側のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の下流側に配置されている。また、図示を省略するが、貫通孔54は、連結壁38の車両前後方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。
この車両用ドア構造50が適用されたインナウェザーストリップ52では、2枚のシールリップ36に対して上方側の連結壁38の突出方向の中間部に貫通孔54を設け、連結壁38と基材部32(縦壁32A及び突片34)と上側のシールリップ36との3部材で囲まれた閉空間Sを形成することで、1自由度のバネマス系60(図6参照)が構成されている。したがって、図6に示されるように、特定の周波数の音が貫通孔54の部分の空気のマス62に当たると、マス62がバネ64の伸縮方向に振動する。これにより、音のエネルギーが振動エネルギーに変化し、さらに振動エネルギーが空気の粘性抵抗と摩擦により熱エネルギーに変化することで、特定の周波数の音が著しく低減される。
図16には、第1比較例の車両用ドア構造300が示されている。車両用ドア構造300では、インナウェザーストリップ302は、略U字状の基材部32と、基材部32の車両幅方向外側の縦壁32Aから車両斜め上方に突出する上下2枚のシールリップ36と、を備えている。この車両用ドア構造300では、第1実施形態の車両用ドア構造28(図2参照)、第2実施形態の車両用ドア構造50(図4参照)等に示すようなウィンドガラス18と対向する貫通孔とその背後の閉空間とは設けられていない。
図8は、周波数と音の低減効果との関係を示すグラフである。このグラフでは、第1比較例の車両用ドア構造300(図16参照)の場合が線86で、第2実施形態の車両用ドア構造50(図4参照)の場合が線84で示されている。このグラフに示されるように、第2実施形態の車両用ドア構造50では、貫通孔とその背後の閉空間とを設けない第1比較例の車両用ドア構造300と比較して、特定の周波数で音の低減効果が大きくなる。
さらに、図9には、第1実施形態の車両用ドア構造28(図2参照)の場合の周波数と音の低減効果との関係が線88で示されている。図9に示されるように、第1実施形態の車両用ドア構造28(図2等参照)では、インナウェザーストリップ30の上側のシールリップ36に貫通孔40を設け、上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に貫通孔40に配置することで、第2実施形態の車両用ドア構造(図4参照)と比較して、音が低減される周波数域が広くなる。
ここで、車両用ドア構造28による音が低減される周波数域が広くなる効果について、より詳細に説明する。
車両用ドア構造28を単純化すると(模式的に示すと)、図10に示されるように、壁体220内の上側のシールリップ36と下側のシールリップ36とが、中央部の連結点222で連結された上下2つのバネ224で繋がれた構造200と、壁体220に形成された貫通孔40を介して閉空間Sを形成する上側のシールリップ36と基材部32と連結壁38を備えた構造210と、が連結された構造となる。この構造では、上側のシールリップ36に形成された貫通孔40の部分の空気がマス62になり、このマス62に閉空間Sのバネ64と、壁体220の閉空間のバネ90の一端とが繋がれると共に、バネ90の他端が連結点222に繋がれている。
一方、図16に示す第1比較例の車両用ドア構造300を単純化した場合は、壁体220内の上側のシールリップ36と下側のシールリップ36とが、中央部の連結点222で連結された上下2つのバネ224で繋がれた構造200となる。すなわち、構造210を連結しない構造200のみでは、矢印Aに示すように下側のシールリップ36との隙間から壁体220内に入射音が入り、矢印Bに示すように上側のシールリップ36との隙間から壁体220の外部に透過音が出る可能性がある。
図10に示す構造をモデル化すると、図11に示されるように、上側のシールリップ36、下側のシールリップ36と壁体220との隙間がマス226で、2枚のシールリップ36の間の閉空間が2つのバネ224、224となった2自由度のバネマス系230に、貫通孔40と閉空間Sを形成する上側のシールリップ36と基材部32と連結壁38とによって構成された1自由度のバネマス系60を追加して連成させた3自由度のバネマス系92となる。
すなわち、構造200(図10参照)に対応するバネマス系230では、特定の周波数の音がマス226に当たると、マス226がバネ224、224の伸縮方向(矢印方向)に振動し、音のエネルギーが振動エネルギーに変化する。このバネマス系230は、上下対称であるので、1自由度のバネマス系と同等となり、1ピークの共振となる。
さらに、バネマス系230に追加されたバネマス系60(図10に示す構造210に対応)では、特定の周波数の音が貫通孔40の部分の空気のマス62に当ると、マス62がバネ64の伸縮方向(矢印方向)に激しく振動する。これにより、音のエネルギーが振動エネルギーに変化し、さらに振動エネルギーが空気の粘性抵抗と摩擦により熱エネルギーに変化することで、特定の周波数の音が著しく低減される。その際、バネマス系230は上下対象であるので、1自由度のバネマス系と同等となるため、本実施形態のバネマス系92は2自由度のバネマス系と同等となる。このため、図9に示されるように、音の低減効果の線88は2ピークの共振となり、幅広い周波数で音の低減効果を得ることができる。
したがって、上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18とが接触する接触部の間に、貫通孔40を設けた車両用ドア構造28とすることで、幅広い周波数で音の低減効果が現れる。このため、車外から車室26内へ侵入する音の遮音効果をより一層高めることができる。
図17には、第2比較例に係る車両用ドア構造が示されている。図17に示されるように、車両用ドア構造310に用いられるインナウェザーストリップ312は、車両正面視にて車両下方側に開口が形成された断面が略U字状の基材部32と、基材部32の車両外側の縦壁314Aと共に閉空間Sを形成する略矩形状の壁体314と、壁体314の車両外側の縦壁314Bからウィンドガラス18側に突出するように延びた上下2枚のシールリップ36と、を備えている。さらに、インナウェザーストリップ312における壁体314の車両外側の縦壁314Bには、上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に貫通孔40が形成されている。すなわち、略矩形状の壁体314の縦壁314Bに貫通孔40を設けることで、貫通孔40と連通する閉空間Sが形成されている。
ドア本体12の車両幅方向内側には、インナウェザーストリップ312の上端部からドアインナパネル14とドアインナリインフォース24の車両内側面を覆うように樹脂製のドアトリム320が取り付けられている。
この車両用ドア構造310では、略矩形状の壁体314の縦壁314Bに貫通孔40が設けられており、貫通孔40と閉空間Sを形成する壁体314によってバネマス系60(図11参照)が構成されている。このため、特定の周波数で音の低減効果が現れ、車外から車室26内へ侵入する音の遮音効果を高めることができる。しかし、インナウェザーストリップ312に略矩形状の壁体314が設けられており、閉空間Sを作るための車両幅方向のスペースが必要となる。このため、矢印Cに示されるように、略矩形状の壁体314を設けない構造(例えば、図16に示す第1比較例の車両用ドア構造300)のドアトリム46に比べて、ドアトリム320が車両幅方向内側に寄ることになり、車室26内の乗員の居住スペースを小さくしてしまう。
これに対して、第1実施形態の車両用ドア構造28(図2参照)では、上側のシールリップ36の上方に突片34と上側のシールリップ36の上面とを繋ぐ連結壁38を設け、上側のシールリップ36に貫通孔40を形成することで、上側のシールリップ36と連結壁38と基材部32(縦壁32A及び突片34)とで囲まれた閉空間Sを形成している。すなわち、閉空間Sを上側のシールリップ36の上方側に設けることで、車両幅方向内側に新たなスペースを確保する必要がない。このため、第1比較例の車両用ドア構造300(図16参照)と比較すると、インナウェザーストリップ30の車両幅方向の寸法や、ドアトリム46の配置構造を変更することなく、インナウェザーストリップ30に貫通孔40と連通する閉空間Sを設定することができる。このため、車室26内の乗員の居住スペースが小さくなることを防止又は抑制することができる。
次に、図12を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図12に示されるように、車両用ドア構造100に用いられるインナウェザーストリップ102は、基材部32の縦壁32Aから車両斜め上方側に突出する上下2枚のシールリップ36を備えており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に接触している。インナウェザーストリップ102は、下側のシールリップ36の下方側に、縦壁32Aと下側のシールリップ36の下面との間を繋ぐ連結壁104を備えている。連結壁104は、車両正面視にて略L字状に形成されている。また、車両正面視にて下側のシールリップ36の突出方向の中間部には、開口部の一例としての円形の貫通孔40が形成されており、貫通孔40の背後(ウィンドガラス18と反対側)に下側のシールリップ36と連結壁104と縦壁32Aの3部材で囲まれた閉空間(閉空間部)Sが形成されている。本実施形態では、連結壁104は、ゴム等の弾性体で形成されており、下側のシールリップ36と縦壁32Aと一体成形されている。
また、上側のシールリップ36の突出方向の中間部にも貫通孔40が形成されており、貫通孔40の背後(ウィンドガラス18と反対側)に上側のシールリップ36と連結壁38と基材部32(縦壁32A及び突片34)の3部材で囲まれた閉空間(閉空間部)Sが形成されている。すなわち、音の侵入方向における上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に、下側のシールリップ36の貫通孔40と上側のシールリップ36の貫通孔40とが配置されている。本実施形態では、連結壁38は、ゴム等の弾性体で形成されており、上側のシールリップ36と基材部32の突片34と一体成形されている。
このような車両用ドア構造100では、音の侵入方向における上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に、下側のシールリップ36の貫通孔40と上側のシールリップ36の貫通孔40が配置されると共に、それぞれの貫通孔40の背後に閉空間Sを形成することで、2つのバネマス系60(図6参照)が構成されている。したがって、図6に示されるように、特定の周波数の音が貫通孔40の部分の空気のマス62に当たると、マス62がバネ64の伸縮方向に振動する。これにより、特定の周波数の音が著しく低減され、遮音性を向上することができる。
また、下側のシールリップ36と上側のシールリップ36のそれぞれの貫通孔40の背後に閉空間Sを形成し、2つのバネマス系60が構成されることで、車外から車室26内へ侵入する音の遮音効果をより確実に高めることができる。
次に、図13を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図13に示されるように、車両用ドア構造110に用いられるインナウェザーストリップ112は、基材部32の縦壁32Aから車両斜め上方側に突出する上下2枚のシールリップ36を備えており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に接触している。インナウェザーストリップ112は、上側のシールリップ36の下方側に、縦壁32Aと上側のシールリップ36の下面との間を繋ぐ連結壁114を備えている。連結壁114は、車両正面視にて略L字状に形成されている。また、車両正面視にて連結壁114の突出方向の中間部には、開口部の一例としての円形の貫通孔40が形成されており、貫通孔40の背後(ウィンドガラス18と反対側)に連結壁114と上側のシールリップ36と縦壁32Aの3部材で囲まれた閉空間(閉空間部)Sが形成されている。本実施形態では、連結壁114は、ゴム等の弾性体で形成されており、上側のシールリップ36と縦壁32Aと一体成形されている。
このような車両用ドア構造110では、貫通孔40は、車両正面視にて上側のシールリップ36の連結壁114に形成されており、貫通孔40が形成された側に下側のシールリップ(他のシールリップ)36が配置されている。これにより、音の侵入方向における上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に貫通孔40が配置されている。すなわち、音の侵入方向における上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に、貫通孔40と貫通孔40の背後の閉空間Sにより、バネマス系60(図6参照)が構成されている。したがって、特定の周波数の音が著しく低減され、車外から車室26内へ侵入する音の遮音効果を高めることができる。
なお、第4実施形態では、連結壁114に貫通孔40が形成されているが、これに限定されず、車両正面視にて上側のシールリップ36の中間部に閉空間Sと連通する貫通孔を形成する構成でもよい。
次に、図14を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第5実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第4実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図14に示されるように、車両用ドア構造120に用いられるインナウェザーストリップ122は、基材部32の縦壁32Aから車両斜め上方側に突出する上下2枚のシールリップ36を備えており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に接触している。インナウェザーストリップ122は、車両正面視にて上側のシールリップ36の下面の中間部と下側のシールリップ36の上面の中間部との間を繋ぐ連結壁124を備えている。連結壁124は、車両正面視にてウィンドガラス18とほぼ平行に車両上下方向に沿って配置されている。また、車両正面視にて連結壁124の上下方向の中間部には、開口部の一例としての円形の貫通孔40が形成されており、貫通孔40の背後(ウィンドガラス18と反対側)に連結壁124と上下2枚のシールリップ36と縦壁32Aの4部材で囲まれた閉空間(閉空間部)Sが形成されている。本実施形態では、連結壁124は、ゴム等の弾性体で形成されており、上下2枚のシールリップ36と一体成形されている。
このような車両用ドア構造120では、上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に、貫通孔40が配置されると共に、貫通孔40の背後に閉空間Sを形成することで、バネマス系60(図6参照)が構成されている。したがって、特定の周波数の音が著しく低減され、車外から車室26内へ侵入する音の遮音効果を高めることができる。
なお、第5実施形態では、連結壁124に貫通孔40が形成されているが、これに限定されず、車両正面視にて上側のシールリップ36又は下側のシールリップ36の中間部に閉空間Sと連通する貫通孔を形成する構成でもよい。
次に、図15を用いて、本発明に係る車両用ドア構造の第6実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第5実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図15に示されるように、車両用ドア構造130に用いられるインナウェザーストリップ132は、基材部32の縦壁32Aから車両斜め上方側に突出する上下2枚のシールリップ36を備えており、シールリップ36の先端がウィンドガラス18に接触している。インナウェザーストリップ132は、下側のシールリップ36の上方側に、縦壁32Aと下側のシールリップ36の上面の間を繋ぐ連結壁134を備えている。連結壁114は、車両正面視にて縦壁32Aから下側のシールリップ36側に下降するように配置されている。また、車両正面視にて連結壁134の突出方向の中間部には、開口部の一例としての円形の貫通孔40が形成されており、貫通孔40の背後(ウィンドガラス18と反対側)に連結壁134と下側のシールリップ36と縦壁32Aの3部材で囲まれた閉空間Sが形成されている。本実施形態では、連結壁134は、ゴム等の弾性体で形成されており、下側のシールリップ36と縦壁32Aと一体成形されている。
このような車両用ドア構造130では、貫通孔40は、車両正面視にて下側のシールリップ36の連結壁134に形成されており、貫通孔40が形成された側に上側のシールリップ(他のシールリップ)36が配置されている。これにより、音の侵入方向における上下2枚のシールリップ36の先端とウィンドガラス18との接触部の間に、貫通孔40が配置されると共に、貫通孔40の背後の閉空間Sにより、バネマス系60(図6参照)が構成されている。したがって、特定の周波数の音が著しく低減され、車外から車室26内へ侵入する音の遮音効果を高めることができる。
なお、第6実施形態では、連結壁134に貫通孔40が形成されているが、これに限定されず、車両正面視にて下側のシールリップ36の中間部に閉空間Sと連通する貫通孔を形成する構成でもよい。
なお、第1〜第6実施形態の車両用ドア構造では、シールリップ36は2枚であるが、シールリップ36を3枚以上に増やしてもよい。
また、第1〜第6実施形態では、ウィンドガラス18と対向する位置に形成された複数の貫通孔40は、略同じ大きさの円形形状とされているが、複数の貫通孔(開口部)を異なる形状としてもよい。また、貫通孔は、円形形状とされているが、三角形、四角形、多角形など他の形状としてもよい。なお、貫通孔の形状は問わないが、製造上はトリムで貫通孔を開けるため、円形が好ましい。
また、上述した第1〜第6実施形態では、シール部材としてインナウェザーストリップを用いて本発明の車両用ドア構造を適用したが、ウィンドガラス18よりも車両幅方向外側のドアアウタパネルに取り付けられるベルトモール(シール部材)に本発明の車両用ドア構造を適用してもよい。
また、上述した第1〜第6実施形態では、車両用ドア構造をフロントサイドドアに設けたが、これに限定されず、リアサイドドアなど他の車両用ドアに適用することができる。