JP5756068B2 - ナトリウム二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、ナトリウム二次電池に関する。特に本発明は、ナトリウム二次電池の正極材料にプルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(式中、0<x≦4.0))を用いた、コスト性及びサイクル特性に優れたナトリウム二次電池に関する。
ナトリウムイオンの挿入及び脱離反応を用いるナトリウム二次電池は、現在、広範に使用されているリチウム二次電池よりも、ナトリウムの資源の優位性から、コスト性に優れた二次電池として期待されており、電極材料や電解質材料に関する研究開発が進められている。
Parkらは、非特許文献1において、NaTi2(PO43が、有機電解液中で正極として、また水系電解液中で負極として使用できること、そして、当該材料を使用したナトリウム二次電池が、電流密度2.0mA/cm2の放電の場合、両電解液の場合で共に約120mAh/gの比較的大きな放電容量を示すことを報告している。
また、特許文献1では、NaCoO2が非水電解質中で充放電可能であり、5回という少ないサイクル回数であるものの、94%の高い放電容量維持率を有することが記載されている。
特開2007−35283号公報
Sun Il Park et al., Journal of The Electrochemical Society, 158 (10) A1067-A1070 (2011).
上記のように、これまでにリチウム二次電池に匹敵するレベルの放電容量を有するナトリウム二次電池が報告されているが、上記文献のように電極材料にレアメタルを含む場合が多く、コスト的に不利であるとともに、十分なサイクル特性が得られないという問題があった。
従って、本発明は、コスト性、及び、サイクル特性に優れたナトリウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、ナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含む正極、金属ナトリウム、ナトリウム含有物質、又はナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含む負極、及び、ナトリウムイオン導電性を有する電解質を含むナトリウム二次電池であり、前記正極のナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質が、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)を含み、前記正極は、前記プルシアンブルー(Fe 4 [Fe(CN) 6 3 )を、カーボン粒子と混合して、ボールミル処理を行った材料を含み、前記電解質が、ナトリウムイオンを含む有機電解液、ナトリウムイオンを通す固体電解質、ナトリウムイオンを通すポリマー電解質のうちのいずれかであることを特徴とする。
本発明では、前記正極の正極材料は、プルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(式中、0<x≦4))を含むものであってもよい。
本発明によれば、コスト性及びサイクル特性に優れたナトリウム二次電池を供することができる。
本発明のナトリウム二次電池の構成を示す概略図である。 本発明の一実施形態のナトリウム二次電池の構造を示す概略図である。 図2に示した本発明の実施形態のナトリウム二次電池の充放電曲線を示す図である。
本発明は、ナトリウム二次電池、特に、正極の材料としてプルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))を含むものに関する。
以下に、本発明のナトリウム二次電池の実施形態について説明する。
本発明のナトリウム二次電池は、正極、負極及び電解質を少なくとも含む。正極はナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含むものであり、負極は金属ナトリウム、ナトリウム含有物質、若しくはナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含むものであり、電解質はナトリウムイオン導電性を有するものである。
本発明では、正極は、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))を材料として含む。
本発明で使用できるプルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)は、例えば以下のような方法で得ることができる。
市販のフェリシアン化カリウムK3[Fe(CN)6]粉末、塩化鉄FeCl2、塩化ナトリウムNaClを、別々に水などの溶媒に溶解し、それぞれの溶液を、目的とする試料の組成モル比となるように混合し、一昼夜攪拌して、沈殿物を得る。例えば、x=4のプルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)を合成する場合は、モル比で3:4:4になるようにそれぞれの溶液を混合し、沈殿物を調製すればよい。沈殿物は、遠心分離機、吸引ろ過機等の適切な回収手段用いて回収し、乾燥を行う。
本発明のナトリウム二次電池の正極は、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))と、カーボン粉末のようなカーボン材料と混合したものを含むことが好ましい。
上述の正極は、例えば以下のような手段により調製することができるが、本発明はこれらに限定されない。
まず、カーボン粉末(例えばアセチレンブラック粉末などのカーボンブラック類)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような結着剤粉末、及び、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))を混合し、次いでロールプレス機により圧延し、所定サイズに切り抜いてペレット状に成型することにより、正極を調製することができる。
本発明では、正極材料中のカーボン粉末と、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))の均一性及び分散性を向上させ、二次電池の性能を改善するために、正極を製造する際に、カーボン粉末と、プルシアンブルー又はプルシアンブルー類似体を混合し、ボールミル等の粉砕機により粉砕混合し、得られたボールミル(BM)処理混合物に、更に結着剤粉末を混合した後、上記のように圧延成形して正極の電極を形成してもよい。
あるいは、前述のカーボン粉末、結着剤粉末及びプルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))の混合物を有機溶剤(例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP))等の溶媒中に分散してスラリー状にした後、例えば銅箔のような金属箔上に塗布し、乾燥することにより、正極を調製できる。
本発明では、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))(正極物質)を含む正極の導電性を向上させるために、正極物質を導電材であるカーボン粒子と混合し、ボールミル処理を行うことが好ましい。このようなボールミル処理により、より優れた電池特性を得ることができる。ボールミル処理は、12時間未満、好ましくは3〜10時間、より好ましくは、3〜6時間である。
本発明では、ナトリウムイオンを含む有機電解液及びナトリウムイオンを含む水系電解液の両電解液を電解質溶液として用いることができる。更に、本発明の正極を含むナトリウム二次電池は、ナトリウムイオンを通す固体電解質又はポリマー電解質を電解質として用いることもできる。
負極は、金属ナトリウム、ナトリウム含有合金のようなナトリウム含有物質、又はナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含むものであれば特に限定されない。例えば、負極の例としては、金属ナトリウムのシート、又は金属ナトリウムのシートをアルミニウム等の金属箔に圧着したものなどを挙げることができる。このような金属ナトリウムのシートの負極は、金属ナトリウムをプレス機などでシート状に圧延して所望の形状に成形することで調製することができる。また、金属ナトリウムのシートを金属箔に圧着したものは、前記のように調製した金属ナトリウムのシートをアルミニウム等の金属箔に圧着して調製することができる。
また、上記のような金属ナトリウム以外の負極材料として、負極活物質としてナトリウムを主成分として含む合金(例えば、ナトリウム−スズ合金)(ナトリウム含有物質)、又は、ナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能なアモルファスカーボンなどの材料(ナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質)を挙げることができる。これらの負極活物質を含む負極は、例えば、銅箔のような金属箔に、負極活性物質とポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような結着剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような有機溶媒に分散させたスラリーを塗布し、乾燥するというような方法で調製することができる。
電解液としては、ナトリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(NaTFSI)、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF6)などのナトリウムイオンを含む金属塩を、例えば炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)の混合溶媒、EC及び炭酸ジエチル(DEC)などのような混合溶媒、又は炭酸プロピレンのような単独溶媒に溶解した有機電解液、又は、NaOH水溶液、Na2SO4水溶液、NaCl水溶液、NaClO4水溶液などのナトリウムイオンを含む金属塩を水に溶解した水溶液(水系電解液)を挙げることができる。
本発明のナトリウム二次電池の他の電解質として、ナトリウムイオンを通す固体電解質(例えば、75Na2S・25P25、NASICON(Na+ Super Ionic Conductor、Na3Zr2Si2PO12等))、ナトリウムイオンを通すポリマー電解質(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系)などを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明では、ナトリウム二次電池で使用される公知のナトリウムイオンを通す固体電解質又はナトリウムイオンを通すポリマー電解質であれば使用することができる。
本願発明のナトリウム二次電池はまた、セパレータ、電池ケース等の構造材料などの他の要素を含むこともできる。これらの要素についても、従来公知の二次電池に用いられる各種材料が使用でき、特に制限はない。
上記のような正極、負極、電解液等を使用する電池は、コイン形、円筒形、ラミネート形など従来の形状で作製することができる。そして、これらの二次電池の製造方法も従来と同様の方法を用いることができる。
例えば、本発明のナトリウム二次電池は、例えば、図1に示すような、正極及び負極と、これら両極に接する電解質からなる。本発明では、正極及び負極の間にセパレータが含まれていてもよい。有機電解質又は水系電解質を電解質液として用いる場合には、例えば、セパレータに電解質液を含浸させて使用することができる。また、有機電解質又は水系電解質は、ポリマー電解質等に含浸させてもよい。また、固体電解質、ポリマー電解質等を用いる場合には、両極がこれらに接するように配置すればよい。
さらに図1には明記していないが、正極、負極、電解質、セパレータ等を被う電池ケース等を含むことができる。本発明では、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)又はプルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))を正極の材料として用いることが特に好ましい。
より具体的な一実施形態としては、図2に示すようなコインセル型の二次電池として本発明を適用することができる。図2に示されるように、コインセル型の二次電池は、正極1及び負極3を含み、これらの電極の間に電解液を含浸したセパレータ2をさらに含む。さらに二次電池構造体は正極ケース4、ガスケット5、及び負極ケース6を含むことができる。この二次電池は、例えば、上記の正極1、負極3、及び電解液を含浸したセパレータ2を、正極ケース4及び負極ケース6に所望の通りに配置し、各構成要素を配置した両ケースを固定することで調製することができる。
本発明では、セパレータに代えて又は加えて、上述したような固体電解質、ポリマー電解質等を使用することができる。
以下に図面を参照して、本発明のナトリウム二次電池についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、本発明の趣旨及び範囲を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
下記では、正極材料(NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))の調製、及び、実施例1〜14を示す。実施例1〜11は、有機溶媒を用いた有機電解質を使用してナトリウム二次電池を作製した例であり、実施例12は、水系電解質液を使用してナトリウム二次電池を作製した例である。また、実施例13及び14は、それぞれ固体電解質及びポリマー電解質を使用してナトリウム二次電池を作製した例である。
(正極材料の調製)
NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0))の調製
(調製例1)
プルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)の調製
本化合物は、以下の手順で合成した。
まず、市販試薬のフェリシアン化カリウムK3[Fe(CN)6]粉末(関東化学株式会社製)、塩化鉄FeCl2(関東化学株式会社製)、塩化ナトリウムNaCl(関東化学株式会社製)を、別々に蒸留水に溶解した。それぞれの溶液を、目的とする試料の組成モル比となるように混合し、一昼夜攪拌し、沈殿物を得た。本調製例では、x=4のサンプルを合成した。Na4Fe4[Fe(CN)63では、モル比で3:4:4になるようにそれぞれの溶液を混合し、沈殿物を得た。沈殿物は、遠心分離機及び吸引ろ過機を用いて回収し、60℃で1週間の乾燥を行った。乾燥後の沈殿物は、ミキサーで十分に粉砕し、正極材料に用いた。得られた粉末のX線回折測定を行ったところ、不純物の生成がなく、母体結晶構造のプルシアンブルーと同様の回折パターンが得られた。また、粉末のICP分析により、粉末の組成比(モル比)は、Na:Fe:C:N=4:7:18:18であることが分かった。以上の結果より、得られた粉末がNa4Fe4[Fe(CN)63であることを確認した。
(調製例2)
NaxFe4[Fe(CN)63(x=1.0及び3.0)の化合物の調製
他の組成の化合物として、NaxFe4[Fe(CN)63でx=1.0及び3.0の化合物を上記調製例1と同様の手順で調製した。
(参考例)
参考例として、NaxFe4[Fe(CN)63でx=4.1の化合物を上述の調製例1と同様の手順で調製した。NaxFe4[Fe(CN)63(x=4.1)の化合物は、NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0)を用いたナトリウム二次電池と比較するためのナトリウム二次電池の正極材料として使用した。
(実施例1)
(i)ナトリウム二次電池の作製
ナトリウム二次電池は、以下の手順で作製した。
正極は、市販試薬のプルシアンブルー粉末(ACROS社製)、アセチレンブラック粉末(電気化学工業社製)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン社製)を70:25:5の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕・混合し、次いで、ロール成形して、シートペレット状の電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径15mmの円形に切り抜いた。負極は、市販の試薬であるナトリウム塊(関東化学製)を、0.8mmの厚さまでプレスし、直径15mmの円形シート状に成型することによって作製した。電解液は、炭酸エチレン(EC)(キシダ化学製)と炭酸ジメチル(DMC)(キシダ化学製)を体積比1:1で混合して調製した混合溶媒に、1mol/Lの濃度でナトリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(NaTFSI)(キシダ化学製)を溶解することにより調製した。セパレータは、リチウム二次電池用のポリプロピレン製のもの(セルガード社製)を用いた。
ナトリウム二次電池は、図2に示すような2320コイン型のものを製造した。正極は、上記のペレット電極を正極ケース4にセットし、チタンメッシュ(ニラコ製)(図示せず)で覆い、その周縁部をスポット溶接により固定した。負極は、負極ケース6にチタンメッシュ(ニラコ製)(図示せず)をスポット溶接で固定し、その上にナトリウムシートを圧着することにより固定して調製した。次に、ペレットを固定した正極ケースに、セパレータ2をセットし、さらにセパレータ2に電解液を注入し、ナトリウムシートを固定した負極ケースを被せ、コインセルかしめ機で正極ケース4及び負極ケース6をかしめることにより、ポリプロピレン製ガスケット5を含むコインセルを作製した。なお、ナトリウム二次電池の作製は、露点が−85℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス中で行った。
(ii)充放電試験
ナトリウム二次電池の放電試験は、市販の充放電測定システム(北斗電工社製)を用いて、正極の有効面積当たりの電流密度で0.5mA/cm2を通電し、充電終止電圧3.5V、放電終止電圧2.0Vの電圧範囲で充放電試験を行った。電池の充放電試験は、25℃の恒温槽内(雰囲気は通常の生活環境下)で測定を行った。
本実施例で作製したナトリウム二次電池の充放電曲線を、図3に示す。図より、不可逆容量(充電容量と放電容量の差)も小さく、本発明によるナトリウム二次電池は充放電が可能であり、初回放電容量81mAh/g(プルシアンブルー粉末の重量当たりで規格化した)、平均放電電圧2.5Vを示した。表1に、20サイクル目、50サイクル目の放電容量維持率を示す。表より、1サイクル当たり約0.4〜0.5%程度の容量減少しか見られず、安定したサイクル特性を有していることが分かる。
Figure 0005756068
(実施例2)
上記調製例1に従って調製したプルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)を使用して、実施例1と同様の手順で、ナトリウム二次電池の作製及び充放電特性の測定を行った。
表1に、初回サイクルの平均放電電圧及び放電容量、並びに、20サイクル目及び50サイクル目の放電容量維持率を示す。本実施例で示すNa4Fe4[Fe(CN)63は、実施例1のFe4[Fe(CN)63とほぼ同様の放電電圧やサイクル特性を有していることを確認した。また、NaxFe4[Fe(CN)63の化合物でx=1.0及び3.0の試料を合成し、同様の評価を行ったところ、実施例2とほぼ同様の結果が得られた。
また、NaxFe4[Fe(CN)63の化合物でx=4.1の化合物を合成し、実施例1と同様の手順で二次電池を製造し、充放電特性を測定した場合、放電電圧や放電容量は低下した。これは、不純物相の生成に起因すると考えられる。この結果は、本発明で規定したNa含有量の範囲が妥当であることを示している。
以上の結果から、NaxFe4[Fe(CN)63(0<x≦4.0)は、初期状態で結晶構造中にNaイオンを含有しているため、Naイオンを含有していない負極材料(たとえばアモルファスカーボン)と組み合わせてロッキングチェアー型の二次電池を構成することができる。
(実施例3〜6)
プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)粉末とアセチレンブラック粉末を、ボールミル(BM)で粉砕・混合すること(ボールミル処理)により、電池性能の改善を試みた。
プルシアンブルー粉末とアセチレンブラック粉末(重量比70:25)をミキサー中で数分程度混合した。この混合物に、直径7mmのジルコニア製ボールを加え、3時間(実施例3)、6時間(実施例4)、10時間(実施例5)、12時間(実施例6)のBM処理を行った。なお、いずれのBM処理の場合も、プルシアンブルー−アセチレンブラック混合物とボールの混合比率は、重量比で1:10とし、BM処理時の回転速度は300rpmとした。
得られたBM処理後のプルシアンブルー−アセチレンブラック混合物は、PTFEバインダーを更に加え、らいかい機で混合し、実施例1と同様にして正極ペレットを作製した。このペレットを用いて、実施例1と同様にして、コインセルを作製した。また、充放電試験も、実施例1と同様に行った。
充放電試験の結果を、表1に示す。BM処理時間が、6h(6時間)までは特性が改善した。また、6hのBM処理において、50サイクル後の放電容量維持率も90%の高い値を達成した。これは、BM処理により、プルシアンブルー粉末とアセチレンブラック粉末の接触性が向上し、粉末間の界面抵抗が減少したためであると推察される。一方、12hのBM処理では、放電容量などの電池性能は低下した。これは、BM処理時の局所的な熱の発生により、プルシアンブルーの変性が起こったためであると考えられる。このように、本発明では、正極材料の活物質をBM処理することにより、電池性能が改善することが明らかとなった。ただし、BM処理については、試料の粒子サイズや使用するボールの材質や大きさによって最適条件が異なるため、それぞれの場合で最適化を行う必要があると考えられる。
(実施例7〜11)
プルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)粉末とアセチレンブラック粉末を、ボールミル(BM)で粉砕・混合すること(ボールミル処理)により、電池性能の改善を試みた。
プルシアンブルー類似体粉末とアセチレンブラック粉末(重量比70:25)をミキサー中で数分程度、混合した。この混合物に、直径7mmのジルコニア製ボールを加え、3時間(実施例7)、4時間(実施例8)、6時間(実施例9)、10時間(実施例10)、12時間(実施例11)のBM処理を行った。なお、いずれのBM処理の場合も、プルシアンブルー類似体−アセチレンブラック混合物とボールの混合比率は、重量比で1:10とし、BM処理時の回転速度は300rpmとした。
得られたBM処理後のプルシアンブルー類似体−アセチレンブラック混合物は、PTFEバインダーを加え、らいかい機で混合し、実施例1と同様にして正極ペレットを作製した。このペレットを用いて、実施例1と同様にして、コインセルを作製し、充放電試験を行った。
充放電試験の結果を、表1に示す。BM処理時間が、3hまでは特性が改善し、50サイクル後の放電容量維持率も91%の高い値を達成した。これは、BM処理により、プルシアンブルー類似体粉末とアセチレンブラック粉末の接触性が向上し、粉末間の界面抵抗が減少したためであると推察される。一方、4h以上のBM処理では、放電容量などの電池性能は低下した。これは、BM処理時の局所的な熱の発生により、プルシアンブルーの変性が起こったためであると考えられる。このように、本発明では、正極材料の活物質を、3時間を越えない範囲でBM処理することにより、電池性能が改善することが明らかとなった。ただし、BM処理については、試料の粒子サイズや使用するボールの材質や大きさによって最適条件が異なるため、それぞれの場合で最適化を行う必要があると考えられる。
(実施例12)
水系電解液として8mol/L NaOH水溶液、負極材料としてアモルファスカーボンを用いて、実施例1と同様にして、コインセルを作製した。
正極には、実施例7の条件で作製したプルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)/アセチレンブラック混合物を用いた。
電池の放電試験は、実施例1とほぼ同様に、充放電測定システムを用いて、正極の有効面積当たりの電流密度で2mA/cm2を通電し、充電終止電圧1.4V、放電終止電圧0.5Vの電圧範囲で充放電試験を行った。
充放電試験の結果を、表1に示す。水系電解液を使用するため、放電電圧は1V級であるが、50サイクル後の放電容量維持率が91%の高い値を達成した。なお、酸性の1mol/L Na2SO4水溶液中でも、同様の結果を示すことを確認した。これらの結果は、本発明によるプルシアンブルー系の材料が、水系電解液中でも正極材料として機能できることを示している。水系電解液は、一般的に、有機電解液よりも低価格であるため、ナトリウム二次電池の低コスト化に有利であると考えられる。
(比較例)
比較例として、レアメタルを含む正極材料用いたナトリウム二次電池を作製した。正極材料としてNaCoO2を評価した。NaCoO2は、Na2CO3とCo34を所定モル比(3:2)で混合し、1000℃で焼成を行うことにより合成した。
NaCoO2を用いるコインセルは、実施例1と同様にして作製及び評価を行った。その結果を、表2に実施例7と比較して示す。
本比較例による電池は、実施例7と比較して、初期特性においては、電圧や放電容量について優れた特性を示した。しかしながら、充放電サイクルによる容量減少は著しく、100サイクル後には、初期の約30%の放電容量しか得られなかった。
一方、実施例7の場合、比較例よりも初期性能は劣る(但し、二次電池としての特性としては十分なものである。)ものの、100サイクル後でも放電容量は約82%維持されており、安定性が高いことが分かった。これは、NaCoO2の場合、遷移金属であるCoの溶出が起こっており、容量の減少を誘因したのではないかと考えられる。
以上のように、本発明によるナトリウム二次電池は、コスト性に優れ、更に優れた充放電サイクル特性を有した高性能電池あることが分かった。
Figure 0005756068
(実施例13)
固体電解質としてNASICON(Na3Zr2Si2PO12)を、負極材料としてアモルファスカーボンを、正極として実施例7の条件で作製したプルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)/アセチレンブラック混合物を、それぞれ使用した。
NASICONディスクは、以下の手順で調製した。まず、ZrO(NO32・8H2O(関東化学株式会社)、NH42PO4(関東化学株式会社)、及びNa2SiO3・9H2O(関東化学株式会社)を、Na:Zr:Si:P=3:2:2:1の比率となるモル比で混合し、850℃で仮焼成を行った。得られた粉末をペレット成型機でディスク状に成型し、1100℃で24時間の本焼成を行った。
実施例1と同様にして、コインセルを作製した。なお、固体電解質はコインセル内に収まるようにディスク(厚さ:約1mm)状に作製し、図2のセパレータ2の部分にセットした。また、正極/固体電解質/負極のそれぞれの界面に隙間ができないように、コインセルケースに任意の厚さのコインセルと同材質のディスク状のスペーサーを溶接した。
電池の放電試験は、実施例とほぼ同様に、市販の放充電測定システムを用いて、正極の有効面積あたりの電流密度で0.5mA/cm2を通電し、充電終止電圧3.5V、放電終止電圧2.0Vの電圧範囲で充放電試験を行った。
充放電試験の結果を表1に示す。実施例7と比較して、正極/電解質及び負極/電解質の界面の接触抵抗が増大するために、電圧は0.2Vの減少を示し、若干ではあるが放電容量も減少した。しかしながら、放電容量で示されるサイクル安定性に変化はみられなかった。本実施例により、固体電解質を含む本発明のナトリウム二次電池が作動可能であることが確認された。
(実施例14)
ポリマー電解質として、PEO系高分子電解質膜を、負極材料としてアモルファスカーボンを、正極として実施例7の条件で作製したプルシアンブルー類似体(Na4Fe4[Fe(CN)63)/アセチレンブラック混合物を、それぞれ使用した。
PEO系電解質膜(厚さ:約2mm)は、以下の手順で調製した。
まず、PEO(Aldrich、Mw=6×105)及び溶質であるLiTFSI(キシダ化学)を、Li/O=1/18となるように、10重量%のBaTiO3フィラー(BaTiO3は、Aldrich製試薬(粒子径:<2μm)を用いた))と共にアセトニトリル溶媒(キシダ化学)に添加した。一晩攪拌した後、得られた溶液をPTFE板上に塗布し、アセトニトリルを完全に揮発させた。その後、真空下において90℃で12時間乾燥を行った。
実施例1と同様にして、コインセルを作製した。なお、ポリマー電解質はコインセル内に収まるようにディスク状に切り抜き、図2のセパレータ2の部分にセットした。また、正極/固体電解質/負極のそれぞれの界面に隙間ができないように、コインセルケースに任意の厚さのコインセルと同材質のディスク状のスペーサーを溶接した。
電池の放電試験は、実施例とほぼ同様に、市販の放充電測定システムを用いて、正極の有効面積あたりの電流密度で0.5mA/cm2を通電し、充電終止電圧3.5V、放電終止電圧2.0Vの電圧範囲で充放電試験を行った。
充放電試験の結果を表1に示す。実施例7と比較して、正極/電解質及び負極/電解質の界面の接触抵抗が増大するために、電圧は0.1Vの減少を示し、若干ではあるが放電容量も減少した。しかしながら、放電容量で示されるサイクル安定性に変化はみられなかった。本実施例により、ポリマー電解質を含む本発明のナトリウム二次電池が作動可能であることが確認された。
本発明により、コスト性及びサイクル特性に優れたナトリウム二次電池を作製することができ、本発明のナトリウム二次電池は、様々な電子機器の駆動源等として使用することができる。
1 正極
2 セパレータ(電解質液を含浸)
3 負極
4 正極ケース
5 ガスケット
6 負極ケース

Claims (2)

  1. ナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含む正極、金属ナトリウム、ナトリウム含有物質、又はナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含む負極、及び、ナトリウムイオン導電性を有する電解質を含むナトリウム二次電池であり、前記正極のナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質が、プルシアンブルー(Fe4[Fe(CN)63)を含み、
    前記正極は、前記プルシアンブルー(Fe 4 [Fe(CN) 6 3 )を、カーボン粒子と混合して、ボールミル処理を行った材料を含み、
    前記電解質が、ナトリウムイオンを含む有機電解液、ナトリウムイオンを通す固体電解質、ナトリウムイオンを通すポリマー電解質のうちのいずれかであることを特徴とするナトリウム二次電池。
  2. ナトリウムイオンの挿入および脱離が可能な物質を含む正極、金属ナトリウム、ナトリウム含有物質、又はナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を含む負極、及び、ナトリウムイオン導電性を有する電解質を含むナトリウム二次電池であり、前記正極のナトリウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質が、プルシアンブルー類似体(NaxFe4[Fe(CN)63(式中、0<x≦4.0))を含み、
    前記正極は、前記プルシアンブルー類似体(Na x Fe 4 [Fe(CN) 6 3 (式中、0<x≦4.0))を、カーボン粒子と混合して、ボールミル処理を行った材料を含み、
    前記電解質が、ナトリウムイオンを含む有機電解液、ナトリウムイオンを通す固体電解質、ナトリウムイオンを通すポリマー電解質のうちのいずれかであることを特徴とするナトリウム二次電池。
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