JP5751234B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とを、インバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを一相のみに設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの三相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている。電流センサを一相のみに設けた場合、例えば、特許文献1では、電流センサにて相電流を検出した一相(以下、「センサ相」という。)の電流検出値と、d軸電流指令値およびq軸電流指令値と、交流電動機の電気角とに基づき、三相交流電流指令値を算出し、該指令値を電流センサが設けられていない相(以下、適宜「推定相」という。)の電流値として推定している。
特開2008−86139号公報
例えば、交流電動機の制御装置を上述のようにハイブリッド自動車や電気自動車に搭載した場合、アクセルペダルやブレーキペダルが踏み込みこまれると、ユーザ(人間)要求によりトルク指令値が急変することがある。また、路面の状態等に応じてタイヤの空転を防止するトラクションコントロールシステム等の制御を行っている場合、車両要求によってもトルク指令値が急変することがある。トルク指令値が急変すると、トルク指令値に基づいて決定されるd軸電流指令値およびq軸電流指令値も急変する。
特許文献1の推定方法において、例えばd軸電流指令値およびq軸電流指令値が急変した場合、上述のように電流センサが設けられていない推定相の電流の推定にd軸電流指令値およびq軸電流指令値を用いると、d軸電流指令値およびq軸電流指令値の急変に伴い、推定相の電流推定値も急変する。
特に、電圧指令値の演算周期よりもd軸電流指令値およびq軸電流指令値の更新周期が長い場合、更新周期の長いd軸電流指令値およびq軸電流指令値に基づいて算出される電流推定値をフィードバックして電圧指令値を算出すると、電圧指令値も急変するため、交流電動機に印加される電圧が急変してしまう。
また、制御の方式や構成によっては、電流センサによる電流検出が短い周期で実行され、d軸電流指令値及びq軸電流指令値の更新、および、電流フィードバックによる電圧指令値の演算は、電流センサによる電流検出周期よりも長い周期で実行されることがある。電流指令値に基づいて算出される電流推定値をフィードバックして遅い周期で電圧指令値を算出した場合においても、電流指令値の急変に伴い電圧指令値の変動幅が大きくなり、電圧指令値が更新されたとき、交流電動機に印加される電圧が急変する虞がある。
交流電動機に印加される電圧が急変すると、交流電動機から出力される出力トルクに過大なオーバーシュートやアンダーシュートが生じ、所望の出力トルクが出力できず、交流電動機の駆動制御が不安定になる可能性がある。しかしながら、特許文献1では、このようなd軸電流指令値およびq軸電流指令値が急変した場合については、何ら対策がなされていなかった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流センサが一相のみに設けられ、電流指令が急変した場合であっても安定して駆動可能な交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明は、インバータによって印加電圧が制御される三相の交流電動機の駆動を制御する交流電動機の制御装置であって、電流取得手段と、回転角取得手段と、電流指令値演算手段と、電流推定手段と、電圧指令値演算手段と、駆動信号生成手段と、急変抑制手段と、を備える。
電流取得手段は、交流電動機のいずれか一相であるセンサ相に設けられる電流センサからセンサ相電流検出値をセンサ相電流検出周期で取得する。回転角取得手段は、交流電動機の回転角を検出する回転角センサから回転角検出値を取得する。電流指令値演算手段は、交流電動機の駆動に係る電流指令値をセンサ相電流検出周期より長い周期である指令更新周期で更新する。
電流推定手段は、センサ相電流検出値、回転角検出値、および、電流指令値に基づき、電流推定値を算出する。
電圧指令値演算手段は、電流指令値、および、フィードバックされた電流推定値に基づき、電圧指令値を演算する。駆動信号生成手段は、電圧指令値に基づき、インバータの駆動に係る駆動信号を生成する。インバータは、駆動信号に基づいて駆動されることにより三相交流電圧が生成される。また、生成された三相交流電圧が交流電動機に印加されることにより、交流電動機が駆動される。
急変抑制手段は、センサ相電流検出周期よりも長い指令更新周期で更新される電流指令値の急変に伴い、フィードバックされる電流推定値が急変することによる電圧指令値の急変を抑制する。
本発明では、電流センサを一相のみに設け、センサ相電流検出値、回転角検出値、および、電流指令値に基づき、フィードバックする電流推定値を算出し、この電流推定値等に基づいて交流電動機の駆動を制御している。これにより、電流センサの数を減らすことができる。電流センサの数を減らすことで、インバータの三相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御装置のコストを低減することができる。
また、電流指令値は、例えばトルク指令値等の上位指令値に基づいて算出されるので、上位指令値の更新周期が長ければ、電流指令値の更新周期も長くなる。また、トルク指令値等の上位指令値は、例えばアクセルペダルの踏み込み等の外的要因により急変する場合があり、このような場合には電流指令値も急変する。一方、センサ相電流検出値および回転角検出値は、更新周期が短く、また交流電動機の実際の挙動に基づく値であるので、通常は連続的に変化するものである。電流推定値は、更新周期の長い電流指令値と、更新周期の短いセンサ相電流検出値および回転角検出値という、更新周期等の性質が異なる情報に基づいて算出される。上述の通り、フィードバックされる電流推定値の算出に更新周期の長い電流指令値を用いているため、電流指令値の急変に伴って電圧指令値が急変する虞がある。
そこで本発明では、電流指令値の急変に伴い、フィードバックされる電流推定値が急変することによる電圧指令値の急変を抑制する急変抑制手段を備えている。これにより、電圧指令値の急変が抑制されるので、電流指令値が急変した場合であっても、交流電動機に印加される電圧の急変が抑制され、交流電動機を安定して駆動可能である。
本発明の第1実施形態の電動機駆動システムの構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の電動機制御装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の電動機制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態の電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態のα軸およびβ軸を説明する図である。 本発明の第1実施形態による急変抑制手段を説明するブロック図である。 本発明の第1実施形態における電流指令値の高速更新を説明する図である。 本発明の第1実施形態による交流電動機の制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態による急変抑制手段を説明するブロック図である。 本発明の第3実施形態による急変抑制手段を説明するブロック図である。 本発明の第3実施形態による急変抑制手段を説明する図である。 本発明の第3実施形態による交流電動機の制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第4実施形態による急変抑制手段を説明するブロック図である。 本発明の第4実施形態による交流電動機の制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第5実施形態による急変抑制手段を説明するブロック図である。 本発明の第5実施形態による交流電動機の制御処理を説明するフローチャートである。 トルク指令値が急変した場合のV相電流およびβ軸電流を説明する図である。 トルク指令値が急変した場合のq軸電流指令値とq軸実電流値との乖離を説明する図である。
以下、本発明による交流電動機の駆動を制御する交流電動機の制御装置を図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による交流電動機2の制御装置としての電動機制御装置10は、電動車両を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、および、電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、三相永久磁石式同期モータである。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えるハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、および、エンジン3により駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
交流電動機2は、ギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動により生じるトルクは、ギア4を介して車軸5を回転させることにより、駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている。
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、および、シフトスイッチからのシフト信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。また、車両制御回路9では、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。また、車両制御回路9は、エンジン3の運転を制御する図示しないエンジン制御回路に対し、指令信号を出力する。
図2に示すように、電動機制御装置10は、インバータ12および制御部15を備える。
インバータ12には、交流電動機2の駆動状態や車両要求等に応じて、直流電源8の直流電圧を図示しない昇圧コンバータにより昇圧したシステム電圧VHが印加される。また、インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子は、制御部15のPWM信号生成部25(図3参照)から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてオン/オフが制御される。これにより、インバータ12は、交流電動機2に印加される三相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ12により生成された三相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。
ここで、交流電動機2の駆動制御について説明する。電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2の回転数Nおよび車両制御回路9からのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、または、「発電機としての回生動作」により電力を生成する。具体的には、回転数Nおよびトルク指令値trq*の正負によって、以下の4つのパターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*>0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
電流センサ13は、交流電動機2のいずれか一相に設けられる。本実施形態では、電流センサ13は、W相に設けられており、以下、電流センサ13の設けられるW相を「センサ相」という。電流センサ13は、センサ相であるW相に通電されるセンサ相電流検出値iw_snsを検出し、制御部15に出力する。なお、本実施形態では、電流センサ13はW相に設けられているが、どの相に設けてもよい。以下、本実施形態の説明では、センサ相をW相とする構成を前提として説明する。ただし、他の実施形態では、U相またはV相をセンサ相としてもよい。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。また、回転角センサ14により検出される電気角θeに基づき、回転数Nが算出される。本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバである。その他、回転角センサ14は、ロータリエンコーダ等、他種のセンサでもよい。
電流センサ13により検出されるセンサ相電流検出値iw_sns、および、回転角センサ14により検出される電気角θeは、更新周期は短い周期(後述のセンサ相電流検出周期Cs)で更新され、また交流電動機2の実際の挙動に基づく値であるので、通常は連続的に変化する。
制御部15は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部15は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、交流電動機2の動作を制御する。
図3に示すように、制御部15は、電流指令値演算部21、減算器22、PI演算部23、逆dq変換部24、PWM信号生成部25、および、電流推定部30を有する。
電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得されるトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標として設定される回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算されるが、数式等から演算するように構成してもよい。d軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*は、トルク指令値trq*の更新周期と等しい長い周期(後述の指令更新周期Cd)で更新される。換言すると、指令更新周期Cdは、センサ相電流検出周期Csより長い。
減算器22は、d軸電流減算器221およびq軸電流減算器222を有する。d軸電流減算器221では、電流推定部30にて算出されてフィードバックされるd軸電流推定値id_estとd軸電流指令値id*との差であるd軸電流偏差Δidを算出する。また、q軸電流減算器222では、電流推定部30にて算出されてフィードバックされるq軸電流推定値iq_estとq軸電流指令値iq*との差であるq軸電流偏差Δiqを算出する。
PI演算部23は、d軸PI演算部231およびq軸PI演算部232を有する。d軸PI演算部231では、d軸電流推定値id_estをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差Δidが0に収束するようにd軸電圧指令値vd*をPI演算により算出する。また、q軸PI演算部232では、q軸電流推定値iq_estをq軸電流推定値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差Δiqが0に収束するようにq軸電圧指令値vq*をPI演算により算出する。
逆dq変換部24では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づき、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、および、W相電圧指令値vw*に変換する。
PWM信号生成部25では、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、三相交流の電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ12に印加される電圧であるシステム電圧VHに基づいて算出する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、三相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この三相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。なお、三相交流電圧vu、vv、vwが「印加電圧」に対応する。
ここで、PWM制御について説明しておく。
一般的なPWM制御である正弦波PWM制御は、正弦波状の電圧指令と搬送波(代表的には三角波)との電圧比較により、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフを制御する。具体的には、ブリッジ接続の上アームを構成するスイッチング素子である上アーム素子のオン期間に対応するハイレベル期間と、ブリッジ接続の下アームを構成するスイッチング素子である下アーム素子のオン期間に対応するローレベル期間との集合について、一定期間内において、交流電動機2に印加される三相交流電圧vu、vv、vwである線間電圧(以下適宜、単に「交流電動機2の線間電圧」という。)の基本波成分が正弦波となるようにデューティが制御される。正弦波PWM制御においては、正弦波状の電圧指令の振幅が搬送波の振幅以下であるため、交流電動機2の線間電圧は、正弦波状となる。
正弦波PWM制御では、正弦波状の電圧指令の振幅が搬送波の振幅以下に制限されるので、交流電動機2の線間電圧は、インバータ12に印加されるシステム電圧VHの約0.61倍程度までしか高めることができない。ここで、インバータ12に印加されるシステム電圧VHに対する交流電動機2の線間電圧の基本波成分(実効値)の比を、「変調率」とすれば、正弦波PWM制御においては、変調率は、最大で約0.61である、ということである。
なお、正弦波PWM制御において、正弦波状の電圧指令に3n次高調波成分を重畳させて電圧指令を生成してもよい。3n次高調波成分について、nは自然数を取り得るが、ここでは、n=1の3次高調波成分として説明する。正弦波状の電圧指令に3次高調波成分を重畳させると、3次高調波成分が重畳された電圧指令は正弦波状とはならず、搬送波の振幅よりも大きくなる期間が生じるが、各相に重畳された3次高調波成分は線間では打ち消されるので、交流電動機2の線間電圧は、正弦波状が維持される。これにより、変調率を約0.71まで高めることができる。
また本実施形態では、交流電動機2に印加する電圧を更に高める必要がある場合、変調率を更に高めるべく、過変調PWM制御も行っている。
過変調PWM制御では、電圧指令の振幅を搬送波の振幅より大きい範囲で、上述の正弦波PWM制御と同様のPWM制御を行う。過変調PWM制御では、電圧指令の振幅を補正し、正弦波から歪めることにより、変調率を最大で約0.78まで高めることができる。過変調PWM制御では、電圧指令の振幅が搬送波の振幅より大きいため、交流電動機2の線間電圧は、正弦波状ではなく歪んだ波形となる。
電流推定部30では、センサ相電流検出値iw_sns、電気角θe、d軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出する。なお、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、更新周期の長いd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*と、更新周期の短いセンサ相電流検出値iw_snsおよび電気角θe、という更新周期等の性質の異なる情報に基づいて算出される。
ここで、電流推定部30におけるセンサ相以外の相である推定相の電流の推定について説明する。
例えば、電流センサ13が二相に設けられている場合、三相電流iu、iv、iwの瞬時値の和が0であるキルヒホッフの法則を利用することにより、電流センサ13が設けられていない残りの一相の電流を容易に算出可能である。
一方、本実施形態では、電流センサ13がW相にしか設けられていないので、一相のセンサ相の電流検出値iw_sns、および、電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、電流センサ13が設けられていない相の電流を推定している。本実施形態では、U相を推定相とし、推定相電流推定値iu_estを算出する例を説明する。なお、推定相は、センサ相以外のどちらの相であってもよい。
図4に示すように、電流推定部30は、センサ相基準電流位相検知部31、基本波推定部32、ゼロクロス補間部33、および、dq変換部34を有する。
センサ相基準電流位相検知部31は、逆dq変換部311および位相検知部312を有する。
まず、逆dq変換部311では、電流指令値演算部21により算出されるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*と電気角θeとを取得し、U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*を逆dq変換により算出する。なお、算出する電流指令値は、推定相以外のいずれか一方のみでもよいので、本実施形態では、V相電流指令値iv*を算出するものとする。
位相検知部312では、逆dq変換部311にて算出されたV相電流指令値iv*、おおび、センサ相電流検出値iw_snsに基づき、センサ相基準電流位相θxを算出する。
センサ相基準電流位相θxは、図5に示すように、センサ相であるW相をα軸としたとき、α軸と電流ベクトルIa∠θxとがなす角度である。また、換言すると、センサ相基準電流位相θxは、正回転、正トルクの力行状態において、W相電流iwの波形が負から正にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxは、0[°]であり、W相電流iwの波形が正から負にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxは180[°]となる。すなわち、センサ相基準電流位相θxは、センサ相電流検出値iw_snsに同期した角度である。
本実施形態では、位相検知部312において、α軸電流iαおよびβ軸電流iβに基づき、センサ相基準電流位相θxを算出する。
ここで、センサ相基準電流位相θxの算出に用いるα軸電流iα、および、β軸電流iβについて説明する。α軸電流iα、および、β軸電流iβを、各相電流iu、iv、iwを用いて表すと、式(1)、(2)となる。なお、式(1)、(2)中のKは、変換係数である。
Figure 0005751234
また、キルヒホッフの法則より、三相電流iu、iv、iwの瞬時値の和は0となる。すなわち、以下の式(3)が成り立つ。
iu+iv+iw=0 ・・・(3)
ここで、式(1)について、式(3)を用いて変形すると、以下の式(4)となる。
Figure 0005751234
すなわち、式(4)に示すように、α軸電流iαは、センサ相であるW相電流iwのみに基づいて算出可能である。ここで、W相電流iwとして、センサ相電流検出値iw_snsを用いると、α軸電流検出値iα_snsは、式(5)のように表される。
Figure 0005751234
また、式(2)を参照し、U相電流iuとして電流指令値iu*、V相電流として電流指令値iv*を用いると、β軸電流推定値iβ_estは、式(6)のように表される。
Figure 0005751234
式(6)では、β軸電流推定値iβ_estは、電流指令値iu*およびiv*から算出されており、電流センサ13により検出されるセンサ相電流検出値iw_snsの成分が含まれていない。そのため、式(6)により算出されるβ軸電流推定値iβ_estは、必ずしも実電流を精度よく反映した情報にはならない。
そこで、キルヒホッフの法則(式(3))に基づき、β軸電流推定値iβ_estにセンサ相電流検出値iw_snsを含ませるように式(6)を変形すると、以下の式(7)となる。
Figure 0005751234
式(7)のように、実電流であるセンサ相電流検出値iw_snsをβ軸電流推定値iβ_estに含ませることにより、制御変動に応答できるようになり、W相軸成分が小さく、収束しにくい領域を狭小化できるため、β軸電流推定値iβ_estの精度を向上することができる。つまりは、β軸電流推定値iβ_estに基づいて算出されるセンサ相基準電流位相θxの検知精度を向上させることができる。
算出されたα軸電流検出値iα_sns(式(5)参照)、および、β軸電流推定値iβ_est(式(7)参照)に基づき、センサ相基準電流位相θxは、以下の式(8)により算出可能である。なお、β軸電流推定値iβ_estは、式(7)に替えて式(6)を用いてもよい。
Figure 0005751234
ここで、式(8)のように、センサ相基準電流位相θxを逆正接関数(tan-1)で計算する場合、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの定義によっては、センサ相基準電流位相θxはセンサ相であるW相に同期した角度にはならない場合がある。これは、軸の定義(例えば、α軸とβ軸の入れ替わりや符号反転)によるものであり、正回転、正トルクにおけるセンサ相電流検出値iw_snsが負から正にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxが0[°]になり、センサ相電流検出値iw_snsが正から負にゼロクロスするときのθxが180[°]になるように、すなわちセンサ相電流検出値iw_snsに同期した角度となるように、例えばα軸電流iαおよびβ軸電流iβの符号を操作してからセンサ相基準電流位相θxを算出したり、α軸電流iαおよびβ軸電流iβ自体を入れ替えたり、直交関係による位相差90[°]を算出したセンサ相基準電流位相θxに適宜加減したりしてよい。
このように、位相検知部312において、α軸電流検出値iα_sns、および、β軸電流推定値iβ_estに基づいて算出されたセンサ相基準電流位相θxは、基本波推定部32に出力される。
基本波推定部32は、他相推定部321を有する。他相推定部321は、位相検知部312にて算出されたセンサ相基準電流位相θx、および、センサ相電流検出値iw_snsに基づき、推定相電流推定値iu_estを算出する。
ここで、センサ相電流検出値iw_sns、および、推定相電流推定値iu_estを、センサ相基準電流位相θxを用いて表すと、各相の位相差は120[°]であるので、式(9)、(10)となる。なお、式(9)、(10)中のIaは、電流振幅である。
iw_sns=Ia×sin(θx) ・・・(9)
iu_est=Ia×sin(θx−120°) ・・・(10)
また、推定相電流推定値iu_estは、加法定理により式(10)を変形すると、センサ相基準電流位相θxおよびセンサ相電流検出値iw_snsに基づき、以下の式(11)のように表される。
Figure 0005751234
また、推定係数iu_kpを式(12)とすれば、推定相電流推定値iu_estは、式(13)のようにも表すことができる。ここで、推定係数iu_kpは、式(12)で直接演算してもよく、または、式(12)の一部或いは全体をセンサ相基準電流位相θxに基づいて予めマップ化しておき、このマップを参照することにより算出しても良い。
なお、制御部15が一般的な電子制御回路(マイコン)である場合、制御部15に演算式を実装すると、連続時間ではなく離散時間で処理され、センサ検出値や各演算値も指定された分解能(LSB)に基づく離散値として扱われる。ここで、「演算式を実装する」とは、ソフトウェアのプログラムや、ハードウェア回路の構築等を含むものとする。また、処理負荷の大きい乗算や除算を避けるため、引数をセンサ相基準電流位相θxとし、推定係数iu_kp、あるいは、推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことが有効である。このようなマップを設けることにより、離散系への適用を容易にし、マイコンの処理負荷を最小限に留めることができる。これにより、演算処理能力の高い高価なマイコンを用いる必要がなくなる。
Figure 0005751234
なお、式(11)または式(13)を参照すると、推定相電流推定値iu_estをセンサ相基準電流位相θxおよびセンサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出する場合、電流振幅Iaを用いていない。したがって、電流振幅Iaは、求める必要がなく、演算すべき変数を削減することができる。
他相推定部321において、センサ相基準電流位相θxおよびセンサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出された推定相電流推定値iu_estは、推定相電流推定値(参照値)iu_est_refとしてゼロクロス補間部33に出力される。
ここで、センサ相電流検出値iw_snsが0[A]になるとき、或いは、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が無限大になるとき、式(11)において、0で乗算する「ゼロ掛け」が生じる。また、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が0となるとき、式(11)において、および0で除算する「ゼロ割り」が生じてしまう。そのため、推定相電流推定値iu_estが変動してしまう虞がある。
そこで、本実施形態では、ゼロクロス補間部33において、推定相電流推定値(参照値)iu_est_refを補間し、ゼロ割り、ゼロ掛けをマスクしている。
ゼロクロス補間部33は、ゼロクロス判定部331および前回値保持部332を有する。
ゼロクロス判定部331では、ゼロクロス条件が成立するか否かを判定する。本実施形態では、センサ相電流検出値iw_snsが、0[A]を含む所定範囲内であるとき、ゼロクロス条件が成立する、と判定する。「所定範囲内の値である」とは、センサ相の電流検出値iw_snsの絶対値が所定値以下であること、或いは、推定係数iu_kpの絶対値が所定値以上であることをいう。ここで、「所定値」とは、例えば±5[A]といった具合に電流値で設定してもよいし、5[LSB]といった具合に離散系における分解能に基づいて設定してもよいし、数式等で設定してもよい。また、センサ相基準電流位相θxに基づき、センサ相基準電流位相θxが所定のゼロクロス範囲内にあるとき、ゼロクロス条件が成立する、と判定するようにしてもよい。
ゼロクロス条件が成立しないと判定された場合、他相推定部321にて算出された推定相電流推定値(参照値)iu_est_refを、そのまま推定相電流推定値(確定値)iu_est_fixとしてdq変換部34へ出力する。
一方、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを強制的に0[A]とすることで、d軸電流指令値vd*、および、q軸電圧指令値vq*を固定する。或いは、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を前回値に保持することによって直接固定してもよい。
また、前回値保持部332から、推定相電流推定値(補間値)iu_est_cmpを取得し、この推定相電流推定値(補間値)iu_est_cmpを、推定相電流推定値(確定値)iu_est_fixとしてdq変換部34へ出力する。
前回値保持部332では、予め前回値を保持しておき、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、推定相電流推定値(補間値)iu_est_cmpを算出し、ゼロクロス判定部331に出力する。
例えば、前回値保持部332では、以前に算出された推定相電流推定値(確定値)iu_est_fixについて、直近の所定回数分を、推定相電流推定値(保持値)iu_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値である推定相電流推定値(保持値)iu_est_hldを、推定相電流推定値(補間値)iu_est_cmpとしてゼロクロス判定部331に出力する。
また例えば、前回値保持部332では、以前にdq変換部34にて算出されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estについて、直近の所定回数分を、d軸電流推定値(保持値)id_est_hldおよびq軸電流推定値(保持値)iq_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値であるd軸電流推定値(保持値)id_est_hldおよびq軸電流推定値(保持値)iq_est_hldを逆dq変換し、推定相電流推定値(補間値)iu_est_cmpとしてゼロクロス判定部331に出力する。
dq変換部34では、ゼロクロス補間部33から取得した推定相電流推定値(確定値)iu_est_fix、センサ相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、dq変換によりd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出する。
dq変換部34におけるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出について説明する。
まず、dq変換の一般式を、以下の式(14)に示す。
Figure 0005751234
ここで、キルヒホッフの法則(式(3)参照)より、iv=−iu−iw、iu=iu_est、iw=iw_snsを式(14)に代入すると、以下の式(15)が得られる。なお、本実施形態では、iu_estとして、ゼロクロス補正された推定相電流推定値(確定値)iu_est_fixを用いる。
Figure 0005751234
式(15)に示すように、三相のうちの二相の電流値(検出値または推定値)がわかれば、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出可能であるので、他相推定部321では、一相(本実施形態ではU相)の電流推定値のみを算出すればよく、他の相(本実施形態ではV相)の電流推定値を算出する必要はない。
ここで、本実施形態では、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出に用いられる推定相電流推定値iu_estは、センサ相基準電流位相θxに基づいて算出される。また、センサ相基準電流位相θxは、α軸電流検出値iα_snsおよびβ軸電流推定値iβ_estに基づいて算出される。さらに、β軸電流推定値iβ_estは、式(7)に基づいて算出する場合、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の逆dq変換により算出されるV相電流指令値iv*、および、センサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出される。そして、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、トルク指令値trq*に基づいて算出される。
尚、本実施形態では、トルク指令値trq*は、ユーザ要求や車両要求で急変することがある。例えば、ユーザによりアクセルペダルやブレーキペダルが踏み込まれると、ユーザ要求により、トルク指令値trq*が急変する。また例えば、路面の状態等に応じてタイヤの空転を防止するトラクションコントロール等の制御を行っている場合、車両要求によってもトルク指令値trq*が急変することがある。
トルク指令値trq*が急変すると、トルク指令値trq*に基づく指令値であるd軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、および、V相電流指令値iv*が急変する。また、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変すると、センサ値であるセンサ相電流検出値iw_snsおよびα軸電流検出値iα_snsも急変する。そのため、V相電流指令値iv*およびセンサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出されるβ軸電流推定値iβ_estも急変し、β軸電流推定値iβ_estおよびα軸電流検出値iα_snsに基づいて算出されるセンサ相基準電流位相θxも急変する。そして、センサ相基準電流位相θxおよびセンサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出される推定相電流推定値iu_estも急変するので、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estも急変する。
言い換えれば、V相電流指令値iv*が急変すると、制御応答遅れにより、V相電流指令値iv*とV相実電流値ivとの乖離が大きくなる。また、β軸電流推定値iβ_estが急変すると、制御応答遅れによるV相電流指令値iv*とV相実電流値ivとの乖離に起因し、β軸電流推定値iβ_estとβ軸実電流値iβとの乖離が大きくなる。
加えて、具体的には、図17(a)に示すように、トルク指令値trq*が増加すると、トルク指令値trq*の増加に伴い、図17(b)に示すように、制御モードが正弦波PWM制御から過変調PWM制御に切り替わる場合がある。過変調PWM制御は、正弦波PWM制御に比べると、応答性が劣る。そのため、過変調PWM制御および正弦波PWM制御で同様のトルク指令値trq*の急変が起きた場合、正弦波PWM制御に比べ、過変調PWM制御の方がトルク指令値trq*に対する応答がさらに遅れる。よって、図17(c)に示すように、トルク指令値trq*が増加すると、正弦波PWM制御であっても応答遅れにより、破線で示すV相電流指令値iv*と実線で示すV相実電流値ivとの乖離が大きくなるものが、過変調PWM制御ではさらに顕著になる。同様に、図17(d)に示すように、トルク指令値trq*が増加すると、応答遅れにより、一点鎖線で示すβ軸電流推定値iβ_estと実線で示すβ軸実電流値iβとの乖離が大きくなる。
このような応答遅れによる指令値または推定値と実電流との乖離は、トルク指令値trq*が減少するときにも同様に生じる。
ここで、式(7)を参照すると、β軸電流推定値iβ_estを算出する算出式には、V相電流指令値iv*に係る項と、センサ相電流検出値iw_snsに係る項が含まれている。
V相電流指令値iv*に係る項は、180[°]毎に0[A]となる。V相電流指令値iv*が0[A]になるとき、算出されるβ軸電流推定値iβ_estに指令値成分の要素が含まれないので、β軸電流推定値iβ_estは、センサ相電流検出値iw_snsによって決まる。
また、センサ相電流検出値iw_snsに係る項も、V相とは120[°]ずれた位相において、180[°]毎に0[A]となる。センサ相電流検出値iw_snsが0[A]になるとき、算出されるβ軸電流推定値iβ_estにセンサ値成分の要素が含まれないので、β軸電流推定値iβ_estは、指令値成分によって決まる。従って、β軸電流推定値iβ_estは、V相電流指令値iv*とV相実電流値ivとの乖離が大きいほど、その影響を受けることとなる。
以上のことから、図17(c)に示すように、V相電流指令値iv*とV相実電流値ivとが一致する箇所と、乖離が大きい箇所とが、電流1周期の半分に相当する周期毎に周期的に繰り返されている。同様に、図17(d)に示すように、β軸電流推定値iβ_estとβ軸実電流値iβとが一致する箇所と、乖離が大きい箇所とが、V相電流指令値iv*とV相実電流値ivの周期的な変化と同じタイミングにおいて、電流1周期の半分に相当する周期毎に周期的に繰り返されている。
このようなV相電流指令値iv*とV相実電流値ivとの乖離、および、β軸電流推定値iβ_estとβ軸実電流値iβとの乖離は、トルク指令値trq*が急変しない定常状態においては生じないが、トルク指令値trq*の立ち上がり直後や立ち下がり直後、また、応答性の低い過変調PWM制御時において、特に顕著である。
このように、トルク指令値trq*が急変すると、β軸電流推定値iβ_estおよびα軸電流検出値iα_snsに基づいて算出されるセンサ相基準電流位相θxも急変する。また、センサ相基準電流位相θxおよびセンサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出される推定相電流推定値iu_est、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estも急変する。
図3中に記号FB1およびFB2に示すように、電流推定部30にて算出されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、フィードバックされ、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の算出に用いられる。また、上述の通り、トルク指令値trq*が急変すると、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estも急変する。急変するd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがフィードバックされると、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*も急変することになる。この急変したd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*に基づく電圧パルスが交流電動機2に印加されると、交流電動機2から出力されるトルクも急変してしまう。
なお、本実施形態では、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqよりも先に変化するd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいてd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出し、このd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックして交流電動機2の駆動を制御している。本実施形態では、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出にd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いているので、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqよりもd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に近い値となる。このようなd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対してフィードバックしているので、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqをフィードバックする場合と比較して、偏差が小さくなるため、印加される電圧が抑えられる傾向となる。そのため、実際に交流電動機2に通電されるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、電流センサ13を二相または三相に設けた場合と比較して、低くなる傾向となる。
そこで、本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変に伴うd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制すべく、急変抑制処理を行っている。なお、本実施形態におけるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*等の「急変」とは、電流センサ13を一相のみに設けることを前提とし、急変抑制処理を行わない場合、交流電動機2の出力トルクが所定の期間内に所望の値に収束しない程度の変化である。例えば、ユーザの感覚でアクセルペダルが一定に踏み込まれていたとしても、車両制御回路9にて認識されるアクセル開度は常に微小幅で変動するが、このような微小幅の変動に伴う程度のd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の変化は、本実施形態でいうところの「急変」には含まないものとする。また、フィードバック制御は原理的に、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が微小幅の変動すらなく一定であったとしても、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対して微小幅で変動しながら追従しているが、これも急変には含まれないものとする。とすれば、例えば車両制御回路9や制御部15の演算速度等に応じ、本実施形態でいうところの「急変」に該当する範囲も異なることになる。すなわち、「急変」の範囲は、交流電動機2の応答性や制御部15の演算速度等のシステムに応じて適宜設定することができる。
ここで、車両制御回路9にて算出されるトルク指令値trq*は、主にユーザ要求に基づくものであり、通常、制御部15における各種演算よりも遅い周期で演算される。すなわち、本実施形態では、トルク指令値trq*、および、トルク指令値trq*から算出されるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、指令更新周期Cdで更新され、制御部15における各種演算(センサ相電流検出値iw_snsの更新やd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の演算等)は、指令更新周期Cdよりも短いセンサ相電流検出周期Csで演算されている。
そのため、図18に示すように、トルク指令値trq*が急変すると、トルク指令値trq*から算出されるq軸電流指令値iq*はステップ状に変化し、制御応答遅れの影響により、矢印Yで示すように、q軸実電流値iqとの乖離が大きくなってしまう。
また、q軸電流指令値iq*とq軸実電流値iq(センサ値)とが乖離するほど、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅も大きくなる。逆に言えば、q軸電流指令値iq*とq軸実電流値iq(センサ値)との乖離を改善することにより、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変も改善する。
なお、図18では、正トルク時のq軸電流指令値iq*およびq軸実電流値iqについて示しているが、他の象限である場合や、d軸電流についても同様である。
そこで本実施形態では、急変抑制処理として、図6に示すように、制御部15は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を高速更新すべく、高速更新部41を有している。
高速更新部41では、電流指令値演算部21により算出されるd軸電流指令値id*を指令更新周期Cdよりも短い高速更新周期Chで高速更新し、d軸高速更新指令値id*_fstを算出する。同様に、電流指令値演算部21により算出されるq軸電流指令値iq*を指令更新周期Cdよりも短い高速更新周期Chで高速更新し、q軸高速更新指令値iq*_fstを算出する。本実施形態では、d軸電流指令値id*の前回値と今回値との間を細分化して補間することにより、高速更新指令値id*_fstを算出する。より詳細には、例えば、指令更新周期Cdおよび高速更新周期Chは予め決まっているので、高速更新周期Chとなるような分割数でd軸電流指令値id*の前回値と今回値との差分を均等割したり、d軸電流指令値id*の前回値と今回値との差分を線形補間したりすることにより、d軸高速更新指令値id*_fstを算出する。なお、補間方法はどのような方法であってもよい。
同様に、q軸電流指令値iq*の前回値と今回値との間を細分化して補間することにより、q軸高速更新指令値iq*_fstを算出する。
なお、本実施形態における高速更新部41における高速更新周期である高速更新周期Chは、制御部15における各種演算の演算周期であるセンサ相電流検出周期Csと等しいものとする。
図7には、正トルク時のq軸電流指令値iq*、q軸高速更新指令値iq*_fstおよびq軸実電流値iqについて示している。図7に示すように、q軸電流指令値iq*は、トルク指令値trq*の更新周期である指令更新周期Cdで更新される。また、q軸実電流値iqの更新周期は、制御部15における演算周期およびセンサ値の更新周期で決まるものであり、本実施形態では、制御部15の演算周期およびセンサ相電流検出値iw_snsの取得周期であるセンサ相電流検出周期Csと等しい。そのため、矢印Y1で示すように、q軸電流指令値iq*は、q軸実電流値iqとの乖離が大きい。
一方、q軸高速更新指令値iq*_fstは、指令更新周期Cdより短い周期であって、制御部15における演算周期であるセンサ相電流検出周期Csと等しい高速更新周期Chで高速更新される。そのため、矢印Y2で示すように、高速更新指令値iq*_fstとq軸実電流値iqと差は、矢印Y1で示すq軸電流指令値iq*とq軸実電流値iqとの差より小さい。すなわち、q軸電流指令値iq*を高速更新し、q軸高速更新指令値iq*_fstとすることにより、q軸実電流値iqとの乖離が改善されている。
なお、図7では、正トルク時のq軸電流指令値iq*、q軸高速更新指令値iq*_fstおよびq軸実電流値iqについて示しているが、他の象限にある場合や、d軸電流についても同様である。
図6に示すように、高速更新部41にて算出されたd軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstは、電流推定部30に出力され、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算に用いられる。詳細には、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstに基づき、逆dq変換部311にて逆dq変換し、V相電流指令値iv*_fstを算出する。算出されたV相電流指令値iv*_fstは、位相検知部312におけるセンサ相基準電流位相θxの算出に用いられる。センサ相基準電流位相θxの算出に用いられるβ軸電流推定値iβ_estを、V相電流指令値iv*_fstおよびセンサ相電流検出値iw_snsを用いて算出すると、以下の式(16)のようになる。
Figure 0005751234
式(16)に示すように、センサ相基準電流位相θxの算出に用いられるβ軸電流推定値iβ_estは、高速更新されたd軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstに基づくV相電流指令値iv*_fstおよびセンサ相電流検出値iw_snsを用いて算出される。これにより、トルク指令値trq*の急変に伴い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した際のセンサ相基準電流位相θxの計算である位相計算への影響を低減することができる。また、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が向上するので、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックして算出されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することができる。
ここで、図8に基づき、本実施形態による交流電動機2の制御処理の全体を説明する。なお、この制御処理は、例えば、電動機駆動システム1の電源がオンされているときに、所定の間隔で実行されるものとする。
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、電流センサ13からセンサ相電流検出値iw_snsを取得する。また、回転角センサ14から、交流電動機2の電気角θeを取得する。
S102では、電流指令値演算部21にて、トルク指令値trq*からd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を算出する。なお、トルク指令値trq*は、本処理よりも長い周期である指令更新周期Cdで演算されるので、トルク指令値trq*が変化しない期間においては、S102において算出されるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は同じ値が維持されることになる。換言すると、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が指令更新周期Cdで更新される、ということである。
S103では、高速更新部41にてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を高速更新し、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstを算出する。
S104では、逆dq変換部311にて、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstに基づき、センサ相基準電流位相θxを算出するための三相電流指令値iu*、iv*、iw*を逆dq変換により算出する。本実施形態では、三相電流指令値のうち、V相電流指令値iv*のみを算出している。
S105では、位相検知部312にて、α軸電流検出値iα_snsおよびβ軸電流推定値iβ_estを算出し、式(8)の演算を行い、センサ相基準電流位相θxを算出する。また、他相推定部321にて、式(11)の演算を行い、推定相電流推定値(参照値)iu_est_refを算出し、ゼロクロス補間部33にてゼロクロス補間された推定相電流推定値(確定値)iu_est_fixを算出する。
S106では、dq変換部34にて、ゼロクロス補間された推定相電流推定値(確定値)iu_est_fix、センサ相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、dq変換により、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出する。
S107では、d軸電流指令値id*q軸電流指令値iq*、および、フィードバックされたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、減算器22にてd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを算出し、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqが0に収束するように、PI演算部23にてPI演算によりd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を算出する。
S108では、逆dq変換部24にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を逆dq変換し、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を算出する。
S109では、PWM信号生成部25にて、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、システム電圧VHに基づき、PWM変調により、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出する。
S110では、算出されたPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLをインバータ12に出力し、出力されたPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づき、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御される。
S111では、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが切り替えられることにより生成される三相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加される。
S112では、三相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより、交流電動機2にてトルク指令値trq*に基づく所望のトルクが発生する。
以上、詳述したように、交流電動機2の電動機制御装置10は、インバータ12によって印加電圧である三相交流電圧vu、vv、vwが制御される三相の交流電動機2の駆動を制御する。
電動機制御装置10の制御部15では、以下の処理が実行される。交流電動機2のいずれか一相であるセンサ相(本実施形態ではW相)に設けられる電流センサ13からセンサ相電流検出値iw_snsをセンサ相電流検出周期Csで取得する(図8中のS101)。また、交流電動機2の回転角を検出する回転角センサ14から電気角θeを取得する(S101)。
電流指令値演算部21では、交流電動機2の駆動に係る電流指令値であるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*をセンサ相電流検出周期Csより長い周期である指令更新周期Cdで更新する(S102)。また、電流推定部30では、センサ相電流検出値iw_sns、電気角θe、および、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出する(S106)。
より詳細には、本実施形態では、電流推定部30のセンサ相基準電流位相検知部31では、センサ相電流検出値iw_sns、電気角θe、および、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を高速更新したd軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstに基づき、センサ相基準電流位相θxを算出する。基本波推定部32では、算出されたセンサ相基準電流位相θx、および、センサ相電流検出値iw_snsに基づき、推定相電流推定値iu_estを算出する。また、ゼロクロス補間部33にて、推定相電流推定値iu_estをゼロクロス補間し、推定相電流推定値(確定値)iu_est_fixを算出する。dq変換部34では、推定相電流推定値(確定値)iu_est_fix、センサ相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出する。dq変換部34は、「推定値算出部」と捉えることもできる。
ここで、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、センサ相電流検出値iw_sns、電気角θe、および、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいて算出されていれば、どのように算出してもよいし、他のパラメータを用いてもよい。
PI演算部23では、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、および、フィードバックされたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を算出する(S107)。本実施形態では、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*は、センサ相電流検出周期Csと等しい周期で算出される。そして、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*に基づき、インバータ12の駆動に係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成する(S109)。インバータ12は、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいて駆動されることにより、三相交流電圧vu、vv、vwを生成する(S110)。また、生成された三相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより(S111)、交流電動機2が駆動され、所望のトルクが発生する(S112)。
本実施形態では、電流センサ13をW相のみに設け、センサ相電流検出値iw_sns、および、電気角θe、および、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出し、このd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_est等に基づいて交流電動機2の駆動を制御している。これにより、電流センサ13の数を減らすことができる。電流センサ13の数を減らすことで、インバータ12の三相出力端子近傍の小型化や電動機制御装置10のコストを低減することができる。
さらに本実施形態では、一相(W相)の電流検出値であるセンサ相電流検出値iw_snsを基に他の相の電流である推定相電流推定値iu_estを推定している。複数個の電流センサを用いる従来の交流電動機の制御システムでは、電流センサ間のゲイン誤差が発生する虞があるが、本実施形態では、1つの電流センサ13にて検出されるセンサ相電流検出値iw_snsを基に他の相の電流である推定相電流推定値iu_estを推定しているので、電流センサのゲイン誤差の影響がなくなる。これにより、交流電動機2において、電流センサのゲイン誤差が引き起こす出力トルク変動を排することができ、例えば車両用の場合は車両振動をなくすことに繋がり、車両の商品性を下げる要素を取り除くことができる。
また、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、トルク指令値trq*等の上位指令値に基づいて算出されるので、トルク指令値trq*の更新周期が長ければ、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の更新周期も長くなる。また、トルク指令値trq*等の上位指令値は、例えばアクセルペダルの踏み込み等の外的要因により急変する場合があり、このような場合にはd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*も急変する。一方、センサ相電流検出値iw_snsおよび電気角θeは、更新周期が短く、また交流電動機2の実際の挙動に基づく値であるので、通常は連続的に変化するものである。d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、更新周期の長いd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*と、更新周期の短いセンサ相電流検出値iw_snsおよび電気角θeという、更新周期等の性質が異なる情報に基づいて算出される。特に本実施形態では、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*、および、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに基づき、指令更新周期Cdより短いセンサ相電流検出周期Csで算出される。上述の通り、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出に更新周期の長いd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いているため、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変に伴ってd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変する虞がある。
そこで本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変に伴い、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが急変することによるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制している。具体的には、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出に用いられるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を変更している(S103)。
これにより、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変が抑制されるので、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した場合であっても、交流電動機2に印加される三相交流電圧vu、vv、vwの急変が抑制され、交流電動機2を安定して駆動可能である。
より具体的には、本実施形態では、制御部15は、高速更新部41を備え、指令更新周期Cdより短い高速更新周期Chでd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を更新し、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstを算出する。
d軸電流指令値id*を高速更新し、d軸高速更新指令値id*_fstとすることにより、d軸実電流値idとの乖離が改善される。同様に、q軸電流指令値iq*を高速更新し、q軸高速更新指令値iq*_fstとすることにより、q軸実電流値iqとの乖離が改善される。これにより、センサ相基準電流位相θxの検知精度が向上し、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が向上する。また、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの精度が向上するので、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した場合であっても、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変が抑制され、交流電動機2を安定して駆動可能である。
特に、本実施形態では、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstの更新周期である高速更新周期Chは、センサ相電流検出値iw_snsの検出周期であるであるセンサ相電流検出周期Csと等しい。そのため、d軸高速更新指令値id*_fstとd軸実電流値idとの乖離がより改善される。同様に、q軸高速更新指令値iq*_fstとq軸実電流値iqとの乖離がより改善される。これにより、センサ相基準電流位相θxの検知精度がより向上し、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度もより向上する。フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの精度が向上するので、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した場合であっても、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変がさらに抑制され、交流電動機2を安定して駆動可能である。
本実施形態では、制御部15が「電流取得手段」、「回転角取得手段」、「電流指令値演算手段」、「電流推定手段」、「電圧指令値演算手段」、「駆動信号生成手段」、「急変抑制手段」、「電流指令値変更手段」を構成する。より詳細には、電流推定部30が「電流取得手段」、「回転角取得手段」および「電流推定手段」を構成し、電流指令値演算部21が「電流指令値演算手段」を構成し、PI演算部23が「電圧指令値演算手段」を構成し、PWM信号生成部25が「駆動信号生成手段」を構成し、高速更新部41が「急変抑制手段」および「電流指令値変更手段」を構成する。
また、図8中のS101が「電流取得手段」および「回転角取得手段」の機能としての処理に相当し、S102が「電流指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S104〜S106が「電流推定手段」の機能としての処理に相当し、S107が「電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S109が「駆動信号生成手段」の機能としての処理に相当し、S103が「急変抑制手段」および「電流指令値変更手段」の機能としての処理に相当する。
さらに、本実施形態では、W相が「センサ相」に対応し、電気角θeが「回転角検出値」に対応する。また、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が「電流指令値」に対応し、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが「電流推定値」に対応し、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が「電圧指令値」に対応し、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLが「駆動信号」に対応する。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による交流電動機の制御装置を図9に基づいて説明する。本実施形態は、高速更新部42の配置以外は第1実施形態と同様であるので、他の構成や処理等についての説明は省略する。本実施形態の高速更新部42にて実行される処理は、第1実施形態の高速更新部41における処理と同様である。
第1実施形態の高速更新部41では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を高速更新したd軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstは、電流推定部30における演算のみに用いられていた。第2実施形態では、高速更新部42で算出されたd軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstは、制御部15による制御全体に用いられる。換言すると、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに加え、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*も、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstに基づいて算出される。
すなわち、本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の演算周期である指令更新周期Cdより短い高速更新周期Chで演算された電流指令値であるd軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstに基づき、d軸圧指令値vd*およびq軸圧指令値vq*を演算している。
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、高速更新部42が「急変抑制手段」および「電流指令値変更手段」を構成する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による交流電動機の制御装置を図10〜図12に基づいて説明する。本実施形態は、第1実施形態の高速更新部41に替えて、ローパスフィルタ(以下、「LPF」という。)処理部43が設けられている点が第1実施形態と異なっている。ここでは、第1実施形態と異なっている点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成や処理についての説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態では、d軸電流指令値id*とd軸実電流値(センサ値)idとの乖離、および、q軸電流指令値iq*とq軸実電流値(センサ値)iqとの乖離を改善すべく、制御部15は、LPF処理部43を有している。
LPF処理部43では、電流指令値演算部21により算出されるd軸電流指令値id*をLPF処理し、d軸LPF処理指令値id*_lpfを算出する。同様に、電流指令値演算部21により算出されるq軸電流指令値iq*をLPF処理し、LPF処理指令値iq*_lpfを算出する。LPF処理部43におけるLPF時定数は、実際の応答性や回路定数などに基づき、適宜設定可能である。
図11では、正トルク時のq軸電流指令値iq*、q軸LPF処理指令値iq*_lpfおよびq軸実電流値iqについて示しており、q軸電流指令値iq*が急変した後、同じ値を維持している例である。図11に示すように、q軸LPF処理指令値iq*_lpfとq軸実電流値iqとの差は、LPF処理していないq軸電流指令値iq*とq軸実電流値iqとの差より小さい。すなわち、q軸電流指令値iq*をLPF処理し、q軸LPF処理指令値iq*_lpfとすることにより、q軸実電流値iqとの乖離が改善されている。
なお、図11では、正トルク時のq軸電流指令値iq*、q軸LPF処理指令値iq*_lpfおよびq軸実電流値iqについて示しているが、他の象限にある場合や、d軸電流についても同様である。
図10に示すように、LPF処理部43にてLPF処理されたd軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfは、電流推定部30に出力され、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算に用いられる。詳細には、d軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfに基づき、逆dq変換部311にて逆dq変換し、V相電流指令値iv*_lpfを算出する。算出されたV相電流指令値iv*_lpfは、位相検知部312におけるセンサ相基準電流位相θxの算出に用いられる。センサ相基準電流位相θxの算出に用いられるβ軸電流推定値iβ_estを、V相電流指令値iv*_lpfおよびセンサ相電流検出値iw_snsに基づいて算出すると、以下の式(17)のようになる。
Figure 0005751234
式(17)に示すように、センサ相基準電流位相θxの算出に用いられるβ軸電流推定値iβ_estは、LPF処理されたd軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfに基づくV相電流指令値iv*_lpfおよびセンサ相電流検出値iw_snsを用いて算出される。これにより、トルク指令値trq*の急変に伴い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した際のセンサ相基準電流位相θxの計算である位相計算への影響を低減することができる。また、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が向上するので、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックして算出されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することができる。
なお、d軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfを、第2実施形態のように制御部15の制御全体に用いると、上位にあたる車両制御回路9が要求する交流電動機2の応答性に対し、実際の応答性をさらに遅らせることになる。よって、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の演算にd軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfを用いることはせず、電流推定部30での演算のみに用いる。
ここで、図12に基づき、本実施形態による交流電動機2の制御処理の全体を説明する。本実施形態における制御処理は、図8に示す第1実施形態の制御処理とは、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を算出した後に実行される処理のみが異なっているので、S103に替えて実行されるS203の処理のみを説明し、他のステップについての説明は省略する。
S102に続いて実行されるS203では、LPF処理部43にてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*をLPF処理し、d軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfを算出し、S104へ移行する。
本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変に伴い、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが急変することによるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制している。具体的には、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出に用いられるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を変更している。
これにより、上記実施形態と同様の効果を奏する。
より具体的には、制御部15は、LPF処理部43を備え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*をLPF処理したd軸LPF処理指令値id*_lpfおよびq軸LPF処理指令値iq*_lpfを算出している。d軸電流指令値id*をLPF処理し、d軸LPF処理指令値id*_lpfとすることにより、d軸実電流値idとの乖離が改善される。同様に、q軸電流指令値iq*をLPF処理し、q軸LPF処理指令値iq*_lpfとすることにより、q軸実電流値iqとの乖離が改善される。これにより、センサ相基準電流位相θxの検知精度が向上し、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が向上する。また、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの精度が向上するので、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した場合であっても、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変が抑制され、交流電動機2を安定して駆動可能である。
なお、本実施形態では、LPF処理部43が「急変抑制手段」および「電流指令値変更手段」を構成する。また、図12中のS203が「急変抑制手段」および「電流指令値変更手段」の機能としての処理に相当する。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による交流電動機の制御装置を図13および図14に基づいて説明する。本実施形態は、第1実施形態の高速更新部41が設けられておらず、指令急変判定部45が設けられている点が第1実施形態と異なっている。ここでは、第1実施形態と異なっている点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成や処理についての説明は省略する。
本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変によるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制すべく、制御部15は、指令急変判定部45を有している。指令急変判定部45では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の前回値と今回値との差が所定の閾値以上である場合、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定する。なお、急変判定に係る閾値は、交流電動機2の応答性や制御部15の演算速度等により決まる値であり、例えば実験やシミュレーション結果等により、適宜設定可能である。また、急変判定は、d軸電流指令値id*またはq軸電流指令値iq*のいずれか一方のみに基づいて判定してもよい。
また、指令急変判定部45は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合、PI演算部23にて演算されるPI演算に用いるフィードバックゲインを小さくすべく、フィードバックゲインの低減に係るゲイン指標、および、急変フラグをPI演算部23に送信する。
ここで、PI演算部23におけるフィードバッグゲインの低ゲイン化について説明する。
PI演算部23のd軸PI演算部231では、フィードバックゲインKPd1およびKId1を用いて式(18)に示す演算が行われ、q軸PI演算部232では、フィードバックゲインKPq1およびKIq1を用いて式(19)に示す演算が行われる。
Figure 0005751234
指令急変判定部45にてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合、ゲイン指標として、PI演算部23におけるPI演算に用いられるフィードバックゲインKPd2、KId2、KPq2、KIq2が、急変フラグとともに指令急変判定部45からPI演算部23に送信される。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変判定時に送信されるフィードバックゲインは、KPd2<KPd1、KId2<KId1、KPq2<KPq1、KIq2<KIq1である。
また、PI演算部23のd軸PI演算部231では、指令急変判定部45から送信されたフィードバックゲインKPd2およびKId2を用いて式(20)に示す演算が行われ、q軸PI演算部232では、フィードバックゲインKPq2およびKIq2を用いて式(21)に示す演算が行われる。
これにより、急変が抑制されたd軸電圧指令値vd*_lim、および、q軸電圧指令値vq*_limが算出される。
Figure 0005751234
ここで、図14に基づき、本実施形態による交流電動機2の制御処理の全体を説明する。本実施形態における制御処理は、図8に示す第1実施形態の制御処理におけるS103の処理を行っておらず、S106とS107との間にS120〜S122の処理が追加されている点が異なっている。そこで、S106に続いて実行されるS120〜S122の処理のみを説明し、他のステップについての説明は省略する。
S106にてd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出した後に以降するS120では、指令急変判定部45にて、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したか否かを判定する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変していないと判定された場合(S120:NO)、S122へ移行する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合(S120:YES)、急変フラグおよびゲイン指標をPI演算部23へ送信するとともに、S121へ移行する。
S121では、PI演算部23におけるPI演算に用いられるフィードバッグゲインをゲイン指標に基づいて小さくする。具体的には、フィードバックゲインをKPd2、KId2、KPq2、KIq2に変更する。
d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変していないと判定された場合(S120:NO)に移行するS122では、PI演算部23におけるPI演算に用いられるフィードバックゲインを変更しない。具体的には、フィードバックゲインとして、KPd1、KId1、KPq1、KIq1を用いる。
続いて移行するS107では、PI演算部23では、フィードバックゲインをKPd1、KId1、KPq1およびKIq1、または、KPd2、KId2、KPq2およびKIq2とし、PI演算によりd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を算出する。ここで算出されるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*は、急変が抑制されたd軸電圧指令値vd*_limおよびq軸電圧指令値vq*_limである。
本実施形態では、交流電動機2の電動機制御装置10の制御部15は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したか否かを判定する指令急変判定部45を備える。
また、指令急変判定部45にてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合(図14中のS120:YES)、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の演算に用いられるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estのフィードバックゲインを小さくする(S121)。
これにより、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変に伴い、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが急変した場合であっても、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estのフィードバックゲインを小さくすることにより、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することができ、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、指令急変判定部45が「急変判定手段」を構成し、PI演算部23が「急変抑制手段」を構成する。また、図14中のS120が「急変判定手段」の機能としての処理に相当し、S121が「急変抑制手段」の機能としての処理に相当する。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による交流電動機の制御装置を図15および図16に基づいて説明する。本実施形態は、第1実施形態の高速更新部41が設けられておらず、指令急変判定部46および電圧指令制限部47が設けられている点が第1実施形態と異なっている。ここでは、第1実施形態と異なっている点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成や処理については説明を省略する。
本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変によるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制すべく、制御部15は、指令急変判定部46および電圧指令制限部47を有している。
指令急変判定部46では、第4実施形態の指令急変判定部45と同様、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の前回値と今回値との差が所定の閾値以上である場合、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定する。また、指令急変判定部46は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合、電圧指令制限部47に急変フラグおよびd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅の制限量を送信する。
電圧指令制限部47は、PI演算部23と逆dq変換部24との間に設けられる。電圧指令制限部47では、指令急変判定部46から急変フラグが送信されてきた場合、急変フラグとともに送信される変動幅の制限量に基づき、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅を直接制限し、急変が抑制されたd軸電圧指令値vd*_lim、および、q軸電圧指令値vq*_limを逆dq変換部24に出力する。
なお、上記実施形態では、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*自体を変更するのではなく、他のパラメータを変更することによってd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制している。これに対し、本実施形態では、算出されたd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*自体を変更することによりd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制している。すなわち、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅を直接制限している、ということである。
ここで、図16に基づき、本実施形態による交流電動機2の制御処理の全体を説明する。本実施形態における制御処理は、図8に示す第1実施形態の制御処理におけるS103の処理を行っておらず、S107とS108との間にS130〜S132の処理が追加されている点が異なっている。そこで、S107に続いて実行されるS130〜S132の処理のみを説明し、他のステップについての説明は省略する。
S107にてd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を算出した後に移行するS130では、指令急変判定部46にて、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したか否かを判定する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変していないと判定された場合(S130:NO)、S132へ移行する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合(S130:YES)、急変フラグおよび変動幅の制限量を電圧指令制限部47へ送信するとともに、S131へ移行する。
S131では、電圧指令制限部47にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅を直接制限し、急変が抑制されたd軸電圧指令値vd*_limおよびq軸電圧指令値vq*_limを算出する。そしてS108に移行する。
d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変していないと判定された場合(S130:NO)に移行するS132では、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅の制限を行わず、S108に移行する。
S108では、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*に基づき、逆dq変換により三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を算出する。なお、S130にて肯定判断され、S131にて急変が抑制されたd軸電圧指令値vd*_limおよびq軸電圧指令値vq*_limが算出された場合は、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*に替えて、急変が抑制されたd軸電圧指令値vd*_limおよびq軸電圧指令値vq*_limを用いる。
本実施形態では、交流電動機2の電動機制御装置10の制御部15は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したか否かを判定する指令急変判定部46を備える。
また、指令急変判定部46にてd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判定された場合(図16中のS130:YES)、電圧指令制限部47にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅を直接制限する(S131)。
これにより、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変に伴い、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが急変した場合であっても、電圧指令制限部47にてd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の変動幅を直接制限するので、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することができ、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、指令急変判定部46が「急変判定手段」を構成し、電圧指令制限部47が「急変抑制手段」を構成する。また、図16中のS130が「急変判定手段」の機能としての処理に相当し、S131が「急変抑制手段」の機能としての処理に相当する。
(他の実施形態)
(ア)上記第1実施形態〜第5実施形態において説明した急変抑制手段は、組み合わせて用いてもよい。具体的には、(1)第1実施形態の高速更新部41または第2実施形態の高速更新部42、(2)第3実施形態のLPF処理部43、(3)第4実施形態の指令急変判定部45、(4)第5実施形態の指令急変判定部46および電圧指令制限部47、の4パターンについて、一部または全部を組み合わせてもよい。(3)および(4)を採用する場合、指令急変判定部45、46は、1つの制御ブロックとしてもよい。
また、(1)〜(4)の全てを組み合わせた場合を例に、フローチャートについて言及しておくと、図8中のS103に続いて図12中のS203の処理を行い、S104に移行する。また、S106に続いて図14中のS120〜S112の処理を行い、S107へ移行する。さらに、S107に続いて図16中のS130〜S132の処理を実行する、といった具合である。
(イ)第1実施形態および第2実施形態の高速更新処理、および、第3実施形態のLPF処理は、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変した場合にのみ実行するようにしてもよい。
具体的には、図6中の高速更新部41、図9中の高速更新部42、または、図10中のLPF処理部43の前段に、例えば第4実施形態の指令急変判定部45と同様の指令急変判定部を追加する。
フローチャートについて言及しておくと、図8中のS102とS103との間に、図14中のS120と同様の指令急変判定ステップを追加し、肯定判断された場合にはS103へ移行し、否定判断された場合にはS104へ移行する。また、図12中のS102とS203との間に、図14中のS120と同様の急変判定ステップを追加し、肯定判定された場合にはS203へ移行し、否定判断された場合にはS104へ移行する。
(ウ)第1実施形態および第2実施形態におけるd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の高速更新に関し、上記実施形態では、d軸高速更新指令値id*_fstおよびq軸高速更新指令値iq*_fstは、制御部15の演算周期であるセンサ相電流検出周期Csで更新していた。他の実施形態では、高速更新指令値の更新周期である高速更新周期は、電流指令値の更新周期よりも短い周期であれば、どのような長さであってもよい。なお、高速更新周期は、センサ相電流検出周期より短くする必要がないので、指令更新周期をCd、センサ相電流検出周期をCs、高速更新周期をChとすれば、高速更新周期Chは、Cs≦Ch<Cdの範囲とすることが好ましい。
また、電流指令値の高速更新に関し、車両や交流電動機の状況等に応じ、電流指令値に対し各種演算を行うことがある。この演算処理を高速更新周期で行うことでも、電流指令値を高速更新するのと同様の効果を得ることができる。すなわち、「電流指令値に関する演算周期を高速更新周期とする」ことは、「指令更新周期より短い高速更新周期で電流指令値を更新する」という概念に含まれるということである。
さらに、トルク指令値等の電流指令値の算出に用いられる上位指令値を高速更新しても同様の効果が得られる。トルク指令値等である電流指令値の上位指令値を高速更新する方法としては、線形補間や細分化等が挙げられる。すなわち、「電流指令値変更手段は、電流指令値の算出に用いられる上位指令値を指令更新周期より短い高速更新周期で更新する」としてもよい、ということである。また、車両や交流電動機の状況等に応じ、上位指令値に対して行われる各種演算を高速更新周期で行うようにしても、同様の効果を得ることができる。すなわち、「上位指令値に関する演算周期を高速更新周期とする」ことは、「指令更新周期より短い高速更新周期で上位指令値を更新する」という概念に含まれるということである。
(エ)上記実施形態では、電圧指令値の演算周期は、センサ相電流検出周期と等しかった。他の実施形態では、電圧指令値の演算周期をCv、センサ相電流検出周期をCs、指令更新周期をCdとすると、電圧指令値の演算周期Cvは、Cs≦Cv≦Cdの範囲で任意に設定可能である。すなわち、上記実施形態のように「電圧指令値演算手段は、センサ相電流検出周期と等しい周期で電圧指令値を演算する」ことに限らず、「電圧指令値演算手段は、指令更新周期と等しい周期で電圧指令値を演算する」、「電圧指令値演算手段は、センサ相電流検出周期より長く、指令更新周期より短い周期で電圧指令値を演算する」としてもよい、ということである。
電圧指令値の更新周期によらず、上記の急変抑制手段を備えることにより、上記実施形態と同様の効果を奏する。
ここで、電流指令値の演算周期が指令更新周期と等しい、すなわちCv=Cdである場合について言及しておく。制御の方式や構成によっては、電流指令値の演算は、指令更新周期と等しい遅い周期で実行されることがある。すなわち、電圧指令値の更新は、センサ相電流検出周期よりも間隔が長くなる。例えば上記第1実施形態にように、電流推定値の演算に用いる電流指令値の更新周期をセンサ相電流検出周期に合わせれば、センサ相電流検出周期毎に電流推定値と電流検出値との乖離が小さくなる。そのため、遅い周期で演算される電圧指令値の演算にフィードバックしたとしても、電圧指令値の演算タイミングでの変動を低減することとなり、上記実施形態と同様の効果を奏することになる。もちろん、高速更新周期は、指令更新周期よりも短ければ、センサ相電流検出周期と等しい場合に限らない。
(オ)第4実施形態では、急変フラグおよびゲイン指標が、指令急変判定部45からPI演算部23に送信されていた。他の実施形態では、指令急変判定部からは急変フラグのみが送信され、PI演算部にてフィードバックゲインを変更するように構成してもよい。
なお、低減化されたフィードバックゲインは、一義的に決められるものでもよいし、軸電流指令値の変動幅に応じて段階的に変化するようにしてもよいし、数式やマップ等から算出されるようにしてもよい。
(カ)同様に、第5実施形態では、急変フラグおよび変動幅の制限量が、指令急変判定部46から電圧指令制限部47に送信されていた。他の実施形態では、指令急変判定部からは急変フラグのみが送信され、電圧指令制限部にて変動幅の制限量を決定するように構成してもよい。
なお、電圧指令値の変動幅の制限量は、一義的に決められるものでもよいし、電流指令値の変動幅に応じて段階的に変化するようにしてもよいし、数式やマップ等から算出してもよい。
(キ)上記実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の前回値と今回値との差(変化度合い)に基づいて急変判定を行っていた。他の実施形態では、例えば車両制御回路から送信されるトルク指令値のように、電流指令値の上位指令の変化度合いに基づいて判定してもよい。
(ク)上記実施形態では、「電流指令値」、「電流推定値」、「電圧指令値」は、いずれもdq軸上のものについて説明したが、各相電流や、その他の軸に基づくものであってもよい。また、電流推定値は、少なくともセンサ相電流検出値、回転角検出値、および、電流指令値に基づいて算出されていればどのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。さらにまた、電圧指令値は、少なくとも電流指令値、および、フィードバックされた電流推定値に基づいて算出されていれば、どのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。
(ケ)電流センサにより相電流を検出するセンサ相は、上記実施形態のW相に限らず、U相またはV相としてもよい。また、センサ相の電流検出値とセンサ相基準電流位相とから電流推定値を算出する推定相は、上記実施形態のU相に限らず、V相またはW相としてもよい。
(コ)上記実施形態では、電流検出値が一相のみとなるためにdq変換が成立しなくなる対策として、他の相の電流を推定してdq変換を成立させる方法を採った。他の実施形態では、一相の電流検出値に基づいてdq変換を成立させるための手段は、これに限定せず、例えば一相のみの電流検出値でも成立するdq変換式を新たに創出して対策してもよい。但し、発明者の研究の結果、どちらの方法でも数式的には同じ結果となることが判明している。なお、一相のみの電流検出値で成立するdq変換式を新たに創出した場合、例えば図8中のS104のような電流推定値を出力するステップが省略されることになるが、一相のみの電流検出値で成立する新たなdq変換式の導出過程に電流推定値を推定する概念が含まれていると解釈する。すなわち、新たに導出されたdq変換式を用いることは、電流推定値を用いる概念を含んでいるものとする。
(サ)ゼロクロス補間部におけるゼロクロス補間方法は、上記実施形態で説明した以外の方法であってもよいし、必要に応じてゼロクロス補間を行わなくてもよい。
なお、ゼロ割りに関しては、式(13)において離散系の影響により推定値が意図しない値で算出されるのを防ぐため、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項に制限値を設けておくことでも対策できる。また、式(13)を制御部15に実装する場合は、上述のように推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことも有効であり、その場合、マップ上で制限値を設けておくことでも対策できる。
(シ)上記実施形態では、交流電動機の印加電圧を制御するインバータは、PWM制御により制御されていたが、他の実施形態では、電流指令値に基づいて制御する制御方法であれば、どのようなものであってもよい。また、正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードは上記実施形態の構成に限らず、電流指令値を用い、電流検出値および当該電流検出値に基づく電流推定値を電流指令値に対してフィードバックする制御方式であれば、どのようなものであってもよい。
(ス)上記実施形態では、交流電動機は、三相永久磁石式同期モータであったが、他の実施形態では、誘導モータやその他の同期モータであってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能および発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たない電動機であってもよい。
交流電動機は、エンジンに対して電動機として動作し、エンジンの始動を行うように構成されていてもよい。また、エンジンを設けなくてもよい。さらに、交流電動機を複数設けてもよいし、複数の交流電動機における動力を分割する動力分割機構等をさらに設けてもよい。
(セ)本発明による交流電動機の制御装置は、上記実施形態のようにインバータと交流電動機を一組のみ設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を二組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
また、交流電動機の制御装置は、電動車両に適用されていたが、電動車両以外に用いてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
1・・・電動機駆動システム
2・・・交流電動機
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)
12・・・インバータ
13・・・電流センサ
14・・・回転角センサ
15・・・制御部(電流取得手段、回転角取得手段、電流指令値演算手段、電流推定手段、電圧指令値演算手段、駆動信号生成手段、急変抑制手段、急変判定手段)

Claims (8)

  1. インバータ(12)によって印加電圧が制御される三相の交流電動機(2)の駆動を制御する交流電動機の制御装置(10)であって、
    前記交流電動機のいずれか一相であるセンサ相に設けられる電流センサ(13)からセンサ相電流検出値をセンサ相電流検出周期で取得する電流取得手段(30)と、
    前記交流電動機の回転角を検出する回転角センサ(14)から回転角検出値を取得する回転角取得手段(30)と、
    前記交流電動機の駆動に係る電流指令値を前記センサ相電流検出周期より長い周期である指令更新周期で更新する電流指令値演算手段(21)と、
    前記センサ相電流検出値、前記回転角検出値、および、前記電流指令値に基づき、電流推定値を算出する電流推定手段(30)と、
    前記電流指令値、および、フィードバックされた前記電流推定値に基づき、電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段(23)と、
    前記電圧指令値に基づき、前記インバータの駆動に係る駆動信号を生成する駆動信号生成手段(25)と、
    前記センサ相電流検出周期よりも長い前記指令更新周期で更新される前記電流指令値の急変に伴い、フィードバックされる前記電流推定値が急変することによる前記電圧指令値の急変を抑制する急変抑制手段(41、42、43、23、47)と、
    を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  2. 前記急変抑制手段は、前記電流推定手段に用いられる前記電流指令値を変更する電流指令値変更手段(41、42、43)を有することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記電流指令値変更手段(41、42)は、前記指令更新周期より短い高速更新周期で前記電流指令値を更新することを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記高速更新周期は、前記センサ相電流検出周期と等しいことを特徴とする請求項3に記載の交流電動機の制御装置。
  5. 前記電圧指令値演算手段は、前記高速更新周期で更新された前記電流指令値に基づき、前記電圧指令値を演算することを特徴とする請求項3または4に記載の交流電動機の制御装置。
  6. 前記電流指令値変更手段(43)は、前記電流指令値をローパスフィルタ処理することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  7. 前記電流指令値が急変したか否かを判定する急変判定手段(45)をさらに備え、
    前記急変判定手段により前記電流指令値が急変したと判定された場合、前記急変抑制手段(23)は、前記電圧指令値演算手段における演算に用いられる前記電流推定値のフィードバックゲインを小さくすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  8. 前記電流指令値が急変したか否かを判定する急変判定手段(46)をさらに備え、
    前記急変判定手段により前記電流指令値が急変したと判定された場合、前記急変抑制手段(47)は、前記電圧指令値の変動幅を直接制限することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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