JP5757304B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、三相のうち一相の相電流を電流センサにより検出して交流電動機の通電を制御する交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とを、インバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを二相又は三相に設けるのではなく一相のみに設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの三相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている。例えば、電流センサで検出した一相の「センサ相」(例えばW相)の電流検出値と、d軸電流指令値及びq軸電流指令値と、交流電動機の電気角とに基づいて、センサ相以外の相(例えばU相とV相)の電流推定値を算出するようにしたものがある(例えば特許文献1)。
また、交流電動機の制御モードとして、一般的に採用される正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードよりも電圧利用率を高められる「矩形波制御モード」の技術が、例えば特許文献2に開示されている。矩形波とは、電流1周期で1パルスの波形をいう。
正弦波PWM制御モード及び過変調PWM制御モードは、電流センサの検出値に基づいて算出したd軸電流及びq軸電流をd軸電流指令値及びq軸電流指令値に追従させるようにフィードバックする「電流フィードバック制御方式」に該当する。これに対し、矩形波制御モードは、電流センサの検出値に基づいて算出したd軸電流及びq軸電流から推定トルクを算出し、この推定トルクをトルク指令値に追従させるようにフィードバックして矩形波電圧の位相を制御するものであり、「トルクフィードバック制御方式」に該当する。
矩形波制御モードは、特に、逆起電力を抑制するための弱め界磁制御が必要となる高回転運転領域で採用され、負のd軸電流である弱め界磁電流の絶対値を最小限とする。また、インバータのスイッチング回数を最少に抑え、スイッチング損失を低減させることができる。このような特性から、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータジェネレータ等の駆動制御において、低回転領域では正弦波制御モード、中回転領域では過変調制御モード、高回転領域では矩形波制御モードというように、電動機の回転数や出力トルク等の動作状態に応じて、すなわち電動機の駆動に必要な電圧によって制御方式を切り替えつつ併用することが有効である。
特開2004−159391号公報 特開2010−124544号公報
ところで、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機は、他の技術分野の交流電動機に比べ、使用される回転数及び出力トルクが広範囲に及ぶため、電流フィードバック制御方式とトルクフィードバック制御方式とを併用できるようにすることが望まれる。それ故、電流センサを一相としつつ、インバータの三相出力端子近傍の小型化やコスト低減を図る技術を車両技術分野で実用化するためには、電流フィードバック制御方式とトルクフィードバック制御方式とを併用可能とする技術が強く求められる。
本発明は上述の課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、三相のうち一相の相電流を電流センサにより検出して交流電動機の通電を制御する制御装置において、電流フィードバック制御方式とトルクフィードバック制御方式とを併用可能とする交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明は、三相の交流電動機を駆動するインバータと、交流電動機の三相のうち一相のセンサ相に流れる電流を検出する電流センサと、インバータを構成する複数のスイッチング素子のオン/オフを切り替えて交流電動機の通電を制御する制御手段とを備える交流電動機の制御装置において、制御手段は、交流電動機の通電の制御方式について、電流フィードバック制御方式及びトルクフィードバック制御方式を切替え可能であることを特徴とする。
「電流フィードバック制御方式」とは、電流センサが検出したセンサ相の電流検出値、又は当該電流検出値に基づく電流推定値を電流指令値に対してフィードバックする制御方式をいう。「トルクフィードバック制御方式」とは、交流電動機の駆動に係るトルク推定値をトルク指令値に対してフィードバックする制御方式をいい、代表的には、電流検出値及び電気角に基づいて算出したトルク推定値をトルク指令値に対してフィードバックする制御方式をいう。
制御手段は、一相のセンサ相の電流検出値に基づいてd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定する電流推定手段を有する。この場合、d軸電流推定値及びq軸電流推定値を直接推定する態様、或いは、センサ相以外の一相の電流推定値を算出してからdq変換によってd軸電流推定値及びq軸電流推定値を間接的に推定する態様を含む。そして、トルクフィードバック制御方式を適用するとき、電流推定手段によって算出されたd軸電流推定値及びq軸電流推定値に基づいてトルク推定値を算出する。
これにより、制御手段は、フィードバック制御方式に応じて電流推定方法を切替え可能であることを特徴とする。
ここで、「交流電動機」は、交流駆動のモータ、発電機、及びモータジェネレータを含むものであり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車の主機として用いられ駆動輪を駆動するためのトルクを発生するモータジェネレータが該当する。また、例えば、モータジェネレータを駆動する電動機制御装置が「交流電動機の制御装置」に該当する。
本発明の構成では、制御手段は、交流電動機の通電の制御方式について、電流フィードバック制御方式及びトルクフィードバック制御方式を切替え可能である
電流フィードバック制御方式は、具体的には正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードである。トルクフィードバック制御方式に比べ、取り得る電圧利用率が低く、また、スイッチング回数が多いためスイッチング損失が相対的に大きい。その反面、特に正弦波PWM制御モードでは、低回転領域でのトルク脈動を小さくすることができる。
一方、トルクフィードバック制御方式は、具体的には矩形波制御モード等である。電流フィードバック制御方式よりも電圧利用率を高められ、また、スイッチング回数を最少に抑えられるためスイッチング損失が相対的に小さい。そのため、高回転領域における出力向上に適している。
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータジェネレータは、使用する回転数及び出力トルクの範囲が非常に広いため、電流フィードバック制御方式だけでは、十分に効率的な制御をすることができない。したがって、本発明の交流電動機の制御装置により、回転数や出力トルク等に応じて電流フィードバック制御方式とトルクフィードバック制御方式とを切替え可能とすることが特に有効である。
本発明の一つの態様の電流推定手段は、以下のような構成とすることが好ましい。
好ましい電流推定手段は、センサ相の軸に一致するα軸、及び当該α軸に直交するβ軸からなる固定座標系におけるα軸電流及びβ軸電流に基づいてセンサ相を基準にした電流位相であるセンサ相基準電流位相を算出し、当該センサ相基準電流位相とセンサ相の電流検出値とに基づいてセンサ相以外の相の電流推定値を算出する。そして、センサ相の電流検出値とセンサ相以外の相の電流推定値とをdq変換してd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定する。
また、α軸電流及びβ軸電流の算出について、センサ相の電流検出値に基づいてα軸電流を算出し、且つ、少なくともトルクフィードバック制御方式を適用するとき、α軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出する。
さらに、この電流推定手段によるα軸電流及びβ軸電流の算出方法について、適用されるフィードバック制御方式に応じて好ましい算出方法を提供する。
α軸電流については、電流フィードバック制御方式を適用するとき、トルクフィードバック制御方式を適用するときのいずれもセンサ相の電流検出値に基づいて算出する。
β軸電流については、電流フィードバック制御方式を適用するときは、dq軸電流指令値や三相電流指令値の電流指令値を用いて算出することができ、好ましくは、センサ相以外の一相の電流指令値とセンサ相の電流検出値とに基づいてβ軸電流を算出するとよい。
一方、電流指令値を用いないトルクフィードバック制御方式を適用するときは、電流指令値に基づいてβ軸電流を算出することができない。そこで、少なくともトルクフィードバック制御方式を適用するときは、α軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出する。ここで「微分値」とは、電流検出タイミングの間の電気角移動量に対するα軸電流の差分値を意味する。
また、トルクフィードバック制御方式を適用するとき、スイッチング素子のオン/オフを切り替えるスイッチタイミング、及び、連続するスイッチタイミングの間に一回以上設定される中間タイミングにおけるセンサ相の電流検出値に基づいてα軸電流を算出し、スイッチタイミング又は中間タイミングのうちいずれか二回のタイミングの間の電気角移動量に対するα軸電流の変化量に基づいてα軸電流の微分値を算出することが好ましい。
これにより、三相のうち一相の相電流を電流センサにより検出し他の相の相電流を推定する交流電動機の制御装置において、電流指令値を用いる電流フィードバック制御方式と、電流指令値を用いないトルクフィードバック制御方式とを併用することができる。
したがって、例えばハイブリッド自動車や電気自動車のモータジュネレータの駆動制御に適用した場合、電流センサの数を減らすことでインバータの三相出力端子近傍の小型化やコスト低減をすることができ、且つ、回転数や出力トルク等の動作状態に応じて、電流フィードバック制御方式である正弦波制御モード又は過変調制御モードと、トルクフィードバック制御方式である矩形波制御モードとを切り替えることで、交流電動機を広範囲且つ効率的に駆動することができる。
本発明の交流電動機の制御装置は、通電制御方式を電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式に切り替えたときのα軸電流及びβ軸電流の好ましい算出方法について、さらに言及する。具体的には、どのタイミングでのα軸電流値による「α軸電流の変化量」に基づいてα軸電流を微分し、β軸電流を算出するのが好ましいかを示す。
以下、β軸電流の算出時を基準として、今回のタイミングの電気角、及び、今回のタイミングでセンサ相の電流検出値に基づいて算出されたα軸電流の値の組を「今回値」という。また、今回の一回前のタイミングの電気角、及び、今回の一回前のタイミングで算出されたα軸電流の値の組を「前回値」、今回の二回前のタイミングの電気角、及び、今回の二回前のタイミングで算出されたα軸電流の値の組を「前々回値」という。「前回値」と「前々回値」とを合わせて「過去値」という。
α軸電流の微分は、基本的に「過去値」と「今回値」とを用いて行う。ただし、トルクフィードバック制御方式に切替え後の一回目にα軸電流を算出するタイミングでは、トルクフィードバック制御方式における過去値は存在しない。そのため、切替え前の電流フィードバック制御方式において最後にα軸電流を算出したタイミングの電気角、及び、算出されたα軸電流の値の組を「前回値」として扱い、最後から二番目にα軸電流を算出したタイミングの電気角、及び、算出されたα軸電流の値の組を「前々回値」として扱う。
そして、前回値と今回値とを用いてα軸電流の微分値を算出する場合は、常に前回値である1組の値を保持しておくことが好ましい。また、前々回値と今回値とを用いてα軸電流の微分値を算出する場合は、常に前々回値及び前回値である2組の値を保持しておくことが好ましい。
トルクフィードバック制御方式に切替わった後は、上述したように、スイッチタイミング同士、及び、中間タイミング同士でα軸電流の微分値を算出することが最も好ましい。そこで、切替え前の電流フィードバック制御方式において最後から二番目と最後にα軸電流を算出したタイミングの電気角、及び、算出されたα軸電流の値の組を保持しておき、切替え後の一回目と二回目にα軸電流を算出するスイッチタイミング又は中間タイミングにおいて、「前々回値」として用いることが好ましい。これにより、切替えの前後を通じて連続した電流推定をすることができ、電流推定値に基づいて算出されるトルク推定値の連続性を好適に確保することができる。
また、本発明の他の態様の電流推定手段は、トルクフィードバック制御方式を適用するとき、所定の演算周期で漸近推定演算を繰り返し実行する。この漸近推定演算では、前回の演算で算出されたd軸電流推定値及びq軸電流推定値に基づくセンサ相の軸方向成分であるセンサ相電流基準値と、今回のセンサ相の電流検出値と、の差である推定誤差に基づいて算出された「補正ベクトル」をdq軸平面上にて積算することによりd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定する。つまり、この漸近推定演算は、dq軸平面上で補正ベクトルを繰り返し演算することによって電流推定値を真値に収束させるものである。
漸近推定演算ではセンサ相軸方向を補正ベクトルの向きとしてもよい。或いは、センサ相軸に直交する方向にも補正し、センサ相軸方向の補正値とセンサ相軸に直交する方向の補正値との合成ベクトルとして補正ベクトルを演算してもよい。この場合、dq軸平面上で電流推定値をより速く真値に収束させることができる。
本発明の実施形態による交流電動機の制御装置が適用される電動機駆動システムの構成を示す図である。 本発明の実施形態による交流電動機の制御装置の全体構成図である。 交流電動機の制御モードを概略的に説明する図である。 交流電動機の動作状態と制御モードとの対応関係を示す図である。 本発明の第1実施形態による交流電動機の制御装置の電流フィードバック制御方式(正弦波制御モード)の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態による交流電動機の制御装置の電流フィードバック制御方式(過変調制御モード)の制御部の構成を示すブロック図である。 図5、図6の制御部の電流推定部の構成を示すブロック図である。 センサ相を基準にした固定座標系(α−β座標系)を説明する図である。 本発明の第1実施形態による交流電動機の制御装置のトルクフィードバック制御方式(矩形波制御モード)の制御部の構成を示すブロック図である。 図9の制御部の電流推定部の構成を示すブロック図である。 矩形波制御モードにおけるスイッチタイミング及び中間タイミングを説明する図である。 (a)スイッチタイミング毎、(b)中間タイミング毎での電流検出値の波形を示す図である。 スイッチタイミングと中間タイミングとでα軸電流の微分値Δiαを算出する比較例でのβ軸電流iβ及びセンサ相基準電流位相θxの算出精度を説明する図である。 スイッチタイミング同士、及び、中間タイミング同士でα軸電流の微分値Δiαを算出する実施例でのβ軸電流iβ及びセンサ相基準電流位相θxの算出精度を説明する図である。 トルクフィードバック制御方式でα軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出するときの補正について説明する図である。 本発明の第1実施形態による電流推定処理のメインフローチャートである。 図16のセンサ相基準電流位相検知処理のサブフローチャートである。 電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式への切替えパターン(1)を示すタイムチャートである。 電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式への切替えパターン(2)を示すタイムチャートである。 電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式への切替えパターン(3)を示すタイムチャートである。 電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式への切替えパターン(4)を示すタイムチャートである。 電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式への切替えパターン(5)を示すタイムチャートである。 トルクフィードバック制御方式から電流フィードバック制御方式への切替えパターン(6)を示すタイムチャートである。 本発明の第1実施形態による電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式への切替え時の電流波形の実験データである。 図24の電流波形に基づくトルク波形の実験データである。 本発明の第1実施形態によるトルクフィードバック制御方式から電流フィードバック制御方式への切替え時の電流波形の実験データである。 図26の電流波形に基づくトルク波形の実験データである。 本発明の第2実施形態による電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態による漸近推定演算を説明するベクトル図である。 本発明の第2実施形態の変形例による電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態の変形例による漸近推定演算を説明するベクトル図である。
以下、本発明による交流電動機の駆動を制御する交流電動機の制御装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による「交流電動機の制御装置」としての電動機制御装置10は、ハイブリッド自動車を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、及び電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えたハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、及び、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
交流電動機2は、例えば変速機等のギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動力は、ギア4を介して車軸5を回転させることにより、駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、及び、これらを接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、及び、シフトスイッチからのシフト信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。車両制御回路9は、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。また、車両制御回路9は、エンジン3の運転を制御する図示しないエンジン制御回路に対し、指令信号を出力する。
図2に示すように、電動機制御装置10は、インバータ12、電流センサ13、及び「制御手段」としての制御部15を備える。
インバータ12には、図示しない昇圧コンバータによる直流電源の昇圧電圧がシステム電圧VHとして入力される。インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。制御部15のPWM信号生成部25から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてスイッチング素子のオン/オフが制御されることにより、交流電動機2に印加される三相交流電圧vu、vv、vwに基づいて交流電動機2の駆動が制御される。
電流センサ13は、交流電動機2のいずれか一相に設けられる。本実施形態では、電流センサ13は、W相に設けられており、以下、電流センサ13の設けられるW相を「センサ相」という。電流センサ13は、W相の相電流をセンサ相の電流検出値iw_snsとして検出し、制御部15に出力する。
以下、本実施形態の説明では、センサ相をW相とする構成を前提として説明する。ただし、他の実施形態では、U相又はV相をセンサ相としてもよい。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。また、回転角センサ14により検出された電気角θeに基づき、交流電動機2のロータの回転数Nが算出される。以下、「交流電動機2のロータの回転数N」を、単に「交流電動機2の回転数N」という。
本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバであるが、その他の実施形態では、ロータリエンコーダ等、他種のセンサを用いてもよい。
制御部15は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部15は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、交流電動機2の動作を制御する。
電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2の回転数N、及び、車両制御回路9からのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、又は「発電機としての回生動作」により電力を生成する。具体的には、回転数N及びトルク指令値trq*の正負によって、以下の4つのパターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数N>0(正転)で、トルク指令値trq*>0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数N>0(正転)で、トルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
ここで、本実施形態の電動機制御装置10による交流電動機2の制御モードについて、図3を参照して説明する。電動機制御装置10は、インバータ12における電力変換について、図3に示す3つの制御モードを切り替えて交流電動機2を制御する。
正弦波PWM制御モード(以下、「正弦波制御モード」という。)は、一般的なPWM制御として用いられるものであり、各相の上下アームのスイッチング素子のオン/オフを、正弦波状の電圧指令と、三角波に代表される搬送波との電圧比較に従って制御する。この結果、上アームのスイッチング素子のオン期間に対応するハイレベル期間と、下アームのスイッチング素子のオン期間に対応するローレベル期間との集合について、一定期間内でその基本波成分が正弦波となるようにデューティが制御される。
正弦波制御モードでは、正弦波状の電圧指令の振幅が搬送波振幅以下の範囲に制限される。そのため、正弦波制御モードでは、インバータ12に印加される入力直流電圧であるシステム電圧VHに対し、交流電動機2への印加電圧の基本波成分を、システム電圧VHの約0.61倍程度までしか高めることができない。以下、インバータ12に印加されるシステム電圧VHに対する交流電動機2の線間電圧の基本波成分(実効値)の比を「変調率」という。
正弦波制御モードでは、正弦波の電圧指令の振幅が搬送波振幅以下の範囲であるため、交流電動機2に印加される線間電圧が正弦波となる。また、搬送波振幅以下の範囲の正弦波成分に3k次高調波成分(kは自然数)を重畳させて電圧指令を生成する制御モードを、ここでは正弦波制御モードに含めるものとする。代表的には、k=1の場合の3次高調波成分を正弦波に重畳させる方式がこれに該当する。これにより、変調率を約0.71まで高めることができる。
この制御方式では、高調波分によって電圧指令が搬送波振幅よりも高くなる期間が生じるが、各相に重畳された3k次高調波成分は線間では打ち消されるので、線間電圧は、正弦波を維持したものとなる。
過変調PWM制御モード(以下、「過変調制御モード」という。)は、電圧指令の正弦波成分の振幅が搬送波振幅より大きい範囲で、上記正弦波制御モードと同様のPWM制御を行なうものである。特に、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませる「電圧振幅補正」によって基本波成分を更に高めることができ、変調率を、正弦波制御モードでの最高変調率から約0.78の範囲まで更に高めることができる。過変調制御モードでは、電圧指令の正弦波成分の振幅が搬送波振幅より大きいため、交流電動機2に印加される線間電圧は、正弦波ではなく歪んだ電圧となる。
正弦波制御モード及び過変調制御モードでは、出力電流のフィードバックによって交流電動機2に印加される交流電圧の振幅及び位相を制御する「電流フィードバック制御」が実行される。
一方、矩形波制御モードでは、上記一定期間内でハイレベル期間及びローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分を交流電動機2に印加する。これにより、変調率は約0.78まで高められる。
矩形波制御モードでは、交流電動機2への印加電圧の振幅が固定されるため、トルク推定値とトルク指令値との偏差に基づく矩形波電圧パルスの位相制御によって「トルクフィードバック制御」が実行される。
図4には、交流電動機2の動作状態と上述の制御モードとの対応関係が示される。
交流電動機2では、回転数や出力トルクが増加すると誘起電圧が高くなるため、モータ駆動に必要なモータ必要電圧が高くなる。そこで、昇圧コンバータによって昇圧されインバータ12に入力されるシステム電圧VHをモータ必要電圧よりも高く設定する必要がある。そして、好ましくはシステム電圧VHの最大値において、制御モードを正弦波制御モードから過変調制御モードに、さらに過変調制御モードから矩形波制御モードに切り替えることで、電圧利用率を向上させる。
図4に概略的に示すように、低回転数域A1ではトルク変動を小さくするために正弦波制御モードが用いられ、中回転数域A2では過変調制御モードが用いられ、高回転数域A3では矩形波制御モードが適用される。特に、過変調制御モード及び矩形波制御モードを適用することにより、交流電動機2の出力が向上する。
ここで、トルクフィードバック制御方式では、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を使用しないため、従来、相電流を検出する電流センサを一相のみに設ける構成の交流電動機の制御装置で矩形波制御モードを用いたとき、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を用いてセンサ相以外の相の電流推定値を算出する技術を適用することができなかった。
すなわち、電流センサを一相のみに設ける構成の交流電動機の制御装置では、電流指令値を使用する電流フィードバック制御方式と電流指令値を使用しないトルクフィードバック制御方式とを併用することができないという問題があった。
それに対し、本実施形態の電動機制御装置10は、電流指令値を用いる電流フィードバック制御方式と、電流指令値を用いないトルクフィードバック制御方式とを併用し、上記の3つの制御モードを切替え可能であることを特徴とする。そのため、制御部15の構成や、制御部15の中の「電流推定手段」としての電流推定部の構成は、そのとき選択されている制御モードによって逐次変わる。
以下、総括的にいう場合の「制御部15」に対し、正弦波制御モード、過変調制御モード、及び矩形波制御モードに対応する制御部の符号をそれぞれ151、152、153として区別し、各制御部の構成、作用を説明する。なお、この区別は説明上の便宜的なものであり、本実施形態では、物理的に同一の回路基板上に設けられた制御部15が、各制御モードに対応するようにソフトウェア処理や専用の電子回路によるハードウェア処理によって切り替えられる。
まず、正弦波制御モードに対応する制御部151、及び過変調制御モードに対応する制御部152について、図5〜図8を参照して説明する。正弦波制御モード及び過変調制御モードは、共に電流フィードバック制御方式であるため共通部分が多い。
図5に示すように、正弦波制御モードに対応する制御部151は、dq軸電流指令値演算部21、電流減算器22、PI演算部23、逆dq変換部24、PWM信号生成部25、及び、電流推定部301を有する。
dq軸電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得したトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、及び、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算される。他の実施形態では、数式等から演算するように構成してもよい。
電流減算器22は、d軸電流減算器221及びq軸電流減算器222を有する。d軸電流減算器221では、電流推定部301にて算出されてフィードバックされるd軸電流推定値id_estとd軸電流指令値id*との差であるd軸電流偏差Δidを算出する。また、q軸電流減算器222では、電流推定部301にて算出されてフィードバックされるq軸電流推定値iq_estとq軸電流指令値iq*との差であるq軸電流偏差Δiqを算出する。
PI演算部23は、d軸PI演算部231及びq軸PI演算部232を有する。d軸PI演算部231では、d軸電流推定値id_estをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差Δidが0に収束するようにd軸電圧指令値vd*をPI演算により算出する。また、q軸PI演算部232では、q軸電流推定値iq_estをq軸電流指令値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差Δiqが0に収束するようにq軸電圧指令値vq*をPI演算により算出する。
逆dq変換部24では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づき、d軸電圧指令値vd*及びq軸電圧指令値vq*を、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*に変換する。
PWM信号生成部25では、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*、及び、インバータ12に印加されるシステム電圧VHに基づいて算出する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、三相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この三相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。
続いて、過変調制御モードに対応する制御部152の構成について、図6を参照し、正弦波制御モードの制御部151の構成と異なる点のみを説明する。
図6に示すように、過変調制御モードの制御部152は、PI演算部230と逆dq変換部24との間に電圧振幅補正部235を有する点、及び、電流推定部302から電流減算器22へのフィードバック経路上にフィルタ処理部26を有する点が、正弦波制御モードの制御部151と異なる。
電圧振幅補正部235は、PI演算部230が出力した電圧指令の正弦波成分の振幅が搬送波振幅より大きくなるように、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませる。これにより、変調率を正弦波制御モードでの最高変調率から約0.78の範囲まで高めることができる(図3参照)。
フィルタ処理部26は、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estをローパスフィルタで処理し、フィルタ処理後のd軸電流推定値id_lpf及びq軸電流推定値iq_lpfを電流減算器22にフィードバックする。
次に、正弦波制御モードの電流推定部301及び過変調制御モードの電流推定部302におけるセンサ相以外の相の電流推定について説明する。これら電流フィードバック制御方式での制御モードでは、dq軸電流指令値演算部21により演算されたd軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を電流推定に用いることができる点が特徴である。
ここで、電流センサ13が二相に設けられている場合、三相電流iu、iv、iwの瞬時値の和が0であるキルヒホッフの法則を利用することにより、電流センサ13が設けられていない残りの一相の電流を容易に算出可能である。
それに対し、電流センサ13が一相(W相)にしか設けられていない本実施形態では、電流推定部301にて、一相のセンサ相の電流検出値iw_sns、及び電気角θeに加え、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*の情報を用い、電流センサ13が設けられていないU相、V相のうち一相の電流を推定する。以下、電流を推定する相を「推定相」という。本実施形態の説明では、推定相をU相とする構成を前提として説明する。ただし、他の実施形態では、センサ相をW相とし推定相をV相としてもよい。
図7に示すように、電流推定部301、302は、センサ相基準電流位相検知部31、基本波推定部32、ゼロクロス補間部33、及び、dq変換部34を有する。
センサ相基準電流位相検知部31は、逆dq変換部311及び位相検知部312を有し、センサ相基準電流位相θxを算出する。
まず、逆dq変換部311では、dq軸電流指令値演算部21により算出されるd軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*、及び電気角θeを取得し、逆dq変換により、推定相でないV相の電流指令値iv*を算出する。なお、他の実施形態で推定相がV相の場合には、U相の電流指令値iu*を算出する。或いは、U相及びV相電流指令値iu*、iv*を算出してもよい。
位相検知部312では、逆dq変換部311にて算出されたV相電流指令値iv*、及び、センサ相の電流検出値iw_snsを用い、α軸電流iα及びβ軸電流iβを算出した後、α−β座標系で定義されるセンサ相基準電流位相θxを算出する。
図8に示すように、α軸はセンサ相であるW相の軸に一致し、β軸はα軸に直交する。センサ相基準電流位相θxは、α軸と、電流振幅Iaの電流ベクトル(Ia∠θx)とがなす、センサ相の電流検出値iw_snsに同期した角度である。正回転、正トルクの力行状態において、W相電流iwの波形が負から正にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxは0[°]であり、W相電流iwの波形が正から負にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxは180[°]である。
ここで、センサ相基準電流位相θxの算出に用いるα軸電流iα、及び、β軸電流iβについて説明する。α軸電流iα及びβ軸電流iβを、各相電流iu、iv、iwを用いて表すと、式(1)、(2)となる。式(1)、(2)中のKは、変換係数である。
Figure 0005757304
また、上述の通り、キルヒホッフの法則より、三相電流iu、iv、iwの瞬時値の和は0となる。すなわち、以下の式(3)が成り立つ。
iu+iv+iw=0 ・・・(3)
ここで、式(1)について式(3)を用いて変形すると、以下の式(4)が得られる。
Figure 0005757304
すなわち、式(4)に示すように、α軸電流iαは、センサ相であるW相電流iwのみに基づいて算出可能である。ここで、W相電流iwとして、センサ相の電流検出値iw_snsを用いると、α軸電流検出値iα_snsは、式(5)のように表される。
Figure 0005757304
また、式(2)を参照し、U相電流iuとして電流指令値iu*、V相電流として電流指令値iv*を用いると、β軸電流推定値iβ_estは、式(6)のように表される。
Figure 0005757304
式(6)では、β軸電流推定値iβ_estは、電流指令値iu*及びiv*から算出されており、電流センサ13により検出されるセンサ相の電流検出値iw_snsの成分が含まれていない。そのため、式(6)により算出されるβ軸電流推定値iβ_estは、必ずしも実電流を精度よく反映した情報にはならない。
そこで、キルヒホッフの法則(式(3))を用い、β軸電流推定値iβ_estにセンサ相の電流検出値iw_snsを含ませるように式(6)を変形すると、以下の式(7)のようになる。
Figure 0005757304
式(7)のように、実電流であるセンサ相の電流検出値iw_snsをβ軸電流推定値iβ_estに含ませることにより、制御変動に応答できるようになり、W相軸成分が小さく、収束しにくい領域を狭小化できるため、β軸電流推定値iβ_estの精度を向上させることができる。つまりは、β軸電流推定値iβ_estを用いて算出されるセンサ相基準電流位相θxの検知精度を向上させることができる。
そして、位相検知部312では、算出されたα軸電流検出値iα_sns(式(5)参照)、及び、β軸電流推定値iβ_est(式(7)参照)を用いると、センサ相基準電流位相θxは、以下の式(8)に基づいて算出可能である。なお、他の実施形態では、式(7)に代えて式(6)によりβ軸電流推定値iβ_estを算出してもよい。
ここで、式(8)を用いて、センサ相基準電流位相θxを逆正接関数(tan-1)で計算する場合、α軸電流iα及びβ軸電流iβの定義によっては、センサ相基準電流位相θxがセンサ相(W相)に同期した角度にはならない場合がある。これは、軸の定義(例えば、α軸とβ軸の入れ替わりや符号反転)によるものである。この場合には、正回転、正トルクにおけるセンサ相の電流検出値iw_snsが負から正にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxが0[°]になり、センサ相の電流検出値iw_snsが正から負にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxが180[°]になるように、すなわち、センサ相電流検出値iw_snsに同期した角度となるように、適宜、算出方法を変更してもよいものとする。例えば、α軸電流iα及びβ軸電流iβの符号を操作してからセンサ相基準電流位相θxを算出してもよく、またα軸電流iαおよびβ軸電流iβ自体を入替えたり、α軸とβ軸との直交関係による位相差90[°]を算出したセンサ相基準電流位相θxに適宜加減してもよい。
Figure 0005757304
基本波推定部32の他相推定部321は、位相検知部312にて算出されたセンサ相基準電流位相θx、及び、センサ相の電流検出値iw_snsを用い、推定相であるU相電流推定値iu_estを算出する。
ここで、センサ相の電流検出値iw_sns、及び、推定相であるU相電流推定値iu_estを、センサ相基準電流位相θxを用いて表すと、各相の位相差は120[°]であるので、式(9)、(10)のようになる。式(9)、(10)中のIaは、電流振幅である。
iw_sns=Ia×sin(θx) ・・・(9)
iu_est=Ia×sin(θx−120°) ・・・(10)
また、U相電流推定値iu_estは、加法定理により式(10)を変形すると、センサ相基準電流位相θx及びセンサ相の電流検出値iw_snsを用いて以下の式(11)のように表される。
Figure 0005757304
また、推定係数iu_kpを式(12)で定義すると、U相電流推定値iu_estは、推定係数iu_kpを用いて式(13)のようにも表される。ここで、推定係数iu_kpは、式(12)で直接演算してもよく、又は式(12)の一部或いは全体をセンサ相基準電流位相θxに基づいて予めマップ化しておき、このマップを参照することにより算出してもよい。
制御部15が一般的な電子制御回路(マイコン)で構成される場合、制御部15に演算式を実装すると、連続時間ではなく離散時間で処理され、センサ検出値や各演算値も指定された分解能(LSB)に基づく離散値として扱われる。ここで、「演算式を実装する」とは、ソフトウェアのプログラムや、ハードウェア回路の構築等を含むものとする。処理負荷の大きい乗算や除算を避けるため、引数をセンサ相基準電流位相θxとし、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことが有効である。このようなマップを設けることにより、離散系への適用を容易にし、マイコンの処理負荷を最小限に留めることができ、演算処理能力の高い高価なマイコンを用いる必要が無くなる。
Figure 0005757304
式(11)または式(13)を参照すると、U相電流推定値iu_estをセンサ相基準電流位相θx、及びセンサ相の電流検出値iw_snsを用いて算出する場合、電流振幅Iaを用いていない。したがって、電流推定において、電流振幅Iaを求める必要がなく、演算すべき変数を削減することができる。
センサ相基準電流位相θx及びセンサ相の電流検出値iw_snsに基づいて算出されたU相電流推定値iu_estは、推定相の電流推定値(参照値)iu_est_refとしてゼロクロス補間部33に出力される。
ここで、センサ相の電流検出値iw_snsが0[A]になるとき、或いは、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が無限大になるとき、式(11)において、0で乗算する「ゼロ掛け」が生じる。また、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が0となるとき、式(11)において、0で除算する「ゼロ割り」が生じる。そのため、推定相であるU相のU相電流推定値iu_estが変動するおそれがある。
そこで、本実施形態では、ゼロクロス補間部33において、電流推定値(参照値)iu_est_refを補間し、ゼロ割り、ゼロ掛けをマスクしている。なお、ゼロ割りに関しては、式(13)において離散系の影響により推定値が意図しない値で算出されるのを防ぐため、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項に制限値を設けておくことでも対策できる。また、制御部15に式(13)を実装する場合、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことも有効であり、その場合、マップ上で制限値を設けておくことでも対策できる。
ゼロクロス補間部33は、ゼロクロス判定部331及び前回値保持部332を有する。
ゼロクロス判定部331では、ゼロクロス条件が成立するか否かを判定する。
本実施形態では、センサ相の電流検出値iw_snsが、0[A]を含む所定範囲内であるとき、ゼロクロス条件が成立する、と判定する。「所定範囲内の値である」とは、センサ相の電流検出値iw_snsの絶対値が所定値以下であること、或いは、推定係数iu_kpの絶対値が所定値以上であることをいう。ここで、「所定値」とは、例えば±5[A]といった具合に電流値で設定してもよいし、5[LSB]といった具合に離散系における分解能に基づいて設定してもよいし、数式等で設定してもよい。
また、センサ相の電流検出値iw_snsとセンサ相基準電流位相θxとが同期していることから、センサ相基準電流位相θxの値によって判定してもよい。
ゼロクロス条件が成立しないと判定された場合、他相推定部321にて算出された電流推定値(参照値)iu_est_refを、そのまま電流推定値(確定値)iu_est_fixとしてdq変換部34へ出力する。
一方、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、d軸電流偏差Δid及びq軸電流偏差Δiq(図5、図6参照)を強制的に0[A]とすることで、d軸電圧指令値vd*及びq軸電圧指令値vq*を固定する。或いは、d軸電圧指令値vd*及びq軸電圧指令値vq*を前回値に保持すること等によって直接固定してもよい。
また、ゼロクロス判定部331は、前回値保持部332から電流推定値(補間値)iu_est_cmpを取得し、この電流推定値(補間値)iu_est_cmpを、電流推定値(確定値)iu_est_fixとしてdq変換部34へ出力する。
前回値保持部332では、予め前回値を保持しておき、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、電流推定値(補間値)iu_est_cmpを算出し、ゼロクロス判定部331に出力する。
例えば、前回値保持部332では、以前に算出された電流推定値(確定値)iu_est_fixについて、直近の所定回数分を、電流推定値(保持値)iu_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値である電流推定値(保持値)iu_est_hldを、電流推定値(補間値)iu_est_cmpとしてゼロクロス判定部331に出力する。
また例えば、前回値保持部332では、以前にdq変換部34にて算出されたd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estについて、直近の所定回数分を、d軸電流推定値(保持値)id_est_hld及びq軸電流推定値(保持値)iq_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値であるd軸電流推定値(保持値)id_est_hld及びq軸電流推定値(保持値)iq_est_hld用い、逆dq変換により算出されたU相電流推定値を、電流推定値(補間値)iu_est_cmpとしてゼロクロス判定部331に出力する。
dq変換部34では、ゼロクロス補間部33から取得した電流推定値(確定値)iu_est_fix、センサ相の電流検出値iw_sns、及び、電気角θeを用い、dq変換によりd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出する。
なお、電流推定部301、302におけるゼロクロス補間方法は、上記実施形態で説明した以外の方法であってもよいし、必要に応じてゼロクロス補間を行わなくてもよい。
dq変換部34におけるd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estの算出について説明する。まず、dq変換の一般式を以下の式(14)に示す。
Figure 0005757304
ここで、キルヒホッフの法則(式(3)参照)よりiv=−iu−iwであり、また、iu=iu_est、iw=iw_snsを式(14)に代入すると、以下の式(15)が得られる。なお、本実施形態では、iu_estとして、ゼロクロス補間された電流推定値(確定値)iu_est_fixを用いる。
Figure 0005757304
式(15)に示すように、三相のうち二相の電流値(検出値または推定値)を用いて、dq変換によりd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出可能である。したがって、他相推定部321では、センサ相以外の二相のうち一相(U相)のみの電流推定値を算出すればよく、もう一方の相(V相)の電流推定値を算出する必要はない。
次に、トルクフィードバック制御方式での動作時における電動機制御装置10の全体構成、及び、特に電流推定に係る構成について、図9〜図15を参照して説明する。
図9に示すように、矩形波制御モードに対応する制御部153は、トルク減算器52、PI演算部53、矩形波発生器54、信号発生器55、電流推定部303及び「トルク推定手段」としてのトルク推定部56を有する。
トルク減算器52は、トルク推定部56からフィードバックされるトルク推定値trq_estとトルク指令値trq*との差であるトルク偏差Δtrqを算出する。
PI演算部53は、トルク推定値trq_estをトルク指令値trq*に追従させるべく、トルク偏差Δtrqが0に収束するように、電圧ベクトルの位相指令値である「電圧位相指令値VΨ」をPI演算により算出する。
矩形波発生器54は、電圧位相指令値VΨと電気角θeとに基づいて矩形波を発生し、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*を出力する。
信号発生器55は、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*に基づき、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切替えに係る電圧指令信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、インバータ12に出力する。
電圧信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、三相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この三相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。
電流推定部303は、電流センサ13が検出したセンサ相の電流検出値iw_snsと、回転角センサ14から取得された電気角θeとに基づいて、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを演算する。
トルク推定部56は、電流推定部303が推定したd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estに基づいて、トルク推定値trq_estをマップ又は数式等により演算し、トルク減算器52にフィードバックする。
次に、矩形波制御モードの電流推定部303におけるセンサ相以外の相の電流推定について、図10を参照し、正弦波制御モード及び過変調制御モードの電流推定部301、302と対比しつつ説明する。
図10に示すように、トルクフィードバック制御方式の電流推定部303の構成は、電流フィードバック制御方式に対し、センサ相基準電流位相検知部36の構成、及び、ゼロクロス補間部33においてセンサ相電流のゼロクロス時に固定する操作量のみが異なり、他の構成は同じである。
まず、センサ相基準電流位相検知部36は、電流フィードバック制御方式のセンサ相基準電流位相検知部31と異なり、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*が入力されないため、逆dq変換部311を有しない。したがって、センサ相以外の相(U相とV相)の電流指令値iu*、iv*は算出されない。
また、位相検知部362は、α軸電流iαとβ軸電流iβとを算出し、その後、α軸電流iαとβ軸電流iβを用いて式(8)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する点、式(8)においてα軸電流iα及びβ軸電流iβの符号等を適宜変更して算出してもよい点は電流フィードバック制御方式と同じであるが、β軸電流iβの算出方法が電流フィードバック制御方式と異なる。すなわち、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有しV相の電流指令値iv*を算出可能な電流フィードバック制御方式と異なり、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有しないトルクフィードバック制御方式では、式(6)、(7)を用いてβ軸電流iβを算出することができない。
そこで、トルクフィードバック制御方式では、α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する方法を採用する。
まず、センサ相の電流検出値に基づいてα軸電流iαを算出するタイミング間での「電気角移動量Δθe[rad]に対するα軸電流iαの変化量」、すなわち、「α軸電流iαの今回値と前回値との差」に基づいて、α軸電流の微分値Δiαを、下式(16)により算出する。
Δiα=−{iα(n)−iα(n−1)}/Δθe ・・・(16)
ここで、電気角移動量Δθeは、前回の電流検出タイミングから今回の電流検出タイミングまでの電気角移動量をラジアン単位で表した値である。また、iα(n)はα軸電流の今回値であり、iα(n−1)はα軸電流の前回値である。
なお、式(16)において、α軸電流iαやβ軸電流iβの定義によって符号が反転する場合は、式(8)による「tan-1(iβ/iα)」の計算に適するように、必要に応じて符号を操作してもよい。或いは、計算した結果、センサ相基準電流位相θxがセンサ相の電流検出値iw_snsに同期しない場合には、符号操作だけでなく位相差90[°]を、算出したセンサ相基準電流位相θxに適宜加減してもよい。この点は、電流フィードバック制御方式と同様である。
上記の技術的思想に基づき、トルクフィードバック制御方式のセンサ相基準電流位相検知部36は、交流電動機2の電流を推定する場合、後述する電流検出タイミング毎に、電流センサ13で検出したセンサ相の電流検出値iw_snsを用いて式(5)によりα軸電流iαを算出する。そして、式(16)により、該電流検出タイミングの間の電気角移動量Δθeに対するα軸電流iαの変化量に基づいてα軸電流iαの微分値Δiαを算出する。そして、α軸電流の微分値Δiαに、後述する補正量Hを加算してβ軸電流iβを算出した後、α軸電流iαとβ軸電流iβを用いて式(8)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。
また、ゼロクロス補間部33では、センサ相電流のゼロクロス時に、上記の電流フィードバック制御方式におけるd軸電圧指令値vd*及びq軸電圧指令値vq*に代えて、電圧位相指令値VΨを固定する。この場合、トルク偏差Δtrq(図7参照)を強制的に0[Nm]としてもよく、或いは、電圧位相指令値VΨを前回値に保持すること等によって直接固定してもよい。これにより、電流推定値iu_estの誤差による電圧位相指令値VΨの変動を防止する。よって、交流電動機2のトルクフィードバック制御が不安定になる可能性を回避することができる。
次に、矩形波制御モードにおける電流検出タイミングの選定について説明する。
図11に示すように、矩形波制御モードにおける各相の電圧波形は、オフ状態である0[V]とオン状態であるシステム電圧VHとを位相180[°]毎に交替する波形である。三相の電圧波形の位相は、互いに120[°]ずれており、インバータ12のいずれかの相のスイッチング素子(図示せず)が電気角60[°]毎にオン/オフすることにより、電圧波形のオン/オフが切替わる。このスイッチング素子のオン/オフタイミングを「スイッチタイミング」という。連続するスイッチタイミング同士の電気角の差は60[°]である。
本実施形態では、電流センサ13によるセンサ相の電流検出を、スイッチタイミング毎に、及び、連続するスイッチタイミングの間に設定される「中間タイミング」毎に行う。
ここで、「中間タイミング」は、連続するスイッチタイミング同士の電気角の差である60[°]を(m+1)等分した電気角毎にm回(mは自然数)設定することができる。例えば、スイッチタイミングに対し30[°]ずれた電気角に一回の中間タイミングを設定することができる。或いは、スイッチタイミングに対し20[°]、40[°]ずれた電気角に二回の中間タイミングを設定してもよく、スイッチタイミングに対し15[°]、30[°]、45[°]ずれた電気角に三回の中間タイミングを設定してもよい。これにより、スイッチングタイミングとその直前又は直後の中間タイミングとの間の電気角移動量、及び、連続する中間タイミング同士間の電気角移動量はいずれも等しくなる。
以下、本実施形態では、代表例として図11に示すように、連続するスイッチタイミング同士の中間の位相に、スイッチタイミングとの間の電気角移動量が30[°]となる一回の中間タイミングを設定する場合について説明する。
センサ相の電流検出を、スイッチタイミング毎のみでなく中間タイミング毎にも行うことが好ましい理由について、図12〜図14を参照して説明する。
図12(a)に示すように、スイッチタイミング毎に検出した電流検出値の波形は、スイッチング素子のスイッチング動作による影響を受けて波形が歪む。一方、図12(b)に示すように、中間タイミング毎に検出した電流検出値の波形は、スイッチング動作による影響をあまり受けないため波形がほとんど歪まない。そのため、スイッチタイミング毎の電流検出値と中間タイミング毎の電流検出値の両方からなる電流波形は、正弦波のように規則的に増減せず、不規則に増減する傾向となる。
また、図12(a)、図12(b)の波形とも、それぞれの波形単独では、ほぼ規則的に増減する。
図13に示す比較例は、スイッチタイミング及び中間タイミングの両方のタイミング毎に、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出し、スイッチタイミングと中間タイミングとで微分して、α軸電流の微分値Δiαを算出したものである。ここで、「スイッチタイミングと中間タイミングとで微分する」とは、スイッチタイミングと中間タイミングとの間の電気角移動量Δθeに対するα軸電流iαの変化量に基づいて、α軸電流の微分値Δiαを算出することをいう。
このように算出したα軸電流の微分値Δiαに基づいて得られたβ軸電流算出値iβ_cal、及びセンサ相基準電流位相算出値θx_cal、並びに、β軸電流実測値iβ_sns、及びセンサ相基準電流位相実測値θx_snsを図13(a)、(b)に示す。
上述のように、スイッチタイミングと中間タイミングとの間では電流検出値が不規則に増減する。この影響を受け、図13(a)に示すように、比較例ではβ軸電流の算出精度が低下し、算出値iβ_calと実測値iβ_snsとが乖離している。さらに、図13(b)に示すように、α軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいたセンサ相基準電流位相θxの算出精度が低下し、算出値θx_calと実測値θx_snsとが乖離する可能性がある。
これに対し、図14に示す実施例では、スイッチタイミング及び中間タイミングの両方のタイミング毎に、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出する。また、α軸電流の微分値Δiαは、スイッチタイミング毎に、スイッチタイミング同士で微分して算出すると共に、中間タイミング毎に、中間タイミング同士で微分して算出する。ここで、「スイッチタイミング同士で微分する」とは、前回のスイッチタイミングから今回のスイッチタイミングまでの電気角移動量Δθeに対するα軸電流iαの変化量に基づいて、α軸電流の微分値Δiαを算出することをいう。また、「中間タイミング同士で微分する」とは、前回の中間タイミングから今回の中間タイミングまでの電気角移動量Δθeに対するα軸電流iαの変化量に基づいて、α軸電流の微分値Δiαを算出することをいう。そして、それぞれのタイミング毎に算出したα軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する。
ここで、連続するスイッチタイミング同士の間に複数回の中間タイミングを設定した場合のα軸電流の微分値Δiαの算出方法について補足する。例えば、スイッチタイミングに対し20[°]、40[°]ずれた電気角に、それぞれ、第1中間タイミング、第2中間タイミングを設定した場合には、前回の第1中間タイミングと今回の第1中間タイミング同士、前回の第2中間タイミングと今回の第2中間タイミング同士というような組合せで微分する。つまり、第1中間タイミングと第2中間タイミングのように、スイッチタイミングに対する電気角が異なる中間タイミング同士で微分するわけではない。
この実施例では、スイッチタイミングと中間タイミングとの間で不規則に増減する電流検出値の影響をほとんど受けないため、図14(a)に示すように、β軸電流iβを精度良く算出することができ、算出値iβ_calと実測値iβ_snsとがよく一致する。さらに、図14(b)に示すように、α軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいたセンサ相基準電流位相θxの算出精度を向上させることができ、算出値θx_calと実測値θx_snsとがよく一致する。
続いて、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出するときの補正について、図15を参照して説明する。
図15において、横軸は電気角であり、波形上にマークのあるタイミングの電気角で電流検出が行われたことを示している。ここでは、スイッチタイミングと中間タイミングとの間の電気角移動量である30[°]が電流検出の電気角移動量Δθeに相当する。
α軸電流iα及びβ軸電流iβが理想的な正弦波であるとすると、実際のβ軸電流iβ0は、α軸電流iαの微分波形であり、「無限小の電気角移動量におけるα軸電流iαの変化量」として定義される。しかし、現実の電動機制御装置10におけるα軸電流の微分値Δiαは、有限の電気角移動量Δθeにおけるα軸電流iαの差分値である。したがって、図15(a)に示すように、α軸電流の微分値Δiαの波形は、実際のβ軸電流iβ0の波形に対して、電気角移動量の半分(Δθe/2)だけ遅れることとなる。
そこで、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを算出するときには、(Δθe/2)に相当する補正量Hを式(17)により算出し、この補正量Hを、式(18)によりα軸電流の微分値Δiαに加算することが好ましい。
H={iα(n−1)+iα(n)}/2×(Δθe/2) ・・・(17)
iβ_est=Δiα+H ・・・(18)
式(17)が示すとおり、補正量Hは、「α軸電流の前回値iα(n−1)と今回値iα(n)との平均値」に電気角移動量の半分(Δθe/2)を乗算した値として算出される。
図15(b)に示すように、式(17)、(18)により算出したβ軸電流推定値iβ_estは、実際のβ軸電流iβ0の波形によく一致する。
ここで、「α軸電流の前回値iα(n−1)と今回値iα(n)、及び対応する電気角移動量Δθe」は、α軸電流の微分値Δiαの算出の場合と同様に、スイッチタイミングには、「前回のスイッチタイミング及び今回のスイッチタイミングにおけるα軸電流iα、及びスイッチタイミング同士間の電気角移動量Δθe」を採用し、中間タイミングには、「前回の中間タイミング及び今回の中間タイミングにおけるα軸電流iα、及び中間タイミング同士間の電気角移動量Δθe」を採用して補正量Hを算出することが好ましい。
これにより、α軸電流の微分値Δiαに基づいて、電気角移動量の半分(Δθe/2)に相当する補正量Hを用い、β軸電流iβを精度良く算出することができる。
なお、上述したβ軸電流iβの算出方法は一例であり、β軸電流iβを精度良く算出可能であれば、上述した算出方法に限定されず、適宜変更してもよい。
以上説明したように、本実施形態の電動機制御装置10は、交流電動機2の動作状態に応じてフィードバック制御方式及び制御モードを切替えつつ、各制御モードに対応する制御部151、152、153(総括して「制御部15」という。)の電流推定部301、302、303(図7、図10参照)によってセンサ相以外の相の電流を推定する。
ここで、電流推定部301、302、303が実行する電流推定処理ルーチンについて、図16のメインフローチャート、及び、図16のステップ20である「センサ相基準電流位相検知処理」の詳細を示す図17を参照して説明する。以下のフローチャートの説明で、記号Sは「ステップ」を示す。
また、上述のように本実施形態では、三相のうちセンサ相としてW相を選択し、電流を推定する推定相としてU相を選択する構成を例示しているため、フローチャートの説明においても、この例による構成を前提として説明する。
また、各ステップを実現する具体的な手段や方法については代表例のみを説明し、その他の採用可能な手段や方法は、上述の図7、図10等を参照する部分の説明に準ずる。
この電流推定ルーチンは、制御部15の電源オン期間中に所定の演算周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、最初のS10では、電流センサ13で検出したセンサ相の電流検出値iw_snsを取得すると共に、回転角センサ14で検出した交流電動機2の電気角θeを取得する。
S20では、センサ相基準電流位相θxを検知する。詳しくは図17に示すように、S21で、交流電動機2の制御モードが正弦波制御モード又は過変調制御モードであるか否か判定する。
電動機制御装置10が正弦波制御モード又は過変調制御モードで動作している場合、S21でYESと判定し、S22に進む。S22では、センサ相基準電流位相検知部31の逆dq変換部311にて、交流電動機2の電気角θeとd軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*とに基づく逆dq変換によってV相の電流指令値iv*を算出する。この場合のV相は、センサ相以外の二相のうち推定相でない「他の一相」である。なお、他の実施形態では、「他の二相」であるU相及びV相の電流指令値iu*、iv*を算出してもよい。
続くS23、S24、S28は、センサ相基準電流位相検知部31の位相検知部312にて行われる。S23では、センサ相の電流検出値iw_snsを用いて、式(5)によりα軸電流iαを算出する。
S24では、他の一相の電流指令値iv*とセンサ相の電流検出値iw_snsとを用いて、式(7)によりβ軸電流iβを算出する。
一方、電動機制御装置10が矩形波制御モードで動作している場合、S21でNOと判定し、S25に進む。S25〜S28は、センサ相基準電流位相検知部36の位相検知部362にて行われる。S25では、センサ相の電流検出値iw_snsを用いて、式(5)によりα軸電流iαを算出する。
S26では、α軸電流iαの電流検出タイミングの間の電気角移動量Δθeに対するα軸電流iαの変化量に基づいて、式(16)によりα軸電流の微分値Δiαを算出する。
ここで「電流検出タイミング間の電気角移動量Δθe」は、定常的には、スイッチタイミング同士間の電気角移動量、及び中間タイミング同士間の電気角移動量を用いることが好ましい。ただし、他の実施形態では、スイッチタイミングと中間タイミングとの間の電気角移動量を用いてもよい。
さらに、過変調制御モードから矩形波制御モードへの切替え時には、後述する切替えパターンによる間隔を採用してα軸電流の微分値Δiαを算出することができる。
S27では、α軸電流の微分値Δiαに基づいて、式(17)、(18)により補正量Hを加算してβ軸電流iβを算出する。
S24又はS27でβ軸電流iβを算出した後は、S28に進み、α軸電流iαとβ軸電流iβとを用いて式(8)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。
この後、S30、S40は、基本波推定部32の他相推定部321にて行われる。
S30では、センサ相基準電流位相θxに応じた推定係数iu_kpを、式(12)により算出し、又はマップから取得する。
S40では、推定係数iu_kpとセンサ相の電流検出値iw_snsとを用いて、式(13)によりU相の電流推定値(参照値)iu_est_refを算出する。
なお、他の実施形態では、推定係数iu_kpを用いず、センサ相基準電流位相θx及びセンサ相の電流検出値iw_snsを用いて、式(11)によりU相の電流推定値iu_estを算出してもよい。
この後、S51〜S54は、ゼロクロス補間部33にて行われる。
S51では、ゼロクロス判定部331にて、現在、センサ相電流のゼロクロス時であるか否かを判定する。この判定は、例えばセンサ相の電流検出値iw_snsが0[A]を含む所定範囲内の値であるか否かによって判定することができる点は電流フィードバック制御方式と同じである。
S51で、センサ相電流のゼロクロス時ではない(NO)と判定された場合、S52に進み、S40で算出したU相の電流推定値(参照値)iu_est_refを、そのままU相の電流推定値(確定値)iu_est_fixとして出力し、S60に進む。
一方、S51で、センサ相電流のゼロクロス時である(YES)と判定された場合、S53に進む。S53では、電流フィードバック制御方式の動作時は、d軸電圧指令値vd*及びq軸電圧指令値vq*を固定し、トルクフィードバック制御方式の動作時は、電圧位相指令値VΨを固定する。
続くS54では、前回値保持部332からU相の電流推定値(補間値)iu_est_cmpを取得し、この電流推定値(補間値)iu_est_cmpを、U相の電流推定値(確定値)iu_est_fixとして設定する。こうしてゼロクロス時のU相の電流推定値(参照値)iu_est_refを補間し、S60に進む。
最後にS60では、dq変換部34にて、センサ相の電流検出値iw_sns、U相の電流推定値(確定値)iu_est_fix、及び電気角θeに基づいて、式(15)によりdq変換を行い、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出する。
以上で、電流推定部301、302、303が実行する電流推定ルーチンを終了する。
次に、本実施形態の電動機制御装置10において通電制御方式を電流フィードバック制御方式の過変調制御モードからトルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードに切替えたときの「切替え時における電流推定方法」について、図18〜図22のタイムチャートを参照して説明する。図18〜図22において、「F/B」は「フィードバック」を、「SW」は「スイッチング」を意味する。また、☆印や◇印のタイミングでは、電流センサ13からのアナログ信号がAD変換器によってデジタル信号に変換されて出力されることを意味している。
切替え時以外の「定常的」なトルクフィードバック制御方式では、上述のように、「今回」と「過去」の二回の電流検出タイミングの間の電気角移動量Δθeに対するα軸電流iαの変化量から算出したα軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流を算出する。しかし、トルクフィードバック制御方式への切替え後、一回目にα軸電流iαを算出するタイミングでは、トルクフィードバック制御方式での「過去」が存在しないため、定常状態のロジックをそのまま適用することができない。また、交流電動機2の制御においては、制御モードが切替わっても、連続した電流推定による安定した駆動が求められる。したがって、切替えの前後を通じて連続した電流推定を可能にするため、切替え時特有の算出方法を規定する必要がある。
まず、図18に示す切替えパターン(1)、及び、図19に示す切替えパターン(2)は、切替え時における電流推定の方法の基本パターンを包括的に示したものである。
図18、図19において、二重線で示すタイミングを境に、電流フィードバック制御方式の過変調制御モードからトルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードに切替わっている。ここで、記号「t」は、電流フィードバック制御方式においては、予め定められた一定周期の電流検出タイミングを示し、トルクフィードバック制御方式においてはスイッチタイミング及び中間タイミングを示す。
トルクフィードバック制御方式への切替え後の「t」の添え字「1s」はα軸電流を算出する切替え後一回目のスイッチタイミングを示し、添え字「1c」はα軸電流を算出する切替え後一回目の中間タイミングを示す。また、「t2s」が示す「α軸電流を算出する切替え後二回目のスイッチタイミング」は、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sが存在するか否かに関わらず、切替え後一回目の中間タイミングt1cの次のスイッチタイミングを意味する。
また、☆印はスイッチタイミングを示し、◇印は中間タイミングを示す。この例では、中間タイミングは、連続するスイッチタイミングの中間の位相に一回、設定される。したがって、スイッチタイミングから中間タイミングまでの電気角移動量、及び、中間タイミングから次のスイッチタイミングまでの電気角移動量は、いずれも定角度30[°]に設定される。
また、「swt−com」は、スイッチタイミングの決定を示す。図18の切替え後直後のタイミングt0では、次のスイッチタイミングt1sを決定する。図18、図19の切替え後一回目の中間タイミングt1cでは、トルクフィードバックの結果に基づいて、次のスイッチタイミングt2sを決定する。
なお、制御モードの切替えは、制御状態に応じて任意のタイミングで指令されるため、切替え後一回目の電流検出タイミングがスイッチタイミングとなるのか中間タイミングとなるのかは成り行き次第である。
そこで、切替え直前の仮想のスイッチタイミングから切替え時までの電気角移動量をθtr[°]であるとすると、30[°]<θtr<60[°]の場合、図18に示すように、切替え後一回目の電流検出タイミングはスイッチタイミングとなる。一方、0[°]<θtr<30[°]の場合、図19に示すように、切替え後一回目の電流検出タイミングは中間タイミングとなる。この場合、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sは存在しない。また、切替え後二回目のスイッチタイミングt2sは、タイミングt0による情報S0、及び、中間タイミングt1cによる情報S1cの一方又は両方に基づいて決定される。
また、切替え前の電流フィードバック制御方式の期間における「t」の添え字「−1」は切替え前の最後の電流検出タイミングを示す。添え字「−2」は切替え前の最後から二番目の電流検出タイミングを、添え字「−3」は切替え前の最後から三番目の電流検出タイミングを示す。
なお、電流フィードバック制御方式で電流検出が実行される一定周期タイミングは、スイッチタイミングの直後のタイミングではなく、実質的に中間タイミングに相当するため、トルクフィードバック制御方式での中間タイミングを示す印と同じ◇印を付している。
電流フィードバック制御方式では、電流推定部301、302は、電流検出タイミング毎にセンサ相の電流検出値に基づいてα軸電流iαを算出し、センサ相の電流検出値と他の一相の電流指令値とに基づいてβ軸電流iβを算出する。そして、α軸電流iαとβ軸電流iβとからセンサ相基準電流位相θxを算出し、センサ相の電流検出値とセンサ相基準電流位相θxとから三相の電流値iu、iv、iwを算出する。詳しくは、本実施形態では、U相電流iuとして推定値iu_estを用い、W相電流iwとして検出値iw_snsを用いる。V相電流ivはキルヒホッフの法則より算出可能である。そして、三相の電流値iu、iv、iwをdq変換してd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出し、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*に対してフィードバックする。
一方、トルクフィードバック制御方式では、電流推定部303は、スイッチタイミング及び中間タイミング毎に、そのタイミングの電気角、及び、センサ相の電流検出値に基づいてα軸電流iαを算出し、その後、以下に説明する切替え時の算出方法によって求めたα軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する。そして、電流フィードバック制御方式と同様に、センサ相基準電流位相θx、三相の電流値iu、iv、iw、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出する。トルク推定部56は、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estに基づいてトルク推定値trq_estを算出し、トルク指令値trq*に対してフィードバックする。
以下、制御モード切替え時における「α軸電流の微分値Δiα」の算出方法について説明する。上述のように、制御モード切替え時には、切替えの前後を通じて連続した電流推定をすることが求められる。そのためには、電流フィードバック制御方式の過変調制御モードとトルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードとで、電流推定値等の制御情報を引き継ぐ必要がある。
そこで本実施形態では、トルクフィードバック制御方式に切替えた後の一回目、又は、一回目及び二回目の電流検出タイミングにおいて、そのタイミングの電気角及び検出される電流である「今回値」と共に、切替え前の電流フィードバック制御方式の動作時の電気角及び検出電流を「過去値」として、α軸電流の微分値Δiαの算出に用いることを特徴とする。
「過去値」を用いる方法には、今回の一回前の値である「前回値」を用いるパターンと、今回の二回前の値である「前々回値」を用いるパターンの2とおりがある。図18、図19において、<p>は「前回値」を用いるパターンを示し、<pp>は「前々回値」を用いるパターンを示す。
例えば、図18の切替え後一回目のスイッチタイミングt1sにおいて、「前回値」を用いるパターン<p>では、切替え前の最後の電流検出タイミングt-1からの電気角移動量に対するα軸電流iαの変化量を微分値Δiα(1s)とする。また、「前々回値」を用いるパターン<pp>では、切替え前の最後から二番目の電流検出タイミングt-2からの電気角移動量に対するα軸電流iαの変化量を微分値Δiα(1s)とする。また、矢印上の(1s)は、矢印が示す電気角移動量がこのときの微分に用いるものであることを示す。
また、図18の切替え後一回目の中間タイミングt1cにおいて、「前回値」を用いるパターン<p>では、トルクフィードバック制御方式に切替え後の一回目のスイッチタイミングt1sのα軸電流iα(1s)を用いて定角度30[°]における微分値Δiα(1c)を算出する。また、「前々回値」を用いるパターン<pp>では、切替え前の最後の電流検出タイミングt-1からの電気角移動量に対するα軸電流iαの変化量を微分値Δiα(1c)とする。図19に示す例でも同様である。
このように、「過去値」として「前回値」を用いる場合には、フィードバック制御方式によらず常に1組の電気角及び電流検出値を保持しておく必要があり、「前々回値」を用いる場合には、常に2組の電気角及び電流検出値を保持しておく必要がある。
次に、トルク推定部56によるトルク推定値trq_estの算出について補足する。
図18、図19に示すように、本実施形態では、あるスイッチタイミングで算出されたd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estと、その次の中間タイミングで算出されたd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estとに基づく平均値によりトルク推定値trq_estを算出する。これにより、トルク推定値trq_estの急激な変動を抑制することができる。
また、図19の切替えパターン(2)の場合、切替え後一回目の中間タイミングt1cにおいては、電流フィードバック制御方式の最後の電流検出タイミングt-1でのd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estとの平均値により、トルク推定値trq_estを算出してもよい。
次に、図20〜図22に示すタイムチャートは、図18、図19に示した切替えパターン(1)、(2)を応用し、切替え後の初回のα軸電流算出タイミングから順次、定常的な電流推定に移行していくパターンを示したものである。
図20に示す切替えパターン(3)は、「過去値」として「前回値」を用いるパターンを採用する。すなわち、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sでは、電流フィードバック制御方式の最後の電流検出タイミングt-1からの電気角移動量に対するα軸電流iαの変化量を微分値Δiα(1s)とする。切替え後一回目の中間タイミングt1c以降は、定常的に、切替え後の「前回値」を用いてα軸電流の微分値Δiαを算出する。
図21に示す切替えパターン(4)、及び、図22に示す切替えパターン(5)は、「過去値」として「前々回値」を用いるパターンを採用する。そして、トルクフィードバック制御方式への切替え後、切替え後一回目の中間タイミングt1cでは、電流フィードバック制御方式の最後の電流検出タイミングt-1からの電気角移動量に対するα軸電流iαの変化量を微分値Δiα(1c)とする点、及び、切替え後二回目のスイッチタイミングt2s以降は、定常的にスイッチタイミング同士、及び、中間タイミング同士でα軸電流の微分値Δiαを算出する点で共通する。
ただし、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sにおいて、図22の切替えパターン(5)では、切替え前の最後から二番目の電流検出タイミングt-2からの電気角移動量に対するα軸電流iαの変化量を微分値Δiα(1s)とするのに対し、図21の切替えパターン(4)では、微分値Δiα(1s)を算出しない点が異なる。すなわち、切替えパターン(4)では、切替え前の最後から二番目の電流検出タイミングt-2の電気角、及びタイミングt-2でのα軸電流iαを「過去値」として用いず、また、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sの電気角、及びタイミングt1sでのα軸電流iα(1s)を「今回値」として用いない。
切替えパターン(4)、(5)は、定常的に、スイッチタイミング同士、及び、中間タイミング同士でα軸電流を微分してβ軸電流iβを算出するものであるため、β軸電流iβの算出精度を向上させることができる。また、切替え後一回目の中間タイミングt1cで「前々回値」を用いる電流フィードバック制御方式の最後の電流検出タイミングt-1は実質的に中間タイミングであるため、「中間タイミング同士」相当の微分がされることとなり、好ましい。なお、図19の切替えパターン(2)のようにタイミングt0の次が中間タイミングとなる場合は、切替え後二回目の中間タイミングt2c以降、「中間タイミング同士での微分」が行われる。
なお、切替えパターン(5)の場合、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sで、「前々回値」として電流フィードバック制御方式の最後から二番目の電流検出タイミングt-2の電気角、及びタイミングt-2での電流検出値を用いると、実質的に「スイッチングタイミングと中間タイミングでの微分」となり、このタイミングでの微分値のみがそれ以降の微分値と性質が異なるものとなる。しかし、トルク推定値trq_estの算出にあたって、「中間タイミング同士での微分値」に基づいて算出したd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estとの平均値によりトルク推定値trq_estを算出することで、スイッチタイミングの電流検出値の影響が希釈化されるため、許容することができる。
次に、図23は、上記とは逆に、トルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードから電流フィードバック制御方式の過変調制御モードへの切替えパターン(6)を示すタイムチャートである。
図23において、トルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードでのn回目の中間タイミングtncの後、電流フィードバック制御方式の過変調制御モードに切替わっている。なお、トルクフィードバック制御方式でのα軸電流の微分値Δiαの算出について、切替えパターン(4)、(5)のようにスイッチタイミング同士、及び、中間タイミング同士で微分するパターンを例示したが、図20の切替えパターン(3)のようにスイッチタイミングと中間タイミングで微分するパターンであってもよい。また、切替え前の最後のタイミングはスイッチタイミングであってもよい。
電流フィードバック制御方式の過変調制御モードへの切替え後一回目のスイッチタイミングは、トルクフィードバック制御方式での情報に基づき決定される。ここで、過変調制御モードへの切替え後一回目のスイッチタイミングでは、電流検出してからスイッチングするようにしてもよい。
続く電流検出タイミングtn+1以降は、今回値のみで電流推定する。この点だけを見れば、電流フィードバック制御方式での制御中は「過去値」を保持する必要はないように考えられる。しかし、電流フィードバック制御方式から再度トルクフィードバック制御方式に切り替わるかもしれない可能性を想定すると、「過去値」を常時、保持しておくことが好ましい。
また、トルクフィードバック制御方式における中間タイミングは、上述のとおり、連続するスイッチタイミング同士の間に複数設定してもよい。連続するスイッチタイミング同士の間に複数の中間タイミングを設定した場合、上記の切替えパターン(4)、(5)に対し、中間タイミングの数に応じた数の「過去値」を保持し、対応する中間タイミング同士で微分することが好ましい。
次に、本実施形態の電動機制御装置10による制御モードの切替え時の実験データについて、図24〜図27を参照して説明する。
図24、図25は、電流フィードバック制御方式の過変調制御モードからトルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードへの切替えにおいて、上記の切替えパターン(5)を適用したときの電流波形及びトルク波形を示したものである。
図24に示すように、切替えの前後を通じて、u相、v相、w相の三相電流、d軸電流及びq軸電流は連続している。また、図25に示すように、トルク推定値、及びトルク推定値をスムージング処理した値も連続している。この結果より、本実施形態による過変調制御モードから矩形波制御モードへの切替えは実用上問題がないことが確認できる。
図26、図27は、トルクフィードバック制御方式の矩形波制御モードから電流フィードバック制御方式の過変調制御モードへの切替えにおいて、上記の切替えパターン(6)を適用したときの電流波形及びトルク波形を示したものである。
図26に示すように、切替えの前後を通じて、u相、v相、w相の三相電流、d軸電流及びq軸電流は連続している。また、図27に示すように、トルク推定値、及びトルク推定値をスムージング処理した値も連続している。この結果より、本実施形態による矩形波制御モードから過変調制御モードへの切替えも実用上問題がないことが確認できる。
(第1実施形態の効果)
(1)本実施形態の電動機制御装置10は、三相のうち一相の相電流を電流センサ13により検出し、他の二相の相電流を推定するものである。電流センサ13をセンサ相のみに設けることで、電流センサ13の数を減らすことができる。これにより、インバータ12の三相出力端子近傍を小型化し、また、電動機制御装置10のコストを低減することができる。
また、電流センサ13の数を1つにすることで、複数個の電流センサを用いる従来の交流電動機の制御システムで発生しうる、電流センサのゲイン誤差の影響が無くなる。これにより、交流電動機2において、複数個の電流センサのゲイン誤差が引き起こす出力トルク変動を排することができ、例えば車両用の場合は車両振動を無くすことに繋がり、車両の商品性を下げる要素を取り除くことができる。
電動機制御装置10の制御部15は、電流推定部301、302、303におけるセンサ相以外の相の電流推定方法について、電流フィードバック制御方式での動作時とトルクフィードバック制御方式での動作時とで電流推定方法を切り替える。
具体的には、α軸電流iα及びβ軸電流iβの算出について、電流指令値を用いる電流フィードバック制御方式では、センサ相以外の相の電流指令値に基づいてβ軸電流iβを算出し、一方、電流指令値を用いないトルクフィードバック制御方式では、α軸電流の微分値Δiαに基づいて、電流指令値を用いることなくβ軸電流iβを算出する。
ここで、電流センサを一相のみに設けた構成の従来技術と対比して説明する。
特開2004−159391号公報(特許文献1)に開示された技術では、電流センサで検出した一相(例えばU相)の電流検出値と、d軸電流指令値及びq軸電流指令値と、交流電動機の電気角の情報とに基づいて他の二相(例えばV相とW相)の電流推定値を算出する。
具体的には、交流電動機の回転子とステータのU相軸とが成す角度と、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*から得られた指令電流位相角とを加算した「U相電流位相角θ´」を求め、U相電流位相角θ´とU相電流検出値Iuを用いて、下式(91)により電流振幅Iaを算出する。この電流振幅Iaを、U相電流位相角θ´から±120[°]ずらした電気角におけるsin値に乗じ、下式(92)、(93)により他の二相の電流推定値Iv、Iwを算出する。
Ia=Iu/[√(1/3)×{−sin(θ´)}] ・・・(91)
Iv=√(1/3)×Ia×{−sin(θ´+120°)} ・・・(92)
Iw=√(1/3)×Ia×{−sin(θ´+240°)} ・・・(93)
この電流推定方法は、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*が必要であるため、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有しないトルクフィードバック制御方式に適用することができない。
特開2008−86139号公報には、電流センサで検出した一相(例えばU相)の電流検出値と、三相電流指令値に基づいて他の二相(例えばV相とW相)の電流推定値を算出する技術が開示されている。具体的には、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を逆dq変換して得られる三相電流指令値Iu*、Iv*、Iw*のうちセンサ相以外の二相の電流指令値Iv*、Iw*を推定値として扱う。
この電流推定方法も、上記特開2004−159391号公報の技術と同様にd軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*が必要であるため、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有しないトルクフィードバック制御方式に適用することができない。
これらの従来技術に対し、本実施形態の電動機制御装置10の制御部15は、トルクフィードバック制御方式の動作時には、α軸電流の微分値Δiαに基づいて、電流指令値を用いることなくβ軸電流iβを算出することができる。この電流推定方法は、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であり、α軸電流iαとβ軸電流iβとがsin波とcos波の関係にあることに着目した結果、想到するに至ったものである。
これにより、三相のうち一相の相電流を電流センサにより検出する交流電動機の制御装置において、電流フィードバック制御方式と、トルクフィードバック制御方式とを併用することができる。特に本実施形態では、一相の電流検出値に基づいて他の相の相電流を推定することで、相電流を適切に推定することができる。
したがって、本実施形態のようにハイブリッド自動車等の交流電動機2に適用された場合、交流電動機2の回転数等や出力トルク等の動作状態に応じて、正弦波制御モード又は過変調制御モードと矩形波制御モードとを切り替えることで、交流電動機2を効率的に駆動することができる。
(2)本実施形態の電流推定部301、302、303では、センサ相を基準にした固定座標系(α−β座標系)におけるα軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいてセンサ相基準電流位相θxを算出するようにしたので、センサ相を基準にした実際の電流位相θxを算出することができる。また、センサ相基準電流位相θxとセンサ相の電流検出値iw_snsとに基づいて他の相の電流推定値iu_estを算出するようにしたので、実際の電流位相θxの高調波成分や通常起こり得る変動の影響を織り込んで他の相の電流推定値iu_estを精度良く算出することができる。
再び上記の従来技術と対比すると、特開2004−159391号公報の技術、及び、特開2008−86139号公報の技術は、いずれも電流指令値に基づいてセンサ相以外の相の電流を推定するものである。ところで、交流電動機の電流ベクトルは、制御誤差やフィードバック制御等の影響により、電流指令値に対応した指令電流ベクトルに対して変動しながら、指令電流ベクトルに追従している。そのため、実際の電流位相と指令電流位相との間には「ずれ」が生じており、指令電流位相は実際の電流位相を精度良く反映した情報にはならない。その点、これらの従来技術では、実際の電流位相を全く考慮しておらず、指令電流位相角から求めたU相電流位相角を用いて他の二相の電流推定値を算出するため、特に車両用のようにトルク変化や回転速度変化が要求される場合には、電流推定値を精度良く算出することができず、交流電動機の制御が成立しなくなる可能性がある。
それに対し、本実施形態の電動機制御装置10の制御部15は、α−β座標系におけるα軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいて電流推定するため、電流推定値iu_estの算出精度を向上させることができる。
(3)本実施形態では、電流フィードバック制御方式でのβ軸電流iβの好ましい算出方法として、「センサ相以外の一相の電流指令値とセンサ相の電流検出値とに基づいてβ軸電流iβを算出する」方法を推奨する。つまり、β軸電流iβを算出するとき、「センサ相以外の二相の電流指令値」に基づいて算出するよりも、「センサ相以外の一相の電流指令値とセンサ相の電流検出値」とに基づいて算出する方がより好ましい。その理由は、以下のようである。
まず、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出する一方で、センサ相の電流検出値iw_snsを用いないでβ軸電流iβを算出する場合には、α−β座標系において「電流検出値の影響が大きく、センサ相基準電流位相θxの算出誤差が小さい領域」が比較的狭くなる。そのため、センサ相基準電流位相θxの算出精度、及びセンサ相基準電流位相θxに基づいた電流推定値iu_estの算出精度を十分に高めることができない。
それに対し、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出すると共に、センサ相の電流検出値iw_snsを用いてβ軸電流iβを算出する場合には、α−β座標系において、「電流検出値の影響が大きく、センサ相基準電流位相θxの算出誤差が小さい領域」を拡大することができる。したがって、センサ相の電流検出値の影響をβ軸電流iβに含ませることができ、その結果、センサ相基準電流位相θxの算出精度を向上させることができる。これにより、d軸電流やq軸電流の周期的な制御変動を低減することができると共に、電流指令値の変化時等の過渡時に、電流推定値iu_estの算出精度、言い換えれば、真値に対する収束性を向上させることができる。
また、電流フィードバック制御方式において、トルクフィードバック制御方式と同様にα軸電流の微分値に基づいてβ軸電流iβを算出することも可能である。しかし、以下二点の理由により必ずしも適するものとは限らないと考えられる。一つ目には、微分値を用いるには波形が変化していることが前提となるため、特に低回転領域や低電流といった正弦波の変化が少ない場合には、十分な微分精度が得られない可能性があるからである。二つ目には、センサ相の電流検出値iw_snsに基づくα軸電流iαは必ずしも理想正弦波のような規則増減波形にはならないため、該波形の微分により算出されるβ軸電流iβの波形が歪む可能性があるからである。
(4)本実施形態では、トルクフィードバック制御方式でのα軸電流の微分値Δiαの好ましい算出方法として、「スイッチタイミング及び中間タイミングの両方のタイミング毎に、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出」し、「α軸電流の微分値Δiαは、スイッチタイミング毎に、スイッチタイミング同士でα軸電流iαを微分して算出すると共に、中間タイミング毎に、中間タイミング同士でα軸電流iαを微分して算出する」方法を推奨する。
上述のように、スイッチングタイミング毎に検出した電流検出値の波形は、スイッチング動作による影響を受けて波形が歪むのに対し、中間タイミング毎に検出した電流検出値の波形は、スイッチング動作の影響をあまり受けないため波形がほとんど歪まない。そのため、スイッチタイミング毎の電流検出値と中間タイミング毎の電流検出値の両方からなる電流波形は、正弦波のように規則的に増減せず、不規則に増減する傾向となる。
一方、スイッチングタイミング毎に検出した電流検出値の波形、中間タイミング毎に検出した電流検出値の波形のいずれも、それぞれの波形では、ほぼ規則的に増減する。したがって、スイッチタイミング同士、又は中間タイミング同士でα軸電流を微分すれば、スイッチタイミングと中間タイミングとの間で不規則に増減する電流検出値の影響をほとんど受けずに、β軸電流iβを精度良く算出することができる。さらに、α軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいたセンサ相基準電流位相θxの算出精度を向上させることができる。
(5)本実施形態では、連続するスイッチタイミング同士の中間の位相に、スイッチタイミングとの間の電気角移動量が30[°]となるように、一回の中間タイミングを設定している。これにより、最低限の回数の中間タイミングを確保することができ、また、スイッチタイミングと中間タイミングとの間の電気角移動量が30[°]で一定となるため、制御を簡素化し、マイコンなどの処理負荷を軽減することができる。
(6)本実施形態では、電流フィードバック制御方式からトルクフィードバック制御方式に切替えた後の一回目、又は、一回目及び二回目の電流検出タイミングにおいて、そのタイミングの電気角、及び算出されたα軸電流の値の組である「今回値」と共に、切替え前の電流フィードバック制御方式の動作時の電流検出タイミングの電気角、及びα軸電流の値の組を「過去値」として、α軸電流の微分値Δiαの算出に用いる。
これにより、制御方式が切替わっても、切替え前の電流推定値等の制御情報を引き継ぐことができ、切替えの前後を通じて連続した電流推定をすることができる。
(6)本実施形態のトルク推定部56は、あるスイッチタイミングで算出されたd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estと、その次の中間タイミングで算出されたd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estとに基づく平均値によりトルク推定値trq_estを算出する。これにより、トルク推定値trq_estの急激な変動を抑制することができる。
また、上記の切替えパターン(5)では、切替え後一回目のスイッチタイミングt1sで実質的に「スイッチングタイミングと中間タイミングでの微分」が行われる。しかし、トルク推定値trq_estの算出にあたって、「中間タイミング同士での微分値」に基づいて算出したd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estとの平均値によりトルク推定値trq_estを算出することで、スイッチタイミングの電流検出値の影響を希釈化することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有しないトルクフィードバック制御方式を適用するとき、α軸電流iαの微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出することで、センサ相基準電流位相θxを算出する。その後、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有する電流フィードバック制御方式と同様、式(11)又は式(13)を用いて、センサ相基準電流位相θxとセンサ相の電流検出値iw_snsとに基づきセンサ相以外の電流推定値iu_estを算出し、式(15)を用いて、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを推定する。
これに対し第2実施形態では、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有しないトルクフィードバック制御方式を適用するとき、別の推定方法である「漸近推定演算」を用いて、1相のセンサ相の電流検出値iw_snsからd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを推定する。以下、第2実施形態の基本例について図28、図29を参照して説明し、変形例について図30、図31を参照して説明する。
漸近推定演算では、回転座標系であるdq軸平面上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiwを積算してd軸実電流値id及びq軸実電流値iqに漸近させることにより、精度良くd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを推定する。
図28に示すように、第2実施形態の基本例の電流推定部601は、電流基準値算出部61、減算器62、ゲイン補正部63、センサ相軸方向補正値算出部64、減算器65、他相電流推定部66、及び、遅延素子67を有し、所定の演算周期で漸近推定演算を繰り返し実行する。ここで、今回入力されるW相電流検出値iw_snsに基づく漸近推定演算を第n回目の演算とし、入力されるW相電流検出値を「iw_sns(n)」、電気角を「θ(n)」とし、この演算によって得られる電流推定値を「i#_est(n)」(ただし、#は、d、q、u、v、w)のように表す。
電流基準値算出部61には、前回の演算で算出されたd軸電流推定値id_est(n−1)及びq軸電流推定値iq_est(n−1)が入力され、d軸電流推定値id_est(n−1)及びq軸電流推定値iq_est(n−1)、電気角θe(n)を用いて逆dq変換し、センサ相であるW相成分の電流基準値iw_bfを演算する。
減算器62では、電流基準値iw_bfと今回のW相電流検出値iw_sns(n)との差分であるW相推定誤差Δiwを演算する。
ゲイン誤差補正部63では、W相推定誤差ΔiwにゲインKを乗じ、補正後の推定誤差KΔiwを演算する。ゲインKは、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estに設けられたローパスフィルタ(以下、「LPF」という。)の役割をなすものであり、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estの変化の緩急を調整する。ゲインKの値は、0<K<1の範囲に含まれ、そのLPFの所望の時定数の演算回数(時定数÷演算周期)をKlpfとすると、(1/Klpf)で表される。
センサ相軸方向補正値算出部64では、Δiu=0、Δiv=0とし、補正後の推定誤差KΔiwをdq変換し、センサ相軸方向のd軸電流補正値id_crr(n)及びq軸電流補正値iq_crr(n)を演算する。本実施形態では、センサ相軸方向のd軸電流補正値id_crr(n)及びq軸電流補正値iq_crr(n)が「補正ベクトル」に対応する。以下、センサ相軸方向のd軸電流補正値id_crr(n)及びq軸電流補正値iq_crr(n)をそれぞれd軸成分及びq軸成分とするベクトルを、適宜「補正ベクトル(Δid、Δiq)」と表す。
なお、補正ベクトルは、常に(Δid、Δiq)の1セットで示すものであり、電流フィードバック制御方式でPI演算部23等に入力されるd軸電流偏差Δid及びq軸電流偏差Δiq(図5、図6参照)とは異なるものであることを注意的に述べておく。
減算器65では、遅延素子67を経由してフィードバックされた前回のd軸電流推定値id_est(n−1)からセンサ相軸方向d軸電流補正値id_crr(n)を減算し、d軸電流推定値id_est(n)を演算する。また、遅延素子67を経由してフィードバックされた前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)からセンサ相軸方向q軸電流補正値iq_crr(n)を減算し、q軸電流推定値iq_est(n)を演算する。
減算器65において、前回のd軸電流推定値id_est(n−1)に対しセンサ相軸方向d軸電流補正値id_crr(n)を減算し、且つ、前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)に対しセンサ相軸方向q軸電流補正値を減算することが「補正ベクトルをdq軸平面上にて積算する」ことに対応する。
こうして電流推定部601で推定されたd軸電流推定値id_est(n)及びq軸電流推定値iq_est(n)は、遅延素子67を経由して電流基準値算出部61へフィードバックされる。
他相電流推定部66では、電気角θe(n)に基づき、d軸電流推定値id_est(n)及びq軸電流推定値iq_est(n)を逆dq変換し、3相電流推定値iu_est(n)、iv_est(n)、iw_est(n)の一部又は全部を必要に応じて演算する。
基本例における漸近推定演算を表した漸化式を式(19)に示す。式(19)中のW相基準の位相θw(n)は、電気角θe(n)+120[°]に相当する。
また、「K×{cos(θw(n))}×Δiw」がセンサ相軸方向d軸電流補正値id_crr(n)に対応し、「K×{−sin(θw(n))}×Δiw」がセンサ相軸方向q軸電流補正値iq_crr(n)に対応する。
Figure 0005757304
式(19)に示す漸化式をベクトル図で表現すると、図29(a)のようになる。
図29(b)に示すように、回転座標系であるdq軸平面上において、W相軸が相対的に回転することを利用し、矢印YIで示す補正ベクトル(Δid、Δiq)を積算していくことにより、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estをd軸実電流値id及びq軸実電流値iqに漸近させている。
ゲインKは、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estがd軸実電流値id及びq軸実電流値iqに漸近する速度を律するためのフィルタ要素である。ゲインKが大きすぎると、すなわち1に近い値であると、「d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estと、d軸実電流値id及びq軸実電流値iqとの差である誤差ベクトルΔie」がW相軸に対して直交に近くなり、d軸実電流値id及びq軸実電流値iqを中心とする円周方向に渦を描くように動く。そのため、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estがd軸実電流値id及びq軸実電流値iqに漸近しにくくなる。このような点を考慮し、ゲインKは、0<K<1の範囲で、d軸実電流値id及びq軸実電流値iqに漸近しやすくなるような値に適宜設定される。
(第2実施形態の変形例)
上記の基本例では、補正ベクトル(Δid、Δiq)の方向がセンサ相軸方向であるのに対し、以下に説明する変形例では、補正ベクトル(Δid、Δiq)に、センサ相軸に直交する方向のベクトル成分が含まれる点が異なる。以下、「センサ相軸に直交する軸」をβ軸といい、「センサ相軸に直交する方向」を、「直交方向」という。
図30に示すように、変形例の電流推定部602は、基本例の構成(図28参照)に加え、直交方向補正値算出部68を有している。
変形例では、センサ相軸方向補正値算出部64にてセンサ相軸方向のd軸電流補正値id_crr(n)及びq軸電流補正値iq_crr(n)を算出する。また、減算器65にて、遅延素子67を経由してフィードバックされた前回のd軸電流推定値id_est(n−1)に対し、センサ相軸方向d軸電流補正値id_crr(n)を減算し、W相方向に補正されたd軸電流暫定推定値id_est’(n)を算出する。同様に、減算器65にて、遅延素子67を経由してフィードバックされた前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)に対し、センサ相軸方向q軸電流補正値iq_crr(n)を減算し、W相方向に補正されたq軸電流暫定推定値iq_est’(n)を算出する。d軸電流暫定推定値id_est’(n)及びq軸電流暫定推定値iq_est’(n)は、基本例のd軸電流推定値id_est(n)及びq軸電流推定値iq_est(n)と同様である。
直交方向補正値算出部68では、センサ相軸に直交する成分であるβ軸推定誤差Δiβを式(20)により演算する。また、式(21)により、β軸推定誤差Δiβを用い、dq変換により直交方向のd軸電流補正値id_crr_β(n)及びq軸電流補正値iq_crr_β(n)を演算する。
減算器69では、d軸電流暫定推定値id_est’(n)から直交方向d軸電流補正値id_crr_β(n)を減算し、d軸電流推定値id_est(n)を演算する。また、q軸電流暫定推定値iq_est’(n)から直交方向q軸電流補正値iq_crr_β(n)を減算し、q軸電流推定値iq_est(n)を演算する。
Figure 0005757304
変形例における漸近推定演算を表した漸化式を式(22)に示す。
Figure 0005757304
式(22)に示す漸化式をベクトル図で表現すると図31のようになる。図31では、センサ相軸方向のd軸電流補正値id_crr(n)及びq軸電流補正値iq_crr(n)と、直交方向のd軸電流補正値id_crr_β(n)及びq軸電流補正値iq_crr_β(n)との合成ベクトルが「補正ベクトル(Δid、Δiq)」に相当する。
図31に示すように、変形例の電流推定部602では、前回の演算で算出されたd軸電流推定値id_est(n−1)及びq軸電流推定値iq_est(n−1)のセンサ相成分である電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとの差である推定誤差ΔiWに基づいて算出された補正ベクトル(Δid、Δiq)を、dq軸平面上にて積算することにより、d軸電流推定値id_est(n)及びq軸電流推定値iq_est(n)を推定する。
変形例では、基本例に対し、d軸電流推定値id_est(n−1)及びq軸電流推定値iq_est(n−1)を、センサ相軸方向のみでなく直交方向にも補正することで、d軸実電流値id及びq軸実電流値iqへの収束応答性を高めることができる。
変形例では、前回のd軸電流推定値id_est(n−1)に対し、減算器65にてセンサ相軸方向d軸電流補正値id_crr(n)を減算、及び、減算器69にて直交方向d軸電流補正値id_crr_β(n)を減算し、且つ、前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)に対し、減算器65にてセンサ相軸方向q軸電流補正値iq_crr(n)を減算、及び、減算器69にて直交方向q軸電流補正値iq_crr_β(n)を減算することが、「補正ベクトルをdq軸平面上にて積算する」ことに対応する。
以上のように第2実施形態の基本例及び変形例では、漸近推定演算により補正ベクトル(Δid、Δiq)をdq軸平面上にて積算することにより、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を用いずに、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを推定することができる。
よって、電動機制御装置10は、電流フィードバック制御方式を適用するとき、例えば第1実施形態の電流推定方法でd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを推定し、一方、トルクフィードバック制御方式を適用するとき、本実施形態の漸近推定演算によってd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを推定する、というように交流電動機2の通電の制御方式を切り替えることができる。
第2実施形態も第1実施形態と同様に、好ましくはセンサ相の電流検出値iw_sns及び電気角θeを常時「前回値」として保持しておくことで、制御方式の切替え時における連続性を確保することができる。この点、第2実施形態は漸化式を用いる性質上、制御方式に関係なく、センサ相の電流検出値iw_sns及び電気角θeの「前回値」を保持しておく必要があるため、切替え時の連続性を確保することができる。
なお、第2実施形態の漸近推定演算は、電流フィードバック制御方式が適用される低回転領域では、前回の演算と今回の演算との電気角変化Δθeが相対的に小さくなり、また低トルク領域では、電流変化が相対的に小さくなるため、推定精度が低下する傾向にある。したがって、電流フィードバック制御方式では、漸近推定演算を使用するよりも、電流指令値を用いた推定方法を使用する方がより好ましい。
(その他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、電流フィードバック制御方式を適用するとき電流推定部301、302が採用することのできる最良の電流推定方法として、α−β座標系において、センサ相の電流検出値iw_snsとセンサ相以外の一相の電流指令値(例えばiv*)とからβ軸電流iβを求める方法(式(7))を説明した。また、これと比べるとセンサ相基準電流位相θxの検出精度が劣る可能性あるが、センサ相の電流検出値iw_snsとセンサ相以外の二相の電流指令値(iu*、iv*)とからβ軸電流iβを求める方法(式(6))もあることを述べた。
しかし、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有する電流フィードバック制御方式を適用するとき電流推定部が採用することのできる電流推定方法は、上記実施形態のように、α−β座標系におけるα軸電流iα及びβ軸電流iβに基づくものに限らない。例えば、従来技術として紹介した特開2004−159391号公報(特許文献1)又は特開2008−86139号公報の技術を、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*を有する電流フィードバック制御方式に限って適用することは可能である。
つまり、上述の説明でこれらの従来技術を否定したのは、電流フィードバック制御方式とトルクフィードバック制御方式とで同じ座標系、或いは、少なくとも基本部分が共通の推定ロジックを用いて制御を切り替えることが困難であるからに過ぎない。したがって、それぞれの制御方式に採用可能な電流推定方法を個別に選択するという思想に基づいて、従来技術の電流推定方法を電流フィードバック制御方式に適用してもよい。その場合、制御方式の切替え時における連続性を考慮してもよいし、考慮しなくてもよい。
要するに、本発明のコアとなる技術的思想は、交流電動機の制御装置において、電流指令値に対して電流推定値をフィードバックする制御と、トルク指令値に対して電流推定値に基づくトルク推定値をフィードバックする制御とで、電流推定方法を切り替えるというものである。よって、電流指令値を用いるどのような推定方法と、電流指令値を用いないどのような推定方法とを組み合わせることも、本発明の技術的範囲に含まれる。
(イ)電流センサにより相電流を検出するセンサ相は、上記実施形態のW相に限らず、U相又はV相としてもよい。また、センサ相の電流検出値とセンサ相基準電流位相θxとから電流推定値を算出する推定相は、上記実施形態のU相に限らず、V相又はW相としてもよい。
(ウ)「電流フィードバック制御方式」は、PWM指令信号を用いた正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードに限らず、電流指令値を用い、電流検出値、又当該電流検出値に基づく電流推定値を電流指令値に対してフィードバックする制御方式であれば、どのようなものであってもよい。
また、「トルクフィードバック制御方式」は、上記実施形態の矩形波制御モードに限らず、交流電動機の駆動に係る電流検出値に基づくトルク推定値をトルク指令値に対してフィードバックする制御方式であれば、どのようなものであってもよい。或いは、トルク推定値に代えて、電流以外の物理量についての検出値、例えばトルクメータ等でトルクを直接検出した値をトルク指令値に対してフィードバックすることとしてもよい。
(エ)上記第1実施形態では、電流検出値が一相のみとなるためにdq変換が成立しなくなる対策として、制御部15の電流推定部301、302、303で、センサ相以外の相の電流を推定してdq変換を成立させる方法を採った。しかし、一相の電流検出値に基づいてdq変換を成立させるための手段は、これに限定せず、例えば一相のみの電流検出値でも成立するdq変換式を新たに創出して対策してもよい。
この方法では、図16のS52又はS54のようなセンサ相以外の相の電流推定値を出力するステップが顕在的には存在しないものの、dq変換式の内部で、このステップに相当する演算が包括的に実行されると解釈する。ただし、発明者の研究の結果、どちらの方法でも数式的には同じ結果となることが判明している。
(オ)上記実施形態の交流電動機は、永久磁石式同期型の三相交流電動機であったが、他の実施形態では、誘導電動機やその他の同期電動機であってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能、及び発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たなくてもよい。
(カ)本発明による交流電動機の制御装置は、上記実施形態のようにインバータと交流電動機を一組のみ設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を二組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
(キ)本発明による交流電動機の制御装置は、図1に示す構成のハイブリッド自動車の交流電動機に限定されず、どのような構成の電動車両の交流電動機に適用してもよい。また、電動車両以外の交流電動機に適用してもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
2・・・交流電動機、
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)、
12・・・インバータ、
13・・・電流センサ、
15・・・制御部(制御手段)、
301、302、303、601、602・・・電流推定部(電流推定手段)、
56・・・トルク推定部(トルク推定手段)。

Claims (13)

  1. 三相の交流電動機(2)を駆動するインバータ(12)と、
    前記交流電動機の三相のうち一相のセンサ相に流れる電流を検出する電流センサ(13)と、
    前記インバータを構成する複数のスイッチング素子のオン/オフを切り替えて前記交流電動機の通電を制御する制御手段であって、前記交流電動機の通電の制御方式について、前記電流センサが検出した前記センサ相の電流検出値、及び当該電流検出値に基づく電流推定値を電流指令値に対してフィードバックすることで前記交流電動機の通電を制御する電流フィードバック制御方式、及び、前記交流電動機の駆動に係るトルク推定値をトルク指令値に対してフィードバックすることで前記交流電動機の通電を制御するトルクフィードバック制御方式を切替え可能である制御手段(15)と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    前記一相のセンサ相の電流検出値に基づいてd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定する電流推定手段(301、302、303)を有し、
    前記トルクフィードバック制御方式を適用するとき、前記電流推定手段によって算出されたd軸電流推定値及びq軸電流推定値に基づいて前記トルク推定値を算出し、
    前記電流推定手段は、
    前記センサ相の軸に一致するα軸、及び当該α軸に直交するβ軸からなる固定座標系におけるα軸電流及びβ軸電流に基づいて前記センサ相を基準にした電流位相であるセンサ相基準電流位相を算出し、当該センサ相基準電流位相と前記センサ相の電流検出値とに基づいて前記センサ相以外の相の電流推定値を算出し、前記センサ相の電流検出値と前記センサ相以外の相の電流推定値とをdq変換してd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定し、
    前記α軸電流及び前記β軸電流の算出について、前記センサ相の電流検出値に基づいて前記α軸電流を算出し、且つ、少なくとも前記トルクフィードバック制御方式を適用するとき、前記α軸電流の微分値に基づいて前記β軸電流を算出することを特徴とする交流電動機の制御装置(10)。
  2. 前記電流推定手段(301、302)は、前記電流フィードバック制御方式を適用するとき、前記センサ相以外の一相又は二相の電流指令値を用いて前記β軸電流を算出することを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記電流推定手段は、前記電流フィードバック制御方式を適用するとき、前記センサ相以外の一相の電流指令値と前記センサ相の電流検出値とに基づいて前記β軸電流を算出することを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記電流推定手段(303)は、前記トルクフィードバック制御方式を適用するとき、
    前記スイッチング素子のオン/オフを切り替えるスイッチタイミング、及び、連続する前記スイッチタイミングの間に一回以上設定される中間タイミングにおける前記センサ相の電流検出値に基づいて前記α軸電流を算出し、
    前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングのうちいずれか二回のタイミングの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  5. 前記中間タイミングは、連続する前記スイッチタイミングの中間に一回設定されることを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  6. 前記電流推定手段は、前記トルクフィードバック制御方式を適用するとき、
    前記スイッチタイミング毎に、今回の前記スイッチタイミングと前回の前記スイッチタイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出すると共に、前記中間タイミング毎に、今回の中間タイミングと前回の前記中間タイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出することを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  7. 前記交流電動機の通電制御方式を前記電流フィードバック制御方式から前記トルクフィードバック制御方式に切替えたとき、
    少なくとも切替え後の三回目以降に前記α軸電流を算出する前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングでは、
    前記スイッチタイミング毎に、今回の前記スイッチタイミングと前回の前記スイッチタイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出すると共に、前記中間タイミング毎に、今回の中間タイミングと前回の前記中間タイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出することを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  8. 前記交流電動機の通電制御方式を前記電流フィードバック制御方式から前記トルクフィードバック制御方式に切替えたとき、
    切替え後の最初又は二回目に前記α軸電流を算出するタイミングでは、切替え前の前記電流フィードバック制御方式での動作時に前記センサ相の電流検出値を検出したタイミングの電気角、及び、そのタイミングで算出された前記α軸電流の値の組である過去値を用いて前記α軸電流の微分値を算出することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  9. 切替え後の最初に前記α軸電流を算出する前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングでは、今回の前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングと、切替え前の最後に前記センサ相の電流検出値を検出したタイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出することを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  10. 切替え後の最初に前記α軸電流を算出する前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングでは、今回の前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングと、切替え前の最後から二番目に前記センサ相の電流検出値を検出したタイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出し、
    切替え後の二回目に前記α軸電流を算出する前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングでは、今回の前記スイッチタイミング又は前記中間タイミングと、切替え前の最後に前記センサ相の電流検出値を検出したタイミングとの間の電気角移動量に対する前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出することを特徴とする請求項に記載の交流電動機の制御装置。
  11. 三相の交流電動機(2)を駆動するインバータ(12)と、
    前記交流電動機の三相のうち一相のセンサ相に流れる電流を検出する電流センサ(13)と、
    前記インバータを構成する複数のスイッチング素子のオン/オフを切り替えて前記交流電動機の通電を制御する制御手段であって、前記交流電動機の通電の制御方式について、前記電流センサが検出した前記センサ相の電流検出値、及び当該電流検出値に基づく電流推定値を電流指令値に対してフィードバックすることで前記交流電動機の通電を制御する電流フィードバック制御方式、及び、前記交流電動機の駆動に係るトルク推定値をトルク指令値に対してフィードバックすることで前記交流電動機の通電を制御するトルクフィードバック制御方式を切替え可能である制御手段(15)と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    前記一相のセンサ相の電流検出値に基づいてd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定する電流推定手段(601、602)を有し、
    前記トルクフィードバック制御方式を適用するとき、前記電流推定手段によって算出されたd軸電流推定値及びq軸電流推定値に基づいて前記トルク推定値を算出し、
    前記電流推定手段は、前記トルクフィードバック制御方式を適用するとき、
    所定の演算周期で繰り返し実行される漸近推定演算において、前回の演算で算出されたd軸電流推定値及びq軸電流推定値に基づく前記センサ相の軸方向成分であるセンサ相電流基準値と、今回の前記センサ相の電流検出値と、の差である推定誤差に基づいて算出された補正ベクトルをdq軸平面上にて積算することによりd軸電流推定値及びq軸電流推定値を推定することを特徴とする交流電動機の制御装置(10)。
  12. 前記漸近推定処理における前記補正ベクトルは、前記センサ相の軸方向の補正値と前記センサ相軸に直交する方向の補正値との合成ベクトルとして算出されることを特徴とする請求項11に記載の交流電動機の制御装置。
  13. 前記トルク推定値は、前記電流推定手段によって算出された少なくとも二回の前記電流推定値の平均値に基づいて算出されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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