JP5920635B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、三相のうち一相の相電流を電流センサにより検出して交流電動機の通電を制御する交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とをインバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを二相又は三相に設けるのではなく一相のみに設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの三相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている。例えば、特許文献1には、一つの電流センサで検出した一相の「センサ相」(例えばW相)の電流検出値と、d軸電流指令値及びq軸電流指令値と、交流電動機の電気角とに基づいて、センサ相以外の相(例えばU相とV相)の電流推定値を算出する3相交流電動機の制御装置が記載されている。
また、交流電動機の制御モードとして、一般的に採用される正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードよりも電圧利用率を高められる「矩形波制御モード」が知られている。矩形波制御モードは、電流センサの検出値に基づいて算出したd軸電流及びq軸電流をd軸電流指令値及びq軸電流指令値に追従させるようにフィードバックする正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードと異なり、電流センサの検出値に基づいて算出したd軸電流及びq軸電流から推定トルクを算出し、この推定トルクをトルク指令値に追従させるようにフィードバックして矩形波電圧の位相を制御するものである。特許文献2には、二つの電流センサを備え、矩形波制御モードにおける相電流を検出する交流電動機の制御装置が記載されている。
特開2004−159391号公報 特開2010−124544号公報
ところで、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機は、他の技術分野の交流電動機に比べ、使用される回転数及び出力トルクが広範囲に及ぶため、「電流フィードバック制御方式」に該当する正弦波PWM制御モードや過変調PWM制御モードと「トルクフィードバック制御方式」に該当する矩形波制御モードとに適用可能であることが望まれる。矩形波制御モードは、特に、逆起電力を抑制するための弱め界磁制御が必要となる高回転運転領域で採用され、負のd軸電流である弱め界磁電流の絶対値を最小限とする。また、インバータのスイッチング回数を最少に抑え、スイッチング損失を低減させることができる。このような特性から、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータジェネレータ等の駆動制御において、例えば、低回転領域では正弦波制御モード、中回転領域では過変調制御モード、高回転領域では矩形波制御モードというように、電動機の回転数や出力トルク等の動作状態に応じて、すなわち電動機の駆動に必要な電圧によって制御方式を切り替えつつ併用することが有効である。しかしながら、特許文献2に記載の「トルクフィードバック制御方式」では、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を用いないため、「電流フィードバック制御方式」に適用される特許文献1の技術を特許文献2に記載の制御方式に適用することができない。
本発明の目的は、d軸電流指令値及びq軸電流指令値を用いることなく任意のタイミングにおいて検出された一相の電流検出値に基づいて他の相の電流推定値を算出する交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明は、交流電動機の制御装置であって、三相の交流電動機を駆動するインバータと、交流電動機の各相のうちの一相であるセンサ相に流れる電流を検出する電流センサと、センサ相軸と同方向のα軸とセンサ相軸と直交方向のβ軸とによって設定される固定座標系におけるα軸電流とβ軸電流とに基づいてセンサ相を基準にした電流位相であるセンサ相基準電流位相を算出しセンサ相基準電流位相と電流センサで検出したセンサ相の電流検出値とに基づいてセンサ相以外の他の相の電流推定値を算出する電流推定手段を有しインバータの各相のスイッチング素子のオン/オフを切り替える交流電動機の通電を制御する制御手段と、を備える。
制御手段が有する電流推定手段は、スイッチング素子のオン/オフを切り替えるタイミングであるスイッチタイミング毎及びスイッチタイミングとは異なる中間タイミング毎にセンサ相の電流検出値に基づいてα軸電流を算出する手段と、スイッチタイミング毎にスイッチタイミングの間隔におけるα軸電流の変化量に基づいてα軸電流の微分値を算出しα軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出し、中間タイミング毎に該中間タイミングの間隔におけるα軸電流の変化量に基づいてα軸電流の微分値を算出しα軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出する手段と、を有し、中間タイミングは、スイッチタイミングの間隔に対して不等間隔に設定されていることを特徴とする。
本発明の交流電動機の制御装置では、センサ相を基準にした固定座標系(α−β座標系)におけるα軸電流とβ軸電流とに基づいてセンサ相基準電流位相を算出し、センサ相基準電流位相とセンサ相の電流検出値とに基づいてセンサ相以外の他の相の電流推定値を算出する。このとき、α軸電流とβ軸電流との位相差は90[°]でありα軸電流とβ軸電流とがsin波とcos波との関係にあることに着目し、センサ相の電流検出値に基づいてα軸電流を算出し、α軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出する。これにより、他の相の電流指令値を用いることなくβ軸電流を算出することができる。したがって、実際の電流位相の高調波成分や通常起こり得る変動の影響を織り込んで他の相の電流推定値の算出精度を向上させることができる。
また、α軸電流は、スイッチタイミング毎及びスイッチタイミングとは異なるタイミングであって連続するスイッチタイミングの間のタイミングである中間タイミング毎にセンサ相の電流検出値に基づいて算出される。β軸電流は、スイッチタイミング毎にスイッチタイミングの間隔におけるα軸電流の変化量、すなわち、今回のスイッチタイミングから過去のスイッチタイミングまでのα軸電流の変化量、に基づいて算出されるα軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出し、中間タイミング毎に中間タイミングの間隔におけるα軸電流の変化量、すなわち、今回の中間タイミングから過去の中間タイミングまでのα軸電流の変化量、に基づいて算出されるα軸電流の微分値に基づいてβ軸電流を算出する。これにより、スイッチタイミングと中間タイミングとの間で不規則に増減する電流検出値の影響をほとんど受けることなく、β軸電流を精度良く算出することができる。したがって、α軸電流とβ軸電流とに基づいたセンサ相基準電流位相の算出精度を向上させることができる。
また、本発明の交流電動機の制御装置では、電流及び電気角の検出をスイッチング素子のオン/オフを切り替えるタイミングであるスイッチタイミングと、連続するスイッチタイミング間のタイミングであってスイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングの両方のタイミングで検出する。
ここで、連続するスイッチタイミング間のタイミングであってスイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングは、次のように定義する。
連続するスイッチタイミング間に電流及び電気角を検出するタイミングが1つ存在する場合、スイッチタイミング間のタイミングの直前のスイッチタイミングとスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量と、スイッチタイミング間のタイミングの直後のスイッチタイミングとスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量とが、異なるタイミングを指す。
また、連続するスイッチタイミング間に電流及び電気角を検出するタイミングが2以上のM個存在する場合、連続するスイッチタイミングのうち早い方のスイッチタイミングの直後のスイッチタイミング間のタイミングを1番目とし当該早い方のスイッチタイミングから遅くなる順に1からMまでの番号をつけると、直前のスイッチタイミングと1番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、1番目のスイッチタイミング間のタイミングと2番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、m(2≦m≦M−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングと(m−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、m番目のスイッチタイミング間のタイミングと(m+1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、M番目のスイッチタイミング間のタイミングと(M−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、及び、M番目のスイッチタイミング間のタイミングと直後のスイッチタイミングとの電気角移動量が、全て同じである場合を除くタイミングを指す。これにより、連続するスイッチタイミング間の任意のタイミングにおいて電流センサによってセンサ相の電流を検出することができる。したがって、交流電動機の運転状態に適したタイミングを設定することができる。
本発明の一実施形態による交流電動機の制御装置が適用される電動機駆動システムの構成を示す図である。 本発明の一実施形態による交流電動機の制御装置の全体構成図である。 交流電動機の制御モードを概略的に説明する図である。 本発明の一実施形態による交流電動機の制御装置の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態による交流電動機の制御装置の電流推定部の構成を示すブロック図である。 センサ相を基準にした固定座標系(α−β座標系)を説明する図である。 矩形波制御モードにおけるスイッチタイミング及び中間タイミングを説明する図である。 (a)スイッチタイミング毎、(b)中間タイミング毎での電流検出値の波形を示す図である。 α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出するときの補正について説明する図である。 本発明の一実施形態による電流推定処理のメインフローチャートである。 図10の電流推定処理のサブフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による「交流電動機の制御装置」としての電動機制御装置10は、図1に示すように、ハイブリッド自動車を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、及び電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えたハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、及び、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、いわゆる、モータジェネレータ(図中、「MG」と記す)である。
交流電動機2は、例えば変速機等のギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動力は、ギア4及び車軸5を介して駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力を授受可能に構成されている
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、及び、これらを接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、及び、シフトスイッチからのシフト信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。車両制御回路9は、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。また、車両制御回路9は、エンジン3の運転を制御する図示しないエンジン制御回路に対し、指令信号を出力する。
電動機制御装置10は、図2に示すように、インバータ12、電流センサ13、回転角センサ14、及び「制御手段」としての制御部15を備える。
インバータ12には、図示しない昇圧コンバータによる直流電源の昇圧電圧がシステム電圧VHとして入力される。インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。スイッチング素子には、例えばIGBT(InsulatedGate Bipolar Transistor)、MOS(Metal OxideSemiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。制御部15の信号発生器55から出力される信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてスイッチング素子のオン/オフが制御されることにより、交流電動機2に印加される三相交流電圧vu、vv、vwに基づいて交流電動機2の駆動が制御される(図4参照)。
電流センサ13は、交流電動機2のいずれか一相に設けられる。本実施形態では、電流センサ13は、W相に設けられており、以下、電流センサ13が設けられるW相を「センサ相」という。電流センサ13は、W相の相電流をセンサ相の電流検出値iw_snsとして検出し、制御部15に出力する。
以下、本実施形態の説明では、センサ相をW相とする構成を前提として説明する。ただし、センサ相は、U相またはV相であってもよい。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。また、回転角センサ14により検出された電気角θeに基づき、交流電動機2のロータの回転数Nが算出される。
本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバであるが、ロータリエンコーダ等、他種のセンサを用いてもよい。
制御部15は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部15は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、交流電動機2の動作を制御する。
電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2のロータ回転数N、及び、車両制御回路9からのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、又は「発電機としての回生動作」により電力を生成する。具体的には、回転数N及びトルク指令値trq*の正負によって、以下の4つのパターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数N>0(正転)で、トルク指令値trq*>0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のオン/オフ動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数N>0(正転)で、トルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のオン/オフ動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
ここで、本実施形態の電動機制御装置10による交流電動機2の制御モードについて、図3を参照して説明する。電動機制御装置10は、インバータ12における電力変換について、図3に示す3つの制御モードを切り替えて交流電動機2を制御する。
正弦波PWM制御モード(以下、「正弦波制御モード」という。)は、一般的なPWM制御として用いられるものであり、各相の上下アームのスイッチング素子のオン/オフを、正弦波状の電圧指令と、三角波に代表される搬送波との電圧比較に従って制御する。これにより、上アームのスイッチング素子のオン期間に対応する電圧ハイレベル期間と、下アームのスイッチング素子のオン期間に対応する電圧ローレベル期間との集合について、電流1周期でその基本波成分が正弦波となるようデューティが制御される。
正弦波制御モードでは、正弦波状の電圧指令の振幅が搬送波振幅以下の範囲に制限される。そのため、正弦波制御モードでは、インバータ12に印加される入力直流電圧であるシステム電圧VHに対し、交流電動機2への印加電圧の基本波成分を、システム電圧VHの約0.61倍程度までしか高めることができない。以下、インバータ12に印加されるシステム電圧VHに対する交流電動機2の線間電圧の基本波成分(実効値)の比を「変調率」という。
正弦波制御モードでは、正弦波の電圧指令の振幅が搬送波振幅以下の範囲であるため、交流電動機2に印加される線間電圧が正弦波となる。また、搬送波振幅以下の範囲の正弦波成分に3k次高調波成分(kは自然数)を重畳させて電圧指令を生成する制御モードを、ここでは正弦波制御モードに含めるものとする。代表的には、k=1の場合の3次高調波成分を正弦波に重畳させる方式がこれに該当する。これにより、変調率を約0.71まで高めることができる。
この制御方式では、高調波分によって電圧指令が搬送波振幅よりも高くなる期間が生じるが、各相に重畳された3k次高調波成分は線間では打ち消されるので、線間電圧は、正弦波を維持したものとなる。
過変調PWM制御モード(以下、「過変調制御モード」という。)は、電圧指令の正弦波成分の振幅が搬送波振幅より大きい範囲で、上記正弦波制御モードと同様のPWM制御を行なうものである。特に、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませる「電圧振幅補正」によって基本波成分を更に高めることができ、変調率を、正弦波制御モードでの最高変調率から約0.78の範囲まで更に高めることができる。過変調制御モードでは、電圧指令の正弦波成分の振幅が搬送波振幅より大きいため、交流電動機2に印加される線間電圧は、正弦波ではなく歪んだ電圧となる。
正弦波制御モード及び過変調制御モードでは、出力電流のフィードバックによって交流電動機2に印加される交流電圧の振幅及び位相を制御する「電流フィードバック制御」が実行される。
一方、矩形波制御モードでは、電流1周期内でハイレベル期間及びローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分を交流電動機2に印加する。これにより、変調率は約0.78まで高められる。矩形波制御モードでは、交流電動機2への印加電圧の振幅が固定されるため、トルク推定値とトルク指令値との偏差に基づく矩形波電圧パルスの位相制御によって「トルクフィードバック制御」が実行される。
一実施形態による電動機制御装置10は、センサ相とは異なる他の相電流の電流推定を任意のタイミングにおける一つの電流センサ13の電流検出値によって行う点に特徴がある。ここでは、トルクフィードバック制御方式における電流推定の方法を図4〜11に基づいて説明する。なお、本発明の「交流電動機の制御装置」は、トルクフィードバック制御方式だけでなく、上述した電流フィードバック制御方式における電流の推定にも適用可能である。
最初に、電動機制御装置10が有する制御部15の全体構成及びトルクフィードバック制御方式での動作について説明する。
図4に示すように、制御部15は、トルク減算器52、PI演算部53、矩形波発生器54、信号発生器55、電流推定部303、及び、トルク推定部56を有する。
トルク減算器52は、トルク推定部56からフィードバックされるトルク推定値trq_estとトルク指令値trq*との差であるトルク偏差Δtrqを算出する。
PI演算部53は、トルク推定値trq_estをトルク指令値trq*に追従させるべく、トルク偏差Δtrqが0に収束するよう電圧ベクトルの位相指令値である「電圧位相指令値VΨ」をPI演算により算出する。
矩形波発生器54は、電圧位相指令値VΨと電気角θeとに基づいて矩形波を発生し、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*を出力する。
信号発生器55は、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*に基づき、インバータ12のスイッチング素子におけるオン/オフに係る電圧指令信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成し、インバータ12に出力する。電圧信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、三相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この三相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。
電流推定部303は、電流センサ13が検出したセンサ相の電流検出値iw_snsと、回転角センサ14から取得された電気角θeとに基づいて、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを演算する。電流推定部303は、特許請求の範囲に記載の「電流推定手段」に相当する。電流推定部303は、図5に示すように、センサ相基準電流位相検知部18、基本波推定部19、ゼロクロス補間部20、及び、dq変換部21を有する。
センサ相基準電流位相検知部18は、電流センサ13が検出したセンサ相の電流検出値iw_snsと回転角センサ14が取得した電気角θeとに基づいて、α軸電流iα及びβ軸電流iβを算出する。算出されたα軸電流iα及びβ軸電流iβを用いてα−β座標系で定義されるセンサ相基準電流位相θxを算出する。センサ相基準電流位相検知部18は、特許請求の範囲に記載の「α軸電流を算出する手段」および「β軸電流を算出する手段」に相当する。α軸電流iα、β軸電流iβ、及び、センサ相基準電流位相θxの算出方法の詳細は後述する。
基本波推定部19は、電流センサ13が検出したセンサ相の電流検出値iw_snsと算出されたセンサ相基準電流位相θxとに基づいて他の相(U相)の電流推定値iu_estを算出する。算出された電流推定値iu_estは、推定相の電流推定値(参照値)iu_est_refとしてゼロクロス補間部20に出力される。
ここで、センサ相の電流検出値iw_snsが0[A]になるとき、或いは、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が無限大になるとき、後述する式(3)において0で乗算する「ゼロ掛け」が生じる。また、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が0となるとき、式(3)において、0で除算する「ゼロ割り」が生じる。そのため、推定相であるU相の電流推定値iu_estが大きく変動するおそれがある。
そこで、本実施形態では、ゼロクロス補間部20において、電流推定値(参照値)iu_est_refを補間し、ゼロ割り、ゼロ掛けをマスクしている。なお、ゼロ割りに関しては、後述する式(4)において離散系の影響により推定値が意図しない値で算出されるのを防ぐため、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項に制限値を設けておくことでも対策できる。また、制御部15に式(4)を実装する場合、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことも有効であり、その場合、マップ上で制限値を設けておくことでも対策できる。
ゼロクロス補間部20は、ゼロクロス判定部201及び前回値保持部202を有する。
ゼロクロス判定部201では、ゼロクロス条件が成立するか否かを判定する。本実施形態では、センサ相の電流検出値iw_snsが、0[A]を含む所定範囲内であるとき、ゼロクロス条件が成立する、と判定する。「所定範囲内の値である」とは、センサ相の電流検出値iw_snsの絶対値が所定値以下であること、或いは、推定係数iu_kpの絶対値が所定値以上であることをいう。ここで、「所定値」とは、例えば±5[A]といった具合に電流値で設定してもよいし、5[LSB]といった具合に離散系における分解能に基づいて設定してもよいし、数式等で設定してもよい。
また、センサ相の電流検出値iw_snsとセンサ相基準電流位相θxとが同期していることから、センサ相基準電流位相θxの値によって判定してもよい。
ゼロクロス条件が成立しないと判定された場合、基本波推定部19の他相推定部191にて算出された電流推定値(参照値)iu_est_refを、そのまま電流推定値(確定値)iu_est_fixとしてdq変換部21へ出力する。
一方、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、電圧位相指令値VΨを固定する。この場合、トルク偏差Δtrq(図4参照)を強制的に0[Nm]としてもよく、或いは、電圧位相指令値VΨを前回値に保持すること等によって直接固定してもよい。これにより、電流推定値iu_estの誤差による電圧位相指令値VΨの変動を防止する。
また、ゼロクロス判定部201は、前回値保持部202から電流推定値(補間値)iu_est_cmpを取得し、この電流推定値(補間値)iu_est_cmpを、電流推定値(確定値)iu_est_fixとしてdq変換部21へ出力する。
前回値保持部202では、予め前回値を保持しておき、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、電流推定値(補間値)iu_est_cmpを算出し、ゼロクロス判定部201に出力する。
例えば、前回値保持部202では、以前に算出された電流推定値(確定値)iu_est_fixについて、直近の所定回数分を、電流推定値(保持値)iu_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値である電流推定値(保持値)iu_est_hldを、電流推定値(補間値)iu_est_cmpとしてゼロクロス判定部201に出力する。
dq変換部21では、ゼロクロス補間部20から取得した電流推定値(確定値)iu_est_fix、センサ相の電流検出値iw_sns、及び、電気角θeを用い、dq変換によりd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出する。
なお、電流推定部303におけるゼロクロス補間方法は、上記実施形態で説明した以外の方法であってもよいし、必要に応じてゼロクロス補間を行わなくてもよい。
トルク推定部56は、電流推定部303が推定したd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estに基づいて、トルク推定値trq_estをマップ又は数式等により演算し、トルク減算器52にフィードバックする。
次に、電流推定部303による交流電動機2の電流推定方法について説明する。
一般に、交流電動機2の各相の電流iu、iv、iwは、それぞれ位相差120[°]であって、電気角θeや電流ベクトルの振幅、位相等に応じて変化する。ここで、交流電動機2のセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsに基づいて他の相(U相)の電流推定値iu_estを算出する場合、センサ相(W相)の電流検出値iw_snsが負から正にゼロクロスするときの0[A]でθx=0[°]となり、電流検出値iw_snsが正から負にゼロクロスするときの0[A]でθx=180[°]となる電気角θx(センサ相を基準にした電流位相であり、センサ相と電流ベクトルの成す角度に相当)を用いると、センサ相(W相)の電流検出値iw_sns及び他の相(U相)の電流推定値iu_estは、(1)、(2)式で表現することができる。ここで、Iaは電流振幅である。
iw_sns=Ia×sin(θx) ・・・(1)
iu_est=Ia×sin(θx−120[°]) ・・・(2)
(2)式の電流推定値iu_estは、(1)式のセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsとセンサ相基準電流位相θx、すなわち、センサ相を基準にした電流位相、とを用いて(3)式で表現することができる。
Figure 0005920635
また、センサ相基準電流位相θxに応じた推定係数iu_kpを用いて(4)式で表現することもできる。
Figure 0005920635
図6に示すように、センサ相軸(W相軸)と同方向のα軸とセンサ相軸(W相軸)と直交方向のβ軸とによって固定座標系(α−β座標系)を設定すると、センサ相基準電流位相θx(センサ相を基準にした電流位相)は、センサ相(W相)を基準にした固定座標系(α−β座標系)におけるα軸電流iαとβ軸電流iβとを用いて(5)式により求めることができる。
θx=tan-1(iβ/iα) ・・・(5)
なお、tan-1で計算する場合、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの定義によっては、センサ相基準電流位相θxはセンサ相(W相)に同期した角度にならない場合がある。しかしながら、これは、軸の定義、例えば、α軸とβ軸との入れ替わりや符号反転によるものであり、電流検出値iw_snsが負から正にゼロクロスするときの0[A]でθx=0[°]になり、電流検出値iw_snsが正から負にゼロクロスするときの0[A]でθx=180[°]になるように、α軸電流iαとβ軸電流iβとの入れ替えや符号を操作してからセンサ相基準電流位相θxを算出したり、直交関係による位相差±90[°]を直接センサ相基準電流位相θxに適宜加減したりしてもよい。
α軸電流iαは、各相の電流iu、iv、iwを用いて(6)式で表現することができる。ここで、Kは変換係数である。
iα=K×{iw−(1/2)×iu−(1/2)×iv} ・・・(6)
(6)式は、iu+iv+iw=0というキルヒホッフの法則に基づいて(7)式のように変形することができる。
iα=K×(3/2)×iw ・・・(7)
(7)式のW相電流iwとしてセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsを用いると(8)式を得ることができる。
iα=K×(3/2)×iw_sns ・・・(8)
一方、β軸電流iβは、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]、すなわち、α軸電流iαとβ軸電流iβとがsin波とcos波との関係にあることに着目し、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する。以下、β軸電流iβの算出方法について説明する。
最初に、センサ相の電流及び電気角を検出するタイミングの選定について矩形波制御モードにおける各相の電圧波形に基づいて説明する。
図7に示すように、矩形波制御モードにおける各相の電圧波形は、スイッチング素子がオフ状態である0[V]とスイッチング素子がオン状態であるシステム電圧VHとを位相180[°]毎に交替する波形である。三相の電圧波形の位相は、互いに120[°]ずれており、インバータ12のいずれかの相のスイッチング素子が電気角60[°]毎にオン/オフすることにより、電圧波形のオン/オフが切替わる。このスイッチング素子のオン/オフを切り替えるタイミングを「スイッチタイミング」という。連続するスイッチタイミング同士の電気角の差は60[°]である。
本実施形態では、電流センサ13によるセンサ相の電流及び回転角センサ14による電気角θeの検出を、前述のスイッチタイミング毎に、及び、連続するスイッチタイミング間のタイミングであって当該スイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミング毎に行う。
ここで、連続するスイッチタイミング間のタイミングであって「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングは、以下のように定義される。
連続するスイッチタイミング間に電流及び電気角を検出するタイミングが1つ存在する場合、連続するスイッチタイミング間のタイミングであって当該スイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングとは、スイッチタイミング間のタイミングの直前のスイッチタイミングとスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量と、スイッチタイミング間のタイミングの直後のスイッチタイミングとスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量とが、異なるタイミングを指す。具体的には、本実施形態のように連続するスイッチタイミング間の電気角移動量が60[°]である場合、例えば、8[°]や25.5[°]などが挙げられる。25.5[°]の場合、直前のスイッチタイミングとの電気角移動量が25.5[°]となる一方、直後のスイッチタイミングとの電気角移動量が34.5[°]となり、25.5[°]は「不等間隔に設定されている」タイミングである中間タイミングであるといえる。
また、連続するスイッチタイミング間に電流及び電気角を検出するタイミングが2以上のM個存在する場合、連続するスイッチタイミング間のタイミングであって当該スイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングとは、連続するスイッチタイミングのうち早い方のスイッチタイミングの直後のスイッチタイミング間のタイミングを1番目とし当該早い方のスイッチタイミングから遅くなる順に1からMまでの番号をつけると、直前のスイッチタイミングと1番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、1番目のスイッチタイミング間のタイミングと2番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、m(2≦m≦M−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングと(m−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、m番目のスイッチタイミング間のタイミングと(m+1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、M番目のスイッチタイミング間のタイミングと(M−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、及び、M番目のスイッチタイミング間のタイミングと直後のスイッチタイミングとの電気角移動量が、全て同じである場合を除くタイミングを指す。
具体的には、本実施形態のように連続するスイッチタイミング間の電気角移動量が60[°]である場合、例えば、8[°]及び16[°]のように2つ設定すると、早い方のスイッチタイミングの直後のタイミングである8[°]では、直前のスイッチタイミングとの電気角移動量は8[°]となる一方、直後のタイミングである16[°]との電気角移動量は8[°]となり、8[°]のタイミングにおける前後の電気角移動量は同じになる。しかしながら、早い方のスイッチタイミングから2番目のタイミングである16[°]では、直前のタイミングである8[°]との電気角移動量は8[°]となる一方、直後のスイッチタイミングとの電気角移動量は44[°]となり、16[°]のタイミングにおける前後の電気角移動量は異なる。この場合、8[°]及び16[°]は、「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングであるといえる。
以下、中間タイミングとは、上述した連続するスイッチタイミング間のタイミングであって当該スイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングのことを指す。
本実施形態では、代表例として図7に示すように、連続するスイッチタイミング同士の間に中間タイミングと当該中間タイミングの直前のスイッチタイミングとの電気角移動量が15[°]となる中間タイミングを1個設定する場合について説明する。この場合、直前のスイッチタイミングに対する間隔が15[°]となる一方、直後のスイッチタイミングに対する間隔が45[°]となり、不等間隔に設定されていることとなる。また、センサ相の電流及び電気角を検出するサンプリングタイミングとしては、スイッチタイミングと中間タイミングとが交互に訪れることとなる。
α軸電流iαの電気角移動量Δθe[rad]における変化量、すなわち、α軸電流iαの今回値と前々回値との差、に基づいてα軸電流の微分値Δiαを(9)式により算出する。なお、β軸電流の算出時を基準として、今回のサンプリングタイミングにおける電気角、及び、今回のサンプリングタイミングにおけるセンサ相の電流検出値に基づいて算出されたα軸電流の値の組を「今回値」という。また、今回の一回前のサンプリングタイミングにおける電気角、及び、今回の一回前のサンプリングタイミングにおいて算出されたα軸電流の値の組を「前回値」、今回の二回前のサンプリングタイミングにおける電気角、及び、今回の二回前のサンプリングタイミングにおいて算出されたα軸電流の値の組を「前々回値」という。
Δiα=−{iα(n)−iα(n−2)}/Δθe ・・・(9)
ここで、電気角移動量Δθeとは、今回のスイッチタイミングと前回のスイッチタイミングとの間隔、または、今回の中間タイミングと前回の中間タイミングとの間隔に相当する電気角をラジアンに変換した値である。また、iα(n)はα軸電流の今回値であり、iα(n−2)はα軸電流の前々回値である。本実施形態では、α軸電流iα(n)を任意のスイッチタイミングにおいて算出されたα軸電流としたとき、α軸電流iα(n−2)は、当該任意のスイッチタイミングの前回のスイッチタイミング、すなわち、前々回のサンプリングタイミングにおいて算出されたα軸電流となる。また、α軸電流iα(n)を任意の中間タイミングにおいて算出されたα軸電流としたとき、α軸電流iα(n−2)は、当該任意の中間スイッチタイミングの前回の中間タイミング、すなわち、前々回のサンプリングタイミングにおいて算出されたα軸電流となる。
このように、スイッチタイミング同士、または、スイッチタイミングに対する間隔が所定、本実施形態では直前のスイッチタイミングに対して15[°]、の中間タイミング同士のセンサ相の電流及び電気角を用いてα軸電流の微分値Δiαを算出することにより、詳細は後述するが、外乱が電流波形に及ぼす影響が同じレベルとなりα軸電流の微分値Δiαの算出精度が向上する。なお、α軸電流iαやβ軸電流iβの定義によっては、符号が反転することも考えられるが、tan-1を計算する為に必要なsin波とcos波を得るため、必要に応じて符号を適宜操作しても良いものとする。
また、電気角移動量Δθeは、今回のスイッチタイミングと過去のいずれかのスイッチタイミングとの間隔、または、今回の中間タイミングと過去のいずれかの中間タイミングとの間隔に相当する電気角をラジアンに変換した値であってもよい。電気角移動量Δθeを今回のスイッチタイミングと過去のいずれかのスイッチタイミングとの間隔に相当する電気角をラジアンに変換した値とする場合、今回のスイッチタイミングにおいて算出されたα軸電流iαと当該過去のいずれかのスイッチタイミングにおいて算出されたα軸電流iαとを用いて式(9)からα軸電流の微分値Δiαを算出する。また、電気角移動量Δθeを今回の中間タイミングと過去のいずれかの中間タイミングとの間隔に相当する電気角をラジアンに変換した値とする場合、今回の中間タイミングにおいて算出されたα軸電流iαと当該過去のいずれかの中間タイミングにおいて算出されたα軸電流iαを用いて式(9)からα軸電流の微分値Δiαを算出する。
また、連続するスイッチタイミングの間に2以上のM個中間タイミングが存在する場合、電気角移動量Δθeは、L(1≦L≦M)番目の中間タイミングに対してスイッチタイミングの間隔に相当する位相分過去の中間タイミングと当該L番目の中間タイミングとの間隔に相当する電気角をラジアンに変換した値となる。電気角移動量ΔθeをL番目の中間タイミングに対してスイッチタイミングの間隔に相当する位相分過去の中間タイミングと当該L番目の中間タイミングとの間隔に相当する電気角をラジアンに変換した値とする場合、当該L番目の中間タイミングにおいて算出されたα軸電流iαと当該過去の中間タイミングにおいて算出されたα軸電流iαを用いて式(9)からα軸電流の微分値Δiαを算出する。
具体的には、スイッチタイミングが0、60、120[°]に設定され中間タイミングが、8、16、68、76[°]に設定されている場合、68[°]の中間タイミングにおけるα軸電流iα、68[°]の中間タイミングに対してスイッチタイミングの間隔である60[°]分過去の8[°]の中間タイミングにおけるα軸電流iα、及び、電気角移動量Δθe=60[°]を用いてα軸電流の微分値Δiαを算出する。
図8には、スイッチタイミング及び中間タイミングにおいて電流センサ13が検出する電流検出値に基づいて算出される3相波形を示す。図8(a)には、スイッチタイミングにおける電流検出値の結果を示す。また、図8(b)には、中間タイミングにおける電流検出値の結果を示す。図8(a)、(b)には、電流センサ13がW相の電流を検出するタイミングを白抜き丸で示す。
図8(a)に示すように、スイッチタイミングで検出された電流検出値の波形は、スイッチング素子のスイッチングの影響を受けて波形が歪む。一方、図8(b)に示すように、中間タイミングで検出された電流検出値の波形は、スイッチングの影響をあまり受けないため波形がほとんど歪まない。このため、スイッチタイミングの電流検出値と中間タイミングの電流検出値との両方からなる波形は、正弦波のような規則的な増減にはならず、不規則に増減する傾向がある。
そこで、スイッチタイミング毎及び中間タイミング毎の両方のサンプリングタイミング毎に、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出する。算出されるα軸電流iαの電気角移動量Δθeにおける変化量、すなわち、α軸電流iαの今回値と前々回値との差、に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出する。
また、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する場合、スイッチタイミングと中間タイミングとの間で不規則に増減する電流検出値の影響を受け、β軸電流iβの算出精度が低下し、α軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいたセンサ相基準電流位相θxの算出精度が低下するおそれがある。
この対策として、本実施形態による電動機制御装置10の制御部15では、α軸電流iαは、スイッチタイミング毎及び中間タイミング毎の両方のサンプリングタイミング毎にセンサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出する。
また、β軸電流iβは、スイッチタイミング毎に2回のスイッチタイミングの間隔におけるα軸電流iαの変化量、すなわち、前々回のスイッチタイミングから今回のスイッチタイミングまでのα軸電流iαの変化量、に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出し、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する。また、β軸電流iβは、中間タイミング毎に2回の中間タイミングの間隔におけるα軸電流iαの変化量、すなわち、前々回の中間タイミングから今回の中間タイミングまでのα軸電流iαの変化量、に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出し、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する。これにより、図8に示すように、スイッチタイミングと中間タイミングとの間で不規則に増減する電流検出値の影響をほとんど受けずに、β軸電流iβを精度良く算出することができ、α軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいたセンサ相基準電流位相θxの算出精度を向上させることができる。
続いて、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出するときの補正について図9に基づいて説明する。図9において、横軸は電気角であり、波形上の黒菱形のマークで示されているサンプリングタイミングの電気角で電流検出が行われたことを示している。
α軸電流iα及びβ軸電流iβが理想的な正弦波であるとすると、実際のβ軸電流iβ0は、α軸電流iαの微分波形であり、「無限小の電気角移動量におけるα軸電流iαの変化量」として定義される。しかし、現実の電動機制御装置10におけるα軸電流の微分値Δiαは、有限の電気角移動量Δθeにおけるα軸電流iαの差分値である。したがって、α軸電流の微分値Δiαの波形は、実際のβ軸電流iβ0の波形に対して、電気角移動量の半分(Δθe/2)だけ遅れることとなる。
そこで、α軸電流の微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを算出するときには、(Δθe/2)に相当する補正量Hを式(10)により算出し、この補正量Hを、式(11)によりα軸電流の微分値Δiαに加算することが好ましい。
H={iα(n)+iα(n−2)}/2×(Δθe/2) ・・・(10)
iβ_est=Δiα+H ・・・(11)
式(10)が示すとおり、補正量Hは、「α軸電流の前々回値iα(n−2)と今回値iα(n)との平均値」に電気角移動量の半分(Δθe/2)を乗算した値として算出される。図9に示すように、式(10)、(11)により算出したβ軸電流推定値iβ_estは、実際のβ軸電流iβ0の波形によく一致する。
ここで、「α軸電流の前々回値iα(n−2)と今回値iα(n)、及び対応する電気角移動量Δθe」は、α軸電流の微分値Δiαの算出の場合と同様に、スイッチタイミングには、「前々回のスイッチタイミング及び今回のスイッチタイミングにおけるα軸電流iα、及びスイッチタイミング同士間の電気角移動量Δθe」を採用し、中間タイミングには、「前々回の中間タイミング及び今回の中間タイミングにおけるα軸電流iα、及び中間タイミング同士間の電気角移動量Δθe」を採用して補正量Hを算出することが好ましい。
これにより、α軸電流の微分値Δiαに基づいて、電気角移動量の半分(Δθe/2)に相当する補正量Hを用い、β軸電流iβを精度良く算出することができる。なお、上述したβ軸電流iβの算出方法は一例であり、β軸電流iβを精度良く算出可能であれば、上述した算出方法に限定されず、適宜変更してもよい。
本実施形態による電動機制御装置10の制御部15では、交流電動機2の電流を推定する場合、電流推定部303のセンサ相基準電流位相検知部18において、スイッチタイミング毎及び中間タイミング毎に電流センサ13で検出したセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsを用いて上記(8)式によりα軸電流iαを算出する。この後、スイッチタイミング毎に2回のスイッチタイミングの間隔におけるα軸電流iαの変化量に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出し、このα軸電流の微分値Δiαとθe/2の位相遅れ分に相当する補正量Hを用いてβ軸電流iβを算出する。また、中間タイミング毎に2回の中間タイミングの間隔におけるα軸電流iαの変化量に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出し、このα軸電流の微分値Δiαとθe/2の位相遅れ分に相当する補正量Hを用いてβ軸電流iβを算出する。算出されたα軸電流iαおよびβ軸電流iβを用いて、上記(5)式によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。
この後、基本波推定部19で、センサ相基準電流位相θxに応じた推定係数iu_kpを(4)式のただし書きの式、または、マップ等により算出し、推定係数iu_kpとセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsを用いて(4)式により他の相(U相)の電流推定値iu_estを算出する。また、センサ相基準電流位相θxとセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsとを用いて(2)式により他の相(U相)の電流推定値iu_estを算出するように直接演算しても良い。
一般に制御ECU(マイコン)などの演算処理装置に演算式を実装すると、連続時間ではなく離散時間で処理され、センサ検出値や各演算値も指定された分解能(LSB)に基づく離散値として扱われる。従って、(3)式においてゼロ割が発生する場合、離散系の影響により推定値が意図しない値で算出されるのを防ぐため、推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の1/tan(θx)項に制限値を設けておくことが望ましい。また、(3)式を実装する場合は、処理負荷の大きい乗算・除算を避けるため、引数θxで推定係数iu_kp、或いは推定係数iu_kp内の1/tan(θx)項をマップ化しておくことも有効であり、その場合、マップ上で制限値を設けておくことが望ましい。このような処置を設けることにより、離散系への適用を容易にし、マイコンの処理負荷を最小減に留めることができ、わざわざ演算処理能力の高い高価なマイコンに変更する必要が無くなる。
以上説明した電流推定部303における電流推定は、図10及び図11の電流推定ルーチンに従って実行される。以下、この電流推定ルーチンの処理内容を説明する。
電流推定ルーチンは、制御部15の電源オン期間中に所定の演算周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、最初のステップ(以下、「S」という)101において、電流センサ13で検出したセンサ相(W相)の電流検出値iw_sns、及び、回転角センサ14で検出した交流電動機2のロータ回転位置から求めた電気角θeを読み込む。
次にS102において、現在の電気角θeがスイッチタイミングであるか否かを判定する。現在の電気角θeがスイッチタイミングであると判定される場合、S103に進み、スイッチタイミングで検出したセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsを用いて式(8)によりα軸電流iαを算出する。
S103の次にS104に進み、2つのスイッチタイミングの間隔におけるα軸電流iαの変化量、すなわち、スイッチタイミングの電流検出値iw_snsに基づいて算出したα軸電流iαの今回値と前々回値との差、に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出する。
次にS105において、α軸電流の微分値Δiαを式(10)で示す補正量Hを用いて式(11)のように補正し、β軸電流iβに相当するβ軸電流推定値iβ_estを求める。
一方、S102において、現在の電気角θeがスイッチタイミングではないと判定される場合、現在の電気角θeが中間タイミングであると判断しS106に進む。S106において、中間タイミングで検出したセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsを用いて式(12)によりα軸電流iαを算出する。
S106の次にS107に進み、中間タイミングの間隔におけるα軸電流iαの変化量、すなわち、中間タイミングの電流検出値iw_snsに基づいて算出したα軸電流iαの今回値と前々回値との差、に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出する。次に、S108に進み、α軸電流の微分値Δiαを式(10)で示す補正量Hを用いて式(11)のように補正しβ軸電流iβに相当するβ軸電流推定値iβ_estを求める。
S105またはS108の次にS109において、α軸電流iαとβ軸電流iβとを用いて式(5)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。
次にS110において、センサ相基準電流位相θxに応じた推定係数iu_kpの関係式、または、マップにより算出した後、S111に進み、推定係数iu_kpとセンサ相(W相)の電流検出値iw_snsを用いて(4)式により他の相(U相)の電流推定値iu_estを算出する。
この後、図11のS112に進み、センサ相電流のゼロクロス時であるか否かを判定する。センサ相電流のゼロクロス時であるか否かは、センサ相(W相)の電流検出値iw_sns=0[A]であるか否かによって判定する。センサ相電流のゼロクロス時であるか否かを、センサ相(W相)の電流検出値iw_snsが0[A]を含む所定範囲内、例えば、センサ相の電流検出値iw_snsの絶対値が所定値以下、或は、推定係数iu_kpの絶対値が所定値以上であるか否かによって判定するようにしても良い。また、センサ相の電流検出値iw_snsとセンサ相基準電流位相θxは同期していることから、センサ相基準電流位相θxの値によって判定してもよい。
このS112で、センサ相電流はゼロクロス時ではないと判定される場合、S113に進む。S111で算出した他の相(U相)の電流推定値iu_estをそのまま採用する。また、センサ相電流はゼロクロス時であると判定された場合、S114に進み、電圧位相指令値VΨを固定する。
S114の次にS115に進み、他の相(U相)の電流推定値iu_estを補間する。この場合、他の相の電流推定値iu_estを直接前回値に保持して補間するようにしても良い。または、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを前回値に保持し、この前回値に保持したd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estに基づいて他の相(U相)の電流推定値を算出する逆dq変換を実行し、この逆dq変換により得た電流推定値で他の相の電流推定値iu_estを補間するようにしても良い。また、他の相の電流推定値iu_estを別ロジックで算出して補間するようにしてもいいし、他の相の電流推定値iu_estを補間する方法は適宜変更しても良い。
S113またはS115において、他の相(U相)の電流推定値iu_estをdq変換に用いる他の相(U相)の電流推定値iu_est_fixとして設定した後、S116に進み、センサ相(W相)の電流検出値iw_snsと他の相(U相)の電流推定値iu_est_fixとに基づいてd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出するdq変換を実行する。
(1)本実施形態の電動機制御装置10は、三相のうち一相の相電流を電流センサ13により検出し、他の二相の相電流を推定する。電流センサ13をセンサ相のみに設けることで、電流センサ13の数を減らすことができる。これにより、インバータ12の三相出力端子近傍を小型化し、また、電動機制御装置10のコストを低減することができる。
また、電流センサ13の数を1つにすることで、複数個の電流センサを用いる従来の交流電動機の制御システムで発生しうる、電流センサのゲイン誤差の影響が無くなる。これにより、交流電動機2において、複数個の電流センサのゲイン誤差が引き起こす出力トルク変動を排することができ、例えば車両用の場合は車両振動を無くすことに繋がり、車両の商品性を下げる要素を取り除くことができる。
(2)また、本実施形態による電動機制御装置10では、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]、すなわち、α軸電流iαとβ軸電流iβとがsin波とcos波の関係にあることに着目し、センサ相(W相)の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出すると共に、α軸電流の微分値(差分値)Δiαに基づいてβ軸電流iβを算出する。これにより、他の相の電流指令値を用いずにβ軸電流iβを算出することができ、交流電動機2の通電を制御する際にd軸電流指令値、q軸電流指令値や三相電流指令値などの電流指令値を用いない方式に適用することができる。
(3)本実施形態による電動機制御装置10では、センサ相を基準にした固定座標系(α−β座標系)におけるα軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいてセンサ相基準電流位相θxを算出する。これにより、センサ相を基準にした実際の電流位相θxを算出することができ、このセンサ相基準電流位相θxとセンサ相の電流検出値iw_snsとに基づいて他の相の電流推定値iu_estを算出することができる。したがって、実際の電流位相θxの高調波成分や通常起こり得る変動の影響を織り込んで他の相の電流推定値iu_estを精度良く算出することができ、電流推定値iu_estの算出精度を向上することができる。
(4)本実施形態による電動機制御装置10では、トルクフィードバック制御方式でのα軸電流の微分値Δiαの好ましい算出方法として、「スイッチタイミング及び中間タイミングの両方のサンプリングタイミング毎に、センサ相の電流検出値iw_snsに基づいてα軸電流iαを算出」し、「α軸電流の微分値Δiαは、スイッチタイミング毎に、スイッチタイミング同士でα軸電流iαを微分して算出すると共に、中間タイミング毎に、中間タイミング同士でα軸電流iαを微分して算出する」方法を推奨する。
上述のように、スイッチングタイミング毎に検出した電流検出値の波形は、オン/オフ動作による影響を受けて波形が歪むのに対し、中間タイミング毎に検出した電流検出値の波形は、オン/オフ動作の影響をあまり受けないため波形がほとんど歪まない。そのため、スイッチタイミング毎の電流検出値と中間タイミング毎の電流検出値の両方からなる電流波形は、正弦波のように規則的に増減せず、不規則に増減する傾向となる。
一方、スイッチングタイミング毎に検出した電流検出値の波形、中間タイミング毎に検出した電流検出値の波形のいずれも、それぞれの波形では、ほぼ規則的に増減する。したがって、スイッチタイミング同士、又は中間タイミング同士でα軸電流を微分すれば、スイッチタイミングと中間タイミングとの間で不規則に増減する電流検出値の影響をほとんど受けずに、β軸電流iβを精度良く算出することができる。さらに、α軸電流iαとβ軸電流iβとに基づいたセンサ相基準電流位相θxの算出精度を向上させることができる。
(5)また、本実施形態による電動機制御装置10では、中間タイミングは、前後のスイッチタイミングに対して「不等間隔」となる電気角15°に設定されている。このように、電動制御装置10では、中間タイミングは、スイッチタイミングに対して「不等間隔に設定される」タイミングである中間タイミングであって、当該中間タイミングの直前のスイッチタイミングと当該中間タイミングとの電気角移動量と、当該中間タイミングの直後のスイッチタイミングと当該中間タイミングとの電気角移動量とが、異なるタイミングである。これにより、連続するスイッチタイミングの間の任意のタイミングにおいて電流センサ13によってセンサ相の電流を検出することができる。したがって、交流電動機2の運転状態に適した中間タイミングを設定することができる。
(6)また、α軸電流iαの電気角移動量Δθeにおける変化量に基づいてα軸電流の微分値Δiαを算出する場合、α軸電流の微分値Δiαの波形には、実際のβ軸電流iβ0の波形に対してθe/2の位相遅れがあることを考慮し、θe/2の位相遅れ分に相当する補正量Hを用いてα軸電流の微分値Δiαを補正してβ軸電流iβを求める。これにより、β軸電流iβを精度良く算出することができる。尚、β軸電流iβの算出方法は、一例であり、β軸電流iβを精度良く算出可能であれば、本実施例で説明した算出方法に限定されず、適宜変更しても良い。
(7)また、センサ相の電流検出値iw_snsと他の相の電流推定値iu_estとに基づいてd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを算出することにより、d軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを精度良く算出することができる。このd軸電流推定値id_est及びq軸電流推定値iq_estを用いてトルクフィードバック制御するため、交流電動機2を安定して駆動させることができる。
(その他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、中間タイミングは、連続するスイッチタイミングの間に一つ設けるとした。しかしながら、中間タイミングを設ける数はこれに限定されない。複数、例えば2以上のM個設けてもよい。この場合、「不等間隔に設定される」中間タイミングとは、上述したように、連続するスイッチタイミングのうち早い方のスイッチタイミングの直後のスイッチタイミング間のタイミングを1番目とし当該早い方のスイッチタイミングから遅くなる順に1からMまでの番号をつけると、直前のスイッチタイミングと1番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、1番目のスイッチタイミング間のタイミングと2番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、m(2≦m≦M−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングと(m−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、m番目のスイッチタイミング間のタイミングと(m+1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、M番目のスイッチタイミング間のタイミングと(M−1)番目のスイッチタイミング間のタイミングとの電気角移動量、及び、M番目のスイッチタイミング間のタイミングと直後のスイッチタイミングとの電気角移動量が、全て同じである場合を除くタイミングを指す。
(イ)上述の実施形態では、電流センサにより相電流を検出するセンサ相は、上記実施形態のW相に限らず、U相又はV相としてもよい。また、センサ相の電流検出値とセンサ相基準電流位相θxとから電流推定値を算出する推定相は、上記実施形態のU相に限らず、V相又はW相としてもよい。
(ウ)上述の実施形態では、制御部の電流推定部で、センサ相以外の相の電流を推定してdq変換を成立させる方法を採った。しかし、一相の電流検出値に基づいてdq変換を成立させるための手段は、これに限定せず、例えば一相のみの電流検出値でも成立するdq変換式を新たに創出して対策してもよい。
この方法では、図11のS113又はS115のようなセンサ相以外の相の電流推定値を出力するステップが顕在的には存在しないものの、dq変換式の内部で、このステップに相当する演算が包括的に実行されると解釈する。ただし、発明者の研究の結果、どちらの方法でも数式的には同じ結果となることが判明している。
(エ)上述の実施形態では、交流電動機は、永久磁石式同期型の三相交流電動機であったが、他の実施形態では、誘導電動機やその他の同期電動機であってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能、及び発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たなくてもよい。
(オ)本発明による交流電動機の制御装置は、上述の実施形態のようにインバータと交流電動機を一組のみ設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を二組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
(カ)本発明による交流電動機の制御装置は、図1に示す構成のハイブリッド自動車の交流電動機に限定されず、どのような構成の電動車両の交流電動機に適用してもよい。また、電動車両以外の交流電動機に適用してもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態により実施可能である。
2 ・・・交流電動機、
12 ・・・インバータ、
13 ・・・電流センサ、
15 ・・・制御部(制御手段)、
18 ・・・センサ相基準電流位相検知部(α軸電流を算出する手段、
β軸電流を算出する手段)、
303 ・・・電流推定部(電流推定手段)。

Claims (4)

  1. 三相の交流電動機(2)を駆動するインバータ(12)と、
    前記交流電動機の各相のうちの一相であるセンサ相に流れる電流を検出する電流センサ(13)と、
    前記センサ相軸と同方向のα軸と前記センサ相軸と直交方向のβ軸とによって設定される固定座標系におけるα軸電流とβ軸電流とに基づいて前記センサ相を基準にした電流位相であるセンサ相基準電流位相を算出し、前記センサ相基準電流位相と前記電流センサで検出した前記センサ相の電流検出値とに基づいて前記センサ相以外の他の相の電流推定値を算出する電流推定手段(303)を有し、前記インバータの各相のスイッチング素子のオン/オフを切り替えて前記交流電動機の通電を制御する制御手段(15)と、
    を備え、
    前記電流推定手段は、
    前記スイッチング素子のオン/オフを切り替えるタイミングであるスイッチタイミング毎、及び、前記スイッチタイミングとは異なる中間タイミング毎に前記センサ相の電流検出値に基づいて前記α軸電流を算出する手段(18)と、
    前記スイッチタイミング毎に前記スイッチタイミングの間隔における前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出し前記α軸電流の微分値に基づいて前記β軸電流を算出し、前記中間タイミング毎に前記中間タイミングの間隔における前記α軸電流の変化量に基づいて前記α軸電流の微分値を算出し前記α軸電流の微分値に基づいて前記β軸電流を算出する手段(18)と、
    を有し、
    前記中間タイミングは、前記スイッチタイミングの間隔に対して不等間隔に設定されることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  2. 前記電流推定手段は、前記β軸電流を算出するとき、前記スイッチタイミングの間隔の1/2または前記中間タイミングの間隔の1/2の位相遅れ分に相当する補正量を用いて前記α軸電流の微分値を補正し前記β軸電流を求めることを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記電流推定手段は、前記センサ相の電流検出値と前記他の相の電流推定値とに基づいてd軸電流推定値及びq軸電流推定値を算出し、
    前記制御手段は、前記d軸電流推定値及びq軸電流推定値を用いて前記交流電動機の通電を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記制御手段は、電流1周期における電圧ハイレベル期間及び電圧ローレベル期間の比が1:1の矩形波パルスにより前記交流電動機の通電を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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