JP5750832B2 - カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法 - Google Patents

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本発明はカーボンナノチューブ含有組成物およびその製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気導電性、熱伝導性や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、カーボンナノチューブの直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応用性の広がりも期待されている。
また、カーボンナノチューブは、通常層数の少ない方が高グラファイト構造を有し、単層カーボンナノチューブや二層カーボンナノチューブは高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性も高いことが知られている。特にカーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。
しかしながら、これらカーボンナノチューブは、強固で非常に大きなバンドル構造を有しているため、1本1本のカーボンナノチューブが有しているナノ効果を発揮できず、各種用途展開が困難であった。なかでも樹脂や溶媒への分散が非常に困難であるために、種々の用途への展開が限られているのが現状であった。特に優れた光透過率と導電性が求められる透明導電性フィルム、成型品、膜等への用途にカーボンナノチューブを用いて実用性能を発揮させることは困難であった。
公知のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(CVD(ChemicalVapor Deposition)法)などによる合成が知られている。なかでも、CVD法による合成法は、炭素原料の種類、原料供給速度、合成温度、触媒密度等の反応条件をコントロール可能であり、比較的簡単にカーボンナノチューブの大量合成ができる。最近では、直径、長さ、層数を選択的に合成できるようになりつつあり、化学気相成長法では、カーボンナノチューブの層数を単層、2〜5層に制御して製造出来ることが知られている。
しかしながらCVD法によって製造されたカーボンナノチューブ含有組成物には、合成時に不純物としてアモルファスカーボンや粒子状のカーボンなど、カーボンナノチューブ以外の炭素不純物も混ざってくるため、カーボンナノチューブ本来の特性を十分に引き出すには、炭素不純物を除去する操作が必要となってくる。
炭素不純物を除去するためには気相中で加熱する方法が一般によく使われ、触媒金属を除去するには酸を使うのが一般的である。強力な酸を使用するほど触媒金属は除去し易いが、強力な酸を使用した場合、カーボンナノチューブが損傷を受けて特性が損なわれてしまうため、実際には触媒金属除去に使用する酸は比較的穏やかな反応性をもつ酸を使用する必要がある。非特許文献1では、単層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理すると、官能基化や、グラファイト構造の欠損が生じることが記されている。
特に単層カーボンナノチューブの場合では、グラファイト層が1枚だけの構成なので、官能基化の影響を顕著に受けるため、カーボンナノチューブ組成物としての導電性を上げるために、電気泳動によって導電性の高い金属性カーボンナノチューブを半導体性カーボンナノチューブと分離する方法(非特許文献2)や、合成段階で金属性ナノチューブが主となる合成法(非特許文献3)なども考案されているが、2層以上の層数を持つカーボンナノチューブには適用し難い技術であり、単層と多層の利点を併せ持つ導電性の高い2層カーボンナノチューブは得られていないのが現状である。
ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)126(2004), 6095-6105 アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express) 1 (2008) 114001-114003 サイエンス(Science)326(2009), 116-120
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、高い導電性と高耐熱性を有する二層カーボンナノチューブを主として含むカーボンナノチューブ含有組成物およびこのカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、熱重量分析で高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上となるまで酸化反応を行うことで、高い導電性と高耐熱性を有する二層カーボンナノチューブを主として含むカーボンナノチューブ含有組成物が得られることを見出した。
すなわち以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物である。
]カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱反応領域で接触させてカーボンナノチューブを製造する、透過型電子顕微鏡で観測した時に100本中50本以上が二層カーボンナノチューブであり、外径の平均が1.0〜3.0nmの範囲であり、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上であり、カーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗値が1.0X10 −2 Ω・cm以下、1.0X10 −4 Ω・cm以上である、カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、下記の(1)から(3)の範囲を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
(1)カーボンナノチューブ製造用触媒体の重量を炭素含有化合物の流量で割った接触時間(W/F)が100〜400min・g/Lの範囲;
(2)炭素含有化合物を含むガスの線速が2〜8cm/secの範囲;
(3)カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であり、且つかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲
[2]得られるカーボンナノチューブ含有組成物の、波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が30以上である[1]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
]前記カーボンナノチューブ製造用触媒体が0.1〜1wt%の範囲で8族から10族の遷移金属を含むことを特徴とする[または[2]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
]前記カーボンナノチューブ製造用触媒体がマグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする[]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
]前記炭素含有化合物がメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、エタノール、メタノール、プロパノールのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする[]〜[]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
]前記カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.5〜0.85mmの範囲であることを特徴とする[]〜[]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
本発明により高い導電性と高耐熱性を有する二層カーボンナノチューブを主として含むカーボンナノチューブ含有組成物が得られるようになった。
図1はTG(H)成分を回収した試料の透過型電子顕微鏡による観察写真である。 図2は本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の外径分布である。 図3は比較例1で硝酸処理後のろ液から回収した試料の透過型電子顕微鏡による観察写真である。 図4は実施例および比較例で用いたカーボンナノチューブ含有組成物製造用の化学気相成長法の装置の概略図である。 図5は実施例2および実施例3の熱重量分析の結果である。 図6は縦型加熱酸化反応装置の概略図である。
本発明は以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物である。
(1)透過型電子顕微鏡で観測した時にカーボンナノチューブ100本中50本以上が二層カーボンナノチューブ;
(2)カーボンナノチューブの外径の平均が1.0〜3.0nmの範囲;
(3)カーボンナノチューブ含有組成物を空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))との関係が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))≧0.75;
(4)カーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗値が5.0X10−2Ω・cm以下、1.0X10−4Ω・cm以上である。
本発明においてカーボンナノチューブ含有組成物とは、複数のカーボンナノチューブが存在している総体を意味し、その存在形態は特に限定されず、それぞれが独立で、あるいは束状、絡まり合うなどの形態あるいはこれらの混合形態で存在していてもよい。また、種々の層数、直径のものが含まれていてもよい。また、分散液や他の成分を配合した組成物中、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも複数のカーボンナノチューブが含まれていればこれら複数のカーボンナノチューブについて、カーボンナノチューブ含有組成物が含まれていると解する。また、カーボンナノチューブ製造法由来の不純物(例えば触媒)を含み得るが、実質的には炭素で構成されたものを示す。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、その中で特に2層に巻いたものを二層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブの形態は、高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイト層は乱れていても構わない。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、透過型電子顕微鏡で観測した時に100本中50本以上のカーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブであるが、これは、カーボンナノチューブ含有組成物中に含まれる任意のカーボンナノチューブの100本を観察し、2層以上のカーボンナノチューブの本数を評価するものとする。
上記任意のカーボンナノチューブの層数と本数の数え方は、透過型電子顕微鏡で40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価する。一つの視野中で100本の測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。
通常カーボンナノチューブは層数が少ないほどグラファイト化度が高い、つまり導電性が高く、層数が増えるほどグラファイト化度が低下する傾向がある。二層カーボンナノチューブは層数が単層カーボンナノチューブよりも多いため、耐久性が高く、高いグラファイト化度も併せ持つため、耐久性が高く高導電性のカーボンナノチューブ含有組成物という点で二層カーボンナノチューブの割合は多いほど好ましい。本発明では上記方法で測定したときのカーボンナノチューブの割合は100本中50本以上であることが必要であり、100本中70本以上が二層カーボンナノチューブであることがより好ましく、さらに好ましくは100本中75本以上が二層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が二層カーボンナノチューブであることが好適である。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の外径の平均値は1.0から3.0nmの範囲内である。この外径の平均値は、上記透過型電子顕微鏡で40万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価するのと同様の方法でサンプルを観察し、カーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値である。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))との関係が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))≧0.75である。
熱重量分析は、約1mgの試料を熱重量分析装置(例えば島津製作所製 TGA-60)に設置し、10℃/分の昇温速度で室温から900℃まで昇温し、その際の試料の重量減少を測定する。また得られた重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)とし(x軸を温度(℃)とし、y軸をDTG(mg/min)とする)その際のピーク温度を燃焼ピーク温度とする。本発明のカーボンナノチューブ含有組成物においては、このDTG曲線のピーク温度(例えば図5におけるDTG曲線の頂点の温度)が本発明に規定する範囲にあればよい。
通常の精製をしたカーボンナノチューブ含有組成物はDTG曲線において高温側と低温側に二つの燃焼ピークが現れることが多い。本発明においては高温側の燃焼ピークは700〜850℃にあり、好ましくは700〜800℃である。このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(H)とする。低温側の燃焼ピークとは350℃〜高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点までにあり、このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(L)とする。なお、変曲点が存在しない場合には350℃〜600℃の範囲の重量減量分をTG(L)とする。
TG(L)に相当する低温側のピーク、はアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着したものに由来すると考えられる。すなわち、後述の比較例1において、高温側と低温側に2つの燃焼ピークが存在するカーボンナノチューブを硝酸処理して、吸引ろ過したろ液から回収した試料を熱重量分析して得られたピークがこの低温側のピークとよく一致することから、熱重量分析時に低温側の燃焼ピーク部分に相当する温度で消失する成分は、硝酸処理により溶出した成分と同等のものと推論される。また、上記ろ液から回収した試料を透過型電子顕微鏡で観察すると、アモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着した様子が観察される(図3)ためである。
一般に炭素不純物は400℃以下で燃焼するが、カーボンナノチューブに付着した場合は燃焼温度が高温側にずれる傾向があるため、上記の温度範囲で燃焼するものと考えられる。
一方で炭素不純物が付着したカーボンナノチューブはそれに応じて、本来のCNTの燃焼ピーク温度に比して燃焼ピーク温度が低温側にずれる。これは炭素不純物の燃焼温度が低いため、先に燃焼を開始し、その際に生じた発熱エネルギーがカーボンナノチューブに移動するため、本来の燃焼温度とは異なる低い温度でカーボンナノチューブは燃焼するためである。
したがってカーボンナノチューブのグラファイト化度が高いほど、また、炭素不純物が少ないほど燃焼ピーク温度は高温側に現れるため、燃焼ピーク温度は高い方が、耐久性が高く、純度の高いカーボンナノチューブである(図1)。
すなわち、炭素不純物の割合が大きいほどTG(L)が大きくなり、カーボンナノチューブの割合が大きいほどTG(H)が大きくなる。TG(H)を(TG(H)+TG(L))で割ることでカーボンナノチューブ含有組成物の純度として表現することができ、TG(H)/(TG(L)+TG(H))の値を0.75以上とすることにより、高耐熱性かつ高導電性のCNTが得られる。低温側の燃焼ピークが消失し、高温側の燃焼ピークのみが現れる場合にはTG(H)/(TG(L)+TG(H))の値が1となる。尚、原因は定かではないが、後述する体積抵抗値および透明導電性評価より、0.75以上では特性に大きな違いはない。
しかしながら、0.75より小さいと体積抵抗値および透明導電性評価は0.75以上のものより悪い結果となる。また通常市販されている単層カーボンナノチューブあるいは二層カーボンナノチューブの熱重量分析では、DTG曲線から500〜600℃に1本の燃焼ピークがある。これは前述したように、炭素不純物がカーボンナノチューブに付着しているためであり、見かけ上のカーボンナノチューブの純度は高いように見えるが、純度の高いカーボンナノチューブの状態を示しているわけではないので、注意が必要である。さらにカーボンナノチューブの直径・カーボンナノチューブの壁を構成するグラフェンシートの品質に応じても、カーボンナノチューブの耐熱性が変わることは十分に考えられ、従来の技術では本発明のような外径の小さい二層カーボンナノチューブで高耐熱性にすることは難しかったと考えられる。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗率は1.0X10−2Ω・cm以下、1.0X10−4Ω・cm以上であるが、カーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗値は、以下のようにカーボンナノチューブ膜を作製し、その膜の表面抵抗値を4端子法によって測定後、表面抵抗値とカーボンナノチューブ膜の膜厚を掛けることによって算出することができる。表面抵抗値はJISK7149準処の4端子4探針法を用い、例えばロレスタEP MCP−T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)にて測定することが可能である。高抵抗測定の際は、ハイレスターUPMCP-HT450(ダイアインスツルメンツ製、10V、10秒)を用いて測定することが可能である。
測定試料は、カーボンナノチューブ含有組成物20mgをN−メチルピロリドン(NMP)16mLと混合し、超音波ホモジナイザーにより出力20Wで超音波を20分照射した後、エタノール10mLと混合し、内径35mmφのろ過器を使用することによってろ取物を得るが、この時点でろ取物を採取するのではなく、このろ取物をろ過器とろ取に用いたフィルターごと60℃で2時間乾燥することによって測定資料を作製することが出来る。作製したカーボンナノチューブ含有組成物の膜はピンセットなどでろ紙から剥離して測ることもできるし、剥離出来ないときはフィルターとカーボンナノチューブ含有組成物の膜を併せた全体の厚みを測定後、フィルターのみの厚みを全体から差し引いて算出しても良い。ろ過に使用するろ過用のフィルターはメンブレンフィルター(OMNIPORE MEMBRANE FILTERS, FILTER TYPE:1.0μm JA,47mmφ)を使用することができる。また、フィルターの口径はろ液が通過するのであれば1.0μm以下であっても構わないが、NMPおよびエタノールに溶解しない材質である必要があり、好ましくはフッ素樹脂製のフィルターを使用するのが好適である。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、1×10−4Ω・cmから1×10−2Ω・cmのカーボンナノチューブ含有組成物であるが、この様なカーボンナノチューブ含有組成物は、特に導電性が良いため、例えば透明電極の様な透明性を必要とする導電層に利用する場合、カーボンナノチューブの使用量が少なくても十分に導電性を発揮し、使用量低減による透明性の向上効果も得られる。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が30以上であることが好ましい。より好ましくは40以上、200以下であり、さらに好ましくは50以上、150以下である。G/D比とはカーボンナノチューブ含有組成物をラマン分光分析法により評価した時の値である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は633nmとする。ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このGバンド、Dバンドの高さ比、G/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高品質であることを示している。またカーボンナノチューブ含有組成物のような固体のラマン分光分析法は、サンプリングによってばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、別の場所をラマン分光分析し、その総加平均をとるものとする。G/D比が30以上とは相当な高品質カーボンナノチューブ含有組成物であることを示している。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は透明導電性基材として使用することが可能である。透明導電性基材として使用する際には、カーボンナノチューブ含有組成物を界面活性剤や各種高分子材料などの添加剤とともに分散媒に分散させて分散液とする。得られたカーボンナノチューブ含有組成物を含有する分散液は基材に塗布することが可能であり、塗布後の基材の光透過率が80%以上、表面抵抗値2×10Ω/□以下である透明導電性基材を製造することが可能である。
本発明のカーボンナノチューブ組成物は更なる処理をしなくても分散媒に添加剤とともに分散液とすることができるが、カーボンナノチューブ含有組成物を後述する液相酸化をした場合にはその後、乾燥させることなく分散媒および添加剤と混合して分散させることで分散性が非常に良くなるため好ましい。ここで酸性溶液は、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、過酸化水素もしくはこれらのひとつを含む混酸である。好ましくは硝酸である。カーボンナノチューブ組成物の表面を硝酸などを用いて官能基化することにより、分散媒および添加剤との親和性が向上するため分散性が向上する。また、カーボンナノチューブ組成物は一旦乾燥してしまうと、強固なバンドルを形成してしまい、分散させることが困難になる傾向がある。乾燥したカーボンナノチューブ組成物を添加剤および分散媒と混合して、例えば超音波ホモジナイザー等を利用してバンドルをほぐそうとしても多大なエネルギーと時間を要し、分散させている最中にカーボンナノチューブ自体も損傷を受けやすい。乾燥させることなく分散させる場合では、カーボンナノチューブは乾燥時ほど強固なバンドルを形成していないため、容易に分散可能であり、分散に要するエネルギー、時間も少なくてすむため、分散させている最中にカーボンナノチューブ自体が受ける損傷も少ない。したがって、高度な導電性を有する材料形成のための分散液製造には、硝酸処理による官能基化したカーボンナノチューブ組成物を乾燥させることなく分散させると効果が大きい。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の分散液は分散能や分散安定化能などの向上のために添加剤として界面活性剤、各種高分子材料等を含有できる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤に分けられるが、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物ではいずれの界面活性剤を用いることも可能である。イオン性界面活性剤は、単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤にわけられる。
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などがあげられる。
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤がある。
陰イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤であり、中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香環を含むもの、すなわち芳香族系イオン性界面活性剤が好ましく、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族系イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤は、単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤があげられる。中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香族系非イオン性界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンフェニルエーテルが好ましい。
また各種高分子材料はカーボンナノチューブの他に含有されることができる添加剤として用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等の水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Na−CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アミロース、シクロアミロース、キトサン等の糖類ポリマー等がある。またポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーおよびそれらの誘導体もカーボンナノチューブの分散能や分散安定化能等を向上させるために使用できる。なかでも、導電性ポリマーおよびそれらの誘導体は、上記目的以外にもカーボンナノチューブの導電特性を効率的に発揮するために用いることもできる。
また導電性ポリマーは水溶性でも非水溶性でも用いることができる。通常、非水溶性の導電ポリマーが多く知られているが、高分子中にカルボン酸、スルホン酸などの親水性基を有するものや、非水溶性導電ポリマーに酸をドープして水溶性に変化した水溶性導電ポリマーも使用することが可能である。
本発明で製造するカーボンナノチューブ含有組成物の分散媒は特に限定されず、水系溶媒でも良いし非水系溶媒でも良い。非水系溶媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、塩素含有炭化水素類(メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール(エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、フェノール等)、低級カルボン酸(酢酸等)、アミン類(トリエチルアミン、トリメタノールアミン等)、窒素含有極性溶媒(N、N−ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン等)、硫黄化合物類(ジメチルスルホキシド等)などを用いることができる。
これらのなかでも分散媒としては、水、アルコール、トルエン、アセトン、エーテルおよびそれらを組み合わせた溶媒を含有する分散媒であることが好ましい。水系溶媒が必要である場合、および後述するようにバインダーを用いる場合であって、そのバインダーが無機ポリマー系バインダーの場合には、水、アルコール類、アミン類などの極性溶媒が使用される。また、バインダーとして常温で液状のものを用いる場合には、それを分散媒として用いることもできる。
上記液における各成分の配合割合は、以下のとおりである。
すなわち、カーボンナノチューブ含有組成物を含有する液は、液中、カーボンナノチューブ含有組成物を0.01重量%以上含有していることが好ましく、0.1重量%以上含有していることがより好ましい。上限としては、通常20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下の濃度で含有していることである。
界面活性剤および各種高分子材料の添加剤の少なくとも1種の含有量としては、特に限定されるものではないが、それぞれ好ましくは、0.1〜50重量%、より好ましくは、0.2〜30重量%である。上記分散剤の少なくとも1種とカーボンナノチューブの混合比は(添加剤/カーボンナノチューブ)としては、特に限定はないが、混合(重量)比で好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.3〜10である。また本発明のカーボンナノチューブの分散液は、分散性に優れるため、所望のカーボンナノチューブ含量よりも高濃度の分散液を作製し、溶媒で薄めて所望の濃度として使用することも可能である。溶媒としてはいかなる溶媒であってもよいが、使用目的に応じて選択される。導電性がさほど必要で無い用途は、カーボンナノチューブ濃度を薄めて使うこともあるし、最初から薄い状態で作成しても良い。
分散液やそれにバインダーなどを添加した液は、透明基材だけでなく、あらゆる被塗布部材、例えば着色基材および繊維に塗布を施すための透明被覆液としても使える。その際の被塗布部材、例えば、クリーンルームなどの床材や壁材にコーティングすれば帯電防止床壁材として使用できるし、繊維に塗布すれば帯電防止衣服やマット、カーテンなどとして使用できる。
カーボンナノチューブ分散液を調製後、基材上に塗布することで導電性フィルムを形成することができるが、カーボンナノチューブの分散液を塗布する方法は特に限定されない。公知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、バーコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷、またはロールコーティングなどが利用できる。また塗布は、何回行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせても良い。最も好ましい塗布方法は、バーコーティングである。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の分散液を塗布した導電性フィルムは、液を基材に塗布した後、風乾、加熱、減圧などの方法により不要な分散媒を除去することができる。それによりカーボンナノチューブは、3次元編目構造を形成し基材に固定化される。その後、液中の成分である分散剤を適当な溶媒を用いて除去する。この操作により、電荷の分散が容易になり透明導電性フィルムの導電性が向上する。
分散剤を除去するための溶媒としては分散剤を溶解するものであれば特に制限はなく、水性溶媒でも非水性溶媒でもよい。具体的には水性溶媒であれば、水やアルコール類が挙げられ、非水性溶媒であれば、クロロホルム、アセトニトリルなどがあげられる。
上記のように液を塗布してカーボンナノチューブを含む透明導電性フィルムを形成後、このフィルムを有機または無機透明被膜を形成しうるバインダー材料でオーバーコーティングすることも好ましい。オーバーコーティングすることにより、さらなる電荷の分散や、移動に効果的である。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、カーボンナノチューブの分散液としてフィルム(例えば通常のポリエチレンテレフタレートフィルム)に塗布して、光透過率が80%以上、表面抵抗値が2×10Ω/□以下のものが得られ、好ましい態様においては、上記フィルムの透過率で80〜88%、表面抵抗で1×10以上2×10Ω/□以下も達成可能である。
なお、フィルムの光透過率、表面抵抗値は、次の方法で測定したときの値とする。光透過率は550nmの光源を用いて測定するが、この時導電性フィルムの光透過率は基材も含めて分光光度計(日立製作所U−2001)を用いて測定する。上記発明のカーボンナノチューブ含有組成物を分散液とし、塗布してフィルムとしたときの「光透過率が80%以上である」とは、この時の光透過率が80%以上である。さらに本発明における前記本発明のカーボンナノチューブ含有組成物を分散液とし、塗布してフィルムとしたときの「表面抵抗値が2×10Ω/□以下である」とは、このときのフィルムの表面抵抗値が2×10Ω/□以下である。導電性フィルムの導電性はフィルムの表面抵抗値を測定して評価する。表面抵抗値はJISK7149準拠の4端子4探針法を用い、例えばロレスタEP MCP−T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)にて測定することが可能である。高抵抗測定の際は、ハイレスターUP MCP−HT450((株)ダイアインスツルメンツ社製、10V、10秒)を用いて測定することが可能である。
本発明の基材となるフィルムは特に限定されない、透明性が必要な時には、透明フィルム、例えばPETフィルムなどを用いる。
本発明の導電性フィルムは、基材と接着させたまま使用することも出来るし、基材から剥離させ自立フィルムとして用いることも出来る。自立フィルムを作製するには、透明導電性フィルム上にさらに有機ポリマー系バインダーを塗布した後、基材を剥離すればよい。また、作製時の基材を熱分解により消失あるいは溶融させ、別の基材に導電性フィルムを転写して用いることもできる。その際は、作製時の基材の熱分解温度<転写基材の熱分解温度であることが好ましい。
上記より得られる本発明のカーボンナノチューブ含有組成物を用いた透明導電性フィルムは、以下の特徴を有するものである。
(1)表面抵抗値2X10Ω/□以下;
(2)550nmの波長の光透過率が以下の条件を満たす;
複合体の光透過率/基材の光透過率≧0.90
好ましい態様においては、以下の特徴を有するものも製造し得る。
(1)表面抵抗が1×10Ω/□以上、5×10Ω/□以下であり、
(2)550nmの波長の光透過率が以下の条件を満たす。
導電性フィルムの透過率/透明基材の光透過率≧0.94である。
さらに好ましい態様においては、以下の特徴を有するものも製造し得る。
(1)表面抵抗が1×10Ω/□以上、5×10Ω/□以下であり、
(2)550nmの波長の光透過率が以下の条件を満たす。
導電性フィルムの透過率/透明基材の光透過率≧0.95である。
また、前述したようにカーボンナノチューブ含有組成物の分散液を製造する際、カーボンナノチューブ含有組成物を、液相酸化した場合には、その後、乾燥させることなく分散媒または分散剤またはその両方を混合してカーボンナノチューブ含有組成物を分散させて良く、混合する順序は特に制限はなく、混合方法についてもカーボンナノチューブ含有組成物の分散液が得られるならば特に制限はない。前記分散液の製造方法に準じた方法は、0.3mg/mL以上カーボンナノチューブ含有組成物が分散した分散液が得られるので好ましい。ここで、硝酸溶液中で加熱した後、乾燥させることなくとは、硝酸溶液中で加熱後、カーボンナノチューブ含有組成物がカーボン重量で99wt%以下となるように液体を保持した状態が常に保たれていることをいう。例えば、硝酸溶液中での加熱終了後、ろ過、デカンテーション等で硝酸を除去する場合、ろ過、デカンテーション後、水、アルコール、有機溶媒等の液体で洗浄する場合についても、カーボンナノチューブ含有組成物がカーボン重量で99wt%以下となるように液体を保持した状態が常に保たれているならば、本発明で規定する「乾燥させることなく」に当てはまると解釈する。その際のカーボン重量の下限は特に制限が無いが、少なくとも分散液を製造する時点(分散剤、分散媒と混合する時)では、製造しようとする分散液の濃度以上に調整しておく必要はある。分散剤または分散媒と混合する際のカーボンナノチューブ組成物がカーボン重量で99wt%以下となるように液体を保持した状態として好ましい態様は、扱い易さの点から、カーボン重量が0.01〜80wt%であり、さらに好ましくは0.1〜65wt%、より好ましくは1.0〜50wt%、最も好ましくは3〜40wt%である。
かくして得られる本発明の導電性フィルムは、以下の特徴を有するものも製造し得る。
(1)表面抵抗値2X10Ω/□以下、
(2)550nmの波長の光透過率が以下の条件を満たす;
複合体の光透過率/基材の光透過率≧0.90。
本発明でのカーボンナノチューブ含有組成物を製造するには、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))≧0.75となるまで酸化反応を行うことが好適である。当然のことながら、酸化反応に供するカーボンナノチューブ含有組成物が外径1.0〜3.0nmの範囲の二層カーボンナノチューブを含んでいることが必要である。上記のカーボンナノチューブの存在を確認する方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後、触媒体を3〜6Nの塩酸水溶液で除去した後に透過型電子顕微鏡などで、観察することができる。
TG(H)/(TG(L)+TG(H))≧0.75とする方法として、いかなる方法でもかまわないが、3つ例を挙げる。
1つ目の方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後に、電気炉などの加熱装置で1〜5時間、400〜500℃の範囲で加熱酸化する。この時、カーボンナノチューブ含有組成物は触媒体に付着している状態が好ましい。次に前述のように触媒体を除去した後に、熱重量分析をして、得られる重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)とし、x軸を温度(℃)とし、y軸をDTG(mg/min)としてプロットして得られるグラフに基づき、以下のように加熱温度を決定し、加熱する。すなわちDTG曲線において高温側と低温側にある二つの燃焼ピークのうち低温側の燃焼ピークから高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点(変曲点が存在しない場合は600℃)まで酸素雰囲気下で加熱し、該温度に達した時点で、加熱をやめて窒素ガスに切り替える。この時の酸素濃度は0.1〜21%の範囲であれば十分である。昇温速度は10℃±5℃/minであることが好ましい。なお、この段階でいう高温側にある燃焼ピークは、700〜850℃よりも低い場合もあるが、相対的に高い方のピークを高温側の燃焼ピークとする。その後、必要に応じて濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で90〜150℃の範囲で5〜75時間加熱を行う。
2つ目の方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後に、電気炉などの加熱装置で1〜5時間、400〜500℃の範囲で加熱酸化する。この時、カーボンナノチューブ含有組成物は触媒体に付着している状態が好ましい。次に前述のように触媒体を除去した後に、あらかじめ500〜600℃の範囲に加熱した電気炉などの加熱器に設置し、1〜5時間加熱酸化を行う。最後に濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で90〜150℃の範囲で5〜75時間加熱を行う。
3つ目の方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後、触媒体を3〜6Nの塩酸水溶液で除去した後に濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で90〜150℃の範囲で5〜75時間加熱を行う。
上記において、濃硝酸水溶液による液相酸化は、濃硝酸以外にも硫酸、過酸化水素等の酸化剤を用いることも可能である。条件は酸化力に応じて適宜決定することが可能である。
以上の方法あるいはいずれかを組み合わせて炭素不純物を酸化除去することが可能である。また最も好ましいのは、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後、触媒体を3〜6Nの塩酸水溶液で除去した後に、すでにTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上となっていることである。しかしながら、通常は低温側の燃焼ピークが高く、上記範囲を満たさないことが考えられるので、酸化処理を行い、TG(H)/(TG(H)+TG(L))の値を制御する。上記したような酸化処理を行い、熱重量分析を行い、高温側、低温側のピークを確認し、本発明で規定する範囲を満たしていない場合はさらに加熱酸化や硝酸などの液相酸化を行い、本発明範囲内とするよう調整する。
カーボンナノチューブ含有組成物は、カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱反応領域で接触させてカーボンナノチューブを製造する。その製法としては本発明のカーボンナノチューブ含有組成物が得られる限り制限はなく、基本的にはカーボンナノチューブ製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱下で接触させることによってカーボンナノチューブを製造することができる。その接触の温度は、500〜1200℃が好ましく、より好ましくは600〜1000℃である。温度が低いと収率良くカーボンナノチューブを得ることが困難になり、温度が高いと使用する反応器の材質に制約が生じる。
炭素含有化合物は、特に限定されないが、好ましくは炭化水素がよい。炭化水素は芳香族であっても、非芳香族であってもよい。芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン又はこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、エタノール、メタノール、プロパノール、又はこれらの混合物等を使用することができる。これらの中でも、特に単層または二層カーボンナノチューブを作りやすいメタンが最も好ましい炭素含有化合物である。炭素含有化合物は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスとの混合物として用いても、単独で用いても構わない。触媒体に炭素ガスが供給される反応場は、不活性ガス、または真空雰囲気下(減圧下)であることが、収率良くカーボンナノチューブが得られることから好ましい。得られたカーボンナノチューブ含有化合物は、担体材料や触媒金属の除去や、酸化反応処理に供される。
上記基本的な製造方法のなかでも酸化処理に耐え得る品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物が効率よく得られる点で、下記の(1)から(3)の範囲を満たすことが好ましい。
(1)カーボンナノチューブ製造用触媒体の重量を炭素含有化合物の流量で割った接触時間(W/F)が100〜400min・g/Lの範囲。
(2)炭素含有化合物を含むガスの線速が2〜8cm/secの範囲。
(3)カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であり、且つかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲。
上記の製造条件について詳細に説明する。
本発明において反応方式は特に限定しないが、縦型流動床型反応器を用いて反応させることが好ましい。縦型流動床型反応器とは、原料となる炭素含有化合物が、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に流通するように設置された反応器である。該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向に炭素含有化合物が流通し、触媒体層を通過する。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向をも含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。なお、好ましいのは鉛直方向である。なお、炭素含有化合物の供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭素含有化合物が前記方向に流通し、その流通過程で触媒体層を通過すればよい。
触媒体は、縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にあり、反応時には流動床を形成した状態とする。このようにすることにより、触体と炭素含有化合物を有効に接触させることができる。横型反応器の場合、触媒体と炭素含有化合物を有効に接触させるため、炭素含有化合物の流れに対して垂直方向で反応器の断面全面に存在させた状態にするには、重力がかかる関係上、触媒体を左右から挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブ含有組成物の生成反応の場合、反応するに従って触媒体上にカーボンナノチューブ含有組成物が生成して、触媒体の体積が増加するので、左右から触媒体を挟みこむ方法は好ましくない。また、横型で流動床を形成させることも難しい。本発明では反応器を縦型にし、反応器内にガスが透過できる台を設置して、その上に触媒体を置くことによって、触媒体を両側から挟みこむことなく、反応器の断面方向に均一に触媒体を存在させることができ、炭素含有化合物を鉛直方向に流通させる際に流動床を形成させることもできる。触媒体を縦型流動床反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒体が広がっていて触媒体底部の台が見えない状態を言う。このような状態の好ましい実施態様としては、例えば、反応器内にガスが透過できる触媒体を置く台(セラミックスフィルターなど)を置き、そこに所定の厚みで触媒を充填する。この触媒体層の上下が多少凸凹してもかまわない(図4)。図4は、反応器403の中に触媒体を置く台である石英焼結板402が設置され、その上に触媒層404を形成する触媒体が反応器403の水平断面方向全体に存在している状態を示す概念図である。
流動床型は、触媒体を連続的に供給し、反応後の触媒体とカーボンナノチューブ含有組成物を含む集合体を連続的に取り出すことにより、連続的な合成が可能であり、カーボンナノチューブ含有組成物を効率よく得ることができ好ましい。
流動床型反応において、原料の炭素含有化合物と触媒体が均一に効率よく接触するためにカーボンナノチューブ合成反応が均一に行われ、アモルファスカーボンなどの不純物による触媒被覆が抑制され、触媒活性が長く続くと考えられる。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器内に、石英板上に置かれた触媒が設置され、該触媒上を炭素含有化合物が通過して接触、反応する態様の反応装置を指す。この場合、触媒体表面ではカーボンナノチューブが生成するが、触媒体内部にはメタンが到達しないため、縦型反応器に比較して収量が少なくなる傾向にある。これに対して、縦型反応器では触媒体全体に原料の炭素含有化合物が接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブ含有組成物を合成することが可能である。
反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭素含有化合物の接触時間(W/F)は100〜400min・g/Lの範囲であることが好ましい。ここで接触時間とは反応中に供した触媒体(g)を炭素含有化合物の流量(L/min)で除した値である。カーボンナノチューブを効率的に成長させるには、原料ガスである炭素含有化合物と触媒体をなるべく短時間で接触させる。接触時間が長すぎると副反応が起こり、アモルファスカーボンなどの炭素不純物が増える傾向にあり、増えすぎると触媒金属を被覆してしまうため、カーボンナノチューブの成長が止まってしまう場合がある。そのため、400min・g/L以下が好ましい。また接触時間が短すぎるとCNTの製造効率が悪くなり、収量が大きく減少する。このため、100g・min/mL以上が好ましい。
炭素含有化合物の線速は2cm/sec以上、好ましくは8cm/sec以下で流通させる。カーボンナノチューブ合成反応においては、炭素含有化合物の分解効率をあげて、収率を上げるために炭素含有化合物を低線速にて流通させることが通常であったが、炭素含有化合物を低線速にて加熱温度下流通させると炭素含有化合物自身の気相分解や触媒上での副反応によりアモルファスカーボン等の副生物が多量に生成する。高品質カーボンナノチューブ含有組成物を得るためには炭素含有化合物の線速を2cm/sec以上、8cm/sec以下で流通させることが好ましい。さらに好ましくは4cm/sec以上、8cm/sec以下である。線速が速すぎると、触媒体が大きく舞い上がり反応温度域(均熱帯)から外れ、高品質なカーボンナノチューブ含有組成物が得られない。
カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径及びかさ密度は高品質のカーボンナノチューブを得るために重要な因子となりうる。具体的には触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であることが好ましい。本発明においては、炭素含有化合物を比較的速い線速にて0.2mm未満では、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の均熱帯を外れることがあり、本発明ほどの高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。また触媒体の凝集体の粒径が2mmより大きいと流動床中で触媒体が動きにくいために、炭素含有化合物は、触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。よって粒径の大きさは0.2〜2mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.25〜1.5mmの範囲であり、最も好ましくは0.5〜0.85mmの範囲である。
触媒体の凝集体の粒径の制御には、特に制限は無いが、例えば篩い分けを行う方法と押し出し機から造粒する方法とがある。篩い分けの方法は、触媒体の凝集した塊状物を粉砕しながら、16〜65メッシュの篩いをかけて16メッシュから65メッシュの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する方法である。粉砕の方法はいかなる方法を用いても良い。またメッシュとは、1インチ(25.4mm)の間にある目数を表す。16メッシュはTyler式のサイズで2mmであり、65メッシュは0.212mmである。押し出し機からの造粒方法は触媒体と水を混練りし、内径が0.2〜2.0mmの孔の開いた各種スクリーンから押し出す。得られた触媒体の線状凝集物を乾燥させながら粉砕し、その後篩い分けを行い16〜65メッシュの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する。このように篩い分けを行うことにより、凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲にある触媒体のみが得られる。上記、好ましい粒径とするには、篩いの目開きを適宜選択すればよい。
触媒体のかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲であることにより、触媒体と炭素含有化合物との接触効率が良くなり、よりいっそう高品質なカーボンナノチューブを効率よく、多量に合成することが可能となる。触媒体のかさ密度が0.1g/mL未満では、触媒体を取り扱いづらいといった問題点がある。またかさ密度が小さすぎると、炭素含有化合物と接触させる際に、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の均熱帯を外れることがあり、高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。また触媒のかさ密度が1g/mLを超えると、触媒体と炭素含有化合物とが均一に効率よく接触することが困難になり、やはり高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。触媒体のかさ密度が大きすぎる場合、縦型反応器に触媒体を設置した際、触媒体が密に詰まってしまうため、炭素含有化合物と均一に接触ができず、高品質なカーボンナノチューブを生成することが困難になる。触媒体のかさ密度が上記の範囲であると、炭素含有化合物と触媒金属との接触効率が上がるため、均一で高品質なカーボンナノチューブを効率よく、かつ、多量に製造することが可能となる。また、触媒体のかさ密度が大きすぎる場合、流動床中で触媒体が動きにくいために、炭素含有化合物は、触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。触媒体のかさ密度が上記の範囲であると、触媒体が動くことによって、固定されたショートパスができにくい。よって触媒体のかさ密度は0.1g/mL以上、1g/mL以下である。触媒体のかさ密度は、より好ましくは0.2g/mL以上、0.7g/mL以下であり、さらに好ましくは0.2g/mL以上、0.5g/mL以下である。
かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体質量のことである。以下にかさ密度の測定方法を示す。粉体のかさ密度は、測定時の温度、湿度に影響されることがある。ここで言うかさ密度は、温度20±10℃、湿度60±10%で測定したときの値である。50mLメスシリンダーを測定容器として用い、メスシリンダーの底を軽く叩きながら、予め定めた容積を占めるように粉末を加える。かさ密度の測定に際しては10mL以上の粉末を加えることが好ましい。その後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL以内であることを確認し、詰める操作を終了する。もし容積値に目視にて±0.2mL以上の変化があれば、メスシリンダーの底を軽く叩きながら粉末を追加し、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL以上の変化がないことを確認して操作を終了する。上記の方法で詰めた一定量の粉末の重量を求めることを3回繰り返し、その平均重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(mL))を粉末のかさ密度とする。測定に供するカーボンナノチューブ製造用触媒体は、20g±5gとする。なお、カーボンナノチューブ製造用触媒体の量が前記量に満たない場合は、評価可能な量で測定するものとする。
触媒体の凝集物の粒径とかさ密度の双方を制御することで、粒径が大きく、かさ密度が小さい触媒体あるいは粒径が小さく、かさ密度が大きいなどの組み合わせにより縦型反応器内の均熱帯中で触媒体と原料ガスである炭素含有化合物を均一に接触させ、高品質なカーボンナノチューブを得ることができる。
このように粒径とかさ密度の双方を制御するには例えば担体に触媒金属を担持して触媒体を製造する際、上記のように粒径を制御しつつ、担持する金属の含有量と担体の大きさと比重で適宜調整すればよい。
本発明においてカーボンナノチューブ製造用触媒体が0.1〜1wt%の範囲で8族から10族の遷移金属を含むことが好ましい。遷移金属量は、多いほどカーボンナノチューブ含有組成物の収量が上がるが、多すぎると遷移金属の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。遷移金属量が少ないと、カーボンナノチューブ製造用触媒体上の遷移金属の粒子径が小さくなり、細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な遷移金属量は、触媒体の細孔容量や外表面積、触媒体の調製方法によって異なるが、触媒体に対して0.1〜1wt%の遷移金属量にすることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜0.6wt%である。中でも、Fe、 Co、Ni、V、Pd、Pt、Rh等が特に好ましく、さらに好ましくは、Fe、Co、Niが用いられる。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。また遷移金属は微粒子であることが好ましい。微粒子とは粒径が0.5〜10nmであることが好ましい。金属が微粒子であると細いカーボンナノチューブが生成しやすい。金属は1種類だけを含んでいても、2種類以上を含んでいてもよい。2種類の金属を担持させる場合は、Fe, Co,Ni,Pd,Pt,Rhから選択される金属と選択されたそれ以外の金属の組み合わせが特に好ましい。FeとCo,Ni,V,Mo,Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。
本発明においてカーボンナノチューブ製造用触媒体は、担体としてマグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアのうち少なくとも1種類を含むことが好ましく、特に限定されないがマグネシアが好ましく用いられる。ここでマグネシアとは、特に限定しないが、窒素によるBET比表面積が10〜50m/gのもので、形状が微粒子状のものが好ましい。
カーボンナノチューブ製造用触媒体の製造方法は、特に限定されない。例えば、遷移金属の金属塩を溶解させた非水溶液中(例えばメタノール溶液)又は水溶液中に、マグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアなどの担体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させる。またその後、大気中あるいは窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中あるいは真空中で、高温(100〜600℃)で加熱してもよい(含浸法)。あるいは遷移金属の金属塩を溶解させた水溶液中に、マグネシアなどの担体を含浸して十分に分散混合し、加熱加圧下(通常100〜250℃、好ましくは100〜200℃、4〜15kgf/cm)で反応させた後に、大気中あるいは窒素などの不活性ガス中で、高温(通常400〜1200℃、好ましくは400〜900℃より好ましくは400〜700℃)で加熱しても良い(水熱法)。
水熱法によるカーボンナノチューブ製造用触媒体の製造方法は、8族〜10族の遷移金属化合物とMg化合物を水中で混合撹拌し、該混合液を加熱、加圧による水熱反応で触媒前駆体が得られ、該触媒前駆体を特定の温度で加熱することで得られる。水熱反応を行うことで、遷移金属化合物とMg化合物がそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由して複合水酸化物となる。これにより遷移金属が水酸化Mg中に高度に分散された状態の触媒前駆体になる。
このときの遷移金属化合物としては硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、クエン酸アンモニウム塩、アセチルアセトネート、酸化物および水酸化物が好ましく、クエン酸アンモニウム塩、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩がより好ましい。なかでもクエン酸鉄(III)アンモニウム、硝酸鉄が好ましく用いられる。
Mg化合物としては硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酸化物および水酸化物が好ましく、酸化物がより好ましい。
遷移金属化合物とMg化合物の使用量は、遷移金属化合物中の金属成分量が、Mg化合物のMgO換算量に対して、0.1〜1wt%となるよう混合しておくことが単層および/または2層を含有する比較的細いカーボンナノチューブを製造しやすい点で好ましく、より好ましくは0.2〜0.6wt%の範囲である。上記範囲より金属成分量が多い場合には、担持される金属粒子の粒子径が大きくなり、得られるカーボンナノチューブも太くなる傾向にあるため、比較的細いカーボンナノチューブを製造しようとする場合には注意を要するが、水熱反応後、加熱して薄片状MgO触媒体を製造する場合には、直接Mg0に金属化合物を担持する場合に比較して金属粒子の粒度のバラツキも少なく、比較的直径の揃った多層のカーボンナノチューブを得ることができる。
また水とMg化合物はモル比で4:1〜100:1で混合することが好ましく、より好ましくは9:1〜50:1であり、更に好ましくは9:1〜30:1である。
尚、遷移金属化合物とMg化合物はあらかじめ混合、濃縮乾固したものを水中で混合撹拌して水熱反応を行っても良いが、工程を簡略化するために、遷移金属化合物とMg化合物を直接水中に加えて、水熱反応に供することが好ましい。
水熱反応は加熱、加圧下で行われるが、オートクレーブなどの耐圧容器中でけん濁状態を含む混合水を100℃〜250℃の範囲で加熱し、自生圧を発生させることが好ましい。加熱温度は100〜200℃の範囲がより好ましい。尚、不活性ガスを加えて圧力をかけてもかまわない。水熱反応時の加熱時間は加熱温度と密接に関係しており、通常は30分〜10時間程度で行われ、温度が高いほど短時間で水熱反応は短くてすむ。例えば250℃で行う場合は30分〜2時間が好ましく、100℃で行う場合は2〜10時間が好ましい。
水熱反応後の触媒前駆体を含む混合物は、スラリー状のけん濁液になっている。回収方法はこだわらないが、好ましくは濾過あるいは遠心分離することにより、容易に触媒前駆体を回収することができる。より好ましくは濾別であり、吸引濾過または自然濾過のどちらで行ってもかまわない。従来のカーボンナノチューブ触媒体の製造方法は、一般に遷移金属化合物をMgOへ担持した際に、水を含む混合物を濃縮乾固あるいは蒸発乾固させることにより触媒体をしている。これは濾過により固液分離を行うと、溶解したMgOに未吸着の遷移金属化合物も濾別されてしまい、所定量の遷移金属化合物をMgOに担持することができないためである。一方、触媒前駆体を製造するにあたって水熱反応を行うことで、遷移金属化合物とMg化合物がそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由した複合水酸化物となる。これにより遷移金属が水酸化Mg中に高度に分散された状態となり、水中に未反応の遷移金属化合物はほとんどなくなる。したがって、濾過あるいは遠心分離による固液分離が可能となるのである。濾過あるいは遠心分離はエネルギー消費量が少ないので好ましい。
水熱処理後、固液分離した触媒前駆体は遷移金属とMgの複合水酸化物であり、加熱することにより遷移金属とMgの複合酸化物となる。加熱は大気または窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中で行うことができ、400〜1000℃の範囲で加熱することが好ましく、400〜700℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は1〜5時間の範囲で行うことが好ましい。加熱前の触媒前駆体は水酸化Mgが主体であるため、薄片状の1次構造をとっている。加熱温度が高すぎると脱水の際に焼結が起こり、薄片状の2次構造を維持できず、球形あるいは立方体、直方体の構造をとってしまい、遷移金属がMgO内部に取り込まれ、カーボンナノチューブの合成に際しては不効率となる可能性がある。
本発明の水熱反応を行う際、遷移金属化合物は硫黄成分を含むことが好ましい。硫黄成分の含有量は、遷移金属に対し0.1〜20wt%の範囲であることが、カーボンナノチューブ含有組成物の収量がより一層向上するため好ましい。遷移金属化合物に硫黄成分を含有させる方法に特に制限はないが、遷移金属化合物として、硫黄成分を含有する遷移金属化合物を併用することが好ましい。硫黄成分を含む遷移金属化合物としては、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩を用いることが好ましい。なかでも硫酸鉄(III)アンモニウムが好ましく用いられる。
硫黄成分は焼成工程後でも残留している。過剰に硫黄成分が含まれていると触媒毒となってしまい、カーボンナノチューブの成長を阻害する傾向にあるため上記の範囲で添加することが好ましい。さらに好ましくは0.1〜10wt%の範囲である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
[触媒調製例1]
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業社製)2.46gをメタノール(関東化学社製)500mLに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷化学工業社製 MJ−30)を100.0g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理し、懸濁液を減圧下、40℃で濃縮堅固した。得られた粉末を120℃で加熱乾燥してメタノールを除去し、酸化マグネシウム粉末に金属塩が担持された触媒体を得た。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。得られた触媒体に含まれる鉄含有量は0.38wt%であった。またかさ密度は、0.61g/mLであった。上記の操作を繰り返し、以下の実験に供した。
[触媒調製例2]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39wt%であった。
[触媒調製例3]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分を固形分/イオン交換水比が1/1となるようにイオン交換水を加え、混練り機で10分混ぜた後、押し出し機にて内径0.8mmの孔から押し出した。押し出し後、乾燥しながら粉砕し、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の篩にて整粒した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.47g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.38wt%であった。
[触媒調製例4]
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業社製)2.46gをメタノール(関東化学社製)500mLに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷化学工業社製 MJ−30)を100.0g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理し、懸濁液を減圧下、40℃で濃縮堅固した。得られた粉末を120℃で加熱乾燥してメタノールを除去し、酸化マグネシウム粉末に金属塩が担持された触媒体を得た。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、32メッシュ(0.5mm)以下の粒径になるまで乳鉢で細粒化した。得られた細粒は、60メッシュ(0.25mm)パスの細粒が30wt%程度含まれるものであった。80メッシュパスの細粒は半分程度含まれるものであった。得られた触媒体に含まれる鉄含有量は0.37wt%であった。またかさ密度は、0.78g/mLであった。上記の操作を繰り返し、以下の実験に供した。
[実施例1 カーボンナノチューブ含有組成物製造例1]
図4に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器403は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板402を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管408、上部には廃ガス管406を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉401を具備する。また反応管内の温度を検知するために熱電対405を具備する。
触媒調整例1で調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層404を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー407を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー407を用いてメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の重量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169min・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
[実施例2 カーボンナノチューブ含有組成物製造例2]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1と同様の装置、操作で触媒体は触媒調製例2を用いて製造を行った。
[実施例3 カーボンナノチューブ含有組成物製造例3]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1と同様の装置、操作で触媒体は触媒調製例3を用いて製造を行った。
[参考例1 カーボンナノチューブ含有組成物製造例4]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1と同様の装置、操作で触媒体は触媒調製例4を用いて製造を行った。
[ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)に粉末試料を設置し、633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均で表した。
[導電性の評価]
カーボンナノチューブ組成物の導電性は、濃度が0.09wt%のカーボンナノチューブ組成物分散液を調製し、PETフィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率91%、15cm×10cm)上にバーコーターを用いて塗布し、表面抵抗値をロレスタEP MCP−T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)、ハイレスターUP MCP−HT450((株)ダイアインスツルメンツ社製、10V、10秒)を用いて測定した。
[高分解能透過型電子顕微鏡写真]
カーボンナノチューブ組成物約0.5mgをエタノール約2mLに入れて、約15分間超音波バスを用いて分散処理を行った。分散した試料をグリッド上に滴下して乾燥した。この様に試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−2100)に設置し、測定を行った。測定倍率はそれぞれ5万倍から50万倍で行い、カーボンナノチューブの外径分布および層数分布の観察は40万倍で行った。加速電圧は120kVである。
参考例2:加熱酸化処理)
カーボンナノチューブ含有組成物製造例4で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を蒸発皿に移し変えて、設定温度446℃まであらかじめ加熱した電気炉に静置して3時間加熱酸化処理した。
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物は115g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。最終的に得られたカーボンナノチューブ含有濾取物は120℃で加熱乾燥を一晩行い、カーボンナノチューブ含有組成物を得た。
約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは725℃であり、高温側の重量減少は37.7%であった。低温側の燃焼ピークは580℃であり、低温側の重量減少は51%であった。変曲点は640℃であった(図3)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.43であった。
熱重量分析の結果より、図6に示した縦型加熱酸化反応装置でカーボンナノチューブ含有組成物の加熱酸化処理を行った。図6は前記縦型加熱酸化反応装置の概略図である。反応器603は内径32mm、長さは1200mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板602を具備し、石英管下方部には、ガス供給ライン608、上部には廃ガスライン606を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器601を具備する。また反応管内の温度を検知するために熱電対605を具備する。
カーボンナノチューブ含有組成物0.310gを取り、石英焼結板602上にセットした。次いで、ガス供給ライン608からマスフローコントローラー607を用いて空気を500mL/minで供給開始し、カーボンナノチューブ含有組成物層604を通過するように流通させた。反応器内を変曲点温度640℃となるまで10℃/minの昇温速度で加熱した。前記、変曲点温度640℃に到達した時点で空気ガス供給を止め、ガス供給ライン608よりマスフローコントローラー607を用いて窒素ガスを2000mL/minの流量で供給し、石英管を室温まで放冷した。
再度熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=1.00であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは729℃であった。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した、加熱酸化を行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は5.27%であった。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、1.9X10−3Ω・cmであった。
このようにして得られたカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、図1に示すように、カーボンナノチューブはきれいなグラファイト層で構成されており、層数が二層のカーボンナノチューブが観測された。また観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち94本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.7nmであった(図2)。また、この時のカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は122であった。前記加熱酸化処理によって得られたカーボンナノチューブ含有組成物は、イオン交換水100mL中で2時間撹拌し、減圧濾過して水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。
参考例3:加熱酸化処理+液相酸化処理)
参考例2で得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。
このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は980mgあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:8.43wt%)。熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.85であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは793℃であり、低温側の燃焼ピークは489℃であった。硝酸による液相加熱酸化処理により、カーボンナノチューブが傷つけられて、低温側の重量減少が大きくなったものと推定される。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は122であった。
このカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち94本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.7nmであった。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した加熱酸化や液相酸化などを行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は2.06%であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物は乾燥重量換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマ社製90kDa,50〜200cps)水溶液4.5gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。その後、水、エタノールを添加して終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.08wt%となるように調製して分散液とした。この時、エタノールは5vol%含むように調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率90.3%、15cm×10cm)上にバーコーターを用いて塗布して風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は4.03×10Ω/□、光透過率は94.9%(透明導電性フィルム85.7%/PETフィルム90.3%=0.949)であり、高い導電性および透明性を示した。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、4.0X10−4Ω・cmであった。
(実施例:液相酸化処理)
カーボンナノチューブ含有組成物製造例2で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を55g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は60.0gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:2.26wt%)。
熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.22であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは626℃であり、低温側の燃焼ピークは531℃であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は22であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。
一部試料を乾燥させた後に、熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.79であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは725℃であり、低温側の燃焼ピークは452℃であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は79であった。
このカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち91本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.6nmであった。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は3.351gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:5.29wt%)。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した加熱酸化や液相酸化などを行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は13.1%であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物は乾燥重量換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマ社製90kDa,50〜200cps)水溶液4.5gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。その後、水、エタノールを添加して水、エタノールを添加して終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.08wt%となるように調製して分散液とした。この時、エタノールは5vol%を含むように調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率90.3%、15cm×10cm)上にバーコーターを用いて塗布して風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は3.01×10Ω/□、光透過率は94.9%(透明導電性フィルム85.7%/PETフィルム90.3%=0.949)であり、高い導電性および透明性を示した。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.9X10−4Ω・cmであった。
(実施例:液相酸化処理)
カーボンナノチューブ含有組成物製造例3で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は102.7gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.12wt%)。
熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.19であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは591℃であり、低温側の燃焼ピークは517℃であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は13であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。
一部試料を乾燥させた後に、熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.79であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは751℃であり、低温側の燃焼ピークは448℃であった。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は3.351gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:5.29wt%)。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は43であった。
このカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち91本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.6nmであった。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した加熱酸化や液相酸化などを行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は10.4%であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物は乾燥重量換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマ社製90kDa,50〜200cps)水溶液4.5gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。その後、水、エタノールを添加して水、エタノールを添加し、終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.08wt%となるように調製し分散液とした。この時、エタノールは5vol%含むように調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率90.3%、15cm×10cm)上にバーコーターを用いて塗布して風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は3.01×10Ω/□、光透過率は95.2%(透明導電性フィルム86.0%/PETフィルム90.3%=0.952)であり、高い導電性および透明性を示した。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.9X10−4Ω・cmであった。
参考例4:加熱酸化処理+液相酸化処理)
カーボンナノチューブ含有組成物製造例4で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を蒸発皿に移し変えて、設定温度446℃まであらかじめ加熱した電気炉に静置して3時間加熱酸化処理した。
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物を用いて4.8Nの塩酸水溶液中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液に投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。最終的に得られたカーボンナノチューブ含有濾取物は120℃で加熱乾燥を一晩行い、カーボンナノチューブ含有組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量で5.33g移し変えて、設定温度550℃まであらかじめ加熱した電気炉に静置して3時間加熱酸化処理した。この処理によりカーボンナノチューブ含有組成物を1.42g得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。
このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は9.188gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:6.53wt%)。熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.85であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは753℃であり、低温側の燃焼ピークは487℃であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は60であった。
このカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち87本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.7nmであった。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した加熱酸化や液相酸化などを行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は1.44%であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物は乾燥重量換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマ社製90kDa,50〜200cps)水溶液4.5gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。その後、水、エタノールを添加して水、エタノールを添加し、終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.08wt%となるように調製し手分散液とした。この時、エタノールは5vol%含むように調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率90.3%、15cm×10cm)上にバーコーターを用いて塗布して風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は3.65×10Ω/□、光透過率は94.1%(透明導電性フィルム85.0%/PETフィルム90.3%=0.941)であり、高い導電性および透明性を示した。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、4.0X10−4Ω・cmであった。
(実施例
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物118gを蒸発皿に移し変えて、設定温度446℃まであらかじめ加熱した電気炉に静置して3時間加熱酸化処理した。
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物を用いて4.8Nの塩酸水溶液中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液に投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。最終的に得られたカーボンナノチューブ含有濾取物は120℃で加熱乾燥を一晩行い、カーボンナノチューブ含有組成物を0.374g得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで5時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は4.651gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:7.47wt%)。
熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.87であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは739℃であり、低温側の燃焼ピークは497℃であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は35であった。
このカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち88本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.8nmであった。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した加熱酸化や液相酸化などを行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は16.2%であった。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、4.4X10−4Ω・cmであった。
(比較例1)
カーボンナノチューブ含有組成物製造例4で得られた触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を蒸発皿に移し変えて、設定温度446℃まであらかじめ加熱した電気炉に静置して3時間加熱酸化処理した。
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物は124g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返した(脱MgO処理)。最終的に得られたカーボンナノチューブ含有濾取物は120℃で加熱乾燥を一晩行い、カーボンナノチューブ組成物を得た。
カーボンナノチューブ含有組成物の一部を約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)とし(x軸を温度(℃)とし、y軸をDTG(mg/min)とした。熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.25であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは725℃であり、低温側の燃焼ピークは580℃であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃のオイルバスで5時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。
このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は2.658gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:7.01wt%)。得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の一部を120℃の乾燥機で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)と(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.54であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは732℃であり、低温側の燃焼ピークは637℃であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は75であった。
このカーボンナノチューブ含有組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、観察されたカーボンナノチューブ総本数(100本)のうち88本を二層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.8nmであった。触媒体を4.8Nの塩酸処理により除去した加熱酸化や液相酸化などを行っていない未精製のカーボンナノチューブ含有組成物に対しての収率は10.4%であった。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物は乾燥重量換算で15mg、1wt%カルボキシメチルセルロースナトリウム(シグマ社製90kDa,50〜200cps)水溶液4.5gを量りとり、イオン交換水を加え10gにした。硝酸を用いてpHを4.0に合わせ超音波ホモジナイザー出力20W、7.5分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ液を調製した。分散中液温が10℃以下となるようにした。得られた液を高速遠心分離機にて10000G、15分遠心し、上清9mLを得た。その後、水、エタノールを添加して水、エタノールを添加して終濃度でカーボンナノチューブ含有組成物の濃度が0.08wt%となるように調製して分散液とした。この時、エタノールは5vol%含むように調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U46)、光透過率90.3%、15cm×10cm)上にバーコーターを用いて塗布して風乾した後、蒸留水にてリンスし、120℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ組成物を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は8.02×10Ω/□、光透過率は95.2%(透明導電性フィルム86.0%/PETフィルム90.3%=0.952)であった。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、7.5X10−4Ω・cmであった。
401 電気炉
402 石英焼結板
403 反応器
404 触媒層
405 熱電対
406 廃ガス管
407 マスフローコントローラー
408 混合ガス導入管
601 加熱器
602 石英焼結板
603 反応器
604 カーボンナノチューブ含有組成物層
605 熱電対
606 廃ガスライン
607 マスフローコントローラー
608 ガス供給ライン

Claims (6)

  1. カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱反応領域で接触させてカーボンナノチューブを製造する、透過型電子顕微鏡で観測した時に100本中50本以上が二層カーボンナノチューブであり、外径の平均が1.0〜3.0nmの範囲であり、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上であり、カーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗値が1.0X10 −2 Ω・cm以下、1.0X10 −4 Ω・cm以上である、カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、下記の(1)から(3)の範囲を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
    (1)カーボンナノチューブ製造用触媒体の重量を炭素含有化合物の流量で割った接触時間(W/F)が100〜400min・g/Lの範囲;
    (2)炭素含有化合物を含むガスの線速が2〜8cm/secの範囲;
    (3)カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であり、且つかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲
  2. 得られるカーボンナノチューブ含有組成物の、波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が30以上である請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  3. 前記カーボンナノチューブ製造用触媒体が0.1〜1wt%の範囲で8族から10族の遷移金属を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  4. 前記カーボンナノチューブ製造用触媒体がマグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  5. 前記炭素含有化合物がメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、エタノール、メタノール、プロパノールのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項〜請求項のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  6. 前記カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.5〜0.85mmの範囲であることを特徴とする請求項請求項5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
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