JP5839794B2 - カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。 - Google Patents

カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明はカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気導電性、熱伝導性や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応用性の広がりも期待されている。
また、カーボンナノチューブは、通常層数の少ない方が高グラファイト構造を有し、単層カーボンナノチューブや二層カーボンナノチューブは高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性も高いことが知られている。特にカーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。しかしながら、これらカーボンナノチューブは、強固で非常に大きなバンドル構造を有しているため、1本1本のカーボンナノチューブが有しているナノ効果を発揮できず、各種用途展開が困難であった。なかでも樹脂や溶媒への分散が非常に困難であるために、種々の用途への展開が限られているのが現状であった。特に優れた光透過率と導電性が求められる透明導電性フィルム、成型品、膜等への用途にカーボンナノチューブを用いて実用性能を発揮させることは困難であった。
公知のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(CVD(ChemicalVapor Deposition)法)などによる合成が知られている。なかでも、CVD法による合成法は、炭素原料の種類、原料供給速度、合成温度、触媒密度等の反応条件をコントロール可能であり、比較的簡単にカーボンナノチューブの大量合成ができる。最近では、直径、長さ、層数を選択的に合成できるようになりつつあり、化学気相成長法では、カーボンナノチューブの層数を単層、2〜5層に制御して製造出来ることが知られている。
しかしながらCVD法によって製造されたカーボンナノチューブ含有組成物には、合成時に不純物としてアモルファスカーボンや粒子状のカーボンなど、カーボンナノチューブ以外の炭素不純物も混ざってくるため、カーボンナノチューブ本来の特性を十分に引き出すには、炭素不純物を除去する操作が必要となってくる。
炭素不純物を除去するためには気相中で加熱する方法が一般によく使われ、触媒金属を除去するには酸を使うのが一般的である。強力な酸を使用するほど触媒金属は除去し易いが、強力な酸を使用した場合、カーボンナノチューブが損傷を受けて特性が損なわれてしまうため、実際には触媒金属除去に使用する酸は比較的穏やかな反応性をもつ酸を使用する必要がある。非特許文献1では、単層カーボンナノチューブを硝酸溶液中で処理すると、官能基化や、グラファイト構造の欠損が生じることが記されている。同様に単層カーボンナノチューブのグラファイト構造の欠陥を生じさせないように比較的穏やかな条件で、硝酸溶液で処理した後に、アルカリ溶液で不純物を除去する方法もあるが、酸化反応が不十分であり、必ずしも純度向上にはいたっていない(特許文献1)。特に単層カーボンナノチューブの場合では、グラファイト層が1枚だけの構成なので、官能基化の影響を顕著に受けるため、カーボンナノチューブ組成物としての導電性を上げるために、電気泳動によって導電性の高い金属性カーボンナノチューブを半導体性カーボンナノチューブと分離する方法(非特許文献2)や、合成段階で金属性ナノチューブが主となる合成法(非特許文献2)なども考案されているが、2層以上の層数を持つカーボンナノチューブには適用し難い技術であり、単層と多層の利点を併せ持つ導電性の高い2層カーボンナノチューブは得られていないのが現状である。
また、これまでに高純度で耐熱性の高い二層カーボンナノチューブを得る方法として特許文献2が知られているが、この方法では純度と回収率のバランスの点でなお改良の余地があった。
特開2009−252713号公報 国際公開第2010/101205
ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)126(2004), 6095-6105 アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express) 1 (2008) 114001-114003 サイエンス(Science)326(2009), 116-120
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、高純度で高耐熱性を有するカーボンナノチューブを主として含むカーボンナノチューブ含有組成物を高収率で得る製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、粗カーボンナノチューブ含有組成物を液相中で酸化反応した後に、アンモニアと有機アミンから選択されるアルカリで処理することで、高純度で高耐熱性のカーボンナノチューブ含有組成物を高収率で得られる製造方法を見出した。すなわち以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法である。
[1]カーボンナノチューブ含有組成物を酸化反応した後に、アンモニア溶液で処理することで、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.83以上とすることを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、酸化反応が25時間以下である製造方法。
[2]前記、酸化反応後、アンモニア溶液で処理する前のカーボンナノチューブ含有組成物が、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.5以上であることを特徴とする[1]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[3]前記、酸化反応が12時間以上である[1]または[2]記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[4]前記、酸化反応が液相酸化で100℃より高い温度で行うことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[5]前記、酸化反応が硝酸による液相酸化であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[6]前記、酸化反応に供するカーボンナノチューブ含有組成物が外径1〜3nmの範囲の二層カーボンナノチューブを含んでいることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
本発明により高純度で高耐熱性のカーボンナノチューブ含有組成物を高収率で得られるようになった。
図1は実施例1の酸化反応前の粗カーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。 図2は実施例1の酸化反応後アルカリ処理した後のカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。 図3は実施例1のアルカリ処理後のろ液から回収した試料の透過型電子顕微鏡による観察写真である。 図4は実施例1において酸化反応後アルカリ処理した後のカーボンナノチューブ含有組成物の透過型電子顕微鏡による観察写真である。 図5は実施例3の酸化反応後、アルカリ処理前の熱重量分析結果である。 図6は実施例および比較例で用いたカーボンナノチューブ含有組成物製造用の化学気相成長法の装置の概略図である。 図7は比較例3の熱重量分析の結果である。 図8は比較例4の熱重量分析の結果である。
本発明においてカーボンナノチューブ含有組成物とは、複数のカーボンナノチューブが存在している総体を意味し、存在形態は特に限定されず、それぞれが独立で、あるいは束状、絡まり合うなどの形態あるいはこれらの混合形態で存在していてもよい。また、種々の層数、直径のものが含まれていてもよい。また、分散液や他の成分を配合した組成物中、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも複数のカーボンナノチューブが含まれていればこれら複数のカーボンナノチューブについて、カーボンナノチューブ含有組成物が含まれていると解する。また、カーボンナノチューブ製造法由来の不純物(例えば触媒)を含み得るが、実質的には炭素で構成されたものを示す。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、その中で特に2層に巻いたものを二層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブの形態は、高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイト層は乱れていても構わない。
本発明においてカーボンナノチューブ含有組成物の基本的な合成方法は通常知られている化学気相成長方法である。すなわち炭素含有化合物と担体に担持させた触媒金属を500〜1200℃の範囲の加熱反応域で接触させることにより、カーボンナノチューブを合成する方法、好ましくは単層および/または二層カーボンナノチューブを合成する方法をベースとしている。本発明ではこのような合成方法で得られた粗カーボンナノチューブ含有組成物、好ましくは二層カーボンナノチューブを含む粗カーボンナノチューブ含有組成物を用いる。粗カーボンナノチューブ含有組成物は、通常、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが550〜650℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.3以下である(図1)。
熱重量分析は、約1mgの試料を熱重量分析装置(例えば島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気を50mL/minの流量で、10℃/分の昇温速度で室温から900℃まで昇温し、その際の試料の重量減少を測定する。また得られた重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)とし(x軸を温度(℃)とし、y軸をDTG(mg/min)とするその際のピーク温度を燃焼ピーク温度とする。本発明のカーボンナノチューブ含有組成物においては、このDTG曲線のピーク温度(例えば図2におけるDTG曲線の頂点の温度)が本発明に規定する範囲にあればよい。また通常市販されている単層カーボンナノチューブあるいは二層カーボンナノチューブの熱重量分析では、DTG曲線から500〜600℃に1本の燃焼ピークがある。これは前述したように、炭素不純物がカーボンナノチューブに付着しているためであり、見かけ上のカーボンナノチューブの純度は高いように見えるが、純度の高いカーボンナノチューブの状態を示しているわけではないので、注意が必要である。さらにカーボンナノチューブの直径・カーボンナノチューブの壁を構成するグラフェンシートの品質に応じても、カーボンナノチューブの耐熱性が変わることは十分に考えられ、従来の技術では本発明のようなカーボンナノチューブを高収率でより高純度で高耐熱性にすることは難しかったと考えられる。
本発明で用いる粗カーボンナノチューブ含有組成物は、前述にしたように通常TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.3以下であり、アモルファスカーボンなどの炭素不純物を多く含んでいる。そこで粗カーボンナノチューブ含有組成物を酸化反応することで、炭素不純物の除去を行う。酸化反応は気相酸化、液相酸化のどちらでもかまわないが、回収率の点と炭素不純物を官能基化する点で、好ましくは液相酸化である。
液相酸化は硝酸、過酸化水素、硫酸、塩酸などの水溶液に浸した後に撹拌しながら加熱還流を行う。気相酸化は大気下で400〜500℃の任意の温度で1〜5時間焼成する。これら気相酸化、液相酸化を併用することも可能である。酸化反応の際に炭素不純物は分解されて二酸化炭素となるか、表面が酸化される。特に液相酸化の場合に表面が酸化されカルボン酸や水酸基、アルデヒドなどの官能基をより多く持つことが考えられる。炭素不純物は表面に官能基を多く持つことによりアルカリ性溶液に分散しやすくなり、カーボンナノチューブ含有組成物と分離することが可能となる。
すなわちカーボンナノチューブ含有組成物は、酸化反応により炭素不純物の溶解と官能基化が行われ、その後のアルカリ性溶液で処理することにより官能基化した炭素不純物の溶解を行うことで高純度化される。
ここで用いるアルカリ性溶液はアンモニアや有機アミンの溶液を用いる。アルカリ性溶液のpHとしては通常pH8以上であれば特に問題ない。有機アミンはエタノールアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピリジン、ピペリジン、ヒドロキシピペリジンなどの窒素を含む有機化合物が好ましい。これらアンモニア、有機アミンの中で最も好ましいのはアンモニアである。これら有機アミンやアンモニアを溶解する溶媒としては、水を用いることが好ましい。
またアルカリ性溶液におけるアルカリの濃度は10〜30容量%の範囲で処理することが好ましい。また処理の時間は特に制限はなく、10分から2時間程度、室温下で撹拌する。好ましくは30分から1時間である。
本発明では、上記の精製をしたカーボンナノチューブ含有組成物はDTG曲線において高温側と低温側に二つの燃焼ピークが現れることが多い。本発明においては高温側の燃焼ピークは700〜850℃にあり、好ましくは700〜800℃である。このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(H)とする。低温側の燃焼ピークとは350℃〜高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点までにあり、このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(L)とする。なお、変曲点が存在しない場合には350℃〜600℃の範囲の重量減量分をTG(L)とする。
TG(L)はアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着したものと考えられる。すなわち、高温側と低温側に2つの燃焼ピークが存在するカーボンナノチューブを硝酸処理して、吸引ろ過したろ液から回収した試料を熱重量分析して得られたピークがこの低温側のピークとよく一致することから、熱重量分析時に低温側の燃焼ピーク部分に相当する温度で消失する成分は、硝酸処理により溶出した成分と同等のものと推論される。また、上記ろ液から回収した試料を透過型電子顕微鏡で観察すると、アモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着した様子が観察される(図3)ためである。
一般に炭素不純物は400℃以下で燃焼するが、カーボンナノチューブに付着した場合は燃焼温度が高温側にずれる傾向があるため、上記の温度範囲で燃焼するものと考えられる。
一方で炭素不純物が付着したカーボンナノチューブはそれに応じて、本来のCNTの燃焼ピーク温度に比して燃焼ピーク温度が低温側にずれる。これは炭素不純物の燃焼温度が低いため、先に燃焼を開始し、その際に生じた発熱エネルギーがカーボンナノチューブに移動するため、本来の燃焼温度とは異なる低い温度でカーボンナノチューブは燃焼するためである。
したがってカーボンナノチューブのグラファイト化度が高いほど、また、炭素不純物が少ないほど燃焼ピーク温度は高温側に現れるため、燃焼ピーク温度は高い方が、耐久性が高く、純度の高いカーボンナノチューブである(図4)。
すなわち、炭素不純物の割合が大きいほどTG(L)が大きくなり、カーボンナノチューブの割合が大きいほどTG(H)が大きくなる。TG(H)を(TG(H)+TG(L))で割ることでカーボンナノチューブ含有組成物の純度として表現することができ、TG(H)/(TG(L)+TG(H))の値を0.75以上とすることにより、高耐熱性かつ高純度のカーボンナノチューブ含有組成物が得られる。低温側の燃焼ピークが消失し、高温側の燃焼ピークのみが現れる場合にはTG(H)/(TG(L)+TG(H))の値が1となる。
本発明において、前述の酸化反応を行った後、アルカリでの処理に供するカーボンナノチューブ含有組成物が、約1mgの試料を用い、空気中で50mL/minの流量で、10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.5以上であることが好ましい(図5)。0.5未満では炭素不純物の残存量が多く、また炭素不純物表面の官能基化が不十分であり、アルカリ性溶液中への溶解が十分でないためカーボンナノチューブ含有組成物の精製が不十分となる。図5は後述する実施例3の酸化反応後、アルカリ処理前のカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析結果であり、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.5以上となっている例である。
本発明の酸化反応は液相中で行うことが好ましく、硝酸、過酸化水素、硫酸、塩酸などの水溶液に浸した後に撹拌しながら加熱還流を行う。液相酸化の温度は炭素不純物への酸化の点から100℃より高い温度で行うことが好ましく、110〜150℃で行うことがより好ましい。温度が低すぎると、炭素不純物への酸化反応が起こらない。液相酸化に用いる酸化剤としては、特に硝酸を用いることが好ましい。硝酸の濃度は加熱還流を行う時間に関係しており、所望の純度、回収量を考慮し、任意の条件で行うことが望ましい。例えば、60%濃度の硝酸を用いる場合は加熱還流を12時間程度以上行なえばTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.5以上とすることができる。50%濃度の硝酸を用いる場合は加熱還流を50時間行う必要がある。酸化反応の時間を長くすれば、炭素不純物の除去は進んで行き、アルカリ性溶液で処理しなくてもTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上にすることは可能であるが、長時間の酸化反応はカーボンナノチューブ自体も溶解してしまうため、精製後の回収量が減少してしまう。したがって酸化反応にアルカリ処理を組み合わせることで、カーボンナノチューブを過剰に溶解させることなく高度な不純物除去が可能となる。いいかえれば酸化反応条件が同じであれば、アルカリ処理を組み合わせることでより回収量の低下を抑制しつつ、より高度な不純物除去が可能となり、あるいは、酸化反応のみで得られるある純度のものと同程度の純度を得ようとする場合、アルカリ処理を組み合わせることで、酸化反応時間等を短縮することができ、結果として回収率を増大させることができるのである。中でも酸化反応で、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.5以上にまでした状態で、アルカリ性溶液で処理することにより残存の炭素不純物のみを除去でき、処理後のTG(H)/(TG(L)+TG(H))が0.75以上となるため、回収量の向上につながる。
本発明においては、酸化反応に供する粗カーボンナノチューブ含有組成物としては、上記精製に耐え、高温側の燃焼ピークを本発明範囲内とし得るような高耐熱のカーボンナノチューブをより多く含んでいることが好ましい。特に外径1.0〜3.0nmの範囲の二層カーボンナノチューブを含んでいることが、高温側の燃焼ピークが700〜850℃の範囲でTG(H)/(TG(L)+TG(H))が0.75を得やすい点から好ましい。上記のカーボンナノチューブの存在を確認する方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後、触媒体を3〜6Nの塩酸水溶液で除去した後に透過型電子顕微鏡などで、観察することができる。
かかる粗カーボンナノチューブとしては、例えば国際公開第2010/101205に開示された方法で製造することが可能である。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は精製後TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上にすることで、波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が30以上、200以下の範囲とすることが好ましい。G/D比とはカーボンナノチューブ含有組成物をラマン分光分析法により評価した時の値である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は633nmとする。ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このGバンド、Dバンドの高さ比、G/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高品質であることを示している。またカーボンナノチューブ含有組成物のような固体のラマン分光分析法は、サンプリングによってばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、別の場所をラマン分光分析し、その総加平均をとるものとする。G/D比が30以上、200以下とは相当な高品質カーボンナノチューブ含有組成物であることを示している。
かくして本発明で得られたアルカリ処理後のカーボンナノチューブ含有組成物は、アルカリ処理により、酸化反応後よりも純度が向上している。そのため該カーボンナノチューブ含有組成物をドーピングすることにより、体積抵抗値を酸化反応後のカーボンナノチューブ組成物より小さくすることが可能となる。すなわちアルカリ処理後のカーボンナノチューブ含有組成物を硝酸溶液中で、室温下あるいは加熱還流で1〜24時間撹拌することで体積抵抗値が、アルカリ処理後のカーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗値より1/2から1/10の範囲で減少する。硝酸イオンがカーボンナノチューブに対してドーパントの効果を示していると考えられる。好適な製造条件下では体積抵抗値として1×10−4Ω・cmから1×10−2Ω・cmのカーボンナノチューブ含有組成物も得ることが可能であり、この様なカーボンナノチューブ含有組成物は、特に導電性が良いため、例えば透明電極の様な透明性を必要とする導電層に利用する場合、カーボンナノチューブの使用量が少なくても十分に導電性を発揮し、使用量低減による透明性の向上効果も得られる。
カーボンナノチューブ含有組成物の体積抵抗値は、以下のようにカーボンナノチューブ膜を作製し、その膜の表面抵抗値を4端子法によって測定後、表面抵抗値とカーボンナノチューブ膜の膜厚を掛けることによって算出することができる。表面抵抗値はJISK7149準処の4端子4探針法を用い、例えばロレスタEP MCP−T360((株)ダイアインスツルメンツ社製)にて測定することが可能である。高抵抗測定の際は、ハイレスターUPMCP-HT450(ダイアインスツルメンツ製、10V、10秒)を用いて測定することが可能である。測定温度は室温下(25±5℃)で行う。
測定試料は、カーボンナノチューブ含有組成物20mgをN−メチルピロリドン(NMP)16mLと混合し、室温下で30分間撹拌した後、エタノール10mLと混合し、内径35mmφのろ過器を使用することによってろ取物を得るが、この時点でろ取物を採取するのではなく、このろ取物をろ過器とろ取に用いたフィルターごと60℃で2時間乾燥することによって作製することが出来る。作製したカーボンナノチューブ含有組成物の膜はピンセットなどでろ紙から剥離して測ることもできるし、剥離出来ないときはフィルターとカーボンナノチューブ含有組成物の膜を併せた全体の厚みを測定後、フィルターのみの厚みを全体から差し引いて算出しても良い。ろ過に使用するろ過用のフィルターはメンブレンフィルター(OMNIPORE MEMBRANE FILTERS, FILTER TYPE:1.0μm JA,47mmφ)を使用することができる。また、フィルターの口径はろ液が通過するのであれば1.0μm以下であっても構わないが、NMPおよびエタノールに溶解しない材質である必要があり、好ましくはフッ素樹脂製のフィルターを使用するのが好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
[触媒調製例1]
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、20〜32メッシュ(0.5〜0.85mm)の範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39wt%であった。
[カーボンナノチューブ含有組成物製造例1]
図6に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器603は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板602を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管608、上部には廃ガス管606を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉601を具備する。また反応管内の温度を検知するために温度計605を具備する。
触媒調整例1で調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層604を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー607を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー607を用いてメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際の固体触媒体の重量をメタンの流量で割った接触時間(W/F)は、169min・g/L、メタンを含むガスの線速が6.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
上記のようにして得たカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は82gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.0wt%)。
カーボンナノチューブ含有組成物の一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは622℃であり、高温側の重量減少は13.5%であった。低温側の燃焼ピークは530℃であり、低温側の重量減少は72.8%であった。変曲点は600℃であった(図1)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.16であった。なお、図1はこの粗カーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。
[ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)に粉末試料を設置し、633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均で表した。
[高分解能透過型電子顕微鏡写真]
カーボンナノチューブ組成物約0.5mgをエタノール約2mLに入れて、約15分間超音波バスを用いて分散処理を行った。分散した試料をグリッド上に滴下して乾燥した。この様に試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−2100)に設置し、測定を行った。測定倍率はそれぞれ5万倍から50万倍で行い、カーボンナノチューブの外径分布および層数分布の観察は40万倍で行った。加速電圧は120kVである。
[実施例1:硝酸処理+アンモニア処理]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(和光純薬)300mLに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は10.6gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.2wt%)。回収率は13.4%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは757℃であり、高温側の重量減少は79.6%であった。低温側の燃焼ピークは532℃であり、低温側の重量減少は8.3%であった。変曲点は603℃であった(図2)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.90であった。なお、図2は上記酸化反応後アルカリ処理した後のカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。図4は、酸化反応後アルカリ処理した後のカーボンナノチューブ含有組成物の透過型電子顕微鏡による観察写真である。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は52であった。ウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、1.6X10−3Ω・cmであった。
また、アルカリ処理後のろ液から回収した試料を透過型電子顕微鏡で観察した。その結果を図3に示す。
[実施例2:硝酸処理+アンモニア処理+硝酸ドープ]
実施例1と同様の操作でアンモニア処理まで行って得られた、水を含んだウェット状態のままのカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量として0.34g取り出し、60%硝酸水溶液(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は10.9gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.0wt%)。硝酸水溶液に添加する前、すなわちアンモニア水溶液によるアルカリ処理後からの回収率は96.2%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは755℃であり、高温側の重量減少は81.8%であった。低温側の燃焼ピークは530℃であり、低温側の重量減少は6.7%であった。変曲点は586℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.92であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は52であった。ウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.2X10−4Ω・cmであった。
[実施例3:硝酸処理時間+アンモニア処理]
実施例1と同様の操作で硝酸処理時間を12時間として反応を行った。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は14.1gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:2.9wt%)。回収率は15.9%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは748℃であり、高温側の重量減少は62.4%であった。低温側の燃焼ピークは564℃であり、低温側の重量減少は12.9%であった。変曲点は622℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.83であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は30であった。
また上記の操作を実施後、実施例2と同様の操作で硝酸ドープし、ろ過後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。その後、ウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.4X10−4Ω・cmであった。
比較例5:硝酸処理濃度50%+アンモニア処理]
実施例1と同様の操作で硝酸濃度を50%となるようにイオン交換水で希釈し、反応時間50時間で加熱還流を行った。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は8.0gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.6wt%)。回収率は10%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは743℃であり、高温側の重量減少は83.2%であった。低温側の燃焼ピークは509℃であり、低温側の重量減少は6.5%であった。変曲点は570℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.93であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は38であった。
[比較例1:硝酸処理のみ、反応時間25時間]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約300倍の重量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで25時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ組成物全体の重量は3.351gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:5.29wt%)。回収率は13.1%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.79であった。DTG曲線から高温側の燃焼ピークは725℃であり、低温側の燃焼ピークは452℃であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は79であった。
またウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物を乾燥重量20mgとなるように取り出し、上述した方法でCNTのバルク膜を作製した後に体積抵抗値を測定した。その結果、3.9X10−4Ω・cmであった。
[比較例2:硝酸処理のみ、硝酸濃度50%、反応時間50時間]
比較例1と同様の操作で硝酸濃度を50%となるようにイオン交換水で希釈し、反応時間50時間で加熱還流を行った。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は3.3gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:7.4wt%)。回収率は10%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは757℃であり、高温側の重量減少は67.7%であった。低温側の燃焼ピークは434℃であり、低温側の重量減少は12.9%であった。変曲点は495℃であった。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.84であった。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は48であった。
[比較例3:硝酸処理温度+水酸化ナトリウム処理]
カーボンナノチューブ含有組成物製造例1で得られたウェットケーク32.5g(固形濃度3.1wt%)と60%硝酸水溶液(和光純薬工業社製 1級 Assay60〜61%)1Lを2Lナス型フラスコに添加し、85±4℃に加熱したオイルバス中で加熱還流を48時間行った。該反応液を室温まで放冷後、遠心分離機(トミー工業株式会社製 微量高速冷却遠心機 MX−300)で遠心分離(10,000G,30分)を行い、沈殿物を回収した後に0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液に添加し、室温下で1時間撹拌した。該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このとき水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は9.6gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:9.2wt%)。回収率は88%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは489℃であり、高温側の重量減少は13.6%であった。低温側の燃焼ピークは404℃であり、低温側の重量減少は65.8%であった。変曲点は443℃であった(図7)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.17であった。なお、図7は得られたカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は17であった。
[比較例4:硝酸処理温度+水酸化ナトリウム処理}
実施例1と同様の操作でアンモニア水溶液の代わりに0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いた。その結果、水を含んだウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は3.7gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.3wt%)。回収率は13.5%であった。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物のウェットケークの一部を120℃で一晩乾燥させた後、約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中を50mL/minの流量で10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。高温側の燃焼ピークは591℃であり、高温側の重量減少は67.7%であった。低温側の燃焼ピークは348℃であり、低温側の重量減少は20.3%であった。変曲点は443℃であった(図8)。TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.77であった。なお、図8は得られたカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。またカーボンナノチューブ組成物の波長633nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は45であった。
上記の結果より、土類金属イオンや希土類金属イオンを持つアルカリ溶液を用いた場合では、水に溶解しない程度に一部官能基化された(例えばカルボン酸)カーボンナノチューブ含有組成物と土類金属や希土類金属などの金属イオンが塩を形成していると考えられる。そのため加熱されていく過程で金属イオンが着火剤のような働きをして燃焼を開始してしまい、結果として耐熱性が低下したと推察される。
また実施例1と比較例1を比べた場合、収量等の点からほとんど違いはないが、TG(H)/(TG(L)+TG(H))の値が実施例1のほうが大きい。そのため実施例2で示したように硝酸を用いたドーピングを行うと体積抵抗値は比較例1よりも小さい値を示す結果となった。同様に実施例3で示したように酸化反応の時間を短縮して、アンモニアによるアルカリ処理を行うと回収率は増加し、TG(H)/(TG(L)+TG(H))も大きくなる。更に硝酸によるドーピングを行うと比較例1よりも低い体積抵抗値を示す。
601 電気炉
602 石英焼結板
603 反応器
604 触媒層
605 温度計
606 廃ガス管
607 マスフローコントローラー
608 混合ガス導入管

Claims (6)

  1. カーボンナノチューブ含有組成物を酸化反応した後に、アンモニア溶液で処理することで、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.83以上とすることを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、酸化反応が25時間以下である製造方法。
  2. 前記、酸化反応後、アンモニア溶液で処理する前のカーボンナノチューブ含有組成物が、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが700〜850℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  3. 前記、酸化反応が12時間以上である請求項1または2記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  4. 前記、酸化反応が液相酸化で100℃より高い温度で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  5. 前記、酸化反応が硝酸による液相酸化であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  6. 前記、酸化反応に供するカーボンナノチューブ含有組成物が外径1〜3nmの範囲の二層カーボンナノチューブを含んでいることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
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