JP2014028735A - カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】流動CVD法にて品質の高い2層カーボンナノチューブを高収量で得ることができるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物製造方法である。
カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭化水素を含むガスを加熱反応領域で接触させるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、下記の(1)と(2)の条件を満たすこと特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
(1)炭化水素濃度をガス全流量に対して10vol%以下で接触させる。
(2)分解温度が750℃以上で、分解温度が異なる少なくとも2種類の炭化水素。
【選択図】なし

Description

本発明はカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気伝導性、熱伝導性や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応用性の広がりも期待されている。
また、カーボンナノチューブは、通常層数の少ない方が高グラファイト構造を有し、単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブは高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性も高いことが知られている。特にカーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。
従来のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD(ChemicalVapor Deposition)法)などによる合成が知られている(非特許文献1参照)。特に炭素源となるガスを熱分解してカーボンナノチューブを製造する熱CVD法では、カーボンナノチューブを大量に合成することが可能となる。
この熱CVD法にて、炭素源として分解温度の異なるガスを用いることによってカーボンナノチューブを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の製造方法は基板とカーボンナノチューブとの接着面を含めた根本部分から全表面をカーボン薄膜で覆うことで基板とカーボンナノチューブの密着性を向上させたもので、基板法ということもあり、カーボンナノチューブを効率よく高収量で得られるものではない。また、炭素源となる炭化水素ガスの濃度が高いとアモルファスカーボン等の不純物を生成しやすくなり、品質の高いカーボンナノチューブを得ることが難しい。
カーボンナノチューブを大量に合成可能な流動CVD法を用いた方法として特許文献2が知られている。しかし、この特許文献2においても炭素源の濃度が高く、品質の高いカーボンナノチューブを得ることは困難である。
特開2009−137805号公報 特開2010−30887号広報
斉藤弥八、坂東俊治、カーボンナノチューブの基礎、株式会社コロナ社、p17、23、47
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、CVD法にて品質の高いカーボンナノチューブを高収量で得ることができるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、CVD法にて分解温度の異なる炭化水素の濃度を制御することで品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物を収率よく製造し得ることを見出した。
すなわち以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物製造方法である。
[1]カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭化水素を含むガスを加熱反応領域で接触させるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、下記の(1)と(2)の条件を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
(1)炭化水素濃度を全ガス流量に対して10vol%以下で接触させる。
(2)分解温度が750℃以上で、分解温度が異なる少なくとも2種類の炭化水素。
[2]2種類の炭化水素が、分解温度が850℃以上の炭化水素と分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素を含む[1]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[3]分解温度が850℃以上の炭化水素の流量に対して、分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素の流量の比率が0.1〜10vol%の範囲であることを特徴とする[1]または[2]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[4]分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を導入させた後、分解温度850℃以上の炭化水素を導入することを特徴とする[2]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[5]分解温度850℃以上の炭化水素を分解して分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を生成する金属触媒を用いることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[6]金属触媒が8〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[5]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[7]カーボンナノチューブ製造用触媒体の重量を炭化水素の流量で割った接触時間(W/F)が100〜400min・g/Lの範囲であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[8]炭化水素を含むガスの線速が2〜8cm/secの範囲であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[9]カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であり、且つかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[10]カーボンナノチューブ含有組成物を成長させる金属触媒として8〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[11]得られるカーボンナノチューブ含有組成物を空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが750〜900℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[12]得られるカーボンナノチューブ含有組成物が2層カーボンナノチューブを50%以上含むことを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
本発明は、分解温度の異なる炭化水素を全ガス流量に対して低濃度で用いることで品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物を収率よく得ることが可能になった。
実施例で用いた縦型加熱酸化反応装置の概略図である。 実施例1で得られたカーボンナノチューブ含有組成物の熱重量分析の結果である。
本発明は、分解温度の異なる炭化水素を低濃度で用いてカーボンナノチューブ製造用触媒体と加熱反応領域で接触させ、品質の高いカーボンナノチューブを高収量で得ることができるカーボンナノチューブ含有組成物製造方法を見出した。
すなわち以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物製造方法である。
(1)炭化水素濃度を全ガス流量に対して10vol%以下で接触させる。
(2)分解温度が750℃以上で、分解温度が異なる少なくとも2種類の炭化水素。
上記の製造条件について詳細に説明する。
触媒体とはカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒として用いられるものであり、例えば8族〜10族の遷移金属化合物が担体上に担持された総体物または該金属化合物と担体の混合物が挙げられる。また、他の成分が配合された組成物、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも該金属化合物が担体上に担持または混合されていれば、触媒体と解釈する。触媒体の凝集体とは、触媒体の一次粒子が凝集した状態をさす。
本発明において反応方式は特に限定しないが、縦型流動床型反応器を用いて反応させることが好ましい。縦型流動床型反応器とは、原料となる炭化水素が、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に流通するように設置された反応器である。該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向に炭化水素が流通し、触媒体層を通過する。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向をも含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。なお、好ましいのは鉛直方向である。なお、炭化水素の供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭化水素が前記方向に流通し、その流通過程で触媒体層を通過すればよい。
触媒体は、その凝集体を縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にあり、反応時には流動床を形成した状態とする。このようにすることにより、触体と炭化水素を有効に接触させることができる。横型反応器の場合、触媒体と炭化水素を有効に接触させるため、炭化水素の流れに対して垂直方向で反応器の断面全面に存在させた状態にするには、重力がかかる関係上、触媒体を左右から挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブ含有組成物の生成反応の場合、反応するに従って触媒体上にカーボンナノチューブ含有組成物が生成して、触媒体の体積が増加するので、左右から触媒体を挟みこむ方法は好ましくない。また、横型で流動床を形成させることも難しい。本発明では反応器を縦型にし、反応器内にガスが透過できる台を設置して、その上に触媒体の凝集体を置くことによって、触媒体を両側から挟みこむことなく、反応器の断面方向に均一に触媒体の凝集体を存在させることができ、炭化水素を鉛直方向に流通させる際に流動床を形成させることもできる。触媒体の凝集体を縦型流動床反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒体が広がっていて触媒体底部の台が見えない状態を言う。このような状態の好ましい実施態様としては、例えば、反応器内にガスが透過できる触媒体を置く台(セラミックスフィルターなど)を置き、そこに所定の厚みで触媒体を充填する。この触媒体層の上下が多少凸凹してもかまわない(図1)。図1は、反応器103の中に触媒体を置く台である石英焼結板102が設置され、その上に触媒層104を形成する触媒体の凝集体が反応器103の水平断面方向全体に存在している状態を示す概念図である。
流動床型は、触媒体の凝集体を連続的に供給し、反応後の触媒体とカーボンナノチューブ含有組成物を含む集合体を連続的に取り出すことにより、連続的な合成が可能であり、カーボンナノチューブ含有組成物を効率よく得ることができ好ましい。
流動床型反応において、原料の炭化水素と触媒体が均一に効率よく接触するためにカーボンナノチューブ合成反応が均一に行われ、アモルファスカーボンなどの不純物による触媒被覆が抑制され、触媒活性が長く続くと考えられる。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器内に、石英板上に置かれた触媒が設置され、該触媒上を炭化水素が通過して接触、反応する態様の反応装置を指す。この場合、触媒体表面ではカーボンナノチューブが生成するが、触媒体内部には炭化水素が到達しないため、縦型反応器に比較して収量が少なくなる傾向にある。これに対して、縦型反応器では触媒体全体に原料の炭化水素が接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブ含有組成物を合成することが可能である。反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法では、炭化水素を含むガスを炭素源として用い、炭化水素濃度を全ガス流量の10%vol以下とする。また、炭化水素としては、分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素を用いることが重要であり、炭化水素濃度は、少なくとも2種類の炭化水素の合計の濃度とする。カーボンナノチューブ含有組成物を効率的に成長させるには、炭素源の濃度を制御する必要がある。炭素源の濃度が高いとアモルファスカーボンを生成しやすくなり、カーボンナノチューブの成長を阻害するため、収量が大きく減少する。このため、炭化水素(炭素源)濃度は10vol%以下とする。炭化水素濃度の下限は、炭素源として必要な濃度であり、通常1vol%以上である。炭化水素濃度は好ましくは、3〜8vol%である。
炭素源として用いる炭化水素は非芳香族であっても、芳香族であってもよい。非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、ヘキサン、又はこれらの混合物などを使用することができる。また芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、又はこれらの混合物などを使用することができる。これらの中でも、特に単層または2層カーボンナノチューブを作りやすいメタン、エタン、エチレン、アセチレンが好ましい。炭化水素濃度が全ガス流量に対して10vol%以下となるように不活性ガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム等が使用できる。
分解温度750℃以上で分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素として、上記の非芳香族炭化水素や芳香族炭化水素を分解温度に差がでるように適宜組み合わせて使用できる。また、3種類の炭化水素を用いる場合も、分解温度が相互に異なる炭化水素を適宜選択して組み合わせればよい。
上記、組み合わせる炭化水素は分解温度が850℃以上の炭化水素と分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素であることが好ましい。分解温度が850℃以上の炭化水素は、好ましくは、分解温度が850℃以上1000℃以下の炭化水素であり、メタンを例示できる。分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素は、エタン、エチレンを例示できる。分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素の組み合わせは好ましくは、メタンとエタン、メタンとエチレンである。
組み合わせる2種類の炭化水素のうち、高温分解ガスの流量に対して低温分解ガスの流量の比率が0.1〜10vol%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜5vol%の範囲である。
微量の低温分解炭化水素の詳細な働きは不明であるが、微量の低温分解炭化水素が金属触媒の活性を促進すると考えられ、その結果、高温分解炭化水素が効果的に金属触媒によってカーボンナノチューブ成長に使用される。しかしながら、低温分解炭化水素のみの場合、過剰な分解反応が起こり、金属触媒の活性が失われてアモルファスカーボンが生成され、品質の高いカーボンナノチューブが得られない。
カーボンナノチューブ含有組成物の製造は炭化水素を導入する際、2種類の炭化水素を同時に導入する方法、分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を導入させた後、分解温度850℃以上の炭化水素を導入する方法が挙げられる。分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を導入させた後、分解温度850℃以上の炭化水素を導入する方法としては、低温分解炭化水素を導入した後、高温分解炭化水素に切り替える方法が挙げられ、導入する炭化水素を切り替えるタイミングは、炭素源導入直後から炭素源導入停止までの時間を全製造時間としたときに、全製造時間の1/200以上1/3以下の時間が経過した時点で切り替えるのが好ましく、1/150以上1/6以下の時間が経過した時点で切り替えるのがさらに好ましい。低温分解炭化水素のみの導入時間を全製造時間の1/200以上とすることで、金属触媒の活性を十分に促進することができる。また、低温分解炭化水素のみの導入時間を全製造時間の1/150以上とすることで、さらに金属触媒の活性を十分に促進することができる。低温分解炭化水素のみの導入時間を全製造時間の1/3以下とすることで、過剰な分解反応により金属触媒の活性が失われるのを抑制することが可能となり、アモルファスカーボンの生成が抑制されるため、より品質の高いカーボンナノチューブが得られる。また、低温分解炭化水素のみの導入時間を全製造時間の1/6以下とすることで、上記の理由によるアモルファスカーボンの生成はより抑制され、さらにより品質の高いカーボンナノチューブが得られる。また、高温分解炭化水素を導入後、低温分解炭化水素を導入した場合は触媒の活性が低い状態に過剰な分解反応を起こした低温分解炭化水素を導入することになるため、アモルファスカーボンが生成され、品質の高いカーボンナノチューブが得られない。
本発明において、分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素をカーボンナノチューブ含有組成物を成長させるための触媒体と接触させる方法としては、少なくとも2種類の炭化水素を含むガスを供給する方法、1種類の炭化水素を含むガスを供給し、反応系内で炭化水素を分解させて供給した炭化水素とは異なる炭化水素を生成させる方法があげられる。後述の方法は分解温度850℃以上の炭化水素を分解して分解温度750〜850℃の炭化水素を生成する金属触媒を用いることが好ましい。このような触媒として、8〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。例えばCo、Niが好ましい。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。金属は1種類だけを含んでいても、2種類以上を含んでいてもよい。
上記の基本的な製造方法のなかでも品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物が効率よく得られる点で、カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭化水素の接触時間(W/F)は100〜400min・g/Lの範囲であることが好ましい。ここで接触時間とは反応中に供した触媒体(g)を炭化水素の流量(L/min)で除した値である。カーボンナノチューブを効率的に成長させるには、原料ガスである炭化水素と触媒体をなるべく短時間で接触させる。接触時間が長すぎると副反応が起こり、アモルファスカーボンなどの炭素不純物が増える傾向にあり、増えすぎると触媒金属を被覆してしまうため、カーボンナノチューブの成長が止まってしまう場合がある。そのため、400min・g/L以下が好ましい。また接触時間が短すぎるとCNTの製造効率が悪くなり、収量が大きく減少する。このため、100g・min/mL以上が好ましい。
炭化水素を含むガスの線速は2cm/sec以上、好ましくは8cm/sec以下で流通させる。カーボンナノチューブ合成反応においては、炭化水素の分解効率をあげて、収率を上げるために炭化水素を含むガスを低線速にて流通させることが通常であったが、炭化水素を含むガスを低線速にて加熱温度下流通させると炭化水素自身の気相分解や触媒上での副反応によりアモルファスカーボン等の副生物が多量に生成する。品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物を得るためには炭化水素の線速を2〜8cm/secの範囲で流通させることが好ましい。さらに好ましくは4〜8cm/secの範囲である。線速が速いと、触媒体が大きく舞い上がり反応温度域(均熱帯)から外れ、品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物が得られない。
カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径及びかさ密度は品質の高いカーボンナノチューブを得るために重要な因子となりうる。具体的には触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であることが好ましい。0.2mm未満では、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の均熱帯を外れることがあり、本発明ほどの品質の高いカーボンナノチューブを得ることが困難になる。また2mmより大きいと流動床中で触媒体が動きにくいために、炭化水素を含むガスは、触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。よって粒径の大きさは0.2〜2mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.7mmの範囲であり、最も好ましくは0.85〜1.7mmの範囲である。触媒体の凝集体の粒径の制御には、特に制限は無いが、例えば篩い分けを行う方法と押し出し機から造粒する方法とがある。篩い分けの方法は、触媒体の凝集した塊状物を粉砕しながら、篩いの目開き(JIS Z−8801−1(2006)に準じた目開き)が0.5〜1.7mmの篩いをかけて0.5から1.7mmの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する方法である。粉砕の方法はいかなる方法を用いても良い。
また、押し出し機からの造粒方法は触媒体と水を混練りし、内径が0.2〜2.0mmの孔の開いた各種スクリーンから押し出す。得られた触媒体の線状凝集物を乾燥させながら粉砕し、その後篩い分けを行い0.5〜1.7mmの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する。上記、好ましい粒径とするには、篩いの目開きを適宜選択すればよい。
触媒体のかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲であることにより、触媒体と炭化水素との接触効率が良くなり、よりいっそう品質の高いカーボンナノチューブを効率よく、多量に合成することが可能となる。触媒体のかさ密度が0.1g/mL未満では、触媒体を取り扱いづらいといった問題点がある。またかさ密度が小さすぎると、炭化水素と接触させる際に、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の均熱帯を外れることがあり、品質の高いカーボンナノチューブを得ることが困難になる。また触媒のかさ密度が1g/mLを超えると、触媒体と炭化水素とが均一に効率よく接触することが困難になり、やはり品質の高いカーボンナノチューブを得ることが困難になる。触媒体のかさ密度が大きすぎる場合、縦型反応器に触媒体を設置した際、触媒体が密に詰まってしまうため炭化水素と均一に接触ができず、品質の高いカーボンナノチューブを生成することが困難になる。触媒体のかさ密度が上記の範囲であると、炭化水素と触媒金属との接触効率が上がるため、均一で品質の高いカーボンナノチューブを効率よく、かつ、多量に製造することが可能となる。また、触媒体のかさ密度が大きすぎる場合、流動床中で触媒体が動きにくいために、炭化水素を含むガスは、触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。触媒体のかさ密度が上記の範囲であると、触媒体が動くことによって、固定されたショートパスができにくい。よって触媒体のかさ密度は0.1〜1g/mLの範囲である。触媒体のかさ密度は、より好ましくは0.2〜0.7g/mLの範囲であり、さらに好ましくは0.2〜0.5g/mLの範囲である。
かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体重量のことである。以下にかさ密度の測定方法を二つ示す。二つの測定方法の平均値をかさ密度とする。粉体のかさ密度は、測定時の温度、湿度に影響されることがある。ここで言うかさ密度は、温度20±10℃、湿度60±10%で測定したときの値である。50mLメスシリンダーを測定容器として用いる。一つ目の測定方法は、予め定めた重量の粉末を加える。かさ密度の測定に際しては5g以上の粉末を加えることが好ましい。その後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL以内であることを確認し、操作を終了する。もし容積値に目視にて±0.2mL以上の変化があれば、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL以上の変化がないことを確認して操作を終了する。上記の方法で詰めた粉末の重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(cm))を触媒体の凝集体のかさ密度とする。二つ目の測定方法は少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、再び少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返す。この操作を粉末が予め定めた容積を占めるまで繰り返す。容積は10mL以上とすることが好ましい。上記の方法で詰めた粉末の重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(cm))を触媒体の凝集体のかさ密度とする。
触媒体の凝集物の粒径とかさ密度の双方を制御することで、粒径が大きく、かさ密度が小さい触媒体あるいは粒径が小さく、かさ密度が大きいなどの組み合わせにより縦型反応器内の均熱帯中で触媒体と原料ガスである炭化水素を均一に接触させ、品質の高いカーボンナノチューブを得ることができる。
このように粒径とかさ密度の双方を制御するには例えば担体に触媒金属を担持して触媒体を製造する際、上記のように粒径を制御しつつ、担持する金属の含有量と担体の大きさと比重で適宜調整すればよい。
カーボンナノチューブ含有組成物を成長させるために炭化水素を含むガスと接触させる触媒は、金属触媒が好ましく、8〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。中でも、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Rh等が特に好ましい。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。また遷移金属は微粒子であることが好ましい。微粒子とは粒径が0.5〜10nmであることが好ましい。金属が微粒子であると細いカーボンナノチューブが生成しやすい。金属は1種類だけを含んでいても、2種類以上を含んでいてもよい。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。2種類の金属を担持させる場合は、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Rhから選択される金属と選択されたそれ以外の金属の組み合わせが特に好ましい。特にFeとCo、Ni、V、Mo、Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。
上記、金属触媒のなかでもFeはカーボンナノチューブ含有組成物を成長させる活性が高いので好ましい。また、前述したとおり、炭化水素の分解にはCo、Niが好ましく、とくにCoが好ましい。そのため、1種類の炭化水素を含むガスを供給し、系内で分解させる場合は、金属触媒として、FeとCoまたはFeとNiを併用させるとよい。FeとCoの併用がさらに好ましい。FeとCoの比率は特に限定しないが、Co/Fe(重量比)=0.1〜2.0の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜1.5の範囲である。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を用いることで触媒体当たりのCNT収量を向上することが可能となる。このカーボンナノチューブ含有組成物の製造において、CNTを合成する温度は850〜1000℃の範囲が好ましい。
本発明で得られるカーボンナノチューブ含有組成物は、空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが750〜900℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上のものを得ることができる。
熱重量分析は、約1mgの試料を熱重量分析装置(例えば島津製作所製 TGA−60)に設置し、10℃/分の昇温速度で室温から1000℃まで昇温し、その際の試料の重量減少を測定する。また得られた重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)とし(x軸を温度(℃)とし、y軸をDTG(mg/min)とするその際のピーク温度を燃焼ピーク温度とする。本発明のカーボンナノチューブ含有組成物においては、このDTG曲線のピーク温度(例えば図2におけるDTG曲線の頂点の温度)が本発明に規定する範囲にあればよい。
通常の精製をしたカーボンナノチューブ含有組成物はDTG曲線において高温側と低温側に二つの燃焼ピークが現れることが多い。本発明で得られるカーボンナノチューブ含有組成物は高温側の燃焼ピークは750〜900℃である。このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(H)とする。低温側の燃焼ピークとは350℃〜高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点までにあり、このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(L)とする。なお、変曲点が存在しない場合には400℃〜600℃の範囲の重量減量分をTG(L)とする。
TG(L)はアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着したものと考えられる。一般に炭素不純物は400℃以下で燃焼するが、カーボンナノチューブに付着した場合は燃焼温度が高温側にずれる傾向があるため、上記の温度範囲で燃焼するものと考えられる。
一方で炭素不純物が付着したカーボンナノチューブはそれに応じて、本来のCNTの燃焼ピーク温度に比して燃焼ピーク温度が低温側にずれる。これは炭素不純物の燃焼温度が低いため、先に燃焼を開始し、その際に生じた発熱エネルギーがカーボンナノチューブに移動するため、本来の燃焼温度とは異なる低い温度でカーボンナノチューブは燃焼するためである。
したがってカーボンナノチューブのグラファイト化度が高いほど、また、炭素不純物が少ないほど燃焼ピーク温度は高温側に現れるため、燃焼ピーク温度は高い方が、耐久性が高く、純度の高いカーボンナノチューブが得られることがわかる。
すなわち、炭素不純物の割合が大きいほどTG(L)が大きくなり、カーボンナノチューブの割合が大きいほどTG(H)が大きくなる。TG(H)を(TG(H)+TG(L))で割ることでカーボンナノチューブ含有組成物の純度として表現することができ、TG(H)/(TG(L)+TG(H))の値を0.75以上とすることにより、高耐熱性かつ高導電性のCNTが得られる。低温側の燃焼ピークが消失し、高温側の燃焼ピークのみが現れる場合にはTG(H)/(TG(L)+TG(H))の値が1となる。本発明の製造方法を採用することで、TG(H)/(TG(L)+TG(H))の値が大きい、すなわち純度の高いカーボンナノチューブ含有組成物を得ることができる。
また、得られたカーボンナノチューブ含有組成物の純度をさらに高める方法として、以下のような精製方法を実施することが好ましい。
1つ目の方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後に、電気炉などの加熱装置で1〜5時間、400〜500℃の範囲で加熱酸化する。この時、カーボンナノチューブ含有組成物は触媒体に付着している状態が好ましい。次に前述のように触媒体を除去した後に、熱重量分析をして、得られる重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)とし、x軸を温度(℃)とし、y軸をDTG(mg/min)としてプロットして得られるグラフに基づき、以下のように加熱温度を決定し、加熱する。すなわちDTG曲線において高温側と低温側にある二つの燃焼ピークのうち低温側の燃焼ピークから高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点(変曲点が存在しない場合は600℃)まで酸素雰囲気下で加熱し、該温度に達した時点で、加熱をやめて窒素ガスに切り替える。この時の酸素濃度は0.1〜21%の範囲であれば十分である。昇温速度は10℃±5℃/minであることが好ましい。なお、この段階でいう高温側にある燃焼ピークは、700〜850℃よりも低い場合もあるが、相対的に高い方のピークを高温側の燃焼ピークとする。その後、必要に応じて濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で90〜150℃の範囲で5〜75時間加熱を行う。
2つ目の方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後に、電気炉などの加熱装置で1〜5時間、400〜500℃の範囲で加熱酸化する。この時、カーボンナノチューブ含有組成物は触媒体に付着している状態が好ましい。次に前述のように触媒体を除去した後に、あらかじめ500〜600℃の範囲に加熱した電気炉などの加熱器に設置し、1〜5時間加熱酸化を行う。最後に濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で90〜150℃の範囲で5〜75時間加熱を行うことで目的を達することが可能となる。
3つ目の方法として、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後、触媒体を3〜6Nの塩酸水溶液で除去した後に濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で90〜150℃の範囲で5〜75時間加熱を行う。水洗濾過後、アルカリ性溶液で1〜5時間撹拌を行い、水洗濾過後に濃硝酸水溶液(硝酸濃度として60〜70%)で1〜30時間撹拌を行う。
上記において、濃硝酸水溶液による液相酸化は、濃硝酸以外にも硫酸、過酸化水素等の酸化剤を用いることも可能である。条件は酸化力に応じて適宜決定することが可能である。
アルカリ性溶液はアンモニアや有機アミン、又は水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムの溶液を用いることができる。アルカリ性溶液のpHとしては通常pH8以上であれば特に問題ない。有機アミンはエタノールアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどの窒素を含む有機化合物が好ましい。上記、アルカリ溶液のなかで最も好ましいのはアンモニアである。これらアンモニアや有機アミンを溶解する溶媒としては、水を用いることが好ましい。
以上の方法あるいはいずれかを組み合わせて炭素不純物を酸化除去することが可能である。また最も好ましいのは、カーボンナノチューブ含有組成物を製造後、触媒体を3〜6Nの塩酸水溶液で除去した後に、すでにTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上となっていることである。しかしながら、通常は低温側の燃焼ピークが高く、上記範囲を満たさないことが考えられるので、酸化処理を行い、TG(H)/(TG(H)+TG(L))の値を制御する。上記したような酸化処理を行い、熱重量分析を行い、高温側、低温側のピークを確認し、本発明で規定する範囲を満たしていない場合はさらに加熱酸化や硝酸などの液相酸化及びアンモニア等のアルカリ処理を行うことがこのましい。
本発明で得られるカーボンナノチューブ含有組成物は2層カーボンナノチューブを50%以上含むものが得られる。透過型電子顕微鏡で観測した時に100本中50本以上のカーボンナノチューブが2層カーボンナノチューブであるが、これは、カーボンナノチューブ含有組成物中に含まれる任意のカーボンナノチューブの100本を観察し、2層のカーボンナノチューブの本数を評価するものとする。
上記任意のカーボンナノチューブの層数と本数の数え方は、透過型電子顕微鏡で25万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価する。一つの視野中で100本の測定ができない場合は、100本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。
通常カーボンナノチューブは層数が少ないほどグラファイト化度が高い、つまり導電性が高く、層数が増えるほどグラファイト化度が低下する傾向がある。2層カーボンナノチューブは層数が単層カーボンナノチューブよりも多いため、耐久性が高く、高いグラファイト化度も併せ持つため、耐久性が高く高導電性のカーボンナノチューブ含有組成物という点で2層カーボンナノチューブの割合は多いほど好ましく、本発明では上記方法で測定したときの2層カーボンナノチューブの割合は100本中50本以上であることが必要であり、100本中70本以上が2層カーボンナノチューブであることがより好ましく、さらに好ましくは100本中75本以上が2層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が2層カーボンナノチューブであることが好適である。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の外径の平均値は1.0から3.0nmの範囲内である。この外径の平均値は、上記透過型電子顕微鏡で25万倍で観察し、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブについて層数を評価するのと同様の方法でサンプルを観察し、カーボンナノチューブの外径を測定したときの算術平均値である。
本発明で得られるカーボンナノチューブ含有組成物は波長633nmのラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が50以上であることが好ましい。より好ましくは60以上、200以下であり、さらに好ましくは70以上、150以下である。G/D比とはカーボンナノチューブ含有組成物をラマン分光分析法により評価した時の値である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は633nmとする。ラマン分光分析法により得られるラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このGバンド、Dバンドの高さ比、G/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、品質が高いことを示している。またカーボンナノチューブ含有組成物のような固体のラマン分光分析法は、サンプリングによってばらつくことがある。そこで少なくとも3カ所、別の場所をラマン分光分析し、その相加平均をとるものとする。G/D比が30以上とは相当な高品質カーボンナノチューブ含有組成物であることを示している。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
[触媒体の評価方法]
(かさ密度の測定方法)
50mLメスシリンダーを測定容器として用いた。一つ目の測定方法は、予め定めた重量の粉末を加えた後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した。目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL以内であれば、操作を終了するが、容積値が目視にて±0.2mL以上の変化があれば、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL以上の変化がないことを確認して操作を終了した。二つ目の測定方法は少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、再び少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した。この操作を粉末が予め定めた容積を占めるまで繰り返した。上記の方法で詰めた粉末の重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(cm))を触媒体の凝集体のかさ密度として、二つの測定方法の平均をとった。
[カーボンナノチューブの評価方法]
(熱重量分析によるカーボンナノチューブの純度評価)
約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。通常の精製をしたカーボンナノチューブ含有組成物はDTG曲線において高温側と低温側に二つの燃焼ピークが現れることが多い。本発明においては高温側の燃焼ピークは600〜900℃である。このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(H)とする。低温側の燃焼ピークとは350℃〜高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点までにあり、このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(L)とする。なお、変曲点が存在しない場合には400℃〜600℃の範囲の重量減量分をTG(L)とする。TG(L)はアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着したものと考えられる。炭素不純物の割合が大きいほどTG(L)が大きくなり、カーボンナノチューブの割合が大きいほどTG(H)が大きくなる。TG(H)を(TG(H)+TG(L))で割ることでカーボンナノチューブ含有組成物の純度として表現することができる。
(高分解能透過型電子顕微鏡写真)
カーボンナノチューブ組成物約0.5mgをエタノール約2mLに入れて、約15分間超音波バスを用いて分散処理を行った。分散した試料をグリッド上に滴下して乾燥した。この様に試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−2100)に設置し、測定を行った。測定倍率はそれぞれ5万倍から50万倍で行い、カーボンナノチューブの外径分布および層数分布の観察は25万倍で行った。加速電圧は120kVである。
(ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価)
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF-300)に粉末試料を設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。1300cm−1付近のピークをD、1600cm−1付近のピークをGとして、GとDの高さ比をG/D比とした。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均で表した。これはカーボンナノチューブの結晶化度を示す値であり、G/D比が大きいほどカーボンナノチューブの結晶性が良いと判断できる。
[実施例1]
(触媒調製)
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜1.70mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。得られた触媒体の凝集体のかさ密度は0.300g/cmであった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器103は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板102を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管108、上部には廃ガス管106を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉101を具備する。また反応管内の温度を検知するために温度計105を具備する。
調製した固体触媒体(触媒体の凝集体)132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層104を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー107を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー107を用いてメタンガスを0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)、エタンガスを3.3mL/min(全ガス流量に対して0.02vol%)で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際のメタン及びエタンを含むガスの線速は6.55cm/secであった。メタンガスとエタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで約24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量にカーボンナノチューブ含有組成物濃度をかけて算出したカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量(触媒体100g当たり)は0.325gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.918であり、高温側の燃焼ピークは802℃であった。
高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち96本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.8nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、カーボンナノチューブ含有組成物のG/D比は94であった。
[実施例2]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体の凝集体のかさ密度は0.285g/cmであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、メタンガスは0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)、エチレンガスは7.00mL/min(全ガス流量に対して0.03vol%)を60分導入した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.315gあった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.887であり、高温側の燃焼ピークは806℃であった。
実施例1と同様に高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち89本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.9nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は62であった。
[実施例3]
予備実験として、実施例1と同様の触媒調製操作を行った。クエン酸鉄(III)アンモニウムの替わりに、酢酸コバルト4水和物約15.85gを用いて調製した。実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、メタンガスは0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を60分導入した。この際、反応装置より排出されるガスを採取して分析を行った結果、全ガス流量に対して0.012%エタンおよび0.01%エチレンを検出した。
本実験として実施例1と同様の触媒調製操作を行った。クエン酸鉄(III)アンモニウム約24.6gと共に酢酸コバルト4水和物を約15.85g添加し、Co/Fe=1/1(重量比)になるように調製した。触媒体の凝集体のかさ密度は0.272g/cmであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、メタンガスは0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を60分導入した。予備実験の結果より、メタンが0.012vol%エタンおよび0.01vol%エチレンになっていると考えられる。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.370gあった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.891であり、高温側の燃焼ピークは855℃であった。
実施例1と同様に高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち82本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.9nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は73であった。
[実施例4]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体の凝集体のかさ密度は0.294g/cmであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エタンガスは7.00mL/min(全ガス流量に対して0.03vol%)を3分導入した後、エタンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.308gあった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.932であり、高温側の燃焼ピークは842℃であった。
実施例1と同様に高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち93本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.8nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は73であった。
[実施例5]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体の凝集体のかさ密度は0.294g/cmであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エタンガスは70.0mL/min(全ガス流量に対して0.4vol%)を3分導入した後、エタンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.304gあった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.918であり、高温側の燃焼ピークは778℃であった。
実施例1と同様に高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち98本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.7nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は61であった。
[比較例1]
(触媒調製)
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜1.70mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。得られた触媒体の凝集体のかさ密度は0.283g/cmであった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器103は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板102を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管108、上部には廃ガス管106を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉101を具備する。また反応管内の温度を検知するために温度計105を具備する。
調製した固体触媒体(触媒体の凝集体)132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層104を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー107を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー107を用いてメタンガスを0.78L/min(全ガス流量に対して4.5%)で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際のメタンを含むガスの線速は6.55cm/secであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで約24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量にカーボンナノチューブ含有組成物濃度をかけて算出したカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量(触媒体100g当たり)は0.264gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.893であり、高温側の燃焼ピークは732℃であった。
高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち91本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.8nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は90であった。
[比較例2]
比較例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体の凝集体のかさ密度は0.289g/cmであった。
比較例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは18.86L/min供給させ、メタンガスは2.42L/min(全ガス流量に対して14vol%)を19.3分導入した。
比較例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.231gあった。
比較例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.806であり、高温側の燃焼ピークは815℃であった。
比較例1と同様に高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数(100本)のうち94本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.8nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は56であった。
[比較例3]
比較例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体の凝集体のかさ密度は0.285g/cmであった。
比較例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エタンガスは0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を60分導入した。
比較例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.601gあった。
比較例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.847であり、高温側の燃焼ピークは688℃であった。
比較例1と同様に高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、総本数100本)のうち57本を2層カーボンナノチューブが占めており、平均外径は1.6nmであった。
また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は10であった。
Figure 2014028735
101 電気炉
102 石英焼結板
103 反応器
104 触媒層
105 温度計
106 廃ガス管
107 マスフローコントローラー
108 混合ガス導入管
109 コック

Claims (12)

  1. カーボンナノチューブ製造用触媒体と炭化水素を含むガスを加熱反応領域で接触させるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、下記の(1)と(2)の条件を満たすことを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
    (1)炭化水素濃度を全ガス流量に対して10vol%以下で接触させる。
    (2)分解温度が750℃以上で、分解温度が異なる少なくとも2種類の炭化水素。
  2. 2種類の炭化水素が、分解温度が850℃以上の炭化水素と分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素を含む請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  3. 分解温度が850℃以上の炭化水素の流量に対して、分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素の流量の比率が0.1〜10vol%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  4. 分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を導入させた後、分解温度850℃以上の炭化水素を導入することを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  5. 分解温度850℃以上の炭化水素を分解して分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を生成する金属触媒を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  6. 金属触媒が8〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  7. カーボンナノチューブ製造用触媒体の重量を炭化水素の流量で割った接触時間(W/F)が100〜400min・g/Lの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  8. 炭化水素を含むガスの線速が2〜8cm/secの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  9. カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体の粒径が0.2〜2mmの範囲であり、且つかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  10. カーボンナノチューブ含有組成物を成長させる金属触媒として8〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  11. 得られるカーボンナノチューブ含有組成物を空気中で10℃/分で昇温したときの熱重量分析で、高温側の燃焼ピークが750〜900℃にあり、かつ低温側の重量減量分(TG(L))と高温側の重量減量分(TG(H))が、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.75以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  12. 得られるカーボンナノチューブ含有組成物が2層カーボンナノチューブを50%以上含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101809486B1 (ko) * 2015-12-18 2017-12-15 한국철도기술연구원 정전분무법을 이용한 탄소나노튜브 합성 장치 및 방법

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