JP2015063439A - カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。 - Google Patents

カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。 Download PDF

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秀和 西野
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Abstract

【課題】CVD法にて品質の高いカーボンナノチューブを高収量で得ることができるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】900℃以上1200℃未満に予熱された炭素含有組成物を予熱温度以下でカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させることからなるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明はカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気伝導性、熱伝導性や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応用性の広がりも期待されている。
また、カーボンナノチューブは、通常層数の少ない方が高グラファイト構造を有し、単層カーボンナノチューブや二層カーボンナノチューブは高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性も高いことが知られている。特にカーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。
従来のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD(ChemicalVapor Deposition)法)などによる合成が知られている(非特許文献1参照)。特に炭素源となるガスを熱分解してカーボンナノチューブを製造するCVD法では、カーボンナノチューブを大量に合成することが可能となる。
このCVD法にて、炭素源を予熱して金属触媒と接触させることでカーボンナノチューブを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1は基板上に配向カーボンナノチューブを形成させる製造方法で、基板法ということもあり、カーボンナノチューブを効率よく高収量で得られるものではない。また、炭素源濃度が高いことから、炭素副生物を生成しやすく、カーボンナノチューブの品質低下の問題を招く。
特開2006−128064号広報
斉藤弥八、坂東俊治著「カーボンナノチューブの基礎」株式会社コロナ社、1998年11月13日、p17、23、47
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、CVD法にて品質の高いカーボンナノチューブを高収量で得ることができるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、CVD法にて炭素含有組成物を予熱し、炭素含有組成物の分解を促進させてから金属触媒等のカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させることで品質の高いカーボンナノチューブを高収量で製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]900℃以上1200℃未満に予熱された炭素含有組成物を予熱温度以下でカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させることからなるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[2]前記、予熱された炭素含有組成物をカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させる温度が600℃以上950℃以下の範囲であることを特徴とする[1]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[3]炭素含有組成物が、キャリアガスと炭化水素を含み、炭化水素の濃度が全炭素含有組成物に対して1〜10vol%の範囲であることを特徴とする[1]〜[2]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[4]炭化水素がメタン、エタン、およびエチレンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[3]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[5]炭素含有組成物が、少なくとも2種類の炭化水素を含む請求項[1]〜[4]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[6]炭素含有組成物が、分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素と、分解温度が850℃以上の炭化水素を含む[5]記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[7]分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素を含む炭素含有組成物を、カーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させたあと、分解温度が850℃以上の炭化水素を含む炭素含有組成物をカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させる[5]または[6]記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[8]カーボンナノチューブ製造用触媒体に含まれる金属触媒が8族〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[7]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[9]カーボンナノチューブ製造用触媒体が、カーボンナノチューブ製造用触媒体を基準として0.1〜2wt%の範囲の金属を含有することを特徴とする[8]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[10]カーボンナノチューブ製造用触媒体の粒径が0.2〜3mmの範囲である[1]〜[9]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[11]カーボンナノチューブ製造用触媒体のかさ密度が、0.1〜1g/mLの範囲であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
本発明により品質の高いカーボンナノチューブを高収量で得ることができる。
実施例で用いた縦型加熱反応装置の簡略図である。
次に本発明を詳細に説明する。
本発明では、炭素含有組成物をカーボンナノチューブ製造の原料として用いる。炭素含有組成物は、好ましくは炭素源として炭化水素を含み、炭化水素としては、非芳香族であっても、芳香族であってもよい。非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、ヘキサン、又はこれらの混合物などを使用することができる。また芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、又はこれらの混合物などを使用することができる。これらの中でも、特に単層または2層カーボンナノチューブを作りやすいメタン、エタン、エチレン、アセチレンが好ましい。好ましくは、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等から選ばれる少なくとも1種を用いることが出来る。メタン、エタン、エチレンが、単層または2層カーボンナノチューブを作りやすいので、より好ましい。
本発明では、カーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させる前に炭素含有組成物を900℃以上1200℃未満に予熱することが重要である。予熱温度が900℃以上では炭素含有組成物の分解が促進されやすくなり、カーボンナノチューブを速やかに、効率よく得ることができる。また、予熱温度が1200℃未満では炭素含有組成物の分解が進みすぎず、カーボンナノチューブ製造用触媒体と接触する際に炭素副生物を生成しにくくなり、純度の高いカーボンナノチューブが得られやすくなる。よって、炭素含有組成物の予熱温度は、さらに好ましくは900℃以上、1000℃以下の範囲である。
カーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させる炭素含有組成物は、炭化水素などの元祖含有化合物の濃度を全ガス流量の10%vol以下とすることが好ましい。また、炭素含有組成物に炭化水素を含む場合、分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素を用いることが好ましい。カーボンナノチューブ含有組成物を効率的に成長させるには、炭素源の濃度を制御する必要がある。炭素源の濃度が高いとアモルファスカーボンを生成しやすくなり、カーボンナノチューブの成長を阻害するため、収量が大きく減少する。このため、炭化水素(炭素源)濃度は10vol%以下が好ましい。炭化水素濃度の下限は、炭素源として必要な濃度であり、通常1vol%以上である。炭化水素濃度は好ましくは、3〜8vol%である。
炭化水素濃度が全ガス流量に対して10vol%以下となるように不活性ガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム等が使用できる。
本発明では、炭素含有組成物が、分解温度750℃以上で分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素として、上記の非芳香族炭化水素や芳香族炭化水素を分解温度に差がでるように適宜組み合わせて使用することが好ましい。また、3種類の炭化水素を用いる場合も、分解温度が相互に異なる炭化水素を適宜選択して組み合わせればよい。
上記、組み合わせる炭化水素は分解温度が850℃以上の炭化水素と分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素であることが好ましい。分解温度が850℃以上の炭化水素は、好ましくは、分解温度が850℃以上1000℃以下の炭化水素であり、メタンを例示できる。分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素は、エタン、エチレンを例示できる。分解温度の異なる少なくとも2種類の炭化水素の組み合わせは好ましくは、メタンとエタン、メタンとエチレンである。
組み合わせる2種類の炭化水素のうち、高温分解ガスの流量に対して低温分解ガスの流量の比率が0.1〜10vol%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜5vol%の範囲である。
微量の低温分解炭化水素の詳細な働きは不明であるが、微量の低温分解炭化水素が金属触媒の活性を促進すると考えられ、その結果、高温分解炭化水素が効果的に金属触媒によってカーボンナノチューブ成長に使用される。しかしながら、低温分解炭化水素のみの場合、過剰な分解反応が起こり、金属触媒の活性が失われてアモルファスカーボンが生成され、品質の高いカーボンナノチューブが得られない。
カーボンナノチューブ含有組成物の製造は炭化水素を供給する際、分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を導入させた後、分解温度850℃以上の炭化水素を導入する方法が挙げられる。分解温度750℃以上850℃未満の炭化水素を導入させた後、分解温度850℃以上の炭化水素を導入する方法における、導入する炭化水素を切り替えるタイミングは、炭素源供給直後から炭素源供給停止までの時間を全製造時間としたときに、全製造時間の1/200以上1/3以下が好ましく、さらに好ましくは1/150以上1/3以下である。低温分解炭化水素のみの供給時間を全製造時間の1/200以上とすることで、金属触媒の活性を十分に促進することができる。また、低温分解炭化水素のみの供給時間を全製造時間の1/150以上とすることで、さらに金属触媒の活性を十分に促進することができる。低温分解炭化水素のみの供給時間を全製造時間の1/3以下とすることで、過剰な分解反応により金属触媒の活性が失われるのを抑制することが可能となり、アモルファスカーボンの生成が抑制されるため、より品質の高いカーボンナノチューブが得られる。また、低温分解炭化水素のみの供給時間を全製造時間の1/6以下とすることで、上記の理由によるアモルファスカーボンの生成はより抑制され、さらにより品質の高いカーボンナノチューブが得られる。また、高温分解炭化水素を供給後、低温分解炭化水素を供給した場合は触媒の活性が低い状態に過剰な分解反応を起こした低温分解炭化水素を供給することになるため、アモルファスカーボンが生成され、品質の高いカーボンナノチューブが得られない。
本発明において、カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体とは炭素含有組成物の接触により、カーボンナノチューブ含有組成物を製造する触媒であり、特に限定されないが、例えば8族〜10族の遷移金属化合物が担体上に担持された総体物または該金属化合物と担体の混合物を用いることができる。中でも、Fe、 Co、Ni、Pd、Pt、Rh等が特に好ましい。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。また遷移金属は微粒子であることが好ましい。微粒子とは粒径が0.5〜10nmであることが好ましい。金属が微粒子であると細いカーボンナノチューブが生成しやすい。金属は1種類だけを含んでいても、2種類以上を含んでいてもよい。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。2種類の金属を担持させる場合は、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Rhから選択される金属と選択されたそれ以外の金属の組み合わせが特に好ましい。特にFeとCo、Ni、V、Mo、Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。また、他の成分が配合された組成物、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも該金属化合物が担体上に担持または混合されていれば、触媒体として用いることができる。触媒体には、触媒体の1次粒子や2次粒子が凝集した状態も含まれる。
また本発明において、カーボンナノチューブ製造用触媒体に含まれる金属触媒が0.1〜2wt%の範囲で含有することが可能である。一般的にアモルファスカーボンなどの炭素副生物を生成しやすくなるため、金属触媒の担持量が増加することは困難であった。しかしながら、予備加熱領域にあらかじめ低温分解炭化水素をカーボンナノチューブの正常初期に少量添加することにより、金属触媒が活性化される。その結果、後述するカーボンナノチューブ含有組成物の純度(TG(H)/(TG(H)+TG(L))が担持量を増加させても0.8以上となる。微量の低温分解炭化水素の詳細な働きは不明であるが、微量の低温分解炭化水素が金属触媒の活性を促進すると考えられ、その結果、高温分解炭化水素が効果的に金属触媒によってカーボンナノチューブ成長に使用される。
本発明において反応方式は特に限定しないが、縦型流動床型反応器を用いて反応させることが好ましい。縦型流動床型反応器とは、原料となる炭素含有組成物(以下、炭素源と称する)が、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に流通するように設置された反応器である。該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向に炭素源が流通し、触媒体層を通過する。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向をも含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。なお、好ましいのは鉛直方向である。なお、炭素源の供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭素源が前記方向に流通し、その流通過程で触媒体層を通過すればよい。
触媒体は縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にあり、反応時には流動床を形成した状態とする。このようにすることにより、触媒体と炭素源を有効に接触させることができる。横型反応器の場合、触媒体と炭素源を有効に接触させるため、炭素源の流れに対して垂直方向で反応器の断面全面に存在させた状態にするには、重力がかかる関係上、触媒体を左右から挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブ含有組成物の生成反応の場合、反応するに従って触媒体上にカーボンナノチューブ含有組成物が生成して、触媒体の体積が増加するので、左右から触媒体を挟みこむ方法は好ましくない。また、横型で流動床を形成させることも難しい。本発明では反応器を縦型にし、反応器内にガスが透過できる台を設置して、その上に触媒体を置くことによって、触媒体を両側から挟みこむことなく、反応器の断面方向に均一に触媒体を存在させることができ、炭素源を鉛直方向に流通させる際に流動床を形成させることもできる。触媒体を縦型流動床反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒体が広がっていて触媒体底部の台が見えない状態を言う。このような状態の好ましい実施態様としては、例えば、反応器内にガスが透過できる触媒体を置く台(セラミックスフィルターなど)を置き、そこに所定の厚みで触媒体を充填する。この触媒体層の上下が多少凸凹してもかまわない(図1)。図1は、反応器104の中に触媒体を置く台である石英焼結板103が設置され、その上に触媒体層105を形成する触媒体が反応器104の水平断面方向全体に存在している状態を示す概念図である。
流動床型は、触媒体を連続的に供給し、反応後の触媒体とカーボンナノチューブ含有組成物を含む集合体を連続的に取り出すことにより、連続的な合成が可能であり、カーボンナノチューブ含有組成物を効率よく得ることができ好ましい。
流動床型反応において、炭素源と触媒体が均一に効率よく接触するためにカーボンナノチューブ合成反応が均一に行われ、アモルファスカーボンなどの不純物による触媒被覆が抑制され、触媒活性が長く続くと考えられる。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器内に、石英板上に置かれた触媒体が設置され、該触媒体上を炭素源が通過して接触、反応する態様の反応装置を指す。この場合、触媒体表面ではカーボンナノチューブが生成するが、触媒体内部には炭素源が到達しないため、縦型反応器に比較して収量が少なくなる傾向にある。これに対して、縦型反応器では触媒体全体に原料の炭素源が接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブ含有組成物を合成することが可能である。反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
本発明においては、前記温度範囲に予熱された炭素含有組成物は、予熱温度以下でカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させる。これにより、品質の高いカーボンナノチューブの製造が高収量で可能になる。
本発明において、前記の予熱された炭素含有組成物とカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させる温度は600℃以上、950℃以下の範囲が好ましく、800℃以上950℃以下の範囲がより好ましい。反応温度が600℃を超えるとカーボンナノチューブ含有組成物が高収量で得られやすくなり、950℃以下では炭素含有組成物の分解が進みすぎず、カーボンナノチューブ製造用触媒体と接触する際に炭素副生物を生成しにくくなり、純度の高いカーボンナノチューブを得られやすくなる。
なお、炭素含有組成物の予熱温度と触媒体と接触、反応する温度の組み合わせは予熱温度の方が高くなるように適宜調製する。例えば、予熱温度900℃では反応温度は900℃以下となるようにする。
本発明においては、炭素含有組成物を、予熱、触媒体と接触・反応させるために、炭素含有組成物以外のガスと混合させ反応器内を通過させることもできる。炭素含有組成物の濃度が全ガス流量に対して1〜10vol%の範囲とすると、カーボンナノチューブ含有組成物を効率的に成長させやすくなる。炭素含有組成物の濃度が10vol%以下であると、炭素副生物が生成しにくくなり、カーボンナノチューブの純度が高くなりやすく、その成長を阻害しにくくなり、収量が増大しやすくなる。一方、炭素含有組成物の濃度が1vol%以上であると、炭素源として必要な濃度となり好ましい。炭素含有組成物の濃度が3〜8vol%であるとより好ましい。炭素含有組成物の濃度が全ガス流量に対して1〜10vol%となるようにキャリアガスを用いることができ、キャリアガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム等が使用できる。
カーボンナノチューブ製造用触媒体の粒径及びかさ密度は品質の高いカーボンナノチューブを得るために重要な要件である。
カーボンナノチューブ製造用触媒体の製造方法は、特に限定されない。遷移金属の金属塩を溶解させた水溶液中に、マグネシアなどのMg化合物を担体として含浸して十分に分散混合し、加熱加圧下(100〜200℃、4〜15kgf/cm)で反応させた後に、大気中あるいは窒素などの不活性ガス中で、高温(400〜700℃)で加熱しても良い(水熱法)。水熱法によるカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の製造方法は、8族〜10族の遷移金属化合物とMg化合物を水中で混合撹拌し、該混合液を加熱、加圧による水熱反応で触媒前駆体が得られ、該触媒前駆体を特定の温度で加熱することで得られる。水熱反応を行うことで、遷移金属化合物とMg化合物がそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由して複合水酸化物となる。これにより遷移金属がMg(OH)中に高度に分散された状態の触媒前駆体になる。
このときの遷移金属化合物としてはクエン酸塩、クエン酸アンモニウム塩、酸化物および水酸化物が好ましく、クエン酸アンモニウム塩、クエン酸塩がより好ましい。なかでもクエン酸鉄(III)アンモニウムが好ましく用いられる。
Mg化合物としては酸化物および水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩が好ましく、酸化物がより好ましい。
遷移金属化合物とMg化合物の使用量は、遷移金属化合物中の金属成分量が、Mg化合物のMgO換算量に対して、0.1〜1質量%となるよう混合しておくことが単層および/または2層を含有する比較的細いカーボンナノチューブを製造しやすい点で好ましく、より好ましくは0.2〜0.6質量%の範囲である。上記範囲より金属成分量が多い場合には、担持される金属粒子の粒子径が大きくなり、得られるカーボンナノチューブも太くなる傾向にあるため、比較的細いカーボンナノチューブを製造しようとする場合には注意を要するが、水熱反応後、加熱して薄片状MgO触媒体を製造する場合には、直接MgOに金属化合物を担持する場合に比較して金属粒子の粒度のバラツキも少なく、比較的直径の揃った2層のカーボンナノチューブを得ることができる。
また水とMg化合物はモル比で4:1〜100:1で混合することが好ましく、より好ましくは9:1〜50:1であり、更に好ましくは9:1〜30:1である。
尚、遷移金属化合物とMg化合物はあらかじめ混合、濃縮乾固したものを水中で混合撹拌して水熱反応を行っても良いが、工程を簡略化するために、遷移金属化合物とMg化合物を直接水中に加えて、水熱反応に供することが好ましい。
水熱反応は加熱、加圧下で行われるが、オートクレーブなどの耐圧容器中でけん濁状態を含む混合水を100℃〜250℃の範囲で加熱し、自生圧を発生させることが好ましい。加熱温度は100〜200℃の範囲がより好ましい。尚、不活性ガスを加えて圧力をかけてもかまわない。本発明のカーボンナノチューブ製造用触媒体の製造方法において、水熱反応時の加熱時間は加熱温度と密接に関係しており、通常は30分〜10時間程度で行われ、温度が高いほど短時間で水熱反応は短くてすむ。例えば250℃で行う場合は30分〜2時間が好ましく、100℃で行う場合は2〜10時間が好ましい。
水熱反応後はスラリー状のけん濁液になっており、回収方法はこだわらないが、好ましくは濾過あるいは遠心分離することにより、容易に触媒前駆体を回収することができる。より好ましくは濾別であり、吸引濾過または自然濾過のどちらで行ってもかまわない。従来のカーボンナノチューブ製造用触媒体の製造方法は、一般に遷移金属化合物をMgOへ担持した際に濃縮乾固あるいは蒸発乾固させて製造されている。これは濾過した際には、溶解したMgOに未吸着の遷移金属化合物も濾別されてしまい、所定量MgOに担持することができないためである。一方、本発明の触媒前駆体は水熱反応を行うことで、遷移金属化合物とMg化合物がそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由した複合水酸化物となる。これにより遷移金属が水酸化マグネシウム中に高度に分散された状態となり、水中に未反応の遷移金属化合物はほとんどなく、エネルギー消費量の少ない濾過あるいは遠心分離が可能となる。濾過あるいは遠心分離にて脱水させる際、触媒の含水分率を制御することでかさ密度の制御が可能となる。
水熱処理後、固液分離した触媒前駆体は遷移金属とMgの複合水酸化物であり、加熱することにより遷移金属とMgの複合酸化物となる。加熱は大気または窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中で行うことができ、400〜1000℃の範囲で加熱することが好ましく、400〜700℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は1〜7時間の範囲で行うことが好ましい。加熱前の触媒前駆体は水酸化Mgが主体であるため、薄片状の1次構造をとっている。加熱温度が高すぎると脱水の際に焼結が起こり、薄片状の2次構造を維持できず、球形あるいは立方体、直方体の構造をとってしまい、遷移金属がMgO内部に取り込まれ、カーボンナノチューブの合成に際しては不効率となる可能性がある。
触媒体の粒径は0.2〜3mmの範囲であることが好ましい。0.2mm未満の触媒体では、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の反応に適した加熱領域(均熱帯又は反応域)を外れることがあり、品質の高いカーボンナノチューブを得ることが困難になる。また3mmより大きいと流動床中で触媒体が動きにくいため、炭素含有化合物が触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。よって粒径の大きさは0.2〜3mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2.8mmの範囲であり、最も好ましくは0.85〜2.8mmの範囲である。
なお、ここで粒径とは、篩い分け法により求めた粒径をいう。
触媒体の粒径を好ましい範囲とするためには篩い分けを行う方法、押し出し機から造粒する方法等を用いることができる。篩い分けの方法とは、触媒体の塊状物を粉砕しながら、篩いの目開き(JIS Z−8801−1(2006)に準じた目開き)が例えば、0.5〜2.8mmの篩いにかけて、0.5〜2.8mmの間に留まった顆粒状の触媒体を回収する方法である。粉砕の方法はいかなる方法を用いても良い。
また、押し出し機からの造粒方法では、触媒体と水を混練りし、内径が0.2〜3mmの孔の開いた各種スクリーンから押し出す。得られた触媒体の線状凝集物を乾燥させながら粉砕し、その後篩い分けを行い、例えば、0.5〜2.8mmの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する。上記、好ましい粒径とするには、篩いの目開きを適宜選択すればよい。
触媒体のかさ密度が0.1〜1g/mLの範囲であることが好ましく、それにより、触媒体と炭素含有化合物との接触効率が良くなり、よりいっそう高い純度のカーボンナノチューブを効率よく、多量に合成することが可能となる。触媒体のかさ密度が0.1g/mL未満では、触媒体を取り扱いづらいといった問題点がある。また、かさ密度が小さすぎると、炭素含有化合物と接触させる際に、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の均熱帯を外れることがあり、高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。一方で触媒のかさ密度が1g/mLを超えると、触媒体と炭素含有化合物とが均一に効率よく接触することが困難になり、やはり高品質のカーボンナノチューブを得ることが困難になる。触媒体のかさ密度が大きくなりすぎる場合、流動床中で触媒体が動きにくいために、炭素含有化合物を含むガスが触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題も生じる。
触媒体のかさ密度が上記の範囲であると触媒体が動くことによって、固定されたショートパスができにくく、炭素含有化合物と均一に接触することができる。よって触媒体のかさ密度は0.1〜1g/mLの範囲である。より好ましくは0.1〜0.7g/mLの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜0.5g/mLの範囲である。
かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体重量のことである。以下にかさ密度の測定方法を二つ示す。二つの測定方法の平均値をかさ密度とする。粉体のかさ密度は、測定時の温度、湿度に影響されることがある。ここで言うかさ密度は、温度20±10℃、湿度60±10%で測定したときの値である。メスシリンダーを測定容器として用いる。一つ目の測定方法は、予め定めた重量の触媒体を加える。かさ密度の測定に際しては5g以上の触媒体を加えることが好ましい。その後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、目視にて触媒体が占める容積値の変化率が4%以内であることを確認し、操作を終了する。もし容積値に目視にて4%以上の変化があれば、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて触媒体が占める容積値に4%以上の変化がないことを確認して操作を終了する。上記の方法で詰めた触媒体の重量を触媒体が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(mL))を触媒体のかさ密度とする。二つ目の測定方法は少量の触媒体を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、再び少量の触媒体を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返す。この操作を触媒体が予め定めた容積を占めるまで繰り返す。容積は10mL以上とすることが好ましい。上記の方法で詰めた触媒体の重量を触媒体が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(mL))を触媒体のかさ密度とする。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性は以下の方法で測定した。
[触媒体の評価方法]
(粒径)
触媒体の粒径は、前記した篩い分け後の触媒体をサンプリングし、JIS Z 8801に準じた目開きの篩いに投入して求めた。すなわち、目開きの大きい篩いが上段になるように重ね、最上段の篩いに測定する触媒体を投入し、機械的に振動を与え、各々の篩いの上に残った粉末の量を測った。
(かさ密度の測定方法)
メスシリンダーを測定容器として用いた。一つ目の測定方法は、予め定めた重量の触媒体を加えた後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した。目視にて触媒体が占める容積値の変化率が4%以内であれば、操作を終了するが、容積値が目視にて4%の変化があれば、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて触媒体が占める容積値に4%以上の変化がないことを確認して操作を終了した。二つ目の測定方法は少量の触媒体を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、再び少量の触媒体を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した。この操作を触媒体が予め定めた容積を占めるまで繰り返した。上記の方法で詰めた触媒体の重量を触媒体が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(mL))を触媒体のかさ密度として、二つの測定方法の平均をとった。
[カーボンナノチューブの評価方法]
(熱重量分析によるカーボンナノチューブの純度評価)
約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から1000℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))を得た。通常の精製をしたカーボンナノチューブ含有組成物はDTG曲線において高温側と低温側に二つの燃焼ピークが現れることが多い。本発明においては高温側の燃焼ピークは600〜900℃である。このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(H)とする。低温側の燃焼ピークとは350℃〜高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点までにあり、このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(L)とする。なお、変曲点が存在しない場合には350℃〜600℃の範囲の重量減量分をTG(L)とする。TG(L)はアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着したものと考えられる。炭素不純物の割合が大きいほどTG(L)が大きくなり、カーボンナノチューブの割合が大きいほどTG(H)が大きくなる。TG(H)を(TG(H)+TG(L))で割ることでカーボンナノチューブ含有組成物の純度として表現することができる。
[実施例1]
(触媒調製)
24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(MgO、岩谷社製 MJ−30)を1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、200℃に加熱し2時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜1.70mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.278g/mLであった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器104は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板103を具備し、石英管下方部には、キャリアガスガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管109、上部には廃ガス管107を具備する。さらに、反応管内の温度を検知するために温度計106を具備する。炭素含有化合物を予熱するための領域(予熱域)は102、予熱した炭素含有化合物とカーボンナノチューブ製造用触媒体を接触、反応させる領域(反応域)は101である。予熱域及び反応域は任意温度に保持できるように反応器の円周を取り囲む過熱器として電気炉を具備する。
調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層105を形成した。予熱域温度の設定を950℃、反応域温度の設定を860℃とし、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー108を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー108を用いてメタンガスを0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液はミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、140℃±4℃に加熱したオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物を含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)300mL中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量にカーボンナノチューブ含有組成物濃度をかけて算出したカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量(触媒体100g当たり)は0.375gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.897であった。
[実施例2]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体のかさ密度は0.286g/mLであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体を用いて行った。予熱域温度は1000℃、反応域温度は860℃に設定した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.303gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.893であった。
[実施例3]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体のかさ密度は0.307g/mLであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。予熱域温度は900℃、反応域温度は860℃に設定した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.264gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.893であった。
[実施例4]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体のかさ密度は0.307g/mLであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。予熱域温度は950℃、反応域温度は900℃に設定した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.294gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.820であった。
[実施例5]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体のかさ密度は0.278g/mLであった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。予熱域温度は900℃、反応域温度は900℃に設定した。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.309gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.892であった。
[実施例6]
(触媒調製)
24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(MgO、岩谷社製 MJ−30)を1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、200℃に加熱し2時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜1.70mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で6時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.257g/mLであった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器104は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板103を具備し、石英管下方部には、キャリアガスガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管109、上部には廃ガス管107を具備する。さらに、反応管内の温度を検知するために温度計106を具備する。炭素含有化合物を予熱するための領域(予熱域)は102、予熱した炭素含有化合物とカーボンナノチューブ製造用触媒体を接触、反応させる領域(反応域)は101である。予熱域及び反応域は任意温度に保持できるように反応器の円周を取り囲む過熱器として電気炉を具備する。
調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層105を形成した。予熱域温度の設定を950℃、反応域温度の設定を860℃とし、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー108を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスは16.5L/min供給させ、エチレンガスは0.113L/min(全ガス流量に対して0.6vol%)を3分導入した後、エチレンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液はミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、140℃±4℃に加熱したオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物を含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)300mL中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量にカーボンナノチューブ含有組成物濃度をかけて算出したカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量(触媒体100g当たり)は0.361gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.885あった。
[実施例7]
実施例6と同様の触媒を用いた。
実施例6と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エチレンガスは0.167L/min(全ガス流量に対して1.0vol%)を3分導入した後、エチレンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。実施例6と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.350gあった。
実施例6と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.910であった。
[実施例8]
49.2gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)を用いた以外は実施例6と同様の触媒調製操作を行った。得られた触媒体のかさ密度は0.263g/mLであった。
実施例6と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エチレンガスは0.167L/min(全ガス流量に対して1.0vol%)を3分導入した後、エチレンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。実施例6と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.517gあった。
実施例6と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.806であった。
[実施例9]
73.8gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)を用いた以外は実施例6と同様の触媒調製操作を行った。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、1.00〜2.36mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で6時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.213g/mLであった。
実施例6と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エチレンガスは0.252L/min(全ガス流量に対して1.5vol%)を3分導入した後、エチレンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。実施例6と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.393gあった。
実施例6と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.83であった。
[実施例10]
98.4gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)を用いた以外は実施例6と同様の触媒調製操作を行った。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、1.00〜2.36mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で6時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.185g/mLであった。
実施例6と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、エチレンガスは0.167L/min(全ガス流量に対して1.0vol%)を3分導入した後、エチレンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。実施例6と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.429gあった。
実施例6と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.80であった。
[比較例1]
(触媒調製)
24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(MgO、岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、200℃に加熱し2時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜1.70mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.307g/mLであった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器104は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板103を具備し、石英管下方部には、キャリアガスガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管109、上部には廃ガス管107を具備する。さらに、反応管内の温度を検知するために温度計106を具備する。炭素含有化合物を予熱するための領域(予熱域)は102、予熱した炭素含有化合物とカーボンナノチューブ製造用触媒体を接触、反応させる領域(反応域)は101である。予熱域及び反応域は任意温度に保持できるように反応器の円周を取り囲む過熱器として電気炉を具備する。
調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層105を形成した。予熱域温度の設定を800℃、反応域温度の設定を860℃とし、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー108を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー108を用いてメタンガスを0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)で60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液はミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、140℃±4℃に加熱したオイルバスで約24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)300mLに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物を含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量にカーボンナノチューブ含有組成物濃度をかけて算出したカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量(触媒体100g当たり)は0.205gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.763であった。
[比較例2]
比較例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体のかさ密度は0.306g/mLであった。
比較例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体を用いて行った。予熱域温度は900℃、反応域温度は950℃に設定した。
比較例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られた乾燥状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで0.213gであった。
比較例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.741であった。
[比較例3]
24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(MgO、岩谷社製 MJ−30)を1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、200℃に加熱し2時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜1.70mmの範囲の粒径の触媒体を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で6時間加熱した。得られた触媒体のかさ密度は0.257g/mLであった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器104は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板103を具備し、石英管下方部には、キャリアガスガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管109、上部には廃ガス管107を具備する。さらに、反応管内の温度を検知するために温度計106を具備する。炭素含有化合物を予熱するための領域(予熱域)は102、予熱した炭素含有化合物とカーボンナノチューブ製造用触媒体を接触、反応させる領域(反応域)は101である。予熱域及び反応域は任意温度に保持できるように反応器の円周を取り囲む過熱器として電気炉を具備する。
調製した固体触媒体132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層105を形成した。予熱域温度の設定を860℃、反応域温度の設定を860℃とし、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー108を用いて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスは16.5L/min供給させ、エチレンガスは0.167L/min(全ガス流量に対して1.0vol%)を3分導入した後、エチレンガスの供給を停止し、メタンガス0.78L/min(全ガス流量に対して4.5vol%)を57分導入した。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液はミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、140℃±4℃に加熱したオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物を含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)300mL中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mm濾過器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量にカーボンナノチューブ含有組成物濃度をかけて算出したカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量(触媒体100g当たり)は0.257gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.788であった。
Figure 2015063439
本発明によるカーボンナノチューブの製造方法は、品質の高いカーボンナノチューブを高収量で作成できるので、カーボンナノチューブの製造分野に有効に利用できる。
101 反応域
102 予熱域
103 石英焼結板
104 反応器
105 触媒体層
106 温度計
107 排ガス管
108 マスフローコントローラー
109 混合ガス導入管

Claims (11)

  1. 900℃以上1200℃未満に予熱された炭素含有組成物を予熱温度以下でカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させることからなるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  2. 前記、予熱された炭素含有組成物をカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触、反応させる温度が600℃以上950℃以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  3. 炭素含有組成物が、キャリアガスと炭化水素を含み、炭化水素の濃度が全炭素含有組成物に対して1〜10vol%の範囲であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  4. 炭化水素がメタン、エタン、およびエチレンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  5. 炭素含有組成物が、少なくとも2種類の炭化水素を含む請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  6. 炭素含有組成物が、分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素と、分解温度が850℃以上の炭化水素を含む請求項5記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  7. 分解温度が750℃以上850℃未満の炭化水素を含む炭素含有組成物を、カーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させたあと、分解温度が850℃以上の炭化水素を含む炭素含有組成物をカーボンナノチューブ製造用触媒体と接触させる請求項5または6記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  8. カーボンナノチューブ製造用触媒体に含まれる金属触媒が8族〜10族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  9. カーボンナノチューブ製造用触媒体が、カーボンナノチューブ製造用触媒体を基準として0.1〜2wt%の範囲の金属を含有することを特徴とする請求項8に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  10. カーボンナノチューブ製造用触媒体の粒径が0.2〜3mmの範囲である請求項1〜9のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  11. カーボンナノチューブ製造用触媒体のかさ密度が、0.1〜1g/mLの範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
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