JP5807455B2 - カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。 - Google Patents

カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明はカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気伝導性、熱伝導性や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応用性の広がりも期待されている。
また、カーボンナノチューブは、通常層数の少ない方が高グラファイト構造を有し、単層カーボンナノチューブや二層カーボンナノチューブは高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性も高いことが知られている。特にカーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。
従来のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD(ChemicalVapor Deposition)法)などによる合成が知られている(非特許文献1参照)。CVD法による合成は触媒の扱い易さ及び、合成によって得られるカーボンナノチューブの収量の点から粉末状の担体の使用が好まれる。担体としては合成後の除去し易さの点から、酸処理のみで容易に取り除ける粉末状のマグネシウム塩や酸化マグネシウムを用いることが多い。CVD法は固定床及び流動床反応装置がある。特許文献1のように固定床反応装置を用いた場合、高純度なカーボンナノチューブを得ることができるが、カーボンナノチューブを高収量で製造することは困難であった。一方、特許文献2・3のように流動床装置を用いた場合はカーボンナノチューブを高収量で得ることができる。
特開2004−182548号公報 特開2006−261131号公報 特表2009−069344号公報
斉藤弥八、坂東俊治、カーボンナノチューブの基礎、株式会社コロナ社、p17、23、47
流動床装置を用いた場合、特許文献2に記載されるようにかさ密度が非常に小さい触媒体を用いるとカーボンナノチューブ合成時に飛散しやすい問題点がある。また、特許文献2よりもかさ密度が大きく、触媒体の凝集体の粒径も大きい触媒を用いた特許文献3においても依然として純度の高いカーボンナノチューブを収率よく得るのは困難であった。
本発明は、上記のような事情、更に合成時に原料ガスが偏流する、あるいは触媒体への加熱が不均一になるなどの問題に鑑みなされたものであり、高純度なカーボンナノチューブ含有組成物を収率よく製造することができる触媒体とカーボンナノチューブ含有組成物製造条件を用いたカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、触媒体の凝集体の粒径及びかさ密度、カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速を制御することで高純度なカーボンナノチューブ含有組成物を収率よく製造し得ることを見出した。
すなわち以下の特徴を有するカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体及びその触媒体を用いたカーボンナノチューブ含有組成物製造方法である。
[1]カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱反応領域で接触させてカーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、
(1)カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体が2mmをこえて3mm以下の粒径の凝集体を25質量%以上含み、凝集体を球体と仮定して算出した体積が0.2×10−2〜10×10−2cmの範囲であり、かつ
(2)下記の式の値が1×10−4〜40×10−4g・sec/cmの範囲であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の体積平均(V)(cm)×かさ密度(d)(g/cm)/カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速(cm/sec)
[2]前記カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の粒径が0.85mmをこえて3mm以下の範囲であることを特徴とする[1]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[3]炭素化合物を含むガスの線速が8cm/secをこえて10cm/sec以下の範囲であることを特徴とする[1]または[2]に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[4]前記含有組成物カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体のかさ密度が0.1〜0.3g/cmの範囲であることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[5]前記カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体が0.1〜1質量%の範囲で8〜10族の遷移金属を含むことを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
[6]前記カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体がマグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
本発明によれば、均一な加熱領域内で程良く触媒体の凝集体を流動させることで高純度なカーボンナノチューブ含有組成物を収率よく得ることが可能になる。
図1は縦型加熱酸化反応装置の概略図である。
本発明は、触媒体の凝集体の大きさとかさ密度、カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速の3つを制御することで、縦型反応器内の反応に適した均一な加熱領域で触媒体と原料ガスである炭素含有化合物を均一に接触させ、高純度なカーボンナノチューブを得ることができるカーボンナノチューブ含有組成物製造方法を提供するものである。
ここで、触媒体とはカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒として用いられるものであり、例えば8族〜10族の遷移金属化合物が担体上に担持された総体物または該金属化合物と担体の混合物が挙げられる。また、他の成分が配合された組成物、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも該金属化合物が担体上に担持または混合されていれば、触媒体と解釈する。触媒体の凝集体とは、触媒体の一次粒子が凝集した状態をさす。
触媒体の凝集体のかさ密度は、任意の空間に触媒体の凝集体を最密充填したときの触媒体の凝集体の重量(g)を体積(cm)で割った値とした。このときの体積は触媒体の凝集体同士の間にできた空間(空隙)を含んでいる。測定方法は後述する。
カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速は、カーボンナノチューブ含有組成物製造時に流通させた全ガス流量をさす。全ガス流量は不活性ガスと原料ガスの場合、原料ガスのみの場合などを含む。
ガス線速を大きくすると触媒体の凝集体が舞い上がり、反応に適した加熱領域から外れ、加熱が不均一になる。一方で、触媒体の凝集体の粒径を大きくしすぎると、流動しにくくなり、触媒体と炭素源のガスの接触が不均一になる。そのため、触媒体の凝集体のかさ密度を小さくして流動しやすくして、均一な接触を行う必要がある。
本発明は、上記3条件がカーボンナノチューブ含有組成物の製造に密接に関わっていることを見出し、これらを制御することで高純度なカーボンナノチューブが高収率で得られることを可能にした。3条件中2条件の組合せで例えば、単にかさ密度を小さくして触媒体の凝集体の粒径を大きくする、又はかさ密度を小さくしてガス線速を小さくする、又はガス線速を小さくして粒径を小さくするでは高純度なカーボンナノチューブ含有組成物の高収率は望めず、3条件を組み合わせて、はじめて高純度なカーボンナノチューブ含有組成物が高収率で得られる。
カーボンナノチューブ含有組成物は、カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱反応領域で接触させてカーボンナノチューブを製造する。その製法としては品質の高いカーボンナノチューブ含有組成物が効率よく得られる点で、下記の(1)から(2)の範囲を満たすことが好ましい。
(1)カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体を球体と仮定して算出した体積が0.2×10−2〜10×10−2cmの範囲であり、かつ
(2)下記の式(Vd/v)の値が1×10−4〜40×10−4g・sec/cmの範囲であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の体積平均(V)(cm)×かさ密度(d)(g/cm)/カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速(v)(cm/sec)
上記の製造条件について詳細に説明する。
本発明において反応方式は特に限定しないが、縦型流動床型反応器を用いて反応させることが好ましい。縦型流動床型反応器とは、原料となる炭素含有化合物が、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に流通するように設置された反応器である。該反応器の一方の端部から他方の端部に向けた方向に炭素含有化合物が流通し、触媒体層を通過する。反応器は、例えば管形状を有する反応器を好ましく用いることができる。なお、上記において、鉛直方向とは、鉛直方向に対して若干傾斜角度を有する方向をも含む(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)。なお、好ましいのは鉛直方向である。なお、炭素含有化合物の供給部および排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭素含有化合物が前記方向に流通し、その流通過程で触媒体層を通過すればよい。
触媒体は、その凝集体を縦型流動床型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態にあり、反応時には流動床を形成した状態とする。このようにすることにより、触体と炭素含有化合物を有効に接触させることができる。横型反応器の場合、触媒体と炭素含有化合物を有効に接触させるため、炭素含有化合物の流れに対して垂直方向で反応器の断面全面に存在させた状態にするには、重力がかかる関係上、触媒体を左右から挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブ含有組成物の生成反応の場合、反応するに従って触媒体上にカーボンナノチューブ含有組成物が生成して、触媒体の体積が増加するので、左右から触媒体を挟みこむ方法は好ましくない。また、横型で流動床を形成させることも難しい。本発明では反応器を縦型にし、反応器内にガスが透過できる台を設置して、その上に触媒体の凝集体を置くことによって、触媒体を両側から挟みこむことなく、反応器の断面方向に均一に触媒体の凝集体を存在させることができ、炭素含有化合物を鉛直方向に流通させる際に流動床を形成させることもできる。触媒体の凝集体を縦型流動床反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒体が広がっていて触媒体底部の台が見えない状態を言う。このような状態の好ましい実施態様としては、例えば、反応器内にガスが透過できる触媒体を置く台(セラミックスフィルターなど)を置き、そこに所定の厚みで触媒体を充填する。この触媒体層の上下が多少凸凹してもかまわない(図1)。図1は、反応器103の中に触媒体を置く台である石英焼結板102が設置され、その上に触媒層104を形成する触媒体の凝集体が反応器103の水平断面方向全体に存在している状態を示す概念図である。
流動床型は、触媒体の凝集体を連続的に供給し、反応後の触媒体とカーボンナノチューブ含有組成物を含む集合体を連続的に取り出すことにより、連続的な合成が可能であり、カーボンナノチューブ含有組成物を効率よく得ることができ好ましい。
流動床型反応において、原料の炭素含有化合物と触媒体が均一に効率よく接触するためにカーボンナノチューブ合成反応が均一に行われ、アモルファスカーボンなどの不純物による触媒被覆が抑制され、触媒活性が長く続くと考えられる。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器内に、石英板上に置かれた触媒が設置され、該触媒上を炭素含有化合物が通過して接触、反応する態様の反応装置を指す。この場合、触媒体表面ではカーボンナノチューブが生成するが、触媒体内部には炭素含有化合物が到達しないため、縦型反応器に比較して収量が少なくなる傾向にある。これに対して、縦型反応器では触媒体全体に原料の炭素含有化合物が接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブ含有組成物を合成することが可能である。反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質からなることが好ましい。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法において、Vd/vは1×10−4〜40×10−4g・sec/cmの範囲とする。Vd/vはカーボンナノチューブ含有組成物製造時の触媒体層の流動性を数値化したものであり、カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の体積V(cm)にかさ密度d(g/cm)をかけ、カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速v(cm/sec)で除した値である。すなわち、触媒体の凝集体にガスが接触した際の触媒体の凝集体の流動性を数値化した式である。
カーボンナノチューブ含有組成物を効率的に成長させるには、触媒体層を程良く流動させる必要がある。触媒体層を流動させすぎると縦型反応器中で触媒体の凝集体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の反応に適した感熱領域を外れることがあり、高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。更に触媒体の凝集体が吹き上がることでロスが生じ、カーボンナノチューブ含有組成物の製造効率が悪くなり、収量が大きく減少する。このため、Vd/vは1×10−4g・sec/cm以上とする。また、触媒体層が流動しづらい場合、炭素含有化合物は触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じやすくなる。このため、40×10−4g・sec/cm以下とする。なかでもVd/vは5〜20×10−4g・sec/cmの範囲とすることがより好ましい。
触媒体の凝集体の体積は、0.2×10−2〜10×10−2cmの範囲である。体積が大きすぎると触媒体層が流動しづらくなり、炭素含有化合物は触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じやすくなる。このため、10×10−2cm以下とする。また、体積が小さいと触媒体層が流動しすぎて縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の反応に適した加熱領域を外れることがあり、高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。このため、0.2×10−2cm以上とする。なかでも1×10−2〜5×10−2cmの範囲であることがより好ましい。体積は凝集体が球体であると仮定して、カーボンナノチューブ含有組成物製造に用いた粒径(mm)から算出できる。用いた触媒体の凝集体の粒径が1つでない場合は粒径を平均化することで算出する。任意の範囲の粒径の触媒体の凝集体を得たい場合、その範囲に存在する全ての篩い(JIS Z−8801−1(2006)に準じた目開き)を用いて、それぞれの篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を重量より算出する。そして、各篩い間の平均粒径(=(最大目開き+最小目開き)/2)を用いて体積を算出する。この体積と各篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を用いて以下の式から体積平均を算出する。体積平均=((篩い間の体積1の2乗×篩い間の触媒体の凝集体の存在比率1)+(篩い間の体積2の2乗×篩い間の触媒体の凝集体の存在比率2)+・・・・)/((篩い間の体積1×篩い間の触媒体の凝集体の存在比率1)+(篩い間の体積2×篩い間の触媒体の凝集体の存在比率2)・・・・)。
また、押出成型で得た場合は使用した押出径を直径とし、体積を算出する。
本発明においては、カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の粒径は0.85mmをこえて3mm以下の範囲にあることが触媒体凝集体の流動性の点で好ましく、なかでもカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の粒径が2mmをこえて3mm以下の範囲の粒径を25質量%以上含むことがより好ましい。
すなわち、カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の粒径及びかさ密度は高品質のカーボンナノチューブを得るために重要な因子となりうる。具体的には触媒体の凝集体の粒径が0.85をこえて3mmの範囲であることが好ましい。現実には触媒体の凝集体は、粒度分布を有しており、また、触媒体の凝集体が部分的にさらに凝集したり、解砕することもあるため、0.85mm未満及び3mm以上の触媒体の凝集体も含まれることがあるので、0.85mmをこえて3mmの範囲の触媒体の凝集体が80質量%以上であれば上記要件を満たすものとみなす。0.85mm未満の触媒体の凝集体では、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の反応に適した加熱領域を外れることがあり、このような触媒体を多く含むと高品質なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。また3mmより大きいと流動床中で触媒体が動きにくいため、そのような触媒体を多く含むと炭素含有化合物は、触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じる。
よって粒径の大きさは0.85をこえて3mmの範囲が好ましく、なかでも2mmをこえて3mm以下の範囲の粒径を25重量%以上含むことがより好ましい。
触媒体の凝集体の粒径の制御に、特に制限は無いが、例えば篩い分けを行う方法と押し出し機から造粒する方法とスプレードライ法がある。代表的な篩い分けの方法は、触媒体の凝集した塊状物を粉砕しながら、篩いの目開きが0.85〜2.36mmの篩いをかけて0.85mmから2.36mmの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する方法である。粉砕の方法はいかなる方法を用いても良い。
2mmをこえて3mm以下の範囲の粒径を25質量%以上含む0.85mmをこえて3mmの触媒体の凝集体において、2〜3mmの粒径範囲を有する凝集体の割合は、目開きが3mm、2mm、0.85mmの篩いを用意して粉砕し、2〜3mmの間にとどまった顆粒状の触媒体の重量を全重量(0.85〜2mmの間にとどまった顆粒状の触媒体の重量と2〜3mmの間にとどまった顆粒状の触媒体の重量の合計)で割ることで算出できる。
2〜3mmの範囲内にある凝集体の割合を増やすには、粉砕の程度を加減すればよい。あるいは、上記範囲をはずれる触媒体の凝集体を取り除くことでも達成し得る。好ましくは0.85mm未満の範囲もしくは3mmを越える範囲の触媒体の凝集体を篩い分けなどによりとり除くことである。
また、押し出し機からの造粒方法は触媒体と水を混練りし、内径が0.85〜3mmの孔の開いた各種スクリーンから押し出す。得られた触媒体の線状凝集物を乾燥させながら粉砕し、その後篩い分けを行い0.85mmから3mmの間にとどまった顆粒状の触媒体を回収する。上記、好ましい粒径とするには、篩いの目開きを適宜選択すればよい。
炭素含有化合物の線速は8cm/sec以上、好ましくは10cm/sec以下で流通させる。カーボンナノチューブ含有組成物製造時に炭素含有化合物を低線速にて加熱温度下を流通させると触媒体層が流動しづらく、炭素含有化合物は触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じやすい。よって線速は8cm/sec以上、10cm/sec以下が好ましい。線速は反応装置の断面積(cm)と反応に使用する全ガス流量から算出する。
触媒体の凝集体のかさ密度が0.1〜0.3g/cmの範囲であることが好ましく、それにより、触媒体と炭素含有化合物との接触効率が良くなり、よりいっそう高純度なカーボンナノチューブを効率よく、多量に合成することが可能となる。かさ密度が小さすぎると、触媒体を取り扱いづらいといった問題点がある。更に炭素含有化合物と接触させる際に、縦型反応器中で触媒体が大きく舞い上がり、触媒体が反応器の反応に適した加熱領域を外れることがあり、高純度なカーボンナノチューブを得ることが困難になる。そのため、0.1g/cm未満よりは0.1g/cm以上が好ましい。また、かさ密度が大きすぎると流動床中で触媒体層が流動しづらくなる。そのため、炭素含有化合物は触媒体層の最も通りやすい箇所だけを通ってしまうという、いわゆるショートパスの問題が生じやすくなる。そのため、0.3g/cm以下が好ましい。中でも0.2〜0.3g/cmの範囲であることがより好ましい。
かさ密度とは単位かさ体積あたりの粉体重量のことである。以下にかさ密度の測定方法を二つ示す。二つの測定方法の平均値をかさ密度とする。粉体のかさ密度は、測定時の温度、湿度に影響されることがある。ここで言うかさ密度は、温度20±10℃、湿度60±10%で測定したときの値である。50mLメスシリンダーを測定容器として用いる。一つ目の測定方法は、予め定めた重量の粉末を加える。かさ密度の測定に際しては5g以上の粉末を加えることが好ましい。その後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL以内であることを確認し、操作を終了する。もし容積値に目視にて±0.2mL以上の変化があれば、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL以上の変化がないことを確認して操作を終了する。上記の方法で詰めた粉末の重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(cm))を触媒体の凝集体のかさ密度とする。二つ目の測定方法は少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、再び少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返す。この操作を粉末が予め定めた容積を占めるまで繰り返す。容積は10mL以上とすることが好ましい。上記の方法で詰めた粉末の重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(cm))を触媒体の凝集体のかさ密度とする。
本発明においてカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体が0.1〜1重量%の範囲で8族から10族の遷移金属を含むことが好ましい。遷移金属量は、多いほどカーボンナノチューブ含有組成物の収量が上がるが、多すぎると遷移金属の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。遷移金属量が少ないと、カーボンナノチューブ製造用触媒体上の遷移金属の粒子径が小さくなり、細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な遷移金属量は、触媒体の細孔容量や外表面積、触媒体の調製方法によって異なるが、触媒体に対して0.1〜1質量%の遷移金属量にすることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜0.6質量%である。中でも、Fe, Co,Ni,Pd,Pt,Rh等が特に好ましく、さらに好ましくは、Fe,Co,Niが用いられる。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。また遷移金属は微粒子であることが好ましい。微粒子とは粒径が0.5〜10nmであることが好ましい。金属が微粒子であると細いカーボンナノチューブが生成しやすい。金属は1種類だけを含んでいても、2種類以上を含んでいてもよい。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。2種類の金属を担持させる場合は、Fe, Co,Ni,Pd,Pt,Rhから選択される金属と選択されたそれ以外の金属の組み合わせが特に好ましい。FeとCo,Ni,V,Mo,Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。
本発明においてカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体は担体としてマグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアのうち少なくとも1種類を含むことが好ましく、特に限定されないがマグネシアが担体除去の点で好ましく用いられる。ここでマグネシアとは、特に限定しないが、窒素によるBET比表面積が10〜50 m/gのもので、形状が微粒子状のものが好ましい。
カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の製造方法は、特に限定されない。例えば、遷移金属の金属塩を溶解させた非水溶液中(例えばメタノール溶液)又は水溶液中に、マグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアなどの担体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させる。またその後、大気中あるいは窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中あるいは真空中で高温(100〜600℃)で加熱してもよい(含浸法)。あるいは遷移金属の金属塩を溶解させた水溶液中に、マグネシアなどのMg化合物を担体として含浸して十分に分散混合し、加熱加圧下(100〜200℃、4〜15kgf/cm)で反応させた後に、大気中あるいは窒素などの不活性ガス中で、高温(400〜700℃)で加熱しても良い(水熱法)。水熱法によるカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の製造方法は、8族〜10族の遷移金属化合物とMg化合物を水中で混合撹拌し、該混合液を加熱、加圧による水熱反応で触媒前駆体が得られ、該触媒前駆体を特定の温度で加熱することで得られる。水熱反応を行うことで、遷移金属化合物とMg化合物がそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由して複合水酸化物となる。これにより遷移金属が水酸化Mg中に高度に分散された状態の触媒前駆体になる。
このときの遷移金属化合物としては硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、クエン酸アンモニウム塩、アセチルアセトネート、酸化物および水酸化物が好ましく、クエン酸アンモニウム塩、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩がより好ましい。なかでもクエン酸鉄(III)アンモニウム、硝酸鉄が好ましく用いられる。
Mg化合物としては硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酸化物および水酸化物が好ましく、酸化物がより好ましい。
遷移金属化合物とMg化合物の使用量は、遷移金属化合物中の金属成分量が、Mg化合物のMgO換算量に対して、0.1〜1質量%となるよう混合しておくことが単層および/または2層を含有する比較的細いカーボンナノチューブを製造しやすい点で好ましく、より好ましくは0.2〜0.6質量%の範囲である。上記範囲より金属成分量が多い場合には、担持される金属粒子の粒子径が大きくなり、得られるカーボンナノチューブも太くなる傾向にあるため、比較的細いカーボンナノチューブを製造しようとする場合には注意を要するが、水熱反応後、加熱して薄片状MgO触媒体を製造する場合には、直接Mg0に金属化合物を担持する場合に比較して金属粒子の粒度のバラツキも少なく、比較的直径の揃った多層のカーボンナノチューブを得ることができる。
また水とMg化合物はモル比で4:1〜100:1で混合することが好ましく、より好ましくは9:1〜50:1であり、更に好ましくは9:1〜30:1である。
尚、遷移金属化合物とMg化合物はあらかじめ混合、濃縮乾固したものを水中で混合撹拌して水熱反応を行っても良いが、工程を簡略化するために、遷移金属化合物とMg化合物を直接水中に加えて、水熱反応に供することが好ましい。
水熱反応は加熱、加圧下で行われるが、オートクレーブなどの耐圧容器中でけん濁状態を含む混合水を100℃〜250℃の範囲で加熱し、自生圧を発生させることが好ましい。加熱温度は100〜200℃の範囲がより好ましい。尚、不活性ガスを加えて圧力をかけてもかまわない。本発明のカーボンナノチューブ製造用触媒体の製造方法において、水熱反応時の加熱時間は加熱温度と密接に関係しており、通常は30分〜10時間程度で行われ、温度が高いほど短時間で水熱反応は短くてすむ。例えば250℃で行う場合は30分〜2時間が好ましく、100℃で行う場合は2〜10時間が好ましい。
水熱反応後はスラリー状のけん濁液になっており、回収方法はこだわらないが、好ましくは濾過あるいは遠心分離することにより、容易に触媒前駆体を回収することができる。より好ましくは濾別であり、吸引濾過または自然濾過のどちらで行ってもかまわない。従来のカーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の製造方法は、一般に遷移金属化合物をMgOへ担持した際に濃縮乾固あるいは蒸発乾固させて製造されている。これは濾過した際には、溶解したMgOに未吸着の遷移金属化合物も濾別されてしまい、所定量MgOに担持することができないためである。一方、本発明の触媒前駆体は水熱反応を行うことで、遷移金属化合物とMg化合物がそれぞれ加水分解され、脱水重縮合を経由した複合水酸化物となる。これにより遷移金属が水酸化マグネシウム中に高度に分散された状態となり、水中に未反応の遷移金属化合物はほとんどなく、エネルギー消費量の少ない濾過あるいは遠心分離が可能となる。濾過あるいは遠心分離にて脱水させる際、触媒の含水分率を制御することでかさ密度の制御が可能となる。
水熱処理後、固液分離した触媒前駆体は遷移金属とMgの複合水酸化物であり、加熱することにより遷移金属とMgの複合酸化物となる。加熱は大気または窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス中で行うことができ、400〜1000℃の範囲で加熱することが好ましく、400〜700℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は1〜5時間の範囲で行うことが好ましい。加熱前の触媒前駆体は水酸化Mgが主体であるため、薄片状の1次構造をとっている。加熱温度が高すぎると脱水の際に焼結が起こり、薄片状の2次構造を維持できず、球形あるいは立方体、直方体の構造をとってしまい、遷移金属がMgO内部に取り込まれ、カーボンナノチューブの合成に際しては不効率となる可能性がある。
本発明において、炭素含有化合物は、特に限定されないが、好ましくは炭化水素がよい。炭化水素は非芳香族であっても、芳香族であってもよい。非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、エタノール、メタノール、プロパノール、又はこれらの混合物などを使用することができる。また芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、又はこれらの混合物などを使用することができる。これらの中でも、特に単層または二層カーボンナノチューブを作りやすいメタン、エタン、エチレン、アセチレン、エタノールが好ましく、メタンが最も好ましい炭素含有化合物である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例中、カーボンナノチューブの合成と各種物性評価は以下の方法で行った。
[カーボンナノチューブの評価方法]
(熱重量分析によるカーボンナノチューブの純度評価)
約1mgの試料を熱重量分析装置(島津製作所製 TGA-60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの重量変化を測定し、重量減少曲線を時間で微分することにより微分熱重量曲線(DTG)(x軸を温度(℃)、y軸をDTG(mg/min))とした。通常の精製をしたカーボンナノチューブ含有組成物はDTG曲線において高温側と低温側に二つの燃焼ピークが現れることが多い。本発明においては高温側の燃焼ピークは600〜850℃である。このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(H)とする。低温側の燃焼ピークとは350℃〜高温側の燃焼ピークへと変化する変曲点までにあり、このピークのピーク面積に相当する範囲の重量減量分をTG(L)とする。なお、変曲点が存在しない場合には350℃〜600℃の範囲の重量減量分をTG(L)とする。TG(L)はアモルファスカーボンなどのカーボンナノチューブ以外の炭素不純物がカーボンナノチューブに付着したものと考えられる。炭素不純物の割合が大きいほどTG(L)が大きくなり、カーボンナノチューブの割合が大きいほどTG(H)が大きくなる。TG(H)を(TG(H)+TG(L))で割ることでカーボンナノチューブ含有組成物の純度として表現することができる。
(ラマン分光分析によるカーボンナノチューブの性状評価)
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF-300)に粉末試料を設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。1300cm−1付近のピークをD、1600cm−1付近のピークをGとして、GとDの高さ比をG/D比とした。測定に際しては3箇所、別の場所にて分析を行い、G/D比はその相加平均で表した。これはカーボンナノチューブの結晶化度を示す値であり、G/D比が大きいほどカーボンナノチューブの結晶性が良いと判断できる。
(かさ密度の測定方法)
50mLメスシリンダーを測定容器として用いた。一つ目の測定方法は、予め定めた重量の粉末を加えた後、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した。目視にて粉末が占める容積値の変化率が±0.2mL以内であれば、操作を終了するが、容積値が目視にて±0.2mL以上の変化があれば、再度メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返し、目視にて粉末が占める容積値に±0.2mL以上の変化がないことを確認して操作を終了した。二つ目の測定方法は少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した後、再び少量の粉末を加え、メスシリンダーの底を床面1cmの高さから落とすことを20回繰り返した。この操作を粉末が予め定めた容積を占めるまで繰り返した。上記の方法で詰めた粉末の重量を粉末が占める容積で割った値(=重量(g)/体積(cm))を触媒体の凝集体のかさ密度として、二つの測定方法の平均をとった。
[実施例1]
(触媒調製)
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.7kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製 MJ−30)を約1000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。密閉した状態で撹拌しながら、160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳棒で細粒化しながら、0.85〜2.36mmの範囲の粒径を回収した。なお、篩いはアズワン(株)製5−3291シリーズを用いた。得られた触媒体の凝集体中、2.0〜2.36mmの範囲の粒径は27.5%含まれていた。この27.5%は、2.0mmの篩いと2.36mmの篩いの間でとどまった触媒体の凝集体(以下「顆粒状触媒体」と称することもある)の重量を全顆粒状触媒体(0.85〜2.36mmの範囲)の重量で割って算出した。0.85〜2.36mm左記の顆粒状触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。得られた触媒体の凝集体のかさ密度(d)は0.28g/cmであった。0.85〜2.36mmの範囲の0.85mm、1.00mm、1.18mm、1.40mm、1.70mm、2.00mm、2.36mmの篩い(アズワン(株)製5−3291シリーズ)を用いて、それぞれの篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を重量から算出した。そして、触媒体の凝集体を球体と仮定して各篩い間の平均粒径を用いて算出した体積と各篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を用いて算出した体積平均(V)は3.2×10−2cmであった。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)により触媒体に含まれる鉄含有量を分析した結果、0.40質量%であった。
(カーボンナノチューブ含有組成物製造)
図1に示した装置を用いてカーボンナノチューブの合成を行った。反応器103は内径75mm、長さは1100mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板102を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ラインである混合ガス導入管108、上部には廃ガス管106を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器として3台の電気炉101を具備する。また反応管内の温度を検知するために温度計105を具備する。
調製した固体触媒体(触媒体の凝集体)132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層104を形成した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けてマスフローコントローラー107を用いて窒素ガスを21.6L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにマスフローコントローラー107を用いてメタンガスを1.0L/minで46分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。この際のメタンを含むガスの線速(v)は8.55cm/secであった。このときのVd/vは10.8×10−4g・sec/cmであった。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを21.6L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却した。加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒体とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ含有組成物を取り出した。
(精製工程:液相酸化処理+アンモニア処理+硝酸ドープ)
得られたカーボンナノチューブ含有組成物が付着した触媒担体を約130g用いて4.8Nの塩酸水溶液2000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を2回繰り返した(脱MgO処理)。その後、イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物の乾燥重量分に対して、約333倍の重量の濃硝酸(キシダ化学 1級 Assay60%)を添加した。その後、約140℃±4℃に加熱したオイルバスで約24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、室温まで放冷し、カーボンナノチューブ含有組成物を含む硝酸溶液をイオン交換水で3倍に希釈して、ミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを28%アンモニア水溶液(キシダ化学 特級)0.3Lに添加し、室温下で1時間撹拌した。その後、該溶液をミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄し、水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ組成物を得た。
得られたカーボンナノチューブ含有組成物の含むウェットケークを60%硝酸水溶液(キシダ化学 1級 Assay60%)0.3L中に添加した。室温で24時間撹拌した後にミリポア社製オムニポアメンブレンフィルター(フィルタータイプ:1.0μmJA)をしいた内径90mmろか器を用いて吸引濾過した。その後メンブレンフィルター上のウェットケークが中性付近になるまでイオン交換水で洗浄した。水を含んだウェット状態のままカーボンナノチューブ含有組成物を保存した。このカーボンナノチューブ含有濾取物の一部を採取し、120℃で加熱乾燥を一晩行い、乾燥前後の重量からウェット中のカーボンナノチューブ含有組成物の濃度を算出した。
得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで7.11gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:3.94質量%)。乾燥重量では0.280gであった。
熱重量分析を行った結果、カーボンナノチューブ含有組成物(カーボンナノチューブの純度)はTG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.850であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、カーボンナノチューブ含有組成物のG/D比は68であった。
[実施例2]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体の凝集体は篩いにより0.85〜2.0mmの範囲の粒径を回収した。触媒体の凝集体のかさ密度(d)は0.29g/cmであり、触媒体の凝集体を球体と仮定して、各篩い間の平均粒径を用いて算出した体積と各篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を用いて実施例1と同様に算出した体積平均(V)は1.8×10−2cmであった。また、EDX分析結果から鉄含有量は0.46質量%であった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体の凝集体を用いて行った。窒素ガスは21.6L/min供給させ、メタンガスは1.0L/minを46分間導入した。この際のメタンを含むガスの線速(v)は8.55cm/secであった。このときのVd/vは6.0×10−4g・sec/cmであった。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで5.48gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:4.71質量%)。乾燥重量では0.258gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.868であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は64であった。
[実施例3]
実施例1で得られた触媒体の凝集体を用いて、実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作を行った。窒素ガスは19.0L/min供給させ、メタンガスは0.9L/minを52分間導入した。この際のメタンを含むガスの線速(v)は7.55cm/secであった。このときのVd/vは11.9×10−4g・sec/cmであった。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで5.88gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:4.13質量%)。乾燥重量では0.243gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.855であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は78であった。
[比較例1]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体は0.5〜0.85mmの範囲の粒径を回収した。触媒体の凝集体のかさ密度(d)は0.30g/cmであり、前記測定方法、すなわち触媒体の凝集体を球体と仮定して、各篩い間の平均粒径を用いて算出した体積と各篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を用いて実施例1と同様に算出した体積平均(V)は1.5×10−2cmであった。また、EDX分析結果から鉄含有量は0.32質量%であった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体を用いて行った。窒素ガスは16.5L/min供給させ、メタンガスは0.8L/minを60分間導入した。この際のメタンを含むガスの線速(v)は6.55cm/secであった。このときのVd/vは0.7×10−4g・sec/cmであった。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで5.92gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:4.07質量%)。乾燥重量では0.241gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.908であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は66であった。
[比較例2]
実施例1と同様の触媒調製操作を行った。触媒体は0.85〜4.0mmの範囲の粒径を回収した。触媒体の凝集体のかさ密度(d)は0.27g/cmであり、触媒体の凝集体を球体と仮定して、各篩い間の平均粒径を用いて算出した体積と各篩い間の触媒体の凝集体の存在比率を用いて比較例1と同様に算出した体積平均(V)は15×10−2cmであった。また、EDX分析結果から鉄含有量は0.46質量%であった。
実施例1と同様のカーボンナノチューブ含有組成物製造装置・操作で上記触媒体を用いて行った。窒素ガスは21.6L/min供給させ、メタンガスは1.0L/minを46分間導入した。この際のメタンを含むガスの線速(v)は8.55cm/secであった。このときのVd/vは47.6×10−4g・sec/cmであった。
実施例1と同様の精製処理を行った。最終的に得られたウェット状態のカーボンナノチューブ含有組成物全体の重量は触媒体100g当たりで2.01gあった(カーボンナノチューブ含有組成物濃度:5.17質量%)。乾燥重量では0.104gであった。
実施例1と同様に熱重量分析を行った結果、TG(H)/(TG(L)+TG(H))=0.732であった。また、カーボンナノチューブ組成物の波長532nmによるラマン分光分析の結果、G/D比は33であった。
Figure 0005807455
101 電気炉
102 石英焼結板
103 反応器
104 触媒層
105 温度計
106 廃ガス管
107 マスフローコントローラー
108 混合ガス導入管

Claims (6)

  1. カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体と炭素含有化合物を加熱反応領域で接触させてカーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法であって、
    (1)カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体が2mmをこえて3mm以下の粒径の凝集体を25質量%以上含み、凝集体を球体と仮定して算出した体積が0.2×10−2〜10×10−2cmの範囲であり、かつ
    (2)下記の式の値が1×10−4〜40×10−4g・sec/cmの範囲であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
    カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の体積平均(V)(cm)×かさ密度(d)(g/cm)/カーボンナノチューブ含有組成物製造時のガス線速(cm/sec)
  2. 前記カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体の凝集体の粒径が0.85mmをこえて3mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  3. 炭素化合物を含むガスの線速が8cm/secをこえて10cm/sec以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  4. 前記含有組成物カーボンナノチューブ製造用触媒体の凝集体のかさ密度が0.1〜0.3g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  5. 前記カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体が0.1〜1質量%の範囲で8〜10族の遷移金属を含むことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
  6. 前記カーボンナノチューブ含有組成物製造用触媒体がマグネシア、アルミナ、シリカ、ゼオライト、カルシア、チタニアのうち少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
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