JP5029171B2 - カーボンナノチューブ集合体の製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ集合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はカーボンナノチューブ集合体の製造方法に関する。
カーボンナノチューブはグラファイトシートを筒状に巻いた形状をしており、グラフェンシート1層からなるものを単層カーボンナノチューブ(SWNT)、2層以上からなるものを多層カーボンナノチューブ(MWNT)、そのうち特に2層からなるものを2層カーボンナノチューブ(DWNT)と区別して呼ぶことが多い。
カーボンナノチューブは、その理想的な一次元構造に起因する様々な特性、例えば良電気導電性、熱伝導生や力学強度などによって様々な工業的応用が期待されている物質であり、直径、層数、長さを制御することにより、それぞれの用途での性能向上および応要性の広がりも期待されている。
公知のカーボンナノチューブの製造方法としては、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(CVD(Chemical Vapor Deposition)法)などによる合成が知られている。こうした製造方法では、従来、カーボンナノチューブの直径、長さおよび層数を制御するのが非常に困難ではあったが、最近では、直径、長さ、層数を選択的に合成できるようになりつつあり、化学気相成長法では、カーボンナノチューブの層数を単層、2〜5層に制御して製造出来ることが知られている(非特許文献1、特許文献1参照)。
しかしながらレーザーアブレーション法やCVD法によって製造されたカーボンナノチューブは、合成時に不純物としてアモルファスカーボンや粒子状のカーボンなど、カーボンナノチューブ以外のものも混ざってくるため、選択的に製造されたカーボンナノチューブをそのまま工業的に利用できないことが多く、精製が必要となる。
精製方法としては、酸化性、還元性を有する気体に高温でさらす方法や、強酸を用いて合成時に使われた触媒を取り除く方法(特許文献2)が知られているが、酸化性、還元性を有する気体に高温でさらす方法では、単層カーボンナノチューブを精製する際にカーボンナノチューブに欠損が生じるという問題があり、強酸を用いた精製方法ではカーボンナノチューブの官能基化がおこる問題がある。また、空気中、約500℃で1時間処理した後、約120℃の硝酸に約12時間露出し、約80℃の温度で約24時間過酸化水素水に露出し、さらに塩酸で処理する方法も記載されているが、一般に、強酸を用いて高温で長時間処理したり、過酸化物で長時間処理した場合、最終的に得られるカーボンナノチューブは官能基が多く、欠損も多いものとなる問題がある。同文献では官能基を取り除くために、最後の工程として減圧下でのアニーリングをおこなっており、純度の高いカーボンナノチューブを得るために非常に多くの工程を必要としている。
また、一方、強酸は精製のみならず、カーボンナノチューブの改質に使われることもある。例えば特許文献3では、強酸を用いて単層カーボンナノチューブの官能基化を積極的に行っており、非特許文献2では強酸によってカーボンナノチューブの官能基化と共にカーボンナノチューブの切断が起こっているため、結果としてアスペクト比の小さいカーボンナノチューブが得られている。
さらに、強酸中で超音波処理することにより、多層カーボンナノチューブのグラフェンシートを取り除き、直径を制御する例(特許文献4)も報告されている。しかし、同文献に具体的に開示された強酸を用いた直径の制御手段は、反応条件が強すぎるため、層1枚分だけ小さくするといった精密なコントロールが非常に困難であり、具体的に示された方法では、20層以上の層が除去されてしまう(カーボンナノチューブの層間距離を0.34nmとして処理前後の平均直径から計算)など、1層分取り除くように制御するのが困難である。さらにはグラフェンシートを除いた後のカーボンナノチューブの外層の官能基化も進行する問題もある。
一般に、単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブは、3層以上の多層カーボンナノチューブとは異なる特性を示すことが多く、純度の高い単層または2層カーボンナノチューブを製造できることは、産業的に非常に有用なことである。
また、用途によってはカーボンナノチューブの直径は細ければ細いほど性能の向上が期待される場合もあるが、特に層数の少ないカーボンナノチューブに対し、上記に示した精製方法や、改質方法をそのまま適用すると、消失したり、酸化により外層の構造が大きく害されるため、欠損の少ない単層または2層カーボンナノチューブや、官能基化の少ない単層または2層カーボンナノチューブを得ることは困難であり、特に直径2nm以下の単層カーボンナノチューブは、上記した従来の精製法では欠損や官能基化を受けやすいため、屈曲のない、欠損の少ない直径2 nm以下の純度の高い単層カーボンナノチューブを選択的に製造することは非常に困難であった。
特願2004−123505号公報 特表2005−505481号公報 特開2004−168570号公報 特開2005−154200号公報 ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Letters)360(2002),229-234 ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of American Chemical Society)128(2006), 95-99
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、多層カーボンナノチューブの内層の欠損を抑制しながら外層を1層はがすことにより、品質、純度の高いカーボンナノチューブ集合体を製造することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、気相中で酸化性または還元性の気体にさらした時と、液相酸化処理による工程での反応機構の違いによる反応性の差を利用することにより、カーボンナノチューブの内層を欠損が抑えられた状態で取り出すことが可能となることを見出した。
すなわち本発明は、気相処理工程(第一工程)を経た後、液相酸化処理による工程(第二工程)を経ることによって多層カーボンナノチューブの外層を1層取り除くカーボンナノチューブ集合体の製造方法であって、気相処理工程が、カーボンナノチューブ集合体の示差熱分析での燃焼温度ピーク−50℃以上で、酸化性または還元性を有する気体の存在下にカーボンナノチューブ集合体をさらす工程であることを特徴とするカーボンナノチューブ集合体の製造方法である。
本発明により、多層カーボンナノチューブの内層の欠損が抑制されたまま外層をおおむね1層はがすことにより、品質、純度の高いカーボンナノチューブ集合体が製造できるようになった。
さらに本発明の方法で2層カーボンナノチューブ等層数の少ないカーボンナノチューブの外層を1層取り除くことにより、純度、品質のよいカーボンナノチューブが得られるようになり、このカーボンナノチューブ分散液を用いることで、非常に簡便に高導電性で透過性にすぐれた透明導電性フィルムが得られるようになった。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブ、その中で特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブの形態は、高分解能透過型電子顕微鏡で調べることができる。グラファイトの層は、透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるほど好ましいが、グラファイト層は乱れていても構わない。グラファイト層が乱れたものは、カーボンナノファイバーと定義することがあるが、このようなカーボンナノファイバーも本発明においてはカーボンナノチューブに含むものとする。本発明のカーボンナノチューブ集合体とは、多層カーボンナノチューブの最外層が一枚はがされた結果生じる単層および多層カーボンナノチューブを含む集合体の製造方法である。
本発明においてカーボンナノチューブ集合体とは、複数のカーボンナノチューブが存在している総体(集合体)を意味し、存在形態は特に限定されず、それぞれが独立で、あるいは束状、絡まり合うなどの形態あるいはこれらの混合形態で存在していてもよい。また、種々の層数、直径のものが含まれていてもよい。また、分散液や他の成分を配合した組成物中、あるいは他の成分と複合した複合体中に含まれる場合でも複数のカーボンナノチューブが含まれていればこれら複数のカーボンナノチューブについて、カーボンナノチューブ集合体が含まれていると解する。
本発明における気相処理工程(第一工程)は、同処理工程に供する多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体の示差熱分析での燃焼温度ピーク−50℃以上の温度で、酸化性または還元性を有する気体の存在下にカーボンナノチューブ集合体をさらす工程である。上記還元性または酸化性の気体とは、処理温度にカーボンナノチューブ集合体をさらしたときに、カーボンナノチューブ集合体に対して酸化性または還元性を示す気体であれば特に制限はないが、酸化性を示す気体としては、一酸化炭素、二酸化炭素、オゾン、酸素、または空気などが挙げられ、還元性を示す気体としては、水素などが挙げられる。
気体の組成はこれら気体の混合気体であっても、その他カーボンナノチューブ集合体に対して酸化性、還元性を示さない気体(不活性ガス)が混合されていてもかまわない。
本発明において、第一工程は、同工程に供する多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体を示差熱分析したときのカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−50℃以上の温度で行うが、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピークの低温側の裾野に当たる温度が燃焼温度ピーク−50℃以上の温度である場合は、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピークの低温側の裾野に当たる温度以上の温度で前記気体にさらすことが好ましい。また、カーボンナノチューブは通常石英管を反応管として合成される場合が多く、第一工程を反応管中でおこなう場合は、1200℃以下であるのが好ましく、より好ましくは1000℃以下でおこなうのが好適である。1200℃を越える温度でおこなう場合は使用する装置の材質を適宜選択することが望ましい。
本発明においてはこの第一工程で原料となるカーボンナノチューブ集合体を前記気体にさらすことによって、合成時に生成した屈曲や欠損の多い単層カーボンナノチューブの一部または全部が消失するため、この工程を経たカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブの割合が増加した集合体となる。またそれと同時に多層カーボンナノチューブの外層に欠損が生じると考えられる。
また、酸化性または還元性を有する気体にカーボンナノチューブ集合体をさらす工程でカーボンナノチューブが全て消失してしまうことを防ぎつつ、カーボンナノチューブ外層に欠損を生じさせるには、前記温度で処理を行う場合、前記気体に不活性ガスを混合することによって希釈するか、減圧状態で用いる、または、不活性ガスを混合した前記気体を減圧して使用することが好ましく、不活性ガスは2種類以上混合してもかまわない。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素などが挙げられ、なかでも汎用性の点から窒素を用いるのが好ましい。
前記温度でさらした時、カーボンナノチューブ集合体が全て消失してしまわない濃度であれば、濃度に特に制限はないが、濃度に応じて温度と時間を調整する必要があり、濃度が高いほど、温度が低く、濃度が低いほど温度は高く設定するのが好適である。濃度、温度、時間の調整は、カーボンナノチューブ集合体の減少量が前記気体にさらす前と比べて1重量%から99重量%となる様に調整するのが好ましく、減少量が5重量%から99重量%となる様調整するのがより好ましく、さらに好ましくは、減少量が10重量%から99重量%となる様調整するのが好適であり、最も好ましくは減少量が20重量%から99重量%となるように調整するのが好適である。
酸化性または還元性を有する気体として水素、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素を用いる場合、前記温度でさらした時、カーボンナノチューブ集合体が全て消失してしまわない濃度であれば、濃度に特に制限はないが、安全性の観点から水素を用いる場合、減圧して用いるか、4vol%以下の水素濃度になるよう不活性ガスを混合して用いるか、またはその混合気体を減圧して用いるのが好ましい。一酸化炭素、二酸化炭素を用いる場合には特に制限はないが、オゾンを用いる場合、減圧とするか、10vol%以下のオゾン濃度になるよう不活性ガスを混合するか不活性ガスを混合後、減圧にして使用するのが好ましく、酸素を用いる場合、減圧とするか、21vol%以下の濃度になるよう不活性ガスを混合するか不活性ガスを混合して減圧にして使用するのが好ましい。
より好ましくは、前記酸化性、還元性を示す気体として空気を用いるのが好適であり、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−50℃以上の温度で空気にさらすのが好適である。ただし、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピークの低温側の裾野に当たる温度が燃焼温度ピーク−50℃以上の温度である場合は、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピークの低温側の裾野に当たる温度以上の温度で前記気体にさらすのがより好ましい。更に好ましくは、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−50℃以上、燃焼温度ピークに当たる温度以下の温度範囲で空気にさらすのが好適である。ただし、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピークの低温側の裾野に当たる温度が燃焼温度ピーク−50℃以上の温度である場合は、示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピークの低温側の裾野に当たる温度以上、燃焼温度ピークに当たる温度以下の温度範囲で空気にさらすのが好適である。最も好ましくは「示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−10℃の±5℃の温度範囲、すなわち示差熱分析でカーボンナノチューブの燃焼温度ピーク−15℃以上燃焼温度ピーク−5℃の温度範囲で空気にさらすのが好適である。ただし、空気を不活性ガスで希釈した場合や、減圧下で用いる場合にはこの限りではなく、空気の濃度に応じてさらす温度と時間を調整する必要がある。
本発明における液相酸化処理による工程(第二工程)は、カーボンナノチューブ集合体を酸化剤の溶けた液体に浸すことによってカーボンナノチューブの外層を酸化してはがす工程である。液相酸化処理の工程における処理温度は、カーボンナノチューブの外層を一層剥がすのに十分な温度で行われるが、後述のとおり酸化剤の種類、処理時間等によっても異なるが、通常40℃以上の範囲で選択され、特に80℃±10℃の範囲で行うことが好ましい。
カーボンナノチューブ集合体に対して酸化性を有する酸化剤であれば、特に制限はないが、ここでいう酸化剤としては有機過酸化物、無機過酸化物、硝酸含有物などが挙げられる。上記有機過酸化物としてはベンゾイルペルオキシド、メタクロロベンゾイルペルオキシド、トリフルオロ酢酸ペルオキシドなどが挙げられ、無機過酸化物としては過マンガン酸カリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、過酸化水素、過塩素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸などが挙げられ、硝酸含有物としては硝酸、硝酸と硫酸からなる混酸、またはこれらの希釈物などが挙げられる。また、混合することで前記酸化物を生じる試薬を用いてもかまわないし、前記酸化物の他にカーボンナノチューブ集合体に酸化性を示さない物が含まれていてもかまわない。
好ましくは、無機過酸化物または硝酸含有物を液相酸化処理に用いるのが好適であり、より好ましくは硝酸含有物を用いるのが好適であり、好ましい硝酸濃度は55重量%から75重量%であり、より好ましくは60重量%から70重量%の物を用いるのが好適である。もっとも好ましくは硝酸と硫酸からなる混酸を用いるのが好適である。混酸として用いる硫酸濃度は90重量%以上であるのが好ましく、94重量%以上であるのがより好ましい。混酸中の硝酸と硫酸の比率については60重量%から70重量%の硝酸と94重量%以上の硫酸を用いる場合は硝酸に対して硫酸を容量ベースで1〜9倍用いるのが好ましく、より好ましくは硝酸に対して硫酸を容量ベースで2〜5倍用いるのが好適である。
酸化剤の種類、濃度、処理温度、処理時間については、カーボンナノチューブ集合体の外層が1層はがせる程度に調整せねばならない。外層を1層はがせる程度に液相酸化処理を行う方法は、酸化剤の種類、濃度、処理温度、処理時間により異なり一概にいえないが、具体的には、例えば硝酸(硝酸濃度61重量%)と硫酸(硫酸濃度95重量%)を混合した混酸を用いる場合は、40℃以上でおこなうのが好ましく、より好ましくは40℃から120℃でおこなうのが好適であり、さらに好ましくは60℃から110℃でおこなうのが好適である。最も好ましくは80℃±10℃でおこなうのが好適である。
処理時間は概ね30分〜8時間程度で行われるが、処理温度と酸化剤の濃度に応じて調整し、温度が高いときは短く、温度が低いときは長く設定し、酸化剤の濃度が高いときは処理時間が短く、酸化剤の濃度が低いときは処理時間を短く設定する。
また、前記酸化剤は好適にはカーボンナノチューブの炭素量よりもモル比が過剰になるように用いるのが好ましい。具体的には、硝酸(硝酸濃度60〜75重量%)と硫酸(硫酸濃度90〜99重量%)からなる混酸を用いた場合では、カーボンナノチューブ集合体の炭素量(モル数、なお、ここでいうモル数は、処理に供するカーボンナノチューブ集合体が100%炭素で構成されていると仮定した場合のモル数である)に対してHNOのモル数が2倍から3倍となるように混酸を使用するのが好ましく、より好ましくは4倍から7倍、最も好ましくは8倍以上となるように調整するのがよい。
濃硝酸をそのまま用いる場合など、上記濃硝酸と濃硫酸からなる混酸よりも酸化力の弱い酸化剤を用いる場合は温度を混酸より高く設定する必要があるが、処理時間は一層はがれたカーボンナノチューブの外層をさらに攻撃したり、一層はがれたカーボンナノチューブそのものが消失してしまわないように調整する。その他酸化剤についても、混酸より酸化力の弱いものを用いる場合は温度を高く設定し、混酸より酸化力の強い物を用いる場合は温度をより低く設定し、処理時間もそれに応じて調整する。
本発明の製造方法に供する多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体(以下、原料カーボンナノチューブ集合体と称する場合もある)は、特に限定されるものではなく、種々の方法で製造することができる。なかでも、合成の容易さと、収率の点から触媒化学気相成長法で製造したカーボンナノチューブを用いることが好ましい。
触媒化学気相成長法のより具体的な方法として、500〜1200℃の高温条件下で固体触媒と炭素含有化合物を接触させる方法が好ましい。
固体触媒を構成する触媒金属の種類としては、元素周期表に定められた1族〜16族より選ばれる典型金属元素、遷移金属元素を少なくとも1種類以上含む金属元素を挙げることができる。中でも、触媒金属としては、Co、Fe、Niが好ましい。これらの金属を少なくとも1種類以上用いることで、グラファイト層の欠陥が比較的少ないカーボンナノチューブを、収率良く合成することが可能となり好ましい。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定はできるが、反応中の状態を調べる手段がないので、広く金属を含む化合物または金属種という意味で解釈してよい。
また、炭素含有化合物としては、気体、液体、固体いずれでも良いが、500〜1200℃の高温条件下でガス状となり固体触媒と接触することが、収率良くカーボンナノチューブが得られることから好ましい。炭素含有化合物の種類としては、炭素原子を含有していれば特に限定はないが、通常は一酸化炭素や炭化水素化合物であり、脂肪族であっても芳香族であってもよく、炭素−炭素結合も飽和結合であっても不飽和結合を含んでいても良い。これらは、単独で使用しても、混合して使用しても構わない。
芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン又はこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレンもしくはアセチレン、又はこれらの混合物等を使用することができる。炭化水素では、酸素を含むもの、例えばメタノール若しくはエタノール、プロパノール、ブタノールのなどのアルコール類、アセトンのなどのケトン類、及びホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドのなどのアルデヒド類、トリオキサン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類又はこれらの混合物であってもよい。
炭素含有化合物は、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム等の不活性ガスとの混合物を用いても、単独で用いても構わないが、固体触媒に炭素ガスが供給される反応場は、不活性ガス、または真空雰囲気下(減圧下)であることが、収率良くカーボンナノチューブが得られることから好ましい。
固体触媒と炭素含有化合物を接触させる温度は、500〜1200℃、好ましくは600〜1000℃である。温度が低いと収率良くカーボンナノチューブを得ることが困難になり、温度が高いと使用する反応器の材質に制約が生じる。
固体触媒と炭素含有化合物の接触のさせ方は特に限定されない。例えば、固体触媒を加熱炉内に保持し、炭素含有化合物を加熱炉内に供給して加熱炉内で接触させる方法や、固体触媒を加熱炉で流動させ、炭素含有化合物を加熱炉内に供給して加熱炉内で接触させる方法などがある。
さらに、上記カーボンナノチューブの製造方法において、固体担体に金属が担持された形態を特徴とする固体触媒を用いることで、直径の制御されたカーボンナノチューブを製造することができ好ましい。
固体担体としては有機物でも無機物でも良いが、耐熱性の観点から無機物が好ましい。無機の固体担体としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどを挙げることができる。中でも触媒金属が均一に担持できる無機多孔体が好ましい。無機多孔体の中でも、特に、酸性あるいはアルカリ性水溶液と接触させることで、溶解またはコロイド状に分散するなどして、容易にカーボンナノチューブと固液分離できるものが好ましい。その理由は、無機多孔体と触媒金属をいっしょに除去できることから必要な精製工程が簡素化でき、低コスト化できることによる。特に酸化マグネシウム、ゼオライトが好ましく、その理由は後述するが、品質の良いカーボンナノチューブが収率良く得られることによる。
固体担体の触媒金属の担持量は、固体担体に対し好ましくは0.1重量%〜10.0重量%、より好ましくは0.5重量%〜5.0重量%であることが、直径の制御されたカーボンナノチューブを選択的に得られることから好ましい。
固体担体への触媒金属の担持方法は特に限定されない。担持したい金属塩を溶解させた水や非水溶液中(例えばエタノール溶液)に、固体担体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ、空気中や不活性ガス中高温(300〜600℃)で加熱することによって、固体担体表面に金属を担持することができる含浸法や、金属塩の水溶液またはアルコール量をなるべく少なくし、固体担体の細孔内に、該水溶液を吸着させ、余分な水溶液またはアルコールをろ過などで除去して乾燥させる平衡吸着法や、金属カチオンと固体担体のカチオンを水溶液中で交換するイオン交換法などが用いられる。また、含浸法や平行吸着法によって固体担体に金属塩を担持させた後に乾燥させ、窒素、水素、不活性ガスまたはその混合ガス中高温(300〜900℃)で加熱することにより、担体の結晶表面に金属を担持させることもできる。金属塩を担持した後、空気中で焼成して金属酸化物にすることもできる。
上記の方法で用いる金属塩は特に限定されない。硝酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩、エチレンジアミン4酢酸錯体やアセチルアセトナート錯体のような錯塩、金属のハロゲン化物、有機錯塩などが用いられる。
また、固体担体に酸化マグネシム、ゼオライトを用いることが、グラファイト層の欠陥が少ない、外径が3nm以下であるようなカーボンナノチューブ、例えば単層や2層のカーボンナノチューブを主成分とするカーボンナノチューブを含有する集合体を製造することができ好ましい。酸化マグネシウムは精製時に塩酸を使用したとき、生じるマグネシウム塩の水溶性が高く、カーボンナノチューブとの分離がし易いため、特に好ましい。
ゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有した結晶性無機酸化物である。分子サイズとは、世の中に存在する分子のサイズの範囲であり、一般的には、0.2から2nm程度の範囲を意味する。さらに具体的には、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートの種類は特に制限がなく、例えば、アトラス オブ ゼオライト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、1996)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites, 17(1/2), 1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性物質が挙げられる。また、本文献に掲載されているものに限定されるものではなく、近年次々と合成されている新規な構造を有するゼオライトも含む。好ましい構造は、入手が容易なFAU型、MFI型、MOR型、BEA型であるが、これに限定されない。
酸化マグネシウムは、重質酸化マグネシウム、軽質酸化マグネシウムなどを用いることができるが、中でも軽質酸化マグネシウムが好ましい。軽質酸化マグネシウム上に金属を担持したものを触媒として用いると、グラファイト化度の高いカーボンナノチューブが生成する。
また、本発明で用いる原料カーボンナノチューブ集合体としては、2層カーボンナノチューブを含むものが好ましいが、このような原料カーボンナノチューブ集合体は、上記製造方法中、酸化マグネシウムを固体担体として用いたCVD法(Ning,G; Liu, Y.; Wei、F.; Wen, Q.; Luo, G. J. Phys. Chem. C 111, 1969 (2006))や、アーク放電法(Huang,H.; Kajiura, H.; Tsutsui, S.; Murakami, Y.; Ata, M.J.Phys. Chem. B 107, 8794 (2003))などの方法で合成されている。また、これら文献に掲載されているものに限定されるものではなく、近年次々と合成されている2層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体も含む。
上記方法で得られたカーボンナノチューブ集合体は通常、合成時に用いられた担体に触媒を担持した固体触媒を含むものであるが、予め、あるいは第一工程である気相処理工程と第二工程である液相酸化処理による工程間に、上記触媒や、触媒担体の除去作業が入ってもかまわない。なかでもこの除去作業は、第一工程と第二工程の間に行うことが好ましい。すなわち第一工程によりカーボンナノチューブ集合体の合成時に副生し、カーボンナノチューブや触媒や触媒担体のまわりに存在していたアモルファスカーボン等も消失させることができるので、これら触媒や触媒担体が除去しやすい状態となるためである。
上記触媒や触媒担体の除去は、酸化マグネシウムであれば塩酸を、ゼオライトであればフッ素酸を使用することで容易に取り除くことが可能である。
本発明においては、上記の第一工程、第二工程をおこなうことによって得られたカーボンナノチューブ集合体は、上記のとおり第一工程で最外層に欠損を生じさせ、第二工程で欠損の多い最外層が優先的に酸化、分解されていくことにより、内層が取り出されるため、欠損が少なく、高品質のカーボンナノチューブ集合体を純度よく製造することができるが、本発明においては上記工程に、塩基処理をすることによってより純度の高いカーボンナノチューブ集合体とすることが可能である。
上記塩基処理は、一般に水に溶かしたときにアルカリ性を示す塩などを溶かした水溶液に前記第一工程と第二工程を経て得られたカーボンナノチューブ集合体を浸すこと、または浸して拡散させることにより行うことができる。前記水に溶かしたときにアルカリ性を示す塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の他、アンモニウム塩などの有機塩類またはアミン類などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなどが挙げられる。アンモニウム塩としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられ、アミン類としてはアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルプロピルアミンなどが挙げられる。より好ましい塩基は、前記アミン類であり、具体的にはノルマルブチルアミン、イソブチルアミン、ジノルマルブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリイソブチルアミン、ノルマルプロピルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジイソブチルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリイソブチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア等が挙げられる。なかでも分子量が小さい方が好ましく、最も好ましい塩基はノルマルプロピルアミンである。
塩基処理に用いる水溶液は、pHが7より高ければ特に濃度に制限はないが、好ましくはpH8からpH14の水溶液を用いるのが好適であり、更に好ましくはpH9からpH13の水溶液を用いるのが好適である。塩基処理に用いる塩基は水に溶かしたときにアルカリ性を示す化合物であれば特に制限はないが、塩基として前記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機塩類を用いた場合は、用いた塩基がカーボンナノチューブ集合体に含有された状態となるので、処理後に得られたカーボンナノチューブ集合体をpH7以下の水溶液、たとえば希塩酸、希硝酸、希燐酸、希硫酸などで洗浄した後、水洗いするのが好ましい。なお、ノルマルプロピルアミン等分子量の小さい有機アミン類を塩基として使用した場合は、カーボンナノチューブ集合体の乾燥時に有機アミンが気化するため、カーボンナノチューブ集合体に用いた塩基が残らないのでpH7以下の水溶液で洗浄する必要は特に無いが、洗浄してもかまわない。
一方、カーボンナノチューブ合成時に使用した金属触媒は、一般に用いられている精製方法ではカーボンナノチューブ集合体に微量に残存してしまうのが一般的であるが、これら上記の手順、第一工程、第二工程の後に上記塩基処理を行うことによって、これら微量に含まれる金属触媒をさらに取り除くことが可能である、またこれと同時に合成時に副生成物として生じるアモルファスカーボンと呼ばれる不定形炭や粒子状炭素もさらに取り除くことができるため、外層をおおむね1枚はがされた、よりいっそう純度の高いカーボンナノチューブ集合体を得ることが出来る。
また、本発明では、原料カーボンナノチューブ集合体として層数の少ないカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体を用いること、中でも2層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体を用いることにより、品質、純度の高いカーボンナノチューブを製造することも可能であり、同等の層数を有する通常のカーボンナノチューブよりも品質、純度とも高くなり本来の特性を発揮できる点で効果的である。また、2層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブを用いることにより得られる単層カーボンナノチューブは、本来の特性を顕著に発揮できる点でとくに効果的である。カーボンナノチューブは層数が少ない方が導電性、光透過率に優れているため、この技術によって得られた単層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体を用いてフィルム状物を形成する場合に効率的に導電ネットワークを形成できる利点がある。
本発明において、多層カーボンナノチューブの外層が1枚はがされ、得られたカーボンナノチューブ集合体の純度が酸化処理前よりも良くなる理由については完全には解明できていないが、現在以下のように推定している。第一工程で、カーボンナノチューブの最外層のグラファイト層に多くの欠損が生じる。次の液相酸化処理によって、第一工程で生じた欠損部分や合成時から存在していた欠損部分が優先的に酸化されていくため、内層が欠損を受ける前に最外層が細かく分解されてはがれ落ちる。その細かく分解されてはがれ落ちた最外層はカルボキシル化されているため、塩基処理によって、カルボン酸塩となって水溶性となり水に溶ける。そのため、ろ過によって、はがれ落ちて水に溶けた外層を含む水溶液部分と、綺麗な非水溶性のカーボンナノチューブとを分離することが可能となると考えられる。したがって、酸化性または還元性の気体にさらす工程と液相酸化処理の順番は重要な意味を持ち、この順番が逆である場合、どちらかが欠けた場合には本発明の十分な効果を得られない。
本発明において外層を1層取り除いたか否かの判断は、以下の方法で行う。すなわち、透過型電子顕微鏡を観測し、カーボンナノチューブの直径と、層数を調べ、その分布を調べ、評価する。
カーボンナノチューブの層数の変化については、カーボンナノチューブ集合体を透過型電子顕微鏡で40万倍で観察したときに、75nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブである視野中から抽出した、観察可能な全てのカーボンナノチューブ130〜200本について層数と直径を評価し、一つの視野中で130本以上の測定ができない場合は、130〜200本になるまで複数の視野から測定する。このとき、カーボンナノチューブ1本とは視野中で一部カーボンナノチューブが見えていれば1本と計上し、必ずしも両端が見えている必要はない。また視野中で2本と認識されても視野外でつながって1本となっていることもあり得るが、その場合は2本と計上する。その後、直径と層数の分布を処理前後で比較することによっての層数の変化を調べる。
上記透過型電子顕微鏡での測定によって計上した全てのカーボンナノチューブのうち、同じ層数のカーボンナノチューブの本数が最も多かったカーボンナノチューブをn層カーボンナノチューブ(nは2以上の整数)と表し、液相酸化処理後、または塩基処理後に得られたカーボンナノチューブ集合体を上記透過型電子顕微鏡での測定によって計上すると、(n−1)層カーボンナノチューブの本数が最も多く、平均直径が液相酸化処理前よりも小さくなっていて、さらに、処理前に各m層カーボンナノチューブ(mは2以上の整数)が上記透過型電子顕微鏡での測定によって観測された場合、処理後に(m−1)層に相当する層を有するカーボンナノチューブが観測されるとき、カーボンナノチューブの外層が1層取り除かれたと判断する。なお、測定による誤差を除くため、上記透過型電子顕微鏡での測定によって計上されたm層カーボンナノチューブのうち、度数が総本数に対して2%以下のm層カーボンナノチューブについては1層はがれたかどうか判断する対象から除外する。平均直径は測定した直径の算術平均とする。
また、本発明において、第一工程では炭素不純物や合成時に生成した単層カーボンナノチューブの一部又は全部が消失し、第一工程を経て外層に欠損を受けた多層カーボンナノチューブが残っており、この残った多層カーボンナノチューブの外層が第二工程ではがされていくため、カーボンナノチューブの外層がおおむね1層はがれていることの評価は第二工程の前後のカーボンナノチューブ集合体を比較することで判断可能である。
本発明においては上記透過型電子顕微鏡での測定によって計上した全てのカーボンナノチューブ130本から200本のうち、50%以上が単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブである場合、その集合体中の主生成物が単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブであるといって構わない。
また、純度の高いカーボンナノチューブが得られたか否かの評価はラマン分光分析法によって行う。
一般にカーボンナノチューブの品質、直径は、ラマン分光分析法により評価が可能である。ラマン分光分析法で使用するレーザー波長は種々あるが、ここでは532nmおよび633nmを利用する。ラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高く、高純度である。
本発明の製造方法により外層を1層取り除かれたカーボンナノチューブ集合体のラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)は、通常、第一工程を経る前と比較して高い値を示し、好ましい態様においては10〜80程度高い値を示す。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例中、各種物性評価は以下の方法で行った。
[熱分析]
約10mgの試料を示差熱分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの燃焼ピーク温度を読みとった。
[ラマン分光分析]
共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)に粉末試料を設置し、532nmもしくは633nmのレーザー波長を用いて測定を行った。
[高分解能透過型電子顕微鏡写真]
エタノール中に分散した試料をグリッド上に滴下し、乾燥した。このように試料の塗布されたグリッドを透過型電子顕微鏡(JEOL製 JEM−2100)に設置し、測定を行った。
<参考例1>
(軽質マグネシアへの金属塩の担持)
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業社製)5gをメタノール(関東化学社製)250mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(和光純薬工業社製、かさ密度は0.16g/mLであった)を50g加え、超音波洗浄機で60分間処理し、40℃から60℃で攪拌しながら減圧乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された固体触媒を得た。
(カーボンナノチューブの合成)
図1に示した流動床縦型反応装置でカーボンナノチューブを合成した。図1は前記流動床縦型反応装置の概略図である。
反応器100は内径32mm、長さは120mmの円筒形石英管である。中央部に石英焼結板101を具備し、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン104、上部には廃ガスライン105および、触媒投入ライン103を具備する。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器106を具備する。加熱器106には装置内の流動状態が確認できるよう点検口107が設けられている。
触媒12gを取り、密閉型触媒供給器102から触媒投入ライン103を通して、石英焼結板101上に触媒108をセットした。次いで、原料ガス供給ライン104からアルゴンガスを1000mL/分で供給開始した。反応器内をアルゴンガス雰囲気下とした後、温度を850℃に加熱した(昇温時間30分)。
850℃に到達した後、温度を保持し、原料ガス供給ライン104のアルゴン流量を2000mL/分に上げ、石英焼結板上の固体触媒の流動化を開始させた。加熱炉点検口107から流動化を確認した後、さらにメタンを95mL/分(メタン濃度4.5vol%で反応器に供給開始した。該混合ガスを30分供給した後、アルゴンガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ集合体を取り出した。
<参考例2>
(軽質マグネシアへの金属塩の担持)
クエン酸アンモニウム鉄(和光純薬工業社製)5gをメタノール(関東化学社製)250mLに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(和光純薬工業社製、かさ密度は0.16g/mLであった)を50g加え、室温で60分間撹拌し、40℃から60℃で攪拌しながら減圧乾燥してメタノールを除去し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された固体触媒を得た。
(カーボンナノチューブの合成)
図2に示した固定床縦型反応装置でカーボンナノチューブを合成した。図2は前記固定床縦型反応装置の概略図である。
反応器200は内径64mm、長さは120mmの円筒形石英管である。中央部に石英突起が4つついており、石英管下方部には、不活性ガスおよび原料ガス供給ライン204、上部には廃ガスライン205を具備する。触媒の投入が出来るように石英管の上部は開閉が出来るようになっている。石英管下部は触媒を取り出せるように開閉が出来るようになっている。さらに、反応器を任意温度に保持できるように、反応器の円周を取り囲む加熱器206を具備する。
加熱器206には装置内の触媒の状態が確認できるよう点検口207が設けられている。
厚さ5mm、直径64mmの不織布(図2中下側の不織布201)を石英管中央部に付いている突起に引っ掛かるように突起の上部に取り付け、触媒1200mgを取り、石英管上部より投入した後、上部より、厚さ5mm、直径64mmの不織布201(図2中上側の不織布201)を先に取り付けた不織布(図2中下側の不織布201)から上方1cmの位置に取り付けた。次いで、原料ガス供給ライン204からアルゴンガスを1000mL/分で供給開始した。反応器内をアルゴン雰囲気下とした後、温度を870℃に加熱した(昇温時間30分)。
870℃に到達した後、温度を保持し、原料ガス供給ライン204のアルゴン流量を225mL/分にし、さらにメタンを11mL/分で反応器に供給開始した。該混合ガスを30分供給した後、アルゴンガスのみの流通に切り替え、合成を終了させた。
加熱を停止させ室温まで放置し、室温になってから反応器から触媒とカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ集合体を取り出した。
<実施例1>
参考例1で得られた触媒付きの約10mgのカーボンナノチューブ集合体を示差熱分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの燃焼ピーク温度は456℃であり、重量減少率は2.6%であった。
以下の方法で第一工程を行った。この触媒付きカーボンナノチューブ集合体123.5gを磁性皿(150φ)に取り、マッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、446℃まで30分で昇温し、60分保持した後、自然放冷した。このときのカーボンナノチューブ集合体の重量は122.3gであり、示差熱分析の結果から、この組成物の炭素重量は3.21gであるので、第一工程の前後におけるカーボンナノチューブ集合体の減少量は63重量%であった。
さらに、上記のカーボンナノチューブ集合体から触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。カーボンナノチューブ集合体を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を得ることが出来た。
次に上記マグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を第二工程に供した。すなわち上記カーボンナノチューブ集合体120mgを濃硫酸(硫酸濃度95重量%)6mLを入れた反応容器に加えて約1分攪拌した後、攪拌しながら濃硝酸(硝酸濃度61重量%)を18mL加えた。その後、80℃のオイルバスに前記反応容器を漬けて7時間攪拌した。その後、カーボンナノチューブが入っている酸溶液をイオン交換水200mLに加えて、得られた水溶液を濾過して得られたろ取物をn−プロピルアミン20mLとイオン交換水180mLを混合した水溶液に加えて1時間攪拌した。これを濾過した後、数回洗浄して得られたカーボンナノチューブ集合体を120℃で1晩乾燥した。
得られたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡で観察し、前述の方法でカーボンナノチューブの直径、層数の分布を調べた結果を図3に示す。図3は、実施例1で得られたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフであり、これによれば単層の度数が最も多く、度数が総本数に対して2%超の層数としては、単層、2層が観察された。また、平均直径は1.94nmであった。また、同様にして液相酸化処理前の直径、層数の分布を調べた結果を図4に示す。図4は、液相酸化処理をおこなう前のカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。これによれば二層の度数が最も多く、度数が総本数に対して2%超の層数としては、単層、2層、3層が観察された。また、平均直径は1.97nmであった。これらを比較し、2層カーボンナノチューブの外層がおおむね1層はがれたカーボンナノチューブ集合体が製造されていることが分かった。
また、上記で得られたカーボンナノチューブ集合体のラマン分光分析を、532nmのレーザー波長を用いて3回測定し、それぞれのGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)を平均すると38であった。このときのラマン分光分析チャートの一つを一例として図5に示す。また、本発明の一連の工程を経る前のカーボンナノチューブ集合体について同様に測定した結果を図6に示す。図6は、第一工程の処理をおこなう前に3回測定したラマン分光分析チャートのうちの一つである。3回測定した結果のG/D比の平均は18であった。これらの結果を比較することより、実施例1の操作により、純度の高いカーボンナノチューブ集合体が得られたことが分かった。
<実施例2>
参考例2で得られた触媒付きの約10mgのカーボンナノチューブ集合体を示差熱分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの燃焼ピーク温度は515℃であり、示差熱分析の結果から、重量減少率は3.33%であった。
この触媒付きカーボンナノチューブ集合体50.0gを磁性皿(150φ)に取り、マッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、446℃まで30分で昇温し、60分保持した後、自然放冷した。このときの触媒付きカーボンナノチューブ集合体の重量は49.4gであり、示差熱分析の結果から、この組成物の炭素重量は1.67gであるので、第一工程の前後におけるカーボンナノチューブ集合体の減少量は36重量%であった。
さらに、上記のカーボンナノチューブ集合体から触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。カーボンナノチューブ集合体を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を得ることが出来た。
このカーボンナノチューブ集合体120mgを濃硫酸(硫酸濃度95重量%)6mLを入れた反応容器に加えて約1分攪拌した後、攪拌しながら濃硝酸(硝酸濃度61重量%)を18mL加えた。その後、80℃のオイルバスに反応容器を漬けて7時間攪拌した。その後、カーボンナノチューブが入っている酸溶液をイオン交換水200mLに加えて、得られた水溶液を濾過して得られたろ取物をn−プロピルアミン20mLとイオン交換水180mLを混合した水溶液に加えて1時間攪拌した。その後、濾過した後、数回洗浄して得られたカーボンナノチューブ集合体を120℃で1晩乾燥した。
得られたカーボンナノチューブ集合体を実施例1と同様の方法で高分解能透過型電子顕微鏡で観察した結果を図7に示す。図7は実施例2で得られたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフであり、それによれば、単層の度数が最も多く、度数が総本数に対して2%超の層数としては、単層、2層、3層が観察された。また、平均直径は2.15nmであった。
また、同様にして液相酸化処理前の直径、層数の分布を調べた結果を図8に示す。図8は実施例2において、液相酸化による酸化処理をおこなう前のカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフであり、それによれば、2層の度数が最も多く、度数が総本数に対して2%超の層数としては、単層、2層、3層が観察された。また、平均直径は2.27nmであった。このことから2層カーボンナノチューブの外層がはがれて単層カーボンナノチューブが製造されていることが分かった。
また、上記で得られたカーボンナノチューブ集合体のラマン分光分析を、532nmのレーザー波長を用いて3回測定し、それぞれのGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)を平均すると61であった。このときのラマン分光分析チャートの一つを一例として図9に示す。また、本発明の一連の工程を経る前のカーボンナノチューブ集合体について同様に測定した結果を図10に示す。図10は、第一工程の処理をおこなう前に3回測定したラマン分光分析チャートのうちの一つである。3回測定した結果のG/D比の平均は39であった。これらの結果を比較することより、実施例1の操作により、純度の高いカーボンナノチューブ集合体が得られたことが分かった。
<実施例3>
以下、本発明で得られたナノチューブを用いると、透明導電性フィルム用導電膜として有用であることを示す。
参考例1で得られた触媒付きの約10mgのカーボンナノチューブ集合体を示差熱分析装置(島津製作所製 TGA−60)に設置し、空気中、10℃/分の昇温速度にて室温から900℃まで昇温した。そのときの燃焼ピーク温度は456℃であった。
この触媒付きカーボンナノチューブ集合体123.5gを磁性皿(150φ)に取り、マッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、446℃まで30分で昇温し、60分保持した後、自然放冷した。このときの触媒付きカーボンナノチューブ集合体の重量は122.3gであり、際第一工程の前後におけるカーボンナノチューブ集合体の減少量は63重量%であった。
さらに、上記のカーボンナノチューブ集合体から触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。カーボンナノチューブ集合体を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を得ることが出来た。
このカーボンナノチューブ集合体1gを、濃硫酸(硫酸濃度95 重量%)150mLを入れた反応容器に加えて約1分攪拌した後、攪拌しながら濃硝酸(硝酸濃度61重量%)を50mL加えた。その後、80℃のオイルバスに反応容器を漬けて1時間攪拌した。その後、カーボンナノチューブが入っている酸溶液をイオン交換水200mLに加えて、得られた水溶液を濾過して得られたろ取物をn−プロピルアミン20mLとイオン交換水180mLを混合した水溶液に加えて超音波照射しながら1時間攪拌した。その後、濾過した後、数回洗浄して得られたカーボンナノチューブ集合体を120℃で1晩乾燥した。
(カーボンナノチューブ分散液調製)
50mLの容器に上記カーボンナノチューブ集合体10mg、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)20mgを量りとり、蒸留水10mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力240W、30分間で氷冷下分散処理しカーボンナノチューブ集合体を含む液を調製した。調製した液には凝集体は目視では確認できず、カーボンナノチューブ集合体はよく分散していた。得た液を高速遠心機を使用し10000G、15分遠心し、上清を50mLのサンプル管に入れ保管した。底にたまったカーボンナノチューブを乾燥後、400℃で1時間焼成して有機成分を焼きとばし、重さを測定した結果、沈降したカーボンナノチューブ量は最初に添加した量の検出限界(1重量%以下)であった。
(カーボンナノチューブを含む透明導電性フィルム)
上記で得たカーボンナノチューブ分散液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U36)、光透過率91.3%)上にバーコーター(No.8)を用いて塗布し、80℃乾燥機内で乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルム(厚み125μm)の表面抵抗値は2.5×10Ω/sq.、光透過率は87%(透明導電性フィルム87%/PETフィルム92.5%=0.94)であり、高い導電性および、透明性を示した。
<比較例1>
以下の操作では第一工程と第二工程の順番が重要であることを示すため、液相酸化処理法の後に第一工程をおこなった。
参考例1で得られた触媒付きのカーボンナノチューブ集合体から触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。カーボンナノチューブ集合体を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を得ることが出来た。
このカーボンナノチューブ集合体120mgを濃硫酸(硫酸濃度95重量%)6mLに加えて約1分攪拌した後、攪拌しながら濃硝酸(硝酸濃度61重量%)を18mL加えた。その後、80℃のオイルバス反応容器を漬けて7時間攪拌した。その後、カーボンナノチューブが入っている酸溶液をイオン交換水200mLに加えて、得られた水溶液を濾過して得られたろ取物をn−プロピルアミン20mLとイオン交換水180mLを混合した水溶液に加えて1時間攪拌した。それを濾過した後、数回洗浄して得られたカーボンナノチューブ集合体を120℃で1晩乾燥した。
得られたカーボンナノチューブ集合体の示差熱分析をおこなったところ、燃焼温度ピークは583℃であった。このカーボンナノチューブ集合体11.4gを磁性皿(150φ)に取り、マッフル炉(ヤマト科学社製、FP41)にて大気下、573℃まで30分で昇温し、60分保持した後、自然放冷した。このときのカーボンナノチューブ集合体の重量は8.7gであり、第一工程の前後におけるカーボンナノチューブ集合体の減少量は 24重量%であった。
触媒除去直後のカーボンナノチューブ集合体の層数、直径の分布(図11)と液相酸化の後第一工程を経たカーボンナノチューブ集合体の層数、直径の分布(図12)を実施例1と同様に調べた結果、気相処理法と液相処理法の順番を変えた場合、度数が総本数に対して2%超の層数としては、処理前は、単層、2層、3層、4層が観察され、処理後は、単層、2層、3層が観察されたものの、処理前は2層のカーボンナノチューブが最も多く、処理後も2層が最も多かった。これらから、処理の順番を変えると多層カーボンナノチューブの外層を若干取り除くことはできるものの1層取り除くことはできなかった。
<比較例2>
以下の操作では、気相処理法の必要性を観るため、実施例2における空気中での焼成を省略して精製、液相酸化をおこなった。
参考例2で得られた触媒付きのカーボンナノチューブ集合体から触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。カーボンナノチューブ集合体を6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。これを濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥することでマグネシアおよび金属が除去されたカーボンナノチューブ集合体を得ることが出来た。このカーボンナノチューブ集合体120mgを濃硫酸(硫酸濃度95重量%)6mLを入れた反応容器に加えて約1分攪拌した後、攪拌しながら濃硝酸(硝酸濃度61重量%)を18mL加えた。その後、80℃のオイルバスに反応容器を漬けて7時間攪拌した。その後、カーボンナノチューブが入っている酸溶液をイオン交換水200mLに加えて、得られた水溶液を濾過して得られたろ取物をn−プロピルアミン20mLとイオン交換水180mLを混合した水溶液に加えて1時間攪拌した。その後、濾過した後、数回洗浄して得られたカーボンナノチューブ集合体を120℃で1晩乾燥した。
得られたカーボンナノチューブ集合体を実施例2と同様の方法で高分解能透過型電子顕微鏡で観察して層数、直径の分布を調べた結果(図13)、度数が総本数に対して2%超の層数としては、処理前は、単層、2層、3層が観察され、処理後は、単層、2層、3層が観察された。単層カーボンナノチューブの度数が実施例2と比べて少ないことから、本発明の第一工程が外層をおおむね1枚はがすのに効果が低かった。
<比較例3>
実施例3に示した透明導電性フィルム用導電膜として本発明のカーボンナノチューブ集合体が優れた効果を示すことを示すため、本発明の方法を用いずに同等の層を有するカーボンナノチューブ集合体から導電膜を調整した透明導電性フィルムの性能を以下に示す。
(単層カーボンナノチューブを含む液調製)
50mLの容器に単層カーボンナノチューブ(ナノテクポート製、純度50〜80%、HipCO法と呼ばれる一酸化炭素を原料としたCVD法で合成)、60mg、ポリオキシエチレンフェニルエーテル(アイ・シー・エヌ社製)60mgを量りとり、蒸留水30mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力240W、30分間で処理した。調製した液は底部に凝集体が確認でき分散性が悪かった。得た液を高速遠心機を使用し20000G、15分遠心し、上清を50mLのサンプル管に入れ保管した。底にたまったカーボンナノチューブを乾燥後、400℃で1時間焼成して有機成分を焼きとばし、重さを測定した結果、沈降したカーボンナノチューブ量は液に添加したカーボンナノチューブの10重量%であった。
(カーボンナノチューブを含む透明導電性フィルム)
上記液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー U36)、光透過率91.3%)上にバーコーター(No.8)を用いて塗布し、80℃乾燥機内で乾燥させカーボンナノチューブを固定化した。得られた塗布フィルム(厚み125μm)をアセトニトリル溶液に浸漬させ、10秒後に引き上げ乾燥させることでさらに界面活性剤を除去した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.3×10Ω/sq.、光透過率74%(透明導電性フィルム74%/PETフィルム91.3%=0.81)であった。以上の結果より、本発明の方法を用いて製造したカーボンナノチューブ集合体を用いた方が、透明導電性フィルムとしての特性が優れていることが分かった。
図1は参考例1で使用した流動床縦型反応装置の概略図である。 図2は参考例2で使用した固定床縦型反応装置の概略図である。 図3は実施例1で得られたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図4は実施例1において、液相酸化処理をおこなう前のカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図5は実施例1で得られたカーボンナノチューブ集合体のラマン分光分析チャートである。 図6は実施例1において、液相酸化処理をおこなう前のラマン分光分析チャートである。 図7は実施例2で得られたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図8は実施例2において、液相酸化による酸化処理をおこなう前のカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図9は実施例2で得られたカーボンナノチューブ集合体のラマン分光分析チャートである。 図10は実施例2において、液相酸化処理をおこなう前のラマン分光分析チャートである。 図11は比較例1で得られた触媒除去直後のカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図12は、液相酸化の後第一工程を経たカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図13は比較例2で得られたカーボンナノチューブ集合体を高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。 図14は実施例1において、第一工程の処理を経る前のカーボンナノチューブ集合体から塩酸によって触媒担体を取り除いた後、高分解能透過型電子顕微鏡によって観察したときのカーボンナノチューブの直径および層数の分布を示したグラフである。
符号の説明
100 反応器
101 石英焼結板
102 密閉型触媒供給機
103 触媒投入ライン
104 原料ガス供給ライン
105 廃ガスライン
106 加熱器
107 点検口
108 触媒
200 反応器
201 不織布
204 原料ガス供給ライン
205 廃ガスライン
206 加熱器
207 点検口
208 触媒

Claims (6)

  1. 気相処理工程(第一工程)を経た後、液相酸化処理による工程(第二工程)を経ることによって多層カーボンナノチューブの外層を1層取り除くカーボンナノチューブ集合体の製造方法であって、気相処理工程が、同処理工程に供する多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ集合体の示差熱分析での燃焼温度ピーク−50℃以上の温度で、酸化性または還元性を有する気体の存在下にカーボンナノチューブ集合体をさらす工程であることを特徴とするカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
  2. 酸化性を有する気体が酸素を含む気体である請求項1に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
  3. 液相酸化処理による工程が、カーボンナノチューブ集合体を硝酸と硫酸からなる混酸中で処理する工程である請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
  4. 液相酸化処理による工程が、カーボンナノチューブ集合体を、酸化剤を含む液相中、80℃±10℃で処理する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
  5. 外層を1層取り除かれたカーボンナノチューブ集合体のラマン分光分析によるGバンドとDバンドの高さ比(G/D比)が、第一工程を経る前と比較して高い値を示すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
  6. 多層カーボンナノチューブが2層カーボンナノチューブを含み、その外層を一層取り除くことにより2層カーボンナノチューブの内層を取り出すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体の製造方法。
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