JP2007197304A - カーボンナノチューブの製造方法及びカーボンナノチューブ含有組成物 - Google Patents

カーボンナノチューブの製造方法及びカーボンナノチューブ含有組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、上記の課題を解決し、高グラファイト化度を有し、高品質なカー
ボンナノチューブを高純度で製造することを課題とする。
【解決手段】 原料ガスをメタンまたはメタンを含有する混合物とし、前記原料ガスを5
00〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナノチューブの合成方法であり、前記原料
ガス中のメタンを、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させることを特徴とする
カーボンナノチューブの製造方法およびカーボンナノチューブの総本数の50%以上が外
径3.0nm以下の2層カーボンナノチューブであり、波長が532および633nmで
ある励起光を用いた共鳴ラマン分光測定において125cm−1以上、136cm−1
満の間に少なくとも1つ以上のピークがあることを特徴とするカーボンナノチューブを含
有する組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カーボンナノチューブの製造方法及びカーボンナノチューブを含有する組成物に関し、さらに詳しくは、高純度で高グラファイト化度のカーボンナノチューブの製造方法及びカーボンナノチューブを含有する組成物に関する。
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブといい、多層カーボンナノチューブの中でも2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、高い機械的強度、高い導電性を有することから、燃料電池やリチウム2次電池用負極材、樹脂や有機半導体との複合材料からなる高強度樹脂、導電性樹脂、電磁波シールド材の材料として期待されており、さらに、L/D(長さ/直径の比)が大きく、直径は数nmであることから、走査型トンネル顕微鏡用プローブ、電界電子放出源、ナノピンセットの材料として期待されており、また、ナノサイズの空間を有することから、吸着材料、医療用ナノカプセル、MRI造影剤の材料として期待されている。いずれの用途の場合にも、高純度のカーボンナノチューブが要求されており、カーボンナノチューブとしては直径の細い単層や2層のカーボンナノチューブが有利であり、グラファイト層の欠陥が少ない方が特性的に優れている。
カーボンナノチューブの製造方法として、アーク放電法やレーザー蒸発法、化学気相成長法などが知られており(非特許文献1参照)、なかでも、グラファイト層に欠陥の少ない高品質なカーボンナノチューブを安価且つ大量に製造する方法として、触媒化学気相成長法が知られている(非特許文献2,3参照)。
触媒化学気相成長法は、500〜1000℃の高温下で鉄、ニッケルなどの金属微粒子と炭素を含む原料ガスを接触させて合成する方法が通常である。この方法では、高温下で触媒活性を高める一方、原料ガスの多量の熱分解を伴い、煤やタールなどの不純物が触媒上に付着し、高純度、高品質のカーボンナノチューブを合成することが困難となる。前記のような無駄な不純物を生成させないよう、原料ガスとして熱的に安定なメタンを用いてカーボンナノチューブを合成する報告が多くされている(例えば特許文献1)。非特許文献4,5では、メタンと水素の混合ガスを900〜1000℃で触媒と反応させ、カーボンナノチューブを合成する方法が報告されている。
また、2層カーボンナノチューブを主成分とするカーボンナノチューブ含有組成物としては、特許文献2や非特許文献7,8などが報告されている。
斉藤弥八、坂東俊治、「カーボンナノチューブの基礎」、株式会社 コロナ社、p17、23、47 「ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Lette rs)」303(1999),117-124 田中一義[編]、「カーボンナノチューブ−ナノデバイスへの挑戦− 」、株式会社化学同人、p74−76 「ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Lette rs)」368(2003),299-306 「ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Lette rs)」317(2000),83-89 「ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Lette rs)」414(2005),444-448 「ナノ・レターズ(Nano Letters)」3(2003),769-773 特開2004−182548号公報 特開2004−123505号公報
上述したように、500℃以上の高温下でなされるカーボンナノチューブの製造方法においては、高温で触媒活性を高める一方、原料ガスの多量の熱分解を伴い、煤やタールなどの不純物が触媒上に付着し、高純度、高品質のカーボンナノチューブを合成することが困難となる。従って、触媒化学気相成長法においては、原料ガスと触媒との接触が合成されるカーボンナノチューブの物性に大きく寄与することが考えられ、選択する炭素源と触媒の組み合わせによって、反応条件は適切に設定する必要がある。上記のような不純物を生成しないよう、熱的および化学的に安定なメタンを含むものを原料ガスとして用いたカーボンナノチューブを合成する報告は多くあるが、未だ高グラファイト化度且つ不純物の少ないカーボンナノチューブが得られていない。また、メタンと触媒の接触条件を検討した報告もない。特許文献1の実施例では、メタンとアルゴンの混合ガス全体の線速を0.8〜7.9cm/秒として流通させているが、前記混合ガス中のメタンの濃度が記載されていないためメタンの線速が不明であり、また、例えば共鳴ラマン分光法で測定したグラファイト化度のような、合成したカーボンナノチューブの物性についての記載がない。仮に防爆の観点から、メタンを爆発濃度限界以下の5%と設定したとしても、メタンのみの線速は40×10−3cm/秒〜400×10−3cm/秒と速すぎるため反応効率が悪くなり、良質なカーボンナノチューブが得られないと考えられる。非特許文献4および5では、メタンと水素の混合ガスを、それぞれメタンのみの線速で10×10−3cm/秒、64×10−3cm/秒の条件で触媒と接触させているが、それぞれの線速が速すぎて良質のカーボンナノチューブが得られていない。
また、2層カーボンナノチューブを主成分とするカーボンナノチューブ含有組成物としては、高純度、高品質且つ分散などの2次加工が容易なものが求められている。2層カーボンナノチューブは、層数が少ないために通常細い外径となるが、外径が細すぎると強いファンデルワールス力により束を形成し、1本ずつに分散させることが困難となる。一方、外径が太すぎると、欠陥形成に伴う屈曲化が合成時に生じやすくなるために直線的な2層カーボンナノチューブが得られず、導電性や耐熱性が低下すると考えられる。特許文献2では、外径が3nm超の2層カーボンナノチューブが生成できるが、上記理由により直線的ではなく、導電性や耐熱性が低くなると考えられる。また、非特許文献6,7では、波長が532nmまたは632nmの励起光を用いた共鳴ラマン分光測定により、細いカーボンナノチューブがあることを示す136cm−1以上(外径1.82nm以下)の領域にのみピークが検出されることから、1.82nmを越える太い2層カーボンナノチューブがなく、2次加工が困難な強固な束を形成していると考えられる。
したがって本発明は、上記の課題を解決し、高グラファイト化度を有し、高品質且つ比較的太いカーボンナノチューブを高純度で製造することを課題とする。
上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、原料ガスをメタンまたはメタンを
含有する混合物とし、前記原料ガスを500〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナ
ノチューブの合成方法であり、前記原料ガス中のメタンが、9.5×10−3cm/秒の
線速で流通させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法を見出し、本発明に
至った。
すなわち本発明は、以下の構成をとる。
(1)原料ガスをメタンまたはメタンを含有する混合物とし、前記原料ガスを500〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナノチューブの合成方法であり、前記原料ガス中のメタンを、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
(2)触媒が金属を担持した担体を含むものであることを特徴とする(1)記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(3)前記メタンを含有する混合物が、窒素、アルゴン、ヘリウムから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする(1)または(2)記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(4)原料ガスを触媒に接触させる反応工程が、縦型の反応器から成ることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(5)カーボンナノチューブの主成分が2層カーボンナノチューブである(1)〜(4)のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
(6)カーボンナノチューブの総本数の50%以上が外径3.0nm以下の2層カーボンナノチューブであり、波長が532および633nmである励起光を用いた共鳴ラマン分光測定において125cm−1以上、136cm−1未満の間に少なくとも1つ以上のピークがあることを特徴とするカーボンナノチューブを含有する組成物。
本発明によれば、原料ガスをメタンまたはメタンを含有する混合物とし、前記原料ガスを500〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナノチューブの合成方法であり、前記原料ガス中のメタンを、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させることにより、最適な効率でメタンと触媒が接触するため、高グラファイト化度を有し、高品質のカーボンナノチューブを高純度で生成することが可能となる。
また本発明の方法により、2層のカーボンナノチューブを主成分とするカーボンナノチューブが生成し、得られるカーボンナノチューブを含有する組成物(以下「カーボンナノチューブ含有組成物」と称する場合もある)としては、カーボンナノチューブの総本数の50%以上が外径3.0nm以下の2層カーボンナノチューブであり、波長が532および633nmである励起光を用いた共鳴ラマン分光測定において125cm−1以上、136cm−1未満の間に少なくとも1つ以上のピークがあることを特徴とするカーボンナノチューブを含有する組成物を製造することが可能である。
本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、原料ガスをメタンまたはメタンを含有する混合物とし、前記原料ガスを500〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナノチューブの合成方法であり、前記原料ガス中のメタンが、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させる方法をベースとしている。このような製造方法において、カーボンナノチューブを合成したところ、高純度で高品質なカーボンナノチューブを生成することが可能となった。
本発明におけるメタンを含有する混合物とは、メタン以外の気体を混合させた混合ガスのことであり、特に限定されないが、不活性ガス、水素、水蒸気、二酸化炭素などと混合させることができ、不活性ガスと混合することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオンなどを用いることができ、さらに好ましくは窒素、アルゴン、ヘリウムを用いる。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば他の炭素含有化合物を含んでいてもよい。
メタンを含有する混合物におけるメタンの濃度は、特に限定されない。ただし、メタンは可燃性物質であるため、安全性の観点から、メタンを含有する混合化合物の爆発限界領域外の反応条件となるように濃度や圧力を設定することが好ましい。例えば、25℃、101325Paでのメタンの爆発限界濃度は5.3〜14.0体積%であることから、前記混合化合物中のメタンの濃度は、5.3体積%未満または14.0体積%より高い濃度とすることが好ましく、メタンが空気中に漏出する危険がある場合は、5.3体積%未満であることが好ましい。
メタンまたはメタンを含有する混合物は、反応圧力条件を1×10Pa(一気圧)未満で反応させてもよい。反応圧力を1×10Pa未満にする方法は、真空ポンプなどを用いて減圧にする方法が好んで用いられる。真空ポンプなどで減圧にする場合は、5×10Pa以下が好ましい。5×10Pa以下では、3層以上のカーボンナノチューブが減少する。さらに好ましい反応圧力条件は、1×10−2〜1×10Paであり、特に好ましくは1×10−1〜1×10Paである。
本発明では、メタンまたはメタンを含有する混合物を、上記原料ガス中のメタンが、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させることを特徴の一つとしている。線速とは、例えばメタンや窒素などの気体が、反応工程を流通するときの速度である。本発明で使用するメタンは熱的、化学的に安定性が高く、反応工程を通過する際の線速が速いと十分反応しないまま通過してしまい、高グラファイト化度など優れた物性のカーボンナノチューブが得られない。線速は、反応工程において原料が流通する部位の断面積(cm)で原料全体の流通速度(cm/秒)を除算することにより求められる。原料の流通速度は、石鹸膜流量計で5回測定し、その平均値を算出することにより求められる。本発明で用いる原料ガス中のメタンの線速は、2.5×10−3〜9.5×10−3cm/秒であることが好ましく、さらに好ましくは3.0×10−3〜9.5×10−3cm/秒である。
本発明では、メタンまたはメタンを含有する混合物から成る原料ガス中のメタンを、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させ、500〜1200℃で触媒と接触することにより、良質のカーボンナノチューブが得られる。
本発明で用いる触媒としては、金属、または金属塩、酸化物、炭化物、窒化物などの金属化合物を用いることができ、好ましくは酸化物などから成る担体に前記金属または金属化合物を担持したものが用いられる。
本発明で触媒として用いる金属の種類は、特に限定されないが、3〜12族の金属、特に好ましくは、5〜11族の金属が用いられる。中でも、Fe,Co,Ni,Mo,W,V,Cu,Ti,Pd,Pt,Rh等が特に好ましい。さらに好ましくは、Fe,Co,Ni,Moが用いられ、最も好ましくはFeが用いられる。ここで金属は0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。また金属は微粒子であることが好ましい。微粒子とは粒径が0.5〜10nmであることが好ましい。金属が微粒子であると細いカーボンナノチューブが生成しやすい。金属は1種類だけでもよく、2種類以上でもよい。
本発明において用いる触媒は、好ましくは上記金属を酸化物などから成る担体に担持したものであることが好ましい。担体は特に限定されないが、酸化物を用いてもよい。具体的には、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、カルシア、セリア、ランタナ、およびこれら酸化物から成るメソポーラス材料、ゼオライトが好ましく用いられ、さらに好ましくはメソポーラスシリカ、マグネシア、ゼオライトを用いる。また、担体として金属の炭酸塩や水酸化物などの金属含有化合物を使用してもよく、炭化物や窒化物、硫化物などを用いてもよい。
細孔直径が2〜50nmの大きさの細孔を有する材料はメソポーラス材料と呼ばれる。界面活性剤とメソポーラス材料を構成する無機物質の協奏的な自己組織化により合成される。メソポーラス材料は大きい比表面積と高い安定性など、触媒や吸着剤としての優れた基本物性を有する。この様な材料のメソポーラス細孔は、担体上でカーボンナノチューブを合成する際に金属を担持する細孔として有用である。代表的物質としてメソポーラスシリカが挙げられる。メソポーラスシリカの結晶構造は特に限定されないが、例えば、モービル社が開発したヘキサゴナル構造をもつMCM−41、キュービック構造をもつMCM−48、層状すなわちラメラ構造をもつMCM−50があり、特に規則的な六角形の細孔が平行に配列したMCM−41構造が好んで用いられる。
メソポーラス細孔の直径と細孔容量は液体窒素温度での窒素の物理吸着から求めることができる。窒素を徐々に投入し、0〜大気圧の窒素の吸着等温線をとり、大気圧まで到達したら徐々に窒素を減らしていき、窒素の脱着等温線をとるようにすればよい。メソポーラス部分の細孔径分布を求めるためには、通常脱着等温線を使用して計算する。細孔径分布を求める理論式としては、Dollimore-Heal法(以下、D−H法と略称)が知られている。本発明で定義する細孔径分布は窒素の脱着等温線からD−H法で求めたものである。一般に細孔径分布は、横軸に細孔径をとり、縦軸にΔVp/ΔRpをとることで求められるが、本発明における細孔容量は、このグラフの面積から、求めることができる。
ゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有する結晶性無機酸化物からなるものである。ここに分子サイズとは、世の中に存在する分子のサイズの範囲であり、一般的には、0.2nmから2nm程度の範囲を意味する。さらに具体的には、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートとしては、特に種類は制限されないが、例えば、アトラス オブ ゼオライト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、1996)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch.
Baerlocher, Zeolites, 17(1/2),1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性物質が挙げられる。また、本発明におけるゼオライトは、本文献に掲載されているものに限定されるものではなく、近年次々と合成されている新規な構造を有するゼオライトも含む。好ましい構造は、入手が容易なFAU型、MFI型、MOR型、BEA型、LTL型、LTA型であるが、これに限定されない。
本発明で用いるゼオライトとしては耐熱性が高いものがよい。ここで耐熱性が高いゼオライトとは、具体的には、実質的に4価の金属(Si,Ti,Ge,Zr等)と酸素で骨格が構成されているゼオライト(4価の金属/3価以下の金属(原子比)>200)と、3価以下の金属を骨格中に含むゼオライト(4価の金属/3価以下の金属(原子比)<200)であって、特開2004−123505号公報に記載されるような900℃での耐熱性を有するものである。ここで4価の金属の主成分はSiである。3価以下の金属を骨格中に含むゼオライト(4価の金属/3価以下の金属(原子比)<200)においては、一般にSi原子以外の原子(ヘテロ原子)が少ない方が耐熱性が高い。ゼオライト骨格中のSi/ヘテロ原子の原子比が10以上のものが耐熱性が高く好ましく、さらに好ましくは15以上であるものがよい。ゼオライト骨格中のSi/ヘテロ原子の原子比は、29Si MAS NMRで測定することができる。最も好ましくは、4価の元素と酸素のみで構成されたゼオライトである。
ゼオライトは、その骨格が4面体の中心にSi又はAlやチタン等のヘテロ原子(Si以外の原子)、4面体の頂点に酸素を有するシリケート構造を有している。従って、4価の金属がその4面体構造の中心に入るのが最も安定であり、耐熱性が期待できる。したがって、理論的にはAl等の3価の成分を実質的に含まないか、或いは少ないゼオライトが耐熱性が高い。これらの製造法としては、従来公知の水熱合成法などで直接合成するか、後処理で3価の金属を骨格から抜く方法が好んで用いられる。
本発明で好ましく用いられるマグネシアは、重質マグネシア、軽質マグネシアなどを用いることができるが、中でも軽質マグネシアが好ましい。軽質マグネシア上に金属を担持したものを触媒として用いると、グラファイト化度の高いカーボンナノチューブが生成する。
上記マグネシアは、マグネシウム含有化合物を熱分解させて合成してもよい。マグネシウム含有化合物としては、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどを用いることができる。マグネシウム含有化合物の熱分解は、その化合物の熱分解温度以上の温度で空気または不活性ガス雰囲気下において焼成する方法が用いられる。例えば炭酸マグネシウムを用いる場合には、600℃以上で焼成し、マグネシアと二酸化炭素に熱分解させる。
担体に対する金属塩の担持方法は、特に限定されない。例えば、担持したい金属塩を溶解させた非水溶液中(例えばエタノール溶液)又は水溶液中に、担体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させる。またその後、空気、窒素、水素、不活性ガスまたはその混合ガス又は真空中で高温(300〜700℃)で加熱してもよい(含浸法)。
金属の担持量は、多いほどカーボンナノチューブの収量が上がるが、多すぎると金属の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。金属の担持量が少ないと、担持される金属の粒子径が小さくなり、細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な金属の担持量は、担体の細孔容量や外表面積、担持方法によって異なるが、担体に対して0.1〜10重量%の金属を担持することが好ましい。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。
このようにして得られた金属を担持した酸化物に500〜1200℃でメタンまたはメタンを含有する混合物を接触させ、カーボンナノチューブを製造する。
触媒と、メタンまたはメタンを含有する混合物とを接触させる温度は、500〜1200℃であり、好ましくは600〜1000℃の範囲がよい。温度が500℃よりも低いと、カーボンナノチューブの収率が悪くなり、また温度が1200℃よりも高いと、使用する反応器の材質に制約があると共に、カーボンナノチューブ同士の接合が始まり、カーボンナノチューブの形状のコントロールが困難になる。単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブ等の細いカーボンナノチューブは、比較的高い温度で得られ、800℃以上で接触させることが好ましい。
触媒とメタンまたはメタンを含有する混合物から成る原料ガスとの接触のさせ方は、特に限定されない。例えば、管状炉に設置された石英製、アルミナ製等の耐熱性の反応管内に、上述した触媒を置き、加熱下に炭素含有化合物ガスを流すことにより達成することができるが、好ましくは縦型の反応管に触媒を充填する方法が用いられる。本発明でいう縦型の反応器は、鉛直方向(以下「縦方向」と称する場合もある)に設置された反応器(例えば管形状を有する反応器であってよい)を有し、この反応器の一方の端部からもう一方の端部に向けた方向(鉛直方向)に炭素含有化合物が、充填された触媒に接触しながら通過する態様で流通し得る機構を備えたものである。なお、上記において、鉛直方向と表記しているが、鉛直方向と鉛直方向に対して若干傾斜角度(例えば水平面に対し90°±15°、好ましくは90°±10°)を有する方向を含む。なお、好ましいのは鉛直方向である。また、上記においては炭素含有化合物を、カーボンナノチューブ製造用触媒で形成される触媒層中を通過しながら接触させるように流通させることが重要である。
触媒とメタンを接触させる方法において、反応器の水平断面方向全面に触媒が存在している状態は触媒と鉛直方向に流通するメタンを接触させる上で好ましい。横型反応器の場合、このような状態にするには重力の関係上左右両端から触媒を挟み込む必要がある。しかし、カーボンナノチューブの生成反応の場合、反応するに従って触媒上にカーボンノチューブが生成するため、体積が増加するので、左右から触媒を挟みこむ方法は好ましくない。そこで、本発明ではこれを解決するために反応器を縦型にする。縦型にすることによって、両側から挟みこむことなく、ガスが透過できる触媒を置く台が下にあれば、上からはさむことなく水平断面方向に均一に触媒を存在させることができる。本発明において、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させた状態とは、水平断面方向に全体に触媒が広がっている状態、好ましくは反応器の水平断面全体を触媒が覆うように存在している状態を言う。
なお、炭素含有化合物の供給、排出部は、必ずしも反応器の端部である必要はなく、炭素含有化合物が前記方向に流通し、その流通過程で触媒に接触しながら通過すればよい。
反応器は耐熱性であることが好ましく、石英製、アルミナ製等の耐熱材質が好ましい。
この縦型の反応器内に触媒で形成される触媒層の下部、もしくは上部から炭素含有化合物が触媒で形成される触媒層を通過させて接触、反応させることによりカーボンナノチューブを生成する。炭素含有化合物は、可能な限り触媒層全体を貫通するように通気させることにより、触媒層中の各触媒表面全体と接触できるようにするのが好ましい。
縦型反応器とは対照的に、横型反応器は横方向(水平方向)に設置された反応器を有する。ここでいう横型反応器は、水平方向に設置された反応器内を炭素源が、石英板上に置かれた触媒上を通過して接触、反応する態様の反応装置を指す。この場合、触媒表面ではカーボンナノチューブが生成するが、触媒内部には炭素含有化合物が到達しないためにほとんど反応しない。これに対して縦型反応器では触媒全体に原料の炭素含有化合物が通気、接触することが可能となるため、効率的に、多量のカーボンナノチューブを合成することが可能である。このように縦型反応器が、その機構上、触媒のすみずみまで炭素含有化合物と接触できるので、カーボンナノチューブを効率的かつ、多量に合成するために重要である。
触媒と炭素含有化合物を含む原料ガスとの接触方法は、上記のような方法のほかに、触媒を攪拌しながら接触させる方法や、大流量のガスにより触媒を浮き上がらせ、流動させる方法(例えば原料ガスを触媒下方から通過させ、かつ原料ガスの流量を触媒を浮き上がらせる程度に調節することにより行うことができる)であってもよい。
本発明の製造方法により、主成分が2層カーボンナノチューブであるカーボンナノチュ
ーブ含有組成物を得ることも可能である。ここでカーボンナノチューブの主成分とは、5
0%超のカーボンナノチューブが、2層であるカーボンナノチューブのことをいう。この
確認は、カーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡で100万倍で観察し、150nm四
方の視野の中で、視野面積内に10本以上のカーボンナノチューブが含まれるところで写
真を撮り、この観察されたカーボンナノチューブのうち任意の10本の層数を確認し、2
層カーボンナノチューブの本数を確認して割合を求める。上記測定を10箇所について行
った平均値で評価するものとする。多くの場合、150nmの視野でカーボンナノチューブの端から端までの全体像をとらえることは難しい。そのため、上記測定では視野中で確認できるカーボンナノチューブを1本として捉えるものとする。(すなわち、視野外でつながっていることにより現実には1本であるが、視野中ではそれが確認できず、2本に見える場合、2本として計算する場合があり得ることを意味する。)。
本発明の、カーボンナノチューブ含有組成物は、それが多本数のカーボンナノチューブ
を含有する構成からなり、そのカーボンナノチューブ総本数の50%以上が外径3nm以
下の2層カーボンナノチューブが得られることを特徴とする。ここで、カーボンナノチュ
ーブ総本数中の50%以上が外径3nm以下の2層のカーボンナノチューブであるとは、
カーボンナノチューブ含有組成物を透過型電子顕微鏡で100万倍で観察し、150nm
四方の視野の中で視野面積の10%がカーボンナノチューブであり、且つ10本以上のカ
ーボンナノチューブが含まれるところで写真を撮り、そのうちの任意の10本中、50%
以上の本数が外径3nm以下の2層のカーボンナノチューブであるような組成物のことで
あり、上記測定を10箇所について行った平均値で評価する。
上記カーボンナノチューブ含有組成物は、例えば次のようにして得ることができる。
触媒として、鉄など6〜10族の金属または金属化合物をマグネシアなどの酸化物に担
持した触媒を用い、メタンガスを不活性ガスで希釈して800〜1000℃で1〜120
分間反応させる。その際の混合ガスの線速は本発明で規定する範囲とする。このようにし
て得られるカーボンナノチューブ含有組成物は、上記透過型電子顕微鏡を用いた方法で観
察して、外径3nm以下の2層のカーボンナノチューブが50%以上となる。また、上記
共鳴ラマン分光法を用いた方法により測定した結果、1.25cm−1以上、136cm
−1未満の間に1つのピークが検出される。
本発明の製造方法により得られる2層カーボンナノチューブを主成分とするカーボンナ
ノチューブ含有組成物は、波長が532および633nmである励起光を用いた共鳴ラマ
ン分光測定において125cm−1以上、136cm−1未満の間に少なくとも1つ以上のピークがあることを特徴とする。ラマンスペクトルの100〜350cm−1はRBM(ラジアルブリージングモード)と呼ばれ、この領域に観測されるピークはカーボンナノチューブの直径と次のような相関があり、直径を見積もることが可能である。カーボンナノチューブの直径をd(nm)、ラマンシフトをυ(cm−1)とすると、d=248/υが成り立つ。125cm−1以上、136cm−1未満の波数領域にピークが検出されるということは、1.82nm超、1.98nm以下のカーボンナノチューブが存在することを示し、通常の直線的な2層カーボンナノチューブに比べ比較的太いものが得られる。また、2層カーボンナノチューブであるため、125cm−1以上、136cm−1未満の波数領域のピークを外層とすると、対応する内層としての180cm−1以上、250cm−1以下の波数領域にもピークが検出される。さらに、本発明により得られる2層カーボンナノチューブで、波長が633nmの励起光を用いた共鳴ラマン分光測定により、125cm−1以上、170cm−1未満の波数領域に少なくとも3つ以上のピークが検出され、且つ200cm−1以上、300cm−1未満の波数領域にも3つ以上のピークを検出された場合には、3種以上の外径を有する2層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ含有組成物が得られたと解釈できる。ここでピークとは、曲線が一度上に上がってから下に下がった場合をいうが、次のような方法で定義されるような「明確なピーク」を示すことが好ましい。80〜90cm−1の領域の曲線において、1cm−1刻みで測定された強度をプロットし、そのプロットの線形近似を行う。各プロットから近似線に垂線を引き、最も長いものをノイズと判断する。ラマンで測定した曲線の上に上がりはじめのところと、下がりきったところを結んでベースラインとし、そのベースラインからの垂線と曲線が交わったところで一番長いところを選び、その長さが前記ノイズの長さより長い場合をピークという。上記のように、太い2層カーボンナノチューブはカーボンナノチューブの相互作用が比較的弱く、束を形成し難いため、分散などの2次加工が容易となる。
さらに、本発明の製造方法により得られるカーボンナノチューブは、ラマンスペクトルの1650cm−1付近に上記Gバンド以外のラマンシフトが見られることを特徴の一つとしている。
本発明の製造方法、すなわちメタンの線速を特定範囲とすることにより、波長が633nmの励起光を用いた共鳴ラマン分光測定から得られるGバンドとDバンドの比(G/D比)が高く、耐熱性が高いカーボンナノチューブ含有組成物が得られる。そしてカーボンナノチューブの合成時の反応温度を高くすることにより、G/D比をさらに向上させることが可能である。好ましくは850〜1000℃とすることにより、G/D比15以上のものでも得ることができ、900〜1000℃とすることにより一層G/D比を高めることが可能である。なお、共鳴ラマン分光法による評価は次のようにして行う。すなわち、ラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトはグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いほどグラファイト化度が高く、高品質なカーボンナノチューブを意味する。本発明の製造方法により得られるカーボンナノチューブ含有組成物について、波長が633nmの励起光を用いた共鳴ラマン分光法により、任意の3箇所についてG/D比を測定し、その平均値を算出する。
本発明の製造方法により得られる上記のようにG/D比が高いカーボンナノチューブ含有組成物は、グラファイト化度が高いため、示差熱・熱重量同時測定の発熱ピークが高くなる。そしてG/D比が比較的高い領域では550℃以上とすることも可能である。具体的には、空気中で10℃/分で昇温したとき、カーボン分が燃えるときの発熱ピークが550℃以上であるということである。発熱ピークが550℃以上であるということは、耐久性があり欠陥が少ないということであるので、例えば、電子放出材料として用いたときに、大きい電流を、長期間にわたり得ることができる。発熱ピークは示差熱・熱重量同時測定において熱起電力が最大のピークとなる点を読みとり、決定する。
また本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、合成したままの状態で利用してもよいが、好ましくは担体材料や金属を除いて使用した方がよい。担体材料や金属は、酸などで取り除くことができる。例えば、担体としてゼオライト、金属としてコバルトを使った場合には、フッ化水素酸でゼオライトを、塩酸でコバルトを取り除くことができる。担体としてマグネシアを使った場合には、塩酸で担体と金属とを同時に除去できる。このような処理により、金属の残存量を3重量%以下にまで低減させることができる。また別法として担体材料や金属は、カーボンナノチューブ含有組成物を溶液に含浸する方法により取り除くことができる。例えば、担体としてゼオライト、金属としてコバルトを使った場合には、カーボンナノチューブ含有組成物をトルエン/水混合液に含浸することによりカーボンナノチューブをトルエン層に、ゼオライト、コバルトを水層に、分離することが出来る。
金属の量を高度に取り除きたい場合には、焼成処理を行ってから酸で処理するとよい。それは、金属がグラファイトなどの炭素化合物で覆われているため、一度触媒周りの炭素を焼きとばしてから酸処理すれば、金属を効率よく除去することができるからである。
本発明の製造方法において、触媒として、マグネシアに金属として鉄を担持した固体触媒を用いる場合、カーボンナノチューブの総本数中の70%以上が、直径の違いが1nm未満の範囲内にあるカーボンナノチューブを得ることができる。直径の違いの確認は、カーボンナノチューブ含有組成物を透過型電子顕微鏡で100万倍で観察し、150nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブであり、且つ10本以上のカーボンナノチューブが含まれるところで写真を複数枚撮り、そのうち任意で選択した100本のカーボンナノチューブについて、外径を測定する。その外径は0.5nm刻みで取り扱い、その外径を有するカーボンナノチューブの本数を記録する。そのうちの最も多い本数の直径を基準とし、さらにそのうちの70%以上の本数が前記基準の前後0.5nm(合計1nm)の範囲内であるようなカーボンナノチューブ組成物のことである。なお前記と同様多くの場合、150nmの視野でカーボンナノチューブの端から端までの全体像をとらえることは難しい。そのため、上記測定では視野中で確認できるカーボンナノチューブを1本として捉えるものとする。(すなわち、視野外でつながっていることにより現実には1本であるが、視野中ではそれが確認できず、2本に見える場合、2本として計算する場合があり得ることを意味する。
上記カーボンナノチューブ含有組成物は、例えば次のようにして得ることができる。触媒として、鉄をマグネシアに担持した触媒を用い、メタンガスを不活性ガスで希釈して高めの温度、850〜1000℃で1〜120分間反応させる。その際の混合ガスの線速は本発明で規定する範囲とする。触媒に付着したカーボンナノチューブは、まず400℃、1時間の空気下焼成によりアモルファスカーボンが除去され、その後塩酸水溶液で触媒を溶解することにより、精製される。このようにして得られるカーボンナノチューブ含有組成物は、同時に上記透過型電子顕微鏡を用いた方法で観察して、外径が3nm以下の2層のカーボンナノチューブが70%以上となる。また、上記共鳴ラマン分光法を用いた方法により測定した結果、1.25cm−1以上、136cm−1未満の間に1つのピークが検出される。また、上記の方法により得られるカーボンナノチューブ含有組成物の多くは、G/Dは15以上、金属含有率が1%以下、示差熱・熱重量測定で測定した発熱ピークが550℃以上となる。
本発明のカーボンナノチューブ含有組成物は、電子放出材料、電池電極材料として有用である。例えば、本発明のカーボンナノチューブ含有組成物をフィールドエミッションの電子源に用いた場合、直径が細く、電界の集中が起こりやすいので、印加電圧を低く抑えることができる。特に、高純度であることからエミッションサイトが多くなり、且つグラファイト化度が高いことから寿命を延命することができる。また、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有組成物に含まれる2層カーボンナノチューブが比較的太いことから、分散などの2次加工が容易となる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
実施例1
(軽質マグネシアへの金属塩の担持)
クエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業製)0.5gをメタノール(関東化学社製)25cmに溶解した。この溶液に、軽質マグネシア(和光純薬工業製)を5g加え、超音波洗浄機で60分間処理し、40℃乃至60℃の恒温下で攪拌しながらメタノールを除去して乾燥し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された固体触媒を得た。
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の合成)
内径64mmの縦型石英管の中央部の石英ウール上に、上記で調製した固体触媒1.0gをとり、空気を1600cm/分で供給した。石英管を電気炉中に設置して、中心温度を900℃に加熱した(昇温時間120分)。900℃に到達した後、窒素ガスにて1000cm/分、10分間パージした後、メタンガス(高圧ガス工業製)を11cm/分、窒素ガスを225cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、5.70×10−3cm/秒の線速であった。反応管を流通させる全てのガスは、下部から上部方向へ流通させた。
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の高分解能透過型電子顕微鏡分析)
上記のようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、図1に示すように、カーボンナノチューブはきれいなグラファイト層で構成されており、直径が2nm前後、層数が2層のカーボンナノチューブがカーボンナノチューブ総本数の70%を占めており、単層のカーボンナノチューブは総本数の10%を占めていた。従って、単層と2層のカーボンナノチューブのうち、2層カーボンナノチューブの割合は、80%以上となった。
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の共鳴ラマン分光分析)
上記のようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を、波長が532nmおよび633nmの励起光を用いた共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)で測定した。その結果、波長が532nmの励起光、633nmの励起光のいずれを用いた場合においても125cm−1以上、136cm−1未満の波数領域に1つの明確なピークが検出され、1.82nmより太い2層カーボンナノチューブが含まれていることがわかった。また、125cm−1以上、170cm−1未満の波数領域にも3つのピークが検出された。また、共鳴ラマン分光計により、G/D比を求めた結果を図2、3に示す。それぞれ波長が532nm、633nmのレーザー光を用いたところ、G/D比がそれぞれ15、20と、グラファイト化度の高い高品質2層カーボンナノチューブであることがわかった。
さらに、上記のカーボンナノチューブから触媒を除去するため、次のように精製処理を行った。400℃で1時間空気下焼成をした後、6Nの塩酸水溶液に添加し、80℃のウォーターバス内で2時間攪拌した。濾過して得られた回収物を、さらに6Nの塩酸水溶液に添加し、80℃のウォーターバス内で1時間攪拌した。濾過し、数回水洗した後、濾過物を120℃のオーブンで一晩乾燥した。得られたカーボンナノチューブ組成物の示差熱・熱重量同時測定を行った結果、発熱ピークは561℃であった。
実施例2
実施例1と同様の反応系および固体触媒を用いて、900℃に到達した後、メタンガスを9.2cm/分、窒素ガスを188cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、4.77×10−3cm/秒である。このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を実施例1と同様に共鳴ラマン分光計で測定した。その結果、125cm−1以上、136cm−1未満の波数領域に1つの明確なピークが検出された。また、それぞれ波長が532nm、633nmのレーザーに対して、G/D比がそれぞれ、13、19と実施例1と同等の高いグラファイト化度のカーボンナノチューブであることがわかった。
実施例3
実施例1と同様の反応系および固体触媒を用いて、900℃に到達した後、メタンガスを18cm/分、窒素ガスを365cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、9.33×10−3cm/秒である。このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を実施例1と同様に共鳴ラマン分光計で測定した。その結果、125cm−1以上、136cm−1未満の波数領域に1つの明確なピークが検出された。また、それぞれ波長が532nm、633nmのレーザーに対して、G/D比がそれぞれ、11、20と実施例1と同等の高いグラファイト化度のカーボンナノチューブであることがわかった。
比較例1
実施例1と同様の反応系および固体触媒を用いて、900℃に到達した後、メタンガスを36cm/分、窒素ガスを736cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、1.88×10−2cm/秒である。このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を共鳴ラマン分光計で測定した結果、それぞれ波長が532nm、633nmのレーザーに対して、G/D比がそれぞれ9、10と実施例1〜3に比べて低いグラファイト化度のカーボンナノチューブであることがわかった。
比較例2
実施例1と同様の反応系および固体触媒を用いて、900℃に到達した後、メタンガスを110cm/分、窒素ガスを2250cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、5.64×10−2cm/秒である。このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を共鳴ラマン分光計で測定した結果、それぞれ波長が532nm、633nmのレーザーに対して、G/D比がそれぞれ8、12と実施例1〜3に比べて低いグラファイト化度のカーボンナノチューブであることがわかった。
実施例1〜3、比較例1〜2で得られたカーボンナノチューブ組成物の共鳴ラマン分光から求められるG/Dを表1に纏めた。本発明で得られたカーボンナノチューブ組成物のグラファイト化度が全ての比較例に比べて1.5〜2倍程度結晶性が高く、高品質のカーボンナノチューブであることがわかる。
Figure 2007197304
実施例4
(重質マグネシアへの金属塩の担持)
クエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業製)0.5gをメタノール(関東化学社製)25cmに溶解した。この溶液に、重質マグネシア(和光純薬工業製)を5g加え、超音波洗浄機で60分間処理し、40℃乃至60℃の恒温下で攪拌しながらメタノールを除去して乾燥し、軽質マグネシア粉末に金属塩が担持された固体触媒を得た。
(2層カーボンナノチューブを含有する組成物の合成)
上記触媒と、実施例1同様の反応系を用いて、900℃に到達した後、メタンガスを11cm/分、窒素ガスを225cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、5.70×10−3cm/秒である。このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を実施例1と同様に共鳴ラマン分光計で測定した結果、それぞれ波長が532nm、633nmのレーザーに対して、G/D比がそれぞれ17,11と比較的高いグラファイト化度のカーボンナノチューブであることがわかった。
比較例3
実施例4と同様の反応系および固体触媒を用いて、900℃に到達した後、メタンガス
を102cm/分、窒素ガスを2079cm/分(メタン濃度4.7%)、反応圧力1×10Pa(1気圧)の条件で60分供給した後、メタンガスの供給をやめ、窒素流通下で温度を室温まで冷却し、カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。この反応条件におけるメタンの線速は、5.28×10−2cm/秒である。このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を共鳴ラマン分光計で測定した結果、それぞれ波長が532nm、633nmのレーザーに対して、G/D比がそれぞれ8,6と実施例4に比べて低いグラファイト化度のカーボンナノチューブであることがわかった。
実施例4および比較例3で得られたカーボンナノチューブ組成物の共鳴ラマン分光から求められるG/Dを表2に纏めた。実施例4で得られたカーボンナノチューブ組成物のグラファイト化度が比較例3に比べて2倍程度結晶性が高いことから、異なる触媒においても本発明の効果が同様に得られることが証明された。
Figure 2007197304
本発明によれば、原料ガスをメタンまたはメタンを含有する混合物とし、前記原料ガス
を500〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナノチューブの合成方法であり、前記
原料ガス中のメタンを、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させることにより、
最適な効率でメタンと触媒が接触し、高品質で高グラファイト化度のカーボンナノチュー
ブを高純度で生成することが可能となる。
実施例1で得られたカーボンナノチューブ含有組成物の高分解能透過型電子 顕微鏡写真図である。 実施例1で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm)で ある。 実施例1で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm)で ある。 実施例2で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm)で ある。 実施例2で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm)で ある。 実施例3で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm)で ある。 実施例3で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm)で ある。 実施例4で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm)で ある。 実施例4で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm)で ある。 比較例1で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm) である。 比較例1で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm) である。 比較例2で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm) である。 比較例2で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm) である。 比較例3で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(532nm) である。 比較例3で得られた組成物の共鳴ラマン分光スペクトル図(633nm) である。

Claims (6)

  1. 原料ガスをメタンまたはメタンを含有する混合物とし、前記原料ガスを500〜1200℃で触媒と接触させるカーボンナノチューブの合成方法であり、前記原料ガス中のメタンを、9.5×10−3cm/秒以下の線速で流通させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
  2. 触媒が金属を担持した担体を含むものであることを特徴とする請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  3. 前記メタンを含有する混合物が、窒素、アルゴン、ヘリウムから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  4. 原料ガスを触媒に接触させる反応工程が、縦型の反応器から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  5. カーボンナノチューブの主成分が2層カーボンナノチューブである請求項1〜4のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  6. カーボンナノチューブの総本数の50%以上が外径3.0nm以下の2層カーボンナノチューブであり、波長が532および633nmである励起光を用いた共鳴ラマン分光測定において125cm−1以上、136cm−1未満の間に少なくとも1つ以上のピークがあることを特徴とするカーボンナノチューブを含有する組成物。
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