JP2004224651A - 2層カーボンナノチューブの製造法、2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物および電子放出材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】純度が高く、グラファイト層の欠陥が少なく、かつ太さの細い良質な2層カーボンナノチューブを効率良く得る製造方法を提供する。
【解決手段】単層カーボンナノチューブ、又は単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成する方法である。また、次の工程(1),(2)からなるものでもよい。(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、炭素含有化合物を接触させ、前記ゼオライトの表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程、(2)前記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で400〜900℃で加熱する工程。
【選択図】 なし
【解決手段】単層カーボンナノチューブ、又は単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成する方法である。また、次の工程(1),(2)からなるものでもよい。(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、炭素含有化合物を接触させ、前記ゼオライトの表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程、(2)前記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で400〜900℃で加熱する工程。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は2層カーボンナノチューブの製造法、2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物および電子放出材料に関し、さらに詳しくは、太さが細く、かつグラファイト層の欠陥が少ない2層カーボンナノチューブの製造法、2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物および電子放出材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有している。このうち、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層以上に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。多層カーボンナノチューブの中でも、特に2層のものを2層カーボンナノチューブという。
【0003】
これらのカーボンナノチューブは、高い機械的強度と導電性を有することから、燃料電池やリチウム2次電池用の負極材として、また樹脂や有機半導体との複合材料として、高強度材料、導電性を付与した樹脂、電磁波シールド材として期待されている。また、ナノサイズの空間を有することから、吸着材料、医薬用ナノカプセル、MRI造影剤として、また先端が非常に細いためフィールドエミッションの電子源として大きく期待されている。また、1本1本のナノチューブを用いるナノピンセット、走査型トンネル顕微鏡用プローブとして期待されている。いずれの用途の場合にも、ナノチューブは太さの細いものの方が有利であり、かつグラファイト層の欠陥が少ない方が特性的に優れている。
【0004】
特に2層カーボンナノチューブは、直径が細く、かつ耐久性が単層カーボンナノチューブよりも高いという特性がある。また、外側のグラファイトシートを化学修飾して官能基を付与したり、カーボンナノチューブと親和性の高い溶媒を表面付着させた場合には、外側のシートのグラファイト構造が部分的に壊れたり、電気伝導性が低減すると考えられるが、内側のシートは変質されずに残るため、カーボンナノチューブとしての特性を維持したまま溶媒や樹脂との親和性を付与することができるという特性がある。したがって、2層カーボンナノチューブの場合には,このような特性から上述の用途に用いたときに一層高い効果を発揮することができる。
【0005】
従来、このようなカーボンナノチューブの製造方法として、アーク放電法及び化学蒸着法(化学気相成長法と呼ばれることもあり、以下、CVD法という)による方法が知られている。
【0006】
前者のアーク放電法は、真空中又は不活性気体雰囲気中で炭素棒を電極として、高電圧・高電流のアーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを製造するものであって、カーボンナノチューブは陰極堆積物中にグラファイト、カーボンナノパーティクルなどと一緒に得られる。後者のCVDによる方法は、鉄、ニッケルなどの金属微粒子の存在下で原料ガスを数百℃で反応させることにより、カーボンナノチューブを製造するものである。このときの原料ガスとしては、ベンゼン、トルエン、オルトメチルジアリルケトン、アセチレン、エチレン、メタン、エタノール等が用いられる。
【0007】
アーク放電法により作られたカーボンナノチューブは、グラファイト層の欠陥の少ないナノチューブが得られるが、アモルファスカーボンなどの不純物が多いという欠点がある。また、CVD法で作られたカーボンナノチューブは、不純物が少なく、しかも安価にカーボンナノチューブを製造することができる利点があるが、生成したカーボンナノチューブはグラファイト層に欠陥が多いため、後処理として2000℃程度の熱処理をしないと、欠陥の少ないグラファイト層が形成されないという欠点がある。また、いずれの方法を用いても、2層カーボンナノチューブは生成しにくいという欠点があった。
【0008】
このような問題を解決する方法として、J.L.Hutchisonらは、アーク放電法を用い、グラファイト電極にニッケル、コバルト、鉄、硫黄をそれぞれ2.6,0.7,1.45,0.75atom%添加し、アルゴン/水素混合ガス中で75〜80Aのアーク電流下で、カーボンナノチューブを合成する手法を試みている。この方法を用いることで、多元系触媒作用で2層カーボンナノチューブを選択的に合成できるとしている。しかし、2層カーボンナノチューブは生成できても、生成物中に金属粒子、アモルファスカーボン、およびグラファイト性カーボンが大量に混入し、目的とするカーボンナノチューブの純度を高められないといった従来からの問題点は解決できていなかった。また、ラマン分析の結果、G/D比は高いものの、Gバンドが分裂しておらず、純度はあまり高くなかった(非特許文献1)。
【0009】
また、Hongwei Zhuらは、CVD法を用い、フェロセンを触媒にn−ヘキサンを炭素源に用いて、チオフェン共存下で1100℃〜1200℃でカーボンナノチューブを合成する方法を試みている。この方法を用いることで、共存する硫黄の効果で2層カーボンナノチューブを合成できるとしている。しかし、2層カーボンナノチューブ以外に、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが共存し、かつ、生成物中に金属粒子、アモルファスカーボンが混入し、目的とするカーボンナノチューブの純度を高められないといった従来からの問題点は、本法でも解決できていなかった(非特許文献2)。
【0010】
また、Fullerene International CorporationのMoravsky Alexanderらは、アーク放電法を用い、グラファイト電極にニッケル、コバルト、鉄、硫黄をそれぞれ11.6,3.1,6.1,1.8atom%添加し、アルゴン/水素混合ガス中で80Aのアーク電流下で、カーボンナノチューブを合成する方法を試みている。この方法を用いることことにより、多元系触媒作用で2層カーボンナノチューブを選択的に合成できるとしている。しかし、2層カーボンナノチューブは生成できても、生成物中に金属粒子、アモルファスカーボン、およびグラファイト性カーボンが大量に混入し、目的とするカーボンナノチューブの純度を高められないといった従来からの問題点は解決できていなかった(特許文献1)。
【0011】
【非特許文献1】
カーボン(Carbon 39(2001) 761−770)
【非特許文献2】
カーボン(Carbon 40(2002) 2023−2025)
【特許文献1】
PCT WO02/30816
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題を解消し、太さが細く、純度が高く、かつグラファイト層の欠陥が少ない2層カーボンナノチューブを効率よく生産可能にする製造法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、上記製法により得られる2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物及びそれからなる電子放出材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は下記の三つの方法を提供する。
【0015】
すなわち、本発明の第1番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第2番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第3番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、次の工程(1),(2)からなることを特徴とするものである。
(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、炭素含有化合物を接触させ、前記ゼオライトの表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程。
(2)前記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で400〜900℃で加熱する工程。
【0018】
これらの本発明の製造法によれば、グラファイト層の欠陥が少ないカーボンナノチューブを直接生成するため、後処理でグラファイト化するための熱処理(温度2000℃以上)を不要にすることが可能になる。
【0019】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したときのチューブ内径が0.7nm以下の細い2層カーボンナノチューブを得ることができる。特に、次のような特徴を有する2層カーボンナノチューブを得ることができ、これら2層カーボンナノチューブは、電子放出材料の構成材として優れている。すなわち、
(1)共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたときに、G/D比が20以上であること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測され、該2層カーボンナノチューブの片端が金属触媒を介してゼオライトに接しているか、又は開放端になっていること。
(3)レーザー波長488,514,633nmの3種類から選ばれるいずれか1つの波長を用いた共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、A/B<2.0、より好ましくは A/B<1.0 の関係が成り立つスペクトルが観察されること。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の第1番目の2層カーボンナノチューブの製造法では、単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱するものである。ここで単層カーボンナノチューブとは、グラファイトの1枚面を1層に巻いた構造をしており、2層カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を2層に巻いたものをいう。単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱して2層カーボンナノチューブが得られる理由は明らかでないが、以下のように推測できる。
【0021】
単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱すると、単層カーボンナノチューブの炭素六員環構造が部分的に分解し、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、アルコールなどが生成すると考えられる。また、他の単層カーボンナノチューブでは、末端のキャップ構造が壊れ、開放端となることが考えられる。この末端に開放端を有する単層カーボンナノチューブのチューブ内に、生成した炭化水素などが吸着し、炭素結合の再構築が起こることにより2層カーボンナノチューブへと変換すると考えられる。
【0022】
また、本発明の第2番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成する。
【0023】
上述した単層カーボンナノチューブから2層カーボンナノチューブを合成する機構において、酸化分解により生じた含炭素化合物を2層カーボンナノチューブへと変換するためには、触媒となる物質が共存することが好ましい。そのため、本発明で使用する単層カーボンナノチューブを含む組成物には、金属や金属酸化物が含まれることが好ましい。例えば、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、チタン、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タングステン、レニウム、白金、金などの遷移金属を少なくとも1種類以上含む金属触媒や、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、セリア、上記遷移金属の酸化物など、少なくとも1種類以上の酸化物、およびゼオライトが好ましく用いられる。金属触媒は、上述の単層カーボンナノチューブを2層カーボンナノチューブに変換する触媒として有効であるし、酸化物やゼオライトは触媒としてだけではなく、金属触媒を担持する担体としても有効である。
【0024】
また、単層カーボンナノチューブを含む組成物には、ゼオライトを含むことが好ましい。本発明においてゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有する結晶性無機酸化物からなるものである。ここに分子サイズとは、世の中に存在する分子のサイズの範囲であり、一般的には、0.2nmから2nm程度の範囲を意味する。さらに具体的には、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
【0025】
結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートとしては、特に種類は制限されないが、例えば、アトラス オブ ゼオライト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、1996)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites, 17(1/2),1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性物質が挙げられる。また、本発明におけるゼオライトは、本文献に掲載されているものに限定されるものではなく、近年次々と合成されている新規な構造を有するゼオライトも含む。好ましい構造は、入手が容易なFAU型、MFI型、MOR型、BEA型、LTL型、LTA型であるが、これに限定されない。
【0026】
高温で処理するため耐熱性が高いものが好ましく、耐熱性Y型(USY型、例えば、東ソー製HSZ−390HUA)、MFI型(シリカライト−1型、シリカライト−2型)や、ゼオライト骨格中にケイ素やアルミニウム以外の元素を含んだメタルシリケート型ゼオライトが好ましく用いられる。
【0027】
単層カーボンナノチューブとゼオライトが含まれる組成物であれば、その形態は特に限定されない。単層カーボンナノチューブとゼオライトを別々に用意し、それらを混合しても良い。また、単層カーボンナノチューブがゼオライトと化学結合していてもよい。組成物には単層カーボンナノチューブとゼオライト以外の物質が含まれていても良い。例えば、ゼオライト上に担持した金属触媒から単層カーボンナノチューブが生えている構造でも良い。
【0028】
組成物にゼオライトを含むことで、単層カーボンナノチューブから2層カーボンナノチューブへの変換が効率的に進行する。その理由は明らかではないが、以下のように推測している。
【0029】
一つ目の理由は、ゼオライト自体が触媒として働き、単層カーボンナノチューブの分解、生成した含炭素化合物の改質、および2層カーボンナノチューブの生成に触媒として働くことが考えられる。二つ目の理由は、単層カーボンナノチューブとゼオライトとが混在することで、単層カーボンナノチューブを効率よく分散化でき、酸素ガスと単層カーボンナノチューブの接触効率を高めることにあると考えられる。また、三つ目の理由は、ゼオライト外表面に金属触媒が担持されている場合、金属触媒を高分散に担持、および保持することができ、それら金属触媒が微粒子状で存在できることから、単層カーボンナノチューブの分解、生成した含炭素化合物の改質、および2層カーボンナノチューブの生成に有効な触媒として働くことが考えられる。
【0030】
ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱する2層カーボンナノチューブの製造法において、酸素共存下で加熱する工程は必須である。酸素濃度が高いときには、単層カーボンナノチューブは低温でも分解しやすく、一方、酸素濃度が低いときには、単層カーボンナノチューブは高温でも分解しにくい。そこで、酸素濃度と加熱温度の関係を、下記の式で規定される図1で示す領域内にすることが、2層カーボンナノチューブの収率を向上する上で好ましい。なお、下記式では、酸素濃度をx(vol%)、加熱温度をy(℃)とする。
0.13x2−11x+610≦ y≦0.15x2−13x+910
1≦x≦50
【0031】
加熱温度yが、(0.13x2−11x+610)℃以下では、単層カーボンナノチューブを分解するために十分な酸素濃度と反応温度がないため、単層カーボンナノチューブの分解が起こらない。一方、加熱温度xが(0.15x2−13x+910)℃以上では、酸素濃度と反応温度が高すぎるため、単層カーボンナノチューブの改質が進行しすぎて、主生成物は二酸化炭素となり、生成した炭化水素などが単層カーボンナノチューブに取り込まれるよりも優先的に二酸化炭素となる。そのため、2層カーボンナノチューブがほとんど生成しなくなる。結局、上記の式に規定する領域内の酸素濃度と加熱温度を用いたとき、効率よく2層カーボンナノチューブが生成することができる。
【0032】
本発明において、ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱する時間は、短すぎると単層カーボンナノチューブがほとんど改質されない。一方、長すぎると、単層カーボンナノチューブが改質され2層カーボンナノチューブが生成しても、逐次反応で2層カーボンナノチューブが二酸化炭素まで酸化されてしまい好ましくない。そこで、10分から1時間加熱することが2層カーボンナノチューブの収率を高くする上で好ましく、より好ましくは、15分から45分にするのがよい。
【0033】
また、ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物としては、単層カーボンナノチューブの一端が金属を介してゼオライトに付着していることが好ましい。一般的に、ゼオライトを用いたCVD法によるカーボンナノチューブの製造法では、ゼオライト表面に金属触媒を担持させ、その金属触媒からカーボンナノチューブが生成させる。そのため、単層カーボンナノチューブとゼオライトは金属を介して接していることが一般的である。この場合、金属触媒をゼオライト外表面に高分散に担持および保持させることができ、それら金属触媒が微粒子状で存在することができるため、単層カーボンナノチューブの分解、生成した含炭素化合物の改質、および2層カーボンナノチューブの生成に有効な触媒として働くことが考えられる。
【0034】
金属触媒の種類は、特に限定されないが、好ましくは3〜12族の金属、特に好ましくは、5〜11族がよい。中でも、V,Mo,Fe,Co,Ni,Pd,Pt,Rh等が特に好ましく用いられる。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、反応中の状態を調べる手段がないので、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。
【0035】
金属は1種類だけを担持させても、2種類以上を担持させてもよいが、好ましくは、2種類以上を担持させるようにした方がよい。2種類の金属を担持させる場合は、Co,Ni,Pd,Pt,Rhと他の金属の組み合わせが特に好ましい。CoとFe,Ni,V,Mo,Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。
【0036】
ゼオライトに対する金属の担持方法は、特に限定されない。例えば、担持したい金属の塩を溶解させた非水溶液中(例えばエタノール溶液)又は水溶液中に、ゼオライトを含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ、窒素、水素、不活性ガスまたはその混合ガス又は真空中で高温(300〜600℃)で加熱することにより、ゼオライトに金属を担持させることができる(含浸法)。
【0037】
ゼオライトのような多孔性物質に金属を担持させるには、金属塩の水溶液量をなるべく少なくし、ゼオライトの細孔内に水溶液を吸着させ、余分な水溶液はろ過などで除去して乾燥させる平衡吸着法が好ましい。その理由は、ゼオライトの細孔径は均一であり、平衡吸着法で金属を担持させると比較的担持された金属の径が均一になり、生成したカーボンナノチューブの径が均一になるためである。
また、金属はゼオライト細孔入り口付近に存在し、高温下でも凝集しにくくなるので、特に耐熱性ゼオライトを用いた場合には、平衡吸着法は有効な金属の担持法である。
【0038】
または、金属塩の水溶液にゼオライトを含浸し、含浸法又は平衡吸着法で金属塩を担持させ、乾燥させ、窒素、水素、不活性ガスまたはその混合ガスまたは真空中で高温(300〜600℃)で加熱することにより、耐熱性ゼオライトの結晶表面に金属を担持させることもできる。勿論、金属塩を担持した後、空気中で焼成して金属酸化物にした後、水素を使用して還元することにより、ゼオライトに金属を担持させることもできる。
【0039】
または、コバルトシリケート、鉄シリケートなどのメタロシリケートを合成し、これを高温で焼成し、骨格中のコバルト、鉄をゼオライト表面に析出させ、微粒子化する方法を用いることもできる。本方法を用いることで、数十nm以上の大きさを持つ金属粒子の生成を抑制できるため、層数が多い多層カーボンナノチューブや、外径が50nm以上のナノファイバーの生成を抑制することができる。本方法として、コバルトシリケート、鉄シリケートなど、1種類のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトだけでなく、鉄、コバルト、チタンなど、2種類以上のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトも好ましく用いられる。
【0040】
金属担持量は、多いほどカーボンナノチューブの収量が上がるが、多すぎると金属の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。金属担持量が少ないと、担持される金属の粒子径が小さくなり、細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な金属担持量は、ゼオライトの細孔容量や外表面積、担持方法によって異なる。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。
【0041】
単層カーボンナノチューブの一端が金属を介してゼオライトに付着していることは透過型電子顕微鏡で観察することができる。ここでいう高分解能電子顕微鏡によるカーボンナノチューブの観察手法は、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンナノチューブを含有する試料をエタノールなど揮発性の高い溶媒に添加し、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させた後、カーボンナノチューブを含む溶媒数滴をマイクログリッド上に滴下し、溶媒を揮発させた後に、高分解能電子顕微鏡で観察する手法が好ましく用いられる。カーボンナノチューブを観察するためには、倍率を10万倍以上、好ましくは20万倍以上に上げる手法が用いられる。観察されるカーボンナノチューブの壁を構成するグラフェンシートが1本で観察されるものが単層カーボンナノチューブである。
【0042】
本発明の第3番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、以下の二つの工程(1),(2)からなるようにしたものである。
(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、該ゼオライトに炭素含有化合物を接触させ、そのゼオライト表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程。
(2)上記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で、400〜900℃で加熱する工程。
【0043】
ここで、工程(1)は、単層カーボンナノチューブを生成する工程である。本工程(1)により、金属を介してゼオライトに付着した単層カーボンナノチューブを生成することができる。
【0044】
反応温度は、500℃より低いと、単層カーボンナノチューブはほとんど生成しない。また、1200℃より高いと、使用する反応器の材質に制約があると共に、ナノチューブ同士の接合が始まるため好ましくない。好ましくは反応温度が600℃〜1000℃の時が特に単層カーボンナノチューブを生成しやすく、より好ましくは700℃〜900℃にするとよい。
【0045】
本発明で用いる炭素含有化合物としては、炭化水素や一酸化炭素が好ましく用いられる。炭化水素は芳香族であっても、非芳香族であってもよい。芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン又はこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレンもしくはアセチレン、又はこれらの混合物等を使用することができる。
【0046】
炭化水素には、酸素を含むものがよい。例えば、メタノール若しくはエタノール、プロパノール、ブタノールのごときアルコール類、アセトンのごときケトン類、及びホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドのごときアルデヒド類、トリオキサン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルのごときエーテル酸類、酢酸エチルなどのエステル類又はこれらの混合物であってもよい。
【0047】
一方、上記工程(2)は、2層カーボンナノチューブを生成する工程であり、(1)の工程で製造した単層カーボンナノチューブを用いれば、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で、400〜900℃で加熱することにより、効率よく2層カーボンナノチューブを得ることができる。特に、(1)の工程の後、炉の温度を室温程度まで下げ、生成物を反応管から取り出さずに、酸素含有ガスを反応管内に供給し、再度昇温しても良い。また、(1)の工程の後、炉の温度を反応温度程度に維持し、生成物を反応管から取り出さずに、酸素含有ガスを反応管内に供給し、2層カーボンナノチューブを生成しても良い。酸素以外のガスとしては、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが好ましく用いられる。
【0048】
本発明では、また上記工程(1)を実施するとき、金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを用い、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、600〜1000℃でアセチレンなどの炭化水素と接触させることで、ゼオライト表面に単層カーボンナノチューブを生成することが好ましく適用される。また、炭化水素として、上述のアセチレンの代わりに含酸素有機化合物や一酸化炭素を用いる方法も好ましく用いられる。また、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で合成を行なう代わりに、減圧下で単層カーボンナノチューブを生成する方法も好ましく用いられる。減圧下で炭化水素の代わりに含酸素有機化合物や一酸化炭素を用いる方法も好ましく用いられる。減圧する場合は、系内の圧力は1333Pa以下に減圧し、炭化水素、酸素含有有機化合物又は一酸化炭素を分圧1333〜13333Paで供給し、ゼオライトに担持された触媒に接触させることで、ゼオライト表面に単層カーボンナノチューブを生成する方法が好ましく適用される。
【0049】
また、反応温度は500℃〜1200℃、反応圧力は減圧とすることが好ましい。減圧の程度は1333Pa以下であれば問題ないが、圧力が低いほど、空気や不活性ガスなど、反応に寄与しないガスの量が低減し、グラファイト化度の高い単層カーボンナノチューブを生成させることができる。この観点から、減圧の程度は667Pa以下が最も好ましい。また、炭素含有化合物の濃度が高すぎると、単層カーボンナノチューブだけでなく、炭素質付着物が大量に析出するため好ましくない。したがって、炭素含有化合物の分圧は1333〜13333Paが好ましい。
【0050】
また、上述の炭素含有化合物としては、アルコールを使用することが好ましい。アルコールとしては、例えばメタノール若しくはエタノール、プロパノール、ブタノールが好ましく、ながでも特にエタノールが最も好ましい。
【0051】
本発明の製造法から得られる2層カーボンナノチューブは、下記の構成要件を有することで特徴づけられる。
【0052】
(1)共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/D比が20以上であること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測され、その片端が金属触媒を介してゼオライトに接しているか、または開放端になっていること。
である。
【0053】
共鳴ラマン散乱では、100〜350cm−1付近のピークがRBM(Radial Breathing Mode)、1560〜1600cm−1付近の構造がG−bandであり、その他に不純物のアモルファスやカーボンナノチューブの欠陥に起因するものとして、1310〜1350cm−1付近のD−bandと呼ばれるピークが観測される。カーボンナノチューブは、キラリティー、直径により、それぞれ異なった電子構造をとる。その中で、励起光がカーボンナノチューブのEg(エネルギーギャップ)と一致する場合に共鳴が起こり、ラマンスペクトルが発現する。そのため、励起光波長を変えていくと、次々とスペクトルは変化する。カーボンナノチューブのG−bandは共鳴効果により強調されるため、試料の純度によって強度が大きく変化する。
【0054】
一方、1330cm−1付近のブロードなD−bandは不純物による寄与が大きく、これは共鳴効果により強い強調を受けないため、G−bandとD−bandの強度比をとることにより、カーボンナノチューブ試料の純度を見積ることが可能となる。本発明の製造方法を用いることで、純度の高いカーボンナノチューブを製造することができ、その結果、G/D比を20以上とすることができる。
【0055】
また、高分解能透過型電子顕微鏡による2層カーボンナノチューブの観測方法については、上述の通りである。
【0056】
また、本発明の製造法によれば、次の要件を全て満たす2層カーボンナノチューブが得られる。
【0057】
(1)レーザー波長488,514,633nmの3種類から選ばれるいずれか1つの波長を用いた共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、A/B<1.0 の関係が成り立つスペクトルが観察されること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測されること。
である。
【0058】
ここで、共鳴ラマン散乱測定により、150〜350cm−1の領域にピークが観察されるとは、RBM(Radial Breathing Mode)が観察されることを言う。RBMとは、細いカーボンナノチューブの伸縮振動に起因するピークであり、直径0.7〜1.6nmのカーボンナノチューブが存在することを示唆している。ここで論ずる領域はRBMであり、振動数とカーボンナノチューブ直径の関係は片浦らの報告に詳しい(Eur. Phys. J. B 22, 3, (2001) pp. 307−320.)。例えば、Aに帰属されるカーボンナノチューブの直径は約1.25nm、Bに帰属される中空状ナノファイバーの直径は1.1nm以下である。特に、このように細いカーボンナノチューブが存在することで、樹脂添加剤に用いたときには高いナノ添加効果が発現し、フィールドエミッションディスプレイに用いたときには、高い電界放出能を発現することができる。
【0059】
また、高分解能透過型電子顕微鏡による2層カーボンナノチューブの観測方法に関しては、上述の通りである。特に、本発明の製造法を用いると、内径が0.7nm以下の細い2層カーボンナノチューブを得やすくすることができる。このような細い2層カーボンナノチューブが得られる原因は定かでないが、原料として用いる単層カーボンナノチューブの内側に2層目が生成するために、このように細い内径となるものと推測される。
【0060】
2層カーボンナノチューブの内径が0.7nm以下であることは、ラマン分光のRBMでも確認することができる。本発明の製造法を用いることで、350cm−1程度のエネルギー領域に強いピークが観察されるからである。これは内径が0.7nm以下であることを意味する。
【0061】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、2層カーボンナノチューブの少なくとも片端の最外層が開放端となっている2層カーボンナノチューブが得られる。開放端があることにより、官能基を付与させやすく、ポリマーなどとの親和性を向上することができる。また、フィールドエミッションディスプレイとして用いた場合、2層カーボンナノチューブは直径が細く電荷の集中が起こりやすいだけでなく、開放端になっていることで一層電子が放出されやすくなる。
【0062】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、2層カーボンナノチューブの少なくとも片端の層全てが開放端になっている2層カーボンナノチューブが得られる。片端の層全てが開放端となることで、カーボンナノチューブのチューブ内にガスなどを吸着させることができ、吸着剤用途において優れた効果を発揮することが出来る。
【0063】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、2層カーボンナノチューブの両端の層全てが開放端になっている2層カーボンナノチューブを得ることができる。チューブ両端の層全てが開放端となっていることにより、カーボンナノチューブのチューブ内へのガス吸着がより一層起こりやすくなり、吸着剤用途でより高い効果を得ることができる。
【0064】
これら2層カーボンナノチューブの開放端は、製造直後から形成されているものが多い。また、精製処理によってゼオライト触媒からカーボンナノチューブが切り離されたときに開放端になる場合もある。
【0065】
触媒金属は、その大部分が触媒担体とカーボンナノチューブの界面に存在するため、後処理によりカーボンナノチューブと容易に分離することができる。その分離方法は特に限定されないが、例えば、カーボンナノチューブは溶解しないが、担体であるゼオライトや金属触媒が溶解する溶液中で処理する方法が好ましい。このような溶液として、フッ酸、硫酸、硝酸、塩酸の水溶液が好ましく使用される。また、後処理の効果を高めるため、予め、または処理の途中に、300℃から500℃程度の空気中で焼成し、触媒金属のまわりを覆うアモルファスカーボンを除去することも好ましい。
【0066】
本発明の製造法によれば、2層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ組成物も得ることができる。組成物としては、上述した本発明の製造法から得られる2層カーボンナノチューブを含んでいれば、その他の成分は特に限定されない。2層カーボンナノチューブの原料である単層カーボンナノチューブであってもよいし、触媒金属やゼオライト担体であってもよい。また、生成後の2層カーボンナノチューブを溶媒や樹脂などに分散化したものであってもよい。
【0067】
本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブを含む組成物は、これを電子放出材料として利用することができる。本発明による2層カーボンナノチューブは、直径が細く、かつ、グラファイト化度が高く、純度が高いため、極めて良好な電子放出能を発現するからである。
【0068】
電子放出材料としては特に限定するものでないが、例えば、燃料電池やリチウム2次電池用の負極材、樹脂や有機半導体との複合材料、電磁波シールド材、吸着材料、医薬用ナノカプセル、MRI造影剤、フィールドエミッションの電子源、ナノピンセット、走査型トンネル顕微鏡用プローブなどを例示することができる。
【0069】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
【0070】
【実施例】
実施例1
〔単層カーボンナノチューブ合成用触媒の調製〕
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)0.08gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)0.11gとをエタノール(ナカライテスク社製)7mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液にUSY型ゼオライト(東ソー製HSZ−390HUA)を1.0g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、120℃の恒温下でエタノールを除去することにより、金属担持触媒を得た。
【0071】
〔単層カーボンナノチューブの合成〕
内径100mmの石英管の中央部の石英プレート上に、先に調製した金属塩を担持したUSY型ゼオライトを0.09gとった。ロータリーポンプで系内の圧力を約107Paまで減圧した時点で、ロータリーポンプで減圧しながら、アルゴンガスを50ml/min.で供給し、石英管を管状電気炉で300℃まで昇温した。石英管中央付近の温度が300℃に達してから30分間、アルゴンガスの供給を続けた後に、アルゴンガスを停止し、炉内温度を800℃へ昇温した。
次いで、石英管に対し、ロータリーポンプ側を下流とし、ロータリーポンプの上流側の室温領域にデシケーターを設置し、その中にエタノール(ナカライテスク社製)約100mlが入ったビーカーを設置した。デシケーターと石英管の接合バルブを開き、エタノール蒸気圧(約8000Pa)で石英管内を満たした。30分間エタノール蒸気で満たした後に、エタノール入りビーカーと石英管の接合バルブを閉じた。その後、石英管内をロータリーポンプで減圧したまま、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。ゼオライト触媒は黒く変質していた。
【0072】
〔単層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブであった。また、単層カーボンナノチューブは、金属触媒を介してゼオライトに接していた。
【0073】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。
【0074】
〔2層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の2層カーボンナノチューブであった(図2)。内径が0.7nm以下の細い2層カーボンナノチューブも観察された(図3)。
【0075】
〔2層カーボンナノチューブのラマン分析〕
上記生成物のラマンスペクトルの結果(図4)、波長633nmにおいて、G/D比は20以上でありGバンドには分裂も観察された。また、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、A/D=0.8であった。
【0076】
〔2層カーボンナノチューブの精製〕
合成した2層カーボンナノチューブ/USY型ゼオライト/金属触媒混合物を5%フッ化水素酸水溶液に加え、3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、USY型ゼオライトに起因するケイ素の濃度は検出限界以下であった。次いで、空気中300℃で2時間焼成した。その後、1規定 塩酸水溶液中で3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、触媒金属に起因するコバルトは0.1wt%、鉄は0wt%であった。
【0077】
〔精製した2層カーボンナノチューブの観察〕
精製処理後のサンプルを透過電子顕微鏡で観察した結果、処理前と同様な2層ナノチューブが観察された。また、観察された2層カーボンナノチューブの端は、多くが開放端であった(図5)。
【0078】
実施例2
〔単層カーボンナノチューブの精製〕
実施例1で合成した単層カーボンナノチューブ/USY型ゼオライト/金属触媒混合物を5%フッ化水素酸水溶液に加え、3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、USY型ゼオライトに起因するケイ素の濃度は検出限界以下であった。次いで、空気中300℃で2時間焼成した。その後、1規定 塩酸水溶液中で3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、触媒金属に起因するコバルトは0.1wt%、鉄は0wt%であった。なお、処理後のサンプルを透過電子顕微鏡で観察した結果、処理前と同様な単層ナノチューブが観察された。
【0079】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。
【0080】
〔2層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質がわずかに見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブのままであった。2層カーボンナノチューブは数本観察された。
【0081】
実施例3
〔他法による単層カーボンナノチューブの観察〕
単層カーボンナノチューブ(CNI社製Purified)を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、ほとんどが直径2nm以下の単層カーボンナノチューブであった。また、単層カーボンナノチューブにはほとんど金属触媒は含まれなかった。
【0082】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。
【0083】
〔2層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質がわずかに見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブのままであった。2層カーボンナノチューブは数本観察された。
【0084】
比較例1
〔酸素比共存下での単層カーボンナノチューブの加熱処理〕
請求項1で合成した単層カーボンナノチューブを生成することなく、石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管内へは、60cc/min.のアルゴンガスを流した。反応管内のガスが十分に置換された後に、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、大気解放後にゼオライト触媒を回収した。
【0085】
〔カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質がわずかに見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブのままであった。2層カーボンナノチューブは全く観察されなかった。
【0086】
【発明の効果】
上述したように本発明の製造法によると、太さが細く、純度が高く、かつグラファイト層の欠陥が少ない良質な2層カーボンナノチューブを効率良く得ることができる。特に、グラファイト層の欠陥が少ない2層カーボンナノチューブを生成できるため、後処理でグラファイト化するための費用がかかる高温の熱処理を不要にすることが可能になる。また、内径が0.7nm以下の特に細い2層カーボンナノチューブを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造法の一つにおいて、2層カーボンナノチューブを合成する酸素濃度と加熱温度の相関図である。
【図2】(a)は、本発明において得られた2層カーボンナノチューブの断面部分のTEM写真、(b)は、本発明において得られた2層カーボンナノチューブのバンドルのTEM写真である。
【図3】本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブのTEM写真と直径内径分析結果である。
【図4】本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブのラマン分光スペクトルである。
【図5】本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブの開放端部分のTEM写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は2層カーボンナノチューブの製造法、2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物および電子放出材料に関し、さらに詳しくは、太さが細く、かつグラファイト層の欠陥が少ない2層カーボンナノチューブの製造法、2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物および電子放出材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有している。このうち、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層以上に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。多層カーボンナノチューブの中でも、特に2層のものを2層カーボンナノチューブという。
【0003】
これらのカーボンナノチューブは、高い機械的強度と導電性を有することから、燃料電池やリチウム2次電池用の負極材として、また樹脂や有機半導体との複合材料として、高強度材料、導電性を付与した樹脂、電磁波シールド材として期待されている。また、ナノサイズの空間を有することから、吸着材料、医薬用ナノカプセル、MRI造影剤として、また先端が非常に細いためフィールドエミッションの電子源として大きく期待されている。また、1本1本のナノチューブを用いるナノピンセット、走査型トンネル顕微鏡用プローブとして期待されている。いずれの用途の場合にも、ナノチューブは太さの細いものの方が有利であり、かつグラファイト層の欠陥が少ない方が特性的に優れている。
【0004】
特に2層カーボンナノチューブは、直径が細く、かつ耐久性が単層カーボンナノチューブよりも高いという特性がある。また、外側のグラファイトシートを化学修飾して官能基を付与したり、カーボンナノチューブと親和性の高い溶媒を表面付着させた場合には、外側のシートのグラファイト構造が部分的に壊れたり、電気伝導性が低減すると考えられるが、内側のシートは変質されずに残るため、カーボンナノチューブとしての特性を維持したまま溶媒や樹脂との親和性を付与することができるという特性がある。したがって、2層カーボンナノチューブの場合には,このような特性から上述の用途に用いたときに一層高い効果を発揮することができる。
【0005】
従来、このようなカーボンナノチューブの製造方法として、アーク放電法及び化学蒸着法(化学気相成長法と呼ばれることもあり、以下、CVD法という)による方法が知られている。
【0006】
前者のアーク放電法は、真空中又は不活性気体雰囲気中で炭素棒を電極として、高電圧・高電流のアーク放電を行うことにより、カーボンナノチューブを製造するものであって、カーボンナノチューブは陰極堆積物中にグラファイト、カーボンナノパーティクルなどと一緒に得られる。後者のCVDによる方法は、鉄、ニッケルなどの金属微粒子の存在下で原料ガスを数百℃で反応させることにより、カーボンナノチューブを製造するものである。このときの原料ガスとしては、ベンゼン、トルエン、オルトメチルジアリルケトン、アセチレン、エチレン、メタン、エタノール等が用いられる。
【0007】
アーク放電法により作られたカーボンナノチューブは、グラファイト層の欠陥の少ないナノチューブが得られるが、アモルファスカーボンなどの不純物が多いという欠点がある。また、CVD法で作られたカーボンナノチューブは、不純物が少なく、しかも安価にカーボンナノチューブを製造することができる利点があるが、生成したカーボンナノチューブはグラファイト層に欠陥が多いため、後処理として2000℃程度の熱処理をしないと、欠陥の少ないグラファイト層が形成されないという欠点がある。また、いずれの方法を用いても、2層カーボンナノチューブは生成しにくいという欠点があった。
【0008】
このような問題を解決する方法として、J.L.Hutchisonらは、アーク放電法を用い、グラファイト電極にニッケル、コバルト、鉄、硫黄をそれぞれ2.6,0.7,1.45,0.75atom%添加し、アルゴン/水素混合ガス中で75〜80Aのアーク電流下で、カーボンナノチューブを合成する手法を試みている。この方法を用いることで、多元系触媒作用で2層カーボンナノチューブを選択的に合成できるとしている。しかし、2層カーボンナノチューブは生成できても、生成物中に金属粒子、アモルファスカーボン、およびグラファイト性カーボンが大量に混入し、目的とするカーボンナノチューブの純度を高められないといった従来からの問題点は解決できていなかった。また、ラマン分析の結果、G/D比は高いものの、Gバンドが分裂しておらず、純度はあまり高くなかった(非特許文献1)。
【0009】
また、Hongwei Zhuらは、CVD法を用い、フェロセンを触媒にn−ヘキサンを炭素源に用いて、チオフェン共存下で1100℃〜1200℃でカーボンナノチューブを合成する方法を試みている。この方法を用いることで、共存する硫黄の効果で2層カーボンナノチューブを合成できるとしている。しかし、2層カーボンナノチューブ以外に、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが共存し、かつ、生成物中に金属粒子、アモルファスカーボンが混入し、目的とするカーボンナノチューブの純度を高められないといった従来からの問題点は、本法でも解決できていなかった(非特許文献2)。
【0010】
また、Fullerene International CorporationのMoravsky Alexanderらは、アーク放電法を用い、グラファイト電極にニッケル、コバルト、鉄、硫黄をそれぞれ11.6,3.1,6.1,1.8atom%添加し、アルゴン/水素混合ガス中で80Aのアーク電流下で、カーボンナノチューブを合成する方法を試みている。この方法を用いることことにより、多元系触媒作用で2層カーボンナノチューブを選択的に合成できるとしている。しかし、2層カーボンナノチューブは生成できても、生成物中に金属粒子、アモルファスカーボン、およびグラファイト性カーボンが大量に混入し、目的とするカーボンナノチューブの純度を高められないといった従来からの問題点は解決できていなかった(特許文献1)。
【0011】
【非特許文献1】
カーボン(Carbon 39(2001) 761−770)
【非特許文献2】
カーボン(Carbon 40(2002) 2023−2025)
【特許文献1】
PCT WO02/30816
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題を解消し、太さが細く、純度が高く、かつグラファイト層の欠陥が少ない2層カーボンナノチューブを効率よく生産可能にする製造法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、上記製法により得られる2層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ組成物及びそれからなる電子放出材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は下記の三つの方法を提供する。
【0015】
すなわち、本発明の第1番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第2番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第3番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、次の工程(1),(2)からなることを特徴とするものである。
(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、炭素含有化合物を接触させ、前記ゼオライトの表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程。
(2)前記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で400〜900℃で加熱する工程。
【0018】
これらの本発明の製造法によれば、グラファイト層の欠陥が少ないカーボンナノチューブを直接生成するため、後処理でグラファイト化するための熱処理(温度2000℃以上)を不要にすることが可能になる。
【0019】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したときのチューブ内径が0.7nm以下の細い2層カーボンナノチューブを得ることができる。特に、次のような特徴を有する2層カーボンナノチューブを得ることができ、これら2層カーボンナノチューブは、電子放出材料の構成材として優れている。すなわち、
(1)共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたときに、G/D比が20以上であること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測され、該2層カーボンナノチューブの片端が金属触媒を介してゼオライトに接しているか、又は開放端になっていること。
(3)レーザー波長488,514,633nmの3種類から選ばれるいずれか1つの波長を用いた共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、A/B<2.0、より好ましくは A/B<1.0 の関係が成り立つスペクトルが観察されること。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の第1番目の2層カーボンナノチューブの製造法では、単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱するものである。ここで単層カーボンナノチューブとは、グラファイトの1枚面を1層に巻いた構造をしており、2層カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を2層に巻いたものをいう。単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱して2層カーボンナノチューブが得られる理由は明らかでないが、以下のように推測できる。
【0021】
単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱すると、単層カーボンナノチューブの炭素六員環構造が部分的に分解し、炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、アルコールなどが生成すると考えられる。また、他の単層カーボンナノチューブでは、末端のキャップ構造が壊れ、開放端となることが考えられる。この末端に開放端を有する単層カーボンナノチューブのチューブ内に、生成した炭化水素などが吸着し、炭素結合の再構築が起こることにより2層カーボンナノチューブへと変換すると考えられる。
【0022】
また、本発明の第2番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成する。
【0023】
上述した単層カーボンナノチューブから2層カーボンナノチューブを合成する機構において、酸化分解により生じた含炭素化合物を2層カーボンナノチューブへと変換するためには、触媒となる物質が共存することが好ましい。そのため、本発明で使用する単層カーボンナノチューブを含む組成物には、金属や金属酸化物が含まれることが好ましい。例えば、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、チタン、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タングステン、レニウム、白金、金などの遷移金属を少なくとも1種類以上含む金属触媒や、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、セリア、上記遷移金属の酸化物など、少なくとも1種類以上の酸化物、およびゼオライトが好ましく用いられる。金属触媒は、上述の単層カーボンナノチューブを2層カーボンナノチューブに変換する触媒として有効であるし、酸化物やゼオライトは触媒としてだけではなく、金属触媒を担持する担体としても有効である。
【0024】
また、単層カーボンナノチューブを含む組成物には、ゼオライトを含むことが好ましい。本発明においてゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有する結晶性無機酸化物からなるものである。ここに分子サイズとは、世の中に存在する分子のサイズの範囲であり、一般的には、0.2nmから2nm程度の範囲を意味する。さらに具体的には、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
【0025】
結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性メタロアルミノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートとしては、特に種類は制限されないが、例えば、アトラス オブ ゼオライト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、1996)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites, 17(1/2),1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性物質が挙げられる。また、本発明におけるゼオライトは、本文献に掲載されているものに限定されるものではなく、近年次々と合成されている新規な構造を有するゼオライトも含む。好ましい構造は、入手が容易なFAU型、MFI型、MOR型、BEA型、LTL型、LTA型であるが、これに限定されない。
【0026】
高温で処理するため耐熱性が高いものが好ましく、耐熱性Y型(USY型、例えば、東ソー製HSZ−390HUA)、MFI型(シリカライト−1型、シリカライト−2型)や、ゼオライト骨格中にケイ素やアルミニウム以外の元素を含んだメタルシリケート型ゼオライトが好ましく用いられる。
【0027】
単層カーボンナノチューブとゼオライトが含まれる組成物であれば、その形態は特に限定されない。単層カーボンナノチューブとゼオライトを別々に用意し、それらを混合しても良い。また、単層カーボンナノチューブがゼオライトと化学結合していてもよい。組成物には単層カーボンナノチューブとゼオライト以外の物質が含まれていても良い。例えば、ゼオライト上に担持した金属触媒から単層カーボンナノチューブが生えている構造でも良い。
【0028】
組成物にゼオライトを含むことで、単層カーボンナノチューブから2層カーボンナノチューブへの変換が効率的に進行する。その理由は明らかではないが、以下のように推測している。
【0029】
一つ目の理由は、ゼオライト自体が触媒として働き、単層カーボンナノチューブの分解、生成した含炭素化合物の改質、および2層カーボンナノチューブの生成に触媒として働くことが考えられる。二つ目の理由は、単層カーボンナノチューブとゼオライトとが混在することで、単層カーボンナノチューブを効率よく分散化でき、酸素ガスと単層カーボンナノチューブの接触効率を高めることにあると考えられる。また、三つ目の理由は、ゼオライト外表面に金属触媒が担持されている場合、金属触媒を高分散に担持、および保持することができ、それら金属触媒が微粒子状で存在できることから、単層カーボンナノチューブの分解、生成した含炭素化合物の改質、および2層カーボンナノチューブの生成に有効な触媒として働くことが考えられる。
【0030】
ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱する2層カーボンナノチューブの製造法において、酸素共存下で加熱する工程は必須である。酸素濃度が高いときには、単層カーボンナノチューブは低温でも分解しやすく、一方、酸素濃度が低いときには、単層カーボンナノチューブは高温でも分解しにくい。そこで、酸素濃度と加熱温度の関係を、下記の式で規定される図1で示す領域内にすることが、2層カーボンナノチューブの収率を向上する上で好ましい。なお、下記式では、酸素濃度をx(vol%)、加熱温度をy(℃)とする。
0.13x2−11x+610≦ y≦0.15x2−13x+910
1≦x≦50
【0031】
加熱温度yが、(0.13x2−11x+610)℃以下では、単層カーボンナノチューブを分解するために十分な酸素濃度と反応温度がないため、単層カーボンナノチューブの分解が起こらない。一方、加熱温度xが(0.15x2−13x+910)℃以上では、酸素濃度と反応温度が高すぎるため、単層カーボンナノチューブの改質が進行しすぎて、主生成物は二酸化炭素となり、生成した炭化水素などが単層カーボンナノチューブに取り込まれるよりも優先的に二酸化炭素となる。そのため、2層カーボンナノチューブがほとんど生成しなくなる。結局、上記の式に規定する領域内の酸素濃度と加熱温度を用いたとき、効率よく2層カーボンナノチューブが生成することができる。
【0032】
本発明において、ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱する時間は、短すぎると単層カーボンナノチューブがほとんど改質されない。一方、長すぎると、単層カーボンナノチューブが改質され2層カーボンナノチューブが生成しても、逐次反応で2層カーボンナノチューブが二酸化炭素まで酸化されてしまい好ましくない。そこで、10分から1時間加熱することが2層カーボンナノチューブの収率を高くする上で好ましく、より好ましくは、15分から45分にするのがよい。
【0033】
また、ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物としては、単層カーボンナノチューブの一端が金属を介してゼオライトに付着していることが好ましい。一般的に、ゼオライトを用いたCVD法によるカーボンナノチューブの製造法では、ゼオライト表面に金属触媒を担持させ、その金属触媒からカーボンナノチューブが生成させる。そのため、単層カーボンナノチューブとゼオライトは金属を介して接していることが一般的である。この場合、金属触媒をゼオライト外表面に高分散に担持および保持させることができ、それら金属触媒が微粒子状で存在することができるため、単層カーボンナノチューブの分解、生成した含炭素化合物の改質、および2層カーボンナノチューブの生成に有効な触媒として働くことが考えられる。
【0034】
金属触媒の種類は、特に限定されないが、好ましくは3〜12族の金属、特に好ましくは、5〜11族がよい。中でも、V,Mo,Fe,Co,Ni,Pd,Pt,Rh等が特に好ましく用いられる。ここで金属とは、0価の状態とは限らない。反応中では0価の金属状態になっていると推定できるが、反応中の状態を調べる手段がないので、広く金属を含む化合物又は金属種という意味で解釈してよい。
【0035】
金属は1種類だけを担持させても、2種類以上を担持させてもよいが、好ましくは、2種類以上を担持させるようにした方がよい。2種類の金属を担持させる場合は、Co,Ni,Pd,Pt,Rhと他の金属の組み合わせが特に好ましい。CoとFe,Ni,V,Mo,Pdの1種以上とを組み合わせる場合が最も好ましい。
【0036】
ゼオライトに対する金属の担持方法は、特に限定されない。例えば、担持したい金属の塩を溶解させた非水溶液中(例えばエタノール溶液)又は水溶液中に、ゼオライトを含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ、窒素、水素、不活性ガスまたはその混合ガス又は真空中で高温(300〜600℃)で加熱することにより、ゼオライトに金属を担持させることができる(含浸法)。
【0037】
ゼオライトのような多孔性物質に金属を担持させるには、金属塩の水溶液量をなるべく少なくし、ゼオライトの細孔内に水溶液を吸着させ、余分な水溶液はろ過などで除去して乾燥させる平衡吸着法が好ましい。その理由は、ゼオライトの細孔径は均一であり、平衡吸着法で金属を担持させると比較的担持された金属の径が均一になり、生成したカーボンナノチューブの径が均一になるためである。
また、金属はゼオライト細孔入り口付近に存在し、高温下でも凝集しにくくなるので、特に耐熱性ゼオライトを用いた場合には、平衡吸着法は有効な金属の担持法である。
【0038】
または、金属塩の水溶液にゼオライトを含浸し、含浸法又は平衡吸着法で金属塩を担持させ、乾燥させ、窒素、水素、不活性ガスまたはその混合ガスまたは真空中で高温(300〜600℃)で加熱することにより、耐熱性ゼオライトの結晶表面に金属を担持させることもできる。勿論、金属塩を担持した後、空気中で焼成して金属酸化物にした後、水素を使用して還元することにより、ゼオライトに金属を担持させることもできる。
【0039】
または、コバルトシリケート、鉄シリケートなどのメタロシリケートを合成し、これを高温で焼成し、骨格中のコバルト、鉄をゼオライト表面に析出させ、微粒子化する方法を用いることもできる。本方法を用いることで、数十nm以上の大きさを持つ金属粒子の生成を抑制できるため、層数が多い多層カーボンナノチューブや、外径が50nm以上のナノファイバーの生成を抑制することができる。本方法として、コバルトシリケート、鉄シリケートなど、1種類のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトだけでなく、鉄、コバルト、チタンなど、2種類以上のヘテロ原子を骨格内に有するゼオライトも好ましく用いられる。
【0040】
金属担持量は、多いほどカーボンナノチューブの収量が上がるが、多すぎると金属の粒子径が大きくなり、生成するカーボンナノチューブが太くなる。金属担持量が少ないと、担持される金属の粒子径が小さくなり、細いカーボンナノチューブが得られるが、収率が低くなる傾向がある。最適な金属担持量は、ゼオライトの細孔容量や外表面積、担持方法によって異なる。2種類以上の金属を使用する場合、その比率は限定されない。
【0041】
単層カーボンナノチューブの一端が金属を介してゼオライトに付着していることは透過型電子顕微鏡で観察することができる。ここでいう高分解能電子顕微鏡によるカーボンナノチューブの観察手法は、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンナノチューブを含有する試料をエタノールなど揮発性の高い溶媒に添加し、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させた後、カーボンナノチューブを含む溶媒数滴をマイクログリッド上に滴下し、溶媒を揮発させた後に、高分解能電子顕微鏡で観察する手法が好ましく用いられる。カーボンナノチューブを観察するためには、倍率を10万倍以上、好ましくは20万倍以上に上げる手法が用いられる。観察されるカーボンナノチューブの壁を構成するグラフェンシートが1本で観察されるものが単層カーボンナノチューブである。
【0042】
本発明の第3番目の2層カーボンナノチューブの製造法は、以下の二つの工程(1),(2)からなるようにしたものである。
(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、該ゼオライトに炭素含有化合物を接触させ、そのゼオライト表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程。
(2)上記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で、400〜900℃で加熱する工程。
【0043】
ここで、工程(1)は、単層カーボンナノチューブを生成する工程である。本工程(1)により、金属を介してゼオライトに付着した単層カーボンナノチューブを生成することができる。
【0044】
反応温度は、500℃より低いと、単層カーボンナノチューブはほとんど生成しない。また、1200℃より高いと、使用する反応器の材質に制約があると共に、ナノチューブ同士の接合が始まるため好ましくない。好ましくは反応温度が600℃〜1000℃の時が特に単層カーボンナノチューブを生成しやすく、より好ましくは700℃〜900℃にするとよい。
【0045】
本発明で用いる炭素含有化合物としては、炭化水素や一酸化炭素が好ましく用いられる。炭化水素は芳香族であっても、非芳香族であってもよい。芳香族の炭化水素では、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン又はこれらの混合物などを使用することができる。また、非芳香族の炭化水素では、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレンもしくはアセチレン、又はこれらの混合物等を使用することができる。
【0046】
炭化水素には、酸素を含むものがよい。例えば、メタノール若しくはエタノール、プロパノール、ブタノールのごときアルコール類、アセトンのごときケトン類、及びホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドのごときアルデヒド類、トリオキサン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルのごときエーテル酸類、酢酸エチルなどのエステル類又はこれらの混合物であってもよい。
【0047】
一方、上記工程(2)は、2層カーボンナノチューブを生成する工程であり、(1)の工程で製造した単層カーボンナノチューブを用いれば、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で、400〜900℃で加熱することにより、効率よく2層カーボンナノチューブを得ることができる。特に、(1)の工程の後、炉の温度を室温程度まで下げ、生成物を反応管から取り出さずに、酸素含有ガスを反応管内に供給し、再度昇温しても良い。また、(1)の工程の後、炉の温度を反応温度程度に維持し、生成物を反応管から取り出さずに、酸素含有ガスを反応管内に供給し、2層カーボンナノチューブを生成しても良い。酸素以外のガスとしては、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが好ましく用いられる。
【0048】
本発明では、また上記工程(1)を実施するとき、金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを用い、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で、600〜1000℃でアセチレンなどの炭化水素と接触させることで、ゼオライト表面に単層カーボンナノチューブを生成することが好ましく適用される。また、炭化水素として、上述のアセチレンの代わりに含酸素有機化合物や一酸化炭素を用いる方法も好ましく用いられる。また、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で合成を行なう代わりに、減圧下で単層カーボンナノチューブを生成する方法も好ましく用いられる。減圧下で炭化水素の代わりに含酸素有機化合物や一酸化炭素を用いる方法も好ましく用いられる。減圧する場合は、系内の圧力は1333Pa以下に減圧し、炭化水素、酸素含有有機化合物又は一酸化炭素を分圧1333〜13333Paで供給し、ゼオライトに担持された触媒に接触させることで、ゼオライト表面に単層カーボンナノチューブを生成する方法が好ましく適用される。
【0049】
また、反応温度は500℃〜1200℃、反応圧力は減圧とすることが好ましい。減圧の程度は1333Pa以下であれば問題ないが、圧力が低いほど、空気や不活性ガスなど、反応に寄与しないガスの量が低減し、グラファイト化度の高い単層カーボンナノチューブを生成させることができる。この観点から、減圧の程度は667Pa以下が最も好ましい。また、炭素含有化合物の濃度が高すぎると、単層カーボンナノチューブだけでなく、炭素質付着物が大量に析出するため好ましくない。したがって、炭素含有化合物の分圧は1333〜13333Paが好ましい。
【0050】
また、上述の炭素含有化合物としては、アルコールを使用することが好ましい。アルコールとしては、例えばメタノール若しくはエタノール、プロパノール、ブタノールが好ましく、ながでも特にエタノールが最も好ましい。
【0051】
本発明の製造法から得られる2層カーボンナノチューブは、下記の構成要件を有することで特徴づけられる。
【0052】
(1)共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/D比が20以上であること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測され、その片端が金属触媒を介してゼオライトに接しているか、または開放端になっていること。
である。
【0053】
共鳴ラマン散乱では、100〜350cm−1付近のピークがRBM(Radial Breathing Mode)、1560〜1600cm−1付近の構造がG−bandであり、その他に不純物のアモルファスやカーボンナノチューブの欠陥に起因するものとして、1310〜1350cm−1付近のD−bandと呼ばれるピークが観測される。カーボンナノチューブは、キラリティー、直径により、それぞれ異なった電子構造をとる。その中で、励起光がカーボンナノチューブのEg(エネルギーギャップ)と一致する場合に共鳴が起こり、ラマンスペクトルが発現する。そのため、励起光波長を変えていくと、次々とスペクトルは変化する。カーボンナノチューブのG−bandは共鳴効果により強調されるため、試料の純度によって強度が大きく変化する。
【0054】
一方、1330cm−1付近のブロードなD−bandは不純物による寄与が大きく、これは共鳴効果により強い強調を受けないため、G−bandとD−bandの強度比をとることにより、カーボンナノチューブ試料の純度を見積ることが可能となる。本発明の製造方法を用いることで、純度の高いカーボンナノチューブを製造することができ、その結果、G/D比を20以上とすることができる。
【0055】
また、高分解能透過型電子顕微鏡による2層カーボンナノチューブの観測方法については、上述の通りである。
【0056】
また、本発明の製造法によれば、次の要件を全て満たす2層カーボンナノチューブが得られる。
【0057】
(1)レーザー波長488,514,633nmの3種類から選ばれるいずれか1つの波長を用いた共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、A/B<1.0 の関係が成り立つスペクトルが観察されること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測されること。
である。
【0058】
ここで、共鳴ラマン散乱測定により、150〜350cm−1の領域にピークが観察されるとは、RBM(Radial Breathing Mode)が観察されることを言う。RBMとは、細いカーボンナノチューブの伸縮振動に起因するピークであり、直径0.7〜1.6nmのカーボンナノチューブが存在することを示唆している。ここで論ずる領域はRBMであり、振動数とカーボンナノチューブ直径の関係は片浦らの報告に詳しい(Eur. Phys. J. B 22, 3, (2001) pp. 307−320.)。例えば、Aに帰属されるカーボンナノチューブの直径は約1.25nm、Bに帰属される中空状ナノファイバーの直径は1.1nm以下である。特に、このように細いカーボンナノチューブが存在することで、樹脂添加剤に用いたときには高いナノ添加効果が発現し、フィールドエミッションディスプレイに用いたときには、高い電界放出能を発現することができる。
【0059】
また、高分解能透過型電子顕微鏡による2層カーボンナノチューブの観測方法に関しては、上述の通りである。特に、本発明の製造法を用いると、内径が0.7nm以下の細い2層カーボンナノチューブを得やすくすることができる。このような細い2層カーボンナノチューブが得られる原因は定かでないが、原料として用いる単層カーボンナノチューブの内側に2層目が生成するために、このように細い内径となるものと推測される。
【0060】
2層カーボンナノチューブの内径が0.7nm以下であることは、ラマン分光のRBMでも確認することができる。本発明の製造法を用いることで、350cm−1程度のエネルギー領域に強いピークが観察されるからである。これは内径が0.7nm以下であることを意味する。
【0061】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、2層カーボンナノチューブの少なくとも片端の最外層が開放端となっている2層カーボンナノチューブが得られる。開放端があることにより、官能基を付与させやすく、ポリマーなどとの親和性を向上することができる。また、フィールドエミッションディスプレイとして用いた場合、2層カーボンナノチューブは直径が細く電荷の集中が起こりやすいだけでなく、開放端になっていることで一層電子が放出されやすくなる。
【0062】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、2層カーボンナノチューブの少なくとも片端の層全てが開放端になっている2層カーボンナノチューブが得られる。片端の層全てが開放端となることで、カーボンナノチューブのチューブ内にガスなどを吸着させることができ、吸着剤用途において優れた効果を発揮することが出来る。
【0063】
また、本発明の製造法によれば、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、2層カーボンナノチューブの両端の層全てが開放端になっている2層カーボンナノチューブを得ることができる。チューブ両端の層全てが開放端となっていることにより、カーボンナノチューブのチューブ内へのガス吸着がより一層起こりやすくなり、吸着剤用途でより高い効果を得ることができる。
【0064】
これら2層カーボンナノチューブの開放端は、製造直後から形成されているものが多い。また、精製処理によってゼオライト触媒からカーボンナノチューブが切り離されたときに開放端になる場合もある。
【0065】
触媒金属は、その大部分が触媒担体とカーボンナノチューブの界面に存在するため、後処理によりカーボンナノチューブと容易に分離することができる。その分離方法は特に限定されないが、例えば、カーボンナノチューブは溶解しないが、担体であるゼオライトや金属触媒が溶解する溶液中で処理する方法が好ましい。このような溶液として、フッ酸、硫酸、硝酸、塩酸の水溶液が好ましく使用される。また、後処理の効果を高めるため、予め、または処理の途中に、300℃から500℃程度の空気中で焼成し、触媒金属のまわりを覆うアモルファスカーボンを除去することも好ましい。
【0066】
本発明の製造法によれば、2層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ組成物も得ることができる。組成物としては、上述した本発明の製造法から得られる2層カーボンナノチューブを含んでいれば、その他の成分は特に限定されない。2層カーボンナノチューブの原料である単層カーボンナノチューブであってもよいし、触媒金属やゼオライト担体であってもよい。また、生成後の2層カーボンナノチューブを溶媒や樹脂などに分散化したものであってもよい。
【0067】
本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブを含む組成物は、これを電子放出材料として利用することができる。本発明による2層カーボンナノチューブは、直径が細く、かつ、グラファイト化度が高く、純度が高いため、極めて良好な電子放出能を発現するからである。
【0068】
電子放出材料としては特に限定するものでないが、例えば、燃料電池やリチウム2次電池用の負極材、樹脂や有機半導体との複合材料、電磁波シールド材、吸着材料、医薬用ナノカプセル、MRI造影剤、フィールドエミッションの電子源、ナノピンセット、走査型トンネル顕微鏡用プローブなどを例示することができる。
【0069】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても、本発明を限定的に解釈するものとして使用してはならない。
【0070】
【実施例】
実施例1
〔単層カーボンナノチューブ合成用触媒の調製〕
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)0.08gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)0.11gとをエタノール(ナカライテスク社製)7mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液にUSY型ゼオライト(東ソー製HSZ−390HUA)を1.0g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、120℃の恒温下でエタノールを除去することにより、金属担持触媒を得た。
【0071】
〔単層カーボンナノチューブの合成〕
内径100mmの石英管の中央部の石英プレート上に、先に調製した金属塩を担持したUSY型ゼオライトを0.09gとった。ロータリーポンプで系内の圧力を約107Paまで減圧した時点で、ロータリーポンプで減圧しながら、アルゴンガスを50ml/min.で供給し、石英管を管状電気炉で300℃まで昇温した。石英管中央付近の温度が300℃に達してから30分間、アルゴンガスの供給を続けた後に、アルゴンガスを停止し、炉内温度を800℃へ昇温した。
次いで、石英管に対し、ロータリーポンプ側を下流とし、ロータリーポンプの上流側の室温領域にデシケーターを設置し、その中にエタノール(ナカライテスク社製)約100mlが入ったビーカーを設置した。デシケーターと石英管の接合バルブを開き、エタノール蒸気圧(約8000Pa)で石英管内を満たした。30分間エタノール蒸気で満たした後に、エタノール入りビーカーと石英管の接合バルブを閉じた。その後、石英管内をロータリーポンプで減圧したまま、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。ゼオライト触媒は黒く変質していた。
【0072】
〔単層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブであった。また、単層カーボンナノチューブは、金属触媒を介してゼオライトに接していた。
【0073】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。
【0074】
〔2層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の2層カーボンナノチューブであった(図2)。内径が0.7nm以下の細い2層カーボンナノチューブも観察された(図3)。
【0075】
〔2層カーボンナノチューブのラマン分析〕
上記生成物のラマンスペクトルの結果(図4)、波長633nmにおいて、G/D比は20以上でありGバンドには分裂も観察された。また、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、A/D=0.8であった。
【0076】
〔2層カーボンナノチューブの精製〕
合成した2層カーボンナノチューブ/USY型ゼオライト/金属触媒混合物を5%フッ化水素酸水溶液に加え、3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、USY型ゼオライトに起因するケイ素の濃度は検出限界以下であった。次いで、空気中300℃で2時間焼成した。その後、1規定 塩酸水溶液中で3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、触媒金属に起因するコバルトは0.1wt%、鉄は0wt%であった。
【0077】
〔精製した2層カーボンナノチューブの観察〕
精製処理後のサンプルを透過電子顕微鏡で観察した結果、処理前と同様な2層ナノチューブが観察された。また、観察された2層カーボンナノチューブの端は、多くが開放端であった(図5)。
【0078】
実施例2
〔単層カーボンナノチューブの精製〕
実施例1で合成した単層カーボンナノチューブ/USY型ゼオライト/金属触媒混合物を5%フッ化水素酸水溶液に加え、3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、USY型ゼオライトに起因するケイ素の濃度は検出限界以下であった。次いで、空気中300℃で2時間焼成した。その後、1規定 塩酸水溶液中で3時間激しく攪拌した。これをろ過し、蒸留水で数回洗浄した。得られた黒色固形物を乾燥し、EDXで元素分析した結果、触媒金属に起因するコバルトは0.1wt%、鉄は0wt%であった。なお、処理後のサンプルを透過電子顕微鏡で観察した結果、処理前と同様な単層ナノチューブが観察された。
【0079】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。
【0080】
〔2層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質がわずかに見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブのままであった。2層カーボンナノチューブは数本観察された。
【0081】
実施例3
〔他法による単層カーボンナノチューブの観察〕
単層カーボンナノチューブ(CNI社製Purified)を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質が多く見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、ほとんどが直径2nm以下の単層カーボンナノチューブであった。また、単層カーボンナノチューブにはほとんど金属触媒は含まれなかった。
【0082】
〔2層カーボンナノチューブの合成〕
上記生成物を、再度石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管の両端は大気開放とし、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、ゼオライト触媒を回収した。
【0083】
〔2層カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質がわずかに見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブのままであった。2層カーボンナノチューブは数本観察された。
【0084】
比較例1
〔酸素比共存下での単層カーボンナノチューブの加熱処理〕
請求項1で合成した単層カーボンナノチューブを生成することなく、石英ボートの上に乗せ、石英反応管の中央部分に設置した。石英反応管内へは、60cc/min.のアルゴンガスを流した。反応管内のガスが十分に置換された後に、石英管を管状電気炉で600℃まで約10分で昇温し、600℃で30分保持した。その後、電気炉を室温まで冷やし、大気解放後にゼオライト触媒を回収した。
【0085】
〔カーボンナノチューブの観察〕
生成物の形状を日本電子データム(株)走査型電子顕微鏡JSM−6301NFで測定したところ、極めて細いナノファイバー状物質がわずかに見られた。さらに、高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、生成物のほとんどが、直径2nm以下の単層カーボンナノチューブのままであった。2層カーボンナノチューブは全く観察されなかった。
【0086】
【発明の効果】
上述したように本発明の製造法によると、太さが細く、純度が高く、かつグラファイト層の欠陥が少ない良質な2層カーボンナノチューブを効率良く得ることができる。特に、グラファイト層の欠陥が少ない2層カーボンナノチューブを生成できるため、後処理でグラファイト化するための費用がかかる高温の熱処理を不要にすることが可能になる。また、内径が0.7nm以下の特に細い2層カーボンナノチューブを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造法の一つにおいて、2層カーボンナノチューブを合成する酸素濃度と加熱温度の相関図である。
【図2】(a)は、本発明において得られた2層カーボンナノチューブの断面部分のTEM写真、(b)は、本発明において得られた2層カーボンナノチューブのバンドルのTEM写真である。
【図3】本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブのTEM写真と直径内径分析結果である。
【図4】本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブのラマン分光スペクトルである。
【図5】本発明の製造法で得られた2層カーボンナノチューブの開放端部分のTEM写真である。
Claims (16)
- 単層カーボンナノチューブを酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成する2層カーボンナノチューブの製造法。
- 単層カーボンナノチューブを含む組成物を酸素共存下で加熱することにより2層カーボンナノチューブを生成する2層カーボンナノチューブの製造法。
- 前記単層カーボンナノチューブを含む組成物がゼオライトを含んでいる請求項2に記載の2層カーボンナノチューブの製造法。
- 酸素濃度をx(vol%)、加熱温度をy(℃)とするとき、該酸素濃度xと加熱温度yとが次式の関係を満たすようにする請求項1、2又は3に記載の2層カーボンナノチューブの製造法。
0.13x2−11x+610≦ y≦0.15x2−13x+910 1≦x≦50 - 前記ゼオライトと単層カーボンナノチューブを含む組成物を加熱する時間が10分〜1時間である請求項3又は4に記載の2層カーボンナノチューブの製造法。
- 前記単層カーボンナノチューブの一端が金属を介して前記ゼオライトに付着している請求項3、4又は5に記載の2層カーボンナノチューブの製造法。
- 次の工程(1),(2)からなる2層カーボンナノチューブの製造法。
(1)金属触媒が外表面に担持されたゼオライトを500〜1200℃に加熱すると共に、炭素含有化合物を接触させ、前記ゼオライトの表面に単層カーボンナノチューブを生成する工程。
(2)前記工程(1)の生成物を、酸素濃度1〜50vol%の雰囲気中で400〜900℃で加熱する工程。 - 前記炭素含有化合物がアルコールである請求項7に記載の2層カーボンナノチューブの製造法。
- 高分解能透過型電子顕微鏡で観察したときのチューブ内径が0.7nm以下である2層カーボンナノチューブ。
- 2層カーボンナノチューブの一端が金属を介してゼオライトに付着している請求項9に記載の2層カーボンナノチューブ。
- 高分解能透過型電子顕微鏡で観察したとき、前記2層カーボンナノチューブの少なくとも片端の層全てが開放端になっている請求項9又は10に記載の2層カーボンナノチューブ。
- 請求項9、10又は11に記載の2層カーボンナノチューブを含む2層カーボンナノチューブ組成物。
- 次の要件(1),(2),(3)を満たす2層カーボンナノチューブ組成物。
(1)共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたときに、G/D比が20以上であること。
(2)高分解能透過型電子顕微鏡で2層カーボンナノチューブが観測され、該2層カーボンナノチューブの片端が金属触媒を介してゼオライトに接しているか、又は開放端になっていること。
(3)レーザー波長488,514,633nmの3種類から選ばれるいずれか1つの波長を用いた共鳴ラマン散乱測定法の測定により得られるスペクトルで、195〜200cm−1内の最大ピーク強度をA、220〜350cm−1内の最大ピーク強度をBとしたとき、 A/B<2.0 の関係が成り立つスペクトルが観察されること。 - 前記A/Bの比が A/B<1.0 である請求項13に記載の2層カーボンナノチューブ組成物。
- 請求項12、13又は14の2層カーボンナノチューブ組成物であって、該組成物に単層カーボンナノチューブを含んでいる2層カーボンナノチューブ組成物。
- 請求項12〜15のいずれかに記載の2層カーボンナノチューブ組成物を含有する電子放出材料。
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