JP5747524B2 - 炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物および炭素繊維束 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物、特にマトリックス樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いた炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物、および炭素繊維束に関する。
強化繊維を樹脂と複合化させた繊維強化樹脂成形品は、力学特性や寸法安定性に優れることから、自動車、航空機、電気・電子機器、玩具、家電製品などの幅広い分野で使用されている。強化繊維の中でも炭素繊維は、軽量、高強度かつ高剛性であることから、近年注目を集めている。
また、繊維強化樹脂用の樹脂として近年注目を集めているのが熱可塑性樹脂である。とりわけポリオレフィン系樹脂、中でもコストが安価であり、比重も小さく、成形性、耐薬品性などの優れた特性を有するポリプロピレン樹脂が注目されている。
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は極性が低いため、強化繊維との界面接着性に劣る。このため、以前より強化繊維の表面処理やサイジング剤の付与などで繊維とマトリックス樹脂との界面接着性を改善する試みが行われてきた。
特許文献1には、ポリアクリル酸で被覆した炭素繊維が記載されている。特許文献2には、ポリアクリル酸ソーダおよびポリアクリルアミドを被覆した強化繊維が開示されている。また特許文献3には、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が2級炭素原子または3級炭素原子に結合した(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)単位を有する重合体(A)を含む強化繊維用サイジング剤が記載されている。特許文献4には、アミノアルキレン基を側鎖に有する(メタ)アクリル系重合体あるいは、オキサゾリン基含有重合体が付与された炭素繊維について記載されている。いずれの特許文献も、炭素繊維にポリオレフィン樹脂と親和性のあるポリマーを付与することで、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面接着性を改善することを目的としているが、いずれも十分な界面接着性は得られていない。
このように、従来技術ではポリオレフィン樹脂をマトリックスとして成形した際に、優れた界面接着性を発揮させることが困難であり、この特性を満足できる繊維強化熱可塑性樹脂組成物および強化繊維束の開発が望まれていた。
特開昭59−137573号公報 特開昭61−209940号公報 特開2005−146431号公報 国際公開第2007/37260号パンフレット
本発明の課題は、マトリックス樹脂との接着性、特にポリオレフィン系マトリックス樹脂と炭素繊維との接着性に優れる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物および炭素繊維束を提供することを目的とする。
本発明は、(メタ)アクリル系重合体0.1〜10質量%、炭素繊維1〜70質量%、および熱可塑性樹脂20〜98.9質量%を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物であって、該(メタ)アクリル系重合体が炭素繊維に付着しており、該(メタ)アクリル系重合体は、側鎖に水酸基を有するとともに、JIS K0070に準拠して測定された水酸基価が10〜100mgKOH/gであり、かつ、下式で算出される凝集エネルギー密度CEDが385〜550MPaである重合体である炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物である;
CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ{P(n)×M(n)}
ここで、(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル系単量体単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(n)(nは1〜mの整数)としたとき、CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造CS(n)から計算された凝集エネルギーを意味する;また同様に、M(n)は(メタ)アクリル系単量体単位(n)の分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する;ただしΣP(n)=1である。
また、本発明は、炭素繊維に(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束であって、該(メタ)アクリル系重合体は、側鎖に水酸基を有するとともに、JIS K0070に準拠して測定された水酸基価が10〜100mgKOH/gであり、かつ、下式で算出される凝集エネルギー密度CEDが385〜550MPaである重合体であり、かつ、該(メタ)アクリル系重合体の付着量が0.5〜30質量%である(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束を含む;
CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ{P(n)×M(n)}
ここで、(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル系単量体単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(n)(nは1〜mの整数)としたとき、CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造CS(n)から計算された凝集エネルギーを意味する;また同様に、M(n)は(メタ)アクリル系単量体単位(n)の分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する;ただしΣP(n)=1である。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、炭素繊維とマトリックス樹脂、特にポリオレフィン系マトリックス樹脂との良好な界面接着性が発現できることから、力学特性に極めて優れた成形品を得ることができる。また、本発明の炭素繊維束は、熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂との接着性、特にポリオレフィン系マトリックス樹脂との接着性に優れる炭素繊維束である。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物および炭素繊維束を用いた成形品は力学特性に優れることから、自動車、電気・電子機器、家電製品などの各種部品・部材に極めて有用である。
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。なお、本発明では、強化繊維として炭素繊維を用い、繊維強化熱可塑性樹脂とは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物を意味する。
[繊維強化熱可塑性樹脂組成物]
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体0.1〜10質量%、炭素繊維1〜70質量%、および熱可塑性樹脂20〜98.9質量%を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物であって、該(メタ)アクリル系重合体が炭素繊維に付着しており、該(メタ)アクリル系重合体は、側鎖に水酸基を有するとともに、JIS K0070に準拠して測定された水酸基価が10〜100mgKOH/gであり、かつ、下式で算出される凝集エネルギー密度CEDが385〜550MPaである炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物である。
CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ{P(n)×M(n)}。
ここで、(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル単量体(n)単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(nは1〜mの整数)としたとき、CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の凝集エネルギーを意味する;また同様に、(メタ)アクリル系単量体単位(n)のM(n)は分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する;但しΣP(n)=1である。
まず、繊維強化熱可塑性樹脂組成物を構成する構成要素について説明する。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体、強化繊維、および熱可塑性樹脂を含む。
繊維強化熱可塑性樹脂組成物を構成する強化繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの炭素繊維であることが、得られる成形品の力学特性の向上および成形品の軽量化効果の観点から必要である。得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維を用いることもできる。
さらに炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される炭素繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.4であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度の上限には特に制限はないが、表面酸化による炭素繊維自身の強度の低下を少なくする観点や、炭素繊維の取扱い性および生産性のバランスから、0.5以下とすることが好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めることができる。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、試料チャンバー中を1×10Torrに保つ。X線源としてA1Kα1、2を用い、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりC1Sピーク面積を求める。K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりO1Sピーク面積を求める。
ここで、表面酸素濃度とは、前記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用いた場合は、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。電解酸化処理に用いられる電解液としては、以下に挙げる化合物の水溶液が好ましく用いられる。硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化バリウム等の無機水酸化物;アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機金属塩類;酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の有機塩類;ヒドラジンなどの有機化合物などである。これらの中でも電解液としては無機酸が好ましく、硫酸および硝酸が特に好ましく使用される。電解処理の程度は、電解処理で流れる電気量を設定することにより炭素繊維表面のO/Cを制御することができる。
また、強化繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
また、強化繊維の数平均繊維長Lnは、強化繊維の補強効果を高める観点から、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.2〜7mm、さらに好ましくは0.5〜5mmである。強化繊維の数平均繊維長Lnは、繊維強化熱可塑性樹脂組成物から強化繊維のみを任意に400本以上抽出し、それらの長さを1μm単位まで光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定し、数平均して算出する。繊維強化熱可塑性樹脂組成物より、強化繊維を抽出する方法としては、繊維強化熱可塑性樹脂組成物を500℃で1時間加熱処理して強化繊維以外の成分を焼き飛ばす方法や、強化繊維以外の成分を溶媒に溶解させたのち、濾過などにより強化繊維を取り出す方法が適用できる。
強化繊維は、複数の強化繊維の単糸が合わさった強化繊維束として含まれていても良い。この場合、強化繊維束の単糸数には、特に制限はないが、100〜350,000本の範囲内が好ましく、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内が好ましい。また強化繊維の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、20,000〜100,000本の範囲内が好ましい。強化繊維が強化繊維束として含まれる場合には、強化繊維束に集束性をもたせ、取り扱い性を高めるために、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの組成物を適宜付与したものであってもよい。さらに、繊維強化熱可塑性樹脂組成物中で強化繊維の分散を良好にするために、強化繊維束をカットしたものを用いても良い。この場合、強化繊維の補強効果を高める観点と、分散を良好にする観点から、強化繊維の長さは、好ましくは1〜60mm、より好ましくは2〜30mm、さらに好ましくは3〜10mmである。
また、強化繊維の形態は、力学的に等方性を有するものを得る観点からは、強化繊維がランダムに配向したウェブまたはマット状のシート形態をとることも好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、側鎖に官能基として水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を含むことが重要である。この官能基を有することで、(メタ)アクリル系重合体同士の相互作用および強化繊維と(メタ)アクリル系重合体との相互作用を高め、その結果、強化繊維とマトリックス樹脂との界面接着性を高める効果を有する。この観点から、(メタ)アクリル系重合体は強化繊維の周囲に偏在している必要があり、(メタ)アクリル系重合体の一部が強化繊維に接触している必要があるすなわち、(メタ)アクリル系重合体は強化繊維に付着していることが必要である。強化繊維の周囲に(メタ)アクリル系重合体が偏在していることを確認する方法としては、例えば繊維強化熱可塑性樹脂組成物またはその成形品の断面を切り出し、その表面を前記官能基と反応可能な官能基を有するハロゲン系のラベル試薬を化学修飾法にて反応させた後に、EPMA(電子プローブエックス線マイクロアナライザ)にてハロゲン元素を分析し、その濃度分布をみることで確認する方法や、繊維強化熱可塑性樹脂組成物またはその成形品の断面の強化繊維の周囲のIRスペクトル測定より、(メタ)アクリル系重合体に特有の吸収の有無および吸収強度を確認する方法などが挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体を強化繊維の周囲に偏在させるためには、製造方法と共に、(メタ)アクリル系重合体と強化繊維の親和性が高いことが重要である。(メタ)アクリル系重合体が、前記特定の官能基を有することが重要である。
着性を高める目的からは、(メタ)アクリル系重合体が、水酸基を有することが必要であるが、水酸基およびカルボキシル基を有することがより好ましい。前記(メタ)アクリル系重合体の水酸基価としては、接着性やコスト面のバランスを考慮して、10〜100gKOH/gである必要がある。より好ましくは20〜80mgKOH、さらに好ましくは30〜60gKOH/gである。ここで水酸基価とは、試料1gをアセチル化したとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量であり、JIS K0070に準拠して測定された値である。また、前記(メタ)アクリル系重合体の酸価としては、接着性やコスト面のバランスを考慮して、1〜10gKOH/gが好ましい。より好ましくは2〜9gKOH/g、さらに好ましくは3〜7gKOH/gである。ここで酸価とは、試料1gに含まれる遊離酸基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量であり、JIS K0070に準拠して測定された値である。 本発明において、(メタ)アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル系単量体繰り返し単位を含む重合体のことを示す。ここで、(メタ)アクリル系単量体とは、アクリル単量体およびメタクリル単量体から選ばれた単量体を意味する。すなわち、(メタ)アクリル系重合体とは、アクリル系重合体またはメタクリル系重合体を意味する。
(メタ)アクリル系単量体としては、水酸基を有する単量体として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセリンモノメタクリレート、グリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、3,4−ジヒドロキシブチル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン、α−ヒドロキシメチルアクリレート、α−ヒドロキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ジブタンジオールモノアクリレート、トリブタンジオールモノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、トリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ジブタンジオールモノメタクリレート、トリブタンジオールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。なかでも、入手が容易で接着向上の傾向がみられるアクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
アミド基を有する(メタ)アクリル系単量体として、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピルアクリルアミド)、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミドなどが挙げられる。なかでも、入手が容易で接着向上の傾向がみられるN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドが好ましい。
ウレア基を有する(メタ)アクリル系単量体として、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア、N−(2−メタクリルアミドエチル)エチレンウレアなどが挙げられる。なかでも、入手が容易で接着向上の傾向がみられるN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアが好ましい。
その他の(メタ)アクリル系単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、イソボルニルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、イソボルニルメタクリレート;トリフルオロエチルメタクリレートなどのアクリル酸(フルオロ)アルキルエステル;ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンテニル基を有するアクリル系単量体;グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有アクリル系単量体、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチルなどのメトキシ基またはエトキシ基を有するアクリル系単量体、N−ビニル−2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミドなどのカルボニル基含有アクリル系単量体、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、ハイブリッドポリエステルアクリレートオリゴマー「サートマー(登録商標)CN−2402」(サートマー(株)社のZn含有アクリルオリゴマー)、ハイブリッドポリウレタンオリゴマー「サートマー(登録商標)2405」(サートマー(株)社のZn含有アクリルオリゴマー)などの分子中に金属原子(Zn、Al、Ca、Mg、Zr、Cuなど)を含有するモノマー、オリゴマーなどが例示される。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
前記(メタ)アクリル系重合体は、強化繊維との親和性および熱可塑性樹脂との親和性を高めて、力学特性に優れる繊維強化熱可塑性樹脂組成物を得る観点および使用する材料のコストの観点より、好ましくはカルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体単位0〜5質量%、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体単位3〜25質量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位70〜97質量%を含む(メタ)アクリル系重合体である。より好ましくはカルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体単位0〜3質量%、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体単位3〜20質量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位77〜97質量%である。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを意味する。
繊維強化熱可塑性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体における前記(メタ)アクリル系単量体単位の同定には、IR、NMR、質量分析および元素分析等の通常の高分子化合物の分析手法を用いて行うことができる。必要に応じて、繊維強化熱可塑性樹脂組成物から(メタ)アクリル系重合体を分離するために、GPCなどの液体クロマトグラフィーを用いて分取する方法、または熱可塑性樹脂と(メタ)アクリル系重合体とを溶解できる溶媒へ溶かして、熱可塑性樹脂と(メタ)アクリル系重合体との溶解度差を利用して(メタ)アクリル系重合体のみを再沈殿させて分離する方法などを適用できる。
また、前記(メタ)アクリル系重合体は、下式で算出される凝集エネルギー密度CEDが385〜550MPaであることが重要である。本発明において、(メタ)アクリル系重合体は、強化繊維と熱可塑性樹脂とのバインダーとして機能するので、強化繊維およびマトリックス樹脂双方に対する親和性がバランス良く優れていることが重要である。凝集エネルギー密度を前記範囲とすることで、強化繊維およびマトリックス樹脂双方に対する浸透性、ヌレ性および親和性が良好となり、良好な界面接着性が発揮される。凝集エネルギー密度CEDは、好ましくは、395〜500MPa、より好ましくは、400〜450MPa、さらに好ましくは、405〜420MPaである。凝集エネルギー密度が高すぎても、低すぎても、親和性のバランスが崩れて、界面接着性が低下する。
ここで、(メタ)アクリル系共重合体の凝集エネルギー密度CED(単位MPa)の算出方法について説明する。(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル単量体単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(n)(nは1〜mの整数)としたとき、CEDは以下の式で算出する。但しΣP(n)=1である。
CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ{P(n)×M(n)}
CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造CS(n)から計算された凝集エネルギーを意味する。また同様に、M(n)は(メタ)アクリル系単量体単位(n)の分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する。ここで、CS(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造、すなわち単量体のC=C二重結合が開いた状態の化学構造である。また、係数1.15は、メタ)アクリル系単量体単位の比重を表す。
CE(n)はCE(n)=ΣEcoh(n)で算出する。ここで、ΣEcoh(n)は化学構造CS(n)を構成する、例えば、−CH、−CH−、>C<、−COOH、−OHなどの原子団の凝集エネルギーEcoh(n)の総和を表す。ここで、各原子団の凝集エネルギーは、参考文献:(1)R.F.Fedors:「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids」, Polm. Eng. Sci., 14(2).147-154(1974)、および、参考文献:(2)「SP値 基礎・応用と計算方法」((株)情報機構)、第6刷、p69、2008を参照し、R.F.Fedors が提案している原子団の凝集エネルギーEcoh(J/mol)を使用した。
一例として、メタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチルなどがラジカル重合した化学構造の凝集エネルギー算出例を表1に示した。
表1中、MAAはメタクリル酸単位を表し、HEMAはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位を表し、4HBMAはメタクリル酸4−ヒドロキシブチル単位を表し、MMAはメタクリル酸メチル単位を表し、BMAはメタクリル酸n−ブチル単位を表し、EHMAはメタクリル酸2−エチルへキシル単位を表す。これらの略号は、以下の説明でも使用する。
Figure 0005747524
MAAを例に取り、(メタ)アクリル単量体単位(n)の凝集エネルギーCE(n)の算出方法を説明する。原子団のEcoh(J/mol)の欄には−CH−などの各原子団の凝集エネルギー(J/mol)を示し、MAA欄左の枠には、MAAがラジカル重合した化学構造が有する原子団の数を示し、右の枠には原子団の凝集エネルギー(J/mol)と原子団の数の積を示した。MAA欄、右枠を縦に合計したものがMAAの凝集エネルギーCE(n)である。
(メタ)アクリル系単量体単位としMAA、HEMA、MMAおよびBMAを使用する(メタ)アクリル系重合体を例に取り、凝集エネルギー密度CEDの算出方法を説明する。
ここで、本例では、MMA/BMA/MAA/HEMA=35/54/1/10(=100)(質量%)=0.427/0.464/0.014/0.095(=1.000)(モル分率)とする。
MMAの単量体単位構造(C=C二重結合が開いた状態)の分子量は100、凝集エネルギーは33830J/mol、BMAの単量体単位構造の分子量は142、凝集エネルギーは48650J/mol、MAAの単量体単位構造の分子量は86、凝集エネルギーは38750J/mol、HEMAの単量体単位構造の分子量は130、凝集エネルギーは60850J/molであるから、(メタ)アクリル系重合体の凝集エネルギー密度CED=1.15×(0.427×33830+0.464×48650+0.014×38750+0.095×60850)/(0.427×100+0.464×142+0.014×86+0.095×130)=408MPaとなる。
前記(メタ)アクリル系重合体を構成する全ての(メタ)アクリル系単量体単位のうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体単位が60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。この範囲とすることで、(メタ)アクリル系重合体が比較的柔軟になり、強化繊維と(メタ)アクリル系重合体および、(メタ)アクリル系重合体と熱可塑性樹脂との接着において、界面部分すなわち接着部分を柔軟に保つことで、接着性を高めることができる。
前記(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系重合体自体の硬さと強靱性とのバランスを保ち、十分な接着強度を確保する観点から、動的粘弾性試験で求められるtanδが、好ましくは50〜100℃である。より好ましくは55〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
また、同様の観点から、前記(メタ)アクリル系重合体の動的粘弾性試験で求められるヤング率E’が180〜600MPaであることが好ましい。より好ましくは200〜580MPa、さらに好ましくは240〜560MPaである。
(メタ)アクリル系重合体のtanδ、ヤング率E’は動的粘弾性測定装置、例えば「Reogel E4000」((株)ユービーエム社製)を使用し、測定することができる。tanδ、ヤング率E’の測定条件は、測定法:動的粘弾性率測定(正弦波)、測定モード:温度依存性、チャック:引張、波形:正弦波、加振の種類:ストップ加振、初期荷重:初期歪み制御(0.02mm)、条件:周波数1Hz、測定開始温度10℃、ステップ温度1℃、測定終了温度170℃、昇温速度4℃/分とする。
前記(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量Mwは、強化繊維を均一に被覆できるように被膜形成が可能である観点、および(メタ)アクリル系重合体自体の強度を確保して接着性を高める観点、さらには(メタ)アクリル系重合体とマトリックス樹脂との分子鎖同士の絡み合いを形成して相互作用を高める観点から、5,000〜500,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは10,000〜200,000、さらに好ましくは20,000〜80,000である。なお重量平均分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。
また、前記(メタ)アクリル系重合体は、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびリン酸塩基から選ばれた基を含むことが好ましい。これは、強化繊維との相互作用を高めるうえでこれらの基を含むことが効果的であるためである。より好ましくはスルホン酸塩基である。なお、これらの基は、(メタ)アクリル系重合体に結合している。
塩としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩から選ばれた塩が工業的に好ましい。塩への転化率は、繊維との接着性の観点より、好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは85〜100%である。したがって、(メタ)アクリル系重合体におけるカルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびリン酸塩基は、全て塩に転化されていることが望ましいが、一部遊離酸基が残存していてもよい。前記のような酸基の塩成分を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を行う方法や、IR、NMR、質量分析および元素分析等を用いて酸基の塩の構造を同定する方法などが挙げられる。
塩への転化率の測定方法について、スルホン酸基の場合を例にして説明する。有機溶媒中に(メタ)アクリル系重合体を溶解し、0.1規定の水酸化カリウム−エタノール標準液で滴定し、(メタ)アクリル系重合体の酸価を下式より求め、スルホン酸基の総モル数と比較して算出する方法などが挙げられる。
酸価=(5.611×A×F)/B (mgKOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム−エタノール標準液のファクター
B:試料採取量(g)。
前記で算出した酸価を下式を用いて塩に転化されていないスルホン酸基のモル数に換算する。
塩に転化されていないスルホン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)。
スルホン酸基の塩への転化率は、別途IR、NMRおよび元素分析等を用いてスルホン酸基のスルホニル基の硫黄の定量をおこなって算出したスルホン酸基の総モル数(モル/g)を用いて下式にて算出する。
転化率(%)=(1−r)×100(%)
r:塩に転化されていないスルホン酸基のモル数/スルホン酸基の総モル数。
また、強化繊維との相互作用を高める観点から、前記(メタ)アクリル系重合体に含まれるスルホン酸塩基の含有量は、(メタ)アクリル系重合体1g当たり、−(O=)S(=O)−O−で表される基換算で総量0.01〜1ミリモル当量であることが好ましい。より好ましくは0.03〜0.8ミリモル当量、さらに好ましくは0.05〜0.5ミリモル当量である。スルホン酸塩基の含有量を分析する手法としては、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法や、IR、NMRおよび元素分析等を用いてスルホン酸塩のスルホニル基の硫黄の定量をおこなう方法が挙げられる。
繊維強化熱可塑性樹脂に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや;ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN);ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂;液晶ポリマー(LCP)」などの結晶性樹脂;「スチレン系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」などの非晶性樹脂;フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂;さらにポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、ポリイソプレン系エラストマー、フッ素系樹脂およびアクリロニトリル系エラストマー等の各種熱可塑エラストマー等;これらの共重合体および変性体等から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。強度の観点からは、ポリアミドが好ましい。表面外観の観点からは、ポリカーボネートやスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が好ましい。耐熱性の観点からは、ポリアリーレンスルフィドが好ましい。連続使用温度の観点からは、ポリエーテルエーテルケトンが好ましい。耐薬品性の観点からは、フッ素系樹脂が好ましい。中でも、得られる成形品の軽量性の観点からポリオレフィンが好ましく、とりわけ、コストおよび一般産業への汎用性の観点から、ポリプロピレンが好ましい。なお、熱可塑性樹脂としては、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの熱可塑性樹脂を複数種含む熱可塑性樹脂組成物が用いられても良い。
熱可塑性樹脂としてポリオレフィン樹脂が用いられる場合には、(メタ)アクリル系重合体との親和性の観点から、カルボキシル基、酸無水物基、およびエポキシ基より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。変性ポリオレフィン樹脂の例としては、(無水)マレイン酸変性ポリエチレン、(無水)マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、(無水)マレイン酸変性ポリプロピレン、(無水)マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、(無水)マレイン酸変性プロピレン−エチレン共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性ポリエチレン、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、グリシジル(メタ)アクリレート変性プロピレン−エチレン共重合体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性エチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(無水)マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物等が挙げられる。なかでも、(無水)マレイン酸変性ポリプロピレン、(無水)マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、およびグリシジル(メタ)アクリレート変性ポリプロピレン等の変性体が好ましく用いられる。なお、(無水)マレイン酸変性ポリプロピレンとは、マレイン酸変性ポリプロピレン、または、無水マレイン酸変性ポリプロピレンのことを意味する。
繊維強化熱可塑性樹脂組成物における(メタ)アクリル系重合体の含有量は、0.1〜10質量%の範囲内であることが必要である。含有量が0.1質量%未満の場合は、良好な接着性を安定して発現できない場合がある。一方、含有量が10質量%よりも多くなると、得られる成形品の力学特性が極端に低下したりする場合がある。(メタ)アクリル系重合体の含有量は、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
また、繊維強化熱可塑性樹脂組成物における強化繊維の含有量は、1〜70質量%であることが必要である。強化繊維の含有量が1質量%未満の場合、強化繊維による補強効果が不十分となり、得られる成形品の力学特性が十分でない場合がある。強化繊維の含有量が70質量%よりも多くなる場合、強化繊維間への熱可塑性樹脂の含浸が不十分となり、結果として得られる成形品の力学特性が十分でない場合がある。強化繊維の含有量は、好ましくは5〜60質量%であり、さらに好ましくは10〜45質量%である。
また、繊維強化熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、20〜98.9質量%であることが必要である。熱可塑性樹脂の含有量が20%未満の場合、強化繊維間に熱可塑性樹脂が十分に含浸せずに、結果として得られる成形品の力学特性が不十分となる場合がある。熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは30〜98.9質量%、より好ましくは、40〜94.9質量%、さらに好ましくは、50〜89.9質量%である。
[強化繊維束]
本発明の(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束において、(メタ)アクリル系重合体の強化繊維束への付着量は、強化繊維束全体に対して、0.5〜30質量%の範囲内であることが重要である。(メタ)アクリル系重合体の付着量が0.5質量%未満の場合は、強化繊維を被覆できない部分が存在し、良好な接着性を安定して発現できない場合がある。さらには強化繊維束の取り扱い性が不十分となる場合がある。ここでいう取り扱い性とは例えば、強化繊維束をボビンに巻き取る際の繊維束の硬さやさばけ易さであったり、強化繊維束をカットしてチョップド糸として使用する場合には、チョップド糸の集束性のことをいう。一方、(メタ)アクリル系重合体の付着量が30質量%よりも多くなると、得られる成形品の力学特性が極端に低下する場合や、強化繊維束が極端に硬くなり、ボビンに巻けなくなるなどの不具合を生じる場合がある。付着量は接着性と強化繊維束の取り扱い性とのバランスから、好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは3〜10質量%である。
強化繊維束に用いられる強化繊維は、前記した繊維強化熱可塑性樹脂組成物における強化繊維と同様の思想で選定することができる。
また、強化繊維束に用いられる(メタ)アクリル系重合体は、前記した繊維強化熱可塑性樹脂組成物における(メタ)アクリル系重合体と同様の思想で選定することができる。
とりわけ、前記(メタ)アクリル系重合体を構成する全ての(メタ)アクリル系単量体単位のうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体単位が60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。この範囲とすることで、(メタ)アクリル系重合体が比較的柔軟になり、接着性を確保すると同時に、強化繊維束の取り扱い性を高めることができる。
また、強化繊維束には、(メタ)アクリル系重合体の他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分が付着していても構わない。例えば、(メタ)アクリル系重合体のエマルジョンを強化繊維束に付与する場合は、エマルジョンを安定化させる界面活性剤などを別途加えていても構わない。さらに、強化繊維束に集束性を与え、取り扱い性を確保する観点から、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの組成物を適宜付与してもよい。
また、強化繊維として、強化繊維束をカットして得られるチョップド糸を用いても良い。この場合、強化繊維の補強効果を高める観点と、分散を良好にする観点から、チョップド糸の長さは、好ましくは1〜60mm、より好ましくは2〜30mm、さらに好ましくは3〜10mmである。
(メタ)アクリル系重合体を強化繊維束に付着させる方法については、特に制限はないが、均一に単繊維間に付着させやすいという観点から、(メタ)アクリル系重合体のエマルジョンを強化繊維束に付与したのちに乾燥させる方法が好ましい。強化繊維束にエマルジョンを付与する方法としては、ローラー浸漬法、ローラー転写法、スプレー法などの既存の手法により付与する方法を用いることができる。
本発明の(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束とマトリックス樹脂との接着性の指標として、以下に示すマトリックス樹脂との界面剪断強度を評価する。界面剪断強度が高いと、接着性も高い傾向となる。この界面剪断強度は12MPa以上であることが好ましく、より好ましくは13MPa以上である。ここで、評価に用いるマトリックス樹脂は、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ(登録商標)”J105G)50質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー(登録商標)”QB510)50質量%とからなるポリプロピレン樹脂組成物である。
以下、界面剪断強度の評価詳細について説明する。評価にあたってはDrzal, L.T., Mater. Sci. Eng. A126, 289(1990)を参考にした。(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束より、長さ20cmの単繊維1本を取り出す。続いて未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ(登録商標)”J105G)50質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー(登録商標)”QB510)50質量%とからなる厚み150μmの樹脂フィルムを20×20cm角の大きさで2枚作製し、前記取り出した単繊維を1枚目の樹脂フィルム上に直線状に配置する。もう1枚の樹脂フィルムを、前記単繊維を挟むように重ねて配置し、200℃で3分間、0.5MPaの圧力で加圧プレスし、単繊維が樹脂に埋め込まれたサンプルを作製する。得られたサンプルを切り出し、短繊維が中央に埋没した厚さ0.2mm、幅10mm、長さ70mmの試験片を得る。前記と同様にして試験片を10ピース作製する。
この試験片を通常の引張試験治具を用いて、試験長25mmに設定し、歪速度0.5mm/minで引張試験を行う。単繊維の破断がもはや起こらなくなった時の、単繊維の全ての断片の長さをを透過型顕微鏡で測定し、それを平均することにより平均破断繊維長lを得る。
界面剪断強度(τ)は下式より求める。
τ=(σf ・d)/(2・lc )
lc =(4/3)・l
ここで、l(μm)は上記の平均破断繊維長、σf(MPa) は単繊維の引張強さ、d(μm)は単繊維の直径である。
σf は、強化繊維の引張強度分布がワイブル分布に従うとして次の方法により求める。即ち、樹脂に埋め込まずに単繊維のみの引張試験を用い、試料長がそれぞれ5mm、25mm、50mmで得られた平均引張強度から最小2乗法により、試料長と平均引張強度との関係式を求め、試料長lc の時の平均引張強度を算出する。
本発明における強化繊維束の好ましい形状の一つとして、連続繊維であるロービングを所定の長さにカットしたチョップド糸および粉砕したミルド糸が挙げられる。取扱い性の観点から、チョップド糸が好ましく用いられる。このチョップド糸における繊維長さは特に限定されるものでは無いが、集束性を十分に発揮し、カットされたあとの形状を十分に維持し、かつ、取扱いやすい観点から、1〜30mmの範囲が好ましく、2〜15mmの範囲がより好ましい。チョップド糸の集束性が不足すると、チョップド糸を搬送する際などの擦過で毛羽立ちが発生し、ファイバーボールとなって取扱い性が悪くなる場合がある。特にコンパウンド用途への使用時には、ファイバーボール発生により押出機へのチョップド糸の供給性が悪くなり、生産性を低下させる可能性がある。
本発明の(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束と組み合わせるマトリックス樹脂については、前記した繊維強化熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂と同様の思想で選定することができる。
本発明の(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束を熱可塑性樹脂と組み合わせて、樹脂組成物とする場合には、強化繊維による補強効果と、成形性や軽量性の観点から、(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束が1〜70質量%、熱可塑性樹脂が30〜99質量%であることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束が5〜60質量%、熱可塑性樹脂が40〜95質量%、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束が10〜50質量%、熱可塑性樹脂が50〜90質量%である。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いた成形方法については、特に制限はなく、射出成形、ホットプレス成形、スタンピング成形などの通常の成形方法が用いられる。中でも、成形サイクルが短く、生産性に優れる射出成形、およびスタンピング成形が好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束を用いた成形方法については、特に制限はなく、(1)本発明の(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束とマトリックス樹脂を一度溶融混練したコンパウンドペレットを用いた成形方法、(2)(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束をマトリックス樹脂ペレットと混合してなる成形材料を直接成形機に供給し、または(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束とマトリックス樹脂ペレットとを個別に直接成形機に供給し、成形品型に注入、冷却固化させる直接成形法、(3)(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束をマトリックス樹脂で被覆した長繊維ペレットを用いた成形方法などがある。
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂組成物および強化繊維束は、種々の用途に展開できる。特にインストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車・二輪車用部品;ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、プラズマディスプレーなどの電気・電子部品;電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品;土木・建築用部品;航空機用部品等の各種用途に用いることができる。なかでも電子機器部品、自動車部品により好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例に用いた原料は以下のとおりである。
(原料1)強化繊維束A1(PAN系炭素繊維)
強化繊維束A1は、下記のようにして製造した。
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行った後、120℃の温度の加熱空気中で乾燥し、強化繊維束A1(PAN系炭素繊維)を得た。強化繊維束A1の物性を下記に示す。
総フィラメント数:24,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.10。
(原料2)強化繊維束A2(PAN系炭素繊維)
強化繊維束A2は、下記のようにして製造した。
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に重炭酸アンモニウムを電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり80クーロンの電解表面処理を行った後、120℃の温度の加熱空気中で乾燥し、強化繊維束A2(PAN系炭素繊維)を得た。強化繊維束A2の物性を下記に示す。
総フィラメント数:24,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.20。
(原料3)強化繊維束A3(PAN系炭素繊維束)
強化繊維束A3は、下記のようにして製造した。
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換した。次いで、昇温速度を200℃/分とし、窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域で10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成し、炭素繊維束を得た。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行い、さらに浸漬法によりサイジング剤を付与し、120℃の温度の加熱空気中で乾燥しPAN系炭素繊維束を得た。強化繊維束A3の物性を下記に示す。
総フィラメント数:24,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度:4.2GPa
引張弾性率:230GPa
O/C:0.10
サイジング剤種類:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
サイジング剤付着量:1.5質量%。
(原料4)(メタ)アクリル系重合体P(1)
撹拌装置、温度センサー、還流冷却器およびモノマー滴下口がついた1L四つ口フラスコに、イオン交換水137.4gを仕込み、脱気および窒素ガスのバブリングを数回繰り返し溶存酸素濃度が2mg/L以下になるまで脱酸素した後、昇温を開始した。以後の乳化重合工程では、窒素ガスの吹き込みを継続した。
メタクリル酸メチル(MMA)35.0g、メタクリル酸n−ブチル(BMA)54.0g、メタクリル酸(MA)1.0gおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)10.0gからなるアクリル単量体混合物100g、「アデカリアソーブ(登録商標)SR−1025」(アデカ(株)社製の反応性乳化剤、25%水溶液)8.0g、および、プレエマルジョン製造用イオン交換水39.7gを混合し、乳化機にかけ10000回転で10分間乳化し、プレエマルジョンを製造した。
フラスコ内温度が重合温度の75℃になった時点で、プレエマルジョンの10wt%(14.8g)を投入した。フラスコ内温度が重合温度の75℃に回復した時点で、重合開始剤である過硫酸アンモニウム0.2gを添加し、この後75℃で1時間乳化重合を行った。
プレエマルジョンの残り90wt%(132.9g)を3時間かけてフラスコ内に滴下し、滴下終了後75℃でさらに30分間重合を行った後、30分で80℃に昇温して熟成反応を行った。昇温30分後に過硫酸アンモニウム0.020gおよびイオン交換水0.400gを添加し、この後30分後に、さらに過硫酸アンモニウム0.010gおよびイオン交換水0.200gを添加し、添加終了後さらに30分間熟成反応を行った後、冷却した。
40℃以下になるまで冷却して、「アデカネート(登録商標)B−1016」(アデカ(株)の消泡剤)0.05gを添加し、さらに30分間撹拌混合した後、25%アンモニア水0.47gおよび希釈用イオン交換水393.5gを添加して(メタ)アクリル系重合体P(1)を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
以下、表中の記載を含め、(メタ)アクリル系単量体を次のように略記する場合がある。メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸n−ブチル(BMA)、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸イソボルニル(IBOMA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア(MEEU)、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)。
(原料5〜13)(メタ)アクリル系重合体P(2〜8、11、12)
表2および表4に示した(メタ)アクリル系単量体および反応性乳化剤の配合を用いて、(メタ)アクリル系重合体P(1)と同様にして、(メタ)アクリル系重合体を15.0質量%含むエマルジョンを製造した。
(原料14)(メタ)アクリル系重合体P(9)
ALDRICH製、ポリアクリルアミド(50質量%水溶液)を用いた。
(原料15)(メタ)アクリル系重合体P(10)
日本触媒製、“ポリメント(登録商標)”SK1000を用いた。
(原料16)熱可塑性樹脂(未変性ポリプロピレン樹脂)
プライムポリマー(株)製、“プライムポリプロ(登録商標)”J105Gを用いた。その物性は下記の通りである。
比重:0.91
融点:160℃。
(原料17)熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)
三井化学(株)製、“アドマー”(登録商標)QE510を用いた。その物性は下記の通りである。
比重:0.91
融点:160℃。
(原料18)熱可塑性樹脂(ポリアミド6樹脂)
東レ(株)製、“アミラン(登録商標)”CM1001を用いた。その物性は下記の通りである。
比重:1.13
融点:225℃。
<強化繊維束の引張強度および引張弾性率の測定>
強化繊維束の引張強度および引張弾性率は、日本工業規格(JIS)−R−7601「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法により、求めた。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、“BAKELITE”(登録商標)ERL4221(100質量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)/アセトン(4質量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成した。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とした。
<強化繊維束のO/Cの測定の測定>
強化繊維束の表面酸素濃度(O/C)は、X線光電子分光法により次の手順に従って求めた。まず、溶剤で炭素繊維表面の付着物などを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた。X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202cVに合わせた。K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより、C1Sピーク面積を求めた。K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより、O1Sピーク面積を求めた。
O/Cを、上記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
<強化繊維束へのサイジング剤の付着量の測定>
試料として、サイジング剤が付着している炭素繊維約5gを採取し、耐熱性の容器に投入した。次にこの容器を120℃で3時間乾燥した。吸湿しないようにデシケーター中で注意しながら室温まで冷却後、秤量した質量をW(g)とした。続いて、容器ごと、窒素雰囲気中で、450℃で15分間加熱後、同様にデシケーター中で吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した質量をW(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維へのサイジング剤の付着量を次の式により求めた。
付着量(質量%)=100×{(W−W)/W
なお、測定は3回行い、その平均値を付着量として採用した。
<強化繊維束への(メタ)アクリル系重合体の付着量の測定>
試料として、(メタ)アクリル系重合体が付着している炭素繊維約5gを採取し、耐熱性の容器に投入した。次にこの容器を120℃で3時間乾燥した。吸湿しないようにデシケーター中で注意しながら室温まで冷却後、秤量した質量をW(g)とした。続いて、容器ごと、窒素雰囲気中で、450℃で15分間加熱後、同様にデシケーター中で吸湿しないように注意しながら室温まで冷却後、秤量した質量をW(g)とした。以上の処理を経て、炭素繊維への(メタ)アクリル系重合体の付着量を次の式により求めた。
付着量(質量%)=100×{(W−W)/W
なお、測定は3回行い、その平均値を付着量として採用した。
<(メタ)アクリル系重合体のtanδおよびヤング率E’の測定>
「Reogel E4000」((株)ユービーエム社製の動的粘弾性測定装置)を用いて、(メタ)アクリル系重合体のtanδおよびヤング率E’を測定した。測定条件は、測定法:動的粘弾性率測定(正弦波)、測定モード:温度依存性、チャック:引張、波形:正弦波、加振の種類:ストップ加振、初期荷重:初期歪み制御(0.02mm)、条件:周波数1Hz、測定開始温度10℃、ステップ温度1℃、測定終了温度170℃、昇温速度4℃/分とした。
<(メタ)アクリル系重合体の酸価、水酸基価の測定>
JIS K0070に準拠して(メタ)アクリル系重合体の酸価および水酸基価の測定をおこなった。
<(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。GPCカラムにはポリスチレン架橋ゲルを充填したものを用いた。溶媒に1,2,4−トリクロロベンゼンを用い、150℃にて測定した。分子量は標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量を算出した。
(参考例1、射出成形品の製造方法)
強化繊維束に(メタ)アクリル系重合体のエマルジョンまたは水溶液を浸漬法にて付与し、140℃で5分間乾燥させ、(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束を得た。付着量は(メタ)アクリル系重合体のエマルジョンまたは水溶液の濃度を適宜調整する方法、あるいは浸漬と乾燥を複数回繰り返して調整する方法のいずれか、または両方法を用いて調整した。得られた強化繊維束を、カートリッジカッターにて長さ1/4インチにカットし、チョップド糸を得た。
日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)を使用し、熱可塑性樹脂をメインホッパーから供給し、次いでその下流のサイドホッパーから前記のチョップド糸を供給し、温度220℃(ポリプロピレン系樹脂の場合)、あるいは260℃(ポリアミド6樹脂の場合)において、スクリュー回転数150rpmで混練した。チョップド糸の供給は、得られる繊維強化熱可塑性樹脂組成物の全重量に対して、チョップド糸の質量含有率が20%となるように調整した。混練後に直径5mmのダイス口より押し出したストランドを冷却後、カッターで切断してペレット状の成形材料を得た。
このペレット状成形材料を、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度60℃(ポリプロピレン系樹脂の場合)、あるいはシリンダー温度260℃、金型温度80℃(ポリアミド6樹脂の場合)で射出成形し、特性評価用成形品を得た。
(参考例2、プレス成形品の製造方法)
強化繊維束をカートリッジカッターで1/4インチにカットし、チョップド糸を得た。
水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液に、前記チョップド糸を繊維の質量含有率が0.02質量%となるように投入した。5分間撹拌してスラリーを調製後、水を吸引除去して、300mm角の強化繊維基材を得た。次いで該強化繊維基材の上面部より、(メタ)アクリル系重合体の1質量%エマルジョン液を散布した。余剰なエマルジョン液を吸引除去したのち、200℃で15分間乾燥し、(メタ)アクリル系重合体が付与された強化繊維基材を得た。付着量は表中に記載した。
この(メタ)アクリル系重合体が付与された強化繊維基材の質量含有率が30質量%となるように、熱可塑性樹脂を上下両面に配置し、220℃(ポリプロピレン系樹脂の場合)、あるいは250℃(ポリアミド6樹脂の場合)で10MPaの加圧を3分間おこない、次いで圧力を維持したまま、50℃まで冷却してプレス成形品を得た。
各実施例で得られる評価基準は次の通りである。
(強化繊維束の界面剪断強度の評価)
評価詳細についてはDrzal, L.T., Mater. Sci. Eng. A126, 289(1990)を参考にした。(メタ)アクリル系重合体が付着した強化繊維束より長さ20cmの単繊維1本を取り出した。続いて未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ(登録商標)”J105G)50重量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー(登録商標)”QB510)50重量%とからなる厚み150μmの樹脂フィルムを20×20cm角の大きさで2枚作製し、前記取り出した単繊維を1枚目の樹脂フィルム上に直線状に配置した。もう1枚の樹脂フィルムを前記単繊維を挟むように重ねて配置し、200℃で3分間、0.5MPaの圧力で加圧プレスし、単繊維が樹脂に埋め込まれたサンプルを作製した。得られたサンプルを切り出し、単繊維が中央に埋没した厚さ0.2mm、幅10mm、長さ70mmの試験片を得た。上記と同様にして試験片を10ピース作製した。
この試験片を通常の引張試験治具を用いて、試験長25mmに設定し、歪速度0.5mm/minで引張試験を行った。単繊維の破断がもはや起こらなくなった時の、単繊維の全ての断片の長さを透過型顕微鏡で測定し、それを平均することにより平均破断繊維長lを得た。
界面剪断強度(τ)を下式より求めた。
τ=(σf・d)/(2・lc)
lc=(4/3)・l。
ここで、l(μm)は上記の平均破断繊維長、σf(MPa)は単繊維の引張強さ、d(μm)は単繊維の直径である。σfは、強化繊維の引張強度分布がワイブル分布に従うとして次の方法により求めた。即ち、(メタ)アクリル系重合体を付着させる前の単繊維を用い、試料長がそれぞれ5mm、25mm、50mmにおける単繊維の引張り強度をJIS R7606に基づいて求めた。具体的には、炭素繊維束をほぼ4等分し、4つの束から順番に単繊維を100本サンプリングした。このとき、束全体からできるだけまんべんなくサンプリングした。サンプリングした単繊維は、穴あき台紙に接着剤を用いて固定した。単繊維を固定した台紙を引張り試験機に取り付け、歪速度1mm/分、試料数100で引張試験を行った。得られた平均引張強度から最小2乗法により、試料長と平均引張強度との関係式を求め、試料長lcの時の平均引張強度を算出した。
界面剪断強度の評価は以下の基準で行った。
A:14MPa以上
B:13MPa以上14MPa未満
C:12MPa以上13MPa未満
D:12MPa未満。
(繊維強化熱可塑性樹脂組成物の曲げ強度の評価)
得られた成形品から試験片を切り出し、ASTM D−790(2004)に従い曲げ強度を測定した。試験片は、任意の方向を0°方向とした場合に、0°、+45°、−45°、90°方向の4方向について切り出して試験片を作製した。それぞれの方向について測定数はn=5とし、全ての測定値(n=20)の平均値を曲げ強度とした。測定装置としては“インストロン(登録商標)”5565型万能材料試験機(インストロン・ジャパン(株)製)を使用した。
評価は成形品の曲げ強度をもとに、以下の基準で判定した。
AA:200MPa以上
A:150MPa以上200MPa未満
B:130MPa以上150MPa未満
C:100MPa以上130MPa未満
D:100MPa未満。
(繊維強化熱可塑性樹脂組成物のIzod衝撃強度(ノッチ有)の評価)
得られた成形品から試験片を切り出し、ASTM D−256(2004)に従いIzod衝撃強度(ノッチ有)を測定した。試験片は、任意の方向を0°方向とした場合に、0°、+45°、−45°、90°方向の4方向について切り出して試験片を作製した。それぞれの方向について測定数はn=5とし、全ての測定値(n=20)の平均値をIzod衝撃強度(ノッチ有)とした。
評価は成形品の曲げ強度をもとに、以下の基準で判定した。
A:150J/m以上
B:120J/m以上150J/m未満
C:100J/m以上120J/m未満
D:100J/m未満。
(実施例1)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例2)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(2)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例3)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(3)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例4)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(4)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例5)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(5)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例6)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(6)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(ポリアミド6樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例10
強化繊維A2、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(実施例11
強化繊維A3、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例2に記載の要領でプレス成形品を得た。評価結果は表3にまとめた。なお、プレス成形品は強化繊維がランダムに配向しており、曲げ強度の測定方向によるバラツキが小さく、射出成形品と比較して良好であった。
(実施例12
強化繊維A3、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(ポリアミド6樹脂)を用いて、参考例2に記載の要領でプレス成形品を得た。評価結果は表3にまとめた。なお、プレス成形品は強化繊維がランダムに配向しており、曲げ強度の測定方向によるバラツキが小さく、射出成形品と比較して良好であった。
(比較例1)
強化繊維A2、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、(メタ)アクリル系重合体は使用せずに参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例2)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(8)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例3)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(9)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例4)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(10)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例5)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(11)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例6)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(12)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例7)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
(比較例8)
強化繊維A1、(メタ)アクリル系重合体P(1)、熱可塑性樹脂(酸変性ポリプロピレン樹脂)を用いて、参考例1に記載の要領で射出成形品を得た。評価結果は表2にまとめた。
Figure 0005747524
Figure 0005747524
Figure 0005747524
以上のように、実施例1〜11においては、力学特性に優れた射出成形品を得ることができた。また実施例12、13のプレス成形品では、曲げ強度の測定方向によるバラツキも小さい良好な結果が得られた。
以上のように、実施例1〜10においては、力学特性に優れた射出成形品を得ることができた。また実施例1112のプレス成形品では、曲げ強度の測定方向によるバラツキも小さい良好な結果が得られた。

Claims (30)

  1. (メタ)アクリル系重合体0.1〜10質量%、炭素繊維1〜70質量%、および熱可塑性樹脂20〜98.9質量%を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物であって、該(メタ)アクリル系重合体が炭素繊維に付着しており、該(メタ)アクリル系重合体は、側鎖に水酸基を有するとともに、JIS K0070に準拠して測定された水酸基価が10〜100mgKOH/gであり、かつ、下式で算出される凝集エネルギー密度CEDが385〜550MPaである重合体である炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物;
    CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ{P(n)×M(n)}
    ここで、(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル系単量体単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(n)(nは1〜mの整数)としたとき、CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造CS(n)から計算された凝集エネルギーを意味する;また同様に、M(n)は(メタ)アクリル系単量体単位(n)の分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する;但しΣP(n)=1である。
  2. 前記(メタ)アクリル系重合体が、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド単位およびN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア単位から選ばれた1種以上の(メタ)アクリル系単量体単位を含む、請求項1に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記(メタ)アクリル系重合体が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体単位0〜5質量%、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体単位3〜25質量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位70〜97質量%を含む(メタ)アクリル系重合体である、請求項1または2に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記(メタ)アクリル系重合体を構成する全ての(メタ)アクリル系単量体単位のうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体単位が60質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物
  5. 前記(メタ)アクリル系重合体が側鎖にカルボキシル基を有し、酸価が1〜10gKOH/gである、請求項1〜のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記(メタ)アクリル系重合体の、動的粘弾性試験で求められるtanδが50〜100℃である、請求項1〜のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記(メタ)アクリル系重合体の、動的粘弾性試験で求められるヤング率E’が180〜600MPaである、請求項1〜のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記(メタ)アクリル系重合体の、重量平均分子量Mwが5,000〜500,000の範囲である、請求項1〜のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  9. 前記(メタ)アクリル系重合体が、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびリン酸塩基から選ばれた基を含む、請求項1〜のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  10. 前記(メタ)アクリル系重合体が、1グラム当たり、式(I)で表される基換算で総量0.01〜1ミリモル当量のスルホン酸塩基を含む、請求項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
    −(O=)S(=O)−O−・・・式(I)
  11. 前記(メタ)アクリル系重合体に含まれるスルホン酸基の50〜100%が、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩より選択される塩で転化されたものである、請求項10に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  12. 前記炭素繊維のX線光電子分光法(ESCA)によって測定される表面酸素濃度(O/C)が0.05〜0.5である、請求項1〜11のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  13. 前記炭素繊維が炭素繊維束として含まれており、かつ、該炭素繊維束の繊維長が1〜30mmである、請求項1〜12のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  14. 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、PEEKおよびフッ素系樹脂より選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂である、請求項1〜13のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  15. 前記ポリオレフィン樹脂が、カルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む変性ポリオレフィン樹脂である、請求項14に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
  16. 炭素繊維に(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束であって、該(メタ)アクリル系重合体は、側鎖に水酸基を有するとともに、JIS K0070に準拠して測定された水酸基価が10〜100mgKOH/gであり、かつ、下式で算出される凝集エネルギー密度CEDが385〜550MPaである重合体であり、かつ、該(メタ)アクリル系重合体の付着量が0.5〜30質量%である(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束;
    CED=1.15×Σ{P(n)×CE(n)}/Σ{P(n)×M(n)}
    ここで、(メタ)アクリル系重合体に含まれる(メタ)アクリル系単量体単位の種類をm種類として、各(メタ)アクリル系単量体単位をそれぞれ(メタ)アクリル系単量体単位(n)(nは1〜mの整数)としたとき、CE(n)は、(メタ)アクリル系単量体単位(n)の化学構造CS(n)から計算された凝集エネルギーを意味する;また同様に、M(n)は(メタ)アクリル系単量体単位(n)の分子量を、P(n)は(メタ)アクリル系重合体中の(メタ)アクリル系単量体単位(n)のモル分率を意味する;但しΣP(n)=1である。
  17. 前記(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束の、以下に示すマトリックス樹脂との界面剪断強度が12MPa以上である、請求項16に記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束;
    ここで、マトリックス樹脂は、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ(登録商標)”J105G)50質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー(登録商標)”QB510)50質量%とからなるポリプロピレン樹脂組成物。
  18. 前記(メタ)アクリル系重合体が、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド単位およびN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア単位から選ばれた1種以上の(メタ)アクリル系単量体単位を含む、請求項16または17のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  19. 前記(メタ)アクリル系重合体が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系単量体単位0〜5質量%、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体単位3〜25質量%、アルキル基の炭素原子数が1〜4個の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位70〜97質量%を含む、請求項1618のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  20. 前記(メタ)アクリル系重合体を構成する全ての(メタ)アクリル系単量体単位のうち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が、水素および/または1級炭素原子に結合した(メタ)アクリル系単量体単位が60質量%以上である、請求項1619のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  21. 前記(メタ)アクリル系重合体が側鎖にカルボキシル基を有し、酸価が1〜10gKOH/gである、請求項1620のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  22. 前記(メタ)アクリル系重合体の、動的粘弾性試験で求められるtanδが50〜100℃である、請求項1621のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  23. 前記(メタ)アクリル系重合体の、動的粘弾性試験で求められるヤング率E’が180〜600MPaである、請求項1622のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  24. 前記(メタ)アクリル系重合体の、重量平均分子量Mwが5,000〜500,000の範囲である、請求項1623のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  25. 前記(メタ)アクリル系重合体が、重合体鎖に結合したカルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびリン酸塩基から選ばれた基を含む、請求項1624のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  26. 前記(メタ)アクリル系重合体が、1グラム当たり、式(I)で表される基換算で総量0.01〜1ミリモル当量のスルホン酸塩基を含む、請求項25に記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
    −(O=)S(=O)−O−・・・式(I)
  27. 前記(メタ)アクリル系重合体に含まれるスルホン酸基の50〜100%が、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩より選択される塩で転化されたものである、請求項26に記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  28. 前記炭素繊維のX線光電子分光法(ESCA)によって測定される表面酸素濃度(O/C)が0.05〜0.5である、請求項1627のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  29. 前記炭素繊維束が20,000〜100,000本の単繊維からなる、請求項1628のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
  30. 前記炭素繊維束が繊維長1〜30mmのチョップド糸である、請求項1629のいずれかに記載の(メタ)アクリル系重合体が付着した炭素繊維束。
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