JP5908765B2 - 複合材料の製造方法 - Google Patents
複合材料の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5908765B2 JP5908765B2 JP2012064047A JP2012064047A JP5908765B2 JP 5908765 B2 JP5908765 B2 JP 5908765B2 JP 2012064047 A JP2012064047 A JP 2012064047A JP 2012064047 A JP2012064047 A JP 2012064047A JP 5908765 B2 JP5908765 B2 JP 5908765B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- carbon fiber
- fiber bundle
- composite material
- polymer
- sizing agent
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Reinforced Plastic Materials (AREA)
- Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
- Inorganic Fibers (AREA)
- Nonwoven Fabrics (AREA)
Description
本発明の炭素繊維束は、その表面にサイジング剤が付着しているものであり、そのサイジング剤が高分子成分を主とするものであり、高分子成分が少なくとも変性ポリアミド系高分子及び/またはポリビニルアルコール系高分子を含むことを必須とする。高分子成分を主とするとは、乾燥後のサイジング剤の主成分が高分子成分からなるものであり、好ましくは60wt%以上が高分子成分であることが好ましい。また、サイジング剤としては、水及び/またはアルコールに高分子成分を溶解したものであることが好ましい。
本発明の炭素繊維束を用いた複合材料は、複合化させるマトリックス樹脂の含浸が十分に行われ、また強度ムラなどが少ない高品位なものとなる。
炭素繊維束を開繊させる方法は特に限定されるものではないが、好ましくは丸棒で繊維をしごく方法、気流を用いる方法、超音波等で繊維を振動させる方法等を挙げることが出来る。炭素繊維束に空気を吹き付けることで繊維束を開繊させる方法では、開繊の程度を空気の圧力等により適宜コントロールすることができる。これらの開繊工程に供する繊維は連続繊維でも不連続繊維でもよい。上記の開繊工程を経ることで、開繊された炭素繊維束を得ることが出来る。
1.炭素繊維束をカットする工程、
2.カットされた炭素繊維束を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束を開繊させる工程、
3.開繊させた炭素繊維を拡散させると同時に、繊維状、粉末状、又は粒状の熱可塑性樹脂とともに吸引しつつ、炭素繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
4.塗布された炭素繊維および熱可塑性樹脂を定着させる工程。
また、本発明の炭素繊維束は、一軸配向炭素繊維複合材料として用いることも好適な用途の一つである。
サイジング剤の付着量は、1.0mの炭素繊維束を2本採取し、これらを窒素雰囲気下10℃/分で550℃に昇温後、同温度で10分間焼成し、重量減少した分をサイジング剤の付着分として以下の式(1)で算出した。
サイジング剤の付着量[%]=(焼成前重量−焼成後重量)/焼成後重量×100・・・(1)
サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面SEM像の窒素マッピング(株式会社堀場製作所製:エネルギー分散型X線分析装置「EMAX ENERGY EX−450」)を実施した。次に、炭素繊維束の両表面にグラファイトの粘着シートを0.1MPaの圧力で貼り付けた後、粘着シートの片方を剥がして、剥がした粘着シートに張り付いた炭素繊維表面の窒素マッピングを実施した。この操作を5回繰り返して、窒素マッピング像を比較することで、炭素繊維束内部のサイジング剤の付着状態を確認した。
開繊された炭素繊維束の開繊率は、炭素繊維束を20mmにカットし、炭素繊維投入口直径20mm、かつ吹き出し口直径55mm、かつ管の長さが投入口から吹き出し口まで400mmであるテーパ管内に導入し、テーバ管に導入する圧縮空気圧力が0.25MPaであるようにして圧縮空気を流すことで、吹き付けた後の繊維全体中に存在する幅0.6mm未満の繊維束の重量割合で評価した。
ガラス製の容器の底から5cmの高さまでサイジング剤溶液を入れた。繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの炭素繊維束を着液させ、着液後の炭素繊維束表面の濡れ具合、炭素繊維束がガラス容器の底に沈むまでの時間を計測することで、サイジング剤溶液の含浸性を評価した。
炭素繊維束の硬度は、JIS L−1096 E法(ハンドルオメータ法)に準じ、HANDLE−O−Meter(大栄科学精機製作所製「HOM−200」)を用いて測定した。硬度測定に用いる試験片の長さは10cm、幅はフィラメント数1600本で1mmとなるように炭素繊維束を開繊調整した。また、スリット幅は10mmに設定した。このスリット溝が設けられた試験台に試験片となる炭素繊維束を1本乗せ、ブレードにて溝の一定深さ(8mm)まで試験片を押し込むときに発生する抵抗力(g)を測定した。炭素繊維束の硬度は3回の測定の平均値から得た。
複合材料成形板から、幅15mm×長さ100mmの試験片を切り出し、JIS K7074に準拠した中央荷重とする3点曲げにて評価した。支点間距離を80mmとしたr=2mmの支点上に試験片を置き、支点間中央部にr=5mmの圧子にて、試験速度5mm/分で荷重を与えた場合の最大荷重および中央たわみ量を測定し、曲げ強度および曲げ弾性率とした。
エマルジョン中のポリマー粒子の凝集性は、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−500」)を用い、超音波で3分処理後の平均粒子径(D50;累積50%粒子径)で評価した。
〈炭素繊維束の作成〉
未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、繊度1.6g/m、引張強度4000MPa(408kgf/mm2)、引張弾性率238GPa(24.3ton/mm2))を準備した。
一方、サイジング剤用の高分子溶液として、N−メトキシメチル化ナイロン6(ナガセケムテックス株式会社製「F−30K」)0.5重量部をエタノール99.5重量部に溶解させて、0.5重量%に調整した高分子溶液に、20℃で液体のノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン103」)0.15重量部を溶解させた。この高分子溶液は20℃で無色透明であった。また、上記の未サイジングの炭素繊維束を繊維方向に1cmに裁断し、この高分子溶液に着液させると、直に炭素繊維ストランド表面が濡れて、約2秒で5cmのガラス容器の底に沈み、炭素繊維束への高分子溶液の含浸性は非常に良好であることを確認した。
次に、この高分子溶液の浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間に高分子溶液を拡散させた。次いで120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は56gであり、サイジング剤の付着量は炭素繊維重量100重量部に対して、0.45重量部であった。また、サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面SEM像の窒素マッピングと、グラファイトの粘着シートで5回炭素繊維束の表面を剥いだ後に得られる粘着シートに張り付いた炭素繊維表面の窒素マッピング像の比較から、窒素原子の存在比率は変わらず、炭素繊維束の表面だけでなく内部にも均等にサイジング剤が付着していた。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.25MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について開繊率を測定したところ、51%の高い開繊率が得られた。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として、ポリアミドパウダー(PA6樹脂パウダー、ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、炭素繊維の供給量を600g/min、ポリアミドの供給量を730g/minにセットしてテーパ管内に導入した。
テーパ管内で空気を炭素繊維に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、ポリアミドパウダーとともにテーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。散布された炭素繊維およびポリアミドパウダーを、テーブル下部よりブロワにて吸引し、定着させて、厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板に未含浸部はなく、曲げ物性は、曲げ強度505MPa、曲げ弾性率28GPaとの優れたものであった。
〈炭素繊維束の作成〉
実施例1と同じ未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」を用意した。
一方、サイジング剤用の高分子溶液として、水100重量部とエタノールの900重量部の混合溶液に、N−メトキシメチル化ナイロン6(ナガセケムテックス株式会社製「F−30K」)4.5重量部とポリビニルアルコール(クラレ株式会社製「PVA205」)0.5重量部を溶解させて、0.5重量%に調整した高分子溶液を作製した。この高分子溶液は20℃で無色透明であった。また、繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの上記炭素繊維束を高分子溶液に着液させると、直に炭素繊維束表面が濡れて、約2秒で5cmのガラス容器の底に沈み、炭素繊維束への高分子溶液の含浸性は非常に良好であることを確認した。
次に、この高分子溶液の浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間に高分子溶液を拡散させた。これを120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は54gであり、サイジング剤の付着量は炭素繊維重量100重量部に対して、0.3重量部であった。また、サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面の窒素マッピング像を比較したところ、炭素繊維束内部の窒素原子の存在比率は変わらず、炭素繊維束の表面だけでなく内部にも均等にサイジング剤が付着していることを確認した。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.25MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について上述した方法で開繊率を測定したところ、53%の高い開繊率が得られた。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として実施例1と同じポリアミドパウダー(ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例1と同様に厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、実施例1と同様にプレス、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板に未含浸部はなく、曲げ物性は、曲げ強度515MPa、曲げ弾性率30GPaとの優れたものであった。
〈炭素繊維束の作成〉
実施例1と同じ未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」を用意した。
一方、サイジング剤用の高分子溶液として、水1000重量部にポリビニルアルコール(クラレ株式会社製「PVA205」)5重量部、20℃で液体のノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン103」)0.5重量部を溶解させて、0.55重量%に調整した高分子溶液を作製した。高分子溶液は20℃で無色透明であった。また、繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの上記炭素繊維束を高分子溶液に着液させると、直に炭素繊維束表面が濡れて、約2秒で5cmのガラス容器の底に沈み、炭素繊維束への高分子溶液の含浸性は非常に良好であることを確認した。
次に、この高分子溶液の浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間に高分子溶液を拡散させた。これを120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は52gであり、サイジング剤の付着量は炭素繊維重量100重量部に対して、0.36重量部であった。また、サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面の窒素マッピング像を比較したところ、炭素繊維束内部の窒素原子の存在比率は変わらず、炭素繊維束の表面だけでなく内部にも均等にサイジング剤が付着していることを確認した。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.25MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について上述した方法で開繊率を測定したところ、57%の高い開繊率が得られた。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として実施例1と同じポリアミドパウダー(ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例1と同様に厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、実施例1と同様にプレス、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板に未含浸部はなく、曲げ物性は、曲げ強度503MPa、曲げ弾性率28GPaとの優れたものであった。
〈炭素繊維束の作成〉
実施例1と同じ未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」を用意した。
一方、サイジング剤用の高分子溶液として、水1000重量部にポリビニルアルコール(クラレ株式会社製「PVA205」)10重量部を溶解させて、1重量%に調整した高分子溶液を作製した。高分子溶液は20℃で無色透明であった。また、繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの上記炭素繊維束を高分子溶液に着液させると、直に炭素繊維束表面が濡れて、約10秒で5cmのガラス容器の底に沈み、実施例1〜3よりは若干劣るものの、炭素繊維束への高分子溶液の含浸性は良好であることを確認した。
次に、この高分子溶液の浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間に高分子溶液を拡散させた。これを120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は60gであり、サイジング剤の付着量は炭素繊維重量100重量部に対して、0.5重量部であった。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.25MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について上述した方法で開繊率を測定したところ、57%の高い開繊率が得られた。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として実施例1と同じポリアミドパウダー(ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例1と同様に厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、実施例1と同様にプレス、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板に未含浸部はなく、曲げ物性は、曲げ強度493MPa、曲げ弾性率26GPaとの優れたものであった。
〈炭素繊維束の作成〉
実施例1と同じ未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」を用意した。
一方、サイジング剤用の高分子溶液として、N−メトキシメチル化ナイロン6(ナガセケムテックス株式会社製「F−30K」)0.5重量部をエタノール99.5重量部に溶解させて、0.5重量%に調整した高分子溶液を作製した。次いで、ビニルエステルを含有した水性エマルジョン(昭和電工株式会社製「Ripoxy」)を水で希釈して、0.5重量%の水性エマルジョンを調整した。上述の高分子溶液と水性エマルジョンを1:1の比率で混合させて、サイジング剤を含有する高分子溶液を調整した。このサイジング剤を含有する溶液は20℃で半透明であった。また、繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの上記炭素繊維束を高分子溶液に着液させると、直に炭素繊維束表面が濡れて、約3秒で5cmのガラス容器の底に沈み、実施例1〜3よりは若干劣るものの、炭素繊維束への高分子溶液の含浸性は良好であることを確認した。
次に、この高分子溶液の浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間に高分子溶液を拡散させた。これを120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は48gであり、サイジング剤の付着量は炭素繊維重量100重量部に対して、0.42重量部であった。また、サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面の窒素マッピング像を比較したところ、炭素繊維束内部の窒素原子の存在比率は変わらず、炭素繊維束の表面だけでなく内部にも均等にサイジング剤が付着していることを確認した。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.25MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について上述した方法で開繊率を測定したところ、60%の高い開繊率が得られた。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として実施例1と同じポリアミドパウダー(ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例1と同様に厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、実施例1と同様にプレス、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板に未含浸部はなく、曲げ物性は、曲げ強度508MPa、曲げ弾性率26GPaとの優れたものであった。
〈炭素繊維束の作成〉
実施例1と同じ未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」を用意した。
一方、サイジング剤用の高分子溶液として、N−メトキシメチル化ナイロン6(ナガセケムテックス株式会社製「F−30K」)をエタノールに溶解させて、3重量%に調整した高分子溶液を作製した。この高分子溶液は20℃で無色透明であった。また、繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの上記炭素繊維束を高分子溶液に着液させると、直に炭素繊維束表面が濡れて、約2秒で5cmのガラス容器の底に沈み、炭素繊維束への高分子溶液の含浸性は良好であることを確認した。
次に、この高分子溶液の浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間に高分子溶液を拡散させた。これを120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は105gと硬く、サイジング剤の付着量は炭素繊維重量100重量部に対して、1.7重量部であった。なお、サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面の窒素マッピング像を比較したところ、炭素繊維束内部の窒素原子の存在比率は変わらず、炭素繊維束の表面だけでなく内部にも均等にサイジング剤が付着していることを確認した。
また、テーパ管内にφ1mmの穴を5ヶ所あけ、外側より0.25MPa圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより開繊しつつ、テーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。得られた炭素繊維束について上述した方法で開繊率を測定したところ、わずか5%であり殆ど開繊していなかった。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として実施例1と同じポリアミドパウダー(ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例1と同様に厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、実施例1と同様にプレス、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板はマトリックス樹脂中への炭素繊維束の分散が不均一であり、曲げ物性は、曲げ強度122MPa、曲げ弾性率8GPaと低い物性値に過ぎなかった。
〈炭素繊維束の作成〉
実施例1と同じ未サイジングの炭素繊維束(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」を用意した。
一方、サイジング剤用の水性エマルジョン用に、ナイロン6/ナイロン66=90/10(重量比)の二元共重合ポリアミド樹脂120gと、水179.6gおよび水酸化ナトリウム0.4gとを攪拌し、ポリアミド樹脂水性分散液を取り出した。得られたポリアミド樹脂水性分散液の樹脂濃度は、全量100重量部に対して40重量部であった。さらに、ポリアミド樹脂水性分散液300gに水11820gを室温で撹拌しながら追加し、ポリアミド粒子が分散した水性エマルジョンを得た。この水性エマルジョンの超音波処理後のポリアミド粒子の平均粒子径は0.7μmであったが、30分放置後の平均粒子径は75μmとなり、ポリアミド粒子の凝集が認められた。
また、繊維方向に1cmに裁断した未サイジングの上記炭素繊維束を水性エマルジョンに着液させて、その含浸性を評価したが、120秒経過しても炭素繊維束はエマルジョンに浸漬されることなく液面に浮いた状態であり、エマルジョンの含浸性は不良であった。
次に、このエマルジョンの浴に、上記の未サイジングの炭素繊維束を連続的に浸漬させ、フィラメント間にポリアミド粒子を拡散させた。これを120℃〜150℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥し、幅約15mmの炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束の硬度は78gであり、得られた炭素繊維束中のサイジング剤の付着量は、炭素繊維重量100重量部に対して、0.6重量部であった。また、サイジング剤を付着した炭素繊維束の表面SEM像の窒素マッピングと、グラファイト粘着シートで炭素繊維束の表面を剥いだ後に得られる粘着シートに張り付いた炭素繊維表面の窒素マッピング像を比較したところ、粘着シートの剥ぐ回数(0〜5回)に伴い窒素原子の存在比率が低下していた。すなわち炭素繊維束の表層から内部に向かうにつれてポリアミド粒子由来の窒素元素濃度が低下していることが判明した。
得られた炭素繊維束を16mmにカットし、マトリックス樹脂として実施例1と同じポリアミドパウダー(ユニチカ株式会社製「A1030FP」)を用意し、実施例1と同様に厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、実施例1と同様にプレス、繊維と樹脂の全目付け2700g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率35Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。得られた成形板には一部未含浸部があり、曲げ物性は、曲げ強度280MPa、曲げ弾性率18GPaであった。
Claims (8)
- 炭素繊維束をカットした短繊維と樹脂とからなるランダムマットにおいて、炭素繊維束が高分子成分を主とするサイジング剤が付着した炭素繊維束であって、高分子成分が少なくとも変性ポリアミド系高分子及び/またはポリビニルアルコール系高分子を含み、かつ硬度が70g以下であり、樹脂が、繊維状、粉末状、または粒状の形状であり、当該ランダムマットを成形することを特徴とする複合材料の製造方法。
- 変性ポリアミド系高分子がナイロン6のアミド基の水素原子の一部をメトキシメチル基
で置換した高分子である請求項1記載の複合材料の製造方法。 - ポリビニルアルコール系高分子がポリ酢酸ビニルをけん化した高分子であって、けん化
度が50〜100モル%である請求項1または2記載の複合材料の製造方法。 - 樹脂がポリアミド樹脂である請求項1〜3のいずれか1項記載の複合材料の製造方法。
- サイジング剤の固形分付着量が0.01wt%以上0.5wt%未満である請求項1〜4のいずれか1項記載の複合材料の製造方法。
- 炭素繊維束をカットした短繊維が長さ2〜100mmである請求項1〜5のいずれか1項記載の複合材料の製造方法。
- 炭素繊維束がカットする前にあらかじめ開繊されたものである請求項1〜6のいずれか1項記載の複合材料の製造方法。
- 成形する方法が加熱プレスする方法である請求項1〜7のいずれか1項記載の複合材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012064047A JP5908765B2 (ja) | 2012-03-21 | 2012-03-21 | 複合材料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012064047A JP5908765B2 (ja) | 2012-03-21 | 2012-03-21 | 複合材料の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013194338A JP2013194338A (ja) | 2013-09-30 |
JP5908765B2 true JP5908765B2 (ja) | 2016-04-26 |
Family
ID=49393639
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012064047A Active JP5908765B2 (ja) | 2012-03-21 | 2012-03-21 | 複合材料の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5908765B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101701412B1 (ko) * | 2015-03-31 | 2017-02-01 | 한국생산기술연구원 | 복합소재용 탄소 섬유웹의 제조방법 |
JP6420719B2 (ja) * | 2015-05-15 | 2018-11-07 | 本田技研工業株式会社 | 繊維強化熱可塑性樹脂及びその製造方法 |
US20210363313A1 (en) * | 2017-08-07 | 2021-11-25 | Zoltek Corporation | Polyvinyl alcohol-sized fillers for reinforcing plastics |
JP7404899B2 (ja) * | 2020-01-30 | 2023-12-26 | オムロン株式会社 | 複合成形体 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0284577A (ja) * | 1988-07-29 | 1990-03-26 | Tonen Corp | 表面処理された炭素繊維 |
JP3643485B2 (ja) * | 1998-08-03 | 2005-04-27 | 東邦テナックス株式会社 | チョップ用及び脱サイズ編織物用炭素繊維 |
JP2002088656A (ja) * | 2000-09-07 | 2002-03-27 | Toray Ind Inc | 成形用炭素繊維束 |
JP2002317384A (ja) * | 2001-04-20 | 2002-10-31 | Toray Ind Inc | 長繊維ペレット用導電性繊維束およびそれからなる長繊維ペレット、ならびにそれを用いた成形品 |
-
2012
- 2012-03-21 JP JP2012064047A patent/JP5908765B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013194338A (ja) | 2013-09-30 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5905740B2 (ja) | 炭素繊維束およびこの炭素繊維束を用いた繊維強化熱可塑性樹脂成形体 | |
JP6105332B2 (ja) | 強化繊維及びそれからなる強化繊維束 | |
US9475929B2 (en) | Fiber-reinforced thermoplastic resin composition, reinforcing fiber bundle, and process for production of fiber-reinforced thermoplastic resin composition | |
JP6361555B2 (ja) | 樹脂コーティング炭素繊維およびその炭素繊維強化複合材 | |
JPWO2006101269A1 (ja) | 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド及びその製造方法 | |
JP5820927B2 (ja) | 補強用炭素繊維束、その製造方法及びそれを用いた複合体の製造方法 | |
JP5908765B2 (ja) | 複合材料の製造方法 | |
JP2006291377A (ja) | 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド | |
JP2006124847A (ja) | 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランドの製造方法 | |
JP5251342B2 (ja) | 炭素繊維ウェブの製造方法 | |
JP5905866B2 (ja) | 炭素繊維用サイジング剤 | |
JP6211761B2 (ja) | 炭素繊維束の製造方法およびその製造方法により得られる炭素繊維束 | |
JP2012007280A (ja) | 炭素繊維束及びその製造方法、ならびにそれからの成形品 | |
JP6154127B2 (ja) | 補強用炭素繊維束の製造方法およびそれを用いた炭素繊維複合材料の製造方法 | |
JP2015178689A (ja) | 強化繊維束、その製造方法及びそれを用いた複合材料 | |
JP4361401B2 (ja) | 炭素繊維、炭素繊維強化熱可塑性樹脂、及び炭素繊維の製造方法 | |
JP2006336131A (ja) | 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド | |
WO2014045981A1 (ja) | 強化繊維束及びそれを用いた複合材料 | |
JP2013119685A (ja) | 開繊された炭素繊維束及びその製造方法 | |
JP2006124852A (ja) | 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維ストランド | |
JP2020023770A (ja) | サイジング剤付着炭素繊維束およびその製造方法 | |
JP2006077334A (ja) | 熱可塑性樹脂強化用炭素繊維 | |
JP2013119684A (ja) | 開繊された炭素繊維束及びその製造方法 | |
JP2011057779A (ja) | 炭素繊維強化ポリアセタール樹脂成形材料の製造方法 | |
JP7267792B2 (ja) | サイジング剤付着炭素繊維束 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20141225 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20151203 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20151215 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160209 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20160301 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160324 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5908765 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |