JP6154127B2 - 補強用炭素繊維束の製造方法およびそれを用いた炭素繊維複合材料の製造方法 - Google Patents
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Description
また、炭素繊維束とサイジング液成分との親和性を高める目的で、サイジング処理前の炭素繊維束の炭素繊維表面に含酸素官能基を導入した炭素繊維であることも好ましい。
ここで本発明で用いられるサイジング液としては樹脂成分を含有することが必要である。さらには、この本発明に用いられるサイジング液中の樹脂成分としては熱可塑性樹脂であることが好ましい。特に樹脂成分が熱可塑性樹脂である場合には、コンポジット化した後でも再加熱などによりコンポジットの成形性が悪化しにくいことにより、リサイクル可能となる利点がある。具体的に好ましい樹脂を例示すると、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらに示したものの共重合体や変性体、それらを含むものを2つ以上混合して使用してもよい。また特にこれらに示したものが、サイジング剤成分として、水中の分散体として存在することが好ましい。
より具体的な好ましい樹脂としては、主成分として、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。
またこの樹脂成分としては、共重合樹脂であることが好ましい。共重合成分を選択することにより、本発明で重要な要素である粘度のコントロールが行いやすく、また要求される物性も確保しやすい利点があるからである。そして分子量を調整することで、さらに粘度をコントロールすることも可能である。
サイジング液中の樹脂の粘度が高すぎる場合には、サイジング剤に含まれる樹脂主成分が炭素繊維表面に溶けにくく、濡れ拡がりにくくなるため、本発明ではせん断速度1216s−1では150Pa・s未満であることが必要となる。より好ましくは、サイジング剤樹脂主成分の粘度としては、0.001Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましい。さらに好ましくは、粘度が0.001Pa・s以上50Pa・s以下の粘度が好ましい。ここで、主成分とは、サイジング剤中のもっとも多い樹脂成分を意味し、特には50重量%以上の固形分含有率である樹脂成分であることが好ましい。
H2m+1Cm−O−(X−O)n−H (1)
(m;8〜22の整数、n;2〜20の整数、X;炭素数1〜5のアルキレン基)
臨界単糸数=600/D (1)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
本発明においては、このようなサイジング液が付着した炭素繊維束を乾燥することにより、サイジング液中のサイジング剤により繊維束が収束し、風合いを制御でき、かつ含浸性のよい優れた炭素繊維束を得ることができたのである。
もう一つの本発明である炭素繊維複合材料は、本発明の炭素繊維束と樹脂とからなる材料(複合体)である。さらには樹脂が熱可塑性樹脂であることが好ましく、極めて高い性能を有する。
炭素繊維束を用いた複合材料の形状としては、例えば、後に詳述するランダムマットや、一軸配向炭素繊維複合材料、炭素繊維織物補強複合材料などが挙げられる。
このような炭素繊維束を用いた複合体としては、例えば好適な例として炭素繊維がランダムに配向したランダムマットを挙げることができる。
このとき、ランダムマットに用いる本発明の炭素繊維束の平均繊維長としては、2〜100mm以下が好ましく、さらには10〜80mmであり、より好ましくは15〜60mmの範囲が好ましく、さらには20〜60mmの範囲が好ましい。これらの繊維長の1つ、もしくは2つ以上を組み合わせて形成してもよい。
1.上記の炭素繊維束をカットする工程(カット工程)、
2.カットされた炭素繊維を管内に導入し、空気により搬送し散布する工程(散布工程)、
3.散布された炭素繊維を定着させ、強化繊維マットを得る工程(定着工程)、
4.強化繊維マットに熱可塑性樹脂を添加してランダムマットを得る工程(熱可塑性樹脂添加工程)。
このとき、炭素繊維束の風合い値が、70g以上200g以下であることが好ましい。このような範囲に調整することにより、物性の優れた等方性複合材料とすることが可能となる。
例えば本発明の炭素繊維束を引き揃え、溶融した熱可塑性樹脂と接触させることにより炭素繊維束と熱可塑性樹脂とが複合されてなる一軸配向炭素繊維複合材料を得ることができる。
本発明の繊維強化複合材料成形体を得る方法に特に限定はないが、例えば真空成形や液圧成形、ホットプレス、コールドプレス等により成形することで好適に該成形体を得ることが出来る。
<サイジング液の固形分付着量>
サイジング液の固形分付着量は、サイジング処理を行った5.0mの炭素繊維束を2本採取し、これらをアルミナ坩堝に入れ、窒素雰囲気に置換可能な炉で、450℃に昇温した炉で60分間焼成し、重量減少した分をサイジング液の固形分付着分として以下の式(2)によって計算されたものの平均である。なお、重量測定は小数点以下4桁測定する。
サイジング液の固形分付着量=(a−b)/b×100 [%] (2)
a:焼成処理前の炭素繊維束重量[g]
b:焼成処理後の炭素繊維束重量[g]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、DSC220)(温度範囲−150〜725℃)を用いて、窒素雰囲気中において、昇温速度10℃/分で−75℃から測定したときの、結晶融解吸熱ピークの検出値を融点とし、ベースラインのシフト前後の中点の温度をガラス転移点とした。
レーザー回折型粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、「LA−950」)による粒子径測定でのD50(累積50%粒子径)の値を粒径とした。
炭素繊維束の風合い値(硬度)は、JIS L−1096 E法(ハンドルオメータ法)に準じ、HANDLE−O−Meter(大栄科学精機製作所製「HOM−200」)を使用して、試験片長20cm(L)の炭素繊維束を3本採取し、スリット幅を10mmとして試験台に炭素繊維束をのせ、ブレードにて溝の一定深さ(8mm)まで試験片を押し込むときに発生する抵抗力(g)を測定した。この値を炭素繊維束の風合い値とした。
サイジング液中の樹脂固形成分のみを、測定用試料(樹脂)として準備した。粘度測定には、キャピラリレオメーター(東洋精機製作所製、キャピログラフ1D、バレル直径:9.55mm(固定))を使用した。測定用試料(樹脂)をシリンダー内に入れ、JIS K 7199に従って、せん断速度1216s−1における粘度VIを測定した。測定値は、このせん断速度において荷重が安定的にかかっていることを確認した上で数値の下1桁を四捨五入して、測定値として採用した。なお、荷重が安定的にかかっていない場合には、バレル内に気泡を含んでいたり、粘度が低すぎて樹脂を有効に押し出せていない可能性が高いので、測定値から除外している。
成形した複合体の板の厚みをマイクロメーターを用いて、8点測定したときの平均値を計算した。
20mm角にカットした炭素繊維複合材料の水中での密度を測定し、次にアルミナ製るつぼに入れて空気中で550℃に加熱したマッフル炉に30分入れ、マトリックス樹脂を分解させ、分解前後の重量を測定することで、繊維体積含有率(Vf)を測定した。
得られた炭素繊維ランダムマット複合材料をJIS K 7164に従って、試験片をウォータージェットにてダンベル形状にカットし、1枚の板から8本の試験片を準備し、引張試験を実施し、引張強度及び引張弾性率を求めた。
(水性分散液1の作成)
融点130℃のナイロン6/ナイロン66/ナイロン12(重量比;45/15/40)三元共重合体ポリアミド樹脂を準備した。
この三元共重合ポリアミド樹脂120g、水179.6gおよび水酸化ナトリウム0.4gを、撹拌機を取り付けたオートクレーブ中に加え、回転数500rpmの状態を保持して150℃まで昇温させ、150℃になった状態で30分間反応を行った。反応終了後、そのまま50℃まで冷却して、ポリアミド樹脂水性分散液を取り出した。得られたポリアミド樹脂水性分散液の樹脂濃度は、水性分散液100重量部に対して40重量部であった。
最後に、得られたポリアミド樹脂水性分散液75gと、別途、25重量%に調整したエチレン−アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製、登録商標PRIMACOR 5980I、アクリル酸変性量 20重量%)のアンモニウム塩水溶液(アンモニアによる中和度0.75)12.0gとを混合し、融点130℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物の水性分散液1を得た。
融点110℃のナイロン6/ナイロン66/ナイロン12(重量比;25/10/65)三元共重合体ポリアミド樹脂を準備した。
これを水性分散液1と同様にして130℃まで昇温させて30分間反応を行った。最後に、得られたポリアミド樹脂水性分散液75gと別途、25重量%に調整したエチレンーアクリル酸共重合体(ダウケミカル社製、登録商標PRIMACOR 5980I、アクリル酸変性量 20重量%)のアンモニウム塩水溶液(アンモニアによる中和度0.75)12.0gとを混合し、融点110℃、粒径(D50)0.3μmのポリアミド樹脂組成物の水性分散液2を得た。
融点170℃のナイロン6/ナイロン66/ナイロン11(重量比;45/35/20)三元共重合体ポリアミド樹脂を準備した。
これを水性分散液1と同様にして190℃まで昇温させて30分間反応を行った。最後に、得られたポリアミド樹脂水性分散液75gと別途、25重量%に調整したエチレンーアクリル酸共重合体(ダウケミカル社製、登録商標PRIMACOR 5980I、アクリル酸変性量 20重量%)のアンモニウム塩水溶液(アンモニアによる中和度0.75)12.0gとを混合し、融点170℃、粒径(D50)0.4μmのポリアミド樹脂組成物の水性分散液3を得た。
融点235℃のナイロン6/ナイロン66(重量比;75/25)二元共重合体ポリアミド樹脂を準備した。
これを水性分散液1と同様にして260℃まで昇温させて30分間反応を行った。最後に、得られたポリアミド樹脂水性分散液75gと別途、25重量%に調整したエチレンーアクリル酸共重合体(ダウケミカル社製、登録商標PRIMACOR 5980I、アクリル酸変性量 20重量%)のアンモニウム塩水溶液(アンモニアによる中和度0.75)12.0gとを混合し、融点235℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物の水性分散液4を得た。
(サイジング液(1)の調整)
サイジング液中の樹脂成分として、粒径(D50)0.35μmの三元共重合ポリアミドを含有する水性分散液1を希釈し、最終的に水1000重量部に対して樹脂成分が18重量部(内エチレン−アクリル酸共重合体が1.6重量部)となるようにして攪拌し、サイジング液用のエマルジョン溶液を調製した。
得られたエマルジョン溶液に、ノニオン系界面活性剤を樹脂固形分を100としたときに5重量部となるように添加後、攪拌し、融点130℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(1)とした。
得られたサイジング液(1)を、サイジング浴内で攪拌しながら、未サイジングの炭素繊維ストランド(東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、繊度1.6g/m、引張強度4000MPa(408kgf/mm2)、引張弾性率238GPa(24.3ton/mm2))を連続的に浸漬させ、フィラメント間にサイジング液を含浸させた。
これを乾燥および熱処理として、設定温度300℃の乾燥炉に約120秒間通し、幅約11mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中の全サイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.65重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、145gであった。
また、熱処理温度300℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに10Pa・s以下と測定限界以下であった。
次に、得られた炭素繊維束とナイロン6樹脂を用いて、ランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。該炭素繊維束を20mmにカットしたもの、およびPA6樹脂パウダー(ナイロン6樹脂パウダー、ユニチカ株式会社製「A1030FP」、融点230℃)を、炭素繊維の供給量を450g/min、PA6樹脂パウダーの供給量を480g/minにセットしてテーパー管内に導入し、PA6樹脂パウダーとともにテーパー管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。散布された炭素繊維およびPA6樹脂パウダーを、テーブル下部よりブロワにて吸引し、定着させて、厚み5mm程度の未成形段階の良好な炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み1.97mm、繊維体積含有率(Vf)41Vol%の炭素繊維ランダムマットからなる複合材料(炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が480MPa、引張弾性率が32.3GPaであり、良好な引張強度を有していた。
表1に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を記した。
(サイジング液(2)の調整)
実施例1の水性分散液1に代えて、粒径(D50)0.30μmの三元共重合ポリアミドを含有する水性分散液2を用い、最終的に水1000重量部に対して樹脂成分が13重量部(内エチレン−アクリル酸共重合体が1.2重量部)となるようにして攪拌し、サイジング液用のエマルジョン溶液を調製した。
得られたエマルジョン溶液に、界面活性剤としてニューコールN3508(日本乳化剤株式会社製)を樹脂固形分を100としたときに5重量部となるように添加後、攪拌し、融点110℃、粒径(D50)0.3μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(2)とした。
得られたサイジング液(2)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度250℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.45重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、130gであった。また、熱処理温度250℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに10Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み1.96mm、繊維体積含有率(Vf)40Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が450MPa、引張弾性率が32.6GPaであり、良好な引張強度を有していた。
表1に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
(サイジング液(3)の調整)
実施例1の水性分散液1を用い、ただし濃度が実施例2と同様に最終的に水1000重量部に対して樹脂成分が13重量部(内エチレン−アクリル酸共重合体が1.2重量部)となるようにして攪拌し、界面活性剤を加えて、融点130℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(3)とした。
得られたサイジング液(3)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度250℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約11mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.45重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、145gであった。また、熱処理温度250℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに20Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み1.96mm、繊維体積含有率(Vf)40Vol%の炭素繊維ランダムマットからなる複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が460MPa、引張弾性率が32.6GPaであり、良好な引張強度を有していた。
表1に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
(サイジング液)
実施例3で用いた融点130℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(3)を使用した。
サイジング液(3)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度210℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.45重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、143gであった。また、熱処理温度210℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに30Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み1.98mm、繊維体積含有率(Vf)41Vol%の炭素繊維ランダムマットからなる複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が460MPa、引張弾性率が32.0GPaであり、良好な引張強度を有していた。
表1に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
(サイジング液)
実施例2で用いた融点110℃、粒径(D50)0.3μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(2)を使用した。
得られたサイジング液(2)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度190℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.65重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、175gであった。また、熱処理温度190℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに30Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み1.98mm、繊維体積含有率(Vf)40Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が480MPa、引張弾性率が31.8GPaであり、良好な引張強度を有していた。
表1に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
(サイジング液(4)の調整)
実施例1の水性分散液1に代えて、粒径(D50)0.40μmの三元共重合ポリアミドを含有する水性分散液3を用い、最終的に水1000重量部に対して樹脂成分が27重量部(内エチレン−アクリル酸共重合体が2.4重量部)となるようにして攪拌し、サイジング液用のエマルジョン溶液を調製した。
得られたエマルジョン溶液に、界面活性剤としてニューコールN3508(日本乳化剤株式会社製)を樹脂固形分を100としたときに5重量部となるように添加後、攪拌し、融点170℃、粒径(D50)0.4μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(4)とした。
得られたサイジング液(4)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度210℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、1.0重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、72gであった。また、熱処理温度210℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに160Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み2.00mm、繊維体積含有率(Vf)40Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が390MPa、引張弾性率が30.0GPaであり、実施例と比べ引張強度等の物性の劣るものであった。
表2に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を記した。
(サイジング液(5)の調整)
実施例1の水性分散液1に代えて、粒径(D50)0.35μmの二元共重合ポリアミドを含有する水性分散液4を用い、最終的に水1000重量部に対して樹脂成分が27重量部(内エチレン−アクリル酸共重合体が2.4重量部)となるようにして攪拌し、サイジング液用のエマルジョン溶液を調製した。
得られたエマルジョン溶液に、界面活性剤としてニューコールN3508(日本乳化剤株式会社製)を樹脂固形分を100としたときに5重量部となるように添加後、攪拌し、融点235℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(5)とした。
得られたサイジング液(5)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度250℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、1.0重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、20gであり、収束性が低く、サイジング剤主成分がほとんど溶け拡がっていなかった。また、熱処理温度250℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに280Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。この時点で、この繊維はほとんどが単繊維に分かれており、非常に体積が大きい状態であった。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み2.08mm、繊維体積含有率(Vf)38Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が350MPa、引張弾性率が29.5GPaであり、実施例と比べ引張強度等の物性が、顕著に劣るものであった。
表2に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
(サイジング液)
実施例1で用いた融点130℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(1)を使用した。
サイジング液(1)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度185℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.45重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、94gであった。また、熱処理温度185℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに150Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み1.95mm、繊維体積含有率(Vf)41Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が390MPa、引張弾性率が30.6GPaであり、実施例と比べ引張強度等の物性が低いものであった。
表2に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
(サイジング液)
実施例1で用いた融点130℃、粒径(D50)0.35μmのポリアミド樹脂組成物を含有するサイジング液(1)を使用した。
サイジング液(1)のエマルジョン溶液を用いて炭素繊維ストランドを実施例1と同様にして連続的に浸漬させ、フィラメント間に炭素繊維用サイジング液のエマルジョン溶液を含浸させた。
これを設定温度170℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥および熱処理とし、幅約10mmの炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束中のサイジング液の固形分付着量は、炭素繊維100重量部に対して、0.45重量部であった。また、この炭素繊維束の風合い値を測定したところ、69gであった。また、熱処理温度170℃でのキャピログラフを用いて測定したサイジング液中樹脂成分の粘度は、せん断速度1216s−1のときに170Pa・sであった。
次に、得られた炭素繊維束を用いて、実施例1と同様にしてランダムマット複合材料(等方性炭素繊維複合材料)を作製した。
実施例1と同様にして得た炭素繊維ランダムマットを、260℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、目付け2800g/m2、厚み2.00mm、繊維体積含有率(Vf)41Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料(ランダムマット炭素繊維複合材料)を得た。このランダムマット複合材料の物性は、引張強度が380MPa、引張弾性率が29.6GPaであり、実施例と比べ引張強度等の物性が低いものであった。
表2に、サイジング液、炭素繊維束、複合材料の物性を併せて記した。
Claims (10)
- 炭素繊維束にサイジング液を付与し加熱処理する炭素繊維束の製造方法であって、サイジング液が樹脂成分を含有し、当該樹脂成分が25℃では固体であって、加熱処理を行う温度においては、せん断速度1216s−1の条件下における粘度が150Pa・s未満であることを特徴とする炭素繊維束の製造方法。
- 熱処理後の炭素繊維束の風合い値が70g以上200g以下である請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
- サイジング液中の樹脂成分が熱可塑性樹脂である請求項1または2に記載の炭素繊維束の製造方法。
- サイジング液中の樹脂成分がポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維束の製造方法。
- 炭素繊維束に対するサイジング液の付着量が乾燥重量で0.1重量%を超えるものである請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素繊維束の製造方法。
- 加熱処理温度が120℃以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の炭素繊維束の製造方法。
- 加熱処理温度が、サイジング液中の樹脂成分の融点よりも60度以上高いものである請求項1〜6のいずれか1項記載の炭素繊維束の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法により得られる炭素繊維束と樹脂を加熱して加圧成形する炭素繊維複合材料の製造方法。
- 炭素繊維束が等方性の不連続繊維である請求項8記載の炭素繊維複合材料の製造方法。
- 炭素繊維束が、拡幅し不連続繊維にカットした後にマット形状としたものである請求項9記載の炭素繊維複合材料の製造方法。
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