JP7267792B2 - サイジング剤付着炭素繊維束 - Google Patents
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Description
炭素繊維の前駆体繊維としては、アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含有し、その他の単量体を10質量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸して製造するアクリル系前駆体繊維が好ましい。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。前駆体繊維のフィラメント数は、製造効率の面では1000本以上が好ましく、12000本以上がより好ましく、24000本以上がさらに好ましい。
得られた前駆体繊維を、加熱空気中200~300℃で10~100分間加熱し耐炎化処理する。耐炎化処理では、前駆体繊維を延伸倍率0.90~1.20の範囲で繊維を延伸処理することが好ましい。
耐炎化処理した前駆体繊維を、300~2000℃で炭素化することで炭素繊維が得られる。より引張強度の高い緻密な内部構造をもつ炭素繊維束を得るためには、300℃~1000℃で低温炭素化した後、1000~2000℃で高温炭素化する二段階の炭素化工程を経て、炭素化処理を行うことが好ましい。より高い弾性率が求められる場合は、さらに2000~3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
上記で得られた炭素繊維は、サイジング剤及びマトリクスとなる樹脂との濡れ性を改善するために、表面処理を行うことが好ましい。表面処理は、従来公知のいずれの方法でも行うことができるが、装置が簡便であり、工程での管理が容易であることから、工業的には電解酸化を用いることが一般的である。
このようにして得られた炭素繊維に、上記のサイジング剤をサイジング処理する。サイジング液におけるサイジング剤の濃度は、0.1~25質量%が好ましい。炭素繊維へのサイジング剤溶液の付与方法は、特に限定されないが、ローラーサイジング法、ローラー浸漬法、スプレー法およびその他公知の方法を用いることができる。中でも、一束あたりの単繊維数が多い炭素繊維束についても、サイジング剤溶液を均一に付与しやすい、ローラー浸漬法が好ましく用いられる。サイジング剤溶液の液温は、溶媒蒸発によるサイジング剤濃度変動を抑えるため10~50℃の範囲が好ましい。また、サイジング剤溶液を付与した後に、余剰のサイジング剤を絞り取る絞り量の調整することでも、サイジング剤の付着量を調整できる。
サイジング処理後の炭素繊維は、サイジング処理時の分散媒であった水等を蒸散させるため乾燥処理が施され、サイジング剤付着炭素繊維が得られる。乾燥にはエアドライヤーを用いることが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、汎用的な水系エマルジョンの場合は通常100~180℃に設定される。また、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を経てもよい。
(1)水溶率
23℃の水90gにサンプル10gを加え30分撹拌したのちに、分液し、分液により得られたエポキシ成分の質量(水に溶けなかったエポキシ成分の質量)から以下の式で計算をした。なお、撹拌後、白濁し分液困難なものは不溶とした(W2はW1と等しいとみなした)。
水溶率(%)=(W1-W2)/W1×100
W1:仕込みエポキシ樹脂の質量(g)
W2:分液後のエポキシ樹脂の質量(g)
サイジング剤付着炭素繊維束を、200gの張力をかけながら、5本のピンガイドの間を50フィート/分の速度で2分間走行させた後、125gの重りを乗せたウレタンシートの間を通し、ウレタンフォームに溜まった炭素繊維量を測定し、次式にて算出した。
MPF値(μg/ft)=補足毛羽量(μg)/評価繊維束長(ft)
実施例および比較例で得られた繊維束より単糸を取り出し、試料ホルダーにセッティングする。マトリクス樹脂として、エポキシ樹脂として三菱ケミカル株式会社製jER828(製品名) 100質量部と、硬化剤としてハンツマン社製アミン系硬化剤 ジェファーミンT-403(製品名) 45質量部とを混合し、炭素繊維単糸上に塗布しドロップを形成させ、80℃90分硬化し、測定用の試料を得た。
測定は東栄産業株式会社製複合材料界面特性評価装置MODEL HM410を使用し、0.12mm/分の速度で走行させ単糸からドロップを引き抜く際の最大引抜き荷重Fを測定した。
次式により界面せん断強度τを算出し、単糸とマトリクス樹脂との接着性を評価した。
界面せん断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引抜き荷重 d:単糸直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)
1kgfの張力をかけた繊維を直径60mmの擦過体に対して、抱き角度180°で接触させ、10cm/分で走行させた際の擦過体前後の張力から以下の式にて算出した。
摩擦係数=1/3.14×Ln(T1/T2)
T1:被擦過体通過前の張力(gf)
T2:被擦過体通過後の張力(gf)
<脂肪族エポキシ樹脂>
(側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物)
・EX-931:デナコール EX-931(製品名)(ナガセケムテックス(株)製:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、炭化水素基 メチル基、エポキシ基数 2、エポキシ等量471、水溶率 不溶)
(側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物以外のエポキシ化合物)
・EX-321:デナコール EX-321(製品名)(ナガセケムテックス(株)製:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エポキシ基数 3、エポキシ等量140、水溶率 27質量%)
・EX-622:デナコール EX-622(製品名)(ナガセケムテックス(株)製:ソルビトールポリグリシジルエーテル、エポキシ基数 4、水溶率 不溶)
・EX-821:デナコール EX-821(製品名)(ナガセケムテックス(株)製:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ基数 2、水溶率 100質量%)
・U-103:エパン U-103(製品名)(第一工業製薬(株)製:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)
・EA-167:ノイゲン EA-167(製品名)(第一工業製薬(株)製:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル)
<熱可塑性樹脂>
・PVA:ポリビニルアルコール 重合度約500 (富士フイルム和光純薬株式会社製)
<サイジング剤水溶液の作製>
EX-931を45質量部、EX-321を35質量部、乳化剤としてU-103を25質量部からなる水分散エマルジョンを調整しサイジング液とした。
ポリアクリロニトリル繊維を、空気中250℃で耐炎化処理を行った後、窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1300℃で高温炭素化させて製造した炭素繊維を、10質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用い電解酸化により表面処理を行い、未サイジング処理炭素繊維束(引張強度:5100MPa、引張弾性率:245GPa、単繊維径:7.0μm、フィラメント数:24000本)を得た。
<サイジング剤水溶液の作製>
EX-931を34質量部、EX-321を23質量部、乳化剤としてU-103を18質量部、熱可塑性樹脂としてPVAを25質量部からなる水分散エマルジョンを調整しサイジング液とした。
サイジング液を変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤付着繊維を得た。MPFの測定結果を表1に示す。
<サイジング剤水溶液の作製>
EX-931を27質量部、EX-321を18質量部、乳化剤としてU-103を15質量部、熱可塑性樹脂としてPVAを40質量部からなる水分散エマルジョンを調整しサイジング液とした。
サイジング液を変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤付着繊維を得た。MPFの測定結果を表1に示す。
<サイジング剤水溶液の作製>
EX-622を75質量部、乳化剤としてEA-167を25質量部からなる水分散エマルジョンを調整しサイジング液とした。
サイジング液を変更した以外は、実施例1と同様にしてサイジング剤付着繊維を得た。MPFの測定結果を表1に示す。
<サイジング剤水溶液の作製>
乳化剤を用いず、EX-821 100質量部を水に溶解させサイジング液とした。サイジング液を変更した以外は、比較例1と同様にしてサイジング剤付着繊維を得た。MPFの測定結果を表1に示す。
Claims (9)
- 炭素繊維表面に少なくともエポキシ化合物を含むサイジング剤が付着したサイジング剤付着炭素繊維束であって、
前記エポキシ化合物は脂肪族エポキシ化合物をエポキシ化合物の総量の60質量%以上含み、かつ、
脂肪族エポキシ化合物として、少なくとも、側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物を含み、
さらに、側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物以外の脂肪族エポキシ化合物を含み、かつ、
側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物以外の脂肪族エポキシ化合物が、構造中にエポキシ基を3つ以上有する脂肪族エポキシ化合物であることを特徴とするサイジング剤付着炭素繊維束。 - 前記側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物が、構造中にプロピレンオキサイド骨格を有するエポキシ化合物である請求項1に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
- 前記側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物が、水溶率が30%以下の脂肪族エポキシ化合物である請求項1または2に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
水溶率の測定方法は下記のとおりである。
23℃の水90gにサンプル10gを加え30分撹拌したのちに、分液し、分液により得られたエポキシ成分の質量(水に溶けなかったエポキシ成分の質量)から以下の式で計算をした。なお、撹拌後、白濁し分液困難なものは不溶とした(W2はW1と等しいとみなした)。
水溶率(%)=(W1-W2)/W1×100
W1:仕込みエポキシ樹脂の質量(g)
W2:分液後のエポキシ樹脂の質量(g) - 前記サイジング剤が、側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物を、サイジング剤に用いられる脂肪族エポキシ化合物の総量に対して30質量%以上含むサイジング剤である請求項1~3のいずれか1項に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
- 側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物以外の脂肪族エポキシ化合物のエポキシ等量が、側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物のエポキシ等量よりも低い脂肪族エポキシ化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
- 側鎖に炭化水素基を1つ以上有するポリアルキレングリコール骨格を有する脂肪族エポキシ化合物以外の脂肪族エポキシ化合物が、水溶率が30%以下のエポキシ化合物である請求項1~5のいずれか1項に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
水溶率の測定方法は下記のとおりである。
23℃の水90gにサンプル10gを加え30分撹拌したのちに、分液し、分液により得られたエポキシ成分の質量(水に溶けなかったエポキシ成分の質量)から以下の式で計算をした。なお、撹拌後、白濁し分液困難なものは不溶とした(W2はW1と等しいとみなした)。
水溶率(%)=(W1-W2)/W1×100
W1:仕込みエポキシ樹脂の質量(g)
W2:分液後のエポキシ樹脂の質量(g) - 前記サイジング剤が、さらに、乳化剤として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含むサイジング剤である請求項1~6のいずれか1項に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
- 前記サイジング剤が、乳化剤を、脂肪族エポキシ化合物と乳化剤の総量に対して1質量%以上50質量%以下で含むサイジング剤である請求項1~7のいずれか1項に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
- 前記サイジング剤が、さらに、熱可塑性樹脂を含むサイジング剤である請求項1~8のいずれか1項に記載のサイジング剤付着炭素繊維束。
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