JP4887209B2 - 炭素繊維用サイズ剤、その水分散液、炭素繊維、及び炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

炭素繊維用サイズ剤、その水分散液、炭素繊維、及び炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維用サイズ剤、その水分散液、炭素繊維、及び炭素繊維強化複合材料に関する。
エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等のマトリックス樹脂に炭素繊維を強化材として複合した炭素繊維強化複合材料は、航空宇宙用途や産業用途、或いは釣り竿、ゴルフクラブシャフト等の汎用スポーツ用途まで幅広く用いられている。かかる炭素繊維強化複合材料の製造において、炭素繊維をフィラメント又はトウの状態のまま引き揃え、ストランド状、シート状、織物又は編物状にした後、マトリックス樹脂と複合(含浸)して得られるプリプレグとして使用されることがある。
炭素繊維は伸度が小さくかつ脆い性質であるために機械的摩擦等によって毛羽が発生し易く、取り扱い性がすこぶる悪い。又マトリックス樹脂に対する濡れ性にも乏しいために、強化複合材料の強化材として使用したときに、該炭素繊維の強化材としての優れた性質を十分に発揮させることができない。
一方、プリプレグを釣り竿やゴルフシャフト等といった管状の炭素繊維強化複合材料を成型する場合、一般にマンドレルと呼ばれる円錐状の金属製芯材に対して、予め所望の寸法に裁断してあるプリプレグを巻き付けた後、その上からプラスチック製フィルムを、該プラスチック製フィルムが少しずつオーバーラップするよう、張力をかけながら螺旋状に巻き付けた後、加熱硬化して管状の成形体を得る。
この管状の炭素繊維強化複合材料の成型において、加熱条件等により硬化時にマンドレルの大径側から小径側に向かってプリプレグが移動する現象(以下、炉落ちと呼ぶ)が発生する場合がある。この炉落ちは、プラスチック製フィルムによりプリプレグが締め付けられている状況下で、加熱によりマトリックス樹脂が低粘度化して、樹脂の流動性が増加すると、マンドレルがテーパーを有しているため、大径側から小径側に分力が生じ、この方向にプリプレグが移動するために生じる現象である。炉落ちが発生すると、強化繊維は部分的に蛇行するため、外観品位の低下や著しく強度が低下する場合や小径部における反りの発生原因ともなる。
我々の検討の結果、この「炉落ち」の現象は、プリプレグの樹脂含有率が高い場合、もしくは急激に昇温して加熱する条件で硬化しようとした場合に発生する頻度が高いことが確認されている。
さらにはプリプレグを構成する炭素繊維の線径が小さくなればなる程、マトリックス樹脂の炭素繊維束内部への浸透(含浸性)が低下する傾向にあり、このような線形の小さな炭素繊維に対しては、従来よりも更に優れた含浸性を炭素繊維に付与できるサイズ剤が必要となる。
以上のような欠点を改良するために、炭素繊維用サイズ剤には、炭素繊維の取り扱い性の向上、炭素繊維の成型加工適正向上、得られる成型品の機械特性向上、そしてマトリックス樹脂との濡れ性、すなわち含浸性の向上といった機能が求められ、従来から、各種の化合物によるサイズ剤の使用が試みられている。
例えば、特許文献1には、ポリグリシジルエーテル類からなるサイズ剤の溶剤溶液を炭素繊維に付与することが説明されている。
しかし、ポリグリシジルエーテル類からなるサイズ剤は、これの溶剤溶液をサイジング液として使用するものであるために、サイジング工程での工業的な取り扱い性や安全性などが、水系のサイズ剤に比較して悪いという欠点を有しており、又ビスフェノールA型グリシジルエーテルを利用したサイズ剤は、特に乳化剤を全く含まない状態ではマトリックス樹脂との間の濡れ性が悪く、良好な炭素繊維強化複合材料が得られない。
特許文献2〜4等には、ビスフェノールAにアルキレンオキシド基の数十分子を付加させてなる化合物からなるサイズ剤が提案されている。特許文献2及び3に記載されているサイズ剤は、金属との間の摩擦係数が小さく、糸切れや毛羽立ちの度合いが低減した炭素繊維にすることが可能であり、優れた工程通過性を有する炭素繊維にすることができる。又、その付着量や、サイズ剤として使用する化合物の分子量の適正化を図ることにより、優れた界面接着性を有するものにすることが可能である。更に、特許文献4に記載されているサイズ剤は、プリホームの製造工程での炭素繊維の取り扱い性を向上させると共に、その後のサイズ剤の除去が容易である等の特性を備えている。
しかしながら、上記の特許文献2及び3に記載されているサイズ剤、特にエチレンオキサイドを付加させた反応生成物からなるサイズ剤は、分子中の(CH2−CH2−O)基等の親水基の存在によって空気中の水分を吸着し易く、粘着性が増加して、いわゆる「べとつき」を生じる。この粘着性の増加は、サイジング処理された炭素繊維の各加工工程中においてローラー等との抵抗を増加させることになり、又毛羽等が付着して堆積する原因にもなり、更には炭素繊維束の開繊性を低下させる要因ともなる。上記したように毛羽等の発生原因や、炭素繊維束の開繊性を低下させる要因となる。
従って、このサイズ剤を使用する場合には、炭素繊維束に良好な工程通過性と開繊性とを備えさせるためにサイズ剤の付着量を最小限に抑えなければならなく、このことがサイズ剤の付着量斑による物性斑に繋がるために、その付着量の厳密な制御を行なわなければならないという煩雑性を伴う。又、樹脂の含浸時の作業条件に制約を有するために工程の作業可能な許容範囲が狭められ、該サイズ剤による含浸方法が特定の方法に制限されるという欠点をも有する。
更に上記の特許文献4に記載されているサイズ剤は、水洗いによる除去が可能であることが最も重要な性能であるために、サイズ剤をなす化合物が低分子量である方がよく、従って低エチレンオキサイド付加物が選択されるが、これらの化合物は室温で液状であってその粘度が小さいために、炭素繊維に十分な収束性を付与することができない。
又、特許文献5には、ポリエステル樹脂とポリエーテル樹脂を必須成分とするサイズ剤で炭素繊維をサイジング処理することにより、プリプレグ製造工程での擦過による毛羽の発生を抑制し、取り扱い性の向上とともに、樹脂含浸の際における開繊性を向上させることで、炭素繊維へのマトリックス樹脂の含浸性を向上させる技術が説明されている。
しかし、この技術はプリプレグ製造工程における含浸性を向上させることはできても、炉落ち現象のような成型品の製造工程中に、プリプレグ表面に存在するマトリックス樹脂の炭素繊維束内部への浸透(含浸性)を向上させることはできない。
特開昭50−59589号公報 特開平1−272867号公報 特開平7−9444号公報 特開平6−212565号公報 特開平10−131052号公報
従って、本発明は上記の従来技術における問題点を解決するものであり、炭素繊維に対して良好なマトリックス樹脂含浸性を付与し、安定した工程通過性、及び物性改善効果を備えた炭素繊維になし得る炭素繊維用サイズ剤、その水分散液、炭素繊維、及び炭素繊維強化複合材料を提供するものである。
前記課題は、以下に記載する構成による本発明の炭素繊維用サイズ剤、その水分散液、炭素繊維、及び炭素繊維強化複合材料によって解決される。
本発明の炭素繊維用サイズ剤は、下記の、成分(A)20〜80質量%と成分(B)10〜50質量%と成分(C)10〜40質量%とからなる混合物を50質量%以上含有することを特徴とする炭素繊維用サイズ剤である。
成分(A):分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EAが21〜24mJ/m2である;
成分(B):分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EBが28〜34mJ/m2である;
成分(C):分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値ECが37〜42mJ/m2である。
本発明の水分散液は、炭素繊維サイジング処理用の水分散液であって、前記構成による炭素繊維用サイズ剤と界面活性剤と水とを含有し、該炭素繊維用サイズ剤が水中に分散していることを特徴とする。
本発明の炭素繊維は、前記炭素繊維用サイズ剤が表面に付着した炭素繊維であって、前記炭素繊維用サイズ剤の量が炭素繊維の0.1〜5.0質量%である炭素繊維である。
更に本発明の炭素繊維強化複合材料は、前記構成による炭素繊維を強化材として含む炭素繊維強化複合材料である。
本発明の炭素繊維用サイズ剤を炭素繊維に付与することにより、良好なマトリックス樹脂含浸性、安定した工程通過性、及び物性改善効果を備えた炭素繊維と同時に、該炭素繊維を強化材とする炭素繊維強化複合材料を提供する。
本発明の炭素繊維用サイズ剤は、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EAが21〜24mJ/m2である成分(A)20〜80質量%と、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EBが28〜34mJ/m2である成分(B)10〜50質量%と、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値ECが37〜42mJ/m2である成分(C)10〜40質量%とからなる混合物を50質量%以上含有している。そして、本発明の炭素繊維用サイズ剤は、前記各組成成分を含有していることにより、優れたマトリックス樹脂含浸性を具備するものになる。
通常の炭素繊維の125℃における表面自由エネルギーは40〜50mJ/m2程度であり、かかる表面自由エネルギーを具備する炭素繊維の表面を濡らす液体としては、表面自由エネルギーの小さいものが有利である。
これに対して、マトリックス樹脂として一般的に用いられるエポキシ樹脂の125℃における表面自由エネルギーは、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が39mJ/m2程度、ビスフェノールF型やフェノールノボラック型のエポキシ樹脂が40mJ/m2程度、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂が36mJ/m2程度である。さらに、炭素繊維の表面に付着したサイズ剤は、マトリックス樹脂の含浸過程において、界面近傍のマトリックス樹脂中に溶解して拡散していくことが分かっている。
かかる状況下にあって、マトリックス樹脂との間の濡れ性に優れる炭素繊維用サイズ剤として、表面自由エネルギーの比較的小さい化合物からなる成分(A)と、通常のマトリックス樹脂と同等の表面自由エネルギーを有する化合物からなる成分(C)と、さらにそれらの中間程度の表面自由エネルギーを有する化合物からなる成分(B)を併用することによって、各成分による非常に効果的な機能を相乗させることができる。
つまり、上記のように表面自由エネルギーを有する成分(A)と、成分(B)と、成分(C)とを含有するサイズ剤を付着させてある炭素繊維に、マトリックス樹脂を含浸させると、炭素繊維の表面に付着させてあるサイズ剤が含浸マトリックス樹脂中に溶解する。そして、マトリックス樹脂に溶解したサイズ剤成分のうち、表面自由エネルギーが低い化合物からなる成分(A)が炭素繊維表面における拡張濡れを促進させ、その結果、マトリックス樹脂が炭素繊維の表面を迅速に濡らすと推測される。一方、通常のマトリックス樹脂と同等の表面自由エネルギーを有する化合物からなる成分(C)は、マトリックス含浸樹脂との相溶性に優れているために、炭素繊維の表面に付着しているサイズ剤が含浸マトリックス樹脂に溶解するのを助長させる機能を果たすと推測される。一方、表面自由エネルギーの値が、成分(A)と成分(C)の中間程度の表面自由エネルギーを有する化合物からなる成分(B)は、上記した成分(A)の機能、成分(C)の両方の機能を促進する役割を果たすと推測される。
ここで、前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物において、成分(A)は20〜80質量%、成分(B)は10〜50質量%、成分(C)は10〜40質量%で含有されていることが重要である。
前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物において、成分(A)の含有量が20質量%未満となると、含浸マトリックス樹脂の拡張濡れを促進させる機能が十分ではなくなり、又80質量%を超えると炭素繊維の表面に付着したサイズ剤の含浸マトリックス樹脂への溶解性が十分でなくなる。前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物における成分(A)の含有率は、20〜76質量%がより好ましい。
又、前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物において、成分(C)の含有量が10質量%未満となると、炭素繊維の表面に付着したサイズ剤の含浸マトリックス樹脂への溶解性が十分でなくなり、又40質量%を超えると含浸マトリックス樹脂の拡張濡れを促進させる機能が十分ではなくなる。前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物における成分(C)の含有率は、12〜30質量%がより好ましい。
又、前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物において、成分(B)の含有量が10質量%未満となる場合や50質量%を超える場合、成分(A)が含浸マトリックス樹脂の拡張濡れを促進させる機能や成分(C)が炭素繊維の表面に付着しているサイズ剤が含浸マトリックス樹脂に溶解するのを助長させる両方の機能を促進する役割を十分に果たすことができなくなる。前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物における成分(B)の含有率は、12〜50質量%がより好ましい。
又、前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物は、炭素繊維用サイズ剤全体の50質量%以上で含有されていることが重要である。前記成分(A)と成分(B)と成分(C)との合計量がサイズ剤を構成する全成分中の50質量%未満になると、十分な濡れ促進効果が得られなくなる。炭素繊維用サイズ剤における、前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物の含有率は、65質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。炭素繊維用サイズ剤における、前記成分(A)と成分(B)と成分(C)とからなる混合物の含有率は、100質量%でも構わないが、例えば90質量%以下とすることもできる。
前記成分(A)、成分(B)または成分(C)をなすエポキシ化合物が有するエポキシ基としては、例えばグリシジル基や、下記に示す構造の環式脂肪族エポキシ基などが挙げられる。
Figure 0004887209
成分(A)と成分(B)と成分(C)をなす化合物としては、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物の一部のエポキシ基に、他の官能基を導入した変性エポキシ化合物を使用することも可能である。例えば、メタクリル酸とのエステル化で変性したエポキシ化合物は、ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂との間の界面接着性をより向上させる作用を果たす。
更に、成分(A)としてのエポキシ化合物は、1種のみの単独であっても、又は複数種の混合物であってもよい。更に、成分(B)としてのエポキシ化合物は、1種のみの単独であっても、又は複数種の混合物であってもよい。更に、成分(C)としてのエポキシ化合物は、1種のみの単独であっても、又は複数種の混合物であってもよい。
分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EAが21〜24mJ/m2である成分(A)の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、エピクロンHP−7200シリーズ:大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、トリスヒドロキシンフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、エピコート1032H60、1032S50:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、DPPノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エピコート157S65、157S70:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等。
中でも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシンフェニルメタン型エポキシ樹脂、DPPノボラック型エポキシ樹脂は、その骨格中に芳香族基を含んでいることにより、得られる炭素繊維強化複合材料の耐熱性を悪化させることがなく、好適である。
成分(A)としては、前記のように分子中に1個のエポキシ基を有する化合物を使用することもできるが、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物からなる成分を使用すると、マトリックス樹脂との間の界面接着性がより向上するので、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物からなる成分を使用することがより好ましい。
一方、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EBが28〜34mJ/m2である成分(B)の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、エピコート828:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)の片末端をメタクリル酸エステル変性した化合物等、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂の片末端をエステル変性した化合物、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加ジグリシジルエーテルの片末端をエステル変性した化合物、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、エポライト4000:共栄社化学株式会社製商品名、YX8034:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加ジグリシジルエーテル(例えば、エポライト3002:共栄社化学株式会社製商品名、EP4000、EP4005:株式会社アデカ製商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の一部を変性した化合物(例えば、EXA−4850−150、EXA−4850−1000:大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の一部をウレタン変性した化合物(例えば、EPU−78−11:株式会社アデカ製商品名)等。
成分(B)としては、前記のように分子中に1個のエポキシ基を有する化合物を使用することもできるが、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物からなる成分を使用すると、成分(A)の場合と同様に、マトリックス樹脂との間の界面接着性がより向上するので、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物からなる成分を使用することがより好ましい。
一方、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値ECが37〜42mJ/m2である成分(C)の例としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、エピコート807:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等。
成分(C)としては、前記のように分子中に1個のエポキシ基を有する化合物を使用することもできるが、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物からなる成分を使用すると、成分(A)や成分(B)の場合と同様に、マトリックス樹脂との間の界面接着性がより向上するので、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物からなる成分を使用することがより好ましい。
本発明の炭素繊維用サイズ剤による炭素繊維のサイジング処理は、その水分散液により行なうことが好ましい。一般に、炭素繊維用サイズ剤を炭素繊維に付与する際には、水、又はアセトンなどの有機溶剤に、炭素繊維用サイズ剤を分散又は溶解させたサイズ剤液として用いられるが、サイズ剤を水に分散させた水分散液にして用いる方が、有機溶剤に溶解又は分散させて用いる場合に比較して、工業的にも、又安全性の面においても、より優れたものになる。
本発明の炭素繊維サイジング用の水分散液は、炭素繊維のサイジング処理を行なうためのものであって、前記した本発明の炭素繊維用サイズ剤と界面活性剤と水とを含有してなる。炭素繊維サイジング用の水分散液は、炭素繊維用サイズ剤と界面活性剤を室温下もしくは加温下で混合して均一物とし、これを混合しながら、それに水を徐々に加えて転相乳化させることにより調製できる。
本発明では、炭素繊維用サイズ剤を水に分散させるために界面活性剤を用いるわけであるが、この界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤が好適に用いられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば脂肪族ノニオン、フェノール系ノニオンなどの界面活性剤を利用することができる。脂肪族ノニオン系界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。又、フェノール系ノニオン界面活性剤としては、アルキルフェノール系ノニオン、多環フェノール系ノニオンなどが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としてのエチレンオキサイド付加物としては、ポリエチレンオキサイド鎖中の一部にプロピレンオキサイドユニットをランダムあるいはブロック状に具備させたタイプのものが好適である。脂肪酸エチレンオキサイド付加物や多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、モノエステルタイプ、ジエステルタイプ、トリエステルタイプ、テトラエステルタイプなどのノニオン系界面活性剤を使用し得る。
エポキシ樹脂を水に分散させる場合において、従来からノニオン系界面活性剤が一般的に用いられているが、このノニオン系界面活性剤は一般に分子中に比較的長いエチレンオキサイド鎖を有しているため、乳化能力に優れている一方、長いエチレンオキサイド鎖は、炭素繊維強化複合材料の耐熱性を低下させる主原因となっている。一方、エチレンオキサイド鎖の短いノニオン系界面活性剤もあるが、そのようなエチレンオキサイド鎖の短いノニオン系界面活性剤は、耐熱性を低下させる作用は小さいものの、十分な乳化能力を具備していない。
これに対して、イオン性を有するアニオン系界面活性剤は、乳化作用をエチレンオキサイド鎖に頼るものではなく、しかも十分な乳化能を具備している。従って、得られる炭素繊維強化複合材料に耐熱性が必要な場合においては、該耐熱性を低下させる要因を含むことのないように、アニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。
炭素繊維強化複合材料の耐熱性を低下させることのないアニオン系界面活性剤としては、アンモニウムイオンを対イオンとし、かつアルキレンオキサイドの付加量が10モル以下であるフェノール系基を疎水基とする化合物であることが好ましい。かかるアニオン系界面活性剤の添加により、マトリックス樹脂との間の界面接着性に優れ、かつ耐熱樹脂をマトリックス樹脂として使用したときの炭素繊維強化複合材料の耐熱性を低下させることのないものになし得る。
又、前記アニオン系界面活性剤は、アンモニウムイオンを対イオンとするものであることが好ましい。つまり、対イオンがアルカリ金属やアルカリ土類金属イオンからなるアニオン系界面活性剤は、これらのアルカリ金属やアルカリ土類金属イオンが、得られる炭素繊維強化複合材料に混入してその熱安定性を低下させる弊害を生じる場合がある。
さらに、前記アニオン系界面活性剤の疎水基はフェノール系基であることが好ましい。すなわち、骨格中に芳香族環を有するエポキシ樹脂をマトリックス樹脂として使用することによって、耐熱性を備えた炭素繊維強化複合材料にする場合が多く、疎水基が脂肪族系基からなるアニオン系界面活性剤に比較して疎水基がフェノール系基からなるアニオン系界面活性剤の方が、この骨格中に芳香族環を有するエポキシ樹脂との相溶性が良好であり、これによって優れた機械特性や耐熱性を具備する炭素繊維強化複合材料にすることができる。
前記アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などを用いることができる。中でも、硫酸エステル塩、スルホン酸塩等によるアニオン系界面活性剤は、エポキシ樹脂の乳化能力に優れており、より好適である。
アニオン系界面活性剤としての前記硫酸エステル塩は、例えばアルキルベンゼンポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩や多環フェニルエーテルポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩などであり、更に、アルキルベンゼンポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩や多環フェニルエーテルポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩におけるポリエチレンオキサイド鎖中の一部にプロピレンオキサイドユニットをランダム又はブロック状に具備させたもの等を用いることもできる。アニオン系界面活性剤としての前記スルホン酸塩は、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、多環フェニルエーテルスルホン酸塩などである。
本発明の炭素繊維サイジング用の水分散液において、界面活性剤の含有量は、水分散液の安定性を悪化させたり、サイズ剤のサイジング効果を低下させたりしない限りは、特に限定されるものではないが、目安としては、界面活性剤の含有量は、サイズ剤の全成分(固形成分)中の8〜30質量%にすることが好ましく、10〜25質量%にするのがより好ましい。サイズ剤の全成分(固形成分)中の8質量%未満になると、これを使用したサイジング用の水分散液の安定性が悪くなる場合があり、又30質量%を超えるようになると、サイズ剤のサイジング効果が低下する場合がある。
本発明の炭素繊維サイジング剤、界面活性剤及び水で構成される本発明の水分散液の固形分濃度(水分散液中の水以外の成分の濃度、以下「濃度」)は、水が連続相として存在する濃度範囲であれば問題なく、通常10〜50質量%程度の濃度で調整する。サイジング剤の水分散液の調製段階で濃度を10質量%未満としても問題はないが、水分散液中の水の占める割合が大きくなり、水分散液の調製から使用(炭素繊維のサイジング処理)までの間の運搬・保管などの面で不経済な面があるため、使用(炭素繊維のサイジング処理)するに際して、所望の付着量となるように、これを0.1〜10質量%程度の低濃度水性液に希釈して、炭素繊維に付着させる方法が一般的である。
本発明の炭素繊維サイジング用の水分散液において、前記した本発明の炭素繊維用サイズ剤、界面活性剤及び水以外に、他の成分を含んでいてもよい。本発明の炭素繊維サイジング用の水分散液に含まれる他の成分は、上記した本発明の炭素繊維用サイズ剤によって奏される機能が損なわれることのない範囲内で配合されるものであり、例えばエステル化合物、ウレタン化合物、ポリアミド化合物、ポリイミド化合物などが挙げられる。
本発明の炭素繊維は、サイジング処理により、炭素繊維の表面に、前記した本発明の炭素繊維用サイズ剤が付着しているものである。サイジング処理によって炭素繊維の収束性や耐擦過性が優れたものになると共に、マトリックス樹脂に対する濡れ性やマトリックス樹脂との間の界面接着力を十分に向上させて、得られる炭素繊維強化複合材料に良好な力学的特性が備えられるようにするために、炭素繊維の質量に対して0.1〜5.0質量%のサイズ剤を付着させてあることが好ましく、0.2〜3.0質量%のサイズ剤を付着させてあることがより好ましい。
サイジング処理に付する炭素繊維は、ピッチ系、レーヨン系あるいはポリアクリロニトリル系などのいずれの原料物質から得られたものであってもよく、高強度タイプ(低弾性率炭素繊維)、中高弾性炭素繊維又は超高弾性炭素繊維のいずれでもよい。
本発明の炭素繊維用サイズ剤を炭素繊維の表面に付着させるサイジングは、該炭素繊維用サイズ剤、又は該炭素繊維用サイズ剤の分散液を、ローラー浸漬法、ローラー接触法等によって炭素繊維に付与し、これを乾燥することによって行なうことができる。なお、炭素繊維の表面へのサイズ剤の付着量の調節は、サイズ剤液の濃度調整や絞り量調整によって行なうことができる。又乾燥は、熱風、熱板、加熱ローラー、各種赤外線ヒーターなどを利用して行なうことができる。
本発明の炭素繊維は、炭素繊維の表面に、前記した本発明の炭素繊維用サイズ剤が付着していることによって、機械的摩擦などによる毛羽の発生等が少なくなり、又マトリックス樹脂に対する濡れ性や接着性に優れたものになる。
本発明の炭素繊維は、製織、切断等の工程通過性に優れており、例えば織布、一方向配列シート、不織布、マット等のシート状物に加工することが容易である。特に製織工程を経る場合には、通常は炭素繊維に擦過による毛羽立ちが発生し易いが、本発明の炭素繊維は、炭素繊維の表面に付着しているサイズ剤によって、毛羽立ちが効果的に抑えられたものになる。
本発明の炭素繊維を使用したシート状物は、例えば織布、一方向配列シート、不織布、マット等からなるものである。織布としてはその織り組織が特に限定されるものではなく、平織り、綾織り、朱子織り、或いはこれらの組織を変化させたものであってもよく、また、緯糸と経糸との両糸が共に、本発明の炭素繊維からなっていても、他の炭素繊維や炭素繊維以外の繊維との混織であってもよい。一方向配列シート、不織布、マットについても、本発明の炭素繊維のみからなっていても、他の炭素繊維や炭素繊維以外の繊維との混織であってもよい。なお、炭素繊維以外の繊維としては、硝子繊維、チラノ繊維、SiC繊維などの無機繊維や、アラミド、ポリエステル、PP、ナイロン、ポリイミド、ビニロンなどの有機繊維が好適である。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、本発明の炭素繊維を強化材として含む炭素繊維強化複合材料からなるものである。例えば、本発明の炭素繊維を使用したシート状物を強化材として含む炭素繊維強化複合材料からなるものでもよい。このような本発明の炭素繊維強化複合材料は、例えば、本発明の炭素繊維を使用したシート状物をマトリックス樹脂で含浸した一方向プリプレグ、クロスプリプレグ、トウプレグ、短繊維強化樹脂含浸シート、短繊維マット強化樹脂含浸シート等を硬化成形して得られる。
強化材に含浸させるためのマトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ラジカル重合系樹脂であるアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、さらにはフェノール樹脂等が好適である。
前記炭素繊維強化複合材料を得るための硬化成形に供されるマトリックス樹脂で含浸した強化材は、通常の方法、例えばホットメルト法、溶剤法、シラップ法、又はシートモールドコンパウンド(SMC)に用いられる増粘樹脂法などの方法によって得られる。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、強化材として使用されている前記した本発明の炭素繊維に対する、マトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのラジカル重合系樹脂、或いはフェノール樹脂などの含浸性に優れており、炭素繊維とマトリックス樹脂との間の界面接着力が強く、これによって良好な力学的特性を具備するものになる。
更に、本発明の炭素繊維強化複合材料は、該炭素繊維強化複合材料に使用してある炭素繊維が、前記の通り、マトリックス樹脂含浸性に優れており、しかも耐熱発現性をも具備するものであるために、例えば土建分野や航空宇宙分野での大型の成形体をなす炭素繊維強化複合材料として好適であり、RTM(レジントランスファーモールディング)、VARTM(バキュームアシステドレジントランスファーモールディング)或いはRI(レジンインフージョン)法による硬化成形への適応性が高く、優れた機械的物性を有する硬化成形体を高生産性の下に成形することが可能である。
以下、本発明の炭素繊維用サイズ剤、その水分散液、炭素繊維、該炭素繊維を使用したシート状物、及び炭素繊維強化複合材料のそれぞれの具体的な構成を、実施例に基づいて説明する。
〔エポキシ化合物の125℃における表面自由エネルギーの測定〕
自動表面張力計(商品名:CBVP−A3型、協和界面科学製)にH型恒温槽(協和界面科学製)を取り付けて、白金製プレートにて、ウイルヘルミー法によって125℃における表面自由エネルギーを3回測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
(実施例1)
〔炭素繊維用サイズ剤の水分散液の調製〕
炭素繊維用サイズ剤及びその水分散液は、表2に示した化合物を用いて、表3−1に記載した各成分を混合(質量部)した炭素繊維用サイズ剤にイオン交換水を加え、ホモミキサーを用いた転送乳化によって得た。また、水分散液における水以外の成分の濃度は40質量%となるように調整した。
〔サイズ剤の水分散液のサイズ剤濃度〕
アルミシャーレ(直径45mm、深さ10mm)に上記の方法で得られたサイズ剤の水分散液を秤量した。105℃で1時間乾燥後、サイズ剤の水分散液の乾燥前質量W1、サイズ剤の水分散液の乾燥後質量W2をそれぞれ測定し、下記計算式(1)によりサイズ剤濃度を測定した。
サイズ剤の水分散液のサイズ剤濃度(%)=W2/W1×100 …式(1)
〔炭素繊維のサイジング処理方法〕
サイズ剤を付与していない炭素繊維束パイロフィルMR60H(商品名、三菱レイヨン(株)製;フィラメント数24000本、繊維径5μm)を、サイズ剤の水分散液を満たしてあるフリーローラーを有する浸漬槽内に浸漬させた後、140℃の雰囲気下で10分間の乾燥処理を施してからボビンに巻き取った。このとき、浸漬槽内におけるサイズ剤の水分散液の濃度が2.0質量%程度となるように、あらかじめ40質量%で調整した水分散液を希釈して用いた。
〔炭素繊維へのサイズ剤の付着量〕
メチルエチルケトンによるソックスレー抽出法によりサイズ剤付与後の炭素繊維のサイズ剤付着量を測定した。抽出時間は1時間とした。
〔一方向炭素繊維プリプレグ製造方法〕
Bステージ化したエポキシ樹脂組成物(三菱レイヨン(株)製:#350;130℃硬化タイプ)からなるマトリックス樹脂をロールコーターで片側表面が離型処理されている離型紙に単位面積あたり31g/m2で均一に塗布した。その樹脂担持シートの樹脂側に、上記の方法で得られたサイズ剤を付与した炭素繊維を繊維目付が125g/m2になるように一方向に引き揃えて貼り付けた。さらにその炭素繊維側から上記と同様の単位面積あたり31g/m2で均一に樹脂を塗布した樹脂担持シートの樹脂側の面を炭素繊維織布側にして重ね合わせ、これらを100℃、線圧:2kg/cmで加圧加熱して含浸させた。その後、片面の離型紙を剥離し、その面に保護フィルムを貼り付けることにより、炭素繊維目付が125g/m2であり、樹脂含有率(以下、「RC」とする。)が33質量%の一方向炭素繊維プリプレグを作製した。
〔一方向炭素繊維プリプレグの外観と樹脂の吸い込み方〕
上記の方法で得られた一方向炭素繊維プリプレグの外観と、該プリプレグから保護フィルムを剥がしたときの一方向炭素繊維プリプレグの表面に存在する樹脂の吸い込み方(=樹脂含浸性のよしあし)を、以下の通りに評価した。
未含浸部に起因する色斑がなく、平滑性が良好であり、樹脂吸い込み方が良好である…「○」
未含浸部に起因する色斑がなく、平滑性が良好であるが、樹脂吸い込み方が緩慢である…「×」
表3−1で示した炭素繊維用サイズ剤を付与した炭素繊維を用いた場合、得られた一方向炭素繊維プリプレグは、未含浸部に起因する色斑がなく、平滑性が良好であり、樹脂吸い込み方が極めて良好であった。評価結果を表3−1に示す。
〔ゴルフシャフトの炉落ち評価〕
上記のようにして得た一方向プリプレグを、離型剤を塗布したマンドレル(テーパー率17.81/1000)に対して、斜交層(±45°)が2層、ストレート層(0°)が3層、となるように巻き付けた。更にその上からテンション4kgFで厚さ0.03mm、幅20mmのポリプロピレン製テープを2.0mmピッチでラッピングし、硬化炉にて大径側を上にして吊下げ、図1に示す条件で硬化させた。硬化後、マンドレルを脱芯して、上記ポリプロピレン製テープを取り外した。同様の方法で合計10本のシャフトを成型し、得られたシャフト成型品について、炉落ち及び繊維蛇行の程度によって以下のように評価した。
10本中、全て炉落ちがない(=繊維の蛇行がない)場合…「○」
10本中、1〜2本の炉落ちがあるが、極めて小さな繊維蛇行の場合…「△」
10本中、3本以上の炉落ちがあり、極めて大きな繊維蛇行の場合…「×」
表3−1で示した炭素繊維用サイズ剤を付与した炭素繊維からなる一方向炭素繊維プリプレグを用いて、上述した条件で成型、硬化したシャフト成型品には、いずれも炉落ちは観察されず、非常に良好な樹脂含浸性を示した。評価結果を表3−1に示す。
(実施例2〜22)
表3−1または表3−2に示したサイズ剤の組成とした以外は、実施例1と同様の方法でサイズ剤及びサイズ剤の水分散液、これを用いた炭素繊維のサイジング処理、得られた炭素繊維からなる一方向炭素繊維プリプレグ作製、そしてこれを用いた炉落ち評価用ゴルフシャフト作製を実施し、評価した。
得られた一方向炭素繊維プリプレグの外観と樹脂の吸い込み方はいずれも極めて良好であった。また、シャフト成型品には、いずれも炉落ちは観察されず、非常に良好な樹脂含浸性を示した。実施例2〜11の評価結果を表3−1に、実施例12〜22の評価結果を表3−2に示す。
(比較例1〜14)
表4−1または表4−2に示したサイズ剤の組成とした以外は、実施例1と同様の方法でサイズ剤及びサイズ剤の水分散液、これを用いた炭素繊維のサイジング処理、得られた炭素繊維からなる一方向炭素繊維プリプレグ作製、そしてこれを用いた炉落ち評価用ゴルフシャフト作製を実施し、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例1〜7で得られた一方向炭素繊維プリプレグは、未含浸部に起因する色斑がなく、平滑性が良好であったが、樹脂の吸い込み方は緩慢であり、また、シャフト成型品には、成型された10本のうち、殆どで炉落ちが観察され、樹脂含浸性は満足できるものではなかった。評価結果を表4−1に示す。
比較例8〜10で得られた一方向炭素繊維プリプレグは、未含浸部に起因する色斑がなく、平滑性が良好であり、樹脂の吸い込み方も良好であったにも関わらず、シャフト成型品には、成型された10本の殆どで炉落ちが観察され、樹脂含浸性は満足できるものではなかった。評価結果を表4−2に示す。
比較例11〜14で得られた一方向炭素繊維プリプレグは、未含浸部に起因する色斑がなく、平滑性が良好であり、樹脂の吸い込み方も良好であったが、シャフト成型品には、成型された10本のうち、数本で小さな繊維蛇行が確認され、樹脂含浸性が若干不足しているという結果となった。評価結果を表4−2に示す。
Figure 0004887209
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以上説明したように、本発明の炭素繊維用サイズ剤は、このサイズ剤によってサイジング処理された炭素繊維を強化材とする炭素繊維強化複合材料に優れた機械特性を発現させる要因になるエポキシ基を有する化合物を含有するものであり、しかも該エポキシ基を有する化合物として、炭素繊維表面への含浸マトリックス樹脂の拡張濡れを促進させるところの低表面自由エネルギー成分と、含浸マトリックス樹脂へのサイズ剤成分の溶解を促進させる相溶性成分と、さらにはこれらの機能を相乗させるような成分とをバランス良く含有するものであり、各種のマトリックス樹脂に対する優れた含浸性を炭素繊維に付与するものである。
また、本発明の炭素繊維用サイズ剤の水分散液は、前記炭素繊維用サイズ剤を界面活性剤を使用して水に分散させてなるものであるために、炭素繊維にサイジング処理を施すときのサイジング液として、工業的にも、又安全性の面からも優れたものであり、又良好な液安定性を有しているために、優れた取り扱い性を有するものである。
実施例で製造したゴルフシャフトの硬化条件を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 下記の、成分(A)20〜80質量%と成分(B)10〜50質量%と成分(C)10〜40質量%とからなる混合物を50質量%以上含有することを特徴とする炭素繊維用サイズ剤。
    成分(A):分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EAが21〜24mJ/m2である;
    成分(B):分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値EBが28〜34mJ/m2である;
    成分(C):分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であって、125℃における表面自由エネルギーの値ECが37〜42mJ/m2である。
  2. 請求項1記載の炭素繊維用サイズ剤と界面活性剤と水とを含有し、該炭素繊維用サイズ剤が水中に分散している炭素繊維サイジング用の水分散液。
  3. 請求項1記載の炭素繊維用サイズ剤が表面に付着した炭素繊維であって、前記炭素繊維用サイズ剤の量が炭素繊維の0.1〜5.0質量%である炭素繊維。
  4. 請求項3記載の炭素繊維を強化材として含む炭素繊維強化複合材料。
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