JP4507908B2 - 炭素繊維前駆体繊維用油剤及び炭素繊維前駆体繊維束 - Google Patents

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Description

本発明は、高性能な炭素繊維を高い操業性で製造することができる炭素繊維前駆体繊維束及びそれに用いる炭素繊維前駆体繊維用油剤に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツや航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器、風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されつつあるが、特にスポーツや航空・宇宙用途においては、更なる高強度化や高弾性率化の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル系炭素繊維は、前駆体となるポリアクリロニトリル系繊維を湿式紡糸または乾湿式紡糸後、200〜400℃の酸化性雰囲気下で耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の不活性雰囲気下で炭素化することによって、工業的に製造されている。
高性能な炭素繊維を得るためには、先述の各製造工程において、張力を高く、あるいは高い延伸倍率に設定することがよく行われるが、その際、単繊維同士の接着が発生して品位・品質が低下しやすいため、安定生産のためには妥協的な延伸倍率で操業せざるを得ないという問題がある。
この問題に対し、耐熱性の高いシリコーン油剤をアクリルプリカーサーに付与する技術が多数提案され、工業的に広く適用されている。例えば、特定のアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーンを混合した油剤は、空気中及び窒素中での加熱時の減量が少なく、接着防止効果が高いことが開示されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような従来のシリコーン油剤は、耐炎化工程において単繊維間に介在して耐炎化反応に必須となる酸素の供給を妨げ、その結果、耐炎化反応の進行度ムラ、いわゆる焼成ムラの発生が誘起され、更にはこれが原因となって、続く炭化工程において糸切れや毛羽発生などの問題を引き起こしやすく、生産性向上の大きな障害となる。この問題に対し、シリコーン油剤の硬化挙動を特定することにより改善する技術(例えば、特許文献2)が開示されているが、更なる炭素繊維の高性能化については限界があった。
特公平3−40152号公報(全体) 特開2001−172880号公報(全体)
本発明は、上記問題点を解決し、高糸条密度、高張力の条件下においても、単繊維間接着を防ぎ、かつ、耐炎化工程での酸素の供給を円滑に行うことができる、優れた性能を有する炭素繊維を製造するための炭素繊維前駆体繊維用油剤、及びそれを用いた炭素繊維前駆体繊維束を提供するものである。
本発明者らは油剤の役割に着目し、鋭意検討した結果、下記骨子の手段により、上記課題を解決する。
即ち、本発明の解決手段は、主剤と、N−イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる少なくとも一つのモノマーを必須成分として重合されてなる感温性高分子を含む炭素繊維前駆体繊維用油剤であり、当該炭素繊維前駆体繊維用油剤を用いて製造された炭素繊維用前駆体繊維束である。
本発明によれば、炭素繊維用前駆体繊維用油剤の成分として、主剤の他に、感温性高分子が存在することにより、主剤を単繊維一本一本に均一に付着させることが可能となるために単繊維間接着を高効率で抑制させることができ、従来よりも高い糸条密度、高張力、高速の焼成条件であっても、毛羽や糸切れのない安定した品位で、高性能な炭素繊維を製造することができる。
本発明の炭素繊維前駆体繊維用油剤(以下、単に油剤と略記する)は、少なくとも主剤と、N−イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる少なくとも一つのモノマーを必須成分として重合されてなる感温性高分子(以下、単に感温性高分子と略記する)とを含むが、後述するように液状媒体中での感温性高分子の挙動が重要であるため、本発明で言う油剤とは、実質的に主剤と感温性高分子と液状媒体を必須成分とするものを油剤と呼ぶ。なお、主剤が液状媒体を兼ねる場合は、本発明の油剤の必須成分は、主剤と感温性高分子となる。
本発明で言う感温性高分子とは、かかる高分子と液状媒体の混合液において、ある特定の温度より温度が低い場合には実質的に溶液状態、高い場合には少なくとも高分子の一部が液状媒体より析出する性質を有する高分子を指す。その特定の温度は、曇点や下限臨界共溶温度と呼ばれる。一般に感温性高分子として、例えば、エチレンオキサイド鎖と、疎水部、例えばアルキル基や炭素が3以上のアルキレンオキサイド鎖、からなる重量平均分子量が2,000以上の分子、より好ましくは重量平均分子量が5,000以上の分子、更に好ましくは重量平均分子量が10,000以上の分子、あるいは、N−アルキル(メタ)アクリルアミドのホモポリマーや前記モノマーと(メタ)アクリル酸などとの共重合体、ジメチルアミノエチル(メタ)クリレートとエチレングリコールジメタクリレートなどの多官能性モノマーとの共重合体などや、それらの混合物などが挙げられる。本発明においては、中でも、N−イソプロピルアクリルアミドまたはジメチルアミノエチルメタクリレートのいずれかあるいは両方を必須成分として重合された高分子を用いる。N−イソプロピルアクリルアミドの場合、そのホモポリマーの下限臨界共溶温度は水中では約32℃であるが、曇点や下限臨界共用温度は、共重合させることによってコントロール可能である。基本的にはアニオン性モノマーやカチオン性モノマー、ノニオン性の親水性モノマーなどを共重合すると、下限臨界共溶温度は上昇する。アニオン性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、スルホン酸基を有するモノマー、より具体的にはスチレンスルホン酸などが挙げられ、カチオン性モノマーとしては含窒素モノマー、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどが挙げられ、ノニオン性の親水性モノマーとしては、例えば親水基を有するビニル系化合物や(メタ)アクリレート、より具体的には、N−ビニル−2−ピロリドンや、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど、更に具体的には2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されず種々のモノマーが用いられる。なお、例えば油剤にイオン性物質が用いられる場合、凝集などによって油剤としての機能や状態に不具合を起こさないようにするため、感温性高分子は少なくとも異符号のイオン性ではないことが好ましい。より具体的には乳化剤がカチオン性であるとか、主剤がアミノ基を含んでいるような場合は、感温性高分子はカチオン性かノニオン性が好ましい。このような感温性高分子に対応する液状媒体としては、感温性高分子の曇点または下限臨界共用温度が現れるようにするため、親水性媒体が好ましく、なかんずく水が好ましい。後述の主剤に対する感温性高分子の割合は、油剤の付与方法を開示した後に述べる。

本発明で言う主剤とは、主剤と感温性高分子と液状媒体の三者を対象にして比較した場合、油剤中の感温性高分子の重量含有率より多く、かつ主剤と液状媒体が異なる場合に液状媒体ではないものを指す。本発明の油剤に含まれる主剤としては、単糸間接着防止効果や集束性が認められるものであれば特に限定されないが、背景技術でも説明したように、シリコーン化合物は、一般に高い接着防止効果が認められるため、その効果をより一層際立たせるために好ましく使用できる。シリコーン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのジオルガノポリシロキサンや、それを基本にしたアミノ変性やエポキシ変性やポリエーテル変性などの各種変性物が知られており、本発明にも用いられるが、少なくとも主剤の一部には繊維と親和性の高いアミノ変性シリコーンが含まれているのが好ましく、アミノ変性シリコーンと乳化安定性に優れるポリエーテル変性シリコーンを併用するのは更に好ましく、アミノ変性シリコーンと耐熱性に優れるエポキシ変性シリコーンとポリエーテル変性シリコーンを併用するのが特に好ましい。アミノ変性シリコーンは、主剤のうち、20〜100重量%が好ましく、30〜90重量%がより好ましく、40〜80重量%がなお好ましい。
また、本発明の油剤の主剤が、ケイ素非含有化合物であることも好ましいものである。先述のように、シリコーン化合物は、高い単糸間接着防止効果を有する一方で、焼成炉内で窒化ケイ素や酸化ケイ素を形成して操業性を低下させる可能性がある。従って、そのような懸念のないケイ素を含有しない化合物を用いるのは好ましいことである。このようなケイ素非含有化合物としては、耐熱性の高い有機化合物が好ましく、特に芳香族系有機化合物は好ましく用いられる。例えば、付加モル数1以上のスチレン化フェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ナフタレンのホルムアルデヒド縮合物、タンニンなどのポリフェノール類などが挙げられる。また、この中でも、ケイ素非含有化合物が実質的に水溶性または水中自己乳化性を有する液体であることが単糸への均一付着の点で好ましい。例えば、上記例のような各種の芳香族系有機化合物に親水基、例えばエチレンオキサイド鎖や水酸基などが付加されているような化合物が挙げられる。
本発明の油剤の主剤は、シリコーン化合物の場合であっても、ケイ素非含有化合物であっても、それらの混合物であっても構わないが、240℃で2時間、空気中で熱処理した時に、その減量率が70%以下、好ましくは50%以下に抑えられるような耐熱性を有するものが好ましい。
また、本発明の油剤の主剤は、液状媒体に溶解するもの、または自己乳化するものであれば特に問題ないが、溶解または自己乳化しない場合は、乳化・分散するために乳化剤や分散剤などの界面活性剤を併用するのが好ましい。本発明の油剤に用いられる界面活性剤は、特に種類は問わず、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれもが用いられ、アニオン性とカチオン性の組み合わせ以外は、組み合わせて用いても構わないが、カチオン性が好ましく、アミノ基などがもたらす弱カチオン性はなお好ましく、ノニオン性は特に好ましく用いられる。ノニオン性の界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールのアルキルエーテルやアルキルフェニルエーテル、アルキルアミンエーテルなどを挙げることができる。乳化・分散した場合の重量平均粒子径は、0.001〜1μmが好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましく、0.05〜0.2μmがなかんずく好ましい。0.001μmより小さい場合、効果が飽和する傾向にあるにも関わらず、乳化・分散が困難となりやすい。また、0.5μmより大きい場合には、繊維束の中心付近まで粒子が届かず、不均一付着を起こす場合がある。かかる重量平均粒子径は市販の光散乱などを原理とする粒度分布計で確認することができる。主剤に対する界面活性剤の添加量は、界面活性剤、主剤、液状媒体の組み合わせによるものであり、一慨には言えない。しかしながら、上記の平均粒子径を達成し、かつ主剤100重量部に対して0〜60重量部、好ましくは0〜35重量部となるような界面活性剤の種類を選ぶべきである。なお、界面活性剤の種類を複数にして用いることは、乳化・分散が安定するため、好ましい手法である。
本発明の油剤は、炭素繊維前駆体繊維束の製糸工程のいずれの段階で付与しても良いが、単糸同士の接着や融着を効果的に防止するためには、油剤なしでは前駆体繊維束の単繊維同士が接着する程の熱が加わる工程の前に付与するのが好ましい。炭素繊維としてはポリアクリロニトリル系やピッチ系、セルロース系などが知られており、どの炭素繊維の場合にも本発明の油剤は前記のような熱が加わる工程、例えば耐炎化や不融化と呼ばれる工程の前に好ましく前駆体繊維束に付与できるが、以下、特に高性能炭素繊維としてよく用いられるポリアクリロニトリル系炭素繊維に用いる場合について、より好ましい実施の形態を説明する。
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維は、通常は湿式紡糸または乾湿式紡糸によって製造されるが、その工程中、最終の炭素繊維を実用的な物性とするため、加熱することによって前駆体繊維を乾燥・緻密化させる工程がある。本発明の油剤は、その乾燥工程以前に前駆体繊維束に付与されるのが好ましい。付与する方法は、ディップ・ニップ法やスプレー法、ガイド給油法など、特に限定されるものではないが、後述するように感温性高分子の作用の都合により、実用面からは油剤温度を35℃以下にして付与することが好ましい。下限の温度は、概ね液状媒体の凝固点までとなる。上記の乾燥・緻密化させる工程の加熱温度は、120〜220℃が好ましく、140〜210℃がより好ましく、160〜200℃が更に好ましい。220℃を超えると単繊維間接着を起こしやすく、120℃未満では乾燥に時間が掛かり、効率的ではない場合がある。加熱時間は、5〜120秒が好ましく、10〜90秒がより好ましく、15〜60秒が更に好ましい。加熱時間が5秒に満たないと乾燥・緻密化の効果が不十分になり、120秒を超えても、乾燥・緻密化の効果は飽和していることが多い。この時間は、加熱温度や加熱の方式(例えば、接触加熱か非接触加熱かなど)などによって適宜決められる。加熱する形態は、電気ヒーターやスチームなどで加熱した空気の中に前駆体繊維束を通過させるテンターや赤外線加熱装置のような非接触式と、プレート式ヒーターやドラム式ヒーターなどのような接触式のいずれもが用いられるが、接触式の方が熱伝達効率の点でより好ましい。
従来から知られている油剤は、上述のごとき主剤と液状媒体からなるが、これに感温性高分子を併用して本発明の油剤とすることによって、炭素繊維前駆体繊維束の単繊維同士の接着または融着防止効果がより一層高度なものとなるのである。そのメカニズムは、必ずしも明確になった訳ではないが、次のように考えている。即ち、主剤と液状媒体からなる油剤が炭素繊維前駆体繊維束に付与された後、加熱による乾燥工程に移るが、その際、液状媒体は前駆体繊維束の表面から雰囲気に対して揮発蒸散するため、繊維束内の液状媒体は束の表面に向かって移動する。これに伴って液状媒体に溶解または乳化または分散している主剤も移動するため、繊維束の内側は主剤が不足することになり、油剤の効果が希薄となる。そこに、感温性高分子が存在する場合、油剤が加熱されて感温性高分子の曇点または下限臨界共溶温度を超える温度になると、感温性高分子が析出して、油剤全体は寒天やゼリーやプリン状のゲル状態となる。これによって、液状媒体の乾燥は起こっても主剤の移動は抑制されるため、繊維束の内側の主剤不足は解消され、油剤の効果は繊維束全体でほぼ均等になると考えられる。また、単繊維同士の間に存在する油剤は、加熱途中に単繊維が動くことによって押し出され、単繊維同士が融着または接着する可能性があるが、感温性高分子の働きによって油剤がゲル化すると押し出されにくくなり、単繊維同士の融着または接着が抑制されると考えられる。このような効果は、感温性高分子が曇点または下限臨界共溶温度を有するために発現するのであって、例えば液状媒体が水の場合にポリビニルアルコールや各種水溶性ガムのような通常の水溶性高分子を用いたとしても、それらは水が揮発蒸散する場所、即ち繊維束の表面で濃縮され、飽和溶解度を超えて初めて析出するため、主剤の繊維束の内部から表面への移動を抑制することはできないし、単繊維間からの油剤の押し出されに対しても何の抑制効果もない。
上記の推定メカニズムから、感温性高分子の曇点または下限臨界共溶温度は、油剤を炭素繊維前駆体繊維束に付与する際の油剤温度より高いことが望ましく、液状媒体の沸点より低いことが望ましい。具体的には、曇点または下限臨界共溶温度は20〜98℃が好ましく、30〜80℃がより好ましく、35〜70℃がより一層好ましい。20℃未満の曇点または下限臨界共溶温度であっても、それより更に低い温度で繊維束に油剤を付与できれば特に差し支えはないが、一般的な室温や特に夏場の室温を考慮すると、油剤を冷却したり、製造する空間を冷房したりする必要があるため、製造のコストや操業性などの面で好ましい選択とは言えない。一方、98℃を超える曇点または下限臨界共溶温度の場合は、室温と曇点または下限臨界共溶温度との温度差が大きく、加熱した際に、繊維束内はまだ曇点または下限臨界共溶温度に到達していないにも関わらず、繊維束表面は液状媒体の沸点に到達し、繊維束の内側から表面に向かっての液状媒体や主剤や感温性高分子の移動が開始する可能性が高まるため、好ましくない。従って、製造する場所において、年間の最高油剤温度よりも高い温度範囲の中で、できるだけ低い温度に曇点または下限臨界共溶温度を設定した感温性高分子を用いるのが実用的で、かつ最大の効果を引き出すことができると言える。
感温性高分子の濃度は、用いる感温性高分子や液状媒体の種類の組み合わせによって適正値が変わるために一慨には言えないが、油剤全量に対して概ね0.0001〜10重量%である。より重要なことは、油剤を炭素繊維前駆体繊維束に付与する時の温度における油剤の粘度が1〜50cP、より好ましくは1〜20cP、なかんずく好ましくは2〜10cPとなることである。粘度が50cPを超えると、束内に油剤を均一に付与することが難しくなる。下限は特に限定されるものでなく、均一付着の点で低ければ低い方が良いことになるが、例えば常温付近で約1cPの水を液状媒体として選択した場合には、実質的には、感温性高分子の溶解や、主剤の溶解または乳化・分散があるため、2cP以上になることが多い。なお、粘度は、市販の回転式粘度計を用いて測定できる。その際、測定温度は、油剤を前駆体繊維束に付与する際の油剤の温度とする。もし、油剤が剪断力に応じて粘度が変化するチキソトロピーなどの性質がある場合は、剪断力を変化させた時に漸近する粘度を本発明で言う粘度と見なすが、漸近する粘度が回転式粘度計の都合によって予測し難い場合は、回転式粘度計の最高の剪断力を加えた時の粘度の2倍を本発明で言う粘度と見なす。使用できる好ましい回転式粘度計としては、東機産業株式会社製R型粘度計(形名:RE115L)が一例として挙げられる。
主剤の濃度も、油剤がどのくらい繊維束に付与されるかということと密接に関係し、かつ、主剤の効き方も種類によって異なるため、一慨に言えないが、概ね油剤全量に対して0.1〜10重量%である。それよりも重要なことは、上記の通り、油剤の粘度が50cPを超えないことが重要である。また、感温性高分子と主剤との混合比も、上記のように種類などによって変わるものであり、一慨には言えないが、主剤に対して感温性高分子が0.001〜50重量%が好ましく、0.01〜20重量%が更に好ましく、0.1〜10重量%が尚更に好ましい。
本発明の油剤には、上記の成分以外にも、平滑剤、吸湿剤、界面活性剤、粘度調整剤、離型剤、展着剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、およびpH調整剤などの成分を含んでもよい。これらの成分は、本発明の油剤全体の5重量%を超えない範囲で混合することが好ましい。
かかる油剤の製造には、特に限定されず、公知の化学薬品の混合方法や、乳化方法を用いることができる。例えば、装置的にはプロペラ撹拌、ホモミキサーおよびホモジナイザーなどを用いることができる。また、プロセス的には、乳化が必要であれば、強制攪拌による乳化や、均一微小粒径が生成しやすい転相乳化法などを用いることができる。主剤、感温性高分子、液状媒体の三者を最初に仕込み、上記装置とプロセスを選択採用して油剤を製造しても構わないし、あるいは、便宜的に主剤と液状媒体からなる油剤成分1と、感温性高分子と液状媒体からなる油剤成分2に分けてそれぞれについて上記装置とプロセスから適宜選択採用して製造した後に油剤成分1と油剤成分2を混合しても構わないし、またあるいは、前記の油剤成分1を製造した後、上記装置とプロセスから適宜選択採用して油剤成分1に感温性高分子を混合して製造しても構わない。ただし、感温性高分子が関わる工程については、感温性高分子の曇点または下限臨界共溶温度以下で行うのが、感温性高分子について均一な油剤となるので好ましい。かかる工程としては、例えば、前記の三者を最初に仕込んで製造する工程や、前記の油剤成分2を製造するような工程や、油剤成分1と油剤成分2または感温性高分子を混合するような工程がある。
本発明の炭素繊維前駆体繊維束は、ポリアクリロニトリル系重合体を湿式または乾湿式紡糸した後、水洗して得られる水膨潤状態の糸条に上述の油剤を付与した後、130〜200℃で熱処理することにより製造することができる。ポリアクリロニトリル系重合体の成分としては、少なくとも95モル%以上、より好ましくは98モル%以上のアクリロニトリルと、5モル%以下、より好ましくは2モル%以下の、耐炎化を促進し、かつ、アクリロニトリルと共重合性のある耐炎化促進成分を共重合したものを好適に使用することができる。
かかる耐炎化促進成分としては、ビニル基含有化合物(以下ビニル系モノマーと表記する)からなる共重合体が好適に使用される。ビニル系モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、一部または全量をアンモニア中和したアクリル酸、メタクリル酸、またはイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体は、耐炎化促進成分としてより好適に使用される。
紡糸原液は、従来知られている溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを採用し得る。紡糸原液に使用される溶媒としては、有機、無機の従来公知の溶媒が使用することができる。特に有機溶媒を使用するのが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが使用され、特にジメチルスルホキシドが好ましく使用される。
紡糸方法は、乾湿式紡糸法や湿式紡糸法が好ましく採用されるが、より表面が平滑な原糸を、生産性よく製造することができることから、前者がより好ましく使用される。
口金から直接または間接に凝固浴中に紡糸原液を吐出して凝固糸を得るが、凝固浴液は、紡糸原液に使用する溶媒と凝固促進成分とから構成するのが、簡便性の点から好ましく、凝固促進成分として水を用いるのがさらに好ましい。凝固浴中の紡糸溶媒と凝固促進成分の割合、および凝固浴液温度は、得られる凝固糸の緻密性、表面平滑性および可紡性などを考慮して適宜選択して使用される。
得られた凝固糸は、20〜98℃に温調された単数または複数の水浴中で水洗、延伸するのがよい。延伸倍率は、糸切れや単繊維間の接着が生じない範囲で、適宜設定することができるが、より表面が平滑な炭素繊維前駆体繊維を得るためには、5倍以下が好ましく、4倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。また、得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性を向上させる観点から、延伸浴の最高温度は、50℃以上とするのが好ましく、70℃以上がより好ましい。
本発明の油剤は、水洗、延伸された後の水膨潤状態の糸条に付与するのが好ましい。その炭素繊維前駆体繊維束への付着量は、繊維の乾燥重量に対する液状媒体を除く油剤成分の割合が、0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%がより好ましく、0.5〜2重量%がさらに好ましい。0.1重量%を下回ると、単繊維同士の融着が生じ、得られる炭素繊維の引張強度が低下することがある。また、5重量%を超えると、本発明の効果が得にくくなることがある。
油剤を付与された糸条は、速やかに乾燥するのがよい。乾燥の方法は、上述の通りである。
乾燥された糸条は、さらに加圧スチーム中または乾熱下で後延伸されるのが、得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性や生産性の観点から好ましい。後延伸時のスチーム圧力または温度や後延伸倍率は、糸切れ、毛羽発生のない範囲で適宜選択して使用するのがよい。
本発明の前駆体繊維の単糸繊度は、0.1〜2.0dTexであることが好ましく、0.3〜1.5dTexであることがより好ましく、0.5〜1.2dTexがさらに好ましい。該繊度は小さいほど、得られる炭素繊維の引張強度や弾性率の点で有利であるが、生産性は低下するため、性能とコストのバランスを勘案し選択するのがよい。
また、本発明の前駆体繊維束を構成する単繊維数は、好ましくは、1000〜96000本であり、より好ましくは、12000〜48000本であり、さらに好ましくは、24000〜48000本である。ここで、前駆体繊維の糸条を構成する単繊維数とは、耐炎化処理される直前の単繊維数をいい、生産性の観点から多いほど好ましい。単繊維の数が1000本未満では、生産性が悪化することが多く、また、96000本を超えると耐炎化の際に焼成むらを発生しやすくなることが多い。
上述したような好ましい方法により、炭素繊維前駆体繊維束が製造され、さらに以下に述べるような方法で、該前駆体繊維束を耐炎化および炭化することにより、高性能な炭素繊維を製造することができる。
耐炎化温度は、酸素含有気体雰囲気下、好ましくは空気雰囲気下、200〜300℃で加熱することがよく、糸条が反応熱の蓄熱によって糸切れを生じる温度よりも、10〜20℃低い温度で耐炎化するのがコスト削減および得られる炭素繊維の性能を高める観点から好ましい。耐炎化時間は、生産性および得られる炭素繊維の性能を高める観点から、10〜100分間が好ましく、30〜60分間がより好ましい。この耐炎化時間とは、糸条が耐炎化炉内に滞留している全時間をいう。この時間が10分を下回ると、各単繊維の酸化された外周部分と酸化不足の内側部分の二重構造の構造差が全体的に顕著となり、高性能な炭素繊維を得にくくなることがある。耐炎化工程における糸条の延伸比は0.85〜1.10が良く、0.88〜1.06がより好ましく、0.92〜1.02がさらに好ましい。
耐炎化工程に続いて、炭化工程に移るが、その前に300〜800℃の不活性雰囲気下、好ましくは窒素またはアルゴン雰囲気下で行う予備炭化工程を設けるのも好ましい。この予備炭化工程における延伸比を、0.90〜1.25、より好ましくは1.00〜1.20、特に好ましくは1.05〜1.15と設定するのが、得られる炭素繊維の性能を高める観点から良い。
不活性雰囲気下で行われる炭化工程の温度は800〜2000℃であるのがよい。また、その最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて適宜選択して使用されるが、800℃を下回ると、得られる炭素繊維の引張強度、弾性率が低下することがある。炭化工程における延伸比は、好ましくは0.95〜1.05、より好ましくは0.97〜1.02、特に好ましくは0.98〜1.01であるのが、得られる炭素繊維の性能を高める観点から良い。
より弾性率が高い炭素繊維を所望する場合には、炭化工程に続き黒鉛化を行うこともできる。黒鉛化工程の温度は2000〜2800℃であるのがよい。また、その最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて適宜選択して使用される。黒鉛化工程における延伸比は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて、毛羽発生など品位低下の生じない範囲で適宜選択するのがよい。
得られた炭素繊維に対して、表面処理をすることにより、複合材料とした時のマトリックスとの接着強度をより高めることができる。表面処理方法としては、気相、液相処理を採用できるが、生産性、品質ばらつきを考慮すると、液相処理における電解処理が好ましく適用される。
電解処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸といった酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといったアルカリあるいはそれらの塩を用いることができるが、特に好ましくはアンモニウムイオンを含む水溶液が好ましい。例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸水素2アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、あるいは、それらの混合物を用いることができる。
電解処理の電気量は、使用する炭素繊維により異なり、例えば、炭化度の高い炭素繊維ほど、高い通電電気量が必要となる。表面処理量としては、X線光電子分光法(ESCA)により測定される炭素繊維の表面酸素濃度O/Cおよび表面窒素濃度N/Cが、それぞれ0.05以上0.40以下、および、0.02以上0.30以下の範囲になることが、接着特性の上から好ましい。
これらの条件を満足することにより、炭素繊維とマトリックスとの接着が、適正なレベルとなり、したがって接着が強すぎて非常にブリトルな破壊となって強度が低下してしまうという欠点も、あるいは、強度は強いものの接着力が低すぎて、非縦方向の機械的特性が発現しないといった欠点も防止することができ、縦および横方向にバランスのとれたコンポジット特性が発現される。
得られた炭素繊維は、さらに、必要に応じて、サイジング処理がなされる。サイジング剤には、マトリックスとの相溶性の良いサイジング剤が好ましく、マトリックスに併せて選択して使用される。
このようにして得られた炭素繊維は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもできるし、織物などのプリフォームとした後、ハンドレイアップ法、プルトルージョン法およびレジントランスファーモールディング法などにより複合材料に成形することもできる。また、フィラメントワインディング法や、チョップドファイバーやミルドファイバー化した後射出成形することにより複合材料に成形することができる。
本発明で得られた炭素繊維を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、航空宇宙用途、フードおよびプロペラシャフトなどの自動車構造部材用途、フライホイールおよびCNGタンクなどのエネルギー関連用途などに好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて、本発明の効果をさらに具体的に説明する。
なお、炭素繊維の引張強度および引張弾性率の測定は、次のようにして測定した。炭素繊維束に下記組成の樹脂を含浸させて130℃の温度で35分間硬化させ、ストランドとした。6本のストランドについてそれぞれJIS R7601(1986年)に基づいて引張試験を行い、各試験で得られた強度および弾性率をそれぞれ平均して、炭素繊維の引張強度および引張弾性率とした。
*樹脂組成(かっこ内は本発明の実施例で用いたもののメーカーなど)
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ERL−4221、ユニオンカーバイド社製) 100重量部
・3−フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ(株)製) 3重量部
・アセトン(和光純薬工業(株)製) 4重量部
[実施例1]
下記処方の炭素繊維前駆体繊維用油剤を調製した。
主剤
アミノ変性シリコーン 50重量部
エポキシ変性シリコーン 25重量部
ポリエーテル変性シリコーン 25重量部
ノニオン性界面活性剤 30重量部
感温性高分子
N−イソプロピルアクリルアミド系共重合体 0.5重量部
水 4000重量部
アミノ変性シリコーンは、アミノ当量2000mol/g、その25℃における動粘度が1000cStのものを用いた。エポキシ変性シリコーンは、エポキシ当量6000mol/g、その25℃における動粘度が6000cStのものを用いた。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリエーテル部が全重量に占める割合が50重量%、その25℃における動粘度が300cStのものを用いた。ノニオン性界面活性剤としては、ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下、EOと略す)付加物(付加モル数10と8と6を同重量混合したもの)を使用した。N−イソプロピルアクリルアミド系共重合体としては、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを3モル%共重合したものを用いた。
3種のシリコーンと界面活性剤を、25℃でプロペラ攪拌し、25℃の3500重量部の水をゆっくりと添加した。一方、25℃でN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体を25℃の500重量部の水に添加して溶解するまで攪拌し、前記の3種シリコーンと界面活性剤と水からなる乳化液に添加した。
得られた油剤の平均粒子径は、粒度分布計で測定した結果、0.2μmであった。
この油剤を、25℃にて、ポリアクリロニトリル系繊維(0.7dtex、3000フィラメント)にディップ−ニップ法で付着させ、次いで170℃×30秒で乾燥させた。その後、延伸倍率5のスチーム延伸を経て、炭素繊維用前駆体繊維束を得た。
かかる炭素繊維用前駆体繊維束を8本合糸して単繊維数24000本とした後、250℃で延伸倍率1.00の耐炎化工程、650℃で延伸倍率1.10の予備炭化工程、1450℃で延伸倍率1.00の炭化工程を経て、炭素繊維束を得た。これらの間、炭素繊維は、操業性に影響を及ぼすような顕著な毛羽や切断は発生しなかった。得られた良好な品位の炭素繊維の引張強度は7.1GPa、引張弾性率は350GPaであった。
[比較例1]
実施例1で使用した感温性高分子を用いずに、それ以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、予備炭化工程で毛羽が大量に発生し、品位の良好な炭素繊維を得ることはできなかった。
[実施例2]
下記処方の炭素繊維前駆体繊維用油剤を調製した。
主剤
トリスチレン化フェノールEO20mol付加物 100重量部
感温性高分子
N−イソプロピルアクリルアミド系共重合体 5重量部
水 3000重量部
N−イソプロピルアクリルアミド系共重合体には、アクリル酸を5モル%共重合したものを用いた。
主剤と感温性高分子を水に添加し、溶解するまで25℃で攪拌し、油剤とした。
この油剤を、25℃にて、ポリアクリロニトリル系繊維(1.0dtex、4000フィラメント)にディップ−ニップ法で付着させ、次いで170℃×30秒で乾燥させた。その後、延伸倍率5のスチーム延伸を経て、炭素繊維用前駆体繊維束を得た。
かかる炭素繊維用前駆体繊維束を3本合糸して単繊維数12000本とした後、250℃で延伸倍率0.86の耐炎化工程、650℃で延伸倍率0.95の予備炭化工程、1400℃で延伸倍率0.95の炭化工程を経て、炭素繊維束を得た。これらの間、炭素繊維については、操業性に影響を及ぼすような顕著な毛羽や切断は発生しなかった。得られた良好な品位の炭素繊維の引張強度は4.8GPa、引張弾性率は245GPaであった。

[比較例2]
実施例2で使用した感温性高分子を用いずに、それ以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、乾燥工程での単糸間接着が多く発生し、スチーム延伸の工程において、切断が多発し、炭素繊維前駆体繊維束を得ることができなかった。
本発明によれば、炭素繊維用前駆体繊維用油剤の成分として、主剤の他に、感温性高分子が存在することにより、主剤を単繊維一本一本に均一に付着させることが可能となるために単繊維間接着を高効率で抑制させることができ、従来よりも高い糸条密度、高張力、高速の焼成条件であっても、毛羽や糸切れのない安定した品位で、高性能な炭素繊維を製造することができる。かかる炭素繊維は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもでき、本発明で得られた炭素繊維を用いた複合材料は、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、航空宇宙用途、フードおよびプロペラシャフトなどの自動車構造部材用途、フライホイールおよびCNGタンク、風車などのエネルギー関連用途などに好適に用いることができ、有用である。

Claims (5)

  1. 主剤と、N−イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートから選ばれる少なくとも一つのモノマーを必須成分として重合されてなる感温性高分子を含む炭素繊維前駆体繊維用油剤。
  2. 主剤がシリコーン化合物を含む請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維用油剤。
  3. 主剤がケイ素非含有化合物を含む請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維用油剤。
  4. 主剤に含まれるケイ素非含有化合物が、実質的に水溶性または水中自己乳化性を有する液体である請求項記載の炭素繊維前駆体繊維用油剤。
  5. 請求項1ないしのいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維用油剤を用いて製造された炭素繊維用前駆体繊維束。
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