JP5146394B2 - 炭素繊維前駆体繊維の製造方法および炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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本発明は、高性能かつ高品位な炭素繊維を得るための炭素繊維前駆体繊維の製造方法および炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されつつあり、更なる生産性の向上と高性能化両立の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維(以下、前駆体繊維と略記することがある)を得た後、それを200〜400℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
PAN系炭素繊維の生産性向上は、炭素繊維前駆体繊維の紡糸、耐炎化あるいは炭素化のいずれの観点からも行われている。中でも前駆体繊維の生産性向上については、従来技術には次に示す問題があった。すなわち、前駆体繊維を得る際の紡糸においては、口金孔数とPAN系重合体溶液の特性にともなう凝固糸を引き取る限界速度(以下、凝固糸を引き取る限界速度を示す性質を可紡性とも記述する)とその凝固構造に伴う限界延伸倍率によって生産性が制約を受ける。具体的には、多数の単繊維からなる炭素繊維前駆体繊維を得るに際し、引き取り速度と延伸倍率とで決まる最終的な紡糸速度がどれほど高められるかで、生産性を左右する条件を決定せざるを得ない。すなわち、生産性を向上させるために紡糸速度を上げると延伸性低下が起こるため生産工程が不安定化しやすく、一方、紡糸速度を下げると生産工程は安定化するものの生産性は低下することから、生産性の向上と生産工程の安定化の両立が困難であるという問題があった。
かかる問題について、可紡性には紡糸方法が大きな影響を与えることが知られているので、紡糸方法別に説明する。
湿式紡糸法では、紡糸溶液を凝固浴内にある口金孔から凝固浴に吐出させるので、紡糸溶液が口金孔から吐出された直後から凝固が進行する。そのため、引き取り速度の高速化に従って実質の紡糸ドラフト率が高くなるが、引き取り速度の高速化に伴い口金面で糸切れが発生するという問題があり、引き取り速度を高めるには限界がある。
これに対し、乾湿式紡糸法では、紡糸溶液が一旦空気中(エアギャップ)に吐出されてから凝固浴中に導かれるので、実質的な紡糸ドラフト率はエアギャップ内にある原液流で吸収され、可紡性が高いことから、これまでいくつかの提案がなされている。紡糸溶液の重合体濃度を制御することにより、紡糸溶液の粘度を下げ、濾過操作における操作性を良好にし、紡糸ドラフト率を向上させる技術が提案されている(特許文献3参照)。この提案によれば、紡糸ドラフト率が10と向上効果が認められるが、紡糸口金の孔径を0.3mmと大きくすることにより紡糸ドラフト率を高めているに過ぎず、口金からの紡糸溶液の吐出量が一定のとき、紡糸口金の孔径を広げると吐出線速度は遅くなり、紡糸ドラフト率は高まるものの可紡性は向上しないので、前駆体繊維の生産性を向上させることはできないという課題がある。
また、高粘度の紡糸溶液を用い、特定のエアギャップを設けることによって紡糸ドラフト率を5〜50に設定する技術が提案されているが(特許文献4参照)、この提案は、羊毛様の優れた風合いと機械的性能を低下させることなく、湿熱特性を保持させようとした衣料用アクリル繊維に関するものであり、具体的には紡糸口金の孔径を0.3mm、孔数36個としており、数千から数十万という多数の単繊維からなる繊維束を焼成する炭素繊維用としては不適である。
また、紡糸口金の背面圧を低下させることで加圧スチーム延伸工程の延伸性を向上させ、生産性を向上する技術が提案されているが(特許文献5参照)、この提案では、紡糸口金での吐出安定性については考慮されていないため、口金背面圧を低下させるために吐出量を低下させることから、加圧スチーム延伸性は向上するものの、生産性向上の効果は限定的である。吐出量を増加させると紡糸口金孔内で印加される剪断速度は高まる。高剪断速度では、剪断粘度が低下するため吐出が不安定になる。口金孔径を上げると剪断速度が低下するが、高い紡糸ドラフト率が必要となるため、吐出が不安定となる。
すなわち、従来知られている、いずれの方法でも、生産性向上の効果は限定的であり、多孔数化、吐出量の増加を行いつつ、更に安定した吐出ができる方法が求められている。本発明者らは、炭素繊維の生産コストを低減するため、特定の分子量分布を有するPAN系重合体を用いることで、紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフト率を高めることができる技術を提案した(特願2007−269822号)。この技術を効果的に発揮させるため、吐出量を増加させた際、紡糸口金孔内で高剪断速度が印加されると、吐出のばらつき、また、そのばらつきが周期的に発生するようになるメルトフラクチャー、および、分子量分布の低下が発生することがあり、特定の分子量分布を有するPAN系重合体を用いても、更に紡糸速度を高めた場合においても安定した吐出が必要である。
特開昭62−257422号公報 特開昭58−186614号公報 特開昭64―77618号公報 特開平11−107034号公報 特開2007−182645号公報
本発明は、前記した従来技術が有する問題を解決すること、すなわち、分子量分布の大きなPAN系重合体を用い、紡糸口金からの吐出量を多くしても、分子量低下を抑制し、かつ、安定吐出できる技術を開発し、特定の分子量分布を有するPAN系重合体を用いても安定して炭素繊維前駆体繊維を製造でき、ひいては、安定して炭素繊維を製造する方法を提案することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、次の構成を有するものである。すなわち、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比であるMz/Mwが2以上であるポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を、口金単孔当たりの重合体吐出量を0.65〜3mg/秒として口金孔から吐出して炭素繊維前駆体繊維を得るに際し、口金孔からの吐出時に紡糸溶液に印加する最大剪断速度を2000〜17000s−1とする炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
また、上記の目的を達成するために、本発明の炭素繊維の製造方法は、次の構成を有するものである。すなわち、前記した製造方法によって得られた炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、予備炭化工程で得られた繊維を1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維を得る炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、分子量分布の大きい重合体成分を含む紡糸溶液を用いて、紡糸口金からの吐出量を多くしても、かかる紡糸溶液を分子量分布の変化がなく、また、安定させて吐出させることができるため、吐出の安定性だけでなく、その後の工程でも毛羽を発生させることなく、高品位な炭素繊維前駆体繊維を製造することができる。
また、繊維の長手方向にも、単繊維間にも均質な炭素繊維前駆体繊維を用いることで焼成工程でも糸切れが少なく、毛羽が少なく高強度な炭素繊維を安定して製造することができる。
本発明では、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比であるMz/Mwが2以上であるPAN系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を用いて紡糸する。かかるPAN系重合体は分子量の大きな重合体成分を含んでいるので、本発明の効果が顕著に現れる。
まず、本発明で好適に用いることができるPAN系重合体について説明する。本発明では、重量平均分子量Mwが10万〜100万、好ましくは20万〜65万、より好ましくは30〜50万であるPAN系重合体が好適に用いられる。また、かかるPAN系重合体は、Z平均分子量MzとMwとの比で示される多分散度Mz/Mwは2.5〜10、好ましくは2.7〜6、より好ましくは3〜6であるのが良い。
本発明において、各種平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記する)法で測定され、ポリスチレン換算値として得られるものである。なお、多分散度Mz/Mwは、次の意味を有する。すなわち、数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、高分子化合物に含まれる低分子量物の寄与を敏感に受ける。これに対して、Mwは、高分子量物の寄与を敏感に受け、Mzは、高分子量物の寄与をさらに敏感に受ける。そのため、分子量分布であるMw/Mnや多分散度であるMz/Mwを用いることにより分子量分布の広がりを評価することができる。Mw/Mnが1であるとき単分散であり、大きくなるにつれて分子量分布が低分子量側を中心にブロードになることを示すのに対して、Mz/Mwは大きくなるにつれて、分子量分布が高分子量側を中心にブロードになることを示す。
上記のように、Mw/MnとMz/Mwの示すところが異なるため、Mw/Mnが大きくても、Mz/Mwが2.5以上になるということでは必ずしもない。
上記のようなPAN系重合体を用いることにより、生産性の向上と安定化の両立を図りつつ、毛羽立ちの少ない高品位な炭素繊維前駆体繊維を製造することができるメカニズムは、必ずしも明確になった訳ではないが、次のように考えられる。口金孔直後でPAN系重合体が伸長変形する際に、超高分子量物と高分子量物が絡み合い、超高分子量物を中心に絡み合い間の分子鎖が緊張することで伸長粘度の急激な増大、すなわち、歪み硬化がおこる。PAN系重合体溶液の細化に伴い細化部分の伸長粘度が高くなり、流動安定化するため紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフト率を高めることができ、ひいては製糸速度を高めることができる。上記のようなPAN系重合体を溶媒に溶解させた溶液を用いることにより、20000mm/分もの高速で糸を曳いても糸が切れることはなく、曳糸長としては測定ができないほどとすることができる。
Mz/Mwが大きいほど好ましく、Mz/Mwが2以上では、PAN系重合体溶液の吐出安定性向上が見られるが、Mz/Mwが2.5未満では、歪み硬化が弱くPAN系重合体溶液の吐出安定性向上が不足することがある。また、Mwが10万未満では、前駆体繊維の強度が不足し、Mwが100万より大きいと吐出が困難となることがある。
また、Mw/Mnは、小さいほど炭素繊維の構造欠陥となりやすい低分子成分の含有量が少ないため、小さいほど好ましく、Mz/MwよりもMw/Mnが小さいことが好ましい。すなわち、高分子量側にも、低分子量側にもブロードであっても、吐出安定性低下は少ないが、低分子量側はなるべくシャープであることが好ましく、Mz/MwがMw/Mnに対して、1.5倍以上であることが好ましく、更には1.8倍以上であることがより好ましい。本発明者らの検討によると、通常、アクリロニトリル(以下、ANと略記する)の重合でよく行われている、水系懸濁、溶液法などのラジカル重合においては、分子量分布として低分子量側に裾を引いているため、Mw/MnがMz/Mwよりも大きくなる。そのため、重合開始剤の種類と割合や逐次添加など、特殊な条件で重合を行うか、一般的なラジカル重合を用いる場合、2種以上のPAN系重合体を混合する方法があり、重合体を混合する方法が簡便である。混合する種類は、少ないほど簡便であり、吐出安定性の観点からも2種で十分なことが多い。
混合する重合体のMwは、Mwの大きいPAN系重合体をA成分とし、Mwの小さいPAN系重合体をB成分とすると、A成分のMwは好ましくは100万〜1500万であり、より好ましくは100万〜500万であり、B成分のMwは5万〜90万であることが好ましい。A成分とB成分のMwの差が大きいほど、混合された重合体のMz/Mwが大きくなる傾向があるため好ましい態様であるが、A成分のMwが1500万より大きいときはA成分の生産性は低下する場合があり、B成分のMwが15万未満のときは前駆体繊維の強度が不足する場合があり、Mz/Mwは10以下とすることが現実的である。
具体的には、A成分とB成分の重量平均分子量の比は、4〜45であることが好ましく、20〜45であることがより好ましい。
また、A成分とB成分の重量比は、0.003〜0.3であることが好ましく、0.005〜0.2であることがより好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。A成分とB成分の重量比が0.003未満では、歪み硬化が不足することがあり、また0.3より大きいときは重合体溶液の吐出粘度が上がりすぎて吐出困難となることがある。
A成分とB成分の重合体を混合する場合、両重合体を混合してから溶媒で希釈する方法、重合体それぞれを溶媒に希釈したもの同士を混合する方法、溶解しにくい高分子量物であるA成分を溶媒に希釈した後にB成分を混合溶解する方法、および高分子量物であるA成分を溶媒に希釈したものとB成分を構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法などを採用することができる。混合には、混合槽で攪拌する方法やギヤポンプなどで定量してスタティックミキサーで混合する方法、二軸押出機を用いる方法などが好ましく採用できる。高分子量物を均一に溶解させる観点から、高分子量物であるA成分を初めに溶解する方法が好ましい。特に、炭素繊維前駆体製造用とする場合には、高分子量物であるA成分の溶解状態が極めて重要であり、わずかであっても未溶解物が存在していた場合には異物として認識され、炭素繊維内部にボイドを形成することがある。
具体的には、A成分の溶媒に対する重合体濃度、すなわちA成分と溶媒のみからなる溶液を仮想したときの、その溶液中におけるA成分の重合体濃度を好ましくは0.1〜5重量%になるようにした後、B成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合して重合する。上記のA成分の重合体濃度は、より好ましくは0.3〜3重量%であり、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。上記のA成分の重合体濃度は、より具体的には、重合体の集合状態として、重合体がわずかに重なり合った準希薄溶液とすることが好ましく、B成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合して重合する際に、混合状態が均一となりやすいため、孤立鎖の状態となる希薄溶液とすることが更に好ましい態様である。希薄溶液となる濃度は、重合体の分子量と溶媒に対する重合体の溶解性によって決まる分子内排除体積によって決まるとみられるため、一概には決められないが、本発明においては概ね前記範囲にすることにより凝集して異物となることが少ない。上記の重合体濃度が5重量%を超える場合は、A成分の未溶解物が存在することがあり、0.1重量%未満の場合は、分子量にもよるが希薄溶液となっているため効果が飽和していることが多い。
上記のように、A成分の溶媒に対する重合体濃度を好ましくは0.1〜5重量%になるようにした後、それにB成分を混合溶解する方法でもかまわないが、工程省略の観点から高分子量物を溶媒に希釈したものとB成分を構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法を採用する方が好ましい。
A成分の溶媒に対する重合体濃度を0.1〜5重量%になるようにする方法としては、希釈による方法でも重合による方法でも構わない。希釈する場合は、均一に希釈できるまで撹拌することが重要であり、希釈温度としては50〜120℃が好ましく、希釈時間は希釈温度や希釈前濃度によって異なるため、適宜設定すればよい。希釈温度が50℃未満の場合は、希釈に時間がかかることがあり、120℃を超える場合は、A成分が変質する恐れがある。また、重合体の重なり合いを希釈する工程を減らし、均一に混合する観点から、前記のA成分の製造から前記のB成分の混合開始、あるいは、B成分を構成する単量体の重合開始までの間、A成分の溶媒に対する重合体濃度を0.1〜5重量%の範囲に制御することが好ましい。具体的には、A成分を溶液重合により製造する際に、重合体濃度が5重量%以下で重合を停止させ、それにB成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合しその単量体を重合する方法である。通常、溶媒に対する仕込み単量体の割合が少ないと、溶液重合により高分子量物を製造ことは困難なことが多いため仕込み単量体の割合を多くするが、上記のA成分の重合体濃度が5重量%以下の段階では、重合率が低く、未反応単量体が多く残存していることになる。未反応単量体を揮発除去してから、B成分を混合してもかまわないが、工程省略の観点からその未反応単量体を用いてB成分を溶液重合することが好ましい。
本発明で好適に用いられるA成分としては、PANと相溶性を有することが望ましく、相溶性の観点からPAN系重合体であることが好ましい。組成としては、ANが好ましくは93〜100モル%であり、ANと共重合可能な単量体を7モル%以下なら共重合させてもよいが、共重合成分の連鎖移動定数がANより小さく、必要とするMwを得にくい場合は、共重合成分の量をなるべく減らすことが好ましい。
ANと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。また、A成分は実質的に直鎖状のPANであることが好ましく、多官能のビニル基を有する単量体などを用いないことが好ましい。分岐や架橋構造は、簡便には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法−多角度光散乱光度(GPC―MALLS)法で求められる分子量と回転半径の関係が直鎖状PANのその関係と同一かどうかで判断できる。共有結合や水素結合、イオン結合による架橋構造を有するものは分子量の割に回転半径が小さくなる傾向を示し、本発明では、直鎖状PANに含めない。
A成分であるPAN系重合体を製造するための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法などから選択することができるが、ANや共重合成分を均一に重合する目的からは、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いて重合する場合、溶媒としては、例えば、塩化亜鉛水溶液、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPANが可溶な溶媒が好適に用いられる。必要とするMwを得にくい場合は、連鎖移動定数の大きい溶媒、すなわち、塩化亜鉛水溶液による溶液重合法、あるいは水による懸濁重合法も好適に用いられる。
本発明で好適に用いられるB成分であるPAN系重合体の組成としては、ANが好ましくは93〜100モル%であり、ANと共重合可能な単量体を7モル%以下なら共重合させてもよいが、共重合成分量が多くなるほど耐炎化工程で共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する。
ANと共重合可能な単量体としては、耐炎化を促進する観点から、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
B成分であるPAN系重合体を製造するための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法などから選択することができるが、ANや共重合成分を均一に重合する目的からは、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いて重合する場合、溶媒としては、例えば、塩化亜鉛水溶液、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPANが可溶な溶媒が好適に用いられる。中でも、PANの溶解性の観点から、ジメチルスルホキシドを用いることが好ましい。これらの重合に用いる原料は、全て濾過精度1μm以下のフィルター濾材を通した後に用いることが好ましい。
前記したPAN系重合体を、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPAN系重合体が可溶な溶媒に溶解し、紡糸溶液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いられる溶媒と紡糸溶媒を同じものにしておくと、得られたPAN系重合体を分離し紡糸溶媒に再溶解する工程が不要となる。
紡糸溶液における重合体濃度は、5〜30重量%の範囲であることが好ましく、14〜25重量%であることがより好ましく、18〜23重量%であることが最も好ましい。重合体濃度が5重量%未満では溶媒使用量が多くなり、口金単孔からの紡糸溶液の吐出量が増加し、印加される剪断速度が大きくなることがある。一方、重合体濃度が30重量%を超えると絡み合いが多くなることで絡み合い間分子量が低下し、小さい剪断速度で分子量が低下しやすくなることがある。紡糸溶液の重合体濃度は、使用する溶媒量により調製することができる。
本発明において重合体濃度とは、PAN系重合体の溶液中に含まれるPAN系重合体の重量%である。具体的には、PAN系重合体の溶液を計量した後、PAN系重合体を溶解せずかつPAN系重合体溶液に用いる溶媒と相溶性のあるものに、計量したPAN系重合体溶液を脱溶媒させた後、PAN系重合体を計量する。重合体濃度は、脱溶媒後のPAN系重合体の重量を、脱溶媒する前のPAN系重合体の溶液の重量で割ることにより算出する。
また、45℃の温度における紡糸溶液の粘度は、15〜200Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜150Pa・sの範囲であることがより好ましく、30〜100Pa・sの範囲であることが最も好ましい。溶液粘度が15Pa・s未満では、紡糸糸条の賦形性が低下するため、口金から出た糸条を引き取る速度、すなわち可紡性が低下する傾向を示す。また、溶液粘度は200Pa・sを超えると絡み合いが多くなり、分子量低下しやすくなる傾向を示す。紡糸溶液の粘度は、重量平均分子量と重合体濃度、溶媒の種類により制御することができる。
45℃の温度におけるPAN系重合体溶液の粘度は、B型粘度計により測定することができる。具体的には、ビーカーに入れたPAN系重合体溶液を、45℃の温度に温度調節された温水浴に浸して調温した後、B型粘度計として、例えば、(株)東京計器製B8L型粘度計を用い、ローターNo.4を使用し、PAN系重合体溶液の粘度が0〜100Pa・sの範囲はローター回転数6r.p.m.で測定し、またそのPAN系重合体溶液の粘度が100〜1000Pa・sの範囲はローター回転数0.6r.p.m.で測定する。
さらにこの重合体溶液を濾過精度が0.5〜10μmのフィルターを用いて濾過して用いることが好ましい。
本発明では、上述のようにして得た紡糸溶液を、乾式、湿式、または乾湿式紡糸法により紡糸することにより、炭素繊維前駆体繊維を製造する。なかでも特に、乾湿式紡糸法は、前記した特定の分子量分布を有するPAN系重合体の特性を発揮させるため、好ましく用いられる。また、紡糸ドラフト率を高められる点でも乾湿式紡糸法が好ましく、紡糸口金からの吐出線速度を低下させることができる。
本発明では、口金単孔からの重合体吐出量を0.65〜3mg/秒として紡糸する。すなわち、最終的に得られる前駆体繊維は、その単繊維繊度が1dtexのとき、1分間当たり390〜1800mであり、紡糸速度は当業者の一般的なレベルより高い。口金単孔からの重合体吐出量を0.8〜3mg/秒とすることが好ましい。
本発明では、かかる高紡糸速度で紡糸口金から吐出時に紡糸溶液に印加する最大剪断速度を2000〜17000s−1とする。かかる紡糸口金から吐出時に紡糸溶液に印加する最大剪断速度は好ましくは、2000〜8000s−1、より好ましくは、2000〜6000s−1とする。円筒形の流路を通る場合、印加する最大剪断速度SR(s−1)は、SR=4Q/πR=4V/Rという式で計算される。ここで、Q(mm/秒)は重合体溶液吐出量、V(mm/秒)は吐出線速度、R(mm)は最小の口金孔の半径である。流路の断面積が、長方形でも、ひし形でも、三角形でも一般的な計算式があり、それに従って計算すればよい。最大剪断速度が2000s−1未満であると本発明の効果が飽和するばかりか、吐出時の粘度が高くなる。また、最大剪断粘度が17000s−1を超えるとメルトフラクチャーや紡糸溶液中に含まれる重合体の分子量低下が発生して、製糸工程および炭素繊維の焼成工程のプロセス安定性が低下する。
本発明では、口金単孔からの溶液吐出量を3〜12mm/秒とすることが好ましく、より好ましくは、5〜12mm/秒である。上式の通り、剪断速度は重合体溶液としての吐出量あるいは吐出線速度が直接の影響を与える。重合体吐出量は設定量であり、溶液吐出量は、重合体濃度によって制御されるため、上述の通り重合体濃度を設定し、かつ、なるべく高濃度とすることが溶液吐出量を低下させ、剪断速度を低下させる観点から好ましい。溶液吐出量が3mm/秒未満であると本発明の効果が飽和することがあり、また、溶液吐出量が12mm/秒を超えると剪断速度が高まりやすくなる。
本発明において、口金孔は、その孔形状が、断面積の割に剪断速度を増加させないために円形であることが好ましく、孔形状が円形である場合、口金孔の最小の孔径は、0.13mm〜0.4mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.25〜0.4mmがさらに好ましい。かかる孔径が0.13mm未満であると剪断速度が大きくなることが多く、紡糸溶液が与えられる剪断速度を小さくすることが出来るので、かかる孔径は小さいほど好ましい。ただし、かかる孔径が0.4mmを超えると紡糸溶液が与えられる剪断速度が低くなりすぎて吐出が安定しないことがある。上述の式の通り剪断速度は口金孔径により変化するため、剪断速度を制御するために最も有効であり、大きくすることが剪断速度低下につながる。一般的には、紡糸速度を上げようと吐出量を上げると剪断速度が高まり、剪断速度が高まると剪断粘度が低下し、可紡性が低下するため、口金孔径を小さくして吐出線速度を上げて紡糸ドラフト率を低下させることで可紡性低下を補うことがあるが、本発明では逆効果である。また、湿式紡糸においては、紡糸ドラフト率を上げにくいので、口金孔径を大きくすることが困難である。
本発明において口金孔の孔径は、紡糸口金面を顕微鏡観察することにより測定することができる。孔径が異なる孔を有する場合には、剪断速度の最も大きくなる孔が問題となり、1つでも異常な単繊維を含むことは好ましくないため、最小の孔径を用いる。
また、紡糸口金の平均孔径(D)と平均孔長(L)の比であるL/Dの最大値が1〜3であることが好ましい。L/Dが1未満であると吐出が安定しないことがあるが、L/Dは大きいほど剪断印加時間が長くなり、分子量低下が発生しやすいのでL/Dが3以下であることが好ましい。孔径に対してはL/Dの影響は小さく、外周部分は孔長を長くするなどの手段も活用でき、最小値よりも平均的な値が全体の特性を決めるため、平均値を用いる。
吐出直後の紡糸溶液のふくらみ、いわゆるバラス効果を抑制するためには、最小孔径を経た後に徐々に孔を広げる逆テーパー加工をすることも好ましい。紡糸口金孔に紡糸溶液が導入される際に伸長流動における伸長歪みを低減するためにテーパー加工やそれを段階的に行うことや角をなくすことをすることが、本発明で用いる伸長粘度の歪み硬化の強い紡糸溶液との組み合わせで効果を発揮する。すなわち、口金からの吐出直後の伸長領域で歪み硬化させ、吐出前に伸長粘度を増大させて凝固張力を増加させないために有効である。
また、口金の孔数は、500〜24000個であることが好ましく、より好ましくは、3000〜12000個である。孔数が500個より少ない場合、生産性が低下し、3000個より少ないと口金錘間の差が出ることがある。一方、孔数が24000個を超える場合には、口金外径が大きすぎて、口金の外層の孔と内層の孔で吐出むらや外層の孔から吐出された紡糸溶液の斜行が発生することがあり、均質な前駆体繊維が得られないことがある。
紡糸溶液の紡糸ドラフト率は2.5〜15の範囲であることが好ましい。ここで紡糸ドラフト率とは、紡糸糸条が口金を離れて最初に接触する駆動源を持ったローラーの表面速度(凝固糸の巻き取り速度)を、口金からの吐出線速度で割った値をいう。紡糸ドラフトが2.5未満では、望む前駆体繊維の繊度を得るために口金孔径を小さくせざるを得ないことがあり、剪断速度を低下させる観点からは紡糸ドラフトが15以下で十分である。
本発明において、凝固浴には、PAN系重合体溶液の溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記のPAN系重合体を溶解せず、かつPAN系重合体溶液に用いた溶媒と相溶性があるものが好ましく、具体的には、水を使用することが好ましい。凝固浴としての条件は、凝固糸における単繊維の断面ができるだけ真円に近くなるように制御することが好ましく、溶媒の濃度は、臨界浴濃度といわれる濃度以下であることが好ましい。溶媒の濃度が高いとその後の溶媒洗浄工程が長くなり、生産性が低下する。例えば、溶媒にジメチルスルホキシドを用いた場合は、ジメチルスルホキシド水溶液の濃度を5〜55重量%とするのが好ましく、5〜30重量%とすることがより好ましい。凝固浴の温度は、繊維側面ができるだけ平滑となるように制御することが好ましく、具体的には、−10〜30℃とすることが好ましく、−5〜5℃とすることがより好ましい。
紡糸溶液を凝固浴中に導入して凝固させ糸条を形成して凝固糸とした後、駆動源を持ったローラーで引き取る。引き取られた凝固糸は、その後、通常、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を経て、炭素繊維前駆体繊維が得られる。また、上記の工程に乾熱延伸工程や蒸気延伸工程を加えてもよい。凝固後の糸条は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。浴中延伸は、通常、30〜98℃の温度に温調された単一または複数の延伸浴中で行うことが好ましい。そのときの延伸倍率は、1〜5倍であることが好ましく、1〜3倍であることがより好ましい。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、延伸された繊維糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。シリコーン油剤は、耐熱性の高いアミノ変性シリコーン等の変性されたシリコーンを含有するものを用いることが好ましい。
乾燥工程としては、例えば、乾燥温度が70〜200℃で乾燥時間が10秒から200秒の乾燥条件が好ましい結果を与える。生産性の向上や結晶配向度の向上として、乾燥工程後に加熱熱媒中で延伸することが好ましい。加熱熱媒としては、例えば、加圧水蒸気あるいは過熱水蒸気が操業安定性やコストの面で好適に用いられ、延伸倍率は通常1.5〜10倍である。
このようにして得られた炭素繊維前駆体繊維の単繊維繊度は、0.6〜1.5dtexであることが好ましく、0.9〜1.1dtexであることがより好ましい。単繊維繊度が小さすぎると、生産性が低下するばかりか、ローラーやガイドとの接触による糸切れ発生などにより、製糸工程および炭素繊維の焼成工程のプロセス安定性が低下することがある。一方、単繊維繊度が大きすぎると、耐炎化後の各単繊維における内外構造差が大きくなり、続く炭化工程でのプロセス性低下や、得られる炭素繊維の引張強度および引張弾性率が低下することでコストパフォーマンスが低下することがある。
本発明で得られる前駆体繊維の単繊維の原子間力顕微鏡により測定される表面積比 、すなわち平滑性は1〜1.03が好ましい。表面積比1.03を越える、すなわち表面凹凸が大きいと耐炎化工程において前駆体繊維束としての集束性が低下し、工程通過性が低下することがある。
得られる炭素繊維前駆体繊維は、通常、連続繊維の形状である。また、その繊維束1糸条を構成する単繊維の本数は、好ましくは49000〜100000本であり、より好ましくは55000〜65000本である。得られる炭素繊維前駆体繊維は、均質であるために1糸条あたりの単繊維の本数は、焼成工程における生産性の向上の目的からは多い方が好ましく、また安定して焼成通過することが可能である。かかる観点から、繊維束1糸条を構成する単繊維の本数が多いほど、本発明の効果が更に顕著となるが、繊維束1糸条を構成する単繊維の本数が100000本を越えると束内部まで均一に耐炎化処理できない場合があることから、上記半意図することが好ましい。単繊維数は、紡糸口金孔数と複数の錘から得られた糸条を合糸する数で制御できる。口金孔数は多いほどコストパフォーマンスが高いが、吐出の安定性からは合糸する数を増やすとよい。合糸するのは、凝固浴を出た後から耐炎化までの間であれば構わないが、凝固浴を出た後で合糸することが設備生産性の観点で好ましい。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明では、前記のようにして得た炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において延伸比0.8〜1.2延伸しながら耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において延伸比0.95〜1.2で延伸しながら予備炭化する予備炭化工程と、予備炭化工程で得られた繊維を1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において延伸比0.96〜1.05で延伸しながら炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維を得ることができる。
本発明において、耐炎化とは、空気を4〜25mol%以上含む雰囲気中において、200〜300℃で熱処理する工程をいう。通常、紡糸工程と耐炎化工程以降は非連続であるが、紡糸工程と耐炎化工程の一部もしくは全てを連続的に行っても構わない。
耐炎化する際の延伸比は、0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1とする。耐炎化する際の延伸比が0.8を下回ると、耐炎化工程の張力が低下し、耐炎化炉スリットなどで擦過を起こすことがあり、得られる炭素繊維の単繊維強度分布が広がる。また、耐炎化する際の延伸比が1.2を超えると、延伸張力が高すぎてローラー等に圧迫されて圧痕が残ることや欠陥が拡大することがある。また、耐炎化延伸張力が0.1〜0.25g/dtexとすることが好ましい。延伸張力が0.1g/dtex未満のときは、得られる炭素繊維の単繊維強度分布が広がり、0.25g/dtexを越えるときは、得られる炭素繊維の単繊維強度分布が広がりやすくなる。
耐炎化の処理時間は、10〜100分の範囲で適宜選択することができるが、続く予備炭化の生産安定性、および、得られる炭素繊維の力学物性向上の目的から、得られる耐炎化繊維の比重が1.3〜1.38の範囲となるように設定することが好ましい。
耐炎化工程において、加熱する形態は、電気ヒーターやスチーム等で加熱した空気の中に前駆体繊維を通過させるテンターや赤外線加熱装置のような非接触式と、プレート式ヒーターやドラム式ヒーター等のような接触式のいずれもが用いられるが、熱伝達効率の点で、加熱の少なくとも一部を接触式加熱方式とすることが好ましく、加熱の全部を接触式加熱方式とすることがより好ましい。予備炭化、および、炭化は、不活性雰囲気中で行なわれるが、用いられる不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、および、キセノンなどが用いられる。経済的な観点からは、窒素が好ましく用いられる。
予備炭化の温度は、300〜800℃とする。なお、予備炭化における昇温速度は、500℃/分以下に設定されることが好ましい。
予備炭化を行う際の延伸比は、0.95〜1.2、好ましくは1.0〜1.1とする。予備炭化を行う際の延伸比が0.95を下回ると、得られる予備炭化繊維の配向度が不十分となり、炭素繊維のストランド引張弾性率が低下する。また、予備炭化を行う際の延伸比が1.2を超えると、延伸張力が高すぎてローラー等に圧迫されて圧痕が残ることや欠陥が拡大することがある。
炭化の温度は、1,000〜2,000℃、好ましくは1,200〜1800℃、より好ましくは1,300〜1,600℃とする。一般に炭化の最高温度が高いほど、ストランド引張弾性率は高まるものの、引張強度は1,500℃付近で極大となるため、両者のバランスを勘案して、炭化の温度を設定する。
炭化を行う際の延伸比は、0.96〜1.05、好ましくは0.97〜1.05、より好ましくは0.98〜1.03とする。炭化を行う際の延伸比が0.96を下回ると、得られる炭素繊維の配向度や緻密性が不十分となり、ストランド引張弾性率が低下する。また、炭化を行う際の延伸比が1.05を超えると、延伸張力が高すぎてローラー等に圧迫されて圧痕が残ることや欠陥が拡大することがある。
より弾性率が高い炭素繊維を所望する場合には、炭化工程に続き黒鉛化を行うこともできる。黒鉛化工程の温度は2000〜2800℃であるのがよい。また、その最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて適宜選択して使用される。黒鉛化工程における延伸比は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて、毛羽発生など品位低下の生じない範囲で適宜選択するのがよい。
得られた炭素繊維はその表面改質のため、電解処理することができる。電解処理に用いられる電解液には、硫酸、硝酸および塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムのようなアルカリまたはそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維の炭化度に応じて適宜選択することができる。
電解処理により、得られる繊維強化複合材料において炭素繊維マトリックスとの接着性が適正化することができ、接着が強すぎることによる複合材料の脆性的な破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないという問題が解消され、得られる繊維強化複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
電解処理の後、炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理を施すこともできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂等との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明により得られる炭素繊維は、プリプレグとしてオートクレーブ成形、織物などのプリフォームとしてレジントランスファーモールディングで成形、およびフィラメントワインディングで成形するなど種々の成形法により、航空機部材、圧力容器部材、自動車部材、釣り竿およびゴルフシャフトなどのスポーツ部材として好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例で用いた測定方法を次に説明する。
<各種分子量:Mz、Mw、Mn>
測定しようとする重合体が濃度0.1重量%でジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解した検体溶液を作製する。作製した検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量分布曲線を求め、Mz、MwおよびMnを算出する。測定は3回行い、Mz、Mw、Mnの値を平均して用いる。
・カラム :極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速 :0.5ml/分
・温度 :75℃
・試料濾過 :メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量 :200μl
・検出器 :示差屈折率検出器
Mwは、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも6種類用いて、溶出時間―分子量の検量線を作成し、その検量線上において、該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求める。
本実施例では、GPC装置として(株)島津製作所製CLASS−LC2010を、カラムとして東ソー(株)製TSK−GEL−α―M(×2)+東ソー(株)製TSK−guard Column αを、ジメチルホルムアミドおよび臭化リチウムとして和光純薬工業(株)製を、メンブレンフィルターとしてミリポアコーポレーション製0.45μm−FHLP FILTERを、示差屈折率検出器として(株)島津製作所製RID−10AVを、検量線作成用の単分散ポリスチレンとして、分子量184000、427000、791000および1300000、1810000、4240000のものを、それぞれ用いた。
<前駆体繊維表面積比>
評価すべき前駆体繊維あるいは耐炎化繊維単繊維を数本試料台にのせ、両端を接着液(例えば、文具の修正液)で固定したものをサンプルとし、原子間力顕微鏡を用いて3次元表面形状の像を得る。本実施例においては、原子間力顕微鏡として、セイコーインスツルメンツ(株)製、SPI3800N/SPA−400を用い、下記条件にて3次元表面形状の像を得た。
探針:シリコンカンチレバー(セイコーインスツルメンツ製、DF−20)
測定モード:ダイナミックフォースモード(DFM)
走査速度:1.5Hz
走査範囲:3μm×3μm
分解能:256ピクセル×256ピクセル
得られた3次元表面形状の像は、繊維断面の曲率を考慮し、付属のソフトウエアにより、画像の全データから最小二乗法により1次平面を求めてフィッティングし、面内の傾きを補正する1次傾き補正を行い、続いて同様に2次曲線を補正する2次傾き補正を行った後、付属のソフトウエアにより表面粗さ解析を行い、表面積比を算出した。測定は、異なる単繊維10本をランダムにサンプリングし、単繊維1本につき、各1回ずつ、計10回行い、その平均値を値とした。
<フローテスト>
フローテスター測定機CFT−500D((株)島津製作所製)を使用して、35℃に保温された測定室に泡を含まないように予め35℃に保温された測定する紡糸溶液を投入する。9.81×105のシリンダー圧、オリフィス孔径1.0mm、孔長10mmとし、測定温度35℃で一定とし、負荷荷重を5〜405kgまで変更して押出速度の測定を行った。押出開始から3〜14秒の範囲のデータを採用し、付属のソフトウエアで剪断速度を計算した。また、押出後、オリフィス孔内にのみ残存している紡糸溶液を採取し、GPC測定を行った。
<炭素繊維束の引張強度>
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃の温度で30分硬化させて作製する。また、炭素繊維のストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を引張強度とする。本実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製“ベークライト”(登録商標)ERL4221を用いた。
[比較例1]
AN100重量部、イタコン酸1重量部、ラジカル開始剤として2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(以下、AIBNと略記)0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部をジメチルスルホキシド370重量部に均一に溶解し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmとなるまで窒素置換した後、撹拌しながら次の(1)〜(4)の熱処理を行い、溶液重合法により重合して、PAN系重合体溶液を得た。
(1)30℃から60℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(2)60℃の温度で4時間保持
(3)60℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(4)80℃の温度で6時間保持
得られたPAN系重合体溶液の溶媒に対する重合体濃度は、20重量%弱であった。
得られたPAN系重合体溶液を、重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基を重合体に導入し、紡糸溶液を得た。
得られた紡糸溶液を用い、フローテストを行った。結果を表1にまとめて示す。
また、得られた紡糸溶液を、40℃の温度で、孔数500、口金孔径0.12mmの紡糸口金から吐出して垂直に自由落下させ、その様子を倍率200倍のマイクロスコープで観察した。吐出量を上げて剪断速度を45000s−1まで印加してもメルトフラクチャーは観察されなかった。
得られた紡糸溶液を用い、孔数12,000であり、かつ、表2に示す紡糸口金・吐出条件で紡糸し、3℃の温度にコントロールした20重量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により紡糸し凝固糸とした。このときの紡糸ドラフトを2.5倍に調節し凝固糸を得た。乾燥した凝固糸の単繊維繊度は10.5dtexであった。このようにして得られた凝固糸を水洗した後、90℃の温水中で3倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して浴中延伸糸を得た。このようにして得られた浴中延伸糸を165℃の温度に加熱したローラーを用いて30秒間乾燥を行い、5倍のスチーム延伸倍率でスチーム延伸を行い、単繊維繊度1dtexの前駆体繊維を得た。
次に、得られた前駆体繊維を合糸し、繊維束1糸条を構成する単繊維の本数60,000とした上で、240〜260℃の温度の温度分布を有する空気中において延伸比1.0で100分間耐炎化処理し、耐炎化繊維を得た。続いて、得られた耐炎化繊維を300〜700℃の温度の温度分布を有する窒素雰囲気中において、延伸比1.1で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1,500℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.96に設定して炭化処理を行い、連続した炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束のストランド物性(引張強度)は、5.4GPaであった。
[実施例1]
AN100重量部、イタコン酸1重量部、およびジメチルスルホキシド130重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmになるまで窒素置換した後、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.002重量部を投入し、撹拌しながら下記の条件(重合条件Aと呼ぶ。)の熱処理を行い、溶液重合法により重合してPAN系重合体の一次溶液を得た。
重合条件A
・ 70℃の温度で2.5時間保持
・ 70℃から30℃へ降温(降温速度120℃/時間)
得られたPAN系重合体の一次溶液を水に注いで重合体を沈殿させ、それを80℃の温水で2時間洗浄後、70℃の温度で4時間乾燥して、乾燥重合体を得た。得られた乾燥重合体のMz、MwおよびMnは、それぞれ580万、340万および140万であった。また、得られたPAN系重合体の一次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、1.5重量%であった。
次に、得られた一次溶液中に残存する未反応ANを重合させるために、その一次溶液中に、ジメチルスルホキシド240重量部、ラジカル開始剤としてAIBN 0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部を計量導入し、反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmとなるまで窒素置換した後、さらに撹拌しながら下記の条件(重合条件Bと呼ぶ。)の熱処理を行い、残存する未反応単量体を溶液重合法により重合してPAN系重合体の二次溶液を得た
重合条件B
(1)30℃から60℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(2)60℃の温度で4時間保持
(3)60℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(4)80℃の温度で6時間保持
得られた二次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、20重量%弱であった。
得られた二次溶液を用いて、それに含まれるPAN系重合体の各種分子量を測定した。次いで、得られた二次溶液を用いて重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基を重合体に導入し、紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液を用い、フローテストを行った。結果を表1にまとめて示す。
また、得られた紡糸溶液を、40℃の温度で、孔数500、口金孔径0.12mmの紡糸口金から吐出して垂直に自由落下させ、その様子を倍率200倍のマイクロスコープで観察した。吐出量を上げて剪断速度を17000s−1まで印加するとわずかにメルトフラクチャーは観察され、剪断速度を45000s−1まで増加させていくと徐々にメルトフラクチャーが強くなり、最終的には顕著なメルトフラクチャーが観察できた。
次いで、使用する紡糸溶液を、上記のようにして得られた紡糸溶液に変更した以外は、比較例1と同様にして炭素繊維束を得た。
[実施例2]
口金孔のL/Dを3から1に変更した以外は、実施例1と同様にして前駆体繊維を得たが、実施例1と同様に安定してサンプリングできた。
[実施例3]
口金孔のL/Dを3から7に変更した以外は、実施例1と同様にして前駆体繊維を得たが、毛羽が若干発生した。
[実施例4〜9]
口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。剪断速度が低い実施例5.4.6の順に毛羽なく、安定してサンプリングできた。
[実施例10]
AN100重量部、イタコン酸1重量部、およびジメチルスルホキシド130重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmになるまで窒素置換した後、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.002重量部を投入し、撹拌しながら下記の条件(重合条件Aと呼ぶ。)の熱処理を行い、溶液重合法により重合してPAN系重合体の一次溶液を得た。
重合条件A
・ 70℃の温度で2時間保持
・ 70℃から30℃へ降温(降温速度120℃/時間)
得られたPAN系重合体の一次溶液を水に注いで重合体を沈殿させ、それを80℃の温水で2時間洗浄後、70℃の温度で4時間乾燥して、乾燥重合体を得た。得られた乾燥重合体のMz、MwおよびMnは、それぞれ580万、340万および140万であった。また、得られたPAN系重合体の一次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、1.5重量%であった。
次に、得られた一次溶液中に残存する未反応ANを重合させるために、その一次溶液中に、ジメチルスルホキシド240重量部、ラジカル開始剤としてAIBN 0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部を計量導入し、反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmとなるまで窒素置換した後、さらに撹拌しながら下記の条件(重合条件Bと呼ぶ。)の熱処理を行い、残存する未反応単量体を溶液重合法により重合してPAN系重合体の二次溶液を得た
重合条件B
(1)30℃から60℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(2)60℃の温度で4時間保持
(3)60℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(4)80℃の温度で6時間保持
得られた二次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、20重量%弱であった。
得られた二次溶液を用いて、それに含まれるPAN系重合体の各種分子量を測定した。次いで、得られた二次溶液を用いて重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基を重合体に導入し、紡糸溶液を得た。
使用する紡糸溶液を上記のようにして得られた紡糸溶液に変更するとともに、口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。
[実施例11]
重合条件Aの(1)における保持時間を1.5時間に変更した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維束を得た。なお、一次溶液から実施例1と同様の手順で得た乾燥重合体は、Mz、MwおよびMnが、それぞれ580万、340万および140万であり、一次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、0.7重量%であり、二次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、20重量%弱であった
[実施例12]
反応容器内の空間部を窒素置換する際の酸素濃度を100ppmに変更するとともに、重合条件Aの(1)における保持温度を65℃に変更した以外は、実施例7と同様にして炭素繊維束を得た。なお、一次溶液から実施例1と同様の手順で得た乾燥重合体は、Mz、MwおよびMnが、それぞれ680万、500万および330万であり、一次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、2.1重量%であり、二次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、20重量%弱であった。
[実施例13]
使用する紡糸溶液を実施例10で得られた紡糸溶液に変更するとともに、口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。
[実施例14]
使用する紡糸溶液を実施例11で得られた紡糸溶液に変更するとともに、口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。
[実施例15]
使用する紡糸溶液を実施例12で得られた紡糸溶液に変更するとともに、口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は実施例4と同様にして炭素繊維束を得た。
[比較例2]
表2に示す口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は実施例2と同様にして炭素繊維束を得た。剪断速度が大きかったので、吐出が不安定となり、1回/日の割合で糸切れが起こった。
[比較例3]
口金・吐出条件を表2に示すとおりに変更した以外は実施例2と同様にして炭素繊維束を得た。吐出量が少なかったので、若干毛羽が出た以外は安定してサンプリングできたが、設備生産性の観点から不満足なものであった。
上記した実施例および比較例における前駆体繊維製造条件および、得られた炭素繊維の引張強度などの結果を、表2にまとめて示す。
Figure 0005146394
Figure 0005146394
本発明では、高速紡糸を行うことの可能なPAN系重合体を、安定して吐出することにより、生産性を損なうことなく高品位な前駆体繊維を製造することができ、その得られた前駆体繊維を用いることにより、焼成工程でも安定して高品位、かつ、高強度な炭素繊維の製造することができ有用である。

Claims (7)

  1. Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比であるMz/Mwが2以上であるポリアクリロニトリル系重合体が溶媒に溶解されてなる紡糸溶液を、口金単孔当たりの重合体吐出量を0.65〜3mg/秒として口金孔から吐出して炭素繊維前駆体繊維を得るに際し、口金孔からの吐出時に紡糸溶液に印加する最大剪断速度を2000〜17000s−1とする炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  2. 口金単孔当たりの溶液吐出量を3〜12mm/秒とする、請求項1に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  3. 口金孔は、最小の孔径が0.13〜0.4mmである、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  4. 口金孔は、平均孔径(D))と平均孔長(L)の比であるL/Dが1〜3である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  5. 前記ポリアクリロニトリル系重合体は、Mwが10万〜100万であり、Mz/Mwが2.5〜10である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  6. 炭素繊維前駆体繊維の単繊維数が49000〜100000本である、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、予備炭化工程で得られた繊維を1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維を得る炭素繊維の製造方法。
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