JP2009079343A - 炭素繊維用前駆体繊維および炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフトを高めることができるPAN系重合体溶液を用いることにより、生産性を損なうことなく毛羽立ちの少ない高品位な炭素繊維用前駆体繊維を製造する方法を提供すると共に、上記の高品位な炭素繊維用前駆体繊維を用いた高性能でかつ高品位な炭素繊維を焼成工程でも安定して製造することができる方法を提供する。
【解決手段】
ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液を乾湿式紡糸するに際し、該重合体溶液の紡糸ドラフトを8〜100の範囲に設定して紡糸し、乾燥させた凝固糸条の単繊維繊度が0.4〜2.3dtexの凝固糸を得、次いで該凝固糸を延伸して単繊維繊度が0.4〜1.2dtexの延伸糸とすることを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭素繊維用前駆体繊維の製造方法と、その製造方法で得られた炭素繊維用前駆体繊維を用いてなる炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車、土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されつつあり、更なる生産性の向上や生産安定化だけでなく、炭素繊維の高性能化の要請も高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと記述することがある。)系炭素繊維は、PAN系重合体溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して前駆体繊維を得た後、それを200〜400℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、それを少なくとも1,000℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって、工業的に製造されている。
生産性向上は、PAN系炭素繊維用前駆体繊維(以下、前駆体繊維と記述することがある。)の紡糸、耐炎化あるいは炭素化のいずれの観点からも行われている。なかでも前駆体繊維の生産性向上は、次に示す問題から困難であった。すなわち、前駆体繊維を得る際の紡糸においては、PAN系重合体溶液特性にともなう限界紡糸ドラフトと、その凝固構造に伴う限界延伸倍率によって生産性が制限されている。生産性を向上させるために紡糸速度を高めると延伸性低下が起こるため生産が不安定化しやすく、紡糸速度を下げると生産は安定化するものの生産性は低下するため、生産性の向上と安定化の両立が困難であるという問題があった。
前駆体繊維の製造方法の一つである乾式紡糸法は、紡糸溶液(重合体溶液)を紡糸口金孔から高温度の気体雰囲気中に吐出して溶媒を蒸発させて濃縮、固化させる方法であり、そのときの引き取り速度は溶媒の蒸発律速となるため、引き取り速度の高速化に伴い長大な紡糸筒が必要になるなどの欠点がある。
湿式紡糸法は、紡糸溶液を紡糸口金孔から凝固浴中に吐出させる方法である。この湿式紡糸法では、紡糸原液が紡糸口金孔から吐出された直後から凝固が進行するため、引き取り速度の高速化に従って実質の紡糸ドラフトが高くなるが、紡糸口金面で糸切れが発生するという問題があるために、引き取り速度を高く設定することには限界がある。そこで、凝固浴濃度を臨界濃度近くまで上げ、極めて緩慢な凝固条件を設定して紡糸ドラフトを高める技術が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案では凝固浴の高濃度化に伴い入念な水洗工程が必要となるため、引き取り速度を上げることができないというのが実状である。
乾湿式紡糸法は、紡糸溶液が一旦空気中(エアーギャップ)に吐出されてから凝固浴中に導かれる方法であり、実質的な紡糸ドラフトはエアギャップ内にある原液流で吸収され、高速紡糸が可能であることから、これまでいくつかの提案がなされている。例えば、流下式凝固浴を用いて、浴抵抗をできるだけ軽減することにより引き取り速度を向上させる技術が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この技術では、引き取り速度を大幅に向上できるものの、(1)特殊形状の紡糸口金を用いるものであるため細繊度の繊維が得られないこと、(2)凝固浴の構造が複雑で工業的に実現できる技術でないこと、および(3)流下筒出のスリットと通過する糸束の太さ等の関係で操作や操業性が悪化するなどの課題があった。
また紡糸溶液の重合体濃度を制御することにより、紡糸溶液の粘度を下げ、ろ過操作における操作性を良好にし、紡糸ドラフトを向上させる技術が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案によれば、紡糸ドラフトが10と向上効果が認められるものの、(1)重合体濃度が低いために溶剤使用量が多くなり経済的でなく、そして(2)凝固浴内での凝固速度を低下せしめ、内部にボイドが生じて緻密な構造が得られず、さらには、(3)紡糸口金の孔径を0.3mmにすることにより紡糸ドラフトを高めており、紡糸ドラフトを高めつつ凝固糸の単繊維繊度を低下させる技術的思想はなく、実質的には凝固糸の単繊維繊度を4dtex程度までしか低下させることはできないという課題がある。
さらに高粘度の紡糸溶液を用い、特定のエアギャップを設けることによって紡糸ドラフトを5〜50に設定する技術が提案されているが(特許文献4参照。)、この提案は、羊毛様の優れた風合いと機械的性能を低下させることなく、湿熱特性を保持させようとしたものであり、凝固糸繊度を低下させる技術的思想はなく、実質的には紡糸口金の孔径を0.3mm、L/Dを15とした紡糸口金を用いることが必要であり、凝固糸の単繊維繊度は11dtex程度までしか低下させることはできないという課題がある。またこの提案では、紡糸口金の孔数も上げられないため、多フィラメントで焼成することがコストの面から必要な炭素繊維用としては不適である。
また一般に、ポリアクリロニトリル系繊維の製造工程は、紡糸、凝固、水洗、浴延伸、油剤付与、乾燥、および乾熱延伸もしくは蒸気延伸の各工程で構成される。高性能炭素繊維用として、好ましい高配向度のポリアクリロニトリル系繊維を得るためには延伸する必要があり、従来の延伸は主に浴延伸後の延伸工程で行われている。そのため、衣料等の分野では、単純に紡糸口金孔径を小さくすることにより単繊維繊度を細くする技術が提案されている(特許文献5および特許文献6参照。)。この技術によれば、紡糸口金孔径が小さいために凝固糸繊度は小さくすることはできるが、紡糸ドラフトを高めることはできず、凝固糸の配向度を高めることができない。また、凝固糸をさらに延伸するために、炭素繊維としては適さない繊度に低下してしまうという課題がある。
また一般に、重合体の溶融紡糸などの溶融成形において、大きい伸長変形下で粘度を高くすることが不安定流動を抑制する点で有効であることが知られている。適用事例は種々あるが、ポリスチレンの主鎖に分岐構造を導入する方法、超高分子量の重合体を少量加える方法、およびポリプロピレンにジエンを共重合する方法などが挙げられる。紡糸用重合体として、このような重合体を用いた場合、曳糸性が向上することが知られている。しかしながら、PAN系重合体の溶液紡糸への適用は、ほとんど行われてこなかったのが実状である。
このように、紡糸ドラフトを高める技術や凝固糸の単繊維繊度を低下させる技術は、それぞれ独立に存在していたが、それらを両立させる技術はなく、また、配向度を高めることが重要な炭素繊維用としてこのような条件設定が好ましいと考えてこられなかった。
本発明者らは、従来技術の有する上記問題点に鑑み、高性能な炭素繊維を生産性よく効率的に得ることに関して鋭意検討の結果、本発明に達した。
特開平2−14012号公報 特開平2−289121号公報 特開昭64―77618号公報 特開平11−107034号公報 特許第3020659号公報 特許第3892132号公報
そこで本発明の目的は、紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフトを高めることができるPAN系重合体溶液を用いることにより、生産性を損なうことなく毛羽立ちの少ない高品位な炭素繊維用前駆体繊維を製造する方法を提供することにある。また本発明の他の目的は、上記の高品位な炭素繊維用前駆体繊維を用いた高性能かつ高品位な炭素繊維を焼成工程でも安定して製造することができる方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法は次の構成を有するものである。
すなわち、本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液を乾湿式紡糸するに際し、重合体濃度が6〜25重量%であり、かつ、伸長時破断時間が20秒以上であるポリアクリロニトリル系重合体溶液を、平均孔径が0.05〜0.18mmの紡糸口金から、該重合体溶液の紡糸ドラフトが8〜100の範囲となるように設定制御にして吐出巻き取り、紡糸して、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が0.4〜2.3dtexの凝固糸を得、次いで該凝固糸を延伸倍率1〜5倍で延伸して単繊維繊度が0.4〜1.2dtexの延伸糸とすることを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維の製造方法である。

本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記のポリアクリロニトリル系重合体の重合体濃度は15〜25重量%である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記のポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル100モル部に対して、複数個の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体を0.001〜0.3モル部共重合してなる共重合体である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記の重合体溶液は極限粘度が1.3〜2.9のポリアクリロニトリル系重合体を含む重合体溶液である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液がZ平均分子量Mzが80万〜600万であり、多分散度Mz/Mw(Mwは、重量平均分子量を表す)が2.7〜6であるポリアクリロニトリル系重合体を含む重合体溶液である。 本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記の重合体溶液の吐出線速度は5〜30m/分である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記の凝固糸の巻き取り速度は50〜200m/分である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法の好ましい態様によれば、前記の凝固糸を得るために用いられる凝固浴は、アクリロニトリル系重合体の溶媒と凝固促進成分の混合物を含み、かつ臨界濃度未満の溶媒濃度である凝固浴である。
さらに、上記の目的を達成するために、本発明の炭素繊維の製造方法は次の構成を有するものである。すなわち、本発明の炭素繊維の製造方法は、上記の製造方法によって得られた炭素繊維用前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化処理する炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフトを高めることができるPAN系重合体溶液を用いることにより、生産性を損なうことなく毛羽立ちの少ない高品位な炭素繊維用前駆体繊維を製造することができる。そのような高品位な炭素繊維用前駆体繊維を用いるので、高性能かつ高品位な炭素繊維を焼成工程でも安定して製造することができる。
本発明者らは、後述する紡糸ドラフトを特定の範囲に制御し、凝固糸の単繊維繊度を特定の範囲に制御することにより、生産性を損なうことなく炭素繊維用前駆体繊維として適した高品位なポリアクリロニトリル系繊維を製造することができることを見出し、本発明に到達した。具体的に本発明では、紡糸ドラフトを特定範囲にすることにより、製糸工程の初期から延伸することができるため、初期の段階で均一な凝固と分子の配向が進み、簡略な工程で毛羽立ちのない高品位なアクリルニトリル系繊維を生産性よく製造することができるのである。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液を乾湿式紡糸するに際し、重合体濃度が6〜25重量%であり、かつ、伸長時破断時間が20秒以上であるポリアクリロニトリル系重合体溶液を、平均孔径が0.05〜0.18mmの紡糸口金から、該重合体溶液の紡糸ドラフトが8〜100の範囲となるように設定制御にして吐出巻き取り、紡糸して、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が0.4〜2.3dtexの凝固糸を得、次いで該凝固糸を延伸倍率1〜5倍で延伸して単繊維繊度が0.4〜1.2dtexの延伸糸とすることを特徴とするものである。
まず、本発明において、このような高紡糸ドラフトを可能にするポリアクリロニトリル系重合体溶液について説明する。
本発明で用いられるPAN系重合体溶液は、PAN系重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液であって、その伸長時破断時間は好ましくは20秒以上であり、より好ましくは50秒以上であり、さらに好ましくは100秒以上である。伸長時破断時間の上限は、600秒もあれば十分なことが多い。伸長時破断時間が20秒未満では、紡糸ドラフトを高める効果が得られない。
本発明において、伸長時破断時間とは次のようにして測定される値を言う。すなわち、温度35℃に保温されたPAN系重合体溶液0.1mlを、同軸かつ垂直に配置された一対の直径4mmの円形プレート間(ギャップ2mm)に封入し、下方のプレートを固定したまま、上方のプレートを50m秒(ミリ秒)☆書かなくても大丈夫でしょうか。川上主研は誤解したので☆で18mm垂直に引き上げそのまま保持する。プレート引き上げ中、PAN系重合体溶液は、伸長されて糸を曳き、プレート引き上げ終了以降は、重力およびポリマー溶液の表面張力によりフィラメント径が細くなり、最終的に破断する。伸長時破断時間は、かかる測定におけるプレート引き上げ終了直後からフィラメントの破断までの時間である。
フィラメント径の変化が急激でなく、漸減する傾向にあり、破断するまでに時間がかかるほど、曳糸性が高いことになる。このように高い曳糸性を持つ重合体溶液を用い、高紡糸ドラフトとすることにより、均一な凝固と分子の配向が進み、かつ毛羽立ちの少ない高品位な前駆体繊維を製造することができるのである。
また、プレート引き上げ直後のフィラメント径は、0.1〜1.2mmであることが好ましい。かかるフィラメント径は、高速で伸長させたときの変形しやすさを表しており、1.2mmを超える場合には、PAN系重合体溶液を口金から吐出する際に吐出線速度を上げると凝集破断しやすい傾向となり、また、フィラメント径が0.1mmを下回る場合には、吐出線速度を下げられない傾向にある。
上記の伸長時破断時間は、ポリアクリロニトリル系重合体の平均分子量とポリマー濃度調整だけで達成することはできず、ポリアクリロニトリル系重合体の架橋構造を高度に制御することや分子量分布を高度に制御することがその達成手段として挙げられるが、これらの手段に限られるものではない。中でも、本発明で好適に用いられるポリアクリロニトリル系重合体(PAN系重合体と略記することもある)は、アクリロニトリルを主成分とする重合体を含み、次の[a]および/あるいは[b]の要件を満たしているものを用いることが好ましい。
本発明で好適に用いられるPAN系重合体の要件[a]は、PAN系重合体が、複数個の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体(以下、多官能性単量体と称することがある。)を共重合成分としてアクリロニトリル(以下、ANと略記することがある。)に共重合して得ることができる。多官能性単量体における(メタ)アクリロイル基の数は2個以上であるが、6個もあれば十分であることが多く、2個であることが最も好ましい。
このような(メタ)アクリロイル基をつなぐ原子団としては、炭素数2〜20の直鎖あるいは分岐アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基などが好ましく、またそれらの結合の間にエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合およびグアニジン結合を含んでいても構わない。原子団が分岐構造を含む場合は、その末端基は特に限定されない。
本発明で用いられる多官能性単量体としては、(メタ)アクリロイル基−C1-10直鎖あるいは分岐アルキル基−X−直鎖あるいは分岐C1-10アルキル基−(メタ)アクリロイル基で示す化合物(アルキル基は一部水酸基で置換されていても構わなく、Xはシクロアルキル基、エステル基、エステル基−C1-6直鎖あるいは分岐アルキル基−エステル基のいずれかもしくは省略可)が好ましく用いられる。特に、(メタ)アクリロイル基−C2-20直鎖あるいは分岐アルキル基− (メタ)アクリロイル基で示す化合物が好ましく用いられる。
本発明で用いられる多官能性単量体としては、具体的な化合物として、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、および1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどを挙げることができる。
多官能性単量体の共重合量は、重合体の分子量によって適正値が変わるため一概には言えないが、AN100モル部に対して、好ましくは0.001〜1モル部であり、より好ましくは0.01〜0.3モル部であり、さらに好ましくは、0.05〜0.1モル部である。
多官能性単量体を含まない重合体の重量平均分子量当たりの共重合比率は、好ましくは0.25×10−9〜40×10−9モル/gであり、より好ましくは1×10−9〜10×10−9モル/gである。共重合比率が0.25×10−9モル/g未満では、弾性が不足することが多く、40×10−9モル/gを超えると弾性が強すぎることが多く、いずれの場合でも上述の伸長時破断時間が20秒未満となることが多い。共重合比率は、以下の式で求めることができる。
・共重合比率(モル/g)=(多官能性単量体の共重合量(モル部)/100)/多官能性単量体を含まない以外は同じ条件で作製した重合体の重量平均分子量(g/モル)
本発明で好適に用いられるPAN系重合体の組成としては、共重合成分として、上述した多官能性単量体の他に、ANと共重合可能な他の単量体をAN100モル部あたり5モル部以下なら共重合させてもよいが、他の共重合成分量が多くなるほど共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向を示す。
ANと共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
本発明で好適に用いられるPAN系重合体の極限粘度は、好ましくは1.3〜2.9である。極限粘度が1.3未満の場合は衣料用途などの乾式紡糸には適するが、炭素繊維用前駆体繊維用途としては強度が不足することが多く、一方、極限粘度が2.9を超える場合には、後述のPAN系重合体溶液の重合体濃度を低くせざるを得ず、凝固時に緻密な構造の繊維を得にくいことがあることがあるばかりか、凝固糸の巻き取り速度を上げにくいことがある。
本発明において、PAN系重合体を製造するための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法などから選択することができるが、ANや共重合成分を均一に重合する目的からは、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いて重合する場合、溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPANが可溶な溶媒が好適に用いられる。中でも、PANの溶解性の観点から、溶媒としてジメチルスルホキシドが特に好ましく用いられる。
本発明で好適に用いられるPAN系重合体の要件[b]は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記する。)法(測定法の詳細は後述する。)で測定されるZ平均分子量(以下、Mzと略記する。)が80万〜600万であり、多分散度(Mz/Mw)(Mwは、重量平均分子量を表す。以下、Mwと略記する。)が2.7〜6である。Mzは、好ましくは200万〜600万であり、より好ましくは250万〜400万であり、さらに好ましくは250万〜320万である。また、多分散度(Mz/Mw)は、好ましくは3〜5であり、より好ましくは3〜4である。
GPC法により測定される平均分子量、及び、分子量の分布に関する指標について以下に説明する。
GPC法により測定される平均分子量には、数平均分子量(以下、Mnと略記する)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、Z+1平均分子量(MZ+1)がある。Mnは、高分子化合物に含まれる低分子量物の寄与を敏感に受ける。これに対して、Mwは、高分子量物の寄与をMnより敏感に受ける。Mzは、高分子量物の寄与をMwより敏感に受け、Z+1平均分子量(以下、MZ+1と略記する)は、高分子量物の寄与をMzより敏感に受ける。
GPC法により測定される平均分子量を用いて得られる分子量の分布に関する指標には、分子量分布(Mw/Mn)や多分散度(Mz/MwおよびMZ+1/Mw)があり、これらを用いることにより分子量の分布の状況を示すことができる。分子量分布(Mw/Mn)が1であるとき単分散であり、分子量分布(Mw/Mn)が1より大きくなるにつれて分子量の分布が低分子量側を中心にブロードになることを示すのに対して、多分散度(Mz/Mw)は1より大きくなるにつれて、分子量の分布が高分子量側を中心にブロードになることを示す。また、多分散度(MZ+1/Mw)も1より大きくなるにつれて、分子量の分布が高分子量側を中心にブロードになる。特に、多分散度(MZ+1/Mw)は、Mwの大きく異なる2種のポリマーを混合しているような場合には、顕著に大きくなる。ここで、GPC法により測定される分子量はポリスチレン換算の分子量を示す。
上記のように、分子量分布(Mw/Mn)と多分散度(Mz/Mw)の示すところが異なるため、本発明者らの検討によると特許文献3に示すように、分子量分布(Mw/Mn)を7.0にしても、多分散度(Mz/Mw)は必ずしも2.7以上にはならない、たとえば、特許文献3では、実施例の方法に従って確認したところ、分子量分布(Mw/Mn)が、7.1であっても、多分散度(Mz/Mw)の値は、1.5〜2.5であり曳糸性の向上も見られなかった。
本発明のPAN系重合体を用いることにより、かかる重合体を含む紡糸溶液を乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維を得る場合の生産性の向上と安定化の両立を図りつつ、毛羽立ちの少ない高品位な炭素繊維前駆体繊維を製造することができるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。乾湿式紡糸では、口金孔直後から凝固されるまでの間でPAN系重合体が伸長変形する際に、紡糸溶液内ではPAN系重合体の超高分子量物と高分子量物が絡み合い、超高分子量物を中心に絡み合い間の分子鎖が緊張することで伸長粘度の急激な増大、すなわち、歪み硬化がおこる。この、口金孔直後から凝固されるまでの間でのPAN系重合体溶液の細化に伴い細化部分の伸長粘度が高くなり、流動安定化するため紡糸速度を高め、かつ、紡糸ドラフト率を高めることができる。紡糸溶液状態では、凝固しなくても、数10m/分で曳き上げ巻き取りでき、溶液紡糸では考えられないほど高い曳糸性が得られる。
そのため、多分散度(Mz/Mw)が大きいほど好ましく、Mzが80万〜600万の範囲であれば、多分散度(Mz/Mw)が2.7以上において、充分な歪み硬化が生じPAN系重合体を含む紡糸溶液の吐出安定性向上度合が充分となる。また、多分散度(Mz/Mw)が、大きすぎる場合、歪み硬化が強すぎて、PAN系重合体を含む紡糸溶液の吐出安定性向上効果が低下する場合があるが、Mzが80万〜600万の範囲で、多分散度(Mz/Mw)が、6以下であると、PAN系重合体を含む紡糸溶液の吐出安定性向上度合は充分となる。また、多分散度(Mz/Mw)が2.7〜6の範囲において、Mzが80万未満では、前駆体繊維の強度が不足する場合があり、Mzが600万より大きいと吐出が困難となる場合がある。
GPC法の測定においては、高分子量まで精度良く測定するために、溶出時間の希釈濃度依存性のない(すなわち、粘度変化が少ない)程度まで希薄とし、検出感度を得るためになるべく多くの注入量とし、広い分子量分布に対応するように、溶媒の流速とカラムの選択を行うべきである。カラムの排除限界分子量は少なくとも1000万以上であり、ピークがテーリングすることがないように設定する。通常、希釈濃度は0.1wt/vol%とし、注入量は20μLと200μLの2種の条件で測定し、データが異なる場合には、注入量200μLの条件のデータを採るものとする。
本発明で好適に用いられるPAN系重合体における要件[b]を満たすポリアクリロニトリル系重合体は、分子量(Mw)が異なる2種のポリアクリロニトリル系重合体(A成分、B成分と記す)を混合する方法により得ることができる。なお、本発明において混合するとは、最終的に、A成分、B成分の混合物を得ることを言い、具体的な混合方法については後述するが、それぞれの単一成分のものを混合することに限定されない。
まず、混合する2種のポリアクリロニトリル系重合体について説明する。Mwの大きいポリアクリロニトリル系重合体をA成分とし、Mwの小さいポリアクリロニトリル系重合体をB成分とすると、A成分のMwは好ましくは100万〜1500万であり、より好ましくは100万〜500万であり、B成分のMwは15万〜100万であることが好ましい。A成分とB成分のMwの差が大きいほど、混合された重合体の多分散度(Mz/Mw)が大きくなる傾向があるため好ましいが、A成分のMwが1500万より大きいときはA成分の生産性は低下する場合があり、B成分のMwが15万未満のときは前駆体繊維の強度が不足する場合があることから、多分散度(Mz/Mw)は6以下とすることが好ましい。
本発明のPAN系重合体における要件[b]を満たすポリアクリロニトリル系重合体においては、具体的には、A成分とB成分の重量平均分子量比は、2〜45であることが好ましく、より好ましくは4〜20であり、さらに好ましくは5〜15である。
また、A成分/B成分の重量比は、0.001〜0.3であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.2であり、更に好ましくは0.01〜0.1である。A成分とB成分の重量比が0.001未満では、歪み硬化が不足することがあり、また0.3より大きいときは重合体溶液の吐出粘度が上がりすぎて吐出困難となることがある。
Mwと重量比は、GPCにより測定された分子量の分布のピークをショルダーやピーク部分でピーク分割し、それぞれのピークのMwおよびピークの面積比を算出することにより測定される。
A成分とB成分の重合体を含む重合体の溶液を調製するには、両重合体を混合してから溶媒に溶解する方法、重合体それぞれを溶媒に溶解したもの同士を混合する方法、溶解しにくい高分子量物であるA成分を溶媒に溶解した後にB成分を混合溶解する方法、および高分子量物であるA成分を溶媒に溶解したものとB成分を構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法などを採用することができる。高分子量物を均一に溶解させる観点から、高分子量物であるA成分を初めに溶解する方法が好ましい。特に、炭素繊維前駆体製造用とする場合には、高分子量物であるA成分の溶解状態が極めて重要であり、わずかであっても未溶解物が存在していた場合には異物となって、炭素繊維内部にボイドを形成することがある。
本発明でのポリアクリロニトリル系重合体の製造方法としては、A成分の溶媒に対する重合体濃度を好ましくは0.1〜5重量%になるようにした後、B成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合して重合することが好ましい。上記のA成分の重合体濃度は、より好ましくは0.3〜3重量%であり、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。上記のA成分の重合体濃度は、より具体的には、重合体の集合状態として、重合体がわずかに重なり合った準希薄溶液とすることが好ましく、B成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合して重合する際に、混合状態が均一となりやすいため、孤立鎖の状態となる希薄溶液とすることが更に好ましい態様である。希薄溶液となる濃度は、重合体の分子量と溶媒に対する重合体の溶解性によって決まる分子内排除体積によって決まるとみられるため、一概には決められないが、本発明においては概ね前記範囲にすることにより炭素繊維の性能を最大化できることが多い。上記の重合体濃度が5重量%を超える場合は、A成分の未溶解物が存在することがあり、0.1重量%未満の場合は、分子量にもよるが希薄溶液となっているため効果が飽和していることが多い。
本発明では、上記のように、A成分の溶媒に対する重合体濃度を好ましくは0.1〜5重量%になるようにした後、それにB成分を混合溶解する方法でもかまわないが、工程簡略化の観点から高分子量物を溶媒に希釈したものとB成分を構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法の方が好ましい。
A成分の溶媒に対する重合体濃度を0.1〜5重量%になるようにする方法としては、重合体を溶媒に溶解した後希釈する方法でも単量体から重合する方法でも構わない。溶解した後希釈する場合は、均一に希釈できるまで撹拌することが重要であり、希釈温度としては50〜120℃が好ましく、希釈時間は希釈温度や希釈前濃度によって異なるため、適宜設定すればよい。希釈温度が50℃未満の場合は、希釈に時間がかかることがあり、120℃を超える場合は、A成分が変質する恐れがある。
また、重合体の重なり合いを希釈する工程を減らし、均一に混合する観点から、前記のA成分の製造から前記のB成分の混合開始、あるいは、B成分を構成する単量体の重合開始までの間、A成分の溶媒に対する重合体濃度を0.1〜5重量%の範囲に制御することが好ましい。具体的には、A成分を溶液重合により製造する際に、重合体濃度が5重量%以下で重合を停止させ、それにB成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合しその単量体を重合する方法である。
通常、溶媒に対する仕込み単量体の割合が少ないと、溶液重合により高分子量物を製造ことは困難なことが多いため仕込み単量体の割合を多くするが、重合体濃度が5重量%以下の段階では、重合率が低く、未反応単量体が多く残存していることになる。未反応単量体を揮発除去してから、B成分を混合してもかまわないが、工程簡略化の観点からその未反応単量体を用いてB成分を溶液重合することが好ましい。具体的に、アクリロニトリルを主成分とする単量体を含む溶液に重合開始剤を導入し溶液重合することによりA成分を製造し、その溶液重合が終了するまでの間に別途重合開始剤を追加導入し、残存する未反応単量体を溶液重合することによりB成分を製造し、A成分とB成分が混合したAN系重合体組成物を得ることができる。
次に、本発明で用いられるPAN系重合体溶液について説明する。PAN系重合体溶液の重合体濃度は、6〜25重量%の範囲であり、より好ましくは15〜25重量%の範囲であり、さらに好ましくは17〜23重量%であり、最も好ましくは19〜21重量%である。重合体濃度が6重量%未満では凝固初期の繊維径と凝固後の繊維径の差が大きくなり、内部にボイドが生じて緻密な構造の繊維が得られないことがあるため、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度を低下させても緻密な構造の繊維を形成する効果が発揮されにくいことがあり、特に、重合体濃度が15重量%以上では効果が高い。一方、重合体濃度が25重量%を超えると粘度が上昇し、凝固糸の巻き取り速度を上げにくく、紡糸が困難となる。紡糸溶液である重合体溶液の重合体濃度は、使用する溶媒の量により調製することができる。
本発明において重合体溶液の重合体濃度とは、PAN系重合体の溶液中に含まれるPAN系重合体の重量%である。具体的には、PAN系重合体溶液を計量した後、PAN系重合体を溶解せずかつPAN系重合体溶液に用いられる溶媒と相溶性のあるものを用いて、計量したPAN系重合体溶液を脱溶媒させた後、PAN系重合体を計量する。重合体濃度は、脱溶媒後のPAN系重合体の重量を、脱溶媒する前のPAN系重合体の溶液の重量で割ることにより算出する。
また、45℃の温度におけるPAN系重合体溶液の粘度は、15〜200Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜150Pa・sであり、さらに好ましくは30〜100Pa・sで、最も好ましくは40〜80Pa・sである。PAN系重合体溶液の粘度が15Pa・s未満では、紡糸糸条の賦形性が低下するため、紡糸口金から出た糸条を引き取る速度、すなわち可紡性が低下する傾向を示す。また、重合体溶液の粘度は200Pa・sを超えるとゲル化し易くなり、安定した紡糸が困難になる傾向を示す。また、PAN系重合体溶液の粘度が100Pa・sを超えると、高圧で紡糸口金から吐出する必要があり、わずかな吐出量で高圧による紡糸口金の変形や紡糸装置の耐久性が低下しやすく、安定した操業ができないことがある。PAN系重合体溶液の粘度は、PAN系重合体製造時の仕込み重合開始剤や連鎖移動剤の量などにより制御することができる。
本発明において45℃の温度におけるPAN系重合体溶液の粘度は、B型粘度計により測定することができる。具体的には、ビーカーに入れたPAN系重合体溶液を、45℃の温度に温度調節された温水浴に浸して調温した後、B型粘度計として、例えば、(株)東京計器製B8L型粘度計を用い、ローターNo.4を使用し、PAN系重合体溶液の粘度が0〜100Pa・sの範囲はローター回転数6r.p.m.で測定し、またそのPAN系重合体溶液の粘度が100〜1000Pa・sの範囲はローター回転数0.6r.p.m.で測定する。
次に、本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法について説明する。
PAN系重合体溶液を紡糸する前に、高強度な炭素繊維を得るという観点から、そのPAN系重合体溶液を、例えば、目開き1μm以下のフィルターに通し、PAN系重合体原料および各工程において混入した不純物を除去することが好ましい。
本発明では、前記したPAN系重合体溶液を紡糸溶液として、乾湿式紡糸法を用いて紡糸することにより、炭素繊維用前駆体繊維を製造することができる。乾湿式紡糸法は、重合体溶液を口金から一旦空気中に吐出した後、凝固浴中に導入して凝固させる紡糸方法である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法において、PAN系重合体を含む重合体溶液の紡糸ドラフトは8〜100の範囲であることが重要である。紡糸ドラフトは、好ましくは13〜50の範囲であり、さらに好ましくは20〜40の範囲である。
ここで紡糸ドラフトとは、紡糸糸条(フィラメント)が紡糸口金を離れて最初に接触する駆動源を持ったローラーの表面速度(凝固糸の巻き取り速度)を、紡糸口金孔内のPAN系重合体溶液の線速度(吐出線速度)で割った値をいう。この吐出線速度とは、単位時間当たりに吐出される重合体溶液の体積を口金孔面積で割った値をいう。したがって、吐出線速度は、重合体溶液の吐出量と紡糸口金の孔径の関係で決まる。PAN系重合体を含む重合体溶液は、紡糸口金孔を出て凝固浴に接して次第に凝固して凝固糸(フィラメント)となる。このとき第一ローラーによりフィラメントは引っ張られているが、フィラメントよりも未凝固紡糸溶液の方が伸び易いので、紡糸ドラフトとは、紡糸溶液が固化するまでに引き伸ばされる倍率を示すことになる。すなわち、紡糸ドラフトは次式で表されるものである。

・紡糸ドラフト=(凝固糸の巻き取り速度)/(吐出線速度) 上記の紡糸ドラフトを高めることは、繊維の細径化への寄与も大きい。紡糸ドラフトが8未満では、炭素繊維用前駆体繊維の結晶配向度が高まらないため、本発明の効果である高品位な炭素繊維用前駆体繊維を得ることが困難である。また、生産性向上の観点から、紡糸ドラフトは高ければ高いほど好ましいが、吐出線速度を下げないと口金面で糸切れが発生することが多くなるため、生産性の観点から、紡糸ドラフトは現実的には100以下である。
衣料用・工業用極細繊維の製糸では、湿式紡糸法が多く採用され、紡糸ドラフトを8以上に高めることは困難である。本発明では、吐出線速度は5〜30m/分であることが好ましく、より好ましくは11〜30m/分である。吐出線速度が5m/分を下回ると、生産性が落ちる傾向にあり、また、吐出線速度が11m/分を下回ると、凝固工程や水洗工程での浴液抵抗による張力発現が少なくなるため炭素繊維用前駆体繊維の結晶配向度が上がりにくい傾向にある。一方、吐出線速度が30m/分を超えると、凝固浴の液面揺れが顕著になり、得られる繊度にムラが生じやすい。吐出線速度は、紡糸口金の平均孔径と孔数と重合体溶液の吐出量によって制御することができる。
本発明で用いられる紡糸口金の平均孔径は、0.05mm〜0.18mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.15mmである。紡糸口金平均孔径が0.05mmより小さい場合、紡糸原液である重合体溶液を高圧で紡糸口金から吐出させる必要があり、紡糸装置の耐久性が低下し、更にノズルからの紡出が困難となるばかりでなく、紡糸ドラフトを高く設定するとポリアクリロニトリル系繊維の単繊維繊度が細くなり過ぎ、炭素繊維用前駆体繊維としては適さないことが多い。一方、紡糸口金の平均孔径が0.18mmを超えると、2.3dtex以下の乾燥させた単繊維繊度の凝固糸を得ることが困難である。
また、紡糸口金の孔数は、3000〜12000個であることが好ましい。孔数が3000個より少ない場合、生産性が低下するばかりでなく、得られる凝固糸繊維束の総繊度が小さく細いため水洗工程等で浴抵抗により糸切れすることがある。一方、孔数が12000個を超える場合には、吐出ムラが発生することがあり、紡糸ドラフトを上げられないことがある。
また、凝固糸の巻き取り速度は、50〜300m/分であることが好ましい。凝固糸の巻き取り速度が50m/分を下回ると凝固工程や水洗工程での浴液抵抗による張力発現が少なくなるため炭素繊維用前駆体繊維の結晶配向度が上がりにくい傾向にあり、凝固糸の巻き取り速度が300m/分を超える速度では、凝固工程や水洗工程での浴液抵抗による張力発現が多くなりすぎ、かかる工程で糸切れが発生することがある。
本発明において、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度は、ポリアクリロニトリル系重合体を含む重合体溶液の重合体濃度と、紡糸ドラフトと、使用する紡糸口金の孔径によって決定される。本発明のこの乾燥させた凝固糸の単繊維繊度は、0.4〜2.3dtexであることが重要であり、好ましくは0.4〜1.8dtexであり、より好ましくは0.4〜0.9dtexである。乾燥させた凝固糸の単繊維繊度は、凝固時の凝固糸を構成する単繊維の繊維径に対応しており、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が2.3dtexを超える場合には、凝固時に凝固糸の表層部と中心部の凝固状態差が大きくなり、焼成して炭素繊維とした場合にもそれに起因した物性差が見られ、物性が低下する。また、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が0.4dtex未満では、前駆体繊維としてのポリアクリロニトリル系繊維の単繊維繊度が0.4dtex未満となり、これを焼成して炭素繊維とした場合には、繊維強化複合材料とするときマトリックス樹脂が含浸されにくくなり、炭素繊維の物性が発現されず、製造コストの割には炭素繊維強化複合材料としての物性が低下する。
本発明において、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が0.4〜2.3dtexの凝固糸は、ポリアクリロニトリル系重合体の重合体濃度が6〜25重量%であり、かつ、伸長時破断時間が20秒以上であるポリアクリロニトリル系重合体溶液を、平均孔径が0.05〜0.18mmの紡糸口金から、紡糸ドラフトを8〜100に制御するようにして吐出巻き取り、紡糸することにより好適に得ることができる。
衣料用として湿熱特性を高める目的で紡糸ドラフトを高めるものは、炭素繊維としての物性低下を引き起こす凝固糸の内層外層構造差についての考慮がなく、凝固時の単繊維繊維径を小さくすることにより内層外層凝固構造差を低減し、炭素繊維の物性を向上させるものではなかった。それに対し、
本発明における乾燥させた凝固糸の単繊維繊度(dtex)とは、紡糸口金を離れて最初に接触する駆動源を持ったローラーにより引き取られた凝固糸を流水で1時間以上水洗し、単糸10,000mあたりの乾燥重量(g)をいう。
本発明において、乾燥させた凝固糸を構成する単繊維の結晶配向度は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%である。結晶配向度が80%を下回ると、得られる炭素繊維用前駆体繊維の結晶配向度が低くなることがある。
本発明において用いられる凝固浴には、PAN系重合体溶液で溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどのアクリロニトリル系重合体の溶媒と、いわゆる凝固促進成分の混合物を用いることが好ましい。凝固促進成分としては、前記のPAN系重合体を溶解せず、かつPAN系重合体溶液に用いた溶媒と相溶性があるものが好ましく、具体的には、水を使用することが好ましい。乾湿式紡糸で用いられる凝固浴は、凝固糸を構成する単繊維の横断面が真円状で、かつ繊維側面が平滑となる範囲で有機溶剤の濃度を高くし、凝固浴の温度を低く設定することが好ましい。例えば、溶剤にジメチルスルホキシドを用いた場合は、ジメチルスルホキシド水溶液の濃度を5〜70重量%とし、凝固浴温度を−10〜30℃とすることが好ましい。
さらに凝固浴としては、好ましくは臨界濃度未満が好適である。本発明でいう臨界濃度とは、溶液紡糸における可紡性が極小値となる濃度をいい、下記の測定法で定義するものである。すなわち、次に示す重合体溶液を湿式紡糸し、溶媒と凝固促進成分の割合を変化させて、限界紡糸ドラフトが最低となる濃度のことである。
[重合体溶液]
・重合体組成 :AN100モル%
・極限粘度 :1.8
・重合体濃度 :20重量%。
一般に、溶液紡糸では、凝固浴中の凝固促進成分の割合を減らし、溶媒量を増やしていくと、臨界濃度で可紡性は極小値となり、重合体が凝集できる限界濃度まで溶媒を増やすと可紡性は極めて高まり、その濃度を超えると繊維を形成しなくなる。しかしながら、上述のとおり、凝固浴中の溶媒濃度を上げると入念な水洗工程が必要となるため、溶媒濃度は低いことが好ましい。臨界濃度は従来から十分に検討されており、溶媒/凝固促進成分がジメチルホルムアミド/水のときは76重量%であり、ジメチルアセトアミド/水のときは79重量%であり、ジメチルスルホキシド/水のときは70重量%である。
本発明において、PAN系重合体溶液を凝固浴中に導入して凝固させ凝固糸を形成した後、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を経て、前駆体繊維が得られる。また、上記の工程に乾熱延伸工程や蒸気延伸工程を加えてもよい。凝固後の凝固糸は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。浴中延伸は、通常、30〜98℃の温度に温調された単一または複数の延伸浴中で行うことができる。そのときの浴中延伸倍率は、1〜5倍であることが好ましく、より好ましくは1〜3倍である。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、延伸された糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。シリコーン油剤は、耐熱性の高いアミノ変性シリコーン等の変性されたシリコーンを含有するものを用いることが好ましい。
次の乾燥工程は、公知の方法を利用することができる。例えば、乾燥温度が70〜200℃で乾燥時間が10秒から200秒の乾燥条件が好ましい結果を与える。生産性の向上や結晶配向度の向上を目的として乾燥工程後に延伸してもよいが、毛羽立ちによる品位の低下を招くおそれがある。重要なことは、ポリアクリロニトリル系繊維の結晶配向度を低下させることなく、凝固糸を構成する単繊維繊度を細くすることであり、そのためにはなるべく紡糸ドラフトを高くして、凝固工程より後の延伸倍率は低くすることである。そのため、浴中延伸工程と乾燥工程後の延伸工程を合わせた倍率は、好ましくは1〜5倍であり、より好ましくは1〜3倍であり、さらに好ましくは1〜1.5倍である。
このようにして、単繊維繊度が0.4〜1.2dtexの前駆体繊維であるポリアクリロニトリル系繊維が得られる。ポリアクリロニトリル系繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.4〜1.0dtexであり、さらに好ましくは0.5〜0.7dtexである。単繊維繊度が0.4dtexより小さいと、可紡性の低下や、ローラーやガイドとの接触による糸切れ発生などにより、製糸工程および炭素繊維の焼成工程のプロセス安定性が低下することがあるだけでなく、焼成して炭素繊維とした場合には、複合材料製造時においてマトリックス樹脂が含浸されにくくなり、炭素繊維の物性が発現されず、製造コストの割には炭素繊維強化複合材料としての物性が低下する。一方、単繊維繊度が大きすぎると、耐炎化後の繊維束を構成する各単繊維における内外構造差が大きくなり、続く炭化工程でのプロセス性低下や、得られる炭素繊維の引張強度および引張弾性率が低下する。本発明における単繊維繊度(dtex)とは、単糸10,000mあたりの重量(g)である。
本発明において、得られる炭素繊維用前駆体繊維束の結晶配向度は、85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。結晶配向度が85%を下回ると、得られる炭素繊維用前駆体繊維の強度が低くなることがある。
得られる前駆体繊維は、通常、連続繊維(フィラメント)の形状である。また、その繊維束1糸条(マルチフィラメント)当たりのフィラメント数は、好ましくは1,000〜3,000,000本であり、より好ましくは12,000〜3,000,000本であり、さらに好ましくは24,000〜2,500,000本であり、最も好ましくは24,000〜2,000,000本である。1糸条あたりのフィラメント数は、生産性の向上の目的からは多い方が好ましいが、あまりに多すぎると束内部まで均一に耐炎化処理できないことがある。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記した方法により製造された前駆体繊維を、200〜300℃の温度の酸化性雰囲気中において、好ましくは緊張あるいは延伸条件下、より好ましくは延伸比0.8〜2.5で延伸しながら耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において、好ましくは延伸比0.9〜1.5で延伸しながら予備炭化処理し、1,000〜3,000℃の最高温度の不活性雰囲気中において、好ましくは延伸比0.9〜1.1で延伸しながら、炭化処理して炭素繊維を製造する。
耐炎化処理における酸化性雰囲気としては、空気が好ましく採用される。この耐炎化工程で得られる耐炎化繊維の密度は、好ましくは1.3〜1.4g/cmになるようにする。すなわち、耐炎化が不十分で耐炎化繊維の密度が1.3g/cmに満たない場合には、炭化する際に単糸間接着を発生しやすくなり、また、分解ガスの発生量が多くなり緻密性が低下しやすくなるため、高性能な炭素繊維が得にくく、結晶サイズLcが粗大化する傾向にあり圧縮強度が向上しない。一方、過度に耐炎化を進めるとポリマー主鎖の切断が起こり、最終的に得られる炭素繊維の引張強度が低下する問題があるため、耐炎化密度は1.4g/cmを超えないことが好ましい。
本発明において、予備炭化処理や炭化処理は不活性雰囲気中で行うが、不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。予備炭化処理では、その温度範囲における昇温速度を500℃/分以下に設定することが好ましい。また、炭化処理における最高温度は、所望する炭素繊維の力学物性に応じて適宜設定することができるが、一般に炭化処理の最高温度が高いほど、得られる炭素繊維の引張弾性率が高くなるものの、引張強度は1,500℃付近で極大となるため、引張強度と引張弾性率の両方を高めるという目的からは、炭化処理の最高温度は1,200〜1,700℃とすることが好ましく、より好ましくは1,300〜1,600℃である。一方、炭化処理の最高温度が1,500℃を超えると、窒素原子の消失に伴い発生するボイド量が増加するため、緻密な炭素繊維を得る観点からは1,500℃以下にすることが好ましい。
得られた炭素繊維は、その表面改質のため電解処理することができる。電解処理に用いられる電解液には、硫酸、硝酸および塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムのようなアルカリまたはそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維の炭化度に応じて適宜選択することができる。
電解処理により、得られる複合材料において炭素繊維マトリックスとの接着性を適正化させることができ、接着が強すぎることによる複合材料の脆性的な破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの、マトリックス樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないという問題が解消され、得られる複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
電解処理の後、炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理を施すこともできる。サイジング剤には、使用するマトリックス樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂等との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明により得られる炭素繊維は、プリプレグとしてオートクレーブ成形、織物などのプリフォームとしてレジントランスファーモールディングで成形、およびフィラメントワインディングで成形するなど種々の成形法により、航空機部材、圧力容器部材、自動車部材、釣り竿およびゴルフシャフトなどのスポーツ部材として、好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法と炭素繊維の製造方法について、さらに具体的に説明する。実施例で用いた各特性の測定方法を、次に説明する。
<伸長時破断時間>
溶液温度35℃に保温されたPAN系重合体溶液0.1mlを、同軸かつ垂直に配置された一対の直径4mmの円形プレート間(ギャップ2mm)に封入し、上方のプレートを50m秒で18mm垂直に引き上げそのまま保持したとき、プレート引き上げ終了直後からフィラメントの破断までの時間を測定する。実施例では、サーモハーケ社製の伸長粘度計CaBER1を用いた。
<ポリアクリロニトリル系繊維の単繊維繊度(dtex)>
フィラメント数6,000の繊維を1巻き1m金枠に10回巻いた後、その重量を測定し、10,000m当たりの重量を算出することにより求めた。
<乾燥された凝固糸の単繊維繊度(dtex)>

フィラメント数6,000の凝固糸を1巻き1m金枠に10回巻いた後、流水で1時間水洗し、120℃の温度で2時間乾燥させた後の重量を測定し、10,000m当たりの重量を算出することにより求めた。
<重合体溶液の重合体濃度(重量%)> あらかじめ計量したPAN系重合体溶液を水中に細く垂らすことにより、直径1mm以下の線状組織体を得る。その線状組織体を、90℃の温度の熱水中で2時間脱溶媒処理してから、120℃の温度で2時間乾燥させた後、その線状組織体の重量を計量する。次式を用いて、重合体溶液の重合体濃度(重量%)を求めた。

・重合体濃度=(乾燥後の線状組織体の重量)/(脱溶媒前の重合体溶液重量)×100
<極限粘度[η]>
測定しようとするPAN系重合体溶液を約20g取り、水に注いでPAN系重合体を沈殿させ、それを95℃の温水で2時間洗浄後、70℃の温度で4時間乾燥して乾燥PAN系重合体を得る。極限粘度を測定しようとするPAN系重合体150mgを25℃の温度に保持して、それを50mlのチオシアン酸ナトリウム0.1モル/L添加ジメチルホルムアミドに溶解させる。得られた溶液を、25℃の温水槽中で温調し、予め25℃の温度に温調してあるオストワルド粘度計を用いて、標線間の落下時間を1/100秒の精度で測定し、その時間をt(秒)とする。同様にして、PAN系重合体を溶解していないチオシアン酸ナトリウム0.1モル/L添加ジメチルホルムアミドについても測定し、その落下時間をt(秒)とする。次式を用いて、極限粘度[η]を算出した。
・[η]={(1+1.32×ηsp0.5―1}/0.198
(ただし、ηsp=(t/t)−1である。)。
<各種分子量:Mz、Mw、Mn>
測定しようとする重合体を濃度0.1重量%となるようジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解した検体溶液を調製する。調製した検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量の分布曲線を求め、Mz、Mw、Mnを算出する。
・カラム :極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速 :0.5ml/min
・温度 :75℃
・試料濾過 :メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量 :200μl
・検出器 :示差屈折率検出器
Mwは、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも6種類用いて、溶出時間―分子量の検量線を作成し、その検量線上において、該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求める。
本実施例では、GPC装置として(株)島津製作所製CLASS−LC2010を、カラムとして東ソー(株)製TSK−GEL−α―M(×2)+東ソー(株)製TSK−guard Column αを、ジメチルホルムアミドおよび臭化リチウムとして和光純薬工業(株)製を、メンブレンフィルターとしてミリポアコーポレーション製0.45μm−FHLP FILTERを、示差屈折率検出器として(株)島津製作所製RID−10AVを、検量線作成用の単分散ポリスチレンとして、分子量184,000、427,000、791,000および1,300,000、1,810,000、4,210,000のものを、それぞれ用いた。
<重合体溶液の粘度>
B型粘度計として(株)東京計器製B8L型粘度計を用い、ローターNo.4を使用し、PAN系重合体溶液粘度が0〜100Pa・sの範囲は、ローター回転数6r.p.m.で、また粘度が100〜1000Pa・sの範囲は、ローター回転数0.6r.p.m.で、いずれも45℃の温度におけるPAN系重合体溶液の粘度を測定した。
<前駆体繊維の品位等級の基準>
検査項目は、6000フィラメントの繊維束を1m/分の速度で走行させながら目視で1cm以上の毛玉・1cm以上の毛羽の個数を数え、五段階評価した。評価基準は、下記のとおりである。
・等級1:繊維300m中、1個以内
・等級2:繊維300m中、2〜5個
・等級3:繊維300m中、6〜10個
・等級4:繊維300m中、11〜15個
・等級5:繊維300m中、16個以上。
<ポリアクリロニトリル系繊維の結晶配向度(%)>
繊維軸方向の配向度は、次のように測定した。繊維束を40mm長に切断して、20mgを精秤して試料を採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにそろえた後、試料調整用治具を用いて幅1mmの厚さが均一な試料繊維束に整える。薄いコロジオン液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、広角X線回折測定試料台に固定する。X線源として、Niフィルターで単色化されたCuのKα線を用い、2θ=17°付近に観察される回折の最高強度を含む子午線方向のプロフィールの広がりの半価幅(H゜)から、次式を用いて結晶配向度(%)を求めた。
・結晶配向度(%)=[(180−H)/180]×100
<炭素繊維束の引張強度(GPa)>
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃の温度で30分硬化させて作製する。また、炭素繊維のストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を引張強度とする。実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製“ベークライト”(登録商標)ERL4221を用いた。

[実施例1] アクリロニトリル99.42モル%、イタコン酸0.5モル%およびネオペンチルジアクリレート0.08モル%からなる組成成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてラジカル重合しPAN系重合体を得た。得られたPAN系重合体は、極限粘度が1.8であり、その重合体溶液の重合体濃度は20重量%であり、伸長時破断時間は120秒であった。得られたPAN系重合体溶液(紡糸溶液)を、目開き0.5μmのフィルター通過後、40℃の温度で、孔数3,000、孔径0.1mmの紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約2mmの空間を通過させた後、3℃の温度にコントロールした20重量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により紡糸し凝固糸とした。このときの吐出線速度は10m/分で一定とし、凝固糸の巻き取り速度を90m/分とすることにより紡糸ドラフトを表1に示すように9に調節し、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が2dtexの凝固糸を得た。このようにして得られた凝固糸を水洗した後、90℃の温水中で表1に示すように1.5倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して浴中延伸糸を得た。このようにして得られた浴中延伸糸を165℃の温度に加熱したローラーを用いて30秒間乾燥を行い、表1に示すように2.0倍のスチーム延伸倍率でスチーム延伸を行い、単繊維繊度0.7dtex、結晶配向度90%、フィラメント数3,000の前駆体繊維を得た。得られた前駆体繊維の品位は優れており、製糸工程通過性も安定していた。
次に、得られた前駆体繊維を8本合糸し、トータルフィラメント数24,000とした上で、240〜260℃の温度の温度分布を有する空気中において延伸比1.0、延伸張力2.7mN/dTex−前駆体繊維で延伸しながらで100分間耐炎化処理し、耐炎化繊維を得た。続いて、得られた耐炎化繊維を300〜700℃の温度の温度分布を有する窒素雰囲気中において、延伸比1.1、延伸張力1.4mN/dTex−前駆体繊維で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1,500℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.96、延伸張力2.2mN/dTex−前駆体繊維に設定して炭化処理を行い、連続した炭素繊維束を得た。このときの焼成工程通過性はいずれも良好であった。得られた炭素繊維束のストランド物性(引張強度)は、6.1GPaであった。
[実施例2〜6]
実施例1と同一の重合体溶液を用いて、用いた紡糸口金の孔径、紡糸ドラフト、浴中延伸倍率および浴中延伸後のスチーム延伸倍率を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸を行った。実施例3〜5では、スチーム延伸工程を省略した。その結果、表1に示すような乾燥させた凝固糸の単繊維繊度と、ポリアクリロニトリル系単繊維繊度と、結晶配向度の炭素繊維用前駆体繊維が得られた。得られた前駆体繊維を、単繊維あたりの焼成張力が実施例1と同様になるように各焼成工程の延伸倍率を設定したこと以外は、実施例1と同様にして焼成し連続した炭素繊維束を得た。このときの焼成工程通過性は、いずれも良好であった。得られた炭素繊維束のストランド物性(引張強度)を表1に示す。
[比較例1]
ポリアクリロニトリルの組成を、アクリロニトリル99.5モル%およびイタコン酸0.5モル%に変更し、連鎖移動剤量を実施例1の30重量%の量にしたこと以外は、実施例1と同様に重合し、極限粘度が1.8、Mzが72万、Mwが40万、Mz/Mwが1.8であった。その溶液の重合体濃度は20重量%、伸長時破断時間が6秒のPAN系重合体溶液を得た。その重合体溶液を用いて、表1のように、用いた紡糸口金の孔径を0.15mm、紡糸ドラフトを3、浴中延伸倍率を2.5倍および浴中延伸後のスチーム延伸倍率を5.2倍にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸を行った。その結果、表1に示すような乾燥させた凝固糸の単繊維繊度13.8dtex、ポリアクリロニトリル系単繊維繊度1.1dtexおよび結晶配向度93%の前駆体繊維が得られた。得られた前駆体繊維は若干品位が低下していた。得られた前駆体繊維は単繊維あたりの焼成張力が実施例1と同様になるように各焼成工程の延伸倍率を設定したこと以外は、実施例1と同様にして焼成した。得られた炭素繊維束のストランド物性(引張強度)は、5.0GPaであった。
[比較例2]
実施例1と同一の重合体溶液を用いて、表1のように、用いた紡糸口金の孔径を0.20mm、紡糸ドラフトを12、浴中延伸倍率を1.5倍および浴中延伸後のスチーム延伸倍率を3.7倍にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸を行った。その結果、表1に示すような乾燥させた凝固糸の単繊維繊度6.1dtex、ポリアクリロニトリル系単繊維繊度1.1dtexおよび結晶配向度90%の前駆体繊維が得られた。得られた前駆体繊維は、単繊維あたりの焼成張力が実施例1と同様になるように各焼成工程の延伸倍率を設定したこと以外は、実施例1と同様にして焼成した。このときの焼成工程通過性はいずれも良好であったが、凝固糸の単繊維繊度が高かったためか、得られた炭素繊維束のストランド物性(引張強度)は5.1GPaと低かった。
[比較例3]
重合開始剤を比較例1の5重量%の量とし、連鎖移動剤を使用しなかったこと以外は、比較例1と同様に重合し、極限粘度が9.5、その重合体溶液の重合体濃度が3.5重量%、伸長時破断時間が19秒のPAN系重合体溶液を得た。その重合体溶液を用いて、表1のように、用いた紡糸口金の孔径を0.30mm、紡糸ドラフトを6、浴中延伸倍率を2.5倍および浴中延伸後のスチーム延伸倍率を5.2倍にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸を行った。その結果、表1に示すような乾燥させた凝固糸の単繊維繊度4.8dtex、ポリアクリロニトリル系単繊維繊度0.4dtexおよび結晶配向度の92%前駆体繊維が得られた。得られた前駆体繊維は、単繊維あたりの焼成張力が実施例1と同様になるように各焼成工程の延伸倍率を設定したこと以外は、実施例1と同様にして焼成した。重合体濃度が低く、紡糸ドラフトが低かったためか、得られた炭素繊維束のストランド物性(引張強度)は4.0GPaと低かった。
[比較例4]
重合開始剤を比較例1の10重量%の量とし、連鎖移動剤を使用しなかったこと以外は、比較例1と同様に重合し、極限粘度6.5、その重合体溶液の重合体濃度は10重量%、伸長時破断時間が19秒のPAN系重合体溶液を得た。その重合体溶液を用いて、表1のように、用いた紡糸口金の孔径を0.03mm、紡糸ドラフトを2、浴中延伸倍率を2倍および浴中延伸後のスチーム延伸倍率を4倍にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして紡糸を行った。その結果、表1に示すような乾燥させた凝固糸の単繊維繊度0.4dtex、ポリアクリロニトリル系単繊維繊度0.05dtexおよび結晶配向度90%の前駆体繊維が得られた。得られた前駆体繊維は単繊維あたりの焼成張力が実施例1と同様になるように各焼成工程の延伸倍率を設定したこと以外は、実施例1と同様にして焼成した。紡糸ドラフトが低かったためか、焼成工程で毛羽が大量に発生し、炭素繊維束を得られなかった。
[実施例7]
AN100重量部、イタコン酸1重量部、連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.003重量部、およびジメチルスルホキシド360重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が100ppmになるまで窒素置換した後、重合開始剤としてAIBN0.003重量部を投入し、撹拌しながら60℃の温度で3.5時間の熱処理を行った。
次に、その反応容器中に、ジメチルスルホキシド10重量部、重合開始剤としてAIBN 0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部を計量導入した後、さらに撹拌しながら下記(1)〜(3)の条件で熱処理を行い、残存する未反応単量体を溶液重合法により重合してPAN系重合体溶液を得た。
(1)60℃の温度で4時間保持
(2)60℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(3)80℃の温度で6時間保持
得られたPAN系重合体溶液を用いて重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつアンモニウム基をPAN系重合体に導入し、紡糸溶液を得た。45℃における粘度が45Pa・sの紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液におけるPAN系重合体は、Mzが156万、Mwが46万、Mz/Mwが3.4であり、伸長時破断時間測定を行うと600秒でも破断しないため伸長時破断時間が600秒以上と判断した。
PAN系重合体溶液を変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
[実施例8]
AN100重量部、イタコン酸0.3重量部、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル(以下、AIBNと略記)0.01重量部、およびジメチルスルホキシド200重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が1000ppmになるまで窒素置換した後、撹拌しながら下記(1)、(2)の条件で熱処理を行い、溶液重合法により重合して、PAN系重合体の一次溶液を得た。
(1)30℃から61℃へ昇温(昇温速度120℃/時間)
(2)61℃の温度で100分間保持
次に、その反応容器中に、イタコン酸0.7重量部、ジメチルスルホキシド10重量部、重合開始剤としてAIBN 0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部を計量導入した後、さらに撹拌しながら下記(3)〜(5)の条件で熱処理を行い、残存する未反応単量体を溶液重合法により重合してPAN系重合体の二次溶液を得た。
(3)61℃の温度で4時間保持
(4)61℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(5)80℃の温度で6時間保持
得られたPAN系重合体溶液を用いて重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつアンモニウム基をPAN系重合体に導入し、紡糸溶液を得た。45℃における粘度が45Pa・sの紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液におけるPAN系重合体は、Mzが86万、Mwが32万、Mz/Mwが2.7であり、伸長時破断時間測定を行うと600秒でも破断しないため伸長時破断時間が600秒以上と判断した。
PAN系重合体溶液を変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
[実施例9]
AN100重量部、イタコン酸1重量部、およびジメチルスルホキシド130重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が100ppmになるまで窒素置換した後、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.002重量部を投入し、撹拌しながら下記(1)、(2)の条件で熱処理を行い、溶液重合法により重合してPAN系重合体の一次溶液を得た。
・ 65℃の温度で2時間保持
・ 65℃から30℃へ降温(降温速度120℃/時間)
得られた一次溶液の一部を測定のためにサンプリングし、水に注いで重合体を沈殿させ、それを80℃の温水で2時間洗浄後、70℃の温度で4時間乾燥して、乾燥重合体を得た。得られた乾燥重合体のMz、MwおよびMnは、それぞれ680万、500万および330万であった。また、一次溶液の溶媒に対する重合体濃度は、2.1重量%であった。
次に、前記一次溶液中に、ジメチルスルホキシド240重量部、ラジカル開始剤としてAIBN 0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部を計量導入した後、さらに撹拌しながら下記(1)〜(4)の条件の熱処理を行い、残存する未反応単量体を溶液重合法により重合してPAN系重合体の二次溶液を得た。
(1)30℃から60℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(2)60℃の温度で4時間保持
(3)60℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(4)80℃の温度で6時間保持
得られたPAN系重合体の二次溶液を希釈して重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつアンモニウム基をPAN系重合体に導入し、紡糸溶液を得た。45℃における粘度が45Pa・sの紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液におけるPAN系重合体は、Mzが274万、Mwが48万、Mz/Mwが5.7であり、伸長時破断時間測定を行うと600秒でも破断しないため伸長時破断時間が600秒以上と判断した。
PAN系重合体溶液を変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
Figure 2009079343
Figure 2009079343
本発明では、高速紡糸、かつ、高紡糸ドラフトを行うことの可能なPAN系重合体溶液を用いることにより、生産性を損なうことなく高品位な炭素繊維用前駆体繊維を製造することができ、その得られた炭素繊維用前駆体繊維を用いることにより、焼成工程でも安定して高性能でかつ高品位な炭素繊維の製造することができ有用である。

Claims (9)

  1. ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解してなる重合体溶液を乾湿式紡糸するに際し、重合体濃度が6〜25重量%であり、かつ、伸長時破断時間が20秒以上であるポリアクリロニトリル系重合体溶液を、平均孔径が0.05〜0.18mmの紡糸口金から、該重合体溶液の紡糸ドラフトが8〜100の範囲となるように設定制御にして吐出巻き取り、紡糸して、乾燥させた凝固糸の単繊維繊度が0.4〜2.3dtexの凝固糸を得、次いで該凝固糸を延伸倍率1〜5倍で延伸して単繊維繊度が0.4〜1.2dtexの延伸糸とすることを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  2. ポリアクリロニトリル系重合体の重合体濃度が15〜25重量%である請求項1記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  3. ポリアクリロニトリル系重合体が、アクリロニトリル100モル部に対して、複数個の(メタ)アクリロイル基を含有する単量体を0.001〜0.3モル部共重合してなる共重合体である請求項1または2記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  4. 重合体溶液が極限粘度1.3〜2.9のポリアクリロニトリル系重合体を含む請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  5. Z平均分子量Mzが80万〜600万であり、多分散度Mz/Mw(Mwは、重量平均分子量を表す)が2.7〜6であるポリアクリロニトリル系重合体を含む請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  6. 重合体溶液の吐出線速度が5〜30m/分である請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  7. 凝固糸の巻き取り速度が50〜200m/分である請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  8. 用いられる凝固浴が、アクリロニトリル系重合体の溶媒と凝固促進成分の混合物を含み、かつ臨界濃度未満の溶媒濃度である請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法によって得られた炭素繊維用前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
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