JP2011122254A - 炭素繊維前駆体繊維束および炭素繊維束とそれらの製造方法 - Google Patents

炭素繊維前駆体繊維束および炭素繊維束とそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
繊維径の異なる単繊維からなる繊維束であって、繊維の含有率が高いプリプレグを作製することができる炭素繊維束を提供する。
【解決手段】
繊維径の分布に複数の極大値を有する3000本以上の炭素繊維の単繊維から構成される炭素繊維束であって、繊維径の分布において、最大の繊維径に対して15%小さい繊維径から最大の繊維径までの範囲における数平均繊維径をR1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR2としたとき、下記式(1)で定義される繊維径比Rが0.2〜0.7であり、R1が4〜7μmであり、R2に対応する本数N2、R1に対応する本数N1としたときにN=N2/N1で定義される混繊比が0.5〜2であり、その炭素繊維束のストランド引張伸度が1.7〜3%である炭素繊維束。
R=R2/R1 ・・・ 式(1)

【選択図】 なし

Description

本発明は、異なる繊維径を有する単繊維からなり高繊維含有率の複合材料を与える異径炭素繊維束に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されつつあり、更なる高性能化の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系前駆体となるポリアクリロニトリル系繊維束を、湿式紡糸または乾湿式紡糸にて得た後、200〜400℃の酸化性雰囲気下で耐炎化繊維束へ転換し、少なくとも1000℃の不活性雰囲気下で炭素化、更に必要に応じて約2000℃以上で黒鉛化することによって、工業的に製造されている。(以降、ポリアクリロニトリルをPANと略記することもある)
炭素繊維を用いて複合材料を製造する場合、性能面およびコスト面から、所望する強度と弾性率を有する薄い複合材料が得られることが望ましい。複合材料を薄物化した場合において従来と同様の強度特性を得る方法としては、炭素繊維の含有率(Vf)を高くする方法がある。この場合において、繊維と繊維の間のデッドスペースを少なくすることが有効であるが、その手法として扁平断面形状の繊維を用いる手法(特許文献1参照。)や、異なる繊維径や異なる断面積を有する繊維から不織布を製造する方法(特許文献2、3参照。)が提案されている。しかしながら、いずれもペーパー状物や不織布の製造法に関するものであり、繊維が一方向に揃っていないため、本質的にVfを高めることが困難であった。また、異なった繊維径を有する単繊維からなる炭素繊維束を製造するに当たっては、異なった繊度の複数の炭素繊維束を合糸することによっても得ることはできるが、その場合、それぞれの異径繊維同士を効率よく分散配列させなければならず、無理な繊維への操作を加えることにより繊維同士が絡み合い、炭素繊維にダメージを与え強度特性が低下することや、絡み合ったことにより最適配列になりにくく、Vfを高めにくいという問題があった。
また、初めから異径の口金孔径を有する口金から異なった繊度のポリアクリロニトリル系繊維束を得ることもできるが、炭素繊維用では例がなく、風合いを特徴とした衣料用であったため繊度が大きかった(特許文献4〜6参照)。単に繊度が大きいだけではなく、繊度を小さくしようとすると紡糸ドラフトの差が大きいため安定的に紡糸できないという欠点があった。
特開2004−027435号公報 特開平11−172559号公報 特開平2−234918号公報 特公昭60−2405号公報 特公昭59−47725号公報 特開平11−217740号公報
本発明の目的は、繊維径の異なる単繊維からなる優れたプリプレグを得ることができる炭素繊維束を提供することにある。
本発明は次の構成を有するものである。すなわち、
(1)3000本以上の炭素繊維の単繊維から構成される炭素繊維束であって、繊維径の分布において、最大の繊維径に対して15%小さい繊維径から最大の繊維径までの範囲における数平均繊維径をR1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR2としたとき、下記式(1)で定義される繊維径比Rが0.2〜0.7であり、R1が4〜7μmであり、R2に対応する本数N2、R1に対応する本数N1としたときにN=N2/N1で定義される混繊比が0.5〜2であり、その炭素繊維束のストランド引張伸度が1.7〜3%である炭素繊維束。
R=R2/R1 ・・・ 式(1)
(2)単繊維断面の数平均真円度が0.85以上である前記(1)記載の炭素繊維束。
(3)3000本以上の炭素繊維前駆体繊維の単繊維から構成される炭素繊維前駆体繊維束であって、繊維径の分布において、最大の繊維径に対して15%小さい繊維径から最大の繊維径までの範囲における数平均繊維径をR1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR2としたとき、下記式(4)で定義される繊維径比Rが0.2〜0.7であり、R’1が4〜7μmであり、R’2に対応する本数N’2、R’1に対応する本数N’1としたときにN’=N’2/N’1で定義される混繊比が0.5〜2であり、原糸結晶配向度が88〜95%であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束。
R’=R’2/R’1 ・・・ 式(4)
(4) 乾湿式紡糸して、凝固引取後の延伸倍率を8〜20倍にして炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、直径の異なる紡糸孔を有する口金を用い、最大の口金孔径に対して15%小さい口金孔径から最大の口金孔径までの範囲における数平均口金孔径をD1とし、その他の数平均口金孔径をD2としたとき、下記式(3)で定義される口金孔径比Dが0.3〜0.8であり、その最小孔径の孔数と最小孔数の孔数の比が0.5〜2であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
D=D2/D1 ・・・ 式(3)
(5)前記(4)に記載の製造方法によって得られたポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、予備炭化工程で得られた繊維を1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維束を得る前記(1)または(2)に記載の炭素繊維束の製造方法。
本発明により、複合材料の薄肉化による部材の軽量化を達成しつつ、優れた静的な引張、圧縮特性、および衝撃特性が得られる複合材料のための炭素繊維束が得られる。
本発明の炭素繊維束は、炭素繊維の単繊維が、3000本以上集束して構成される。このように単繊維数が多いことにより、限られた大きさの製造装置で一度に生産できる量が増え製造時の生産性が大幅に改善されるため低コストでの生産が可能となる。かかる観点から、炭素繊維束を構成する単繊維数は、12000本以上であることが好ましく、24000本以上であればより好ましい。一方で、炭素繊維束の総繊度が高くなりすぎると、炭素繊維パッケージ1個あたり巻取り可能なパッケ−ジ径の限界から炭素繊維束長が短いパッケージとなり、炭素繊維束を用いた製品(中間製品含む)の生産時の生産性が低下するため、炭素繊維束を構成する単繊維数は10万本以下であることが好ましい。
本発明の炭素繊維束を構成する単繊維は、以下に示す特定の繊維径の分布を有するものである。このような炭素繊維束は複数種の孔径を有する紡糸口金で紡糸した炭素繊維前駆体繊維を焼成して得ることができる。ここで、複数のとは2以上を意味するが、上限は10程度である。かかる上限は、紡糸口金から紡糸する方法においては口金加工の技術的限界によって制約を受けるためである。ただし、孔径の種類は多くなっても上記の効果は飽和する場合が多いので、3で十分である場合が多い。
なお、本発明において繊維径とは、それぞれの単繊維の断面の等面積円相当直径のことである。かかる繊維径を得るための炭素繊維の繊維径繊維径の分布を測定するための画像を得る方法としては、光学顕微鏡やレーザー顕微鏡による直接観察や、走査型電子顕微鏡(SEM)による方法がある炭素繊維束を一度に観察する場合には、炭素繊維束を鋭利な刃物で切断し、その断面を光学顕微鏡やレーザー顕微鏡で観察する方法が適している。これらの方法により得られた画像を画像解析して、断面積を求め、それを円と仮定したときの直径に換算することで繊維径を求めることができる。そして、かかる繊維径のデータを500〜1500本の範囲で適宜収集して、繊維径の分布を求める。
本発明において、炭素繊維束を構成する単繊維の繊維径の分布は、次の3つの条件を満たすことが必要である。
第1の条件として、炭素繊維束中の最大の繊維径からその最大の繊維径に対して15%小さい繊維径までの範囲における数平均繊維径をR1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR2としたとき、下記式(1)で定義される繊維径比Rが0.2以上0.7以下であることが必要である。かかるRの範囲は、好ましくは0.2〜0.6であり、より好ましくは0.3〜0.5である。
R=R2/R1 ・・・ 式(1)
従来の炭素繊維では、炭素繊維束を構成する単繊維は、極大値を1つ有する繊維径の分布であり、一般的に炭素繊維束はかかる単繊維径の分布が狭いほど複合材料物性が高いことが知られていた。またかかる、従来の炭素繊維束においては単繊維の繊維径の分布において、最大の繊維径に対して15%小さい繊維径から最大の繊維径までの範囲に全ての単繊維を含むことが多かった。このような炭素繊維においては、最密充填したVfに原理的な限界があり、かつ、繊維束の配列を最密充填の状態にすることが極めて困難であった。Rを上記範囲に設定することでVfの原理的な限界を高めることになり、Vfを高めることが容易となる。具体的には、繊維径R1の単繊維を最密充填したときの隙間に繊維径の小さい単繊維がちょうど収まる繊維径の分布となることが最も効果的にVfを高めやすい。
第2の条件として、本発明の炭素繊維束はR1が4〜7μmであることが必要である。これは、炭素繊維が高強度を発現するためには、かかる繊維径であることが重要であるためであり、好ましくは4〜6μmである。R1が7μmを超えると複合材料の全体として物性バランスが悪いものとなり、R1が3μm以下では、R2が小さくなりすぎてプロセス性が低下する。。
第3の条件として、本発明において、R2に対応する本数N2、R1に対応する本数N1としたときにN=N2/N1で定義される混繊比が0.5〜2であることが必要であり、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。本発明において規定した直径比Rの範囲において、混繊比Nは1に近いほどVfを高めやすいためである。Nが2を超えるとRを小さくしないとVfを高めにくく、Nが0.5未満ではVfを高める効果が不足する。
また、繊維含有率を有効に向上させる効果を発現するためには、炭素繊維束中で細い繊維が太い繊維に対して隣接していることが好ましい。
本発明の炭素繊維束に必要とされるストランド引張伸度は、1.7〜3%であり、好ましくは1.8〜2.5%である。ストランド引張伸度が低いと複合材料の引張強度を高めることができないためである。ストランド引張伸度は高いほど好ましいが、現実的には3%程度が限界であるので、これを上限とした。なお、今後さらに高伸度の炭素繊維が得られた場合には、これを適用することを妨げるものではない。
本発明の炭素繊維束は、単繊維断面の数平均真円度が0.85以上であることが好ましい。本発明において、真円度とは、先の繊維直径と同様に炭素繊維束の断面をSEM観察し、その画像を画像解析することにより単繊維の断面積Sと単繊維の周長Lを求め、下記式(2)を用いて求められる値であり、かかる真円度の数平均をとったものを数平均真円度と定義する。
真円度=4πS/L ・・・ (2)
本発明のように、断面形状を真円度0.85以上の円形とすることにより、単繊維同士の接触面積を最小化し、繊維の広がり性を確保すると共に、プリプレグ中での炭素繊維の含有率を向上させることができ、複合材料の力学特性をさらに向上させることが可能となる。そのため、炭素繊維束を構成する単繊維の真円度は、より好ましくは0.90以上である。なお、特開平11−124743号公報等に示されているように、単繊維の断面形状を真円から変形させる(以降、異形化すると記すこともある)ことにより、炭素繊維の曲げ剛性を向上させることも可能であるが、扁平や3葉など比較的単純な異形断面を有する単繊維からなる炭素繊維束においては、単繊維同士がかみ合ったようになってしまい、広がり性が低下してしまう。また、8葉やC型などの複雑な異形断面を有する単繊維からなる炭素繊維束については、単繊維同士がかみ合ってしまうことは少ないものの、逆に炭素繊維束として単繊維を密に詰めることが不可能になってしまい、プリプレグを製造する際に炭素繊維の含有率を高くすることができず、複合材料の力学特性が低下してしまう。
次に、本発明の炭素繊維束を得るに好適な前駆体繊維束の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維束を得るためには、異なる繊維径の単繊維からなる炭素繊維束を数本単位で交互に混ぜ合わせて3000本以上の炭素繊維束とすることも不可能ではないと考えられるが、生産性の面から工業的に現実的には困難であり、繊維径の分布に複数の極大値を有する3000本以上の炭素繊維前駆体繊維束をまず製造し、かかる前駆体繊維束を焼成することで、を得ることができたものである。
かかる炭素繊維前駆体繊維束を得る方法について以下に説明する。
特定の分子量分布を有するPAN系重合体を用いることによって優れた可紡性を与える炭素繊維前駆体繊維の製造技術を既に提案している(特開2008−248219号)。その検討の中で、容易に繊維構造が類似で繊度の異なる前駆体繊維束が得られることを見出し、本発明に到達した。繊度の異なり、ランダムに分配配列された前駆体繊維を得るためには、前駆体繊維製造工程のなるべく早い段階で混繊することが好ましく、異なる繊度の凝固糸条を得た後に混繊して紡糸することも可能であり、より好ましくは、繊維束を形成する前、すなわち直径の異なる口金孔を有する紡糸口金を用いる。すると、紡糸ドラフトが異なる凝固糸が形成されるので、紡糸ドラフトを空中で吸収する乾湿式紡糸法を用いることが重要である。
本発明で好適に用いられる紡糸溶液は、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwとの比であるMz/Mwが2.7以上であるPAN系重合体が溶媒に溶解されてなる。かかる分子量分布のPAN系重合体は分子量の大きな重合体成分を含んでいるので、本発明の効果が顕著に現れる。
まず、本発明で好適に用いることができるPAN系重合体について説明する。本発明では、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略記する。)法(測定法の詳細は後述する。)で測定されるZ平均分子量(以下、Mzと略記する。)が80万〜600万であり、多分散度(Mz/Mw)(Mwは、重量平均分子量を表す。以下、Mwと略記する。)が2.7〜10である。Mzは、好ましくは200万〜600万であり、より好ましくは250万〜400万であり、さらに好ましくは250万〜320万である。また、多分散度(Mz/Mw)は、好ましくは5〜8であり、より好ましくは5.5〜7である。
GPC法により測定される平均分子量、及び、分子量の分布に関する指標について以下に説明する。
GPC法により測定される平均分子量には、数平均分子量(以下、Mnと略記する)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)、Z+1平均分子量(MZ+1)がある。Mnは、高分子化合物に含まれる低分子量物の寄与を敏感に受ける。これに対して、Mwは、高分子量物の寄与をMnより敏感に受ける。Mzは、高分子量物の寄与をMwより敏感に受け、Z+1平均分子量(以下、MZ+1と略記する)は、高分子量物の寄与をMzより敏感に受ける。
GPC法により測定される平均分子量を用いて得られる分子量の分布に関する指標には、分子量分布(Mw/Mn)や多分散度(Mz/MwおよびMZ+1/Mw)があり、これらを用いることにより分子量の分布の状況を示すことができる。分子量分布(Mw/Mn)が1であるとき単分散であり、分子量分布(Mw/Mn)が1より大きくなるにつれて分子量の分布が低分子量側を中心にブロードになることを示すのに対して、多分散度(Mz/Mw)は1より大きくなるにつれて、分子量の分布が高分子量側を中心にブロードになることを示す。また、多分散度(MZ+1/Mw)も1より大きくなるにつれて、分子量の分布が高分子量側を中心にブロードになる。特に、多分散度(MZ+1/Mw)は、Mwの大きく異なる2種のポリマーを混合しているような場合には、顕著に大きくなる。ここで、GPC法により測定される分子量はポリスチレン換算の分子量を示す。多分散度(Mz/Mw)が大きいほど好ましく、Mzが80万〜600万の範囲であれば、多分散度(Mz/Mw)が2.7以上において、充分な歪み硬化が生じPAN系重合体を含む紡糸溶液の吐出安定性向上度合が充分となる。また、多分散度(Mz/Mw)が、大きすぎる場合、歪み硬化が強すぎて、PAN系重合体を含む紡糸溶液の吐出安定性向上効果が低下する場合があるが、Mzが80万〜600万の範囲で、多分散度(Mz/Mw)が、10以下であると、PAN系重合体を含む紡糸溶液の吐出安定性向上度合は充分となる。また、多分散度(Mz/Mw)が2.7〜10の範囲において、Mzが80万未満では、前駆体繊維の強度が不足する場合があり、Mzが600万より大きいと吐出が困難となる場合がある。
また、Mw/Mnは、小さいほど炭素繊維の構造欠陥となりやすい低分子成分の含有量が少ないため、小さいほど好ましく、Mz/MwよりもMw/Mnが小さいことが好ましい。すなわち、高分子量側にも、低分子量側にもブロードであっても、吐出安定性低下は少ないが、低分子量側はなるべくシャープであることが好ましく、Mz/MwがMw/Mnに対して、1.5倍以上であることが好ましく、更には1.8倍以上であることがより好ましい。本発明者らの検討によると、通常、アクリロニトリル(以下、ANと略記する)の重合でよく行われている、水系懸濁、溶液法などのラジカル重合においては、分子量分布として低分子量側に裾を引いているため、Mw/MnがMz/Mwよりも大きくなる。そのため、重合開始剤の種類と割合や逐次添加など、特殊な条件で重合を行うか、一般的なラジカル重合を用いる場合、2種以上のPAN系重合体を混合する方法があり、重合体を混合する方法が簡便である。混合する種類は、少ないほど簡便であり、吐出安定性の観点からも2種で十分なことが多い。
混合する重合体のMwは、Mwの大きいPAN系重合体をA成分とし、Mwの小さいPAN系重合体をB成分とすると、A成分のMwは好ましくは100万〜1500万であり、より好ましくは100万〜500万であり、B成分のMwは5万〜90万であることが好ましい。A成分とB成分のMwの差が大きいほど、混合された重合体のMz/Mwが大きくなる傾向があるため好ましい態様であるが、A成分のMwが1500万より大きいときはA成分の生産性は低下する場合があり、B成分のMwが15万未満のときは前駆体繊維の強度が不足する場合があり、Mz/Mwは10以下とすることが現実的である。
具体的には、A成分とB成分の重量平均分子量の比は、4〜45であることが好ましく、20〜45であることがより好ましい。
また、A成分とB成分の重量比は、0.003〜0.3であることが好ましく、0.005〜0.2であることがより好ましく、0.01〜0.1であることが更に好ましい。A成分とB成分の重量比が0.003未満では、歪み硬化が不足することがあり、また0.3より大きいときは重合体溶液の吐出粘度が上がりすぎて吐出困難となることがある。
A成分とB成分の重合体を混合する場合、両重合体を混合してから溶媒で希釈する方法、重合体それぞれを溶媒に希釈したもの同士を混合する方法、溶解しにくい高分子量物であるA成分を溶媒に希釈した後にB成分を混合溶解する方法、および高分子量物であるA成分を溶媒に希釈したものとB成分を構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法などを採用することができる。混合には、混合槽で攪拌する方法やギヤポンプなどで定量してスタティックミキサーで混合する方法、二軸押出機を用いる方法などが好ましく採用できる。高分子量物を均一に溶解させる観点から、高分子量物であるA成分を初めに溶解する方法が好ましい。特に、炭素繊維前駆体製造用とする場合には、高分子量物であるA成分の溶解状態が極めて重要であり、わずかであっても未溶解物が存在していた場合には異物として認識され、炭素繊維内部にボイドを形成することがある。
具体的には、A成分の溶媒に対する重合体濃度、すなわちA成分と溶媒のみからなる溶液を仮想したときの、その溶液中におけるA成分の重合体濃度を好ましくは0.1〜5重量%になるようにした後、B成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合して重合する。上記のA成分の重合体濃度は、より好ましくは0.3〜3重量%であり、さらに好ましくは0.5〜2重量%である。上記のA成分の重合体濃度は、より具体的には、重合体の集合状態として、重合体がわずかに重なり合った準希薄溶液とすることが好ましく、B成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合して重合する際に、混合状態が均一となりやすいため、孤立鎖の状態となる希薄溶液とすることが更に好ましい態様である。希薄溶液となる濃度は、重合体の分子量と溶媒に対する重合体の溶解性によって決まる分子内排除体積によって決まるとみられるため、一概には決められないが、本発明においては概ね前記範囲にすることにより凝集して異物となることが少ない。上記の重合体濃度が5重量%を超える場合は、A成分の未溶解物が存在することがあり、0.1重量%未満の場合は、分子量にもよるが希薄溶液となっているため効果が飽和していることが多い。
上記のように、A成分の溶媒に対する重合体濃度を好ましくは0.1〜5重量%になるようにした後、それにB成分を混合溶解する方法でもかまわないが、工程省略の観点から高分子量物を溶媒に希釈したものとB成分を構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法を採用する方が好ましい。
A成分の溶媒に対する重合体濃度を0.1〜5重量%になるようにする方法としては、希釈による方法でも重合による方法でも構わない。希釈する場合は、均一に希釈できるまで撹拌することが重要であり、希釈温度としては50〜120℃が好ましく、希釈時間は希釈温度や希釈前濃度によって異なるため、適宜設定すればよい。希釈温度が50℃未満の場合は、希釈に時間がかかることがあり、120℃を超える場合は、A成分が変質する恐れがある。また、重合体の重なり合いを希釈する工程を減らし、均一に混合する観点から、前記のA成分の製造から前記のB成分の混合開始、あるいは、B成分を構成する単量体の重合開始までの間、A成分の溶媒に対する重合体濃度を0.1〜5重量%の範囲に制御することが好ましい。具体的には、A成分を溶液重合により製造する際に、重合体濃度が5重量%以下で重合を停止させ、それにB成分を混合する、あるいは、B成分を構成する単量体を混合しその単量体を重合する方法である。通常、溶媒に対する仕込み単量体の割合が少ないと、溶液重合により高分子量物を製造ことは困難なことが多いため仕込み単量体の割合を多くするが、上記のA成分の重合体濃度が5重量%以下の段階では、重合率が低く、未反応単量体が多く残存していることになる。未反応単量体を揮発除去してから、B成分を混合してもかまわないが、工程省略の観点からその未反応単量体を用いてB成分を溶液重合することが好ましい。
本発明で好適に用いられるA成分としては、PANと相溶性を有することが望ましく、相溶性の観点からPAN系重合体であることが好ましい。組成としては、ANが好ましくは93〜100モル%であり、ANと共重合可能な単量体を7モル%以下なら共重合させてもよいが、共重合成分の連鎖移動定数がANより小さく、必要とするMwを得にくい場合は、共重合成分の量をなるべく減らすことが好ましい。
ANと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。また、A成分は実質的に直鎖状のPANであることが好ましく、多官能のビニル基を有する単量体などを用いないことが好ましい。分岐や架橋構造は、簡便には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法−多角度光散乱光度(GPC―MALLS)法で求められる分子量と回転半径の関係が直鎖状PANのその関係と同一かどうかで判断できる。共有結合や水素結合、イオン結合による架橋構造を有するものは分子量の割に回転半径が小さくなる傾向を示し、本発明では、直鎖状PANに含めない。
A成分であるPAN系重合体を製造するための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法などから選択することができるが、ANや共重合成分を均一に重合する目的からは、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いて重合する場合、溶媒としては、例えば、塩化亜鉛水溶液、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPANが可溶な溶媒が好適に用いられる。必要とするMwを得にくい場合は、連鎖移動定数の大きい溶媒、すなわち、塩化亜鉛水溶液による溶液重合法、あるいは水による懸濁重合法も好適に用いられる。
本発明で好適に用いられるB成分であるPAN系重合体の組成としては、ANが好ましくは93〜100モル%であり、ANと共重合可能な単量体を7モル%以下なら共重合させてもよいが、共重合成分量が多くなるほど耐炎化工程で共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する。
ANと共重合可能な単量体としては、耐炎化を促進する観点から、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
B成分であるPAN系重合体を製造するための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法などから選択することができるが、ANや共重合成分を均一に重合する目的からは、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いて重合する場合、溶媒としては、例えば、塩化亜鉛水溶液、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPANが可溶な溶媒が好適に用いられる。中でも、PANの溶解性の観点から、ジメチルスルホキシドを用いることが好ましい。これらの重合に用いる原料は、全て濾過精度1μm以下のフィルター濾材を通した後に用いることが好ましい。
前記したPAN系重合体を、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどPAN系重合体が可溶な溶媒に溶解し、紡糸溶液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いられる溶媒と紡糸溶媒を同じものにしておくと、得られたPAN系重合体を分離し紡糸溶媒に再溶解する工程が不要となる。
紡糸溶液における重合体濃度は、5〜30重量%の範囲であることが好ましく、14〜25重量%であることがより好ましく、18〜23重量%であることが最も好ましい。重合体濃度が5重量%未満では溶媒使用量が多くなり、口金単孔からの紡糸溶液の吐出量が増加し、紡糸条件設定上、紡糸ドラフトを高めにくいことがある。一方、重合体濃度が30重量%を超えると絡み合いが多くなることで絡み合い間分子量が低下し、可紡性が低下することがある。紡糸溶液の重合体濃度は、使用する溶媒量により調製することができる。
本発明において重合体濃度とは、PAN系重合体の溶液中に含まれるPAN系重合体の重量%である。具体的には、PAN系重合体の溶液を計量した後、PAN系重合体を溶解せずかつPAN系重合体溶液に用いる溶媒と相溶性のあるものに、計量したPAN系重合体溶液を脱溶媒させた後、PAN系重合体を計量する。重合体濃度は、脱溶媒後のPAN系重合体の重量を、脱溶媒する前のPAN系重合体の溶液の重量で割ることにより算出する。
また、45℃の温度における紡糸溶液の粘度は、15〜200Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜150Pa・sの範囲であることがより好ましく、30〜100Pa・sの範囲であることが最も好ましい。溶液粘度が15Pa・s未満では、紡糸糸条の賦形性が低下するため、口金から出た糸条を引き取る速度、すなわち可紡性が低下する傾向を示す。また、溶液粘度は200Pa・sを超えると絡み合いが多くなり、分子量低下しやすくなる傾向を示す。紡糸溶液の粘度は、重量平均分子量と重合体濃度、溶媒の種類により制御することができる。
45℃の温度におけるPAN系重合体溶液の粘度は、B型粘度計により測定することができる。具体的には、ビーカーに入れたPAN系重合体溶液を、45℃の温度に温度調節された温水浴に浸して調温した後、B型粘度計として、例えば、(株)東京計器製B8L型粘度計を用い、ローターNo.4を使用し、PAN系重合体溶液の粘度が0〜100Pa・sの範囲はローター回転数6r.p.m.で測定し、またそのPAN系重合体溶液の粘度が100〜1000Pa・sの範囲はローター回転数0.6r.p.m.で測定する。
さらにこの重合体溶液を濾過精度が0.5〜10μmのフィルターを用いて濾過して用いることが好ましい。
本発明では、上述のようにして得た紡糸溶液を、乾湿式紡糸法により紡糸することにより、炭素繊維前駆体繊維を製造する。
本発明において、好適に用いられる口金の孔数は、3000〜30000個である。孔数が3000個より少ない場合、生産性が低下し、そのような状態では本発明の効果が得にくい。一方、孔数が30000個を超える場合には、口金が大きくなりすぎて本発明の凝固浴液の整流が困難となることがある。
本発明において、口金孔は、前駆体繊維の真円度を高めるために、その孔形状が円形であることが好ましく、孔形状が円形である場合、口金孔の最大の孔径は、0.18mm〜0.35mmであることが好ましく、0.25〜0.3mmであることがより好ましい。かかる孔径が0.18mm未満であると吐出線速度が大きく、紡糸ドラフトを高めることが困難となることが多く、また、0.35mmを超えると紡糸ドラフトを高めすぎることが必要となり、吐出が不安定となることがある。吐出線速度は口金孔径により変化するため、紡糸ドラフトを制御するために有効である。重要なことは、直径の異なる紡糸孔を有することであり、最大の口金孔径に対して15%小さい口金孔径から最大の口金孔径までの範囲における数平均口金孔径をD1とし、その他の数平均口金孔径をD2としたとき、下記式(3)で定義される口金孔径比Dが0.3〜0.8であり、好ましくは0.4〜0.7であり、
D=D2/D1 ・・・ 式(3)
その最小孔径の孔数と最小孔数の孔数の比が0.5〜2であり、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。
炭素繊維束の異なる繊維径分布の数と同種類の口金孔径の種類を含めればよい。繊維径は各口金孔径からの吐出量と関連する。紡糸溶液のレオロジー特性に応じて、口金孔径、単孔吐出量と口金背面圧の関係が決まり、紡糸孔の口金背面圧が一定になるように、異なる口金孔径から異なる単孔吐出量で吐出されるため、口金孔径を調整することで容易に複数の繊度を設計できる。
本発明において口金孔の孔径は、紡糸口金面を顕微鏡観察することにより測定することができる。
また、繊維含有率を有効に向上させる効果を発現するためには、細い繊維が太い繊維に対して隣接していることが好ましいが、それを達成するためには、異なる口金孔径を交互配列させた紡糸口金を用いることが好ましい。
また、紡糸口金の平均孔径(D)と平均孔長(L)の比であるL/Dの最大値が1〜3であることが好ましい。L/Dが1未満であると吐出が安定しないことがあるが、L/Dは大きいほど剪断印加時間が長くなり、分子量低下が発生しやすいのでL/Dが3以下であることが好ましい。孔径に対してはL/Dの影響は小さく、外周部分は孔長を長くするなどの手段も活用でき、最小値よりも平均的な値が全体の特性を決めるため、平均値を用いる。L/Dによっても単孔吐出量を制御できるが、制御の範囲が口金孔径に比べて小さいので、主に口金孔径により、繊度を制御すべきである。
紡糸溶液の紡糸ドラフトは5〜50の範囲とすることである。ここで紡糸ドラフトとは、紡糸糸条が口金を離れて最初に接触する駆動源を持ったローラーの表面速度(凝固糸の巻き取り速度)を、口金からの吐出線速度で割った値をいう。紡糸ドラフトが5未満では、望む前駆体繊維の繊度を得るために口金孔径を小さくせざるを得ないことがあり、剪断速度を低下させる観点からは紡糸ドラフトが50以下で十分である。吐出量を変更し、吐出線速度を変更することで容易に紡糸ドラフトを変更することができるため、吐出線速度を変更して吐出角度を確認しながら本発明の吐出角度になるように調整すればよい。吐出量は、生産量に関係するので必要な生産量になるように、最終的には吐出量を固定して紡糸口金孔径を変更することで設定の紡糸ドラフトを得ればよい。
本発明において用いられる凝固浴には、PAN系重合体溶液で溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、およびチオ硫酸ナトリウム水溶液などのPAN系重合体の溶媒と、いわゆる凝固促進成分の混合物が用いられる。凝固促進成分としては、前記のPAN系重合体を溶解せず、かつPAN系重合体溶液に用いた溶媒と相溶性があるものが好ましい。凝固促進成分としては、具体的には、水、メタノール、エタノールおよびアセトンなどが挙げられるが、回収する必要がないことと安全性の面、凝固に必要な凝固促進成分の量が少ないことから水を使用することが最も好ましい。凝固浴の溶媒濃度、温度などの条件は公知の条件に従って設定すればよい。
本発明において、PAN系重合体溶液を凝固浴中に導入して凝固させ凝固糸を形成した後、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を経て、炭素繊維前駆体繊維が得られる。また、上記の工程に乾熱延伸工程や蒸気延伸工程を加えてもよい。凝固後の糸条は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。浴中延伸は、通常、30〜98℃の温度に温調された単一または複数の延伸浴中で行うことが好ましい。そのときの延伸倍率は、1〜5倍であることが好ましく、1〜3倍であることがより好ましい。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、延伸された繊維糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。シリコーン油剤は、耐熱性の高いアミノ変性シリコーン等の変性されたシリコーンを含有するものを用いることが好ましい。
乾燥工程としては、例えば、乾燥温度が70〜200℃で乾燥時間が10秒から200秒の乾燥条件が好ましい結果を与える。生産性の向上や結晶配向度の向上として、乾燥工程後に加熱熱媒中で延伸することが好ましい。加熱熱媒としては、例えば、加圧水蒸気あるいは過熱水蒸気が操業安定性やコストの面で好適に用いられ、延伸倍率は通常1.5〜10倍である。
前駆体繊維の結晶配向度を制御する観点から、本発明の凝固引き取り後の延伸倍率を8〜20倍、好ましくは10〜20倍とする。延伸倍率が8倍未満の時は、前駆体繊維の結晶配向度が不足し、一方、延伸倍率が20倍を超えるときは毛羽が発生しやすくなり、Vfを高めにくい。
このようにして得られた本発明の前駆体繊維束は、繊維束を構成する単繊維の繊維径が、特定の分布を有する前駆体繊維束となる。また、本発明において、炭素繊維前駆体繊維束を構成する単繊維の繊維径の分布は、さらに次の3つの条件を満たすことが必要である。
第1の条件として、炭素繊維前駆体繊維束中の最大の繊維径からその最大の繊維径に対して15%小さい繊維径までの範囲における数平均繊維径をR’1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR’2としたとき、下記式(4)で定義される繊維径比R’が0.2以上0.7以下であることが必要である。かかるRの範囲は、好ましくは0.2〜0.6であり、より好ましくは0.3〜0.5である。
R’=R’2/R’1 ・・・ 式(4)
第2の条件として、本発明の炭素繊維を得るための炭素繊維前駆体繊維束は、R’1が6〜11μmであり、好ましくは6〜8μmである。
第3の条件として、R’2に対応する本数N’2、R’1に対応する本数N’1としたときにN’=N’2/N’1で定義される混繊比が0.5〜2であり、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。本発明の炭素繊維束の混繊比Nを得るためには、前駆体繊維束の混繊比N’を上記範囲にする必要がある。また、繊維含有率を有効に向上させる効果を発現するためには、細い繊維が太い繊維に対して隣接していることが好ましく、前駆体繊維束の段階で既に細い繊維が太い繊維に対して隣接していることが好ましい。そのためには、上述のように、異なる口金孔径を交互配列させた紡糸口金を用いることが好ましい。
本発明の前駆体繊維束の結晶配向度は、88〜95%であり、好ましくは91〜93%である。結晶配向度が低い炭素繊維のストランド引張伸度が不足し、一方、結晶配向度が95%を超えると毛羽を発生しやすくなる。
本発明の前駆体繊維束は、前記の特性を有する前駆体繊維の単繊維が、3000本以上集束して構成されることが好ましい。3000本より少ない前駆体繊維束を合糸して炭素繊維束を形成しても構わないが、経済性の面で好ましくない。前駆体繊維束を構成する単繊維数は、より好ましくは12000本以上であり、更に好ましくは24000本以上である。
炭素繊維の真円度を制御するためには、本発明の前駆体繊維束を構成する単繊維断面の真円度は、0.85以上であることが好ましい。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
本発明では、前記のようにして得た炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、予備炭化工程で得られた繊維を1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維を得ることができる。
本発明において、耐炎化とは、空気を4〜25mol%以上含む雰囲気中における熱処理をいう。通常、紡糸工程と耐炎化工程以降は非連続であるが、紡糸工程と耐炎化工程の一部もしくは全てを連続的に行っても構わない。
耐炎化する際の延伸比は、0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1とする。耐炎化する際の延伸比が0.8を下回ると、耐炎化工程の張力が低下し、耐炎化炉スリットなどで擦過を起こすことがあり、得られる炭素繊維の単繊維強度分布が広がる。また、耐炎化する際の延伸比が1.2を超えると、延伸張力が高すぎてローラー等に圧迫されて圧痕が残ることや欠陥が拡大することがある。
耐炎化の処理時間は、10〜100分の範囲で適宜選択することができるが、続く予備炭化の生産安定性、および、得られる炭素繊維の力学物性向上の目的から、得られる耐炎化繊維の比重が1.3〜1.38の範囲となるように設定することが好ましい。
予備炭化、および、炭化は、不活性雰囲気中で行なわれるが、用いられる不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、および、キセノンなどが用いられる。経済的な観点からは、窒素が好ましく用いられる。
なお、予備炭化における昇温速度は、500℃/分以下に設定されることが好ましい。
予備炭化を行う際の延伸比は、0.95〜1.2、好ましくは1.0〜1.1とする。予備炭化を行う際の延伸比が0.95を下回ると、得られる予備炭化繊維の配向度が不十分となり、炭素繊維のストランド引張弾性率が低下する。また、予備炭化を行う際の延伸比が1.2を超えると、延伸張力が高すぎてローラー等に圧迫されて圧痕が残ることや欠陥が拡大することがある。
炭化の温度は、好ましくは1,000〜2,000℃、より好ましくは1,200〜1800℃、さらに好ましくは1,300〜1,600℃とする。一般に炭化の最高温度が高いほど、ストランド引張弾性率は高まるものの、引張強度は1,500℃付近で極大となるため、両者のバランスを勘案して、炭化の温度を設定する。
炭化を行う際の延伸比は、0.96〜1.05、好ましくは0.97〜1.05、より好ましくは0.98〜1.03とする。炭化を行う際の延伸比が0.96を下回ると、得られる炭素繊維の配向度や緻密性が不十分となり、ストランド引張弾性率が低下する。また、炭化を行う際の延伸比が1.05を超えると、延伸張力が高すぎてローラー等に圧迫されて圧痕が残ることや欠陥が拡大することがある。
より弾性率が高い炭素繊維を所望する場合には、炭化工程に続き黒鉛化を行うこともできる。黒鉛化工程の温度は2000〜2800℃であるのがよい。また、その最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて適宜選択して使用される。黒鉛化工程における延伸比は、所望する炭素繊維の要求特性に応じて、毛羽発生など品位低下の生じない範囲で適宜選択するのがよい。
得られた炭素繊維はその表面改質のため、電解処理することができる。電解処理に用いられる電解液には、硫酸、硝酸および塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムのようなアルカリまたはそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維の炭化度に応じて適宜選択することができる。
電解処理により、得られる繊維強化複合材料において炭素繊維マトリックスとの接着性が適正化することができ、接着が強すぎることによる複合材料の脆性的な破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないという問題が解消され、得られる繊維強化複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
電解処理の後、炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理を施すこともできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂等との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明により得られる炭素繊維は、プリプレグとしてオートクレーブ成形、織物などのプリフォームとしてレジントランスファーモールディングで成形するなど種々の成形法により、衝撃後圧縮強度など様々な機械特性に優れた炭素繊維強化複合材料を与えることから、航空機用構造材料、自動車用途、船舶用途、スポーツ用途およびその他一般産業用途に衝撃後圧縮強度に優れる炭素繊維強化複合材料として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例で用いた測定方法を次に説明する。
<炭素繊維、前駆体繊維の単繊維の断面形状>
炭素繊維束あるいは、前駆体繊維束を繊維軸に垂直にカミソリで切断し、光学顕微鏡を用いて単繊維の断面形状の観察を行った。測定倍率は、最も細い単繊維が1mm程度となるよう倍率200〜400倍程度とした。得られた画像を画像解析することにより炭素繊維の単繊維の断面積と周長を求め、その断面積から単繊維の断面の直径(繊維径)を0.1μm単位で計算して求め、また、下記式(2)を用いて単繊維の真円度を求めた。繊維径は2000点求めて、分布を評価し、真円度は、2000本のうちから無作為に選んだ3本の単繊維の平均値を用いた。
真円度=4πS/L ・・・ (2)
(式中、Sは単繊維の断面積を表し、Lは単繊維の周長を表す。)。
<炭素繊維束のストランド引張伸度>
JIS R7608(2007)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃の温度で30分硬化させて作製する。また、炭素繊維のストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を引張強度とする。本実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製“ベークライト”(登録商標)ERL4221を用いた。n数は6とし、平均値を求めた。
<前駆体繊維の結晶配向度>
繊維軸方向の配向度は、次のように測定した。繊維束を40mm長に切断して、20mgを精秤して採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにそろえた後、試料調整用治具を用いて幅1mmの厚さが均一な試料繊維束に整えた。薄いコロジオン液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、広角X線回折測定試料台に固定した。X線源として、Niフィルターで単色化されたCuのKα線を用い、2θ=17°付近に観察される回折の最高強度を含む子午線方向のプロフィールの広がりの半価幅(H゜)から、次式を用いて結晶配向度(%)を求めた。n数は3とし、平均値を求めた。
結晶配向度(%)=[(180−H)/180]×100
なお、上記広角X線回折装置として、島津製作所製XRD-6100を用いた。
<積層複合材(複合材料)の衝撃後圧縮強度(CAI)>
次に示す原料樹脂を使用し、ニーダーで混練して樹脂組成物を調製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート(登録商標)825):50重量部、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(住友化学(株)製ELM434):50重量部、ポリエーテルスルホン樹脂15重量部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン:46重量部、ナイロン12粒子(東レ(株)製、SP500、平均粒径5μm):16重量部
1.プリプレグの作製
マトリックス樹脂組成物について、ナイロン12粒子を除くベース樹脂を調製し、ナイフコーターを用いて樹脂目付21g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを一方向に引き揃えた各実施例、比較例の炭素繊維(目付210g/m)の両面に重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながらマトリックス樹脂組成物を含浸させ、一次プリプレグを得た。次に、最終的な複合材料用プリプレグのマトリックス樹脂組成が上記配合量になるように、ナイロン12粒子を加えて調整したマトリックス樹脂組成物で、ナイフコーターを用いて樹脂目付21g/mで離型紙上にコーティングし、樹脂フィルムを作製した。この樹脂フィルムを一次プリプレグの両面に重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながら樹脂を含浸させ、目的のプリプレグを得た。
2.積層複合材(複合材料)の衝撃後圧縮強度
上記した方法により作製した一方向プリプレグを(+45/0/−45/90)3sの構成で積層し、オートクレーブにて、180℃の温度で3時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層複合材を作製した。この積層体について、JIS K7089(1996)に従い、0°方向が6インチ、90°方向が4インチの長方形に切り出し、その中央に落下高さ571mmで、270インチ・ポンドの落錘衝撃を与え、衝撃後圧縮強度を求めた。かかる衝撃後圧縮強度は、5個の試料について測定し、その平均衝撃後圧縮強度を求めた。また、測定については、室温乾燥状態(25℃±2℃、相対湿度50%)で行った。
[実施例1]
AN100重量部、イタコン酸1重量部、およびジメチルスルホキシド130重量部を混合し、それを還流管と攪拌翼を備えた反応容器に入れた。反応容器内の空間部を酸素濃度が100ppmまで窒素置換した後、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.002重量部を投入し、撹拌しながら下記の条件(重合条件Bと呼ぶ。)の熱処理を行った。
・ 65℃の温度で2時間保持
・ 65℃から30℃へ降温(降温速度120℃/時間)
次に、その反応容器中に、ジメチルスルホキシド240重量部、ラジカル開始剤としてAIBN 0.4重量部、および連鎖移動剤としてオクチルメルカプタン0.1重量部を計量導入した後、さらに撹拌しながら次の(1)〜(4)の熱処理(重合条件Aと呼ぶ)を行い、溶液重合法により重合して、PAN系重合体溶液を得た。
(1)30℃から60℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(2)60℃の温度で4時間保持
(3)60℃から80℃へ昇温(昇温速度10℃/時間)
(4)80℃の温度で6時間保持
得られたPAN系重合体溶液を用いて重合体濃度が20重量%となるように調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことにより、イタコン酸を中和しつつアンモニウム基をPAN系重合体に導入し、紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液におけるPAN系重合体は、Mwが48万、Mz/Mwが5.7、MZ+1/Mwが14であり、紡糸溶液の粘度は45Pa・sであった。
得られた紡糸溶液を、40℃の温度で、表1に示す口金孔径の異なる口金孔が交互配列された紡糸口金から一旦5mmエアギャップを走行させ、3℃の温度にコントロールした20重量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により紡糸し、凝固糸とした。得られた凝固糸を水洗した後、70℃の温度の温水中で2倍の浴中延伸倍率で延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系油剤を付与し、190℃の温度のホットドラムを用いて乾燥し、その後0.4MPaの加圧水蒸気中で6倍の後延伸を行って、2本合糸して単繊維12000本からなる炭素繊維前駆体繊維束を得た。得られた炭素繊維前駆体繊維束は毛羽がほとんどなく、その品位は優れていた。前駆体繊維束の特性を評価した結果を表1に示す。
得られた前駆体繊維束を240〜280℃の空気中で加熱して耐炎化繊維に転換した。耐炎化処理の時間は40分、耐炎化処理の工程における延伸比は1.00とした。
さらに、この耐炎化繊維を、300〜800℃の窒素雰囲気中で加熱して予備炭素化処理した後、最高温度1300℃の窒素雰囲気中で加熱して炭素化処理した。予備炭素化処理の工程における延伸比は1.0、炭素化処理の工程における延伸比は、0.97とした。さらに、炭素化処理して得られた繊維を硫酸水溶液中で、10クーロン/g−CFの電気量で陽極酸化処理を行って炭素繊維束を得た。炭素繊維束の特性、それを用いたCAIの測定結果を表1に示す。
[実施例2]
紡糸口金の孔を小さい口金孔を1500個ふさいで紡糸した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。
[実施例3]
紡糸口金の孔を大きい口金孔を1500個ふさいで紡糸した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。
[実施例4]
紡糸口金を表1に示す仕様に変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。
[実施例5]
吐出量を調整して繊維径を変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。
[実施例6]
凝固浴濃度を50%に変更した以外は実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。その影響で繊維断面の真円度が低下し、CAIの向上効果は小さくなった。複合材料の断面観察を行うとわずかに含浸不足と見られるボイドがあった。
[比較例1]
紡糸口金を表1に示す仕様に変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。複合材料の断面観察を行うと含浸不足と見られるボイドがあり、CAIは低下した。Vfを低下させて、複合材料を成形するとCAIが向上する傾向にあった。
[比較例2]
紡糸口金の孔を小さい口金孔を3000個ふさいで紡糸した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。複合材料の断面観察を行うと含浸不足と見られるボイドがあり、CAIは低下した。Vfを低下させて、複合材料を成形するとCAIが向上する傾向にあった。
[比較例3]
紡糸口金の孔を小さい口金孔を3000個ふさいで紡糸した以外は、実施例5と同様にして、炭素繊維束を得た。複合材料の断面観察を行うと含浸不足と見られるボイドがあり、CAIは低下した。Vfを低下させて、複合材料を成形するとCAIが向上する傾向にあった。
[比較例4]
紡糸口金の孔を小さい口金孔を2000個ふさいで紡糸した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。複合材料の断面観察を行うと含浸不足と見られるボイドがわずかにあり、CAIは低下した。
[比較例5]
紡糸口金の孔を大きい口金孔を2000個ふさいで紡糸した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。複合材料の断面観察を行うと含浸不足と見られるボイドがわずかにあり、CAIは低下した。
[比較例6]
吐出量を調整して繊維径を変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。炭素繊維束のストランド物性、および複合材料特性が大幅に低下した。
[比較例7]
紡糸口金を表1に示す仕様に変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。
[比較例8]
後延伸の倍率を3倍に変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維束を得た。炭素繊維束のストランド引張伸度が低下したため、複合材料物性も大幅に低下した。

上記した実施例および比較例における前駆体繊維製造条件およびその評価などの結果を、表1にまとめて示す。
Figure 2011122254
本発明では、衝撃後圧縮強度など高Vfでは低下しやすい物性を向上させつつ、全体の複合材料の物性を容易に高められる炭素繊維束を提供することができる。

Claims (5)

  1. 3000本以上の炭素繊維の単繊維から構成される炭素繊維束であって、繊維径の分布において、最大の繊維径に対して15%小さい繊維径から最大の繊維径までの範囲における数平均繊維径をR1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR2としたとき、下記式(1)で定義される繊維径比Rが0.2〜0.7であり、R1が4〜7μmであり、R2に対応する本数N2、R1に対応する本数N1としたときにN=N2/N1で定義される混繊比が0.5〜2であり、その炭素繊維束のストランド引張伸度が1.7〜3%である炭素繊維束。
    R=R2/R1 ・・・ 式(1)
  2. 単繊維断面の数平均真円度が0.85以上である請求項1記載の炭素繊維束。
  3. 3000本以上の炭素繊維前駆体繊維の単繊維から構成される炭素繊維前駆体繊維束であって、繊維径の分布において、最大の繊維径に対して15%小さい繊維径から最大の繊維径までの範囲における数平均繊維径をR1とし、その他の単繊維の数平均繊維径をR2としたとき、下記式(4)で定義される繊維径比Rが0.2〜0.7であり、R’1が4〜7μmであり、R’2に対応する本数N’2、R’1に対応する本数N’1としたときにN’=N’2/N’1で定義される混繊比が0.5〜2であり、原糸結晶配向度が88〜95%であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束。
    R’=R’2/R’1 ・・・ 式(4)
  4. 乾湿式紡糸して、凝固引取後の延伸倍率を8〜20倍にして炭素繊維前駆体繊維束を得るに際し、直径の異なる紡糸孔を有する口金を用い、最大の口金孔径に対して15%小さい口金孔径から最大の口金孔径までの範囲における数平均口金孔径をD1とし、その他の数平均口金孔径をD2としたとき、下記式(3)で定義される口金孔径比Dが0.3〜0.8であり、その最小孔径の孔数と最小孔数の孔数の比が0.5〜2であるポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束の製造方法。
    D=D2/D1 ・・・ 式(3)
  5. 請求項4に記載の製造方法によって得られたポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維束を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、予備炭化工程で得られた繊維を1,000〜3,000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維束を得る請求項1または2に記載の炭素繊維束の製造方法。
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