JP2020015997A - 炭素繊維用前駆体繊維の製造方法 - Google Patents

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Takayuki Nakanishi
貴之 中西
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Abstract

【課題】 単糸間の融着の発生を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】 ポリアクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸原液中のアクリロニトリル単量体の濃度を10ppm未満とした後、紡糸原液のpHを7.2〜10.0に調整し、該紡糸原液を用いて紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法。また、ポリアクリロニトリル系共重合体がカルボキシル基含有ビニル系化合物を共重合したものであることや、ポリアクリロニトリル系共重合体が水系懸濁重合により得られたものであること、紡糸原液が水分を10ppm以上含有していることが好ましい。さらに、紡糸原液のpH調整にアンモニアを使用することや、紡糸方法が湿式または乾湿式であること、紡糸後の繊維を150℃以上のローラーにて乾燥すること、紡糸後の繊維をスチーム延伸すること、が好ましい。さらに本発明は、上記方法にて得られる炭素繊維前駆体繊維を、耐炎化処理、炭化処理する炭素繊維の製造方法を包含する。【選択図】 なし

Description

本発明は、炭素繊維用に適した前駆体繊維(プリカーサ)の製造方法に関する。
炭素繊維は複合材料の強化繊維として多くの分野で注目を浴びている。そのような炭素繊維の前駆体繊維としては、アクリロニトリル系繊維の使用が広く知られており、このアクリロニトリル系炭素繊維は、強度、弾性率、耐熱性などに優れることから、複合材料用補強繊維として、スポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車、土木建築、圧力容器、風車ブレード等の一般産業用途にも幅広く展開されつつある。
この前駆体繊維となるアクリロニトリル系繊維は、一般にアクリロニトリル系重合体を有機または無機溶媒に溶解した紡糸原液を湿式あるいは乾湿式紡糸して繊維状に賦形した後、延伸、洗浄、乾燥緻密化することにより得られている。溶媒としては、塩化亜鉛水溶液などの水溶液およびジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒が広く使用されている。
しかし、このアクリロニトリル系繊維の製造においては、特に乾燥緻密化工程において、前駆体繊維の単繊維間接着が起こりやすいという問題があった。さらにこの単繊維間接着が前駆体繊維において一旦発生すると、その後の炭素繊維の製造工程においても、より高温下の酸化性雰囲気での耐炎化工程や、炭素化工程において、さらに単繊維間の接着が助長されるという問題があった。単繊維間の接着が比較的軽い場合でも表面欠陥や、炭素繊維の強度低下要因となり、著しい場合は工程における糸切れの原因ともなった。
そこで特許文献1では、工程途中の乾燥緻密化工程において、水膨潤した繊維が変形し易く、単繊維間の接着も発生しやすい点に着目し、低温条件の加熱ロールにてゆっくりと乾燥させた後、高温条件の熱処理にて短時間に繊維を緻密化する方法が採用されている。
しかしこの乾燥緻密化工程の温度をコントロール方法では、融着こそ若干減少するものの、まだ十分な効果を得ることができなかった。
特開2004−292987号公報
本発明は、単糸間の融着の発生を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維の製造方法を提供することにある。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸原液中のアクリロニトリル単量体の濃度を10ppm未満とした後、紡糸原液のpHを7.2〜10.0に調整し、該紡糸原液を用いて紡糸することを特徴とする。
また、ポリアクリロニトリル系共重合体がカルボキシル基含有ビニル系化合物を共重合したものであることや、ポリアクリロニトリル系共重合体が水系懸濁重合により得られたものであること、紡糸原液が水分を100ppm以上含有していることが好ましい。
さらに、紡糸原液のpH調整にアンモニアを使用することや、紡糸方法が湿式または乾湿式であることが好ましい。また、該アンモニアは貯蔵タンクに直接添加され、溶解プロセスにおいてポリマー添加前の溶媒に、もしくはポリマーを添加し溶解後に、アンモニアを添加することや、紡糸後の繊維を150℃以上のローラーにて乾燥すること、紡糸後の繊維をスチーム延伸することが好ましい。
さらに本発明は、上記の製造方法にて得られる炭素繊維前駆体繊維を、耐炎化処理、炭化処理する炭素繊維の製造方法を包含する。
本発明によれば、単糸間の融着を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維の製造方法が提供される。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸原液中のアクリロニトリル単量体の濃度を10ppm未満とした後、紡糸原液のpHを7.2〜10.0に調整し、この紡糸原液を用いて紡糸することを特徴とする。
ここで本発明の製造方法に用いられる前駆体繊維を構成するアクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルを主とする重合体であることが必要である。さらには、アクリロニトリルを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは、95〜99質量%の範囲で含有する重合体であることが好ましい。
またこのアクリロニトリル系重合体としては、溶媒への溶解性の観点からも、ビニル骨格を有するアクリロニトリルと共重合可能なコモノマー成分を含有することが好ましい。そのようなアクリロニトリルと共重合可能なコモノマーとしては、例えばアクリル酸、イタコン酸等の酸類及びその塩類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルといったアクリル酸エステル類、アクリルアミドといったアミド類等が挙げられ、目的とする繊維特性に応じて必要な組成が採用できる。特に耐炎化反応の反応促進成分としてカルボキシル基含有のビニル化合物を含有することが好ましく、特にはイタコン酸を共重合することが好ましい。
このようなコポリマーの添加量としては、0.1モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜2.0モル%、特には0.5〜1.0モル%の範囲であることが好ましい。特にこのようなコポリマーが添加されていることによって、耐炎化促進効果や、より均一な耐炎化を行うことが可能となる。ただし多すぎる場合には、耐炎化促進効果が大きすぎて耐炎化反応の制御が困難になる傾向にある。
重合体(ポリマー)であるアクリロニトリル系重合体の分子量としては、重量平均分子量で10万以上であることが好ましく、15万から100万、特には20万から80万の範囲であることが好ましい。また、平均分子量/重量平均分子量(Mz/Mw)の値としては、1.4より大きいことが、さらには1.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。このMz/Mwの値を調整するために、重合度の異なった2種類以上の分量分布を持つアクリロニトリル系重合体を混合することも好ましい方法である。本発明の製造方法は、特に分子量分布に広がりを持つ場合に、特に効果を発揮する。
また、この本発明にて用いられるアクリロニトリル系重合体としては、水系懸濁重合にて得られたものであることが好ましい。生産性の向上や、残存モノマーの低減に有効となるからである。本件発明に用いる紡糸原液中のアクリロニトリル単量体の濃度は10ppm未満とする必要があるが、溶液重合方法等では、ここまで残存モノマー量を低減することは困難である。残存モノマーは単繊維の融着の原因となったり、作業環境の悪化や、安全上の問題となりやすい。また、水系懸濁重合を採用することによって、アクリロニトリル系重合体の粉末を常温状態にて容易に得ることができ、洗浄工程等、残存モノマーを低減させる観点からも有効である。
また、本発明で用いる紡糸原液としては、水分を10ppm以上含有していることが好ましい。特には水分含有量が100〜10000ppmの範囲であることが好ましい。
そして本発明で用いる紡糸原液としては、紡糸原液中のアクリロニトリル単量体の濃度を10ppm未満とした後、紡糸原液のpHを7.2〜10.0に調整してなるものである。このような紡糸原液は、水系懸濁重合により得たポリアクリロニトリル系重合体を溶媒に再溶解などの方法にて得ることが可能である。
さらに紡糸原液のpHは7.2〜9.5が好ましく、8.0〜9.0がさらに好ましい。pHが低すぎると単糸間の融着の防止には不十分となり、pHが大きすぎると紡糸原液の安定性が低下し、ゲル状物が発生しやすい傾向にある。
このような紡糸原液のpHを調整するには、アンモニアを使用することが好ましい。アンモニアとしてはガス(気体)や水溶液を用いることができ、中でもアンモニア水溶液を使用することが好ましい。アンモニア水溶液として添加した場合には、紡糸原液中にはさらに水が存在することとなり、それによって前駆体繊維の緻密化度が向上する。先にも述べたように、紡糸原液中の水は10ppm以上存在することが好ましい。アンモニア水溶液を紡糸原液に添加する場合、事前に溶剤で希釈したアンモニア溶液とすることが好ましい。おくことが好ましい。添加の際に使用するアンモニア溶液のアンモニア濃度としては10重量%以下であることが好ましく、さらには0.1〜5重量%の範囲であることが好ましい。
アンモニアの添加方法としては、紡糸原液調製タンクに直接添加する方法が好ましく、原液調製プロセスとしては、紡糸原液調製タンクへの溶剤投入、ポリマー投入、昇温、溶解、脱泡からなるものであることが好ましい。溶剤投入後、溶剤にアンモニアを添加して、その後ポリマーを投入する、もしくは溶解完了後の紡糸原液にアンモニアを添加する、いずれの方法も採用できる。
中でも、ポリアクリロニトリル系重合体の添加前に溶媒にアンモニアを添加することがより好ましく、pH調整にかかる時間を短縮することができる。pH調整に必要な中和反応は拡散律速であるため、ポリアクリロニトリル系重合体の溶解完了後に中和反応を行うと、紡糸原液の粘度が高いために撹拌速度を高くすることができず、結果として中和反応に時間を要するのである。さらに溶媒に直接アンモニア水を添加することで、ポリアクリロニトリル系重合体の溶解と中和反応が同時に進行するため、溶解完了時にはすでに中和反応が終了していることになり好ましい。
また、本発明の製造方法にて用いる溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を用いることが好ましい。そしてこの紡糸原液を調整する際のアクリロニトリル系重合体の濃度としては、15〜40質量%であることが、言い換えるとポリアクリロニトリル系重合体と溶媒との混合比率(質量比)が15/85〜40/60の範囲であることが好ましい。より好ましい混合後の重合体の濃度としては16〜26質量%であることが好ましい。この工程での重合体の濃度を高めることによって、良好な生産性が得られるとともに、後の紡糸工程にて、より繊維内部が緻密である凝固糸を得ることが可能となる。ただし、重合体濃度が高すぎる場合には、溶媒への重合体の溶解が困難となり、ゲル状の塊が発生する可能性が増えてくる傾向にある。
紡糸原液の粘度としては400〜1000poiseの範囲であることが好ましく、800poise以下であることがさらに好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、上記のように調製したポリアクリルニトリル系重合体からなる紡糸原液を、紡糸、延伸して、炭素繊維前駆体繊維とする。
ここでの紡糸方法としては公知の方法を用いることができ、紡糸原液を紡糸口金から紡出して、アクリロニトリル系繊維を得る方法が採用される。ここでの紡糸方法としては、用いる溶媒の種類などに応じて適宜採用することができ、気相中で紡糸原液を凝固させる乾式紡糸法、凝固液中で紡糸原液を凝固させる湿式紡糸法、あるいは気相と凝固液を用いる乾湿式紡糸法を挙げることができる。中でも本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法としては、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法であることが好ましい。
紡糸後の繊維を凝固浴を用いて製造する湿式紡糸や乾湿式紡糸の場合、紡糸後の凝固液としては、水溶液であることが好ましく、さらには有機溶媒水溶液であることが好ましい。このように凝固浴に用いられる凝固液としては、より具体的には、例えば、塩化亜鉛水溶液、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
紡糸原液を押し出し繊維化するに用いる紡糸口金としては、100〜100000の吐出孔を備えることが好ましく、1000〜8000の吐出孔を備えることがより好ましく、3000〜50000の吐出孔を備えることが特に好ましい。該口金の吐出孔の孔径は0.02〜0.5mmであることが好ましい。孔径を大きくすることにより、吐出された糸同士の接着を起こりにくくして、均質性に優れたアクリロニトリル系繊維を得ることができる傾向にある。孔径を小さくすることによって、均一な繊維物性を確保しやすく、紡糸の際の糸切れの発生を抑制し、紡糸安定性が維持できる傾向にある。
次いで、上記方法で得られた繊維(凝固糸)に対しては、さらに水洗及び延伸処理を行うことが好ましい。延伸方法は特に湿式紡糸法または乾湿式紡糸法を採用する場合には、凝固浴または水洗浴中で行うことが好ましい。このような浴中での延伸の最高温度としては、60℃以上とすることが好ましく、さらには70℃以上、特には80〜100℃の範囲が特に好ましい。延伸倍率としては10〜20倍、特には13〜17倍であることが好ましい。
上記方法で得られた延伸糸は、次いで油剤付与工程で油剤が付与されることが好ましい。油剤を付与する方法としては、油剤を含有する水溶液中に糸条を浸漬させて、繊維表面と油剤とを接触させる方法等を採用することができる。油剤の種類は、単繊維間の接着、耐熱性、離形性、工程通過性の点からシリコーン系油剤を主成分とすることが好ましい。
本発明で好ましく用いられるシリコーン系油剤としては、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、エーテル変性シリコーンが好ましく、これらのうち2種以上を混合しても良い。また、油剤付着量は繊維重量に対して0.01〜10.0wt%であることが好ましく、さらには0.1〜5.0wt%であることが、特には0.2〜1.0wt%であることが好ましい。油剤付着量をこのような範囲に制御することで、紡糸工程及びその後の耐炎化工程での糸切れ、毛羽の発生を効率的に抑制し、高品質の炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を得ることができる。油剤の付着量が少ないと、繊維表面に十分に油剤が付着しないため、紡糸工程及びその後の耐炎化工程での糸切れ、毛羽の発生が多くなりやすい傾向があり、一方、油剤の付着量が多すぎると、紡糸工程や耐炎化工程の繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積して、繊維が巻付いて断糸の要因になるといった問題が発生しやすくなる傾向がある。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、紡糸後の繊維を150℃以上の温度のローラーにて乾燥することが好ましい。特にはシリコーン系油剤を付与された延伸糸を、乾熱ローラーで処理し、乾燥緻密化処理を行うことが好ましい。ローラーの温度は150℃以上が好ましいが、さらには150℃〜230℃、特には160℃〜220℃とすることが好ましく、170℃〜200℃の範囲とすることが最も好ましい。この繊維を乾燥緻密化する温度が低すぎる場合には、延伸糸の緻密化が不十分となりやすく、その後にスチーム延伸処理を行う場合の延伸性が低下する傾向にある。一方、乾燥緻密化温度が高すぎる場合、この工程にて耐炎化反応が進行する場合がある。
乾燥処理後の繊維に対してはさらに油剤を付与することが好ましい。その後、さらに延伸することが好ましく、特には油剤が付与された延伸糸に対して、さらなる延伸処理(後延伸処理)を行うことが好ましい。この段階での延伸工程の延伸方法としてはスチーム延伸であることが好ましい。スチーム延伸処理を行う場合、飽和スチーム圧力は、0.15〜0.8MPaとすることが好ましい。
スチーム延伸処理での延伸倍率は10倍以下であることが好ましく、より好ましくは、5倍以下、さらに好ましくは2.0〜3.0倍の範囲であることが好ましい。この延伸処理の温度としては、105〜200℃の範囲が好ましく、特には110〜180℃の範囲がより好ましい。
このように本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、紡糸した繊維に対し、一段または二段以上の延伸処理を行うことが好ましく、紡糸直後の湿潤延伸や、乾燥・後延伸処理を通してのトータル延伸倍率としては、10〜20倍の範囲とすることが好ましく、さらには13〜17倍の範囲とすることがより好ましい。さらに延伸後の前駆体繊維の繊度としては0.5〜1.7dtexの範囲とすることが好ましい。
そして上記のような本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法によって、単糸間の融着を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維が得ることが可能となった。この本発明の製造方法によって得られた炭素繊維用の前駆体繊維は、さらに酸化性雰囲気中にて180〜300℃の耐炎化処理を行うことによって耐炎繊維とすることができる。さらにその耐炎繊維について、不活性雰囲気中において400〜2000℃の炭化処理を行うことによって炭素繊維とすることができる。この本発明の製造方法によって得られた炭素繊維用前駆体繊維を用いて得た耐炎繊維や炭素繊維は、融着が無く、工程途中での糸切れの少ない高品質の耐炎繊維や炭素繊維を、効率よく製造できるものとなる。
以下、実施例等をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって何等限定されるものではない。また、各実施例及び比較例における各種評価は以下の方法により実施した。
(1)融着数評価
炭素繊維前駆体繊維、耐炎化糸、炭素繊維をそれぞれを用いて、各繊維が6000本になるように合糸し、2mmの長さに切ったストランドを試料とした。この各繊維からなる試料をケロシンの入ったビーカーに入れ、超音波洗浄機(株式会社カイジョー社製、卓上型超音波洗浄機「ソノクリーナー200D」)を用いて10分間の超音波処理を行った。その後ケロシンごと試料をシャーレに移し替え、実体態顕微鏡を用いて、単糸が2本以上の塊になっている数を測定した。測定は5回行い、測定結果はその平均値とした。
(2)紡糸原液粘度測定
紡糸原液を300mLビーカーに移し入れ、紡糸原液温度が50℃になるように恒温槽で調温し、回転粘度計(リオン株式会社製、「ビスコテスタVT−04F」)を用いて粘度を測定した。
(3)pH測定
30℃に保持した紡糸原液にて、株式会社堀場製作所製「マイクロTough電極9618S−10D」を使用して測定した。
(4)アクリロニトリル濃度の測定
ポリアクリロニトリル溶液1.0gに10.0gのメタノールを加えて、アクリロニトリル重合体中のモノマー成分を抽出した。得られたメタノール溶液をガスクロマトグラフィーによる分析によってアクリロニトリル濃度を測定した。
ガスクロマトグラフィー条件
使用装置:「Agilent 6850 Network GC system」(アジレント・テクノロジー株式会社製)
使用カラム:「TC1701」(ジーエルサイエンス株式会社製)内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm
(実施例1)
水系懸濁重合により得た粉体状のアクリロニトリル系共重合体を準備した。
そしてジメチルスルホキシド(以下「DMSO」と記す。融点18.5℃)を原液タンクに投入し、25℃となるように温度調整、撹拌し、粉体状のアクリロニトリル系共重合体を、最終的にアクリロニトリル系重合体が20質量%の割合となるように投入した。使用したポリアクリロニトリル系共重合体は重量平均分子量(Mw)=42万、z平均分子量/重量平均分子量(Mz/Mw)=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなり、アクリロニトリル中に含まれるアクリロニトリル単量体は10ppm未満であった。
原液タンクにポリアクリロニトリル系重合体を投入後、原液タンクを−0.095MPaで5分間真空脱気した。その後真空状態を保ったまま、脱気は停止し、撹拌しながら、80℃まで昇温し、ポリアクリロニトリル系重合体を溶解させた。その後、原液タンクを真空開放し、DMSOで希釈したアンモニア水溶液を紡糸原液のポリアクリロニトリル系共重合体の濃度が20.5wt.%(この時の水分量は0.05wt.%であった)となるように添加し、30分間撹拌した。再度原液タンクを−0.095MPaの条件で5分間真空脱気した後、脱気を停止し、30分間そのままの状態を保持して脱泡を行い、最終的な紡糸原液とした。なおアンモニア水溶液を添加し中和する際の撹拌速度は135rpmであった。得られた紡糸原液のpHは8.3、粘度は480poiseであり、ゲルの発生は見られなかった。
この得られた紡糸原液を孔径150μm、孔数3000の紡糸口金より吐出し、紡糸口金と凝固液面との距離を10mmとし、凝固液中にて凝固させる乾湿式紡糸を行い、凝固糸を得た。この凝固糸はその後水洗槽中で脱溶媒するとともに4.0倍に延伸し、その後シリコーン系油剤浴中に浸漬して油剤を付与した。油剤の付着量は0.5wt.%であった。そして加熱ローラーにより200℃×30秒間の乾燥緻密化し、圧力0.25MPaの水蒸気中で3.0倍の後延伸を行い、最後に180℃×10秒間の熱固定処理を行い、アクリロニトリル系繊維束である炭素繊維前駆体繊維を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の融着数はゼロであった。
次に得られた前駆体繊維を2本合糸し、総フィラメント数を6000とした上で、240〜260℃の温度の空気中において耐炎化処理し耐炎化糸を得た。続いて300〜700℃の温度の窒素雰囲気中において予備炭素化処理を行い、さらにこの予備炭素化糸を、最高温度1500℃の窒素雰囲気中において炭化処理し、炭素繊維とした。得られた耐炎化糸、炭素繊維共にその融着数はゼロであった。
(実施例2)
実施例1にて、原液タンク中のDMSO中に、最初にアンモニア水溶液を添加し、ポリマー(アクリロニトリル系重合体)の投入後には添加しなかった。そしてポリアクリロニトリル系重合体溶解後には、アンモニア水溶液による中和を行っていないこと以外は実施例1と同様の方法にて、アクリロニトリル系繊維束である炭素繊維前駆体繊維を得た。その後引き続き処理を行い、耐炎化糸及び炭素繊維を得た。
紡糸時における紡糸原液のpHは8.3、粘度は480poiseであり、ゲルの発生は見られなかった。また、得られた炭素繊維前駆体繊維、耐炎化糸、炭素繊維のいずれにおいても融着数はゼロであった。
(実施例3)
実施例1におけるアンモニアの添加方法を、アンモニア水溶液に代えて、アンモニアガスを用いて行った以外は実施例1と同様の方法にて、炭素繊維前駆体繊維を得た。なおアンモニアガスの添加は、原液タンクを真空開放せずに行った。その後引き続き処理を行い、耐炎化糸及び炭素繊維を得た。
紡糸時における紡糸原液のpHは8.5、粘度は500poiseであり、ゲルの発生は見られなかった。また、得られた炭素繊維前駆体繊維、耐炎化糸、炭素繊維において、品質的にはそれほど劣らないものの、詳細に観察すると若干の融着(2個の融着)が見られた。
(比較例1)
実施例1において、紡糸原液にアンモニア水溶液及びアンモニアガスを添加せず、紡糸原液のpHを6.8とした以外は実施例1と同様の方法にて、炭素繊維前駆体繊維、耐炎化糸及び炭素繊維を得た。
得られた紡糸原液の粘度は450poiseであり、ゲルの発生も見られなかった。しかし、得られた炭素繊維前駆体繊維、耐炎化糸、炭素繊維において、それぞれの膠着数は順に4個、4個、300個、であった。
(比較例2)
実施例1にてアンモニアの添加量を調整し、紡糸原液のpHを11.0とした以外は実施例1と同様の方法にて、紡糸を試みた。しかし得られた紡糸原液の粘度は550poiseと高く、ゲルの発生も多く見られたため、紡糸を中止した。

Claims (10)

  1. ポリアクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸原液中のアクリロニトリル単量体の濃度を10ppm未満とした後、紡糸原液のpHを7.2〜10.0に調整し、該紡糸原液を用いて紡糸することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  2. ポリアクリロニトリル系共重合体がカルボキシル基含有ビニル系化合物を共重合したものである請求項1記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  3. ポリアクリロニトリル系共重合体が、水系懸濁重合により得られたものである請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  4. 紡糸原液が水分を10ppm以上含有している請求項1から3のいずれか1項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  5. 紡糸原液のpH調整にアンモニアを使用する請求項1から4のいずれか1項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  6. 紡糸方法が湿式または乾湿式である請求項1から5のいずれか1項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  7. 該アンモニアは貯蔵タンクに直接添加され、溶解プロセスにおいてポリマー添加前の溶媒に、もしくはポリマーを添加し溶解後に、アンモニアを添加する請求項1から6のいずれか1項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  8. 紡糸後の繊維を150℃以上のローラーにて乾燥する請求項1から7のいずれか1項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  9. 紡糸後の繊維をスチーム延伸する請求項1から8のいずれか1項に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法にて得られる炭素繊維前駆体繊維を、耐炎化処理、炭化処理する炭素繊維の製造方法。


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