JP2019094589A - 炭素繊維用前駆体繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維用前駆体繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 紡糸原液中の未溶解物及び気泡の発生を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】 ポリアクリルニトリル系重合体を粉体状態の溶媒と混合し、減圧下にて溶解し、その後紡糸、延伸することを特徴とする炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。さらには、さらには、ポリアクリルニトリル系重合体と溶媒がともに粉体状態であり、その混合が減圧下にて行われるものであることや、紛体状態のポリアクリルニトリル系重合体の直径が1000μm以下であること、紛体状態の溶媒の直径が1000μm以下であることが好ましい。さらには、粉体状態での減圧下の混合時間が10分以上であることや、粉体状態の溶媒が凝固点以下で固体化しミキサー中で粉体化したものであること、減圧下が−0.10〜−0.02MPaの圧力下の条件であること、ポリアクリルニトリル系重合体を粉体状態の溶媒と混合する際の温度が溶媒の融点よりも10℃以上低い温度であること、ポリアクリロニトリル系重合体と溶媒との混合比率が15/85〜40/60であることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、炭素繊維用に適した前駆体繊維(プリカーサ)の製造方法に関する。
炭素繊維は複合材料の強化繊維として多くの分野で注目を浴びている。そのような炭素繊維の前駆体繊維としては、アクリロニトリル系繊維の使用が広く知られており、このアクリロニトリル系炭素繊維は、強度、弾性率、耐熱性などに優れることから、複合材料用補強繊維として、スポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車、土木建築、圧力容器、風車ブレード等の一般産業用とにも幅広く展開されつつある。
この前駆体繊維となるアクリロニトリル系繊維は、一般にアクリロニトリル系重合体を有機または無機溶媒に溶解した紡糸原液を湿式あるいは乾湿式紡糸して繊維状に賦形した後、延伸、洗浄、乾燥緻密化することにより得られている。溶媒としては、塩化亜鉛水溶液などの水溶液およびジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒が広く使用されている。
しかしながら、紡糸原液作成工程において気泡や未溶解物が発生した場合には、ポリアクリロニトリル系繊維の製造工程に悪影響を及ぼすだけでなく、アクリロニトリル系繊維の品位が低下する。そしてその後の炭素繊維を製造する過程にて欠点となり、炭素繊維の強度低下を引き起こしてしまうという問題があった。
例えばこの問題の解消のために特許文献1等では、紡糸原液作成後に減圧等により気泡を除去する方法が採用されているが、気泡有無の確認が目視によるものであるため微細な気泡有無の確認が十分になされていない。溶媒にアクリロニトリル系重合体が溶解した後の紡糸原液は高粘度となっており、紡糸原液作成後の脱泡処理では十分に気泡の発生を抑制することができず、その結果として最終的に得られる炭素繊維の物性が低下するという問題があったのである。
特開昭62−33814号公報
本発明は、紡糸原液中の未溶解物及び気泡の発生を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維の製造方法を提供することにある。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法は、ポリアクリルニトリル系重合体を粉体状態の溶媒と混合し、減圧下にて溶解し、その後紡糸、延伸することを特徴とする。
さらには、ポリアクリルニトリル系重合体と溶媒がともに粉体状態であり、その混合が減圧下にて行われるものであることや、紛体状態のポリアクリルニトリル系重合体の直径が1000μm以下であること、紛体状態の溶媒の直径が1000μm以下であることが好ましい。
さらには、粉体状態での減圧下の混合時間が10分以上であることや、粉体状態の溶媒が凝固点以下で固体化しミキサー中で粉体化したものであること、減圧下が−0.10〜−0.02MPaの圧力下の条件であること、ポリアクリルニトリル系重合体を粉体状態の溶媒と混合する際の温度が溶媒の融点よりも10℃以上低い温度であること、ポリアクリロニトリル系重合体と溶媒との混合比率が15/85〜40/60であることが好ましい。
本発明によれば、紡糸原液中の未溶解物及び気泡の発生を抑制し、高品位な炭素繊維を製造することができる炭素繊維用前駆体繊維の製造方法が提供される。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、ポリアクリルニトリル系重合体を粉体状態の溶媒と混合し、減圧下にて溶解し、その後紡糸、延伸する方法である。
ここで溶媒とは、紡糸の際の紡糸原液においてポリアクリルニトリル系重合体を溶解するものであるが、本発明の混合する前の初期段階においては、この溶媒が粉体状態であることが必要である。そのためには溶媒は凝固点以下に冷却したものであることが好ましい。
本発明の製造方法においては、このようにポリアクリルニトリル系重合体と、溶媒とを、共に粉体状態にて混合することが好ましい。特には、ポリアクリルニトリル系重合体と溶媒がともに粉体状態であり、その混合が減圧下にて行われるものであることが好ましい。このように減圧下にて粒子を混合することにより、のちの工程での気泡の発生をより軽減させることが可能となる。さらには、粉体状態での減圧下の混合時間が10分以上であることが好ましく、特には20〜100分の範囲であることが好ましい。
紛体状態のポリアクリルニトリル系重合体の直径としては1000μm以下であることが、特には1〜800μmの範囲の粉体であることが好ましい。同様に紛体状態の溶媒の直径が1000μm以下であることが、特には1〜800μmの範囲の粉体であることが好ましい。
さらに本発明では、重合体と溶媒との混合物を減圧下にて溶解することによって、紡糸原液中における気泡の発生を、最小限に抑えることが可能となった。そして紡糸工程における毛羽、単糸切れの無い高品位なアクリロニトリル系前駆体繊維を得ることができることとなった。その後の耐炎化、炭素化工程においても毛羽の発生等の欠点が少なく、高強度、高品質の炭素繊維を得ることができることとなったのである。
以下にこの本発明の前駆体繊維の製造方法について、さらに詳しく説明する。
(アクリロニトリル系重合体)
本発明の製造方法に用いられるアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主とする重合体であるが、アクリロニトリルを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは、95〜99質量%含有する重合体であることが好ましい。さらにこのアクリロニトリル系重合体としては、溶媒への溶解性の観点からも、ビニル骨格を有するアクリロニトリルと共重合可能なコモノマー成分を含有することが好ましい。共重合可能なコモノマー成分の含有量としては、1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%含有していることが好ましい。そのようなアクリロニトリルと共重合可能なコモノマーとしては、例えばアクリル酸、イタコン酸等の酸類及びその塩類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルといったアクリル酸エステル類、アクリルアミドといったアミド類等が挙げられ、目的とする繊維特性に応じて必要な組成が採用できる。特にはアクリル酸メチルとイタコン酸を共重合することが好ましい。
アクリロニトリル系重合体の分子量としては、重量平均分子量で10万以上であることが好ましく、15万から100万、特には20万から80万の範囲であることが好ましい。また、z平均分子量/重量平均分子量(Mz/Mw)の値としては、1.4より大きいことが、さらには1.5〜2.0の範囲にあることが好ましい。このMz/Mwの値を調整するために、重合度の異なった2種類以上の分量分布を持つアクリロニトリル系重合体を混合することも好ましい方法である。本発明の製造方法は、特に分子量分布に広がりを持つ場合に、特に有効であるからである。
また、このアクリロニトリル系重合体の重合工程としては、生産性や、残存モノマーの洗浄工程等の観点からも、水系懸濁重合であることが好ましい。アクリロニトリル系重合体の粉末を常温状態にて容易に得ることができ、本発明の製造方法における溶媒の粉末とアクリロニトリル系重合体との混合が、行いやすくなる。
(紡糸原液調製工程)
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、上記のようなポリアクリルニトリル系重合体を用いて、さらに粉体状態の溶媒と混合し、減圧下にて溶解し、紡糸原液とする紡糸原液調製工程が非常に重要である。さらには、ポリアクリルニトリル系重合体と溶媒がともに粉体状態であり、その混合が減圧下にて行われるものであることが好ましい。あるいは、前記の重合工程で得られたアクリロニトリル系重合体を、凝固点以下に冷却した溶媒の紛体と減圧下で混合した後、減圧下で加温しながら溶解し、紡糸原液を得る方法であることが好ましい。粉体状態での減圧下の混合時間としては10分以上であることが好ましく、さらには20から100分の範囲にあることが好ましい。特には60分以内であることが好ましい。さらに減圧条件としては、−0.10〜−0.02MPaの圧力下の条件であることが好ましい。
特には本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系繊維製造方法としては、紡糸原液を作成する際に溶媒を凝固点以下に冷却し、紛体とした後、減圧下でアクリロニトリル系重合体粉末と溶媒の粉末との混合物の脱気を行い、減圧状態を保持したまま溶解させる方法を採用することが好ましい。そのような製造方法を採用することによって、より気泡を含むことのない紡糸原液を得ることができる。さらには、溶媒を凝固させる際の温度は凝固点より10℃以上低い温度とすることが好ましい。溶媒を凝固点以下として粉末化する際に温度が十分に下がっていない場合には、一部液体が残る場合があり、アクリロニトリル系重合体粉末を混合する際に部分的に溶媒への溶解が起こり、その後の減圧条件下での脱気が不十分になる場合がある。また、アクリロニトリル系重合体粉末が凝集して未溶解部分が発生しやすくなる傾向にある。また、溶媒の粉末とアクリロニトリル系重合体の粉末とを減圧下で混合または溶解処理する時間としては、10分以上の時間であることが好ましい。さらには20分〜100分の範囲にあることが好ましい。特には60分以内であることが好ましい。粉体の混合物の減圧下での処理時間が短すぎる場合は十分な脱気が行われず、処理時間が長すぎる場合には生産性が低下する傾向にある。
ここで本発明の製造方法にて用いる溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。中でも粉体として処理する必要性から、融点が低い溶媒であることが好ましい。溶媒の融点としては0℃以上であることが好ましく、さらには5℃以上であることが好ましい。特には10〜35℃の間にあることが好ましい。融点が低すぎると粉体状態で混合することが困難となり、融点が高すぎるとその後、紡糸溶液として均一に混合することが困難となる。
そしてこの紡糸原液を調整する際のアクリロニトリル系重合体の濃度としては、15〜40質量%、すなわちポリアクリロニトリル系重合体と溶媒との混合比率が15/85〜40/60の範囲であることが好ましい。より好ましい混合比率としては16〜26質量%であることが好ましい。この工程での重合体濃度を高めることによって、良好な生産性が得られるとともに、後の紡糸工程にて、より繊維内部が緻密である凝固糸を得ることが可能となる。ただし、重合体濃度が高すぎる場合には、溶媒への重合体の溶解が困難となり、ゲル状の塊が発生する可能性が増えてくる傾向にある。
本発明の製造方法においては、アクリロニトリル系重合体と溶媒とを溶解するときには、加熱することが一般的である。ここで加熱方法としては特に限定されないが、例えば熱交換機構を有するスタティックミキサーに該混合溶液を導通させ加熱する方法、またはジャケット構造を有したタンクに混合体を入れ、熱媒をジャケットに流すことで加熱する方法などが挙げられる。さらにこの溶解操作に際しては、撹拌しながら加熱処理することが好ましい。例えば単純に溶液を静置の状態で加熱を行うと、混合液体中の重合体が沈降し、不均一な液体となる傾向や、局所的に重合体濃度が高濃度となる領域が発生しやすく、溶解不良となりやすい傾向にある。そのため本発明の製造方法としては、例えばジャケット構造を有するタンクを用いて加熱する場合であっても、タンクに攪拌機を取り付け、混合溶液を撹拌しながら加熱することが好ましい。重合体を溶媒に溶解せしめるための温度は、用いる重合体や溶媒の特性に応じて適宜調整することができる。
(紡糸工程)
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、上記のように調整したポリアクリルニトリル系重合体とからなる紡糸原液を、紡糸、延伸して、炭素繊維前駆体繊維とする。
ここでの紡糸方法としては公知の方法を用いることができ、一般的には、紡糸原液を紡糸口金から紡出して、アクリロニトリル系繊維を得ることができる。紡糸方法としては、特に制限は無く、用いた溶媒の種類などに応じて、気相中で紡糸原液を凝固させる乾式紡糸法、凝固液中で紡糸原液を凝固させる湿式紡糸法、あるいは気相と凝固液を用いる乾湿式紡糸法を用いて行うことができる。
特に本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法としては、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法であることが好ましい。
凝固浴を用いる場合、紡糸後の凝固液としては、水溶液であることが好ましく、また有機溶媒水溶液であることが好ましい。凝固浴に用いられる凝固液としては、より具体的には、例えば、塩化亜鉛水溶液、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
紡糸原液を押し出すための紡糸口金は、100〜100000の吐出孔を備えることが好ましく、1000〜8000の吐出孔を備えることがより好ましく、3000〜50000の吐出孔を備えることが特に好ましい。該口金の吐出孔の孔径は0.02〜0.5mmである。孔径が0.02mm以上であれば、吐出された糸同士の接着が起こりにくいので、均質性に優れたアクリロニトリル系繊維を得ることができる。孔径が0.5mm以下であれば、紡糸糸切れの発生を抑制し、紡糸安定性が維持できる。
次いで、上記方法で得られた凝固糸に対して、水洗及び延伸処理を行うことが好ましい。延伸方法は特に湿式紡糸法または乾湿式紡糸法を採用する場合には、凝固浴または水洗浴中で行うことが好ましい。このような浴中での延伸の最高温度としては、60〜100℃の範囲にすることが好ましく、70〜100℃の範囲がより好ましく、80〜100℃が特に好ましい。延伸倍率としては10〜20倍、特には13〜17倍であることが好ましい。
上記方法で得られた延伸糸は、次いで、油剤付与工程で油剤が付与されることが好ましい。油剤を付与する方法は特に限定はされないが、油剤を含有する水溶液中に糸条を浸漬させて、繊維表面と油剤とを接触させる方法等を採用することができる。油剤の種類は、単繊維間の接着、耐熱性、離形性、工程通過性の点からシリコーン系油剤を主成分とすることが好ましい。
本発明で好ましく用いられるシリコーン系油剤としては、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、エーテル変性シリコーンが好ましく、これらのうち2種以上を混合しても良い。また、油剤付着量は繊維重量に対して0.01〜10.0wt%であることが好ましく、0.1〜5.0wt%であることがより好ましく、0.2〜1.0wt%であることが特に好ましい。油剤付着量をこの範囲に制御することで、紡糸工程及びその後の耐炎化工程での糸切れ、毛羽の発生を効率的に抑制し、高品質の炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を得ることができる。油剤の付着量が少ないと、繊維表面に十分に油剤が付着しないため、紡糸工程及びその後の耐炎化工程での糸切れ、毛羽の発生が多くなりやすい傾向があり、一方、油剤の付着量が多すぎると、紡糸工程や耐炎化工程の繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積して、繊維が巻付いて断糸の要因になるといった問題が発生しやすくなる傾向がある。
油剤付与工程において、油剤が付与された延伸糸に対して、さらなる延伸処理(後延伸処理)を行ってもよい。この後延伸工程の延伸方法は特に制限されないが、スチーム延伸であることが好ましい。スチーム延伸処理を行う場合、飽和スチーム圧力は、0.15〜0.8MPaとすることが好ましい。
スチーム延伸処理での延伸倍率は1.5〜10倍であることが好ましく、より好ましくは、1.8〜5倍、更に好ましくは、2.0〜3.0倍である。スチーム延伸処理の温度は、105〜200℃が好ましく、110〜180℃がより好ましい。
延伸倍率は、紡糸直後の湿潤延伸等や、乾燥・後延伸処理を通してのトータル延伸倍率として10〜20倍とすることが好ましく、13〜17倍とすることがより好ましい。スチーム延伸処理後の前駆体繊維の繊度としては0.5〜1.7dtexとすることが好ましい。
上記のような本発明の前駆体繊維の製造方法によって、紡糸原液中の気泡の発生を抑制することができるため、紡糸工程での毛羽、単糸切れの無い高品位な前駆体繊維を得ることができる。
以下、実施例等をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって何等限定されるものではない。また、各実施例及び比較例における各種評価は以下の方法により実施した。
(1)紡糸原液中の気泡評価
紡糸原液作成後に紡糸原液を抜き取り、光学顕微鏡により400倍の倍率で観察を行い、気泡の有無を確認した。
(2)単糸切れ
ポリアクリロニトリル繊維束の1mあたりの単糸切れ数を10回測定し、平均した。
(実施例1)
ジメチルスルホキシド(融点18.5℃)をプラネタリーミキサーに投入し、−10℃で冷却しながら撹拌し、ジメチルスルホキシドの粉体を作成した。このとき作成した紛体の最大粒径は300μmであった。一方、重量平均分子量(Mw)=42万、z平均分子量/重量平均分子量(Mz/Mw)=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体からなる粉体を準備した。この粉体の最大粒径は300μmであった。このアクリロニトリル系重合体が20質量%の割合となるように、準備したジメチルスルホキシドの粉体が入ったプラネタリーミキサー中に投入した。系内の圧力を−0.095MPaまで減圧しながらジメチルスルホキシドの粉末とアクリロニトリル系重合体の粉末との混合物を30分間撹拌した。そのまま系内の圧力を−0.095MPaに減圧した状態で撹拌しながら、80℃まで昇温し、紡糸原液を作成した。得られた紡糸原液中には、気泡及びアクリロニトリル系重合体の溶け残りは見られなかった。
この得られた紡糸原液を孔径150μm、孔数3000の紡糸口金より吐出し、紡糸口金と凝固液面との距離を10mmとし、凝固液中にて凝固させる乾湿式紡糸を行い、凝固糸を得た。この凝固糸はその後水洗槽中で脱溶媒するとともに4.0倍に延伸し、その後シリコーン系油剤浴中に浸漬して油剤を付与した。そして加熱ローラーにより乾燥し、圧力0.25MPaの水蒸気中で3.0倍の後延伸を行い、アクリロニトリル系繊維束を得た。
得られたアクリロニトリル系繊維束は単糸切れのない高品位のアクリルニトリル系繊維であった。
(実施例2)
実施例1にて用いた溶媒のジメチルスルホキシドに代えて、ジメチルアセトアミド(融点−20℃)を用いてプラネタリーミキサーに投入し、その保持温度を−30℃に変更して冷却しながら撹拌した以外は、実施例1と同様の方法にて、炭素繊維前駆体用アクリロニトリル系繊維を得た。このとき作成した紛体の最大粒径は500μmであった。
紡糸前の紡糸原液中には、気泡及びアクリロニトリル系重合体の溶け残りは見られておらず、さらに得られたアクリロニトリル系繊維束は単糸切れのない高品位のアクリルニトリル系繊維であった。
(実施例3)
実施例1と同様にジメチルスルホキシドをプラネタリーミキサーに投入し、−10℃で冷却しながら撹拌し、ジメチルスルホキシドの粉体を作成した。その後単一の重合体20質量%に代えて、Mw=42万、Mz/Mw=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体を19.8質量%、及びMw=100万、Mz/Mz=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体を0.02質量%の割合となるように、プラネタリーミキサーに投入した。それ以外は実施例1と同様の方法にて、炭素繊維前駆体用のアクリロニトリル系繊維を得た。
紡糸前の紡糸原液中には、気泡及びアクリロニトリル系重合体の溶け残りは見られておらず、さらに得られたアクリロニトリル系繊維束は単糸切れのない高品位のアクリルニトリル系繊維であった。
(実施例4)
ジメチルスルホキシドを2軸の押し出し機により−10℃で冷却しながら混練し、ジメチルスルホキシドの粉体を作成した。このとき作成した紛体の最大粒径は300μmであった。引き続き、Mw=42万、Mz/Mw=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体を20質量%の割合で2軸の押し出し機に投入した。その後、ジメチルスルホキシドの粉末とアクリロニトリル系重合体の粉末の混合物を、−0.095MPaの圧力まで減圧した状態で80℃まで昇温しながら混練し、紡糸原液とした。
実施例1のプラネタリーミキサーが、釜の中に撹拌翼を利用したバッチ式であるに対し、2軸の押し出し機による混練では、連続的に粉体を混合しており、生産性が向上した。また、得られた紡糸原液中には、気泡及びアクリロニトリル系重合体の溶け残りは見られなかった。
この得られた紡糸原液を実施例1と同様に乾湿式紡糸、延伸、シリコーン系油剤付与、および後延伸を行い、アクリロニトリル系繊維束を得た。
得られたアクリロニトリル系繊維束は単糸切れのない高品位のアクリルニトリル系繊維であった。
(実施例5)
実施例3と同様の組成にて、ただしプラネタリーミキサーの撹拌によるバッチ式に代えて、実施例4と同様に2軸の押し出し機による連続式の混練を行って紡糸原液を得た。すなわち、2軸の押し出し機中の−10℃のジメチルスルホキシド中に、Mw=42万、Mz/Mw=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体を19.8質量%、及びMw=100万、Mz/Mz=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体を0.02質量%の割合となるように投入し、紡糸原液を得た。
紡糸原液中には気泡及びアクリロニトリル系重合体の溶け残りは見られなかった。
さらに乾湿式紡糸、延伸、シリコーン系油剤付与、および後延伸を行い、アクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束は単糸切れのない高品位のアクリルニトリル系繊維であった。
(実施例6)
実施例1と同様にジメチルスルホキシド(融点18.5℃)をプラネタリーミキサーに投入し、撹拌時の温度を−10℃から、+12℃の冷却温度に変更した。このとき得られた紛体の最大粒径は500μmであった。それ以外は、実施例1と同様の方法で紡糸原液を得たが、得られた紡糸原液中にはアクリロニトリル系重合体の溶け残りこそ見られないものの、光学顕微鏡による400倍の倍率での観察では、直径2〜5μmの気泡が確認された。
その後実施例1と同様の条件にてアクリロニトリル系繊維束を得たが、得られたアクリロニトリル系繊維束には0.2本の単糸切れが見られており、やや品位の低下したアクリルニトリル系繊維であった。
(比較例1)
ジメチルスルホキシドを30℃に加温して、完全に融解した後、撹拌しながらMw=42万、Mz/Mw=1.7、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなるアクリロニトリル系重合体を20質量%の割合となるように添加した。このジメチルスルホキシドとアクリロニトリル系重合体の混合物を撹拌しながら80℃まで昇温し、紡糸原液を作成した。
得られた紡糸原液中には直径2μm〜40μmの気泡が見られていた。
そしてこの紡糸原液を、実施例1と同様に、乾湿式紡糸、延伸、シリコーン系油剤付与、および後延伸を行い、アクリロニトリル系繊維束を得た。
得られた繊維の紡糸工程では口金吐出直後の単糸切れが発生し、さらに凝固浴、水洗浴、蒸気延伸工程での単糸切れがあった。結果的に得られたアクリロニトリル系繊維束にも、2.8本の単糸切れが見られており、実施例の繊維束に比較して品位の劣るものであった。
(比較例2)
比較例1の溶液状態のジメチルスルホキシド中に、アクリロニトリル系重合体を混合した後、一旦−0.095MPaまで減圧する脱泡処理を行う以外は比較例1と同様にして、撹拌しながら80℃まで昇温し、紡糸原液を作成し、さらにアクリロニトリル系繊維束を得た。
途中工程の得られた紡糸原液中には直径2μm〜20μmの気泡が見られていた。
さらに紡糸工程では口金吐出直後の単糸切れが発生し、さらに凝固浴、水洗浴、蒸気延伸工程での単糸切れがあった。結果的に得られたアクリロニトリル系繊維束にも1.2本の単糸切れが見られており、実施例の繊維束に比較して品位の劣るものであった。

Claims (9)

  1. ポリアクリルニトリル系重合体と粉体状態の溶媒とを混合し、減圧下にて溶解し、その後紡糸、延伸することを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  2. ポリアクリルニトリル系重合体と溶媒がともに粉体状態であり、その混合が減圧下にて行われるものである請求項1記載の前駆体繊維の製造方法。
  3. 紛体状態のポリアクリルニトリル系重合体の直径が1000μm以下である請求項2記載の前駆体繊維の製造方法。
  4. 紛体状態の溶媒の直径が1000μm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の前駆体繊維の製造方法。
  5. 粉体状態での減圧下の混合時間が10分以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の前駆体繊維の製造方法。
  6. 粉体状態の溶媒が、凝固点以下で固体化し、ミキサー中で粉体化したものである請求項1〜5のいずれか1項記載の前駆体繊維の製造方法。
  7. 減圧下が−0.10〜−0.02MPaの圧力下の条件である請求項1〜6のいずれか1項記載の前駆体繊維の製造方法。
  8. ポリアクリルニトリル系重合体を、粉体状態の溶媒と混合する際の温度が、溶媒の融点よりも10℃以上低い温度である請求項1〜7のいずれか1項記載の前駆体繊維の製造方法。
  9. ポリアクリロニトリル系重合体と溶媒との混合比率が15/85〜40/60である請求項1〜8のいずれか1項記載の前駆体繊維の製造方法。


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