JP2008169344A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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義文 中山
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Abstract

【課題】
炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物であって、その成形材料の取扱性と成形性の利点はそのまま保持すると共に、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性を高め、力学特性に優れた成形体を与える熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物0.1〜10重量%、炭素繊維1〜70重量%およびカルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂20〜98.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、特に炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性を高めることにより得られる力学特性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、自動車の部品、これらの内部部材および筐体などに好適に用いられる。
炭素繊維とマトリックス樹脂からなる炭素繊維強化複合材料は、軽量で優れた力学特性を有し、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途に広く用いられている。これらのうち、フィラメントを切断した炭素繊維と熱可塑性樹脂とを用いた炭素繊維強化複合材料は、取扱性に優れ、複雑な形状の成形体を短時間で製造できる利点があり、とりわけ電気・電子機器の筐体や自動車の部材などの一般産業用途には好適に使用されている。ここでは、優れた力学特性を得るために、炭素繊維とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との高い接着性が求められている。
従来、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性の向上については、強化繊維である炭素繊維とマトリックス樹脂との双方に親和性の高い第3の成分を添加使用する方法が試みられてきた。具体的に、強化繊維である炭素繊維との親和性が高いカルボキシル基、アミノ基、酸無水物基およびメルカプト基を含有する変性ポリエーテルを連続した炭素繊維の集束剤として用い、プリプレグを得る方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いた場合に用いられてきたこの方法を、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とした場合に適用しても、第3成分が熱可塑性樹脂中に拡散して接着性向上が得られないという問題や、成形時のプロセス温度で第3成分が分解して力学特性が逆に低下してしまうという問題がある。
また、炭素繊維とマトリックス樹脂としてマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用い、その両方に反応性のあるヘキサメチレンジアミン等の化合物を特定の割合でコンパウンドし、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面を強固にし、物性を向上させる方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、これらの界面の接着性を高める化合物は、成形時のプロセス温度で分解・消失し易く、成形体中にボイドを発生させてしまう要因となり、結果として力学特性が低下してしまうという問題がある。また、これらの界面の接着性を高める化合物は、コンパウンド時において、マトリックス樹脂中に拡散し十分な接着性向上が得られないという問題がある。
このように、炭素繊維とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との界面接着を十分に満足し、優れた力学特性を発現させることのできる熱可塑性樹脂組成物は見い出されていないのが現状である。
特開2005−213679号公報(特許請求の範囲および実施例) 特開2005−213478号公報(特許請求の範囲および実施例)
本発明の目的は、かかる従来技術における問題点に鑑み、炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物であって、その成形材料の取扱性と成形性の利点はそのまま保持すると共に炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性を高め、力学特性に優れた成形体のための熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するべく、下記の構成を採用するものである。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物0.1〜10重量%、炭素繊維1〜70重量%およびカルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂20〜98.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の好ましい熱可塑性樹脂組成物の態様によれば、前記の分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物のアミノ基は、第1級アミンおよび/または第2級アミン由来のアミノ基である。
本発明の好ましい熱可塑性樹脂組成物の態様によれば、前記の分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の全アミン価は、20mgKOH/g以上である。
本発明の好ましい熱可塑性樹脂組成物の態様によれば、前記の分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物は、下記の一般式
Figure 2008169344
(式中、Rは、C2nで表される直鎖または分岐構造をもつアルキレン基であり、nは1〜10の整数を表す。)で示される繰り返し単位を有する化合物である。
本発明の好ましい熱可塑性樹脂組成物の態様によれば、前記の炭素繊維のX線光電子分光法によって求められる表面酸素濃度比O/Cは、0.05〜0.50である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、炭素繊維の数平均繊維長は1〜60mmである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記の熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂である。
本発明によれば、強化繊維である炭素繊維とマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂との接着性に優れ、強度および弾性率等の力学特性に優れた成形体のための熱可塑性樹脂組成物が得られる。この熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体は、電気・電子機器、OA機器、家電機器または自動車の部品、これらの内部部材および筐体などに好適に用いられる。
以下、更に詳しく本発明の熱可塑性樹脂組成物を実施するための最良の形態について説明をする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物0.1〜10重量%、炭素繊維1〜70重量%およびカルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂20〜98.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、上記の炭素繊維に、その炭素維と接着性が良好であり、かつ上記の熱可塑性樹脂と反応性に富み、化学結合を形成可能な分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物を組み合わせることにより、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面での接着性を高め、成形体の力学特性を従来ないレベルに向上させることができる。
本発明で用いられる分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、0.1〜10重量%であり、好ましくは、0.1〜8重量%であり、さらに好ましくは、0.1〜5重量%である。その配合割合が0.1重量%未満の場合、炭素繊維との化学反応性が乏しくなり界面接着が不十分になる。また、配合割合が10重量%を超える場合、反応性が高くなり過ぎるため界面が強固となり、その結果、成形品が脆性的になる場合がある。
本発明で用いられる分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物は、炭素繊維と熱可塑性樹脂に対して強固な化学結合を形成できるという観点で、そのアミノ基が第1級アミンおよび/または第2級アミン由来のアミノ基であることが好ましい。より好ましくは第1級アミン由来のアミノ基である。
第1級アミンとしては、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ポリ(エチレングリコール)ビス(2−アミノプロピル)ターミネイテッド、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)およびアミノプロピルターミネイテッドシロキサン等が挙げられる。
本発明で用いられる分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の全アミン価は、炭素繊維と熱可塑性樹脂に対して強固な化学結合を形成できるという観点で、20mgKOH/g以上であることが好ましい。全アミン価は、より好ましくは50mgKOH/g以上である。全アミン価の上限は、特に制限はないものの500mgKOH/gを例示することができる。全アミン価は、樹脂1gを中和するのに要する塩酸に当量のKOHのmg数で表され、ASTM D2074(1998)に準じて測定することができる。
本発明で用いられる分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物は、下記の一般式
Figure 2008169344
(式中、Rは、C2nで表される直鎖構造または分岐構造をもつアルキレン基であり、nは1〜10の整数を表す。)で示される繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。かかる直鎖構造としては、例えば、メチレン鎖、エチレン鎖、プロピレン鎖およびブチレン鎖等が挙げられ、また分岐構造としては、イソプロピレン鎖などの炭化水素骨格などが例示される。主鎖骨格に上記一般式の繰り返し単位を有することにより分子構造に柔軟性を付与することができ、溶融流動時に炭素繊維の表面官能基と末端アミノ基との反応性を高めることができる。具体例として、ポリ(エチレングリコール)ビス(2−アミノプロピル)ターミネイテッド、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)およびアミノプロピルターミネイテッドシロキサン等が挙げられる。
本発明で用いられる分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の数平均分子量は、500〜10,000の範囲内が好ましく、より好ましくは1,000〜8,000の範囲内である。数平均分子量が500未満では、熱可塑性樹脂とともに加工する際、そのプロセス温度で分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物が分解ガスとなり、本発明の効果が得られないか、さらには力学特性が逆に低下する場合がある。また、数平均分子量が10,000を超えると、柔軟性が損なわれて、炭素繊維との接着が損なわれる場合がある。ここで、数平均分子量は、GPC法で、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを用い、標準物質として単分散ポリスチレンを用いて測定したポリスチレン換算値である。
また、炭素繊維との反応性をより高める目的で、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の軟化温度は、熱可塑性樹脂の融点もしくはガラス転移点よりも低いことが好ましい。同様に、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の溶融粘度は、熱可塑性樹脂の溶融粘度よりも低いことが好ましい。
本発明で用いられる炭素繊維の配合割合は、熱可塑性樹脂組成物全体に対して1〜70重量%であり、より好ましくは5〜50重量%であり、さらに好ましくは10〜40重量%である。その配合割合が1重量%未満の場合、炭素繊維による補強効果が不十分となり、成形品の力学特性が低くなる。また、炭素繊維の配合割合が70重量%を超えると、炭素繊維間への熱可塑性樹脂の含浸が不十分となり、その結果、成形品の力学特性が低くなる。
本発明で用いられる炭素繊維は、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比O/Cが、0.05〜0.50であるものが好ましく、その表面酸素濃度比O/Cはより好ましくは0.06〜0.3であり、さらに好ましくは0.07〜0.20である。表面酸素濃度比O/Cが0.05以上であることにより、炭素繊維表面の極性官能基量を確保し、熱可塑性樹脂組成物との親和性が高くなりより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比O/Cが0.50以下であることにより、表面酸化による炭素繊維自体の強度の低下を少なくすることができる。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより、表面酸素濃度比を求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
表面酸素濃度O/Cを0.05〜0.50に制御する手段としては、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理することが好ましい。
電解処理に用いられる電解液としては、硫酸、硝酸および塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化バリウムなどの無機水酸化物、アンモニア、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム等の無機塩類、酢酸ナトリウムや安息香酸ナトリウム等の有機塩類の水溶液、さらにこれらのカリウム塩、バリウム塩あるいは他の金属塩、およびアンモニウム塩、またはヒドラジンなどの有機化合物が挙げられる。これらの中でも、電解液として無機酸が好ましく、硫酸および硝酸が特に好ましく使用される。電解処理の程度は、電解処理で流れる電気量を設定することにより炭素繊維表面の表面酸素濃度比O/Cを制御することができる。
また、本発明で用いられる炭素繊維は、束状であることが好ましく、そのストランド強度は好ましくは4GPa以上7GPa以下であり、より好ましくは4.5GPa以上6.5GPa以下であり、また、そのストランド弾性率は好ましくは200GPa以上500GPa以下であり、このような束状の炭素繊維は、特に構造材に好適である。
上記のストランド強度は、束状の炭素繊維あるいは黒鉛化繊維に、下記組成の樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R−7601(1986)に規定する引張試験方法に従って求めることができる。
(樹脂組成)
・脂環式エポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキシル−カルボキシレート) 100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン 3重量部
・アセトン 4重量部
また、ストランド弾性率は、上記のストランド強度測定方法と同様の方法で引張試験を行い、荷重−伸び曲線の傾きから求めることができる。
また、本発明で用いられる炭素繊維は、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂および界面活性剤からなる群から選択された少なくとも1種の集束剤が付着されたものであってもよい。このように、炭素繊維に集束剤を付着させることにより、強化繊維束の取り扱い性が優れ、特に束カット時における毛羽立ちを抑えることができる。
集束剤を炭素繊維に付与するに際しては、集束剤をその溶媒に溶解した溶液またはその分散媒に分散した分散液、いわゆるサイジング液に浸漬して後乾燥して行うことができる。炭素繊維における単繊維間の集束剤付着量のムラを押さえるためには、束状の強化繊維が拡幅された状態の炭素繊維トウを、サイジング液に浸漬することが好ましい。
炭素繊維に付着させる集束剤の付着量は、炭素繊維に対して0.1〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜3重量%である。付着量が0.1重量%未満の場合、炭素繊維束の集束性が軽減し、束カット時に毛羽立ちが発生する場合がある。また、付着量が5重量%を超える場合、束の集束性が大きくなりすぎて、束が固くなり、巻き取り工程において、強化繊維束を巻き取れない場合がある。
また、本発明で用いられる炭素繊維は、総繊度が50〜5,000texであることが好ましく、より好ましくは、500〜3,500texである。総繊度が50tex未満の場合、カット作業の効率が悪くなり、生産性が低下する場合がある。また、総繊度が5,000texを超える場合、カット時に束の集束性が悪く、毛羽立ちが発生する場合がある。
また、本発明で用いられる炭素繊維は、束状としての本数が1,000〜70,000本であることが好ましく、より好ましくは、12,000〜48,000本である。本数が1,000本未満の場合、強化繊維のカット作業の効率が悪くなり、生産性が低下する場合がある。また、本数が70,000本を超える場合、強化繊維のカット時に束の集束性が悪く、毛羽立ちが発生する場合がある。
また、本発明で用いられる炭素繊維は、数平均繊維長が1〜60mmの長さにカットして使用することが好ましく、さらに好ましくはカット長は3mm〜50mmである。カット長が1mmより短いと補強効果が低下する傾向にあり、一方、カット長が60mmより長いと成形時の流動性が低くなり賦形性が悪くなる傾向がある。ここで、数平均繊維長の測定方法は、炭素繊維の単糸を、無作為に少なくとも400本以上抽出し、その長さを光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡にて測定してその平均長さを算出することにより行う。
また、本発明で用いられる炭素繊維の形態は特に限定されるものではないが、編物、織物、ウェブ 、不織布、フェルトおよびマット等のシート状物の形態の生地が好ましく用いられる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲であれば、アルミニウム、黄銅およびステンレスなどの金属繊維や、ガラス繊維、シリコンカーバイトやシリコンナイトライドなどからなる無機繊維や、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロンおよびポリエチレンなどからなる有機繊維などと、上記の炭素繊維とを併用してもよい。
本発明で用いられる炭素繊維は、アクリル系繊維、ピッチおよびレーヨン等を原料とすることができるが、特にアクリロニトリルを主成分としたアクリル系繊維から製造された炭素繊維が工業的な生産性に優れ、かつ力学特性にも優れている。アクリル系繊維としては、耐炎化反応を促進するモノマー成分を含むものであれば特に限定されるものではなく、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、あるいはアリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、およびそれらのアルカリ金属塩等を挙げることができる。紡糸方法は、湿式紡糸法や乾湿式紡糸法を適用することが好ましい。
アクリル系炭素繊維は、アクリロニトリルを主成分として重合して得られたアクリル系繊維を200〜400℃の空気雰囲気中で加熱して酸化繊維に転換する耐炎化工程と、窒素、ヘリウムおよびアルゴン等の不活性雰囲気中でさらに高温で加熱して炭化する炭化工程を経ることで得られる(耐炎化工程と炭化工程をあわせて焼成工程と呼ぶことがある。)。本発明では、炭化する温度としては1200〜2200℃を採用することが好ましい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物との化学結合性の観点から、カルボキシル基および酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂である。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の配合割合は、熱可塑性樹脂組成物全体に対して20〜98.9重量%であり、より好ましくは、20〜80重量%であり、さらに好ましくは20〜70重量%である。熱可塑性樹脂の配合割合が20重量%未満の場合、炭素繊維間への熱可塑性樹脂の含浸が不十分となり、その結果、成形品の力学特性が低くなる。また、熱可塑性樹脂の配合割合が98.9%を超える場合、炭素繊維による補強効果が軽減し成形品の力学特性が低くなる。
本発明で用いられるカルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂は、末端官能基を制御する方法、ベース樹脂に官能基含有化合物を修飾する方法、また官能基含有の構成成分を共重合する方法など、公知の技術により製造することができる。
官能基含有化合物を修飾する場合のベースとなる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂や、スチレン系樹脂やポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)などのビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、これらの共重合体、変性体、および2種類以上の樹脂をブレンドした樹脂などであってもよい。とりわけ、成形性と経済性の観点から、ポリオレフィン系樹脂とビニル系樹脂が好ましく用いられる。
本発明で用いられる官能基含有化合物を熱可塑性樹脂に修飾したものの具体例としては、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、アクリル酸変性ポリオレフィン樹脂および無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
エポキシ変性ポリオレフィンの市販品としては、エチレン−GMA共重合体“Bondfast 2C”(住友化学(株)社製(登録商標))等が挙げられる。また、アクリル酸変性ポリオレフィンの市販品としては、“POLYBOND 1001”、“POLYBOND 1002”(CROMPTON社製(登録商標))等が挙げられる。また、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン“QE510”(三井化学(株)社製(登録商標))等が挙げられる。
本発明で用いられるカルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂の官能基量は、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物との界面接着性の観点から、カルボキシル基を含む場合はその酸価が、また酸無水物基を含む場合にはその酸化価が、いずれも0.01〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは0.05〜10mgKOH/gであり、さらに好ましくは0.1〜1mgKOH/gである。ここで酸価および酸化価は、樹脂1gを中和するのに要するKOHのmg数で表され、JIS K0070(1992)に準じて測定することができる。前記のとおりアミン価も同様に、樹脂1gを中和するのに要する塩酸に当量のKOHのmg数で表され、ASTM D2074(1998)に準じて測定することができる。
また、エポキシ基を含む場合は、そのエポキシ当量が、1,000g/eq未満であることが好ましい。エポキシ当量のより好ましい範囲は300〜700g/eqである。ここでエポキシ当量は、JIS K7236(2001)に準じて測定することができる。
また、熱可塑性樹脂の分子量は、力学特性と成形性の観点から、重量平均分子量が1,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量が1,000未満の場合、熱可塑性樹脂が脆くなり、成形体の力学特性が低下する場合があり、また重量平均分子量が200,000を超える場合、成形時の樹脂溶融粘度が大きくなり、成形性が悪くなる場合がある。ここで、重量平均分子量は、GPC法で、溶出溶媒としてo−クロルベンゼンを用い、測定温度140℃の条件で、標準物質として単分散ポリスチレンを用いて測定したポリスチレン換算値である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、力学特性を阻害しない範囲で、用途等に応じて上記以外の他の成分が含まれていてもよく、また、充填剤や添加剤等が含まれていてもよい。充填剤あるいは添加剤としては、無機充填剤、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、発泡剤およびカップリング剤などが挙げられる。
添加剤として、特に、難燃性が要求される用途向けには難燃剤の添加や、導電性が要求される用途向けには導電性付与剤の添加が好ましく採用される。難燃剤としては、例えば、ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、窒素化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物、フェノール化合物および金属水酸化物などの難燃剤を使用することができる。中でも、環境負荷を抑えるという観点から、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドおよび赤リンなどのリン化合物を好ましく使用することができる。
導電性付与剤としては、例えば、カーボンブラック、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、ピッチマイクロビーズ、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブ等を採用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形に関しては特に制限はないが、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形および圧縮成形などの、現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって任意の形状に成形することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するための好ましい態様について以下に示す。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好適には、炭素繊維からなるシート状物に、分子内にエーテル結合を有し分子末端にアミノ基を有する化合物を0.1〜10重量%付与した後、カルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂を加熱溶融して20〜98.9重量%付与し複合化することにより製造することができる。
具体的に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の上記の好適な製造方法は、少なくとも次の第1工程、第2工程および第3工程からなるものである。
・第1工程:炭素繊維を、編物、織物、ウェブ 、不織布、フェルトまたはマット等のシート状物に加工する工程、
・第2工程:前記の第1工程で得られたシート状物1〜70重量%に、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物を0.1〜10重量%付与する工程、および
・第3工程:前記の第2工程で分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物が付与されたシート状物に、カルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂を加熱溶融して20〜98.9重量%付与し複合化する工程。
上記の第1工程において、炭素繊維を、編物、織物、ウェブ 、不織布、フェルトまたはマット等のシート状物に加工する方法は、従来公知の方法が用いられる。上記の第1工程において、熱可塑性樹脂の一部、例えば、熱可塑性樹脂0〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%を、炭素繊維と予め混合してもよい。本発明で用いられる熱可塑性樹脂の形態としては、粒子状、フィルム状または不織布状の形態であることが好ましい。
上記の第2工程における分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物を付与する方法としては、水溶液または水分散液の形態で炭素繊維からなるシート状物に付着させた後、溶媒を蒸発させるという方法が好ましく用いられる。具体的には、スプレー法あるいはディップ法等の従来公知の方法が用いられる。また、上記の第2工程において、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物を、炭素繊維からなるシート状物に付与した後に、必要に応じて100〜200℃の温度で、0.1〜90分間熱風乾燥してもよい。
上記の第3工程において、熱可塑性樹脂を加熱溶融して付与する方法の具体例としては、第2工程で得られたシート状物に、フィルム状あるいは不織布状の熱可塑性樹脂をサンドイッチした後、ダブルベルトプレスや平板プレスを用いて加熱加圧含浸する方法、また、第2工程で得られた生地に粒子状の熱可塑性樹脂を含浸した後、ダブルベルトプレスや平板プレスを用いて加熱加圧含浸する方法を例示することができる。
上記の複合化する第3工程を経て得られる熱可塑性樹脂組成物の形態としては、スタンパブルシートやプリプレグ等が挙げられる。さらに、これらをカットすることにより、ペレット状やフレーク状の形態とすることができ、それを一般的な射出成形に使用することにより成形体とすることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板などが挙げられる。
[評価・測定方法]
(1)曲げ特性評価
実施例または比較例により得られた各成形体から、それぞれ、長さ130±1mm、幅25±0.2mmの曲げ強度試験片を切り出した。ASTM D−790の規格に従い、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分で曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。測定数は、n=5とし、平均値を曲げ強度および曲げ弾性率とした。試験片の水分率0.1%以下、雰囲気温度23℃、および湿度50重量%の条件下において、曲げ特性を求めた。測定数は8回とし、その平均を曲げ特性とした。
(2)アイゾット衝撃強度評価
実施例または比較例により得られた各成形体から、それぞれ、長さ62±1mm、幅12.7±0.15mm、ノッチ角度22.5°±0.5°、0.25±0.05Rのアイゾット衝撃強度試験片を切り出した。ASTM D256規格に従い、ノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。試験片の水分率0.1%以下、雰囲気温度23℃、湿度50重量%の条件下において、アイゾット衝撃強度(J/m)を求めた。測定数は8回とし、その平均をアイゾット衝撃強度とした。
(3)成形体破断面観察
実施例または比較例により得られた各成形体における、炭素繊維と熱可塑性樹脂の接着状態を確認するために、走査型電子顕微鏡(SEM)による成形体破断面の観察を行った。観察による炭素繊維と熱可塑性樹脂の接着状態を、下記の○、△および×で判定した。評価の定義を下記する。
○:炭素繊維単繊維の表面に皮膜状の熱可塑性樹脂の付着が観察される。
△:炭素繊維単繊維の表面の一部分に熱可塑性樹脂の付着が観察される。
×:炭素繊維単繊維の表面に熱可塑性樹脂が観察されない。
すなわち、×判定の状態の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体は、衝撃が加わった後に、熱可塑性樹脂から炭素繊維が素抜けている状態であり、両者の接着状態が良好とは言えない。また、○判定の状態の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体は、衝撃が加わったにもかかわらず、熱可塑性樹脂と炭素繊維が良好な接着状態であり、表1の曲げ特性の結果と照らし合わせても分かるように、力学特性が向上している現象を可視化していると言える。また、△判定の状態の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体は、衝撃が加わった後に、熱可塑性樹脂から炭素繊維が素抜けている部分と、炭素繊維が素抜けずに、熱可塑性樹脂と接着している状態が同程度見られる。
また、SEM観察は、実施例または比較例により得られた各成形体のアイゾット衝撃強度評価を行った後の試験片を用い、その破断面を加速電圧15kV、倍率4000倍の条件で観察した。
実施例および比較例に用いた各成分は、下記のとおりである。
<炭素繊維>
・A−1:ポリアクリロニトリル系炭素繊維
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数12000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換し、次いで窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域での昇温速度を200℃/分とし10%の延伸を行なった後、1300℃の温度まで昇温し焼成した。さらに、焼成された繊維束を、濃度0.1モル/lの硫酸水溶液を電解液として、電気量5クーロン/gで処理した。この電解処理を施されたアクリル系炭素繊維束を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥した。得られたアクリル系炭素繊維の目付は0.800g/mであり、比重は1.80、引張強度は4.9GPaであり、引張弾性率は240.0GPaであり、O/Cは0.08であった。
<熱可塑性樹脂>
・B−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂と未変性ポリプロピレン樹脂の混合物
三井化学(株)製“QE510”(登録商標)(無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)および
三井住友ポリオレフィン(株)製“J104WA”(登録商標)(未変性ポリプロピレン樹脂)の混合物。
・B−2:未変性ポリプロピレン樹脂
三井住友ポリオレフィン(株)製“J104WA”(登録商標)。
・B−3:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂
三井化学(株)製“QE510”(登録商標)。
・B−4:アクリル酸変性ポリプロピレン樹脂
CROMPTON社製“POLYBOND 1002”(登録商標)。
・B−5:エポキシ変性ポリエチレン樹脂
住友化学(株)製“Bondfast E”(登録商標)、エチレン−GMA共重合体。
<化合物>
・C−1:
シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製
試薬 Poly(ethylene glycol)bis (3-aminopropyl)terminated
数平均分子量 1,500
全アミン価 75mgKOH/g。
・C−2:
シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製
試薬 Poly(propylene glycol)bis(2-aminopropyl ether)
数平均分子量 2,000
全アミン価 56mgKOH/g。
・C−3: ポリエチレングリコール
シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製
試薬 poly(ethylene glycol)
数平均分子量 1,900〜2,200
全アミン価 0mgKOH/g。
・C−4: ヘキサメチレンジアミン
シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製
試薬 Hexamethylenediamine
数平均分子量 116
全アミン価 966mgKOH/g。
(参考例1)
熱可塑性樹脂B−1の作製方法について下記する。配合率を、全体100重量%に対し、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を50重量%、未変性ポリプロピレン樹脂を50重量%となるように配合し、次の条件で溶融混練した。溶融混練に関しては、二軸押出機(TEX・30α型 日本製鋼所(株)製)を用い、バレル温度220℃、スクリュー直径30mm、回転数150rpmとなるように設定し、混練した。
(参考例2)
参考例1で作製した熱可塑性樹脂B−1を所定量、ステンレス製の板上に配置し、その上からもう一枚のステンレス製板を重ね、板間には0.26mmのスペーサを入れた。プレス温度は220℃とし、圧力を1MPaとして5分間保持し、厚さ0.26mm×20cm×20cmのフィルム状に加工し樹脂シートを得た。
(参考例3)
熱可塑性樹脂B−2を所定量、ステンレス製の板上に配置し、その上からもう一枚のステンレス製板を重ね、板間には0.26mmのスペーサを入れた。プレス温度は220℃とし、圧力を1MPaとして5分間保持し、厚さ0.26mm×20cm×20cmのフィルム状に加工し樹脂シートを得た。
(参考例4)
熱可塑性樹脂B−3を所定量、ステンレス製の板上に配置し、その上からもう一枚のステンレス製板を重ね、板間には0.26mmのスペーサを入れた。プレス温度は220℃とし、圧力を1MPaとして5分間保持し、厚さ0.26mm×20cm×20cmのフィルム状に加工し樹脂シートを得た。
(参考例5)
熱可塑性樹脂B−4を所定量、ステンレス製の板上に配置し、その上からもう一枚のステンレス製板を重ね、板間には0.26mmのスペーサを入れた。プレス温度は220℃とし、圧力を1MPaとして5分間保持し、厚さ0.26mm×20cm×20cmのフィルム状に加工し樹脂シートを得た。
(参考例6)
熱可塑性樹脂B−5を所定量、ステンレス製の板上に配置し、その上からもう一枚のステンレス製板を重ね、板間には0.26mmのスペーサを入れた。プレス温度は220℃とし、圧力を1MPaとして5分間保持し、厚さ0.26mm×20cm×20cmのフィルム状に加工し樹脂シートを得た。
(実施例1)
内径200mmの円筒形容器に、水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))を5g投入し、合わせて5リットルの0.1重量%の界面活性剤水溶液を得た。その中に、カートリッジカッターで長さ6mmにカットした炭素繊維(A−1)を19g投入し10分間撹拌した。炭素繊維が十分に分散したことを確認した後、脱水処理を行い、140℃の温度で10分間乾燥させて炭素繊維の抄造物を得た。また、このときの炭素繊維の抄造物の重量W1(g)を測定しておく。
次に、上記により作製された炭素繊維の抄造物を、予め5重量%溶液に調整された(C−1)のエマルジョン50ccの入った液漕に1分間浸漬させた。炭素繊維の抄造物を液漕から取り出し、脱水処理を行い、さらに140℃の温度で10分間乾燥させた。また、このときの炭素繊維の抄造物の重量W2(g)を測定しておき、オキシアルキレン重合体の添加量W3(g)を、式(W2−W1)で算出したところ、0.8gであった。
次に、得られた炭素繊維の抄造体の上下面に、参考例2で調整した(B−1)の樹脂シート状物を各2枚ずつ、計4枚重ね合わせサンドイッチ状としたものを、ステンレス製のツール板にセットして、プレス温度200℃、圧力5MPaで5分間プレス加工して、シート状の成形材料を得た。前記の樹脂シートは、炭素繊維の含有量が50重量%となるように調整した。また、シート状の成形材料の厚みは、1.0mmのスペーサーを用いることにより1.0mmに調整した。
得られた成形材料を、200mm×200mmにカットし、これを2枚積層したものを、プレス用平板金型(200mm×200mm)にセットして、プレス温度200℃、圧力10MPa、5分間プレス機でプレス成形後、プレス機でプレスした状態のまま、25℃の室温になるまで自然冷却して成形体を得た。この際、成形体の厚みは、2.0mmのスペーサーを用いることでにより2.0mmに調整した。得られた成形体を所定サイズに切り出し、評価に供した。
(実施例2)
実施例1において、化合物(C−1)の代わりに化合物(C−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(実施例3)
実施例1において、熱可塑性樹脂として(B−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(実施例4)
実施例1において、熱可塑性樹脂として(B−4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(実施例5)
実施例1において、熱可塑性樹脂として(B−5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例1)
実施例1において、化合物(C−1)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例2)
実施例2において、熱可塑性樹脂として(B−2)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例3)
実施例1において、化合物(C−1)の代わりに化合物(C−3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例4)
実施例1において、化合物(C−1)の代わりに化合物(C−4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例5)
実施例3において、化合物(C−1)を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例6)
実施例4において、化合物(C−1)を用いなかったこと以外は、実施例4と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
(比較例7)
実施例5において、化合物(C−1)を用いなかったこと以外は、実施例5と同様にして熱可塑性樹脂組成物と成形体を得て、試験に供した。
実施例1から5および比較例1から7の成分量と各特性を、表1にまとめて示した。
Figure 2008169344
表1から、下記のことが明らかである。
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物から得られた熱可塑性樹脂組成物成形体(実施例1と2)は、比較例1と比較し、優れた曲げ強度、アイゾット衝撃強度を有していることや、破断面観察の結果からも、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面の接着性が良好であることがわかる。このことは、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物により、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性が向上し、結果的に強度が向上したものである。
また、実施例3〜5は比較例5〜7と比較し、優れた曲げ強度とアイゾット衝撃強度を有していることや、破断面観察の結果からも、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面の接着性が良好であることがわかる。このことは、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物により、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性が向上し、結果的に強度が向上したものである。
また、比較例2のように熱可塑性樹脂サイドに反応性の官能基を有しない場合は、分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物による反応が炭素繊維としか行われないため、炭素繊維と熱可塑性樹脂の界面接着性を向上させることはできないことがわかる。
さらに、比較例3と4からわかるように、本発明から外れる化合物(C−3、C−4)を用いた場合、界面接着向上による力学特性効果が見られない。これは、SEM観察の結果からから、炭素繊維表面に熱可塑性樹脂は付着しておらず、接着性がないと言える。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性に優れ、強度や弾性率等の力学特性に優れた成形体を得るために好適である。この熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体は、電気・電子機器、OA機器、家電機器または自動車の部品、内部部材および筐体などに好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物0.1〜10重量%、炭素繊維1〜70重量%およびカルボキシル基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性樹脂20〜98.9重量%からなる熱可塑性樹脂組成物。
  2. 分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物のアミノ基が、第1級アミンおよび/または第2級アミン由来のアミノ基である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物の全アミン価が、20mgKOH/g以上である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 分子内にエーテル結合を有し少なくとも分子末端にアミノ基を有する化合物が、下記の一般式
    Figure 2008169344
    (式中、Rは、C2nで表される直鎖または分岐構造をもつアルキレン基であり、nは1〜10の整数を表す。)で示される繰り返し単位を有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 炭素繊維のX線光電子分光法によって求められる表面酸素濃度比O/Cが、0.05〜0.50である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 炭素繊維の数平均繊維長が、1〜60mmである請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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