JP5726447B2 - 蒸し焼き料理用調味液 - Google Patents

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本発明は、加熱調理前に食材に振りかけて用いる蒸し焼き料理用調味液の改良に関し、調味液に含有される粒状野菜が、肉や魚等食材の上に絡んで離れ難く加熱調理によりその食材の嫌な風味を消去すると共に、その他の調味液は食材の下に流れ落ち、調理鍋の底に溜まることにより鍋底が焦げ付くことを防止できる蒸し焼き料理用調味液に関する。
従来、蒸し焼き料理は、蓋付き土鍋、蓋付きフライパン、ホットプレート等の調理鍋に、野菜、肉、魚等の食材を入れ、この上から、調味液を振りかけ、蓋を被せて密閉状態とし、この状態で一定時間加熱し作る料理(本発明では、これを蒸し焼き料理という)として知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この蒸し焼き料理は、密閉状態で加熱調理することを要するため、一般に加熱調理中においては食材を撹拌できない、すなわち手を加えることができない。そのため、加熱調理中に調理鍋の底部が焦げ付き易い大きな欠点を有する。
また、この調味液は粘度を低くすると、調味液が食材から流れ落ち、鍋底に溜まり、鍋底の焦げ付きを防止することができるが、調味液に含有される粒状野菜も、食材の上に留まることなく調味液と共に下に流れ落ちるため、加熱調理中に肉や魚の有する嫌な風味を消去できなくなる欠点を有する。
特許第3262756号公報 特許第3366260号公報
本発明は、肉や魚等の嫌な風味を消去すると共に、調理鍋の底部が焦げ付かない蒸し焼き料理用調味液を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、香味素材粒子入り調味液であって、該粒状野菜を濾去した調味液の粘度が55〜575mPa・sであり、また該粒状野菜が5.0〜25.0%(w/w)であり、更にまた調味液全体の粘度が1600mPa・s以下とした調味液が、上記目的を達成できることを知り、この知見に基いて本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下に示す蒸し焼き料理用調味料であり、また蒸し焼き料理の製造法である。
(1) 目開き8mmの篩をパスし、目開き1mmの篩にオンする粒状野菜を含有する粒状野菜入り調味液であって、該調味液を目開き1000μmの篩にかけ得られる透過調味液の粘度が55〜575mPa・sであり、且つ非透過粒状野菜の含量が該調味液全体に対して5.0〜25.0%(w/w)であり、且つ調味液全体の粘度が1600mPa・s以下であることを特徴とする蒸し焼き料理用調味液
(2)調理鍋に食材を入れ、この上から、前記(1)記載の蒸し焼き料理用調味液を振りかけ、蓋を被せて密閉状態とし、以下常法により加熱することを特徴とする蒸し焼き料理の製造法。
図1(a)は、実施例3−1の蒸し焼き料理用調味液を用いて得られた蒸し鍋料理の図面代用写真(調理鍋底部に焦げ付きがない状態)を示す。 図1(b)は、実施例3−4の蒸し焼き料理用調味液を用いて得られた蒸し鍋料理の図面代用写真(調理鍋底部に焦げ付きがやや有る状態)を示す。 図1(c)は、比較例3−2の蒸し焼き料理用調味液を用いて得られた蒸し鍋料理の図面代用写真(調理鍋底部に焦げ付きが有る状態)を示す。
本発明において粒状野菜とは、粒状に整形(カット、粉砕、細断又はおろし)した野菜、香辛料及び茸類を意味する。これらは生あるいは乾燥品が用いられる。
これらは、例えば、ハーブ、胡椒、山椒、唐辛子等の香辛料類;キャベツ、ホウレンソウ、レタス、シュンギク、小松菜、カラシナ、シソ、セリ、アスパラガス、ニラ、パセリ、ミツバなどの葉菜類;ショウガ、ニンニク、ニンジン、ダイコン、カブ、ゴボウ、ワサビなどの根菜類;タマネギ、長ネギ、フキ、セロリなどの茎菜類;カリフラワー、ブロッコリー、ミョウガなどの花菜類;キュウリ、カボチャ、トマト、ナス、ピーマン、シシトウガラシなどの果菜類、シイタケ、マツタケ等の茸類、及びゴマなどを挙げることができる。これらは一種又は二種以上使用することができる。
粒状野菜入り調味液中の、粒状野菜の粒子径は、目開き8mmパス〜1mmオンが好ましく、5mmパス〜1mmオンがより好ましい。目開きが8mmオンのものは自重が大きくなって、食材の上に留まることができなくなって流れ落ち、食材の風味の改善効果が期待できなくなる。反対に、粒状野菜の粒子径が1mmパスのものは、調味液と共に食材から殆どが流れ落ち、調理鍋の底に溜まるため、これもまた食材の風味の改善効果が期待できなくなる。
調味液としては、従来公知の蒸し焼き料理用調味液が使用可能で、例えば以下の粉体原料、液体原料、油脂及び固体原料を適宜混和して得られるものが挙げられる。
(1)粉体原料:粉末エキス、砂糖、発酵調味料、化学調味料等。
(2)液体原料:醤油、魚醤、みりん、食酢、料理酒、ワイン、液糖、レモン果汁、野菜エキス、野菜ペースト、ガラスープ等。
(3)油脂:サラダ油、大豆油、ゴマ油、菜種油、バター、チーズ等。
(4)固体原料:豆板醤、味噌、ゴマ(すりゴマ、練ゴマを含む)等。
粒状野菜入り調味液は、目開き1000μmの篩で透過したとき、透過した調味液の粘度が55〜575mPa・sであることを特徴としている。
このことは極めて重要であって、55mPa・s未満であるときは、調味液に含有される粒状野菜が、食材の上に留まることができなくなって食材の下に流れ落ち、加熱調理中に食材の有する嫌な風味を消去できなくなるので好ましくない。
反対に、575mPa・sを超えるときは、加熱調理中に調理鍋の底部が焦げ付き易くなるので好ましくない。
また、粒状野菜入り調味液を、目開き1000μmの篩で透過したとき非透過粒状野菜の含量を5.0〜25.0%(w/w)とすることも重要であって、5.0%未満であるときは、食材(特に獣鳥畜肉類及び魚介肉類)の嫌な臭いを十分に消去することができないので好ましくない。反対に25.0%(w/w)を超えると、相対的に調味液の割合が少なくなり、また粘度が上昇し、加熱調理中に調味液が食材から流れ落ちる量が減少し、鍋底に溜まる量も減って、鍋底の焦げ付きを防止することができなくなるので好ましくない。
そして、本発明は、調味液全体の粘度を1600mPa・s以下とすることも重要であって、上記値を超えると、加熱調理中に調味液が、食材に絡みつき、食材から流れ落ちなくなって、鍋底に水が殆ど存在しなくなり調理鍋の底部が焦げ付き易くなるので好ましくない。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
(調味液粘度及び非透過粒状野菜含量の測定法)
(1)調味液全体の粘度の測定法
試料をB型粘度計測定用のガラス管に所定量採り、B型粘度計(東京計器社製)で、回転数12rpm、ローターNo.1を用いて品温25℃で測定した。なお、上記条件で、測定範囲外となった場合、ローターのみNo.2に変更して粘度を測定した。
(2)透過調味液の粘度の測定法
粒状野菜入り調味液100gを目開き1000μm(16メッシュ)の篩にのせ5分間静置後、その透過液を容量300mlのビーカーに採り、これを上記と同じ方法で測定した。なお、十分量の透過液を採取できない場合、本操作を繰り返し測定に用いた。
(3)非透過粒状野菜含量の測定法
粒状野菜入り調味液100gを目開き1000μm(16メッシュ)の篩にのせ5分間静置後、篩の上に残留した不透過画分に流水を1分間緩く当て撹拌しながら粒度の細かい固形分をメッシュを介して流去し、水切り5分経過後の重量を測定し、該不透過画分(粒状野菜)の重さ(g)を試料100gで除して求めた。
(蒸し焼き料理用調味料の製造例1)
(1)粉体原料:食塩50g、グルタミン酸ソーダ5g、砂糖50g、加工澱粉6g
(2)液体原料:清酒100g、魚介エキス20g、野菜エキス10g
(3)固体原料:味噌80g
(4)粒状野菜:乾燥ニンニク粒15g、乾燥タマネギ粒5g、粒ゴマ10g、香辛料20g
上記(1)〜(3)の原料と(4)の粒状野菜を混和し、更に水を加えて全量1000gとし、80℃で30分調合加熱後、加熱蒸発水分相当量の水を若干補給して1000gに戻し、本発明の蒸し焼き料理用調味料を得た。この調味液は、目開き1000μmの篩で透過処理したとき透過調味液の粘度が55mPa・sであり、且つ非透過粒状野菜が6.9%(w/w)であり、且つ調味液全体の粘度が300mPa・sであった。
(蒸し鍋料理の調理法)
(1)調理鍋(土鍋)
内径約16cm、深さ約5.5cm、容量約900mlの土鍋(6号:1〜2人用)を使用した(図1参照)。
(2)蒸し鍋料理の調理法
上記寸法の土鍋1に、キャベツのざく切り250gを入れ、次いでその上に豚バラ肉125gを広げてのせた。バラ肉の上に、上記実施例1で得られた蒸し焼き料理用調味液65gをまんべんなく振りかけ、土鍋蓋(図面簡略化のため図示せず)を被せて密閉状態とし、ガスコンロにのせ、中火で10分火にかけて、本発明の蒸し鍋料理(図1のa区分)を得た。
[実施例3−1〜3−4、比較例3−1〜3−2]
上記実施例1の蒸し焼き料理用調味液に加工澱粉(増粘剤)を適宜添加し、あるいは添加することなく、その粘度を表1記載のものとする以外は、全く同様にして、蒸し焼き料理用調味液を調製した。
次いで、実施例2と全く同様にして、蒸し鍋料理を調製し、そのとき土鍋底部の焦げ付きの有無を調べた。
また、肉特有の嫌な臭いの有無についても調べた。
その結果を表1に示す。
Figure 0005726447
表1の結果から、55mPa・s未満であるときは、調味液に含有される粒状野菜が、食材の上に留まることができなくなって流れ落ち、加熱調理中に豚肉の有する嫌な風味を消去できなくなることが判る。
反対に、575mPa・sを超えるときは、加熱調理中に調理鍋の底部が焦げ付き易くなることが判る。
これに対し、該粒状野菜を篩で取除いた調味液の粘度が55〜575mPa・sであるときは、調味液に由来する粒状野菜が、食材の上に留まり、豚肉の嫌な風味を消去すると共に、調味液は食材から流れ落ち、調理鍋の底に溜まることにより鍋底が焦げ付くことを防止できることが判る。
(蒸し焼き料理用調味料の製造例2)
(1)粉体原料:食塩50g、グルタミン酸ソーダ5g、砂糖50g
(2)液体原料:清酒100g、魚介エキス20g、野菜エキス10g
(3)固体原料:味噌80g
(4)加工澱粉:表2に記載の添加量(g)を添加する。
(5)粒状野菜:乾燥ニンニク粒15重量部、乾燥タマネギ粒5重量部、粒ゴマ10重量部、香辛料20重量部の割合で配合したものを、表2に記載の添加量(g)で添加する。
上記(1)〜(4)の原料と(5)の粒状野菜を表2に記載の割合にて混和し、更に水を加えて全量1000gとし、80℃で30分調合加熱後、蒸発水分を補給するため再度水で1000gに戻し、本発明の蒸し焼き料理用調味料を調製した。次いで、実施例2と全く同様にして、蒸し鍋料理を調製し、そのとき土鍋底部の焦げ付きの有無を調べた。
また、肉特有の嫌な臭いの有無についても調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0005726447
表2の結果から、粒状野菜入り調味液の該粒状野菜を取除いた調味液の粘度が55〜575mPa・sの範囲である450mPa・sであっても、非透過粒状野菜の含量が5.0%未満であるときは、豚肉の嫌な臭いを十分に消去することができないことが判る。反対に25.0%(w/w)を超えると、相対的に調味液の割合が少なくなり、且つ調味液全体の粘度も上がるため、加熱調理中に調味液が食材から流れ落ちる量が減少し、鍋底に溜まる量も減って、鍋底の焦げ付きを防止することができないので好ましくないことが判る。
調味液全体の粘度と、蒸し鍋料理の焦げ発生の関係を調べた。
(1)粉体原料:食塩50g、グルタミン酸ソーダ5g、砂糖50g、加工澱粉2.4g
(2)液体原料:清酒100g、魚介エキス20g、野菜エキス10g
(3)固体原料:味噌80g
(4)粒状野菜:乾燥ニンニク粒37.5g、乾燥タマネギ粒12.5g、粒ゴマ25g、香辛料50g
上記(1)〜(3)の原料と(4)の粒状野菜を混和し、更に水を加えて全量1000gとし、80℃で30分調合加熱し、次いで蒸発水分を補給するため水で1000gに戻して蒸し焼き料理用調味料を得た。
この調味液は、該粒状野菜を取除いた調味液の粘度が575mPa・sであり、また該粒状野菜(目開き5mmパス〜1.0mmオン)が25.0%(w/w)であり、更にまた調味液全体の粘度が2200mPa・sであった。
次いで、上記蒸し焼き料理用調味液を水で希釈し、表3記載の如き粘度の調味液を調製した。
次いで、実施例2と全く同様にして、蒸し鍋料理を調製し、そのとき土鍋底部の焦げ付きの有無を調べた。
また、肉特有の嫌な臭いの有無についても調べた。その結果を表3に示す。
Figure 0005726447
表3の結果から、該粒状野菜を取除いた調味液の粘度が本発明で特定した範囲内(575mPa・s)であり、且つ、該粒状野菜含量が本発明で特定した範囲内(25.0%(w/w))であっても、調味液全体の粘度が1600mPa・sを超えるときは、焦げが発生することが判る(比較例6〜7参照)。これに対し、1600mPa・sであるときは焦げ付きが少なくなり、1300mPa・sであるときは焦げ付きが全く無くなることが判る。
1・・・土鍋、2・・・食材、3・・・焦げ付き

Claims (2)

  1. 目開き8mmの篩をパスし、目開き1mmの篩にオンする粒状野菜を含有する粒状野菜入り調味液であって、該調味液を目開き1000μmの篩にかけ得られる透過調味液の粘度が55〜575mPa・sであり、且つ非透過粒状野菜の含量が該調味液全体に対して5.0〜25.0%(w/w)であり、且つ調味液全体の粘度が1600mPa・s以下であることを特徴とする蒸し焼き料理用調味液。
  2. 調理鍋に食材を入れ、この上から、請求項1記載の蒸し焼き料理用調味液を振りかけ、蓋を被せて密閉状態とし、以下常法により加熱することを特徴とする蒸し焼き料理の製造法。
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