JP5726272B2 - シリコーンレジン組成物およびシリコーンレジン組成物を用いた保護被覆工法 - Google Patents
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Description
ここで、これらの保護被覆に使用される組成物としては、特許文献1に示されるような有機系の合成樹脂で構成された組成物を用いることが多い。
また、特許文献1に記載の組成物は、被膜が炭素結合によって形成されているものである。従って、10年程度の耐用年数が要求されるコンクリートの保護被覆においては、耐久性や耐候性の点において必ずしも十分であるとはいえないという問題もあった。
しかしながら、特許文献2に記載の組成物は、溶媒に有機溶剤を使用することから、被膜形成時において有機溶剤が大気中に放出されることになり、大気環境を汚染するという問題があった。
しかしながら、特許文献3に記載の組成物は、被膜形成時には加温することが不可欠であることから被膜形成に時間を要し、コンクリートなどの保護被覆に使用する際には作業性の点で問題があった。また、この問題は、特に冬場における屋外での作業時には顕著であった。
本発明に用いられるカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物は単体の化合物でもよいし、後記する鉄鋼スラグやアルミナセメントまたはその混合物の中に存在しているカルシウムアルミネート類等のように、他の化合物との複合物の状態となっているものでもよい。
配合量が上記範囲より少ない場合には硬化に長時間を要し、上記範囲を超える場合には逆に硬化が速くなりすぎるため、それぞれ作業性の問題が生じる恐れがあるからである。
従って、組成物中へ均一に分散させて硬化を緩やかにし、良好な被膜を得やすくするためには、上記のカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物としては、後記する鉄鋼スラグやアルミナセメントまたはその混合物などに含まれているカルシウムアルミネート類等のように、他の化合物との複合物の状態となっているものを用いることが好ましい。
本発明に用いられる鉄鋼スラグとは、金属の精錬時に副産物として回収されるものであり、高炉スラグと製鋼スラグに分類されるものである。なお、高炉スラグはさらに徐冷スラグと水砕スラグに分類される。
鉄鋼スラグの組成としては、酸化カルシウムと二酸化ケイ素を主成分とし、その他の成分として酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、鉄、マンガン、硫黄などが単体あるいはカルシウムアルミネート類などのように他の化合物との複合物の状態となって含まれているものである。
ブレーン比表面積が3000cm2/gより小さい場合には作業性の悪化の問題が生じ、10000cm2/gを超える場合には作業性の悪化、可使時間の短縮の問題が生じる恐れがあるからである。
本発明のシリコーンレジン組成物における水の配合量については、特に限定されず、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物の溶解性や作業性などの点から適宜決定することができる。
本発明に用いられるシリコーン樹脂は、シロキサン結合を有するものであって、上記したカルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物またはこれら化合物から溶出した金属イオンによって硬化するものであれば特に限定されない。また、本発明に用いられるシリコーン樹脂は、水溶性タイプのものを使用することもできるが、シリコーンレジン組成物の撥水性能の面から、オルガノシリコーン化合物を乳化剤、水、水混和性有機溶剤などによって乳化、分散させたエマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのものを用いることが好ましい。
ここで、エマルジョンタイプまたはディスパージョンタイプのシリコーン樹脂を使用する場合には、被膜特性の点から、平均組成式が[RSiO3/2]m[R2SiO]n(Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、m+nが1.0である。)で示されるオルガノシリコーン化合物を用いたものを使用することが好ましい。
また、オルガノシリコーン化合物中の[R2SiO]単位のモル比率(n)も同様に、被膜の硬度と耐久性の点から0〜0.8の範囲が好ましく、より好ましくは0〜0.7の範囲であり、さらに好ましくは0〜0.6の範囲である。0.8より大きい場合には被膜硬度が軟らかくなり、耐久性が低下してしまう恐れがあるからである。
乳化剤としては、オルガノシリコーン化合物を水中へ乳化分散させることができるものであれば特に制限はない。そしてこれらの乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤等を挙げることができる。また、これらの乳化剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
水混和性有機溶剤としては、オルガノシリコーン化合物を乳化する際に流動性を付与したり、オルガノシリコーン化合物の粘度を調整したりするために使用されるものであり、SP値(溶解パラメーター)が8.0〜11.0で、水混和性のものであることが好ましい。
ここで、SP値とは溶解パラメーターのことであり、溶解度係数ともいう、Hildebrandにより提唱された液体間の混合性の尺度となる特性値である。
このような水混和性有機溶剤としては、アルコール系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物などがある。具体的には、セロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルカルビトール、カルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。
そしてこの中でも水への溶解度の点から、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレートを用いるのが好ましい。
本発明のシリコーンレジン組成物を用いた保護被覆工法としては、従来のコンクリートの保護だけでなく、例えば、工場の煙突の内面(煙道)に代表されるような耐熱、屋外で使用される場合の耐候性、オゾン及び塩素などの過酷な環境にさらされる材料の保護被覆に対しても使用することができる。
なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、以下に示す方法にてシリコーンレジン組成物に使用するシリコーン樹脂を3種類作製した。また、比較例としてアクリル樹脂系エマルジョン(BAFSジャパン社製、品番:YJ−2720D)を使用した。
平均組成式:[(CH3)SiO3/2]0.67[(C6H5)SiO3/2]0.33で示されるオルガノシリコーン化合物のエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値8.9)溶液(シリコーンレジン/エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート=83/17質量比)530部、乳化剤として「ノイゲンXL40」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25部、「ノイゲンXL400D」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4の65%水溶液)38.5部、「ニューコール291M」(商品名、日本乳化剤社製、アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5部及び脱イオン水401.5部を、ホモディスパーを用いて乳化分散し、150℃/3時間での不揮発分が47質量%、平均粒径(コールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定)が200nmの青白色なオルガノシリコーン化合物エマルジョン(A−1)を得た。
平均組成式:[(CH3)SiO3/2]0.67[(CH3)2SiO2/2]0.33で示されるオルガノシリコーン化合物のエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値8.9)溶液(シリコーンレジン/エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート=93/7質量比)530部、乳化剤として「ノイゲンXL40」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25部、「ノイゲンXL400D」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4の65%水溶液)38.5部、「ニューコール291M」(商品名、日本乳化剤社製、アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5部及び脱イオン水401.5部を、ホモディスパーを用いて乳化分散し、150℃/3時間での不揮発分が47質量%、平均粒径(コールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定)が190nmの青白色なオルガノシリコーン化合物エマルジョン(A−2)を得た。
メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(平均重合度15、粘度40mm2/s)33重量%、ジメチルジメトキシシラン25モル%とフェニルトリメトキシシラン75モル%との部分共加水分解縮合物(平均重合度12、粘度140mm2/s)33重量%、ジメチルジメトキシシラン30モル%とフェニルトリメトキシシラン50モル%とジフェニルジメトキシシラン20モル%との部分共加水分解縮合物(平均重合度4、粘度20mm2/s)33重量%、有機金属系硬化触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート重合体1重量%を、ホモディスパーを用いて混合し、湿気硬化型シリコーン樹脂(A−3)を得た。
カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物については、酸化カルシウム(特級試薬)および後記する鉄鋼スラグ、アルミナセメントを使用した。また、比較例として普通ポルトアンドセメントを使用した。
次に、鉄鋼スラグとしては高炉スラグを用い、その中でもブレーン比表面積が4000cm2/gのもの(鉄鋼スラグ−1)とブレーン比表面積が10000cm2/gのもの(鉄鋼スラグ−2)を使用し、アルミナセメントとしてはブレーン比表面積が4600cm2/gのものを使用した。
なお、作製した鉄鋼スラグまたはアルミナセメント5gと水100gを混合した際の水のpHについては23℃において10.8であった。
次に、表1に示す配合にて、実施例1〜10と、比較例1〜4のシリコーンレジン組成物を作製した。なお、作製方法については、表1の原料を容量1Lの容器に入れた後、混錬することによって作製した。
作業性試験については、コテ塗り時の作業性を評価することにより行った。具体的には調合・攪拌直後及び30分間放置後のシリコーンレジン組成物をコテ塗り作業した際、作業性が良好な場合は◎、作業性が若干低下した場合は○、作業性が低下した場合は△、作業ができない場合は×と評価することにより行った。
耐塩素性試験については、試験片を次亜塩素ナトリウム5%水溶液に浸漬することにより行った。具体的には、縦70mm×横70mm×厚さ20mmのモルタル板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるように金ゴテによるコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、上記の水溶液に試験片を30日間浸漬した後目視観察を行い、外観に変化無い場合は◎、若干の色調変化が生じた場合○、若干の劣化が生じた場合は△、劣化現象が生じた場合は×と評価することにより行った。
耐オゾン性試験については、試験片を下水処理施設のオゾン処理槽に浸漬することにより行った。具体的には、縦80mm×横120mm×厚さ10mmのモルタル板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるように金ゴテによるコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、上記の処理槽に試験片を1年間浸漬した後目視観察を行い、外観に変化が無い場合を◎、若干の色調変化が生じた場合を○、若干の劣化現象が生じた場合を△、劣化現象が生じた場合を×と評価することにより行った。
耐候性試験については、スーパーUVテスター試験機(岩崎電気社製)を用いて行った。具体的には、縦70mm×横150mm×厚さ3mmのモルタル板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるように金ゴテによるコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、1000時間経過後目視観察を行い、外観に変化が無い場合を◎、若干の色調変化が生じた場合を○、若干の劣化現象が生じた場合を△、劣化現象が生じた場合を×と評価することにより行った。
耐熱性試験については、試験片を煮沸水に浸漬することにより行った。具体的には、縦70mm×横70mm×厚さ20mmのモルタル板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるように金ゴテによるコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、上記の煮沸水に試験片を7日間浸漬した後目視観察を行い、外観に変化が無い場合を◎、若干の色調変化が生じた場合を○、若干の劣化現象が生じた場合を△、劣化現象が生じた場合を×と評価することにより行った。
防汚染性試験については、屋外暴露試験により行った。具体的には、縦70mm×横70mm×厚さ20mmのモルタル板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるように金ゴテによるコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、兵庫県内において半年間屋外暴露した後目視観察を行い、外観に汚れが無い場合を◎、若干の汚れが生じた場合を○、汚れが生じた場合を△、汚れが多い場合を×と評価することにより行った。
コンクリートへの付着性試験については、コンクリート板への塗布後の引張強度測定により行った。具体的には、縦300mm×横300mm×厚さ60mmのモルタル板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるようにコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、所定のアタッチメントを接着剤にて被膜に接着した後、建研式接着力試験機にて引っ張り、破断強度が1.0N/mm2以上の場合を◎、0.5以上〜1.0N/mm2未満の場合を○、0.5N/mm2未満の場合を×と評価することにより行った。
鋼板付着性試験については、鋼板への塗布後の引張強度測定により実施した。具体的には、縦300mm×横300mm×厚さ5mmの鋼板にシリコーンレジン組成物を塗布量が1.0kg/m2になるように金ゴテによるコテ塗りで塗装し、温度20±2℃、湿度65±10%の条件下で7日硬化させることによって試験片を作製した。
そして、所定のアタッチメントを接着剤にて被膜に接着した後、建研式接着力試験機にて引っ張り、破断強度が1.0N/mm2以上の場合を◎、0.5以上〜1.0N/mm2未満の場合を○、0.5N/mm2未満の場合を×と評価することにより行った。
Claims (4)
- カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物と、
シリコーン樹脂と、
水とが含有されており、
前記シリコーン樹脂が、
平均組成式:[RSiO 3/2 ] m [R 2 SiO] n (Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、m+nが1.0である。)で示されるオルガノシリコーン化合物であり、
前記カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が、
鉄鋼スラグまたはアルミナセメントまたはその混合物に由来のものであり、
さらに前記カルシウム、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物の配合量が、
前記シリコーン樹脂50〜100重量部に対して1〜100重量部であることを特徴とするシリコーンレジン組成物。
- 前記シリコーン樹脂が、
(A)平均組成式:[RSiO3/2]m[R2SiO]n(Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、m+nが1.0である。)で示されるオルガノシリコーン化合物と、
(B)乳化剤と、
(C)水、
とを含有してなる水性エマルジョンまたは水性ディスパージョンであることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンレジン組成物。
- 前記シリコーン樹脂が、
(A)平均組成式:[RSiO3/2]m[R2SiO]n(Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、m+nが1.0である。)で示されるオルガノシリコーン化合物と、
(B)乳化剤と、
(C)水と、
(D)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤、
とを含有してなる水性エマルジョンまたは水性ディスパージョンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコーンレジン組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリコーンレジン組成物を用いることを特徴とする保護被覆工法。
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