JP5724250B2 - 1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕 下記の工程A及びBを含む1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの製造方法;
工程A:アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基並びに相間移動触媒の存在下、30℃〜50℃の範囲から選択される温度下にて1,1,1,3−テトラクロロプロパンを脱塩化水素化させる工程、
工程B:工程Aにより得られた3,3,3-トリクロロ-1-プロペンを金属触媒の存在下で異性化させる工程。
〔2〕 工程Bが、前記工程Aにより得られた1,1,3−トリクロロ−1−プロペン及び3,3,3−トリクロロ−1−プロペンを含む混合物と、金属触媒とを接触させることにより、該混合物に含まれる3,3,3−トリクロロ−1−プロペンを異性化させる工程である前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕 工程Aにおける相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩又は第四級ホスホニウム塩である前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 工程Aにおける塩基の形態が水溶液である前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の製造方法。
〔5〕 下記の工程Cを工程Aと工程Bとの間に行う前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の製造方法;
工程C:工程Aにより得られた反応混合物を酸で洗浄し、更に水で洗浄する工程。
〔6〕 工程Cにおける酸が、塩酸、硫酸、リン酸又は硝酸である前記〔5〕記載の製造方法。
〔7〕 工程Bにおける金属触媒が、周期表における第7族元素、第8族元素、第9族元素、第10族元素、第11族元素、第12族元素、第14族元素及び第15族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の製造方法。
〔8〕 工程Bにおける金属触媒が、鉄、銅、亜鉛、銀、ニッケル、パラジウム、スズ、ビスマス及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の製造方法。
〔9〕 工程Bの異性化が50℃〜120℃の範囲から選択される温度下で行われる前記〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の製造方法。
〔10〕 工程Aが、有機溶媒の非存在下で行われる前記〔1〕〜〔9〕のいずれか記載の製造方法。
〔11〕 工程Bが、有機溶媒の非存在下で行われる前記〔1〕〜〔10〕のいずれか記載の製造方法。
〔12〕 アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基並びに相間移動触媒の存在下、30℃〜50℃の範囲から選択される温度下にて1,1,1,3−テトラクロロプロパンを脱塩化水素化させる工程を含む1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの製造方法。
前記第四級アンモニウムクロリドを構成する塩素イオンが、硫酸イオンに代わった第四級アンモニウム硫酸塩、
前記第四級アンモニウムクロリドを構成する塩素イオンが、硫酸水素イオンに代わった第四級アンモニウム硫酸水素塩
等が挙げられる。
前記第四級ホスホニウムクロリドを構成する塩素イオンが、ヨウ素イオンに代わった第四級ホスホニウムヨーダイド
等が挙げられる。
上記第四級アンモニウムブロミドとしては、テトラアルキルアンモニウムブロミドが好ましい。上記テトラアルキルアンモニウムブロミドにおける各アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10である。
相間移動触媒は、市販のもの、及び、公知の方法により調製したものの何れでもよい。
上記塩基は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
工程Aにおける塩基の形態は、好ましくは水溶液である。
上記水溶液における塩基の濃度は、例えば5〜50重量%の範囲である。
上記水溶液は、市販の製品であってもよいし、市販の塩基と水とから調製してもよい。
上記水溶液の量は、該水溶液における塩基の量が、上述の塩基の量となる範囲内であればよい。
前記有機溶媒としては、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;などが挙げられる。
有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、1,1,1,3−テトラクロロプロパン1重量部に対して、実用的には100重量部以下、好ましくは20重量部以下である。
工程Aは、有機溶媒の非存在下で行うことが好ましい。なお、ここでいう有機溶媒の非存在下とは、工程Aで用いる1,1,1,3−テトラクロロプロパンと、工程Aにより得られる1,1,3−トリクロロ−1−プロペン及び3,3,3−トリクロロ−1−プロペンと以外の有機溶媒が存在しない条件下であることを意味する。
工程Aは、30℃以上、50℃以下の温度にて行われる。
工程Aを行うことにより、1,1,3−トリクロロ−1−プロペン及び3,3,3−トリクロロ−1−プロペンが得られる。
工程Aの反応時間は、例えばガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等の分析手段により1,1,1,3−テトラクロロプロパン、1,1,3−トリクロロ−1−プロペン又は3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの量を確認することにより適宜決定される。工程Aの反応時間は、例えば10分間〜24時間の範囲である。
工程C:工程Aにより得られた反応混合物を酸で洗浄し、更に水で洗浄する工程。
・上記反応混合物から水層を分離した後、得られた有機層を酸で洗浄し、さらに水で洗浄する。
・上記反応混合物を酸で洗浄し、得られた混合液から水層を除去し、さらに得られた有機層を水で洗浄する。
工程Bは、例えば、工程Aにより得られた1,1,3−トリクロロ−1−プロペン及び3,3,3−トリクロロ−1−プロペンを含む混合物と、金属触媒とを接触させることにより行うことができる。
金属触媒は、金属触媒をそのまま用いてもよいし、例えば活性炭、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト等の担体に担持して用いてもよい。
金属触媒をそのまま用いる場合には、粒径の小さいものが好ましい。
上記温度が0℃以上であると、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの収率を向上することができ、上記温度が150℃以下であると高沸点化合物の生成を抑制することができる。
還流冷却管を付した3Lフラスコに、1,1,1,3−テトラクロロプロパン800g、20%水酸化ナトリウム水溶液1200gおよびテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8gを仕込み、内温45℃まで昇温した。同温度で13時間攪拌するとほぼ1,1,1,3−テトラクロロプロパンが消失することをガスクロマトグラフィーで確認したので、この反応液を約25℃の室温まで冷却した。
この反応液を静置したところ2層に分離した。このうち、上層を回収し、該上層に5%硫酸水溶液を240g加え、10分攪拌した後、静置したところ、2層に分離した。このうち上層を水240gで洗浄することにより、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンとを含む混合物627gを得た。該混合物をガスクロマトグラフィー面積百分率法により組成分析し、収率を求めた。
1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:39.5%
3,3,3−トリクロロ−1−プロペン:56.0%
3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの2量体(以下、高沸点化合物と記すことがある):
2.3%
1,1,1,3−テトラクロロプロパン: 2.2%
(収率:1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの合計) 91.5%
反応温度が40℃であり、反応時間が28時間である以外は、実施例1と同様に操作して、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンとを含む混合物623gを得た。該混合物をガスクロマトグラフィー面積百分率法により組成分析し、収率を求めた。
1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:39.9%
3,3,3−トリクロロ−1−プロペン:55.9%
高沸点化合物: 3.1%
1,1,1,3−テトラクロロプロパン: 1.2%
(収率:1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの合計) 90.4%
反応温度が35℃であり、反応時間が42時間である以外は、実施例1と同様に操作して、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンとを含む混合物625gを得た。該混合物をガスクロマトグラフィー面積百分率法により組成分析し、収率を求めた。
1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:39.2%
3,3,3−トリクロロ−1−プロペン:56.8%
高沸点化合物: 2.7%
1,1,1,3−テトラクロロプロパン: 1.3%
(収率:1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの合計) 90.9%
反応温度が50℃であり、反応時間が9時間である以外は、実施例1と同様に操作して、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンとを含む混合物624gを得た。該混合物をガスクロマトグラフィー面積百分率法により組成分析し、収率を求めた。
1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:39.9%
3,3,3−トリクロロ−1−プロペン:55.7%
高沸点化合物: 2.6%
1,1,1,3−テトラクロロプロパン: 1.7%
(収率:1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの合計) 89.3%
還流冷却管を付した500mLフラスコに、実施例1で得た混合物300g(1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの合計含量93.3%)と塩化亜鉛0.3gとを仕込み、90℃に昇温後、同温度で6時間攪拌した。
得られた反応混合物を室温まで冷却後、5%水酸化ナトリウム水溶液120gを加え、10分攪拌した後、静置したところ2層に分離した。このうち、上層を回収し、該上層に5%硫酸水溶液を120g加え、10分攪拌後、静置したところ2層に分離した。このうち、上層を回収し、該上層を水120gで洗浄し、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの粗生成物303gを得た。該溶液をガスクロマトグラフィー内部標準法により組成分析し、収率を求めた。
(収率) 97.2%
上記収率は、(1,1,3−トリクロロ−1−プロペン量×100)/(反応に用いた混合物中の1,1,3−トリクロロ−1−プロペンおよび3,3,3−トリクロロ−1−プロペンの合計量)を示す。
(以下、実施例6〜19における収率も同じ。)
(蒸留収率)95.6%
上記蒸留収率(モル比)は、(1,1,3−トリクロロ−1−プロペン量×100)/(粗生成物中の1,1,3−トリクロロ−1−プロペン量)を示す。
実施例1〜4と同様の方法で1,1,3−トリクロロ−1−プロペンと3,3,3−トリクロロ−1−プロペンとを含む混合物(1,1,3−トリクロロ−1−プロペン含量41%、3,3,3−トリクロロ−1−プロペン含量59%)を調製した。
還流冷却管を付した100mLフラスコに、調製した混合物10gと鉄粉0.1gとを仕込み、90℃に昇温後、同温度で8時間攪拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却後、該反応混合物をガスクロマトグラフィー内部標準法により組成分析し、収率を求めた。
(収率)96%
鉄粉の代わりに酸化鉄(III)[Fe2O3]0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成)1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率)94%
鉄粉の代わりに塩化第一鉄4水和物(FeCl2・4H2O)0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成)1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率)94%
鉄粉の代わりに塩化第二鉄6水和物(FeCl3・6H2O)0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率)88%
鉄粉の代わりに銅粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率)94%
鉄粉の代わりに酸化銅(Cu2O)0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率)92%
鉄粉の代わりに銀粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=99:1
(収率)92%
鉄粉の代わりに亜鉛粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率) 92%
鉄粉の代わりに酸化亜鉛(ZnO)0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率) 93%
鉄粉の代わりにニッケル粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率) 92%
鉄粉の代わりにパラジウム粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率) 96%
鉄粉の代わりにマンガン粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=95:5
(収率) 90%
鉄粉の代わりに錫粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率) 98%
鉄粉の代わりにビスマス粉0.1gを用いる以外は、実施例6と同様に行った。
(組成) 1,1,3−トリクロロ−1−プロペン:3,3,3−トリクロロ−1−プロペン=100:0
(収率) 93%
還流冷却管を付した200mlフラスコに、1,1,1,3−テトラクロロプロパン91g(0.5モル)と無水塩化第二鉄0.2gとを仕込み、内温80℃まで昇温した。80℃にて4時間加熱攪拌した。反応後、ガスクロマトグラフィー内部標準法にて、生成物の分析をしたところ、1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの収率は56%であった。原料が7%残存し、高沸点化合物が37%生成していた。
Claims (6)
- 下記の工程A及びBを含む1,1,3−トリクロロ−1−プロペンの製造方法;
工程A:アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩基並びに相間移動触媒の存在下、30℃〜50℃の範囲から選択される温度下にて1,1,1,3−テトラクロロプロパンを脱塩化水素化させる工程、
工程B:工程Aにより得られた3,3,3−トリクロロ−1−プロペンを、塩化亜鉛、酸化銅、銀粉、亜鉛粉、酸化亜鉛、ニッケル粉、パラジウム粉、マンガン粉、錫粉及びビスマス粉からなる群より選ばれる1種以上の金属触媒の存在下で異性化させる工程。 - 工程Bが、前記工程Aにより得られた1,1,3−トリクロロ−1−プロペン及び3,3,3−トリクロロ−1−プロペンを含む混合物と、塩化亜鉛、酸化銅、銀粉、亜鉛粉、酸化亜鉛、ニッケル粉、パラジウム粉、マンガン粉、錫粉及びビスマス粉からなる群より選ばれる1種以上の金属触媒とを接触させることにより、該混合物に含まれる3,3,3−トリクロロ−1−プロペンを異性化させる工程である請求項1記載の製造方法。
- 工程Aにおける塩基の形態が水溶液である請求項1又は2記載の製造方法。
- 下記の工程Cを工程Aと工程Bとの間に行う請求項1〜3のいずれか記載の製造方法;
工程C:工程Aにより得られた反応混合物を酸で洗浄し、更に水で洗浄する工程。 - 工程Bの異性化が50℃〜120℃の範囲から選択される温度下で行われる請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
- 工程Aおよび工程Bが、有機溶媒の非存在下で行われる請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
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