JP5716724B2 - ナトリウムイオン電池システム、ナトリウムイオン電池の使用方法、ナトリウムイオン電池の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のナトリウムイオン電池システムは、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池と、充電制御部と、を有するナトリウムイオン電池システムであって、上記負極活物質が、Na2Ti6O13結晶相を有する活物質であり、上記充電制御部が、上記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および上記負極活物質の電位を制御することを特徴とするものである。
以下、本発明のナトリウムイオン電池システムについて、構成ごとに説明する。
本発明におけるナトリウムイオン電池は、負極活物質層、正極活物質層および電解質層を少なくとも有するものである。
まず、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。
本発明における負極活物質は、通常、Na2Ti6O13結晶相を有するものである。なお、本発明における「Na2Ti6O13結晶相」とは、後述するように、Na2Ti6O13結晶相におけるTiの一部が他の元素で置換されたものを包含する概念である。Na2Ti6O13結晶相の存在は、X線回折(XRD)測定等により確認することができる。XRD測定には、例えばCuKα線を用いることができる。上記負極活物質は、例えば2θ=11.8°、14.1°、24.5°、29.8°、30.1°、30.5°、32.2°、33.5°、43.3°、44.3°、48.6°の位置にピークを有することが好ましい。なお、これらのピークの位置は、後述する実施例で得られた実測値であり、±0.5°の範囲内で前後していても良い。
D=Kλ/(βcosθ)
K:Scherrer定数、λ:波長、β:結晶子の大きさによる回折線の拡がり、θ:回折角2θ/θ
なお、非特許文献1のFigure 5に記載されたXRDパターンから、Na2Ti6O13の結晶子サイズを正確に求めることは困難であるが、非常にピークが立っていることから、1μm弱程度であると推測される。
本発明における負極活物質層は、導電化材を含有することが好ましい。導電化材は、上記負極活物質と複合化したものであっても良く、複合化ではなく負極活物質層内で負極活物質と混合された状態で存在するものであっても良く、その両者であっても良い。導電化材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記「(i)負極活物質」に記載した内容と同様である。中でも、本発明においては、炭素材料の結晶性が高いことが好ましく、具体的には、グラファイトまたはVGCFであることが好ましい。炭素材料の結晶性が高いと、Naイオンが炭素材料に挿入されにくくなり、Naイオン挿入による不可逆容量を低減できるからである。その結果、充放電効率の向上をさらに図ることができる。炭素材料の結晶性は、例えば層間距離d002およびD/G比で規定できる。
本発明における負極活物質層は、結着材を含有していても良い。結着材としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材、スチレンブタジエンゴム等のゴム系結着材、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系結着材、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系結着材等を挙げることができる。また、固体電解質材料としては、所望のイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸化物固体電解質材料、硫化物固体電解質材料を挙げることができる。なお、固体電解質材料については、後述する「(3)電解質層」で詳細に説明する。
次に、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、正極活物質の他に、導電化材、結着材および固体電解質材料の少なくとも一つを含有していても良い。
次に、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間のイオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、固体電解質層等を挙げることができる。
本発明におけるナトリウムイオン電池は、上述した負極活物質層、正極活物質層および電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。また、正極集電体および負極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
本発明におけるナトリウムイオン電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および電解質層を有するものであれば特に限定されるものではない。また、本発明におけるナトリウムイオン電池は、電解質層が固体電解質層である電池であっても良く、電解質層が液体電解質層である電池であって良く、電解質層がゲル電解質層である電池であっても良い。さらに、本発明におけるナトリウムイオン電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。また、本発明におけるナトリウムイオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、ナトリウムイオン電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般的なナトリウムイオン電池における製造方法と同様である。
本発明における充電制御部は、上記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および上記負極活物質の電位を制御するものである。
次に、本発明のナトリウムイオン電池の使用方法について説明する。本発明のナトリウムイオン電池の使用方法は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池の使用方法であって、上記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および上記負極活物質の電位を制御して充電することを特徴とするものである。
次に、本発明のナトリウムイオン電池の製造方法について説明する。本発明のナトリウムイオン電池の製造方法は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池の製造方法であって、上記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および上記負極活物質の電位を制御して充電する充電工程を有することを特徴とするものである。
(活物質の合成)
出発原料として、炭酸ナトリウム(Na2CO3)および酸化チタン(anatase、TiO2)を、Na2CO3:TiO2=1:6のモル比で秤量し、エタノール中で混合した。次に、エタノールを乾燥除去し、ペレットに成型し、マッフル炉にて800℃、60時間の条件で焼成を行った。これにより、Na2Ti6O13結晶相を有する活物質を得た。
得られた活物質を用いた評価用電池を作製した。まず、得られた活物質と、導電化材(アセチレンブラック、層間距離d002=3.54Å、D/G比=0.87)と、結着材(ポリフッ化ビニリデン、PVDF)とを、活物質:導電化材:結着材=85:10:5の重量比で混合し、混練することにより、ペーストを得た。次に、得られたペーストを、銅箔上にドクターブレードにて塗工し、乾燥し、プレスすることにより、厚さ20μmの試験電極を得た。
(XRD測定)
実施例1で得られた活物質に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。その結果を図3に示す。図3に示すように、実施例1では、2θ=11.8°、14.1°、24.5°、29.8°、30.1°、30.5°、32.2°、33.5°、43.3°、44.3°、48.6°の位置に、Na2Ti6O13結晶相を示す典型的なピークが確認された。また、Na2Ti6O13結晶相における2θ=11.8°のピーク強度をIAとし、酸化チタンにおける2θ=25.2°のピーク強度をIBとした場合、IB/IAの値は0.08であった。
実施例1で得られた評価用電池に対して、充放電試験を行った。具体的には、環境温度25℃、電圧範囲10mV〜2.5Vの条件で行った。電流値は、6mA/gとした。一方、比較例1として、電圧範囲を0.5V〜2.5Vに変更したこと以外は、実施例1と同様にして充放電測試験を行った。また、比較例2として、電流値を30mA/gとしたこと以外は、実施例1と同様にして充放電測試験を行った。その結果を図4に示す。図4(a)に示すように、実施例1では、0.8V付近のプラトーに加え、0.1V付近でもプラトーが出現することが確認された。また、得られる可逆容量は約110mAh/gであり、極めて大きな容量が得られることが確認できた。一方、図4(b)に示すように、比較例2では、0.1V付近のプラトーが確認されなかった。また、比較例1、2の可逆容量は、それぞれ約50mAh/g、約60mAh/gであった。
実施例1で得られた活物質と、グラファイト(層間距離d002=3.36Å、D/G比=0.12)とを、活物質:グラファイト=90:10の重量比となるように秤量し、これらの混合物をZrO2製ポットに入れ、ボールミル処理(180rpm×24時間)を行った。これにより、グラファイトが複合化した活物質を得た。得られた複合化活物質を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用電池を得た。
(SEM観察)
実施例2で得られた活物質のSEM観察を行った。その結果を図5に示す。図5に示すように、実施例2では、活物質とグラファイトとが複合化していることが確認できた。
実施例1、2で得られた評価用電池に対して、充放電試験を行った。充放電条件は上記と同様である。その結果を図6に示す。図6に示すように、実施例2は、実施例1に比べて、容量維持率の面で優れていることが確認できた。実施例1、2では、電圧範囲の下限(Na挿入下限電位)を10mVとしているため、Naイオンの挿入により、Na2Ti6O13結晶相の結晶構造は変化していると考えられる。結晶構造が変化すると、電子伝導パスが切断されやすくなると考えられるが、実施例2におけるグラファイトは、結晶性が高くNaイオンとの反応性が低いため、容量維持率が高くなったと考えられる。
2 … 負極活物質層
3 … 電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
10 … ナトリウムイオン電池
20 … 充電制御部
30 … ナトリウムイオン電池システム
Claims (6)
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するナトリウムイオン電池と、
充電制御部と、
を有するナトリウムイオン電池システムであって、
前記負極活物質が、Na2Ti6O13結晶相を有する活物質であり、
前記負極活物質に含まれる全ての結晶相の中で前記Na 2 Ti 6 O 13 結晶相の割合が、50mol%以上であり、
前記充電制御部が、前記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および前記負極活物質の電位を制御することを特徴とするナトリウムイオン電池システム。 - 前記充電制御部が、前記電流を、6mA/g以下に制御することを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池システム。
- 前記充電制御部が、前記負極活物質の電位を、0.1V(vs Na/Na+)以下に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナトリウムイオン電池システム。
- 負極活物質が、導電化材と複合化していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のナトリウムイオン電池システム。
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有し、前記負極活物質が、Na 2 Ti 6 O 13 結晶相を有する活物質であり、前記負極活物質に含まれる全ての結晶相の中で前記Na 2 Ti 6 O 13 結晶相の割合が、50mol%以上であるナトリウムイオン電池の使用方法であって、
前記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および前記負極活物質の電位を制御して充電することを特徴とするナトリウムイオン電池の使用方法。 - 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有し、前記負極活物質が、Na 2 Ti 6 O 13 結晶相を有する活物質であり、前記負極活物質に含まれる全ての結晶相の中で前記Na 2 Ti 6 O 13 結晶相の割合が、50mol%以上であるナトリウムイオン電池の製造方法であって、
前記Na2Ti6O13結晶相における第一のNa挿入反応に加え、より低電位側の第二のNa挿入反応が生じるように、電流および前記負極活物質の電位を制御して充電する充電工程を有することを特徴とするナトリウムイオン電池の製造方法。
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