JP5716361B2 - エンジンルーム構造 - Google Patents

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本発明は、車両のエンジンルーム構造であり、特にエンジンマウント付近の構造に関するものである。
一般的な車両のエンジンは、エンジンマウントによって懸架されている。エンジンマウントは、走行中に生じるエンジンの慣性重量を支え、またエンジンの稼動に伴う振動を吸収する機能を有している。エンジンマウントはエンジンマウントブラケット(以下、「ブラケット部」と略称する。)を介してエンジンルーム内の側部に取り付けられている。エンジンマウントおよびブラケット部にかかる荷重は非常に大きいため、これらは高剛性に設計される。
ブラケット部は、エンジンマウントおよびエンジンの設置に必要な高さ(上下方向の寸法)を有し、それらが十全に支持できる剛性を有するように設計される。一般に、ブラケット部は剛性の高いサイドメンバに結合することでエンジンマウント等の支持剛性の向上が図られている。ここで近年では、車両の小型化や低重心化のためにサイドメンバの設置位置は低くなる傾向にある。これに応じながらエンジンを従来の高さに設置するためにはブラケット部を高くしなければならない。しかし、ブラケット部を剛性を確保したまま高くすると重量の著しい増加を招き、近年の燃費向上を目的とした車両重量の軽減化に反してしまう。
ここでブラケット部以外の部材、例えばストラットタワーは、複数の部材と連結してそれらに荷重を逃がすことでサスペンションの支持剛性を確保している。そこで、ブラケット部にも複数の部材に跨って取り付ける技術が提案されている。例えば特許文献1のエンジンマウント取付部(ブラケット部)は、サイドフレーム(サイドメンバ)やエプロン部(フェンダエプロン)、およびサスペンションタワー部(ストラットタワー)に跨って設置されている。特許文献1によると、ブラケット部に作用する荷重を複数の面や部材に分散させることでエンジンマウントの支持剛性を向上できるとされている。
特開2007−245864号公報
しかし、特許文献1のブラケット部は重量の軽量化を視野にいれていず、サイドフレームからフェンダエプロンおよびストラットタワーまでにわたる比較的大型な構成となっている。ブラケット部は、車両の燃費向上およびエンジンルーム内のスペース確保の観点から、小型かつ軽量であることが望ましい。
また、特許文献1のように複数の面や部材にブラケット部を3次元的に接触させて設置する場合、ブラケット部の設置位置は画一的に定まってしまう。しかしブラケット部の設置位置は本来はエンジンマウントおよびエンジンの位置によって定めるものであり、実際の組付時にブラケット部の設置位置は調節される場合がある。この場合、特許文献1の構成では、ブラケット部と各部材との接触箇所を部分的に変形させる修正作業が必要となる。しかし、変形は部材内に残留応力を生じさせるため、車体の品質に影響を与えるおそれがある。また、エンジンマウント側でのエンジンの設置位置の調節が必要となる場合もある。その場合、エンジンマウントの防振用の封入ゴムの可動範囲を増加させる等の処理が行われるが、本来は不必要な処理を行うため製造工程の遅れやコスト増加が懸念される。
本発明は、このような課題に鑑み、エンジンマウントに対する支持剛性が高く、容易にエンジンマウントの設置位置を調節可能であって、車両の軽量化に資することが可能なエンジンルーム構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明にかかるエンジンルーム構造の代表的な構成は、車両のエンジンルームの側面部と、側面部からエンジンルーム側に広がる平面状の底面部と、側面部のエンジンルーム側に接続されていて底面部から上方に延びている筒状のストラットタワーと、側面部、底面部およびストラットタワー前面部の3面で形成される角部を、上方から見て略長方形の空間で密閉するように設けられたブラケット部であって、その天面にエンジンマウントが接続されるブラケット部と、を備えるエンジンルーム構造において、ブラケット部は、その縁に沿って、側面部およびストラットタワー前面部にそれぞれ接触する2つのフランジ、および底面部に接触する他の2つのフランジからなる計4つのフランジを有し、4つのフランジのそれぞれは、上方から見た略長方形の少なくとも一対の対角に相当する位置で、隣り合う他のフランジとL字型に連結されていることを特徴とする。
上記ブラケット部は、側面部、底面部およびストラットタワー前面部の3面に4つのフランジで接触して閉断面を形成する。これにより、上記ブラケット部は、自体にかかる車両前後方向および車両幅方向のいずれの荷重も効率よく分散でき、高い支持剛性を発揮可能となっている。また、従来のブラケット部は剛性の高いサイドメンバに跨って設置されていたところ、上記ブラケット部はサイドメンバに頼らずとも高い支持剛性が発揮できる。そのため、上記ブラケット部は従来のブラケット部よりも小型に設計可能となっていて、車体重量を軽減し、エンジンルーム内にスペースの余裕を生むことが可能となっている。
当該エンジンルーム構造では、L字型に連結されているのは、それぞれ、側面部およびストラットタワー前面部にそれぞれ接触する2つのフランジと、底面部に接触する他の2つのフランジとであり、ストラットタワー前面部に接触するL字型のフランジは他方のL字型のフランジよりも高い位置に設けられるとよい。
上記ブラケット部によれば、車両後方へかかる荷重はストラットタワーへ、車外方向へかかる荷重は側面部へ効率よく分散できる。したがって、ブラケット部の支持剛性はさらに向上する。
上記課題を解決するために、本発明にかかるエンジンルーム構造の他の代表的な構成は、車両のエンジンルームの側面部と、側面部からエンジンルーム側に広がる平面状の底面部と、側面部のエンジンルーム側に接続されていて底面部から上方に延びている筒状のストラットタワーと、側面部、底面部およびストラットタワー前面部の3面で形成される角部を、上方から見て略長方形の空間で密閉するように設けられたブラケット部であって、その天面にエンジンマウントが接続されるブラケット部と、を備えるエンジンルーム構造において、ストラットタワーは、その前側に底面部よりも一段高い段差面を有し、ブラケット部は、その縁に沿って、段差面に接触する第1のフランジと、ブラケット部の前側で底面部に接触する第2のフランジとを有し、段差面は、段差面に第1のフランジを接触させかつ底面部に第2のフランジを接触させた状態でのブラケットの車両前後方向への移動を許容する形状を有することを特徴とする。
上記ブラケット部の設置位置は画一的には定められていず、車両前後方向に微調節可能となっている。すなわち、設置位置を調節するにあたって形状に修正を施す必要性が低くなっている。これらによって当該エンジンルーム構造の組付作業は容易かつ低廉となっている。
上記のブラケット部はさらに、その縁に沿って、ブラケット部の車内側で底面部に接触する第3のフランジと、側面部に接触する第4のフランジとを有し、第1ないし第4のフランジのそれぞれは、上方から見た略長方形の少なくとも一対の対角に相当する位置で、隣り合う他のフランジとL字型に連結されているとよい。
上記ブラケット部によれば、車両前後方向および車両幅方向のいずれの荷重も効率よく分散して高い支持剛性を発揮可能である。
上記の第1ないし第4のフランジは、上方から見た略長方形を描くように連結されているとよい。これにより、ブラケット部は自体にかかる荷重をさらに効率よく分散して高い支持剛性が発揮できる。
上記構成によれば、エンジンマウントに対する支持剛性が高く、容易にエンジンマウントの設置位置を調節可能であって、車両の軽量化に資することが可能なエンジンルーム構造を提供可能である。
本実施形態にかかるエンジンルーム構造を適用する車両を示す図である。 図1のエンジンルーム構造を示す図である。 図2のブラケット部を上方から見た図である。 図2(a)のエンジンルーム構造のA−A断面図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態にかかるエンジンルーム構造100を適用する車両102を示す図である。図1に示すように、エンジンルーム構造100はエンジンルーム103内の側部の前輪(不図示)の近傍に設けられる。エンジンルーム構造100には、エンジン(不図示)がエンジンマウント104(図2(a)参照)を介して懸架される。なお、本実施形態で説明に用いるエンジンルーム構造100は車両102の右側用であるが、左側用のエンジンルーム構造106も同様の機能を有している。
図2は、図1のエンジンルーム構造100を示す図である。図2(a)は図1のエンジンルーム構造100の拡大図であり、図2(b)は図2(a)のブラケット部114を上方へ移動させた図である。図2(a)に示すように、エンジンルーム構造100は、フェンダエプロン110とストラットタワー112、およびブラケット部114を含んで構成されている。フェンダエプロン110とストラットタワー112は共に前輪のフェンダを形成していて、ブラケット部114にはエンジンマウント104が連結される。
フェンダエプロン110は前輪の車内側でエンジンルーム103(図1参照)を外部から仕切る泥除けとして機能する。フェンダエプロン110の上端側はダッシュサイドパネル116に接続していて、エンジンルーム103の側面部118を形成している。側面部118の下方はエンジンルーム側(車内側)に広がって底面部120を形成している。なお、底面部120はエンジンルーム103の底面ではなく、ブラケット部114の底面となる面である。
ストラットタワー112は筒状になっていて、内部で前輪のサスペンション(不図示)を支持する。ストラットタワー112は側面部118の車内側に接続されていて、底面部120から上方へ延びている。図2(b)に示すように、ストラットタワー112はその車両前側の前面部121の下部に底面部120よりも一段高い段差面122を有している。段差面122には、ブラケット部114の後述する第1フランジ130が接続する。
ブラケット部114は、天面124にエンジンマウント104を連結する連結部126を有している。ブラケット部114にはエンジンマウント104を介してエンジンの慣性重量および振動がかかるため、高い支持剛性が必要である。
本実施形態では、ブラケット部114は側面部118、底面部120およびストラットタワー112の前面部121の3面で形成される角部を空間E1で密閉するように設けられる。このようにブラケット部114は、フェンダエプロン110とストラットタワー112とに跨って設置されていて、自体にかかる荷重をこれらに分散させることが可能となっている。
ブラケット部114は、その縁に沿って、計4つのフランジを有している。第1フランジ130は、ブラケット部114の車両後側で車幅方向に延び、ストラットタワー112の段差面122に接触する。第2フランジ132はブラケット部114の車両前側で車幅方向に延び、底面部120に接触する。第3フランジ134は、ブラケット部114の車内側で車両前後方向に延び、底面部120に接触する。第4フランジ136は、ブラケット部114の車外側で車両前後方向に延び、側面部118に接触する。
図3は、図2のブラケット部114を上方から見た図である。図3に示すように、ブラケット部114は上方から見て略長方形の形状となっている。したがって、図2(b)に示した空間E1も上方から見て略長方形となる。第1フランジ130と第4フランジ136、および第2フランジ132と第3フランジ134のそれぞれは、少なくとも一対の対角に相当する位置で、隣り合う他のフランジとL字型(第1L字型フランジ140、第2L字型フランジ142)に連結されている。
図2(a)に示すように、側面部118およびストラットタワー112の前面部121(段差面122)に接触する第1L字型フランジ140は、第2L字型フランジ142よりも高い位置に設けられている。これにより、車両後方および車外方向へかかる荷重は第1L字型フランジ140を介してストラットタワー112または側面部118へ効率よく分散可能となっている。これらのように、2つのL字型フランジが異なる高さ、特に後側の第1L字型フランジ140が高い位置に設けられていることで荷重の分散効率が向上するため、ブラケット部114の支持剛性は向上している。
再び図3を参照する。図3に示すように、本実施形態では、第1フランジ130から第4フランジ136は、上方から見て略長方形を描くようにブラケット部114の縁に沿って連結している。これにより、ブラケット部114は、車両前後方向および車両幅方向のいずれの方向の荷重も効率よく分散可能となっている。
これら第1フランジ130から第4フランジ136によって、図2(a)のブラケット部114は側面部118、底面部120、段差面122に接触して閉断面を形成している。これにより、ブラケット部114は、車両前後方向および車両幅方向のいずれの荷重も効率よく分散でき、高い支持剛性を発揮可能となっている。また従来は、ブラケット部を剛性の高いサイドメンバ144(図1参照)に跨るよう設置していたところ、本実施形態のブラケット部114はサイドメンバ144に頼らずとも高い支持剛性を発揮可能となっている。そのため、上記ブラケット部114は従来のブラケット部よりも小型に設計可能であり、車体重量を軽減し、エンジンルーム内にスペースの余裕を生むことが可能となっている。
図4は、図2(a)のエンジンルーム構造100のA−A断面図である。このA−A断面は、車両102の前後方向に沿った縦断面である。図4に示す段差面122の形状は、段差面122に第1フランジ130が接触しかつ底面部120に第2フランジ132が接触した状態のブラケット部114の車両前後方向への移動を許容する形状となっている。詳細には、図4に示すA−A断面において、段差面122の線分L1と、段差面122から第1フランジ130と第2フランジ132との距離分離れた底面部120の線分L2とは、略平行、もしくは略同じ曲率を有している。
上記構成によって、ブラケット部114の設置位置は画一的には定まっていず、車両前後方向に微調節可能となっている。したがって、連結部126がエンジンマウント104(図2(a)参照)の設置位置に合うようにブラケット部114の位置調節をするにあたって、ブラケット部114の形状に修正作業を施す必要性が低くなっている。したがって、当該エンジンルーム構造100の組付作業は容易かつ低廉となっている。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、車両のエンジンルーム構造であり、特にエンジンマウント付近の構造として利用することができる。
E1 …空間、L1 …線分、L2 …線分、100 …エンジンルーム構造、102 …車両、103 …エンジンルーム、104 …エンジンマウント、106 …エンジンルーム構造、110 …フェンダエプロン、112 …ストラットタワー、114 …ブラケット部、116 …ダッシュサイドパネル、118 …側面部、120 …底面部、121 …前面部、122 …段差面、124 …天面、126 …連結部、130 …第1フランジ、132 …第2フランジ、134 …第3フランジ、136 …第4フランジ、140 …L字型フランジ、142 …L字型フランジ、144 …サイドメンバ

Claims (3)

  1. 車両のエンジンルームの側面部と、
    前記側面部からエンジンルーム側に広がる平面状の底面部と、
    前記側面部のエンジンルーム側に接続されていて前記底面部から上方に延びている筒状のストラットタワーと、
    前記側面部、底面部およびストラットタワー前面部の3面で形成される角部を、上方から見て略長方形の空間で密閉するように設けられたブラケット部であって、その天面にエンジンマウントが接続されるブラケット部と、を備えるエンジンルーム構造において、
    前記ストラットタワーは、その前側に前記底面部よりも一段高い段差面を有し、
    前記ブラケット部は、その縁に沿って、前記段差面に接触する第1のフランジと、該ブラケット部の前側で前記底面部に接触する第2のフランジとを有し、
    前記段差面は、該段差面に第1のフランジを接触させかつ前記底面部に第2のフランジを接触させた状態での前記ブラケットの車両前後方向への移動を許容する形状を有することを特徴とするエンジンルーム構造。
  2. 前記ブラケット部はさらに、その縁に沿って、該ブラケット部の車内側で前記底面部に接触する第3のフランジと、前記側面部に接触する第4のフランジとを有し、
    前記第1ないし第4のフランジのそれぞれは、前記上方から見た略長方形の少なくとも一対の対角に相当する位置で、隣り合う他のフランジとL字型に連結されていることを特徴とする請求項に記載のエンジンルーム構造。
  3. 前記第1ないし第4のフランジは、前記上方から見た略長方形を描くように連結されていることを特徴とする請求項に記載のエンジンルーム構造。
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