JP5711869B2 - 接着部材、その製造方法および接着構造 - Google Patents
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そして、例えば、燃料電池のフッ素系樹脂や芳香族系樹脂からなる高分子電解質膜と極性基を有しないプラスチック基材を接着する場合、一般に、高分子電解質膜を形成する樹脂は、スルホン酸基を側鎖に有するので、エポキシ系接着剤との接着性に優れるが、極性基を有しないプラスチック基材は、エポキシ系接着剤を用いても高い接着強度が得られない場合がある。
また、このような高分子電解質膜に接着されたプラスチック基材は、プラスチック基材の接着界面が高分子電解質膜のスルホン酸基による強酸性の水溶液にさらされる。さらに、発電に伴い、高温になった水溶液にさらされる場合もある。
このため、強酸性や高温の水溶液にさらされても接着強度が低下しにくく耐久性の優れたプラスチック基材の接着技術が求められている。
しかし、この方法は、特許文献1の実施例から明らかなように、高い接着強度を得るためには、PPSの含有量を高くする必要がある。したがって、被着体を形成する樹脂の本来の性質が損なわれる場合がある。しかも、この方法は、初期の接着強度が高くても導入される官能基が硫黄−酸素の結合を有するので、熱水や強酸性の環境下では、耐久性が劣る。また、低圧プラズマ処理は、真空状態で放電させるので、真空設備を要することから装置が大掛かりとなり操作が煩雑であるという欠点があった。
しかし、厚い親水性の皮膜は、高いアンカー効果が期待されるものの、熱水、強酸性や強アルカリ性の環境下では、耐久性に劣ることが懸念される。
しかし、この方法も、初期の接着強度が高いが、導入される官能基が酸素原子によるものなので、熱水、強酸性や強アルカリ性の環境下では、耐久性に劣ることが懸念される。
すなわち、本発明は、プラスチック基材と未硬化のエポキシ系接着剤層とを有する接着用の部材であって、前記プラスチック基材がフィルムまたはシートであり、前記プラスチック基材の表面に窒素官能基を導入し、その上に前記未硬化のエポキシ系接着剤層を形成してなり、前記プラスチック基材において前記エポキシ系接着剤層と接する界面に、酸素濃度が容量比で1000ppm以下である窒素雰囲気下の放電処理による表面処理により導入された、第1級アミン、第2級アミン、およびアミドから選ばれる少なくとも1つの窒素官能基と、前記エポキシ系接着剤のエポキシ基との化学結合を有することを特徴とする接着部材を提供する。
前記エポキシ系接着剤層を構成するエポキシ系接着剤が硬化剤を含有する一液型であることが好ましい。
前記エポキシ系接着剤層に剥離紙が積層されたことが好ましい。
前記エポキシ系接着剤に接着される被着体が、スルホン酸基を有する高分子電解質からなる高分子電解質膜であることが好ましい。
前記窒素官能基導入工程は、大気圧下で行うことが好ましい。
前記窒素官能基導入工程は、コロナ放電処理であることが好ましい。
エポキシ系接着剤および前記プラスチック基材を構成するプラスチックのガラス転移温度がいずれも80℃以上であることが好ましい。
被着体が、接着界面に酸官能基を有するプラスチック材であることが好ましい。
被着体が、接着界面に表面処理による窒素官能基を有するプラスチック材であることが好ましい。
本発明のプラスチック基材とエポキシ系接着剤層とを有する接着部材は、プラスチック基材の少なくとも一方の表面に表面処理により窒素官能基を導入し、該窒素官能基が導入された表面に接してエポキシ系接着剤層を形成することによって製造することができる。
本発明で用いるプラスチック基材の形態は、特に制限はないが、例えば、フィルムやシート(以下、これらを総称してフィルムという。)などが挙げられる。
耐熱性を向上するため、プラスチック基材を構成するプラスチックのガラス転移温度が80℃以上であることが好ましい。
そして、エポキシ系接着剤層をプラスチック基材に接着する面を表面処理して前記窒素官能基を導入すればよい。つまり、エポキシ系接着剤層を、例えば、フィルム状のプラスチック基材の両面に積層する場合は、両面とも表面処理をして前記窒素官能基を導入する。導入された窒素官能基が、エポキシ系接着剤のエポキシ基と反応し、化学結合を形成することによって、強固な接着力が得られる。
窒素官能基を導入する表面処理の方法としては、窒素ガスを含み、かつ実質的に酸素ガスを含まない窒素雰囲気下の放電処理により行うことができる。このように表面処理を行う方法は、上述した種々のプラスチックの表面に窒素官能基を導入することが可能なので好ましい。
酸素濃度が高いとプラスチック表面に導入される窒素官能基量が少なくなり、酸素濃度が低いと窒素官能基量が多くなり、接着が強くなる。窒素雰囲気の酸素濃度は、容量比で1000ppm以下が好ましい。なお、窒素官能基がプラスチックの表面に導入されたか否かは、後述するようにXPS(X線光電子分光法)のN(窒素原子)の1sにおける化学結合エネルギーによって確認する事ができる。
そして、後述するエポキシ系接着剤層形成工程で、公知のフィルム塗工装置を用いて、ロール・ツウ・ロールで連続して塗布する場合は、このフィルム塗工装置の接着剤塗工部より上流にハウジングで覆われたコロナ放電処理装置を設置しておけば、表面処理工程とエポキシ系接着剤層形成工程とを順次連続して行うことができる。
そして、これらの官能基は、エポキシ系接着剤との接着性能に寄与するが、熱水や水蒸気に対しては高い接着強度が得られない。また、強酸性の条件における接着強度の低下を防ぐこともできない。この理由は定かではないが、この活性酸素原子が官能基を生成する際に高分子を切断して低分子化する作用も強いため、プラスチック基材の表面において、酸素原子を含む低分子化合物が極めて薄い層状に生成する。この低分子化合物層は分子量が比較的小さいので、親水性を呈しやすくなるとともに凝集力などの物理的強度が小さいためと考えられる。
つまり、酸素濃度の低い窒素雰囲気でのコロナ放電処理時に生成する低分子化合物は、空気雰囲気でのコロナ放電処理時に生成する低分子化合物より分子量が大きく、この低分子物層の凝集力などの物理的強度も大きくなる。このことから、本発明の表面処理工程をプラスチック基材へ適用することでエポキシ系接着剤層との接着性向上の効果が得られると考えられる。
本発明の表面処理工程においては、窒素雰囲気の大気圧プラズマ処理も使用できる。この場合には、安定したグロー放電のために希ガスが混入されても良い。そして、希ガスの比率は、半分を超えることもできる。
前記窒素官能基が導入されたプラスチック基材の表面に、エポキシ系接着剤を塗布してエポキシ系接着剤層を形成する。塗布には、浸漬、スプレーコートやスピンコート、あるいは刷毛塗りなどを採用することができる。プラスチック基材がフィルムである場合は、グラビアコートやドクターコートなど公知のフィルム塗工方法を採用することができ、公知のフィルム塗工装置を用いて、ロール・ツウ・ロールで連続して塗布することができる。
塗布されるエポキシ系接着剤としては、主剤と硬化剤を含有し、塗布する際には硬化していないか、一部硬化していても被着体に塗布し得る程度の粘度を有するもの等が挙げられる。エポキシ系接着剤は、予め硬化剤が配合された一液型でも使用時に硬化剤を配合する二液型でも使用可能である。これらのうち、硬化剤を配合する手間が省けることから、一液型であることが好ましい。特に、プラスチック基材がフィルムである場合は、硬化剤は、一液型であることが好ましい。
剥離紙を用いる場合は、剥離紙にエポキシ系接着剤を塗布してプラスチック基材を合わせてもよい。
エポキシ系接着剤は、2種類以上の主剤を含有するものでもよい。主剤としては、中でもグリシジルエーテル系エポキシ樹脂およびグリシジルアミン系樹脂が好ましく、とりわけビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
なお、エポキシ系接着剤は、2種類以上の硬化剤を含有するものでもよい。硬化剤として、中でもポリアミン系硬化剤、ジメチルアミノアルキルフェノール類、ポリアミノポリアミド等が好適である。
ここで、含有させてもよい他の樹脂としては、不飽和ポリエステルなどの重合性二重結合含有モノマー類およびそのプレポリマー類;ポリブタジエン、マレイン化ブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体およびそのカルボキシル基含有樹脂、ポリクロロプレン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体およびそのカルボキシル基含有樹脂、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの低分子量液状ないし高分子量エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィドなどの高分子量ポリマーおよびそれらの低分子量プレポリマーもしくはオリゴマー;ポリウレタン、多官能性マレイミド類などが例示される。
本発明の接着部材は、エポキシ系接着剤が一液型の場合はそのまま、二液型の場合は硬化剤を配合して、エポキシ系接着剤層を被着体との接着に用いることができる。被着体との接着方法は、通常の感圧接着剤を用いる接着と同様であるが、接着するプラスチック基材と被着体がともにフィルムである場合は、接着部材のエポキシ系接着剤層と被着体を重ね合わせて加熱圧着する熱ラミネートが好ましい。
熱ラミネートは、接着部材と被着体とを重ね合わせた状態で加熱して熱圧着することによりラミネートする。熱圧着する条件は、目標とする接着強度が得られる条件を適宜選定すればよい。接着強度は、熱圧着温度、時間、圧力を上げることで向上する。
被着体がプラスチック材である場合は、耐熱性の観点から、プラスチック材のガラス転移温度Tgが80℃以上であることが好ましい。
そして、被着体に接着したエポキシ系接着剤を硬化させて、本発明の接着構造を形成することができる。エポキシ系接着剤が熱硬化型である場合は、熱圧着と同時に硬化処理を行ってもよい。
硬化させたエポキシ系接着剤のガラス転移温度Tgは、80℃以上である事が好ましい。なぜなら、発電時に電池自体が熱発生する場合もあり、更に電池を設置する場所の雰囲気が60℃を越える場合がある可能性もあるので、エポキシ接着剤の熱変形や寸法変化があると長期使用において、密封性の低下による電池性能劣化が発生する可能性がある。よって、エポキシ系接着剤の耐熱性の上でガラス転移温度が80℃以上である事が好ましい。
酸官能基を含有するプラスチック材としては、スルホン酸基やカルボキシル基を有する樹脂や、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂等のカルボン酸変性樹脂からなるプラスチック材のほか、酸素ガスを含有する雰囲気で放電処理を行うことにより酸官能基を導入したプラスチック材などが挙げられる。
スルホン酸基を有する樹脂を含有するプラスチック材として、具体的には、スルホン酸基を有する高分子電解質からなる高分子電解質膜が挙げられる。
高分子電解質膜は、燃料電池の固体高分子電解質膜に用いられるものが本発明に好ましく適用でき、例えばパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名)など)やスルホン化ポリアリーレン化合物等の固体高分子電解質が挙げられる。
カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂として好適な樹脂の具体例としては、エチレン―アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン―メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン―アクリル酸エチル共重合体(EEA)などのエチレン不飽和カルボン酸共重合体;無水マレイン酸をグラフト重合して変性したポリエチレンやポリプロピレン(接着性レジン);EMAAやEAAをナトリウムや亜鉛などの金属イオンで中和したアイオノマーなどが挙げられる。
さらに、本発明においては、プラスチックの被着体との接着構造が熱水や強酸性の環境下における接着界面の接着強度が低下して耐久性に劣る場合、接着剤層と接する界面に表面処理による窒素官能基が導入されたプラスチック材を用いることで接着性を改善することができる。すなわち、この場合には、界面に表面処理による窒素官能基が導入されたプラスチック基材2枚の間にエポキシ系接着剤層が介在した積層構造が得られる。
被着体がプラスチック材である場合のその表面処理方法は、上述した接着部材のプラスチック基材の表面処理方法と同様である。
被着体のプラスチック材は、材料、厚み、形状などが接着部材のプラスチック基材と同じでもよく、異なってもよい。
実質的に酸素を含まない窒素雰囲気下の放電処理による表面処理を用いることにより、プラスチック基材が接着剤層と接する界面のみに窒素官能基を導入することが可能となり、接着剤層と接しない内部に窒素官能基を有しない構造となる。このため、本発明の接着部材またはこれを被着体に接着してなる接着構造が強酸性物質に接しても、プラスチック基材の窒素官能基が塩基として強酸性物質と反応することがない。したがって、強酸性物質が生成する燃料電池等の強酸性媒質に接する部材として用いるときに、内容物や媒質を変質させるおそれがない。
図1に示すように、接着部材1は、開口部5を有する枠状のプラスチック基材2の表面4に窒素官能基を導入し、その上にエポキシ系接着剤層3を形成したものである。図2に示す本発明の接着構造を有する貼合体は、図1の接着部材1を被着体6の周縁部に表裏両面から接着しエポキシ系接着剤を硬化したものである。図2において、高分子電解質膜を被着体6とすることにより、本発明を高分子電解質型燃料電池用電解質膜に適用することができる。
(参考例1:XPSによる窒素存在量の測定)
PPSフィルム(厚み12μm)の表面に、表面処理工程として、自社製のバッチ式コロナ放電処理装置を用いて窒素雰囲気下でコロナ放電処理を実施し、XPS(X線光電子分光法)にて表面の窒素(N)、炭素(C)および硫黄(S)の元素存在量(Atomic%)を測定した。窒素雰囲気下のコロナ処理の酸素濃度(容量比)は、0.2%、0.09%、0.075%(2000ppm、900ppm、750ppm)の3通りとした。その結果を表1に示す。
また、比較のため、大気下でコロナ処理したPPSおよび未処理のPPSについても、XPSにて表面の窒素(N)の存在量を測定したが、N存在量は0であった。
表1から、窒素官能基は、空気雰囲気下での表面処理では導入されず、酸素濃度の低い窒素雰囲気下での表面処理で導入されること、および、窒素雰囲気中の酸素濃度の低下に伴い窒素官能基の導入量が増えることがわかる。
図3は、F(1s)、O(1s)、N(1s)、C(1s)およびS(2p)に対応するピークを含むチャートである。
また、図4は、N(1s)ピークを拡大して、アミン(NH2)のピークとアミド(NHCO)のピークの比率を解析した様子を示す。N存在量のうち、NHCOの窒素は約65%、NH2の窒素は約35%であった。
臭素元素を指標とするために、ビスフェノールAに臭素原子を導入した臭素化エポキシ接着剤の主剤のみを酸素濃度900ppmの窒素雰囲気下でコロナ処理して窒素官能基を導入したPPSフィルムに塗布して、150℃で20分間、熱処理をした。その後、臭素化エポキシ接着剤の主剤を溶解可能なMEK(メチルエチルケトン)に熱処理したPPSフィルムを浸漬し、2時間、超音波洗浄した。そして、そのまま2日間、MEKに浸漬し、取り出す直前に再度、2時間、超音波洗浄した。そのようにしてPPSフィルムの表面から未反応の臭素化エポキシ接着剤を完全に除去して取り出したサンプルを乾燥後、PPSフィルムの臭素化エポキシ接着剤と接した面をXPSで表面分析した。結果を図5に示す。
このことから、臭素化エポキシ樹脂がPPSフィルムの表面に存在していることがわかる。つまり、PPSフィルムの表面に導入された窒素官能基と臭素化エポキシ接着剤のエポキシ基が化学結合してPPSフィルムの表面に結合したものと推測される。したがって、PPSに導入された窒素官能基が臭素化エポキシ接着剤の硬化剤と同様な働きをして、エポキシ基一部がこれと反応してMEKに不溶となり、PPSフィルムに固定化されたものと推測される。
このことは、大多数の窒素原子や硫黄原子がPPSフィルムの表面に露出しなくなったことを意味する。したがって、ごく微量のMEKに溶解しないPPSフィルムに固定化された臭素化エポキシ樹脂が皮膜の様にPPSフィルムの表面を覆っていると推定される。
そして、本発明の接着部材においては、プラスチック基材の表面を覆うようにエポキシ系接着剤のエポキシ基と窒素官能基が結合しており、被着体に接着してエポキシ系樹脂を硬化させた時、固定化されたエポキシ樹脂に残っている未反応のエポキシ基が硬化剤と反応して、熱水、酸やアルカリに対して耐性の高い接着界面の形成が可能となると推測される。
PPSからなる厚み12μmの基材を2枚用意し、それぞれの片面に、表面処理工程として、自社製のバッチ式コロナ放電処理装置を用い、窒素ガスで充満し酸素濃度を900ppmに保持した窒素雰囲気下でコロナ放電処理を実施し、窒素官能基を導入した。なお、本基材をXPSにて表面の窒素量を測定したところ、6.5%導入されている事が判明した。
窒素官能基を導入したそれぞれの基材の表面に、ポリアミン系硬化剤を15重量%配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂を主剤とするエポキシ系接着剤(ナガセケムテックス株式会社製、T812/R001)を20μmの厚さで塗布し、2枚の表面処理した基材の間に接着剤層を形成した後、150℃、10分間加熱してエポキシ系接着剤を硬化させ、基材/接着剤層/基材の3層の接着構造を有する貼合体を作製した。
エポキシ系接着剤の硬化後のガラス転移温度は、105℃であった。
また、本実施例の貼合体の別の一部を幅15mmに切り取り、圧力釜中で100℃の熱水に浸漬し、1000時間加熱した後で180°剥離により接着強度を測定したところ、
9.0N/15mmであった。
同様に、本実施例の貼合体の別の一部を幅15mmに切り取り、pH1.0の硫酸水溶液(95℃)中に1000時間浸漬した後で180°剥離により接着強度を測定したところ、9.0N/15mmであった。
実施例1の3通りの剥離試験において、PPS基材とエポキシ系接着剤層との間の剥離は、基材側の表面が薄く剥離するPPSに特有の基材の凝集破壊であり、PPS基材とエポキシ系接着剤層との界面の接着強度は9.0N/15mmより高いと考えられる。
さらに、本実施例の貼合体の別の一部を幅15mmに切り取り、1N水酸化ナトリウム溶液(25℃)に浸漬し、上述したPPSフィルムの表面から未反応の臭素化エポキシ接着剤を完全に除去するのと同様な超音波洗浄を10分間行ったが、剥離せず、外観上の変化も無かった。
このことから、実施例1では、熱水中や強酸性あるいは強アルカリ条件でも接着力が劣化しにくい貼合体が得られたことが分かる。
大気中でコロナ放電処理を実施したこと以外は、実施例1と同様に表面処理を行った。本基材の表面をXPSにて表面分析したところ、窒素原子による化学結合が見当たらず、窒素官能基の導入が見られなかった。
実施例1と同様に、基材/接着剤層/基材の3層の接着構造を有する貼合体を作製し、初期接着強度を測定したところ、9.0N/15mmであった。
しかしながら、実施例1と同様に、熱水浸漬後の接着強度を測定したところ、接着強度が1.5N/15mmに低下した。
また、実施例1と同様に、硫酸水溶液に浸漬したところ、浸漬中に剥離してしまった。
比較例1の剥離試験において、基材と接着剤層との間の剥離は、初期接着強度の測定時は基材の凝集破壊であったが、熱水浸漬後の剥離は、基材と接着剤層との界面の接着剥離であった。
このことから、熱水中や強酸性条件では界面の接着力が劣化したことが分かる。
表面処理をしないこと以外は、実施例1と同様に、基材/接着剤層/基材の3層の接着構造を有する貼合体を作製した。
実施例1と同様に、初期接着強度を測定したところ、3.0N/15mmであった。
また、実施例1と同様に、熱水に浸漬したところ、浸漬中に剥離してしまった。
また、実施例1と同様に、硫酸水溶液に浸漬したところ、浸漬中に剥離してしまった。
このことから、未処理の基材では、十分な接着強度が得られないことが分かる。
下記のプラスチック基材および被着体の組み合わせについて、エポキシ系接着剤を介在させて貼合体を作成し、幅15mmでの180°剥離接着強度を測定した。
プラスチック基材として、PPS(厚み12μm)、PEEK(厚み100μm)、無水マレイン酸変性PP(厚み100μm)、PEN(厚み100μm)、PPE/PS(厚み100μm)の5種類を用意し、いずれも酸素濃度1000ppmの窒素雰囲気下でコロナ処理したものを用いた。
被着体として、ナフィオン(厚み50.8μm)、PPS(厚み12μm)、PEEK(厚み100μm)、無水マレイン酸変性PP(三井化学株式会社製、アドマーQE060をTダイキャストフィルム機で単層製膜した厚み100μmのフィルム)、PEN(厚み100μm)、PPE−PSアロイ(厚み100μm)の6種類を用意した。ナフィオンおよび酸変性PPについては、表面処理しない未処理品と窒素雰囲気下でコロナ処理した処理品の2種類を用い、その他の被着体については、窒素雰囲気下でコロナ処理したものを用いた。
プラスチック基材の窒素官能基を導入した表面にエポキシ接着剤(ナガセケムテックス株式会社製、2液型エポキシ接着剤;XNR3305/XNH3305)を20μmの厚さで塗布して被着体を接着し、120℃、1時間加熱して接着剤を硬化させることで各貼合体のサンプルを作製した。180°剥離接着強度の測定には、硬化処理後、40℃で3日間保管した後、圧力釜中で、100℃の熱水に浸漬し、100時間加熱した後のサンプルを用いた。
エポキシ系接着剤の硬化後のガラス転移温度は、105℃であった。
Claims (11)
- プラスチック基材と未硬化のエポキシ系接着剤層とを有する接着用の部材であって、
前記プラスチック基材がフィルムまたはシートであり、前記プラスチック基材の表面に窒素官能基を導入し、その上に前記未硬化のエポキシ系接着剤層を形成してなり、前記プラスチック基材において前記エポキシ系接着剤層と接する界面に、酸素濃度が容量比で1000ppm以下である窒素雰囲気下の放電処理による表面処理により導入された、第1級アミン、第2級アミン、およびアミドから選ばれる少なくとも1つの窒素官能基と、前記エポキシ系接着剤のエポキシ基との化学結合を有することを特徴とする接着部材。 - 前記エポキシ系接着剤層を構成するエポキシ系接着剤が硬化剤を含有する一液型であることを特徴とする請求項1に記載の接着部材。
- 前記エポキシ系接着剤層に剥離紙が積層されたことを特徴とする請求項1または2に記載の接着部材。
- 前記エポキシ系接着剤に接着される被着体が、スルホン酸基を有する高分子電解質からなる高分子電解質膜であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接着部材。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の接着部材の製造方法であって、
酸素濃度が容量比で1000ppm以下である窒素雰囲気下の放電処理によるプラスチック基材の表面処理によりプラスチック基材の表面に、第1級アミン、第2級アミン、およびアミドから選ばれる少なくとも1つの窒素官能基を導入する窒素官能基導入工程と、前記窒素官能基が導入されたプラスチック基材の表面に未硬化のエポキシ系接着剤層を形成するエポキシ系接着剤層形成工程とを有し、
前記プラスチック基材がフィルムまたはシートであって、前記窒素官能基導入工程が、ロール・ツウ・ロールで連続して行われることを特徴とする接着部材の製造方法。 - 前記窒素官能基導入工程が、大気圧下で行われることを特徴とする請求項5に記載の接着部材の製造方法。
- 前記窒素官能基導入工程が、コロナ放電処理であることを特徴とする請求項5または6に記載の接着部材の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の接着部材を被着体に接着してエポキシ系接着剤を硬化させたことを特徴とする接着構造。
- エポキシ系接着剤および前記プラスチック基材を構成するプラスチックのガラス転移温度がいずれも80℃以上であることを特徴とする請求項8に記載の接着構造。
- 被着体が、接着界面に酸官能基を有するプラスチック材であることを特徴とする請求項8または9に記載の接着構造。
- 被着体が、接着界面に表面処理による窒素官能基を有するプラスチック材であることを特徴とする請求項8または9に記載の接着構造。
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