JP5703990B2 - 医療用ゴム栓 - Google Patents
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Description
上記の使用において、注射針は治療に応じた時間でゴム栓より抜かれるが、内容液が完全に消費された後に抜かれるものばかりではなく、内容液が輸液バッグ中に残っている状態で抜かれる場合もある。その際にゴム栓に対して要求される特性が液漏れシール性である。このシール性が不十分である場合、注射針を刺したところに形成された孔から内容液が漏洩する場合や飛散する場合がある。
更に、1,4−ミクロ構造を有するイソプレンを含んだスチレン系エラストマーが、高い液漏れシール性を発現するということが開示されている(特許文献3)。また、石油樹脂を添加するという技術も開示されている(特許文献4)。
ようとすると針の径を大きくする必要があり、それに伴ってゴム栓に針を貫通させる際の抵抗(刺通抵抗)が大きくなってしまう。加硫ゴム製のゴム栓は成形品厚みが薄いことから、プラスチック針を用いても大きな支障はないが、熱可塑性エラストマー製のゴム栓は、前述の通り成形品を厚くする必要があるため、刺通抵抗を低くすることが強く望まれている。加えて昨今、プラスチック製の輸液バッグ本体も肉薄化の傾向があるが、ゴム栓の刺通抵抗が高い場合、注射針を上手く刺せずに輸液バッグ本体が折れ曲がることも懸念される。また、針の径が大きくなることにより、液漏れシール性に関しても、より高い性能が要求されている。
このため、熱可塑性エラストマー製ゴム栓の液漏れシール性及び刺通抵抗の性能改善は急務であるが、未だ達成されていない。
成分(B):炭化水素系ゴム用軟化剤と、
成分(C):ポリオレフィン系樹脂と、を含有する樹脂組成物を成形して得られる医療用ゴム栓であって、
該樹脂組成物中、成分(A)5〜95重量部及び成分(B)5〜95重量部の合計100重量部に対して成分(C)の含有量は1〜45重量部であり、
該成分(A)がゲル浸透クロマトグラフィー分析によるスチレン換算分子量において、
(A−1)分子量:250,000〜350,000
(A−2)分子量:100,000〜150,000
(A−3)分子量:400,000〜550,000
(A−4)分子量:150,000〜250,000
の範囲にそれぞれ一つ以上のピーク及びピークショルダーのうち少なくとも一方を有する医療用ゴム栓。
[3] 成分(A)が重合体ブロックPを10重量%以上含有する上記[1]または[2]に記載の医療用ゴム栓。
[4] 重合体ブロックQが、共役ジエンとしてイソプレンに由来するモノマーを有し、
重合体ブロックQのミクロ構造中のイソプレンの1,4−付加構造が60〜100重量%である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
[5] 成分(B)が、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、および炭素原子芳香族系オイルからなる群より選択される1種以上を含む上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
[6] 成分(C)がパーオキサイド分解型のポリオレフィン系樹脂である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
[7] プラスチック針用に用いる、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓を有する輸液バッグ。
また、本発明の医療用ゴム栓は、プラスチック針を用いても針刺しが容易であり、液漏れシール性も良好であるため、輸液セットとして全プラスチック製品として廃棄が可能となる。このため、環境面および安全面においても優れた効果を有する医療用ゴム栓が提供される。
本発明の医療用ゴム栓は、少なくとも以下の成分(A)(B)及び(C)を含有してなる樹脂組成物を成形して得られるものである。
本発明における成分(A)には、ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックPと、共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、及び該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体が含まれる。成分(A)は上記ブロック共重合体及び水添ブロック共重合体のうち少なくとも一方を含む。
ここで、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体」とは、ビニル芳香族化合物を主体とする単量体を重合したものを意味し、「共役ジエンを主体とする重合体」とは、共役ジエンを主体とする単量体を重合したものを意味する。また、本発明において「主体とする」とは、50モル%以上であることを意味する。
ブロックQは、重合後に有する二重結合を水素添加した水素添加誘導体であってもよい。ブロックQの水素添加率は限定されないが、80〜100重量%が好ましく、90〜100%が好ましい。ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、得られる樹脂組成物の粘着的性質が低下し、弾性的性質が増加するため、医療用ゴム栓として良好な特性とすることが出来る。なお、ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
)又は(2)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、熱安定性が良好になる。
P−(Q−P)m (1)
(P−Q)n (2)
(式中Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ表し、mは1〜5の整数を表し、nは2〜5の整数を表す)
式(1)又は(2)においてm及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
ブロック共重合体または水添ブロック共重合体(以下、まとめて「(水添)ブロック共重合体」と記す)としては、ゴム弾性に優れることから、式(2)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(1)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、mが3以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(1)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましい。
成分(A)中のブロックPの重量割合は、10重量%以上であるのが好ましく、15重量%以上であるのが更に好ましく、30重量%以上であるのが特に好ましく、一方、60重量%以下であるのが好ましく、50重量%以下であるのが更に好ましく、45重量%以下であるのが特に好ましい。
非水添型のブロック共重合体の市販品としては、シェルケミカルズジャパン株式会社製「KRATON−A」、株式会社クラレ製「ハイブラー」の一部グレード、旭化成株式会社製「タフプレン」等が挙げられる。
本発明における成分(A)の質量平均分子量は限定されないが、通常60,000以上、好ましくは80,000以上、より好ましくは100,000以上であり、通常550,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下であるのが望ましい。成分(A)の質量平均分子量が前記範囲内であると、成形性と耐熱性が良好であるので望ましい。
具体的には、成分(A)がゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する場合がある)分析によるスチレン換算分子量において、下記(A−1)および(A−2)の範囲内において、それぞれ1つ以上のピーク及びピークショルダーのうち少なくとも一方を有するものである。更に望ましくは、下記(A−1)、(A−2)および(A−3)の範囲にそれぞれ1つ以上のピーク及びピークショルダーのうち少なくとも一方を有するものであり、最も望ましくは下記(A−1)〜(A−4)の範囲にそれぞれ一つ以上のピーク及びピークショルダーのうち少なくとも一方を有するものである。
(A−1)分子量:250,000〜350,000
(A−2)分子量:100,000〜150,000
(A−3)分子量:400,000〜550,000
(A−4)分子量:150,000〜250,000
なお、(A−4)分子量については、(A−1)との境界分子量及び(A−2)との境界分子量は含まないものとする。すなわち、(A−4)分子量は、150,000を超え、250,000未満を意味する。
ここで、本発明におけるピークショルダーとは、該ブロック共重合体のGPCピークをガウス・ニュートン法によって分離した際、そのショルダー部分を頂点としたピークが分離可能であり、最も強度の高いピークに対して1/20以上のピーク強度が得られるものを指す。
(測定条件)
機 器:東ソー株式会社製「HLC−8120GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel Super HM−M」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶 媒:クロロホルム
温 度:40℃
流 速:0.5ml/分
注入量:20μL
濃 度:0.1wt%
較正資料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
較正曲線近似式:3次式
ピーク分離ソフト:東ソー株式会社製「DBFinderSP」
ピーク分離法:ガウス・ニュートン法
ークと(A−2)の範囲に有するピークとのピークシグナル強度比〔A−1/A−2〕が25/75〜95/5であることが望ましく、25/75〜90/10であることがより望ましく、25/75〜85/15であることが更に望ましい。
特に、異なる分子量分布を有する(水添)ブロック共重合体を複数用い、これらと後述する成分(B)及び成分(C)とを配合して樹脂組成物とするよりも、予め前記の通りGPC分析における複数のピークを有する(水添)ブロック共重合体として成分(A)を得た後、これらと後述する成分(B)及び成分(C)とを配合して樹脂組成物とする方が好ましい。
本発明においては、成分(B)として炭化水素系ゴム用軟化剤を用いる。炭化水素系ゴム用軟化剤としては、成分(A)への親和性が高いことから、鉱物油系又は合成樹脂系の軟化剤が好ましく、鉱物油系軟化剤がより好ましい。
鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%程度以上がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが炭素原子芳香族系オイルと各々呼ばれている。本発明における成分(B)としては、パラフィン
系オイル、ナフテン系オイル、および炭素原子芳香族系オイルから選択される何れかを用いることが好ましい。これらのうち、色相が良好であることから、パラフィン系オイルを用いることがより好ましい。合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン及び低分子量ポリブタジエン等が挙げられる。
なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、上述の各種軟化剤の何れか1種を単独で用いても、複数種の混合物でもよい。
炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は限定されないが、200℃以上であるのが好ましく、250℃以上であるのが更に好ましい。
本発明において、成分(C)としてはポリオフレィン系樹脂を用いる。ポリオレフィン系樹脂として具体的には、低密度ポリエチレン単独重合体、高密度ポリエチレン単独重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル1−ペンテン共重合体、エチレン−メタクリル酸コポリマー等及びこれらの重合体を酸無水物などで変性し、極性官能基を付与したものなどが挙げられる。これらの中でも、成分(C)はパーオキサイド分解型のポリオレフィン系樹脂が好ましく、中でもプロピレン系樹脂であることが望ましい。ここでプロピレン系樹脂とはプロピレンを主体とするモノマーから得られる重合体を意味し、具体的にはプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が好ましい。それらの中でもプロピレン単独重合体が特に望ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂は、上述の各種ポリオレフィン系樹脂の何れか1種を単独で用いても、複数種の混合物でもよい。
本発明の医療用ゴム栓を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)〜(C)以外の樹脂や添加剤等を用いてもよい。
成分(A)〜(C)以外の樹脂としては、具体的には、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン
系共重合体;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂及びポリメチルメタクリレート系樹脂等アクリル/メタクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が環境面で好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
本発明の輸液バッグ用ゴム栓の製造に、成分(A)〜(C)以外の樹脂や成分を用いる場合でも、本発明の輸液バッグ用ゴム栓の原料中における成分(A)〜(C)の合計量は、本発明の優れた効果の発現のしやすさ等の点から、樹脂組成物中60重量%以上であるのが好ましく、80重量%以上であるのが更に好ましい。なお、ここでの上限は、通常100重量%である。
本発明の医療用ゴム栓は、上述の各成分を所定の割合で混合した樹脂組成物を、所定の形状に成形することにより得ることができる。
本発明における樹脂組成物を得る方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した樹脂組成物を得ることができる。
本発明における樹脂組成物は、前記の各原料成分をそのままドライブレンドした状態をも包含し、これを成形することによって医療用ゴム栓としてもよいが、より均一な混合・分散のためには、前記の各原料成分を、溶融混合して樹脂組成物としておくことが好ましい。溶融混合の方法としては、例えば、本発明における樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合しても良いし、各原料成分等の混合物をペレット化したり目的成形品を製造する際の成形時に溶融混合してもよい。
機及びミルロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等のバッチ式混練機等の公知の溶融混練方法が好ましい。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行う例が多い。
本発明のゴム栓製造に用いられる樹脂組成物は、柔軟かつ成形性が良好である。
本発明の医療用ゴム栓は、上述の樹脂組成物をゴム栓形状に成形することにより得ることができる。本発明の医療用ゴム栓は、液漏れシール性が発現出来ればどのような形状でもよい。
本発明のうち一つの発明に係る医療用ゴム栓は、該医療用ゴム栓を構成する樹脂組成物が、特定の分子量分布を有することに特徴をもつ。
(A−1)分子量:250,000〜350,000
(A−2)分子量:100,000〜150,000
(A−3)分子量:400,000〜550,000
(A−4)分子量:150,000〜250,000
なお、(A−4)分子量については、(A−1)との境界及び(A−2)との境界分子量は含まないものとする。すなわち、(A−4)分子量は、150,000を超え、250,000未満を意味する。
ここで、分子量分布(数/質量平均分子量)の測定及びピーク分離に際して使用されるGPCの測定条件、および、ピークショルダーの解釈については前記と同様である。なお、前記樹脂組成物がGPC測定の溶媒であるクロロホルムに不溶の成分を含有する場合は、不溶成分を濾過した溶液を用いて測定するものとする。
しく、成分(A)を前記した製造方法により、製造条件を最適化することによって達成するか、または、市販品の(水添)ブロック共重合体の中から適宜選択して使用することによって達成できる。また、複数の製造品や市販品を適宜配合して使用することによって達成することもできる。
特に、異なる分子量分布を有する(水添)ブロック共重合体を複数用い、これらと成分(B)及び成分(C)とを配合して樹脂組成物とするよりも、予め前記の通りGPC分析における複数のピークを有する(水添)ブロック共重合体として成分(A)を得た後、これらと成分(B)及び成分(C)とを配合して樹脂組成物とする方が好ましい。
本発明の医療用ゴム栓は、該ゴム栓を医療用に用いる際の具体的用途に制限はないが、針刺しが容易であり、液漏れシール性が良好であることから、輸液バッグ用のゴム栓や、バイアル瓶用のゴム栓として用いる場合に好適であり、特に、輸液バッグ用のゴム栓として用いる場合に好適である。
本発明の医療用ゴム栓の製造方法は、シール性を発現させることが出来る形状に成形できれば特に制限はない。具体的には射出成形、圧縮成形、押出成形からの打ち抜き成形等が挙げられるが、これらのうち、成形サイクルや量産性を考えると、射出成形又は圧縮成形が好ましい。
成形時のシリンダー及びダイスの温度は、未溶融物の表面析出等による外観不良が起こり難い点では、高温であることが好ましく、溶融樹脂中に含まれる成分の中で最も融点が高い成分の融点より高温であることが更に好ましく、最も融点が高い成分の融点より10℃以上高いことが特に好ましく、最も融点が高い成分の融点より20℃以上高いことが最も好ましい。
また、射出成形を行う場合の金型温度は、60℃以下であるのが好ましく、45℃以下であるのが更に好ましい。
本発明の医療用ゴム栓を有する輸液バッグの形状、構造、材質等は限定されないが、通常、輸液バッグの本体、薬液を注入するためのポート、ゴム栓、キャップ等で構成される。
輸液バッグのゴム栓の形状は限定されないが、概略、円錐台状、円柱状、又は円盤状等が挙げられ、その直径は通常、10〜20mm程度である。輸液バッグのゴム栓の厚さ(注射針を刺通する方向の厚さ)も限定されないが、通常、4〜8mm程度である。一般に、輸液バッグに用いられる熱可塑性エラストマー製のゴム栓は、液漏れシール性を確保するために厚くすべきところ、刺通特性の観点から厚くすることが出来ない。しかしながら、本発明の医療用ゴム栓は液漏れシール性及び刺通特性の何れも良好であることから、厚みを8mm以上とした場合においても、輸液バッグに好適に用いることができる。
一般に、大口径の注射針を用いると、液漏れシール性が不良となるが、本発明の医療用ゴム栓は液漏れシール性が良好であるため、外径が2mm以上、更には3mm以上の注射針を用いることができる。また、通常、プラスチック製の注射針を用いた場合は刺通特性も悪化するが、本発明の医療用ゴム栓は刺通特性が良好であることから、プラスチック製の注射針を用いる輸液バッグとしても好適に用いることができる。
本発明の実施例及び比較例では、以下の原料を用いた。また、本発明で使用した成分(A)について詳細を表−1に示す。なお、GPCの測定条件は前記の通りである。
(a−1) 株式会社クラレ製「セプトンKL−J3341」:スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
スチレン(ブロックP)含量:41重量%(13C−NMR測定値)、イソプレンの1,4−ミクロ構造比94%、ブタジエンの1,4−ミクロ構造比93%、質量平均分子量:337,000、数平均分子量:230,000。
(a−2) 株式会社クラレ製「セプトン4077」:スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
スチレン(ブロックP)含量:30重量%(13C−NMR測定値)、イソプレンの1,4−ミクロ構造比94%、ブタジエンの1,4−ミクロ構造比93%、質量平均分子量:381,000、数平均分子量:290,000。
スチレン(ブロックP)含量:30重量%(13C−NMR測定値)、ブタジエンの1,4−ミクロ構造比70%、質量平均分子量:380,000、数平均分子量:290,000。
(a−4) 株式会社クラレ製「セプトンS2063」:スチレン−イソプレン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
スチレン(ブロックP)含量:13重量%(カタログ値)、イソプレンの1,4−ミクロ構造比:100%、質量平均分子量:105,000、数平均分子量:49,000。
スチレン(ブロックP)含量:30重量%(13C−NMR測定値)、ブタジエンの1,4−ミクロ構造比70%、質量平均分子量:180,000、数平均分子量:150,000。
(a−6) 株式会社クラレ製「セプトンS4055」:スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン水添ブロック共重合体。前記式(1)の構造を有する。
スチレン(ブロックP)含量:30重量%(13C−NMR測定値)、イソプレンの1,4−ミクロ構造比100%、質量平均分子量:288,000、数平均分子量:210,000。
(b−1) 出光興産株式会社製「PW−90」:パラフィン系プロセスオイル。
<成分(C)>
(c−1) 日本ポリプロピレン株式会社製「ノバテックPP MA1Q」:ポリプロピレン単独重合体。MFR(230℃、2.16kg)22g/10分。
(c−2) 日本ポリプロピレン株式会社製「ノバテックPP FA3KM」:ポリプロピレン単独重合体。MFR(230℃、2.16kg)12g/10分。
<その他の成分>
(d−1) 丸尾株式会社製「ユカライトA−1」:炭酸カルシウム。
<樹脂組成物の製造>
表−2に示す配合割合(重量部)に基づき、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30αII、シリンダー口径30mm)によって、設定温度180℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。
なお、実施例2、4〜6および比較例3については成分(A)を2種用いたが、混合された成分(A)としてのGPCの分離ピークの〔A−1/A−2〕シグナル強度比について、表−2に示す。
また、上記で得られた樹脂組成物を用いて、成分(A)と同様にGPC測定を行ったが、何れの実施例及び比較例の樹脂組成物についても、測定溶媒であるクロロホルムに溶解した成分の結果は、表−1及び表−2におけるGPCの測定結果とほぼ同様であった。
溶融混練して得られた樹脂組成物のMFRについて、JIS K7210(1999)に準拠し、230℃,21N(2.16kgf)または、230℃,49N(5kgf)の荷重にて測定した結果を表−2に示す。
上記で得られた樹脂組成物のペレットを用い、射出成形機(東芝機械株式会社製「IS−130t」)で80mm×120mm×2mmのプレートを成形し、これから物性評価用及び医療用ゴム栓特性評価用の試験片を打ち抜いた。射出成形の条件は、樹脂温度:180〜240℃、射出時間:2〜20秒、金型温度:20〜60℃、冷却時間:10〜40秒とした。
〔デュロA硬度〕
上記の通り射出成形して得られたプレートを用い、JIS K6253(1993)に従って測定した結果を表−2に示す。
〔引張特性〕
JIS K6251(2004)に準拠し、射出成形して得られたプレートを打ち抜いて得られる3号ダンベルの試験片を、オートグラフを用いて500mm/minの速度で引張って、破断するまでの伸び率(引張り伸び率)及び破断時の強度(引張り破断強度)を測定した。また、100%の伸び率を示したときの応力(100%モデュラス)及び300%の伸び率を示したときの応力(300%モデュラス)も併せて測定した。結果を表−2に示す。
JIS K6262(2006)に準拠し、射出成形して得られたプレートを打ち抜いて得た直径29mmの試験片を専用治具にて圧縮し、70℃に保持したギアオーブンで加熱処理を行った。22時間後に専用治具から試験片を取り出して圧縮から開放し、その厚みの復元率を測定した。結果を表−2に示す。
本評価では、実施例1、2、比較例1〜3の樹脂組成物を射出成形して得たプレートを重ねることにより、医療用ゴム栓と同様の形状とし、医療用ゴム栓に要求される特性について以下の方法で評価を行った。
〔刺通特性評価(1)〕
射出成形して得られたプレートを用い、直径28mmの試験片を打ち抜き、それを3枚重ねたものを図1に示す治具に取り付けた。次いで直径4mmのプラスチック針(テルモ株式会社製)を200mm/minの速度で刺し込み、刺通する(針が試験片を貫通する)までの最大荷重(刺通抵抗)と変位量(刺通伸び)を、オートグラフを用いて測定した。なお、刺通抵抗及び刺通伸びは低い方が望ましい。結果を表−3に示す。
射出成形して得られたプレートを用い、直径20mmの試験片を打ち抜き、それを3枚重ねたものを、500mlの水を充填した市販の500ml飲料用PETボトルの口栓部に取り付けた。口栓部には、試験片とPETボトルとの間から液漏れが無いよう、専用の冶具を取り付け、PETボトルを正立させて設置した。
次いで、この試験片に対し、垂直上方から直径4mmのプラスチック針(テルモ株式会社製)を手で針の直径が6mmになる段差部分まで刺し込み、手を離した際の戻り量をキックバック量として評価した。また、この状態で3時間放置し、プラスチック針を抜いた直後に倒立させ、連続滴下が発生するか否かを確認し、併せて1分間に滴下した水量(液漏れ量)を測定した。なお、連続滴下がなく、液漏れ量及びキックバック量が少ない方が望ましい。結果を表−3に示す。
本評価では、実施例3〜6、比較例4、5の樹脂組成物を以下の条件で射出成形することにより医療用ゴム栓の形状とし、医療用ゴム栓に要求される特性について以下の方法で評価を行った。なお、評価(A)に比べ、評価(B)の方が、より現実的な医療用ゴム栓としての性能評価である。
ゴム栓の成形は、射出成形機(東芝機械株式会社製「IS−100t」)で100mm×100mm×6mmのプレートを成形し、これから所定形状の試験片を打ち抜くことで得た。射出成形の条件は、樹脂温度:180〜240℃、射出時間:2〜20秒、金型温度:20〜40℃、冷却時間:10〜40秒とした。
上記の通り射出成形したプレートから、直径19mmの試験片を打ち抜き、内径18.5mmの外栓に組み込むことで医療用ゴム栓とした。
上記で得た医療用ゴム栓に対し、直径4mmのプラスチック針(テルモ株式会社製)を200mm/minの速度で刺し込み、刺通する(針が試験片を貫通する)までの最大荷
重(刺通抵抗)と変位量(刺通伸び)を、オートグラフを用いて測定した。なお、刺通抵抗及び刺通伸びは低い方が望ましい。
更に、刺通抵抗及び刺通伸びの評価結果から、医療用ゴム栓としての刺通特性について以下の評価基準で判定した。結果を表−4に示す。
◎: 特に優れている。
○: 実用に際して問題はない。
×: 実用に適さない。
上記で得た医療用ゴム栓に110℃,30分の条件で加熱滅菌処理を施した。その後、内容量1000mlのポリエチレンテレフタレート(PET)製飲料用ボトルに40mlの水を入れ、その口栓部に医療用ゴム栓を取り付け、垂直上方から直径4mmのプラスチック針(テルモ株式会社製)を手で針の直径が6mmになる段差部分まで刺し込み、倒立状態にして24時間放置した。その後、プラスチック針を抜いて、連続滴下が発生するか否かを確認し、停止するまでに滴下した水量(液漏れ量)を測定した。なお、連続滴下がなく、液漏れした水量が少ないことが望ましい。
更に、液漏れ量及び連続滴下の評価結果から、医療用ゴム栓としての液漏れ特性について以下の評価基準で判定した。結果を表−4に示す。
◎: 特に優れている。
○: 実用に際して問題はない。
×: 実用に適さない。
2 プラスチック針
3 試験片
Claims (8)
- 成分(A):ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックP及び共役ジエンを主体とする少なくとも1個の重合体ブロックQを有するブロック共重合体、ならびに該ブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体のうち少なくとも一方と、
成分(B):炭化水素系ゴム用軟化剤と、
成分(C):ポリオレフィン系樹脂と、を含有する樹脂組成物を成形して得られる医療用ゴム栓であって、
該樹脂組成物中、成分(A)5〜95重量部及び成分(B)5〜95重量部の合計100重量部に対して成分(C)の含有量は1〜45重量部であり、
該成分(A)がゲル浸透クロマトグラフィー分析によるスチレン換算分子量において、
(A−1)分子量:250,000〜350,000
(A−2)分子量:100,000〜150,000
(A−3)分子量:400,000〜550,000
(A−4)分子量:150,000〜250,000
の範囲にそれぞれ一つ以上のピーク及びピークショルダーのうち少なくとも一方を有する医療用ゴム栓。 - ピーク分離して得られた(A−1)の範囲に有するピークと(A−2)の範囲に有するピークとのピークシグナル強度比〔A−1/A−2〕が25/75〜95/5である、請求項1に記載の医療用ゴム栓。
- 成分(A)が重合体ブロックPを10重量%以上含有する請求項1または2に記載の医療用ゴム栓。
- 重合体ブロックQが、共役ジエンとしてイソプレンに由来するモノマーを有し、重合体ブロックQのミクロ構造中のイソプレンの1,4−付加構造が60〜100重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
- 成分(B)が、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、および炭素原子芳香族系オイルからなる群より選択される1種以上を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
- 成分(C)がパーオキサイド分解型のポリオレフィン系樹脂である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
- プラスチック針用に用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療用ゴム栓を有する輸液バッグ。
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