JP5687229B2 - 光学素子封止材の表面改質方法及び発光半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子封止材の表面改質方法及び発光半導体装置に関する。
発光ダイオード(LED)等の発光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物としては、その硬化体が透明性を有することが要求されている。
一般に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤からなる光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物(特許文献1)、SiH基と反応性を有する炭素―炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、および1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒からなる光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物(特許文献2)、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン化合物、シラノール基含有シロキサン化合物、脱水素縮合触媒からなる光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物(特許文献3)、シラノール基含有ポリシロキサン、アルコキシ含有シラン化合物、加熱縮合触媒からなる光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物(特許文献4)、アルケニル基等の脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサンと1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒からなる光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物(特許文献5)などが提案されている。
しかしながら、これらの組成物を用いて封止された発光半導体装置は、高い発光効率や硫化防止性を十分満足するものではなかった。
特開平7−25987号公報 特開2002−327126号公報 特開2009−256670号公報 特開2010−163602号公報 特許第4766222号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、光学用途において高い発光効率や硫化防止性を与える光学素子封止材の表面改質方法及び発光半導体装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明によれば、光学素子封止材の表面を改質する方法であって、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層を前記光学素子封止材表面に積層させることによって、前記光学素子封止材表面を改質することを特徴とする光学素子封止材の表面改質方法を提供する。
このように、光学素子封止材表面にメタンプラズマコーティング層を形成することによって光学素子封止材の表面を改質することで、従来の封止材では達成することができなかった高い発光効率や硫化防止性を与えることができる。
前記メタンを用いたプラズマ重合を、メタン及び酸素を含む混合気体をプラズマ重合させて行うことが好ましい。
メタン及び酸素を含む混合気体のプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層は、光学素子封止材の表面を改質するための薄膜としてより一層効果的に作用するために好ましい。
また本発明では、半導体発光素子と、該半導体発光素子を覆うように設けられた光学素子封止材とを備える発光半導体装置であって、前記光学素子封止材表面に、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層が積層されたものであることを特徴とする発光半導体装置を提供する。
このような発光半導体装置は、光学素子封止材の表面が、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層により改質されているために、光学用途において高い発光効率や硫化防止性を与える発光半導体装置となる。
前記メタンプラズマコーティング層は、メタン及び酸素を含む混合気体のプラズマ重合により形成されたものであることが好ましい。
このようなメタンプラズマコーティング層であれば、より一層光学素子封止材の表面が改質され、更に優れた発光効率や硫化防止性を与える発光半導体装置となる。
前記光学素子封止材が、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、及びヒドロシリル化反応硬化型有機樹脂組成物から選択されるものであることが好ましい。
表面を改質するのに好適な光学素子封止材としては、上記樹脂からなるものが好ましい。
以上説明したように、本発明のメタンプラズマコーティング層が積層された光学素子封止材により光学素子が封止された発光半導体装置は、高い発光効率および硫化防止性を達成することができる。
本発明の発光半導体装置の一例を模式的に示す断面図を示す。
以下、本発明をより詳細に説明する。
上述のように、従来用いられてきた光学素子封止材は透明性には優れるものの、光学用途として特に重要な発光効率や硫化防止性に関しては、満足するような効果が得られないままであった。
そこで上記問題点を鑑み鋭意検討を行った結果、本発明者らは、メタンを用いたプラズマ重合(以下、メタンプラズマ重合ともいう)により光学素子封止材の表面にメタンプラズマコーティング層を積層させることで、高い発光効率と硫化防止性を与えることができることを見出し、本発明に到達した。
図1に、本発明の発光半導体装置の一例を模式的に示す断面図を示す。本発明の発光半導体装置10は、半導体発光素子1と、該半導体発光素子1を覆うように設けられた光学素子封止材2とを備える発光半導体装置10であって、前記光学素子封止材2表面に、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層3が積層されたものである。
本発明の発光半導体装置10は、光学素子封止材2の表面に、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層3が積層されているために、光学素子封止材2の表面が改質され、従来の被覆保護用樹脂組成物を用いた封止材では満足することができなかった優れた発光効率と硫化防止性を得ることができる。
光学素子封止材2としては、従来用いられてきたものを用いることができ、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、ヒドロシリル化反応硬化型有機樹脂組成物が好ましい。シリコーン樹脂封止材としてはヒドロシリル化反応硬化型、縮合硬化型、紫外線硬化型等が挙げられる。ヒドロシリル化反応硬化型有機樹脂組成物は、主骨格がシロキサン結合ではなく、有機骨格であり、ヒドロシリル化反応で硬化するものである。これらの中でもシリコーン樹脂組成物、ヒドロシリル化反応硬化型有機樹脂組成物が好ましく、特にシリコーン樹脂が好ましい。
本発明の特徴をなす、メタンプラズマコーティング層3は、メタンと酸素を含む混合気体、好ましくはメタンと酸素からなる混合気体をプラズマ重合させることにより形成されるもので、例えば「Hirotsugu Yasuda, “Luminous Chemical Vapor Deposition & Interface Engineering”, Marcel Dekker New York, 2004」に詳しく開示されている。
使用するメタンと酸素の割合はメタン1容量に対して、酸素は0.01〜3容量が好ましく、より好ましくは0.05〜2容量、特に好ましくは0.1〜1容量である。混合気体の圧力は0.01〜50Pa、特に0.1〜10Pa程度が好ましい。メタンプラズマコーティング層の膜厚は、50nm〜200nmが好ましく、より好ましくは80〜150nmである。この膜厚は処理時間に依存するもので、10分〜2時間、特に20分〜1時間程度が好ましく、使用電力は1〜500W、特に20〜80W程度が好ましい。プラズマ重合装置としては市販のものを使用することができる。
本発明の発光半導体装置10は、上記半導体発光素子1に光学素子封止材2を塗布、硬化させた後に、メタン及び酸素を含む混合気体存在下でのプラズマ重合によりメタンプラズマコーティング層3を光学素子封止材2表面に積層することによって得ることができる。
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
発光半導体装置の作製方法
図1に示すように、半導体発光素子1として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが470nmのLEDチップを用い、SMD5050パッケージ(I−CHIUN PRECISION INDUSTRY CO., 社製、樹脂部PPA(ポリフタルアミド))に搭載しワイヤーボンディングし、発光半導体装置10を作製した。
即ち、半導体発光素子1を一対のリード電極4、5を有するガラス繊維強化エポキシ樹脂製筺体6にシリコーン系ダイボンド材7を用い、180℃で10分間加熱して固定した。半導体発光素子1とリード電極4、5を金線8にて接続させた後、後述する被覆保護材(光学素子封止材)2をポッティングし、後述する封止材の推奨硬化条件にて硬化した。更に下記プラズマ処理条件にて60分間のプラズマ処理を行い、約120nmのメタンプラズマコーティング層3を積層させ発光半導体装置10を作製した。
プラズマ処理条件
混合気体:メタン2ml/min、酸素0.5ml/min
圧力4Pa、330V、150mA、15kHz
(実施例1)
封止材2として付加硬化型のメチルシリコーン系封止材である信越化学工業株式会社製、品名KER−2500A/Bを使用し、100℃−1時間+150℃−2時間にてステップ硬化させた。(硬さ70(Type−A 70、屈折率 1.41)。次に、以下の発光半導体装置の輝度の測定方法に従い、メタンプラズマ重合改質前後の全光束値を求め、光取り出し効率を求めた。光取り出し効率は1.07であった。メタンプラズマ改質後に7%の光取り出し効率アップを確認できた。
発光半導体装置の輝度の測定方法
上記方法で作製した発光半導体装置10に定電流を流し、全光束測定システムHM-9100(大塚電子株式会社製)を用い、全光束を測定し平均値を求めた。
メタンプラズマ改質前後による光取り出し効率は上記で測定した値を用い下記式で求めた。
光取り出し効率=メタンプラズマ改質後の全光束値/メタンプラズマ改質前の全光束値
(実施例2)
封止材2として付加硬化型のメチルフェニルシリコーン系封止材である信越化学工業株式会社製、品名KER−6510A/Bを使用し、100℃−1時間+150℃−2時間にてステップ硬化させた。(硬さ70(Type−A 52、屈折率 1.44)。次に、上記の発光半導体装置の輝度の測定方法に従い、メタンプラズマ重合改質前後の全光束値を求め、光取り出し効率を求めた。光取り出し効率は1.05であった。メタンプラズマ改質後に5%の光取り出し効率アップを確認できた。
(実施例3)
封止材2として付加硬化型の有機変性シリコーン系封止材(ヒドロシリル化反応硬化型有機樹脂組成物)である信越化学工業株式会社製、品名SCR−1011A/Bを使用し、70℃−1時間+150℃−5時間にてステップ硬化させた。(硬さ70(Shore−D 70、屈折率 1.52)。次に、上記の発光半導体装置の輝度の測定方法に従い、メタンプラズマ重合改質前後の全光束値を求め、光取り出し効率を求めた。光取り出し効率は1.07であった。メタンプラズマ改質後に7%の光取り出し効率アップを確認できた。
(実施例4)
メタンプラズマ処理時間を10分にした以外は実施例1の封止材2を使用し評価した。次に、上記の発光半導体装置の輝度の測定方法に従い、メタンプラズマ重合改質前後の全光束値を求め、光取り出し効率を求めた。光取り出し効率は1.05であった。メタンプラズマ改質後に5%の光取り出し効率アップを確認できた。
(実施例5)
封止材2として付加硬化型のメチルシリコーン系封止材である信越化学工業株式会社製、品名KER−2500A/Bを使用し、100℃−1時間+150℃−2時間にてステップ硬化させた。(硬さ70(Type−A 70、屈折率 1.41)。メタンプラズマ重合を実施例1と同様の条件にて施し、下記の硫黄暴露試験を行った。結果を表1に示す。
硫黄暴露試験
硫黄粉末0.2gを入れた100gガラス瓶に上記方法で作製した発光半導体装置10を収め、密閉後80℃の環境に72時間保管し、発光半導体素子の銀メッキリードフレームの外観を観察した。
なお、○:腐食なし、×:腐食有り(黒色化)である。
(実施例6)
封止材2として付加硬化型のメチルフェニルシリコーン系封止材である信越化学工業株式会社製、品名KER−6510A/Bを使用し、100℃−1時間+150℃−2時間にてステップ硬化させた。(硬さ70(Type−A 52、屈折率 1.44)。メタンプラズマ重合を上記条件にて施し、上記の硫黄暴露試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
メタンプラズマ重合を施さなかった以外は実施例5に従い封止樹脂を硬化させた後に、上記の硫黄暴露試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
メタンプラズマ重合を施さなかった以外は実施例6に従い封止樹脂を硬化させた後に、上記の硫黄暴露試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005687229
メタンプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層が積層された発光半導体装置(実施例1〜実施例5)は、メタンプラズマ重合を施さなかった発光半導体装置(比較例1及び比較例2)に比べ、高い発光効率や硫化防止性を得ることができた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
1…半導体発光素子、 2…光学素子封止材、 3…メタンプラズマコーティング層、 4,5…リード電極、 6…筺体、 7…ダイボンド材、 8…金線、 10…発光半導体装置。

Claims (3)

  1. 光学素子封止材の表面を改質する方法であって、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層を前記光学素子封止材表面に積層させることによって、前記光学素子封止材表面を改質する光学素子封止材の表面改質方法であって、
    前記メタンを用いたプラズマ重合を、メタン及び酸素を含む混合気体をプラズマ重合させて行い、
    前記混合気体に使用するメタンと酸素の割合を、メタン1容量に対して、酸素を0.01〜3容量とすることを特徴とする光学素子封止材の表面改質方法。
  2. 半導体発光素子と、該半導体発光素子を覆うように設けられた光学素子封止材とを備える発光半導体装置であって、前記光学素子封止材表面に、メタンを用いたプラズマ重合により形成されたメタンプラズマコーティング層が積層されたものである発光半導体装置であって、
    前記メタンプラズマコーティング層は、メタン及び酸素を含む混合気体のプラズマ重合により形成されたものであり、
    前記混合気体に使用するメタンと酸素の割合が、メタン1容量に対して、酸素が0.01〜3容量であることを特徴とする発光半導体装置。
  3. 前記光学素子封止材が、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、及びヒドロシリル化反応硬化型有機樹脂組成物から選択されるものであることを特徴とする請求項に記載の発光半導体装置。
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